(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】自発光式視線誘導標
(51)【国際特許分類】
E01F 9/608 20160101AFI20241114BHJP
E01F 9/615 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
E01F9/608
E01F9/615
(21)【出願番号】P 2023125323
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591052941
【氏名又は名称】コスモケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大朏 建治
(72)【発明者】
【氏名】今井 俊行
(72)【発明者】
【氏名】倉本 積児
(72)【発明者】
【氏名】臺越 篤史
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105481(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139591(JP,U)
【文献】特開2011-058315(JP,A)
【文献】特開2009-275424(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179145(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1139867(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0077157(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の中央分離帯や路肩等に設置して発光することにより車両運転者の視線を誘導する自発光式視線誘導標であって、
縦長方向を上下方向にして立設される縦長の透明円筒パイプと、
透明円筒パイプ内に設けられ、複数のLEDを縦1列に並べたLED列と
、
透明円筒パイプ内に設けられ、太陽光により発電する太陽電池モジュールとを有し、
太陽電池モジュールは、複数個の太陽電池セルを設けた発電面を透明円筒パイプの上下方向にわたって配設し、この発電面を透明円筒パイプの周方向に3面以上有し、
LED列は、
太陽電池モジュールの発電面の横側に縦1列の複数のLEDを透明円筒パイプの上下方向にわたって配設し、各LEDの発光が前方に向けて照射されるように設けられており、
透明円筒パイプをLED発光方向の前方側から見たとき、透明円筒パイプの中心軸線の投影位置を中間点とし、当該透明円筒パイプの外周面に対して中心角が
70°の直線距離以上に離れ
、かつ、中心角が130°の直線距離以下の位置で左右の各側に前記LED列が配置されている、自発光式視線誘導標。
【請求項2】
道路の中央分離帯や路肩等に設置して発光することにより車両運転者の視線を誘導する自発光式視線誘導標であって、
縦長方向を上下方向にして立設される縦長の透明円筒パイプと、
透明円筒パイプ内に設けられ、複数のLEDを縦1列に並べたLED列と
、
透明円筒パイプ内に設けられ、太陽光により発電する太陽電池モジュールとを有し、
太陽電池モジュールは、複数個の太陽電池セルを設けた発電面を透明円筒パイプの上下方向にわたって配設し、この発電面を透明円筒パイプの周方向に3面以上有し、
LED列は、
太陽電池モジュールの発電面の横側に縦1列の複数のLEDを透明円筒パイプの上下方向にわたって配設し、各LEDの発光が前方に向けて照射されるように設けられており、
透明円筒パイプをLED発光方向の前方側から見たとき、透明円筒パイプの中心軸線の投影位置を中間点とし、当該透明円筒パイプの外周面の直径をDとしたときに直径方向の距離Lが
0.58D以上に離れ
、かつ、距離Lが0.91D以下の位置で左右の各側に前記LED列が配置されている、自発光式視線誘導標。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹雪時に着雪が生じても発光の視認性を確保できる自発光式視線誘導標に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光式視線誘導標は、道路の中央分離帯や路肩等に設置して発光により車両運転者の視線を誘導する装置である。従来、自発光式視線誘導標として、透明円筒パイプを縦長方向を上下方向にして立設し、この透明円筒パイプ内に複数のLEDを縦1列に並べたLED列を配置したものがある(特許文献1)。この自発光式視線誘導標によれば、LED列の発光が縦長の1本の明るい光に見えて、夜間、降雨時、降雪時に遠くからでも車両運転者の視線を誘導できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吹雪時に風雪によって透明円筒パイプの外周面に着雪が生じた場合、着雪によってLED列の発光が遮られることがある。すなわち、外装の透明円筒パイプには、吹雪によって雪が吹付けられる側の外周面に上下方向にわたって雪が付着する。透明円筒パイプの外周面への着雪によってLED列が覆い隠されてしまうと、車両運転者からは、LED列による発光の視認性が著しく低下したり、発光が見えなくなる。そのため、吹雪時の着雪対策として、例えば、LED列の列数を増やして透明円筒パイプの周方向にLED列を多数列に配置することで、着雪によっても隠されないLED列を確保することが考えられる。しかし、LED列が不必要に増えるため、イニシャルコストの上昇や消費電力を増加させるというデメリットが生じる。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、透明円筒パイプの外周面に着雪が生じても、LED列を不必要に増やすことなく、LED発光の視認性を確保することが可能な自発光式視線誘導標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る自発光式視線誘導標は、
道路の中央分離帯や路肩等に設置して発光することにより車両運転者の視線を誘導する自発光式視線誘導標であって、
縦長方向を上下方向にして立設される縦長の透明円筒パイプと、
透明円筒パイプ内に設けられ、複数のLEDを縦1列に並べたLED列と、
透明円筒パイプ内に設けられ、太陽光により発電する太陽電池モジュールとを有し、
太陽電池モジュールは、複数個の太陽電池セルを設けた発電面を透明円筒パイプの上下方向にわたって配設し、この発電面を透明円筒パイプの周方向に3面以上有し、
LED列は、太陽電池モジュールの発電面の横側に縦1列の複数のLEDを透明円筒パイプの上下方向にわたって配設し、各LEDの発光が前方に向けて照射されるように設けられている。
【0007】
前記自発光式視線誘導標の第1態様は、
透明円筒パイプをLED発光方向の前方側から見たとき、透明円筒パイプの中心軸線の投影位置を中間点とし、当該透明円筒パイプの外周面に対して中心角が70°の直線距離以上に離れ、かつ、中心角が130°の直線距離以下の位置で左右の各側に前記LED列が配置されている構成である。
【0008】
前記自発光式視線誘導標の第2態様は、
透明円筒パイプをLED発光方向の前方側から見たとき、透明円筒パイプの中心軸線の投影位置を中間点とし、当該透明円筒パイプの外周面の直径をDとしたときに直径方向の距離Lが0.58D以上に離れ、かつ、距離Lが0.91D以下の位置で左右の各側に前記LED列が配置されている構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る自発光式視線誘導標によれば、吹雪時に想定される透明円筒パイプの外周面に付着する着雪に対して、LEDの発光を遮るような着雪幅以上に離れてLED列を左右の各側に適切に配置させることができる。従って、吹雪によって透明円筒パイプの外周面に上下方向にわたって着雪が生じた場合でも、左右の各側のLED列は、着雪によって両側ともLEDの発光が遮られることがなく、少なくとも一方側のLED列からの発光の視認性が確保され、視線誘導標として効果を発揮することができる。また、LED列は、少なくとも左右の各側に配置すればよいため、LED列の列数を必要最小数に抑えてイニシャルコストの上昇や消費電力の増大を抑制することができる。よって、イニシャルコストの上昇や消費電力の増加を抑制しながら、吹雪時でも、視線誘導標として効果を発揮し、車両運転者の視線を誘導することができる。一方、LED列を左右の各側に間隔を広げて配置することにより、2列のLED列の光が、より横方向に広がって見えるため、例えば、道路のカーブにおける車両運転者の視認性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態による自発光式視線誘導標の外観を示す正面図(同図(a))及び側面図(同図(b))である。
【
図2】実施形態による自発光式視線誘導標の内部を示す断面図である。
【
図3】LED列の第1の配置方法(同図(a))、第2の配置方法(同図(b))を説明するための模式図である。
【
図4】透明円筒パイプへの着雪の分布(ガウス分布に近似)を説明するための模式図である。
【
図5】円筒パイプへの外径に対する着雪幅の測定値(同図の表1)及び着雪幅に対する中心角(同図の表2)を示した表である。
【
図6】実施形態の自発光式視線誘導標において、透明円筒パイプへの着雪に対して左右のLED列が隠されない状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
実施形態の自発光式視線誘導標1は、道路の中央分離帯や路肩等に設置されたポールP上に取り付けられ、自ら発光して車両運転者の視線を誘導する。
図1及び
図2に示すように、この自発光式視線誘導標1は、縦長方向を上下方向にしてポールP上に立設される縦長円筒状の透明円筒パイプ2と、複数のLED(発光ダイオード)31を縦1列に並べたLED列3と、太陽光により発電する太陽電池モジュール4と、太陽電池モジュール4で発電した電気を蓄電する蓄電体5と、LED列3の点灯や点滅等の発光パターンを制御する制御部6とを備える。
【0012】
透明円筒パイプ2は、自発光式視線誘導標1の外装を構成し、ポリカーボネートやアクリル等の透明樹脂により円筒形に形成されている。透明円筒パイプ2の下部には、ポールPと接続する下部ケース71が取付けられており、透明円筒パイプ2の上部には、上部ケース72が取り付けられている。
【0013】
LED列3は、透明円筒パイプ2内に設けられ、左右2列に配置されている。左右の各LED列3は、縦長長方形状の1枚のLED基板30に一体に設けられているが、各LED列3は、別々のLED基板に設けられていてもよい。左右のLED列3は、両列のLED31とも発光方向を同方向の前方に向けて照射するように設置されている。なお、LED31は、砲弾型LEDが使用されているが、表面実装型LEDなどその他の様々なLEDを使用してもよい。
【0014】
太陽電池モジュール4は、透明円筒パイプ2内に設けられ、透明円筒パイプ2の周方向に沿って三角形状に配置されている(
図2参照)。太陽電池モジュール4は、縦長長方形形状のパネル板に複数個の太陽電池セルを設けたものであるが、フレキシブル太陽電池を使用してもよい。
【0015】
蓄電体5は、ポールP内に設置されているが、透明円筒パイプ2内に設置されてもよいし、別置きに設置されてもよい。蓄電体5は、鉛蓄電池が使用されているが、電気二重層コンデンサ、リチウム電池等を使用してもよい。制御部6は、制御回路を基板に実装した電子ユニットであり、透明円筒パイプ2上部の上部ケース72内に設置されているが、透明円筒パイプ2内又は下部ケース71内に設置されてもよいし、別置きに設置されてもよい。
【0016】
次に、左右のLED列3の配置方法について説明する。
(第1の配置方法)
LED列3の第1の配置方法は、
図3(a)を参照して、透明円筒パイプ2をLED発光方向の前方側から見たとき、透明円筒パイプ2の中心軸線の投影位置を中間点とし、透明円筒パイプ2の外周面に対して中心角θが40°の直線距離S以上に離れた左右の各側にLED列3を配置する。つまり、透明円筒パイプ2の外周面において中心角θが40°範囲の直線距離Sを着雪幅Wと想定する。従って、LED列3を配置する左右の位置は、透明円筒パイプ2を前方側から見たときの透明円筒パイプ2内において、中心角θが40°範囲の直線距離Sで透明円筒パイプ2の外周面から投影した中間部の範囲を除いた左右の各LED配置範囲(
図3(a)参照)内の任意の位置である。
【0017】
ここで、吹雪時に、直立した円筒状の透明円筒パイプ2の外周面に付着する雪の着雪量は、
図4(a)に示すように、風向き方向に対して透明円筒パイプ2の外周面が垂直となる垂直位置で最大となり、この垂直位置から左右側に周方向へ移動するに従って着雪量が減少する傾向である。本発明者らは、外径60mm~150mmの円筒形の各パイプに対し、実際に吹雪で付いた着雪の実測データ(
図5の表1を参照)を分析した結果、着雪量の分布は、透明円筒パイプ2の外周面において、風向き方向に対して垂直位置で着雪量が最大としたとき、左右側の周方向位置に対してガウス分布に近似した分布(
図4(b)参照)をとることを見出した。従って、透明円筒パイプ2の外周面に対する着雪量は、透明円筒パイプ2の中心角θで示す所定位置に対してガウス分布により近似的に算出できる。具体的に、ガウス分布によると、例えば、着雪厚さは、着雪量が最大となる風向き方向の垂直位置で5.0mmとする場合、この垂直位置(中心角αが0°)から透明円筒パイプ2の中心角αが±10°位置(中心角θ=20°)で約3.5mm、中心角αが±20°位置(中心角θ=40°)で約1.2mm、中心角αが±30°位置(中心角θ=60°)で約0.2mm、中心角αが±35°位置(中心角θ=70°)で0.1mm未満となる。
【0018】
この結果より、透明円筒パイプ2をLED31の発光方向の前方側から見て、透明円筒パイプ2の外周面に対して、中心角θが40°位置の間隔以上に離れた左右側の各位置では、LED列3の発光を遮る着雪幅Wを避けることができ、中心角θが70°位置の間隔以上に離れた左右側の各位置では、LED列3を覆う着雪幅Wを超えることができることが分かった。
【0019】
なお、
図5の表1は、直径60mm~150mmの円筒パイプに対して吹雪時に外周面に付着した直径方向の着雪幅W(
図2参照)の最小値(最小着雪幅)と最大値(最大着雪幅)の測定値を示す。
図5の表2は、表1の着雪幅に対する円筒パイプの中心角の算出値を示し、最小中心角は表1の最小着雪幅に対応し、最大中心角は表1の最大着雪幅に対応する。
【0020】
従って、左右の各LED列3のLED配置範囲は、透明円筒パイプ2の中心角θが40°~180°の左右の範囲内となるが、例えば、左右の各LED列3は、透明円筒パイプ2の中心角θが、40°以上離れた位置、好ましくは60°以上離れた位置、より好ましくは70°以上離れた位置に配置することができる。一方、左右のLED列3は、互いの間隔をできるだけ小さくして接近させることで、吹雪時の着雪を避けながら、左右の各LED列3の発光が干渉して1本の太く明るい光束に見せることができる。このことから、左右の各LED列3は、透明円筒パイプ2の中心角θが、130°以下の位置、好ましくは100°以下の位置、より好ましくは80°以下の位置に配置することができる。一例として、透明円筒パイプ2の外径が114mmのものでは、透明円筒パイプ2の中心角θが75°付近の左右の各位置にLED列3を配置することで、吹雪時の着雪幅を避けることができ、かつ、太く明るい発光により視認性を向上することができる。
【0021】
(第2の配置方法)
LED列3の第2の配置方法は、
図3(b)を参照して、透明円筒パイプ2をLED発光方向の前方側から見たとき、透明円筒パイプ2の中心軸線の投影位置を中間点とし、透明円筒パイプ2の外周面の直径(外径)をDとしたとき、直径方向の距離Lが0.35D以上に離れた左右の各側にLED列3を配置する。つまり、透明円筒パイプ2の外周面において直径方向の距離Lの範囲を着雪幅Wと想定する。従って、LED列3を配置する左右の位置は、透明円筒パイプ2を前方側から見たときの透明円筒パイプ2内において、透明円筒パイプ2の外径Dの0.35割合である距離L分の中間部の範囲を除いた左右の各LED配置範囲(
図3(b)参照)内の任意の位置である。
【0022】
本発明者らは、外径60mm~150mmの円筒形の各パイプに対し、実際に吹雪で付いた着雪の実測データ(
図5の表1を参照)を分析した結果、吹雪時に直立した円筒パイプの外周面に付着する雪の着雪幅は、円筒パイプの外径サイズに比例する傾向であった。これより、透明円筒パイプ2の直径方向に着雪する着雪幅Wは、透明円筒パイプ2の外径Dと一次関数的な関係から近似的に推測できることを見出した。ここで、着雪幅Wは、風向き方向から透明円筒パイプ2の外周面に対し周方向へ広がる着雪の投影幅である。従って、透明円筒パイプ2の外周面に対する着雪幅Wは、透明円筒パイプ2の外径をDとしたとき、0.35Dで示される距離Lとして近似的に算出できる。前記関係である0.35Dは、
図5の表1に示すパイプ直径と最小着雪幅との関係から導かれる。パイプ直径と最大着雪幅との関係では、距離Lは0.51Dで近似的に表される。
【0023】
この結果より、透明円筒パイプ2をLED31の発光方向の前方側から見て、直径方向の距離Lが、透明円筒パイプ2の外径をDとし0.35D以上に離れた左右の各側の位置では、LED列3の発光を遮る着雪幅Wを避けることができ、0.51D以上に離れた左右の各側の位置では、LED列3を覆う着雪幅Wを超えることができることが分かった。ちなみに、距離Lが0.35Dで透明円筒パイプ2の中心角θが40°のときとほぼ対応し、同様に、距離Lが0.51Dで中心角θが60°とほぼ対応する。なお、距離Lが0.58Dで中心角θが70°、0.65Dで中心角θが80°、0.77Dで中心角θが100°、0.91Dで中心角θが130°のときとほぼ対応する。
【0024】
従って、左右の各LED列3のLED配置範囲は、透明円筒パイプ2の外径をDとしたとき、透明円筒パイプ2の直径方向の距離Lが、0.35D以上で、外径D未満の左右の範囲内となるが、例えば、左右の各LED列3は、距離Lの範囲が、0.35D(中心角θが40°相当)以上、0.51D(中心角θが60°相当)以上、又は、0.58D(中心角θが70°相当)以上であり、かつ、0.91D(中心角θが130°相当)以下、0.77D(中心角θが100°相当)以下、又は、0.65D(中心角θが80°相当)以下である左右の各位置に配置することができる。これにより、左右のLED列3は、吹雪時の着雪を避けながら、左右の各LED列3の発光が干渉して1本の太く明るい光束に見せることができる。一例として、透明円筒パイプ2の外径Dが114mmのものでは、透明円筒パイプ2の直径方向の距離Lにして、0.61D付近(中心角θが75°相当)の左右の各位置にLED列3を配置することで、吹雪時の着雪幅を避けることができ、かつ、太く明るい発光により視認性を向上することができる。
【0025】
以上より、LED列3の第1、第2の配置方法によれば、吹雪時に想定される透明円筒パイプ2の外周面に付着する着雪に対して、LED31の発光を遮るような着雪幅W以上に離れてLED列3を左右の各側に適切に配置させることができる。従って、
図6のように、吹雪によって透明円筒パイプ2の外周面に上下方向にわたって着雪が生じた場合でも、左右の各側のLED列3は、着雪によって両側ともLED31の発光が遮られることがなく、少なくとも一方側のLED列3からの発光の視認性が確保され、視線誘導標として効果を発揮することができる。また、LED列3は、少なくとも左右の各側に配置すればよいため、LED列3の列数を必要最小数に抑えてイニシャルコストの上昇や消費電力の増大を抑制することができる。よって、本実施形態の自発光式視線誘導標1によれば、吹雪によって透明円筒パイプ2の外周面に着雪が生じても、LED列3の列数を不必要に増やすことなく、LED列3からの発光の視認性を確保することができる。従って、イニシャルコストの上昇や消費電力の増加を抑制しながら、吹雪時でも、視線誘導標として効果を発揮し、車両運転者の視線を誘導することができる。一方、LED列3を左右の各側に間隔を広げて配置することにより、透明円筒パイプ2に着雪が無い場合、2列のLED列3の光が、より横方向に広がって見えるため、例えば、道路のカーブにおける車両運転者の視認性を向上することができる。
【0026】
また、本実施形態の自発光式視線誘導標は、以下の構成及び作用効果を有する。
左右のLED列3に設けた複数のLED31は、指向角が30°のものが使用されている。従って、2列の各LED列3からのLED31発光は、まっすぐ前方方向を向いた光軸を中心に30°範囲で左右に広がって照射され、左右のLED列3のLED31発光が前方で重なり合うようになる。なお、LED31は、指向角が30°のものに限らず、任意の指向角を有するものを使用することができるが、例えば、指向角が20°~40°のものが使用される。
【0027】
また、本実施形態では、左右のLED列3を取り付けたLED基板30は、折れ曲がりの無い平坦な基板であるが、例えば、LED基板30を傾けたり曲げたりすることで、左右のLED列3の一方又は両方のLED31の光軸を他方のLED列3側へ傾けるようにしてもよい。
【0028】
前記したように、2列の各LED列3におけるLED31の指向角が20°以上のもの、あるいは、一方又は両方のLED列3を他方のLED列3側へ傾けた構成とするものによれば、左右2列のLED列3は、近距離で目視すると左右のLED列3間に未発光域のある2列の光に見えるが、所定距離以上離れて目視すると左右の各LED列3の発光が横方向で干渉し合って1本の明るくて太い光束に見えて、視線誘導標の視認性を向上することができる。従って、車両運転者は、遠くからでも視線誘導標の発光を明るい光として確認でき、道路線形を良好に認識することができる。
【0029】
ここで、「視線誘導標設置基準・同解説」では、視線誘導施設の設置間隔は40mと定められており、この基準に従って視線誘導標が40m間隔で設置された道路において、本実施形態の自発光式視線誘導標1を設置すれば、車両運転者は、40m先の本自発光式視線誘導標1を目視した場合、1本の明るく太い光束として良好に目視でき、車両の運行安全性の向上が期待できる。また、道路吹雪対策マニュアル(独立行政法人土木研究所 寒冷土木研究所)によれば、視程50m以下では通行止めとする管理の考え方があり、走行車が安全な場所まで退避するにあたり、視程50mの気象条件で常に1本以上の目標物が視認できることが必要であるとされている。従って、本実施形態の自発光式視線誘導標1によれば、視程50mの気象条件であっても、本自発光式視線誘導標1を1本の明るく太い光束として良好に目視でき、車両の運行安全性の向上が期待できる。
【0030】
本実施形態では、左右のLED列3は、前記した第1の配置方法又は第2の配置方法により所定のLED配置範囲に配置されるが、
図3(a)(b)に示すように、左右のLED列3の間隔をできるだけ小さくして接近させることで、吹雪時の着雪によってもLED列3の発光の視認性を確保しつつ、さらには、左右のLED列3の発光の干渉により明るい発光を行うことができてLED発光の視認性をより向上することができる。そして、左右のLED列3は、透明円筒パイプ2の前面(透明円筒パイプ2の内周面付近)に近づけることが好ましい。すなわち、左右のLED列3を透明円筒パイプ2の直径線上の両端に配置することも可能であるが、その場合、各LED列3は、透明円筒パイプ2の前面から透明円筒パイプ2の半径分後方へ配置されるため、見る角度によっては左右どちらか一方のLED列3の発光の一部が太陽電池モジュール4で隠れてしまうおそれがある。左右のLED列3は、互いの間隔をできるだけ小さくして接近させて、各LED列3を透明円筒パイプ2の前面に近づけることで、LED列3の発光が太陽電池モジュール4で隠されないようにすることができ、LED発光の視認性をより向上することができる。
【0031】
図2に示すように、太陽電池モジュール4は、透明円筒パイプ2の周方向三方に発電面を有する三角形状に配置されている。左右のLED列3は、太陽電池モジュール4の三角形の2つの頂点域に配置されている。これにより、左右のLED列3が太陽電池モジュール4の発電面に影を落とすことなく、太陽電池モジュール4の発電面を透明円筒パイプ2の周方向360°範囲の三方向に向けて配置することができ、太陽電池モジュール4の発電量を確保しやすくすることができる。
【0032】
なお、太陽電池モジュール4は、左右のLED列3と並設する周方向範囲、又は、左右のLED列3の中間範囲に配置される構成としてもよい。太陽電池モジュール4をLED列3と並設する周方向範囲に配置する場合、太陽電池モジュール4は、例えば、2面の発電面をく字状に配置するもの、3面の発電面をコ字状に配置するもの、2面の発電面をく字状とするものを2枚組み合わせて菱形に配置するもの、3面以上の発電面を多角形状に配置するもの、フレキシブル太陽電池を任意に曲げて配置するものなどの形態とすることができる。また、太陽電池モジュール4を左右のLED列3間の中間範囲に配置する場合、太陽電池モジュール4は、例えば、1枚の両面発電太陽電池を配置するもの、2枚の太陽電池を各々の発電面を外方へ向けて背中合わせに配置するものなどの形態とすることができる。
【0033】
また、太陽電池モジュール4は、ポールPに取り付ける等して透明円筒パイプ2外に設置してもよい。この場合、左右のLED列3は、透明円筒パイプ2内において太陽電池モジュール4の配置スペースを考慮することなく設置することができる。例えば、左右のLED列3は、透明円筒パイプ2内において正面側の左右位置と背面側の左右位置とに任意の位置に配置させることもできる。このような構成によれば、吹雪時に透明円筒パイプ2の正面側又は背面側に着雪が生じた場合でも、上り車線側と下り車線側のそれぞれの車線を走行する車両に対して車両運転者の視線を誘導することができる。
【0034】
以上が本発明の一実施形態であるが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲内で様々な変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、前方方向にLED31の発光を照射するLED列3を左右に2列配置するが、左右2列のLED列3に他のLED列3を追加して3列以上にLED列3を配置してもよいし、また、前方にLED31の発光を照射する左右2列のLED列3とは別に、側方、後方等に向けてLED31の発光を照射するLED列3を配置してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 自発光式視線誘導標
2 透明円筒パイプ
3 LED列
4 太陽電池モジュール
5 蓄電体
6 制御部
30 LED基板
31 LED
71 下部ケース
72 上部ケース
P ポール
【要約】
【課題】透明円筒パイプの外周面に着雪が生じても、LED列を不必要に増やすことなく、LED発光の視認性を確保することが可能な自発光式視線誘導標を提供する。
【解決手段】本自発光式視線誘導標1は、透明円筒パイプ2内に複数のLED31を縦1列に並べたLED列3を有する。LED列3は、透明円筒パイプ2の外周面に対して中心角が40°の直線距離S以上に離れた左右の各側に配置されている。又は、LED列3は、透明円筒パイプ2の外周面の直径をDとしたときに直径方向の距離Lが0.35D以上に離れた左右の各側に配置されている。
【選択図】
図3