(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】病的タンパク質凝集の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20241114BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241114BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20241114BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20241114BHJP
G01N 33/92 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N33/68
C12Q1/02
G01N30/88 E
G01N33/48 P
G01N33/92 Z
(21)【出願番号】P 2023127705
(22)【出願日】2023-08-04
(62)【分割の表示】P 2020546431の分割
【原出願日】2019-03-05
【審査請求日】2023-09-01
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514291406
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ニューキャッスル アポン タイン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF NEWCASTLE UPON TYNE
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルザワ‐アカンビ、マルゼナ
(72)【発明者】
【氏名】モリス、クリストファー マイルズ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/165766(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0051337(US,A1)
【文献】特表2015-522260(JP,A)
【文献】特表2010-534480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
C12Q 1/02
G01N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるアルファシヌクレイノパチーを識別または監視する
ためのインビトロ方法であって:
a)前記対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程と;
b)前記少なくとも1つのセラミド種の前記評価量を、前記少なくとも1つのセラミド種についての参照値と比較する工程と;
を含み、前記少なくとも1つのセラミド種についての前記参照値よりも大きい前記少なくとも1つのセラミド種の評価量が、アルファシヌクレイノパチーを示す、方法。
【請求項2】
対象がアルファシヌクレイノパチーを発症するリスクを判定する
ためのインビトロ方法であって:
a)前記対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程と;
b)前記少なくとも1つのセラミド種の前記評価量を、前記少なくとも1つのセラミド種についての参照値と比較する工程と;
を含み、前記少なくとも1つのセラミド種についての前記参照値よりも大きい前記少なくとも1つのセラミド種の評価量が、前記対象がアルファシヌクレイノパチーを発症するリスクが高いことを示す、方法。
【請求項3】
アルファシヌクレイノパチーを患っている疑いがある、またはアルファシヌクレイノパチーの発症リスクが高い対象におけるCer 32:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価するインビトロ方法であって:
(a)前記対象から細胞外小胞サンプルを用意する工程と;
(b)前記細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程と
を含む、方法。
【請求項4】
疾患がある対象について処置を選択する
ためのインビトロ方法であって:
a)前記対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程と;
b)前記少なくとも1つのセラミド種の前記評価量を、前記少なくとも1つのセラミド種についての参照値と比較する工程と;
を含み、前記少なくとも1つのセラミド種についての前記参照値よりも大きい前記少なくとも1つのセラミド種の評価量が、前記対象がアルファシヌクレイノパチー用の処置から利益を得ることとなることを示す、方法。
【請求項5】
前記アルファシヌクレイノパチーは、パーキンソン病、レビー小体型認知症、および多系統萎縮症からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象はヒトである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象は、アルファシヌクレイノパチーを患っている、または患っている疑いがある、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、アルファシヌクレイノパチーを患っている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、初期段階のアルファシヌクレイノパチーを患っている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞外小胞サンプルは、CSF、血液、脳組織ホモジェネート、尿、唾液、またはそれらの組合せから選択される生体サンプルから得られる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記血液サンプルは、血漿、血清、血小板、およびバフィーコートからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞外小胞サンプルは、サイズ排除クロマトグラフィを使用して得られる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法はさらに:
i)前記対象由来の生体サンプルを用意する工程と;
ii)サイズ排除クロマトグラフィを使用して、前記生体サンプルから細胞外小胞サンプルを得る工程と
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記参照値は、対照サンプルから得られ、または所定の参照値である、
請求項1、2又は4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象におけるアルファシヌクレイノパチーの識別もしくは監視のための、または対象におけるアルファシヌクレイノパチーの発症リスクを判定するための、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つの細胞外小胞セラミド種の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外小胞サンプルを使用して、対象におけるタンパク質ミスフォールディ
ング神経変性障害、特にアルファシヌクレイノパチー(パーキンソン病およびレビー小体
型認知症が挙げられる)の発症リスクを識別、監視、または判定する新規の方法を提供す
る。また、細胞外小胞サンプル中の病的プリオン様タンパク質(または1つ以上のセラミ
ド種)の存在について、処置を選択し、かつアッセイする、対応する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
多くの神経変性障害は、タンパク質のミスフォールディング、凝集、および組織蓄積と
関連する。本明細書中で「タンパク質ミスフォールディング神経変性障害」と呼ばれる当
該障害として、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、クロイツフェルト
・ヤコブ病、アルツハイマー病、タウオパチー(アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、
進行性核上性麻痺、および皮質基底核変性症等)、ハンチントン病、運動ニューロン疾患
、デンタトパリドルブロルイジアン萎縮症(dentatopallidorubrol
uysian atrophy)、脊髄小脳失調症、およびその他の多くが挙げられる(
Salvadores et al.,2014(非特許文献1))。
【0003】
臨床症状が現れる前の疾患の初期段階にて、罹患した個体を識別するには、一般的に問
題がある。これは、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害の発症リスクを識別、
監視、かつ評価するための、広く受け入れられており、信頼性があり、感度が高く、かつ
客観的な分子診断法がないためである。したがって、そのような疾患の診断は、神経学的
かつ神経精神病学的評価に大きく依存するが、これは典型的に、疾患の発症の後期段階で
しか診断に役立たない。
【0004】
一例として、パーキンソン病は、脳の一部が長年にわたって徐々に損傷を受ける容体で
ある。パーキンソン病の主な症状として、身体の特定の部分の不随意の震え(振戦)、動
作緩慢、および筋肉の硬直がある。また、パーキンソン病患者は、抑鬱および不安、平衡
障害、嗅覚喪失(無嗅覚症)、睡眠障害(不眠症)、ならびに記憶障害が挙げられる、他
の様々な身体的症状および心理的症状を経験し得る。
【0005】
加えて、パーキンソン病に関連する2つのタイプの認知症;パーキンソン病認知症およ
びレビー小体型認知症がある。パーキンソン病の運動症状が、認知症を経験する前に少な
くとも1年間存在する場合には、パーキンソン病認知症として区別される。レビー小体型
認知症は、認知症の症状が、パーキンソン病の症状の前またはパーキンソン病の症状と同
時に現れる場合に、診断される。パーキンソン病患者は、環境内での注意、見当識(or
ientation)、環境のネゴシエーション(negotiation of en
vironment)の障害がより大きい傾向がある。また、考え方に柔軟性があまりな
い。
【0006】
現在、患者の症状、病歴、および詳細な健康診断に基づいて、診断がなされている。初
期段階のパーキンソン病は、症状が通常軽度であるため、診断するのが特に困難である。
現在、完全な臨床診断が、高度に専門化された臨床環境において確立されており、そして
神経心理学的評価および神経放射線学的評価に基づいている。当該診断は通常、専門家に
繰り返し仰ぐ必要があり、これにより診断が遅れるので、処置およびサポートの開始が数
ヶ月遅れる。現在、パーキンソン病の治療法はないが、容体の管理に役立つ様々な多くの
処置、治療、およびサポートがある。
【0007】
500人に1人がパーキンソン病に冒されており、これは、英国において、この容体の
人が推定127,000人いることを意味する。パーキンソン病のほとんどの患者は、5
0歳を超えると症状が出始めるが、当該容体の患者の約20人に1人は、40歳未満のと
きに初めて症状を経験している。男性は女性よりもパーキンソン病に罹る可能性が僅かに
高い。国連(UN)の研究によると、2050年までに18億人が60歳を超え、18,
000,000人の潜在的な新規患者が予測されると報告されている。
【0008】
米国では、少なくとも50万人がパーキンソン病に罹患していると考えられており、毎
年約5万の新規症例が報告されている。パーキンソン病は、年間144億ドルを費やすと
見積もられており、間接的な費用(例えば、雇用の減少)は、控えめに見積もって63億
ドル(または1人あたり10,000ドル近く)と推定されている。これらの費用は、2
040年までに2倍になると予測されている。英国では、当該費用は、年間4億ポンドか
ら33億ポンドと推定されている。調査によると、パーキンソン病の費用は、早期診断の
向上によって大幅に削減でき、この向上は、計画、将来の入院の回避、および臨床管理の
向上に役立つであろうと示されている。
【0009】
分子レベルでは、アルファ-シヌクレイン凝集が、パーキンソン病(PD)、レビー小
体型認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)の病態において中心的な役割を果
たすことが知られている。アルファ-シヌクレインは、エキソソームおよび他の細胞外小
胞の内部および外部で検出されてきた140アミノ酸長のタンパク質である(Loov
et al.,2016(非特許文献2)にレビュー)。パーキンソン病患者におけるア
ルファ-シヌクレインレベルの変化(例えば、脳脊髄液(CSF)サンプルにおけるアル
ファ-シヌクレインレベルの僅かな低下)を示す多くの研究にも拘らず、異なる研究由来
のデータは、一貫していない。また、ラボ間でのアルファ-シヌクレインを測定する方法
の標準化は、困難であることが判明している。したがって、現在利用可能な方法論を使用
すると、対象の生体サンプル(細胞外小胞サンプルが挙げられる)内に存在するアルファ
-シヌクレインの総量は、疾患の信頼できるバイオマーカーであると思われない。
【0010】
その病的状態において、アルファ-シヌクレインは、その本来の構造を失っている。構
造的に変化したアルファ-シヌクレインは、二量体および三量体の形成を開始し、続いて
可溶性オリゴマーおよびプロトフィブリルを形成し、そしてフィブリルとして堆積し、か
つ凝集体として成熟する場合がある。
【0011】
最近、エキソソームは、パーキンソン病が挙げられる種々の神経変性障害におけるミス
フォールドタンパク質の伝播に関係していることが示された。例えば、細胞外アルファ-
シヌクレインは最近、病的ニューロンから健康なニューロンへの、病的アルファ-シヌク
レインのプリオン様伝達に包含されており、ミスフォールドアルファ-シヌクレインは、
可溶性アルファ-シヌクレインの凝集を誘導する種として機能している可能性があった。
【0012】
リアルタイム震え誘導変換(RT-QuIC)と呼ばれる最近の手法は、プリオンタン
パク質が自己凝集を誘導する能力を利用するものであり、最近、DLB患者およびパーキ
ンソン病患者由来のCSFサンプルにおいて、病的アルファ-シヌクレインを検出するの
に使用されてきた(Fairfoul et al.,2016(非特許文献3))。ま
た、最近、アルファ-シヌクレイン凝集の存在を検出する代替方法が開発された(「タン
パク質ミスフォールディングサイクリック増幅(PMCA)」)(Herva et a
l.,2014(非特許文献4))。これらの方法は有望であるが、各アッセイを完了す
るのにかかる時間は長く、分析に必要なサンプル(CSFまたは脳ホモジェネート)は侵
襲的な手順を必要とするので、疾患の疑いの指標が高い患者(例えば、臨床症状および疾
患の指標がいくつかある、疾患進行の後期段階にある患者)への使用が制限される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Salvadores et al.,2014
【文献】Loov et al.,2016
【文献】Fairfoul et al.,2016
【文献】Herva et al.,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
PDまたはDLB等の初期段階のタンパク質ミスフォールディング神経変性障害の診断
ツールを向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは今般、驚くべきことに、PDまたはDLBの患者由来の細胞外小胞サンプ
ルにおける病的アルファ-シヌクレインの存在が、疾患を、そして重要なことには、臨床
症状をまだ示していないヒトにおいて疾患を発症するリスクを識別または監視するのに信
頼できるマーカーとして使用することができることを発見した。また、PDおよびDLB
の患者から得られる細胞外小胞の脂質組成が、対照の脂質組成(特に、細胞外小胞のセラ
ミド組成)とは大きく異なることを実証した。したがって、本発明者らは、疾患を検出、
監視、かつ診断する新規の手段を提供した。
【0016】
本発明者らは、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用して、病的アルファ-シ
ヌクレインの後の検出に使用される細胞外小胞(EV)サンプルを得た。SECの使用は
、小胞の、密度ではなくサイズに基づいてEVを富化するための非常に穏やかな手段であ
り、タンパク質複合体の形成、小胞の凝集、およびサンプル中に存在する他の脂質の富化
のリスクがないため、有利である(Boing et al.,2014にレビュー)。
しかしながら、本発明は、他の方法によって得られるEVサンプルにも等しく使用され、
その例を以下でより詳細に説明する。
【0017】
本発明者らは、EVにおける病的アルファ-シヌクレインの存在を、自己凝集を誘導す
る能力を利用することによって検出した。病的アルファ-シヌクレインを検出する既知の
方法を使用して、EVサンプルをアッセイして、より迅速かつより感度の高いアッセイプ
ロトコルを提供することができることを示した。一例として、発明者らは、既知の方法、
RT-QuICを使用して、患者サンプル中の病的アルファ-シヌクレインを検出するの
に必要な時間を、(方法をさらに最適化せずに)単離されたEVを使用する場合に、約1
20時間(現在のアッセイ時間)から48~80時間に短縮することができることを確認
した。アッセイの更なる洗練により、より迅速なアッセイ法が可能となるであろう。
【0018】
本発明は、病的アルファ-シヌクレインを検出する手段としてRT-QuICを使用し
て例示したが、病的アルファ-シヌクレインを検出する他の適切なあらゆる方法が使用さ
れてもよい。代替の非限定的な例として、PMCAが使用されてもよい(Herva e
t al.,2014)。
【0019】
発明者らは、いくつかの異なる生体サンプル(病的アルファ-シヌクレインの検出に適
していないことが以前に示されたサンプルを含む)から得たEVサンプルが、疾患(また
は疾患のリスク)を検出、監視、かつ識別するのに確実に使用され得ることを示した。有
利には、低侵襲性または非侵襲性の手段によって得ることができる生体サンプル(血液、
尿、または唾液等)が今般、病的アルファ-シヌクレインを検出するためのEVの源とし
て使用することができる。したがって、本発明者らは、疾患(または疾患のリスク)を検
出、監視、かつ識別するのにより感度の高い手段を開発した。
【0020】
さらに、本発明者らは、病的アルファ-シヌクレインの検出を使用して、臨床症状が発
生する前であっても、前駆アルファシヌクレイノパチーを検出することができることを示
した。したがって、本明細書中に記載される方法は、疾患(または疾患のリスク)の初期
段階を検出、監視、かつ識別するのに使用することができる。したがって、パーキンソン
病またはDLB等のアルファシヌクレイノパチー患者の早期臨床評価のための、疾患の特
徴を検出するより感度の高い手段を提供する。
【0021】
本発明は、PD患者およびDLB患者から得られるEVサンプル中の病的アルファ-シ
ヌクレインを検出することによって、例示された。しかしながら、本発明は、病的状態に
ある場合に、(例えば、オリゴマーおよびフィブリルに)凝集する他の病的プリオン様タ
ンパク質の検出にも等しく使用される。有利には、これらのプリオン様病的タンパク質の
それぞれの存在は、自己凝集を誘導する能力を利用することによって検出することができ
る(故に、RT-QuICおよびPMCA(またはその変更バージョン)等の方法を、検
出に使用することができる)。
【0022】
本発明者らはまた、PD患者またはDLB患者のCSFサンプルから得られるEVが、
対照と比較して、大きな脂質変化を示すことを確認した。当該データは、患者のEV中の
大きな脂質変化が、病状に重要であることを示唆している。特定の理論に拘束されないが
、当該脂質変化は、本明細書中に記載される病的アルファ-シヌクレインを検出する方法
の高い感度および特異性の一部を構成すると思われる。というのも、アルファ-シヌクレ
イン凝集アッセイは、双方の改変(セラミド組成の変化、およびシヌクレインフォールデ
ィングを誘発する能力)に応答し得るからである。病状におけるセラミドの変化は、非常
に重要であり、患者の脳組織において観察される変化と類似する(DLB患者およびパー
キンソン病患者の双方について;データ未発表)。有利には、脂質組成の変化は、特にア
ルファシヌクレイノパチーに関して、より具体的にはPDおよび/またはDLBに関して
、疾患(または疾患のリスク)を検出、監視、かつ識別するためのバイオマーカーとして
使用することができる。
【0023】
一態様において、本発明は、対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性障
害を識別または監視するインビトロ方法であって、病的プリオン様タンパク質の存在につ
いて、対象由来の細胞外小胞サンプルをアッセイする工程を含み、病的プリオン様タンパ
ク質の存在は、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を示す、方法を提供する。
場合によっては、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルファシヌクレイ
ノパチーであり、病的プリオン様タンパク質は、アルファ-シヌクレインである。
【0024】
別の態様において、本発明は、対象がタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を
発症するリスクを判定するインビトロ方法であって、病的プリオン様タンパク質の存在に
ついて、対象由来の細胞外小胞サンプルをアッセイする工程を含み、病的プリオン様タン
パク質の存在は、対象がタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を発症する高いリ
スクを示す、方法を提供する。場合によっては、タンパク質ミスフォールディング神経変
性障害は、アルファシヌクレイノパチーであり、病的プリオン様タンパク質は、アルファ
-シヌクレインである。
【0025】
別の態様において、本発明は、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を患って
いる疑いがある、またはタンパク質ミスフォールディング神経変性障害の発症リスクが高
い対象において、病的プリオン様タンパク質の存在を判定するインビトロ方法を提供し、
当該方法は、以下の工程を含む:
(a)対象から細胞外小胞サンプルを用意する工程;および
(b)細胞外小胞サンプル中の病的プリオン様タンパク質の存在を判定する工程。場合
によっては、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルファシヌクレイノパ
チーであり、病的プリオン様タンパク質は、アルファ-シヌクレインである。
【0026】
別の態様において、本発明は、疾患がある対象について処置を選択するインビトロ方法
を提供し、当該方法は、対象由来の細胞外小胞サンプル中の病的プリオン様タンパク質の
存在を判定する工程を含み、病的プリオン様タンパク質の存在は、対象がタンパク質ミス
フォールディング神経変性障害用の処置から利益を得ることとなることを示す。場合によ
っては、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルファシヌクレイノパチー
であり、病的プリオン様タンパク質は、アルファ-シヌクレインである。
【0027】
適切には;
a)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、パーキンソン病、レビー小体型
認知症、および多系統萎縮症からなる群から選択されるアルファシヌクレイノパチーであ
り;病的プリオン様タンパク質は、病的アルファ-シヌクレインであり;
b)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、クロイツフェルト・ヤコブ病で
あり;病的プリオン様タンパク質は、プリオンタンパク質であり;
c)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルツハイマー病であり;病的
プリオン様タンパク質は、病的アミロイドベータであり;
d)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルツハイマー病、前頭側頭葉
変性症、進行性核上性麻痺、または皮質基底核変性症からなる群から選択されるタウオパ
チーであり;病的プリオン様タンパク質は、病的タウタンパク質であり;
e)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、ハンチントン病であり;病的プ
リオン様タンパク質は、病的ハンチンチンタンパク質(huntingtin prot
ein)であり;
f)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、運動ニューロン疾患であり;病
的プリオン様タンパク質は、病的スーパーオキシドジスムターゼ、c9orf72、およ
びバロシン、ならびに運動ニューロン疾患に関連する他のプリオン様タンパク質からなる
群から選択され;
g)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、デンタトパリドルブロルイジア
ン萎縮症であり;病的プリオン様タンパク質は、病的アトロフィンタンパク質であり;ま
たは
h)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、脊髄小脳失調症であり;病的プ
リオン様タンパク質は、病的アタキシンであり、場合によっては、病的アタキシンは、ア
タキシン-1、アタキシン-2、およびアタキシン-3からなる群から選択される。
【0028】
適切には、対象はヒトである。
【0029】
適切には、対象は、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を患っている、また
は患っている疑いがある。場合によっては、タンパク質ミスフォールディング神経変性障
害は、アルファシヌクレイノパチーである。
【0030】
適切には、対象は、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を患っている。場合
によっては、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルファシヌクレイノパ
チーである。
【0031】
適切には、対象は、初期段階のタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を患って
いる。場合によっては、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルファシヌ
クレイノパチーである。
【0032】
適切には、細胞外小胞サンプルは、CSF、血液、脳組織ホモジェネート、尿、唾液、
またはそれらの組合せから選択される生体サンプルから得られる。
【0033】
適切には、血液サンプルは、血漿、血清、血小板、およびバフィーコートからなる群か
ら選択される。
【0034】
適切には、細胞外小胞サンプルは、サイズ排除クロマトグラフィを使用して得られる。
【0035】
適切には、当該方法はさらに、以下の工程を含む:
i)対象由来の生体サンプルを用意する工程;および
ii)サイズ排除クロマトグラフィを使用して、生体サンプルから細胞外小胞サンプル
を得る工程。
【0036】
適切には、病的プリオン様タンパク質の存在は、RT-QuICまたはPMCAを使用
して検出される。場合によっては、病的プリオン様タンパク質はアルファ-シヌクレイン
である。
【0037】
別の態様において、本発明は、対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性
障害の識別もしくは監視のための、または対象におけるタンパク質ミスフォールディング
神経変性障害の発症リスクを判定するための、インビトロ細胞外小胞サンプルの使用を提
供する。場合によっては、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害は、アルファシ
ヌクレイノパチーである。
【0038】
適切には、当該使用は、本明細書中に記載される特徴のいずれかを含む。
【0039】
別の態様において、本発明は、対象においてアルファシヌクレイノパチーを識別または
監視するインビトロ方法を提供し、以下の工程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;
b)少なくとも1つのセラミド種の評価量を、少なくとも1つのセラミド種についての
参照値と比較する工程;
ここで、少なくとも1つのセラミド種についての参照値よりも大きい少なくとも1つの
セラミド種の評価量が、アルファシヌクレイノパチーを示す。
【0040】
別の態様において、本発明は、対象がアルファシヌクレイノパチーを発症するリスクを
判定するインビトロ方法を提供し、以下の工程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;
b)少なくとも1つのセラミド種の評価量を、少なくとも1つのセラミド種についての
参照値と比較する工程;
ここで、少なくとも1つのセラミド種についての参照値よりも大きい少なくとも1つの
セラミド種の評価量が、対象がアルファシヌクレイノパチーを発症するリスクが高いこと
を示す。
【0041】
別の態様において、本発明は、アルファシヌクレイノパチーを患っている疑いがある、
またはアルファシヌクレイノパチーの発症リスクが高い対象において、Cer 32:1
、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer37:1、Cer
38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1
、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)
、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド
種の量を評価するインビトロ方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含む:
(a)対象から細胞外小胞サンプルを用意する工程;および
(b)細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34
:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、C
er 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 4
1:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH
)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程。
【0042】
別の態様において、本発明は、疾患がある対象について処置を選択するインビトロ方法
を提供し、以下の工程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;
b)少なくとも1つのセラミド種の評価量を、少なくとも1つのセラミド種についての
参照値と比較する工程;
ここで、少なくとも1つのセラミド種についての参照値よりも大きい少なくとも1つの
セラミド種の評価量が、対象がアルファシヌクレイノパチー用の処置から利益を得ること
となることを示す。
【0043】
適切には、アルファシヌクレイノパチーは、パーキンソン病、レビー小体型認知症、お
よび多系統萎縮症からなる群から選択される。
【0044】
適切には、対象はヒトである。
【0045】
適切には、対象は、アルファシヌクレイノパチーを患っている、または患っている疑い
がある。
【0046】
適切には、対象は、アルファシヌクレイノパチーを患っている。
【0047】
適切には、対象は、初期段階のアルファシヌクレイノパチーを患っている。
【0048】
適切には、細胞外小胞サンプルは、CSF、血液、脳組織ホモジェネート、尿、唾液、
またはそれらの組合せから選択される生体サンプルから得られる。
【0049】
適切には、血液サンプルは、血漿、血清、血小板、およびバフィーコートからなる群か
ら選択される。
【0050】
適切には、細胞外小胞サンプルは、サイズ排除クロマトグラフィを使用して得られる。
【0051】
適切には、当該方法はさらに、以下の工程を含む:
i)対象由来の生体サンプルを用意する工程;および
ii)サイズ排除クロマトグラフィを使用して、生体サンプルから細胞外小胞サンプル
を得る工程。
【0052】
適切には、参照値は、対照サンプルから得られ、または所定の参照値である。
【0053】
別の態様において、本発明は、対象におけるアルファシヌクレイノパチーの識別もしく
は監視のための、または対象におけるアルファシヌクレイノパチーの発症リスクを判定す
るための、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2
、Cer37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer
39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2
、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択され
る少なくとも1つの細胞外小胞セラミド種の使用を提供する。
【0054】
適切には、当該使用は、本明細書中に記載される特徴のいずれかを含む。
【0055】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、文言「含む」および「含有する」、な
らびにそれらの変形は、「含むが、これに限定されない」を意味し、他の部分、付加物、
成分、整数、または工程を除外することが意図されない(そして除外しない)。
【0056】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈上別段の解釈が必要で
ない限り、複数形を包含する。特に、不定冠詞が用いられる場合、本明細書は、文脈上別
段の解釈が必要でない限り、複数性および単数性を意図すると理解されるべきである。
【0057】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載される特徴、整数、特性
、化合物、化学部分、または基は、本明細書中に記載される他のあらゆる態様、実施形態
、または実施例に、矛盾しない限り、適用可能であると理解されるべきである。
【0058】
本発明の種々の態様を、以下でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、以下でさらに説明される。
【0060】
【
図1】死後CSFから精製した細胞外小胞の代表的な電子顕微鏡画像を示す。
【
図2】小胞のサイズおよび濃度を示すTRPS分析結果の代表的な画像を示す。
【
図3】サンプル中のエキソソームマーカーの存在の、ウエスタンブロット分析および免疫電子顕微鏡観察の代表的な画像を示す。
【
図4】死後の脳脊髄液から精製した細胞外小胞の膜と関連するアルファ-シヌクレインの免疫金標識を示す。グラフは、アルファ-シヌクレインによって標識した種々の小胞サイズの存在量を表す。データは、全てのサンプルにわたってプールしたため、混合集団を表す。
【
図5】内部アルファ-シヌクレインの標識、およびアルファ-シヌクレインによって標識した種々の小胞サイズを示す。データは、全てのサンプルにわたってプールしたため、混合集団を表す。
【
図6】対照と比較した、アルファシヌクレイノパチー患者由来のEV中で確認されたセラミド種の変化を示す。ポジティブイオンモードデータ。
【
図7】対照と比較した、アルファシヌクレイノパチー患者由来のEV中で確認されたセラミド種の変化を示す。ネガティブイオンモードデータ。
【
図8】前頭皮質細胞外小胞の精製および分析を示す。
【
図9】精製した前頭皮質細胞外小胞マーカーのウエスタンブロット分析を示す。カルネキシンおよびポリンの不在は、画分の純度、ならびに細胞およびシナプス物質による夾雑の欠如を示す。LBD-レビー小体病。MT、WT-変異型、野生型。
【
図10】エキソソームマーカーのウエスタンブロット分析を示す。
【
図11】溶解した前頭皮質小胞に対するアルファ-シヌクレインELISAの結果を示す。
【
図12】プロセシング未処理の死後CSF、および精製した細胞外小胞を使用したRT-QUICの結果を示す。死後CSF由来小胞を使用することによって、本発明者らは、臨床症状が発生する前であっても、パーキンソン病の病理を検出することができた(指数線は、疾患の特徴の確実な検出を示す)(前駆シヌクレイノパチーを参照)。PD-パーキンソン病、DLB-レビー小体型認知症、PDD-パーキンソン病認知症。プロセシング未処理の腰椎CSFを使用するオリジナルの方法(Fairfoul et al.2016に提示)と比較して、アッセイの陽性シグナルをより早期に検出することができた。これは、アッセイをより速くする見込みがある(すなわち、120時間(現在のアッセイ時間)と比較して、48~80時間(追加の最適化なし))。
【
図13】パーキンソン病のプロセシング未処理の血漿、血小板、およびバフィーコートRT-QUICの結果を示す。
【
図14】精製した血小板小胞によるRT-QUICの結果を示す。
【
図15】精製した血漿小胞によるRT-QUICの結果を示す。
【
図16】ヒト尿から精製した細胞外小胞のTEM画像を示す。
【
図17】超遠心分離を使用してヒト死後CSFから精製した細胞外小胞のTEM画像を示す。
【
図18】レビー小体型認知症およびパーキンソン病のCSFサンプルについて、超遠心分離によって単離した細胞外小胞を使用したタンパク質凝集アッセイの結果を示す。測定は、115時間にわたって15分毎に行った。 PD-パーキンソン病、DLB-レビー小体型認知症、UC-超遠心分離。
【
図19】健康対照のサンプルについて、超遠心分離によって単離した細胞外小胞を使用したタンパク質凝集アッセイの結果を示す。C-対照、UC-超遠心分離。
【
図20】パーキンソン病認知症脳ホモジェネート、レビー小体型認知症前頭皮質細胞外小胞、および対照前頭皮質細胞外小胞を使用したタンパク質凝集アッセイの結果を示す。PDD-パーキンソン病認知症、DLB-レビー小体型認知症、C-対照。
【
図21】尿細胞外小胞分析の盲検化分析を示す。ドナーを以下のように臨床診断した:尿2-対照;尿4-PSP;尿5-MSA;尿6-PSP。これらのデータは、尿サンプルからアルファシヌクレイノパチーを明確に識別することができることを示す(尿5-MSAを参照。ここでは、双方の反復で、アルファ-シヌクレインタンパク質凝集アッセイにおいて、対照と比較して、陽性の結果が得られた)。尿サンプルは、臨床診断を受けたが神経病理学的診断をまだ実施していない、生きている患者から採取している。
図21に示す結果に基づいて、本発明者らは、尿4の患者において、少量のアルファ-シヌクレインの病状が存在すると疑っている。というのも、双方の反復が陽性であるが、シグナルは、MSA尿5と比較して、後に表れているからである。尿6は、反復の1つが陰性である(すなわち、反復が、一貫したパターンを示さない)ため、偽陽性の可能性がある。
【
図22】尿細胞外小胞の盲検化分析を示す。ドナーを以下のように臨床診断した:尿7-対照;尿9-PSP;尿10-PSP。尿サンプルは、臨床診断を受けたが神経病理学的診断をまだ実施していない、生きている患者から採取している。したがって、一部の対照は、実際には一部の病状があるが、まだ臨床症状を示していない可能性がある(特に、尿7を参照。ここでは、反復の1つが、アルファ-シヌクレインタンパク質凝集アッセイにおいて何らかの陽性シグナルを示した。これに対して、反復の1つが陰性である(すなわち、反復が、一貫したパターンを示さない)ため、これは偽陽性である可能性がある)。
【発明の詳細な説明】
【0061】
本発明者らは今般、驚くべきことに、PDまたはDLBの患者由来の細胞外小胞サンプ
ルにおける病的アルファ-シヌクレインの存在が、疾患(または疾患の発症リスク)を識
別または監視するのに信頼できるマーカーとして使用することができることを発見した。
また、PDおよびDLBの患者から得られる細胞外小胞の脂質組成が、対照の脂質組成(
特に、細胞外小胞膜のセラミド組成)とは大きく異なることを実証した。したがって、本
発明者らは、疾患を検出、監視、かつ診断する新規の手段を提供した。
【0062】
対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を識別または監視するイン
ビトロ方法であって、病的プリオン様タンパク質の存在について、対象由来の細胞外小胞
サンプルをアッセイする工程を含み、病的プリオン様タンパク質の存在は、タンパク質ミ
スフォールディング神経変性障害を示す、方法が本明細書で提供される。
【0063】
当業者にとって、EVサンプル中に存在する特定の病的プリオン様タンパク質が、特定
の(すなわち対応する)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を識別することは
明らかである。病的プリオン様タンパク質と、その対応するタンパク質ミスフォールディ
ング神経変性障害との関連は、当該技術分野において周知である。例として、EVサンプ
ル中に存在する特定の病的プリオン様タンパク質がアルファ-シヌクレインである場合、
これにより、特定の(すなわち対応する)タンパク質ミスフォールディング神経変性障害
が、アルファシヌクレイノパチー、例えばパーキンソン病またはレビー小体型認知症であ
ると識別される。特定の病的プリオン様タンパク質、およびその対応するタンパク質ミス
フォールディング神経変性障害の他の例が、本出願の全体にわたって示されている。これ
は、本明細書中に記載される全ての実施形態にあてはまる。
【0064】
また、対象がタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を発症するリスクを判定す
るインビトロ方法であって、病的プリオン様タンパク質の存在について、対象由来の細胞
外小胞サンプルをアッセイする工程を含み、病的プリオン様タンパク質の存在は、対象が
タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を発症する高いリスクを示す、方法が本明
細書中で提供される。
【0065】
適切なサンプルの分析からの、対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性
障害の識別は、特に症状の臨床評価および/または対象の神経物理学的評価等の他の診断
方法と併せて実行される場合に、容体の診断と等しい。したがって、フレーズ「タンパク
質ミスフォールディング神経変性障害の識別」(または相当語句)および「タンパク質ミ
スフォールディング神経変性障害の診断」(または相当語句)は、本明細書中で互換的に
使用される。
【0066】
対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性障害の経時的な監視は、疾患の
進行(例えば、病状または疾患症状の悪化)の、または(例えば、処置期間にわたる)病
状もしくは症状の改善の、可能な限り早期の識別に役立つ。そのような監視は、当然、経
時的に繰り返されるサンプルの採取を包含する。したがって、当該方法は、特定の対象に
ついて、1つまたは複数の時間間隔にて繰り返されてよく、その結果は、当該対象のタン
パク質ミスフォールディング神経変性障害の発生、進行、または改善を経時的に監視する
ために比較される。ここで、対象のEVサンプル中の病的プリオン様タンパク質の量の変
化が、対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性障害の進行の変化を示す。
【0067】
疾患の経時的な進行が、2つ以上の時間間隔の結果が比較された場合に検出される病的
プリオン様タンパク質の量の増大によって示され得る。言い換えると、当該方法が複数回
実行されれば、後の時間間隔にて検出される病的プリオン様タンパク質の量が、より早い
時間間隔にて検出される量よりも多い場合に、疾患の進行が示され得る。病的プリオン様
タンパク質の量の「増大」は、当該方法が同じ対象(および同等のEVサンプルタイプ)
に以前に(すなわち、より早い時間間隔にて)実行された場合に、病的プリオン様タンパ
ク質が検出されなかった(すなわち、検出可能なレベルにて存在しなかった)場合の、後
の時間間隔での病的プリオン様タンパク質の検出を包含する。
【0068】
疾患の進行を監視するのに適した時間間隔が、当業者によって容易に識別され得、そし
て監視されることとなる特定のタンパク質ミスフォールディング神経変性障害によって決
まることとなる。非限定的な例として、当該方法は、パーキンソン病の進行を監視する場
合、少なくとも6ヶ月毎、または少なくとも毎年、または少なくとも隔年で繰り返されて
もよい。
【0069】
病状または症状の(例えば、処置期間にわたる)改善が、2つ以上の時間間隔の結果が
比較された場合に検出される病的プリオン様タンパク質の量の減少によって示され得る。
言い換えると、当該方法が複数回実行されれば、後の時間間隔にて検出される病的プリオ
ン様タンパク質の量が、より早い時間間隔にて検出される量よりも少ない(すなわち、減
少している)場合に、病状の改善が示され得る。したがって、病的プリオン様タンパク質
の量の「減少」は、病的プリオン様タンパク質が、同じ対象(および同等のEVサンプル
タイプ)について、検出されなかった(すなわち、プリオン様タンパク質は、後の時間間
隔にて検出できなかった、または不在であった)、初期の時間間隔での病的プリオン様タ
ンパク質の検出に続く、後の時間間隔での当該方法の繰返しを包含する。
【0070】
病状または症状の(例えば、処置期間にわたる)改善はまた、(同等の期間にわたる処
置なしで観察された病的プリオン様タンパク質のレベルと比較した、または同等の対照と
比較した)経時的な病的プリオン様タンパク質のゆっくりとした増大、または経時的な病
的プリオン様タンパク質レベルの安定化によって示され得る。
【0071】
病状または症状の(例えば、対象の処置中の)改善を監視するのに適した時間間隔は、
当業者によって容易に識別され得、そして監視されることとなる特定のタンパク質ミスフ
ォールディング神経変性障害によって決まることとなる。非限定的な例として、当該方法
は、(例えば、パーキンソン病の対象の処置中に)パーキンソン病を監視する場合、少な
くとも6ヶ月毎、または少なくとも毎年、または少なくとも隔年で繰り返されてもよい。
【0072】
対象がタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を発症するリスクの判定は、疾患
の可能な限り早期の識別に役立つ。
これにより、疾患の進行の初期段階での早期の介入および/または処置の開始が可能と
なる。また、高リスクの個体(すなわち、疾患を発症する可能性が非常に高い、または可
能性がより高い個体)を監視して、処置または予防措置を、最も早い機会に実施できるよ
うにする手段を提供する。この文脈において、本発明者らは、本明細書中に記載される方
法を使用して、臨床症状が発生する前であっても、前駆アルファシヌクレイノパチーを首
尾よく検出することができることを示した。したがって、本明細書中に記載される方法は
、疾患(または疾患のリスク)の初期段階を検出、監視、かつ識別するのに使用すること
ができる。したがって、パーキンソン病等のアルファシヌクレイノパチー患者の早期臨床
評価のための、疾患の特徴を検出するより感度の高い手段を提供する。
【0073】
本明細書中に記載される方法は、対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変
性障害を識別もしくは監視する、または対象がタンパク質ミスフォールディング神経変性
障害を発症するリスクを判定する新規の手段を提供する。
【0074】
本明細書中で使用される「タンパク質ミスフォールディング障害」は、あるクラスの障
害(プロテイノパチー、プロテオパチー、タンパク質構造障害、またはタンパク質ミスフ
ォールディング疾患としても知られている)を指し、ここで、特定のタンパク質が、構造
的に異常となることによって、身体の細胞、組織、および臓器の機能を破壊する。典型的
には、当該病的タンパク質は、正常な構成にフォールドせず、このミスフォールド状態に
おいて、タンパク質は何らかの方法で毒性になる場合があり(毒性機能の獲得)、または
正常な機能を失う場合がある。
【0075】
本明細書中で使用される「タンパク質ミスフォールディング神経変性障害」は、神経系
の、特に脳内のニューロンの変性と関連するタンパク質ミスフォールディング障害のサブ
セットを指す。この障害群として、パーキンソン病(パーキンソン病認知症を含む)、レ
ビー小体型認知症、多系統萎縮症、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病、タ
ウオパチー(アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺、および皮質基底
核変性症等)、ハンチントン病、運動ニューロン疾患、デンタトパリドルブロルイジアン
萎縮症、脊髄小脳失調症、およびその他の多くが挙げられる(Salvadores e
t al.,2014)。これらのタンパク質ミスフォールディング神経変性障害毎に、
特定の病的プリオン様タンパク質が、疾患において中心的な役割を果たすことが確認され
た。
【0076】
例えば、アルファシヌクレイノパチーであるタンパク質ミスフォールディング神経変性
障害(例えば、パーキンソン病(パーキンソン病認知症を含む)、レビー小体型認知症、
および多系統萎縮症)について、病的プリオン様タンパク質は、病的アルファ-シヌクレ
インであり、これは、ヒトにおいて、NCBI GenBankまたはUniProt(
Gene ID:6622;Protein ID:P37840)を使用して識別する
ことができる。
【0077】
シヌクレイノパチーは、ニューロンおよびグリアの選択的集団内でのアルファ-シヌク
レインのフィブリル凝集体の沈着と関連する、一セットの神経変性障害である。当該沈着
物は、レビー小体(LB)等のニューロン体細胞内、またはパーキンソン病(PD)もし
くはレビー小体型認知症(DLB)等の疾患におけるジストロフィ性神経突起内、または
多系統萎縮症(MSA)におけるグリア細胞質封入体内で見出される。パーキンソン病、
レビー小体型認知症、および多系統萎縮症等のシヌクレイノパチーは、臨床的に明確に定
義されており、それらの詳細は、以下の参考文献内に見出すことができる:DLBについ
て、McKeith et al.2017;PDについて、Postuma et a
l.2015;MSAについて、Kim et al.2015。
【0078】
本明細書で使用される「病的アルファ-シヌクレイン」は、Gallea et al
.2014およびTuttle et al.2016に記載されているような、異常な
構造コンフォメーションを有するアルファ-シヌクレインタンパク質を指す。
本明細書中の他の場所で説明されているように、病的アルファ-シヌクレインは、ベー
タ-シートフィブリルに凝集する傾向があり、そして二量体および三量体の形成を開始し
てから、フィブリルとして沈着し、かつ凝集体として成熟する可溶性オリゴマーおよびプ
ロトフィブリルを形成する場合がある。したがって、病的アルファ-シヌクレインは、ア
ルファ-シヌクレイン凝集体/アルファ-シヌクレイン凝集の存在によって直接検出する
ことができる。当該タンパク質の凝集を検出するいくつかの方法が周知であり、immu
noEM、RT-QuIC、およびPMCAが挙げられる。
【0079】
更なる例として、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害がクロイツフェルト・
ヤコブ病である場合、病的プリオン様タンパク質は、病的プリオンタンパク質であり、こ
れは、ヒトにおいて、NCBI GenBankまたはUniProt(Gene ID
:5621;Protein ID:P04156)を使用して識別することができる。
本明細書中で使用される「病的プリオンタンパク質」は、Gallagher-Jone
s M et al.2018に記載されているような、異常な構造コンフォメーション
を有するプリオンタンパク質を指す。病的プリオンタンパク質は、凝集して感染性プリオ
ンを形成する傾向がある自己増殖性コンフォメーションにミスフォールドする。したがっ
て、病的プリオンタンパク質は、プリオンタンパク質凝集体/プリオンタンパク質凝集の
存在によって直接検出することができる。当該タンパク質の凝集を検出するいくつかの方
法が周知であり、immunoEM、RT-QuIC、およびPMCAが挙げられる。
【0080】
クロイツフェルト・ヤコブ病は臨床的に明確に定義されており、その詳細は、Zerr
et al.2002内に見出すことができる
【0081】
更なる例として、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害がアルツハイマー病で
ある場合、病的プリオン様タンパク質は、病的アミロイドベータであり、これは、ヒトに
おいて、NCBI GenBankまたはUniProt(Gene ID:351;P
rotein ID:P05067)を使用して識別することができる。本明細書で使用
される「病的アミロイドベータ」または「Aβ」は、アルツハイマー病患者の脳内に見出
されるアミロイド斑の主成分である36~43アミノ酸のペプチドを指す。当該ペプチド
は、ベータセクレターゼおよびガンマセクレターゼによって切断されてAβを生成するア
ミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来する。Aβ分子は凝集して、可撓性のある可
溶性オリゴマーを形成し、これは、神経細胞に対して毒性がある。アミロイドベータの構
造は、Schmidt et al.2015に記載されている。Aβは、Aβ凝集体/
Aβ凝集の存在によって直接検出することができる。当該タンパク質の凝集を検出するい
くつかの方法が周知であり、immunoEM、RT-QuIC、およびPMCAが挙げ
られる。
【0082】
アルツハイマー病は、臨床的に明確に定義されており、その詳細は、Desai et
al.2005;McKhann et al.2011;およびDubois et
al.2014において見出すことができる。
【0083】
更なる例として、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害がタウオパチー(例え
ば、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺、または皮質基底核変性症
)である場合、病的プリオン様タンパク質は、病的タウタンパク質であり、これは、ヒト
において、NCBI GenBankまたはUniProt(Gene ID:4137
;Protein ID:P10636)を使用して識別することができる。本明細書中
で使用される「病的タウタンパク質」は、Fitzpatrick et al.201
7に記載されているような、異常な構造コンフォメーションを有するタウタンパク質を指
す。病的タウタンパク質は、凝集する傾向がある自己増殖性コンフォメーションにミスフ
ォールドする。したがって、病的タウタンパク質は、タウタンパク質凝集体/タウタンパ
ク質凝集の存在によって直接検出することができる。当該タンパク質の凝集を検出するい
くつかの方法が周知であり、immunoEM、RT-QuIC、およびPMCAが挙げ
られる。
【0084】
アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺、または皮質基底核変性症等
のタウオパチーは、臨床的に明確に定義されており、その詳細は、例えば、Hoglin
ger GU et al.2017;Gil et al.,2010(前頭側頭葉変
性症について)、およびAlexander et al.,2014(皮質基底核変性
症について)において見出すことができる。
【0085】
更なる例として、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害がハンチントン病であ
る場合、病的プリオン様タンパク質は、病的ハンチンチンタンパク質であり、これは、ヒ
トにおいて、NCBI GenBankまたはUniProt(Gene ID:306
4;Protein ID:P42858)を使用して識別することができる。本明細書
中で使用される「病的ハンチンチンタンパク質」は、ハンチンチン遺伝子内の不安定な伸
長トリヌクレオチドリピートに起因して生成される異常な構造コンフォメーションを有す
るハンチンチンタンパク質を指し、これは、タンパク質生成物内のポリグルタミンリピー
トとして翻訳される(Isas et al.,2017に記載)。病的ハンチンチンタ
ンパク質は、凝集する傾向がある自己増殖性コンフォメーションにミスフォールドする。
病的ハンチンチンタンパク質は、ハンチンチンタンパク質凝集体/ハンチンチンタンパク
質凝集の存在によって直接検出することができる。当該タンパク質の凝集を検出するいく
つかの方法が周知であり、immunoEMが挙げられる。
【0086】
ハンチントン病は、臨床的に明確に定義されており、その詳細は、当業者に周知である
(例えば、Pagan et al.,2017を参照)。
【0087】
更なる例として、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害が運動ニューロン疾患
である場合、病的プリオン様タンパク質は、病的スーパーオキシドジスムターゼ(SOD
1)、c9orf72、およびバロシンからなる群から選択され、これらは、ヒトにおい
て、以下のNCBI GenBankまたはUniProt ID番号を使用して識別す
ることができる:SOD1(Gene ID:6647、Protein ID:P00
441);c9orf72(Gene ID:203228、Protein ID:Q
96LT7);バロシン(Gene ID:7415、Protein ID:P550
72)。本明細書中で使用される「病的スーパーオキシドジスムターゼ、c9orf72
、およびバロシン」は、以下の参考文献において記載されている異常な構造コンフォメー
ションを有するスーパーオキシドジスムターゼ、c9orf72、およびバロシンを指す
:SOD1:Sangwan et al.2017;c9orf72:Guo et
al.2018;およびバロシン:Basso et al.2013。病的スーパーオ
キシドジスムターゼ、c9orf72、およびバロシンは、凝集する傾向がある自己増殖
性コンフォメーションにミスフォールドする。病的スーパーオキシドジスムターゼ、c9
orf72、およびバロシンタンパク質は、スーパーオキシドジスムターゼ、c9orf
72、およびバロシンタンパク質の凝集体/スーパーオキシドジスムターゼ、c9orf
72、およびバロシンタンパク質の凝集の存在によって直接検出することができる。運動
ニューロン疾患の他の稀な形態が、当業者に知られている他のプリオン様タンパク質の凝
集によって引き起こされる。当該タンパク質の凝集を検出するいくつかの方法が周知であ
り、immunoEMが挙げられる。
【0088】
運動ニューロン疾患は、臨床的に明確に定義されており、その詳細は、当業者に周知で
ある(例えば、Traynor et al.,2000を参照)。
【0089】
更なる例として、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害がデンタトパリドルブ
ロルイジアン萎縮症である場合、病的プリオン様タンパク質は、病的アトロフィンタンパ
ク質であり、これは、ヒトにおいて、NCBI GenBankまたはUniProt(
Gene ID:1822;Protein ID:P54259)を使用して識別する
ことができる。本明細書中で使用される「病的アトロフィンタンパク質」は、Hinz
et al.2012に記載されている異常な構造コンフォメーションを有するアトロフ
ィンタンパク質を指す。病的アトロフィンタンパク質は、凝集する傾向がある自己増殖性
コンフォメーションにミスフォールドする。病的アトロフィンタンパク質は、アトロフィ
ンタンパク質凝集体/アトロフィンタンパク質凝集の存在によって直接検出することがで
きる。当該タンパク質の凝集を検出するいくつかの方法が周知であり、immunoEM
が挙げられる。
【0090】
デンタトパリドルブロルイジアン萎縮症は、臨床的に明確に定義されており、その詳細
は、当業者に周知である(例えば、Wardle et al.,2009を参照)。
【0091】
更なる例として、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害が脊髄小脳失調症であ
る場合、病的プリオン様タンパク質は、アタキシン-1、アタキシン-2、およびアタキ
シン-3等の病的アタキシンであり、これらは、ヒトにおいて、NCBI GenBan
kまたはUniprot(アタキシン1について(Gene ID:6310、Prot
ein ID:P54253);アタキシン2について(Gene ID:6311、P
rotein ID:Q99700);アタキシン3について(Gene ID:428
7、Protein ID:P54252))を使用して識別することができる。本明細
書中で使用される「病的アタキシン」は、Ruggeri et al.2015に記載
されている異常な構造コンフォメーションを有するアタキシンタンパク質を指す。病的ア
タキシンタンパク質は、凝集する傾向がある自己増殖性コンフォメーションにミスフォー
ルドする。病的アタキシンタンパク質は、アタキシンタンパク質凝集体/アタキシンタン
パク質凝集の存在によって直接検出することができる。当該タンパク質の凝集を検出する
いくつかの方法が周知であり、immunoEMが挙げられる。
【0092】
脊髄小脳失調症は、臨床的に明確に定義されており、その詳細は、当業者に周知である
(例えば、van de Warrenburg et al.,2014を参照)。
【0093】
本明細書で使用される用語「対象」は、哺乳動物を指す。したがって、対象は、例えば
、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモット等を指す。対象は、ヒトであってもよい。
対象がヒトである場合、対象は、本明細書中で患者と呼ぶ場合がある。用語「対象」、「
個体」、および「患者」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0094】
対象は、症候性であってもよいし(例えば、対象は、タンパク質ミスフォールディング
神経変性障害と関連する症状を示す)、対象は、無症候性であってもよい(例えば、対象
は、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害と関連する症状を示さないが、当該障
害と関連する軽度の生化学的変化を示す場合がある)。
【0095】
対象は、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害の症状があると診断される場合
もあるし、これを発症するリスクがある場合もあるし、この症状を示す場合もある。
【0096】
対象は、本明細書中に記載されるタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を患っ
ている場合もあるし、患っている疑いがある場合もある(例えば、症状もしくは病歴を示
す、またはこれらが示唆的である)。
【0097】
したがって、一部の例において、対象は、タンパク質ミスフォールディング神経変性障
害を患っている。特定の例において、対象は、初期段階のタンパク質ミスフォールディン
グ神経変性障害を患っている。疾患の初期段階の例として、対象がタンパク質ミスフォー
ルディング神経変性障害の前駆段階にある場合があり、ここでは疾患の初期症状はあるが
、疾患の診断に十分な症状はまだ現れていない。
【0098】
上述のように、これらの障害はそれぞれ、臨床的に明確に定義されているので、臨床診
断のための、または各障害と関連するリスク因子および症状(初期症状を含む)を識別す
るための少なくとも1つの手段が、当業者に周知である。
【0099】
本明細書中に記載される方法は、対象由来の細胞外小胞サンプルを提供、取得、アッセ
イ、かつ/または分析する工程を含む。
【0100】
細胞外小胞(EV)サンプルは、対象の適切なあらゆる生体サンプルから得ることがで
きる。本明細書中に記載される方法は、(例えば、生検、血液サンプルの取出し、尿また
は唾液のサンプリング等によって)対象から生体サンプルを得る工程を含んでよい。対象
から生体サンプル(例えば、血液サンプル)を得る方法は周知であり、例えば、瀉血に使
用される確立された技術が挙げられる。
【0101】
一般的に、記載される方法は、対象から既に得られているサンプルを使用して実行され
るインビトロ方法である(すなわち、サンプルは、当該方法のために提供され、対象から
サンプルを得るために実行される工程は、当該方法の一部として含まれない)。
【0102】
本明細書中で使用される「生体サンプル」または「サンプル」は、対象から得られる、
または対象に由来するサンプルを指す。本明細書中に記載される目的のために、サンプル
は、組織サンプル(例えば、脳生検等の生検)であってもよいし、液体サンプルであって
もよい。適切なサンプルとして、脳脊髄液(CSF)、血液(全血、またはその成分、例
えば、血漿、血清、血小板、バフィーコート、もしくはそれらの組合せ)、脳組織ホモジ
ェネート、尿、唾液、または上記のあらゆる組合せが挙げられる。なお、これらのサンプ
ルはそれぞれ、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を検出するのに有用な、ま
たは潜在的に有用なサンプルとして示されてきた(例えば;Loov et al.,2
016;Mollenhauer et al.,2011;Danzer et al
.,2012;およびLuk et al.,2016参照)。対象からこれらのサンプ
ルをそれぞれ得る(または、例えば、血漿、血小板、血清、バフィーコート等の血液成分
を全血から単離する)方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書中で言及され
る適切な生体サンプルを得るのにルーチンで使用することができる。
【0103】
本明細書中に記載される方法は、対象の生体サンプルから得られる細胞外小胞(EV)
サンプルの使用に関する。当該方法は、生体サンプルから細胞外小胞サンプルを得る工程
を含んでよい。これ以外にも、当該方法は、当該方法に用意されるEVサンプルに実行さ
れてもよく、当該方法の工程それ自体は、生体サンプルから細胞外小胞を得る(例えば、
精製、単離、または富化する)工程を含まない。
【0104】
EVサンプルは、当該技術分野において知られているEVを得る適切な方法のいずれか
1つまたは複数によって(方法の一部として、または方法を開始する前に)得られてもよ
い。EVサンプルを得るのに適した方法の例が、Lobb et al.,2015;お
よびBoing et al.,2014において要約されている。そこで記載されてい
る適切な方法として、分画遠心分離、密度勾配超遠心分離、およびサイズ排除クロマトグ
ラフィが挙げられる。
【0105】
したがって、一例において、本明細書中に記載される方法は、以下の工程を含む:
i)対象由来の生体サンプルを用意する工程;および
ii)サイズ排除クロマトグラフィを使用して、生体サンプルから細胞外小胞サンプル
を得る工程。次に、細胞外小胞サンプルを、本明細書中の他の場所に記載されているよう
に、病的プリオン様タンパク質の存在についてアッセイする。
【0106】
本発明者らは、有利には、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用して、脳組織
ホモジェネート、CSF、血漿、または血小板サンプル等の適切な生体サンプルから、E
Vサンプルを得ることができることを確認した。サイズ排除クロマトグラフィは、EVを
単離する最も広く使用されている方法である分画遠心分離および密度勾配超遠心分離に勝
る、いくつかの利点がある。Boing et al.,2014において考察されてい
るように、SECでは、タンパク質複合体が形成されたり小胞が凝集するリスクがない。
さらに、血漿の高粘度は、分画遠心分離によって単離される小胞の回収に影響を与えるが
、SECによる小胞の回収には影響を与えない。密度勾配超遠心分離と比較して、SEC
は、生理学的浸透圧および生理学的粘度を有するバッファーと適合し、小胞の生物学的特
性は、SECによる分離後も影響を受けていないように思われる。さらに、SECは、コ
レステロール等の、密度が重複する夾雑物の分離を可能にする(これは、密度勾配超遠心
分離を使用して可能ではない)。
【0107】
SECは、サイズに基づいて材料を分離する。例えば、細孔の直径が約75nmであり
(Boing et al.,2014にレビュー)、ビーズを通るパスが曲がりくねっ
ている、カラム内のセファロースビーズを使用してもよい。パスの長さが長くなることに
起因して、ビーズに入ることができる粒子は、遅くなる。理論的には、細孔径よりも大き
い(例えば、この例では75nmよりも大きい)粒子は全て、ビーズに入ることができず
、空隙容量流体と共に移動するだけである。この細孔サイズのセファロース(例えば、S
epharose CL-2B)を使用して、当該方法は、(EMによって確認して)直
径が70nm以上のEVを、サンプル中のより小さな夾雑物から分離するのに使用するこ
とができることが確認された。細孔がより小さなビーズを使用して、より小さなサイズの
小胞を単離してもよい(ただし、夾雑の増大が付随する可能性がある)。したがって、ビ
ーズの細孔サイズ(ならびにカラムの高さ、カラムの直径、およびサンプルの容量)は、
必要とされる具体的な目的に合わせて調整/最適化されてよい。
【0108】
サイズ排除クロマトグラフィの適切なあらゆる方法論を使用して、本明細書中に記載さ
れるEVサンプルを得ることができる。適切な方法論の詳細を、非限定的な例として以下
に記載する。
【0109】
注目する生体サンプル(例えば、CSF、血漿、血小板)は、フレッシュであっても、
冷蔵されていても、凍結されていてもよい。凍結されている場合、生体サンプルは、サイ
ズ排除クロマトグラフィの前に、例えば氷上で、解凍されてもよい。
【0110】
生体サンプルが組織サンプル(フレッシュ、冷蔵、凍結、または解凍)であれば、サイ
ズ排除クロマトグラフィの前にホモジェナイズされてもよい。ホモジェナイゼーションに
適したプロトコルの詳細が、以下の実施例のセクションに記載されている。
【0111】
生体サンプルは、サイズ排除クロマトグラフィの前に、(例えば、サンプル中の物質が
溶液中に入る、または溶液内に留まるように促すために)ボルテックスされてもよい。
【0112】
生体サンプルは、遠心分離によってプレクリアリングされてよく、例えば、CSFにつ
いて、プレクリアリングは、1500g、3000g、および10,000gの3つの連
続工程を含み、各工程の長さは、典型的に10分であり;血漿について、プレクリアリン
グは、1500g、3000g、および3000gの3つの連続工程を含み、各工程の長
さは、典型的に10分である。各工程後、上清(液体部分)が保持されて、次の工程に使
用される。
【0113】
典型的な市販のSECカラムは、最大または最適な液体ローディング容量を有する。プ
レクリアリングされた生体サンプル(すなわち、プレクリアリング工程の最後に存在する
上清)は、容量が、SECカラムの最大または最適ローディング容量よりも大きければ、
サンプルは、最適または最大ローディング容量が得られるまで、適切なあらゆる手段(例
えば、VivaSpin遠心濃縮器(Sartorius))を使用して濃縮されてもよ
い。例えば、発明者らは、約500μlのサンプルをSECカラム上にロードした。した
がって、500μlを超える、プレクリアリングされたサンプルが入手可能であった場合
には、本発明者らは、SECカラム上にロードする前に、VivaSpin遠心濃縮器(
Sartorius)を使用して、サンプルを約500μlに濃縮した。
【0114】
次に、プレクリアリングされた(かつ、場合によっては濃縮された)サンプルは、メー
カーの説明書に従って、適切なSECカラム上にロードされてもよい。適切なあらゆるS
ECカラムが使用されてよい。例として、本明細書中でCSFサンプルおよび血漿サンプ
ルに使用されるqEV(Izon Science)標準500μl SECカラムにつ
いて、本発明者らは、各500μlのプレクリアリングされたサンプルを別々のカラム上
にロードして、PBSを使用して溶出した。メーカーの説明書に従えば、最初の6x50
0μl画分(合計3mlの画分として収集)は空隙容量であり、EVは、画分7、8、お
よび9内に含有されている。この例では、3つのEV画分は全て、1本のチューブに収集
されてもよい。
【0115】
EVサンプルは、場合によっては、SECの後に濃縮されてもよい。EVサンプルを濃
縮するのに適したあらゆる方法論が使用されてよい。非限定的な例として、本発明者らは
、VivaSpin2(Sartorius)を使用して、(約1500μlの)EV画
分を500μlに濃縮した。
【0116】
EVサンプルは、直ぐにアッセイ(または分析)されてもよいし、適切な方法で保存さ
れてもよく、例えば、-80℃にて凍結保存されてもよい。
【0117】
本明細書中の他の場所に記載されているように、EVサンプルは、生体サンプルから得
られる。これは、EVが富化された(すなわち、EVの濃度が、生成元の生体サンプル(
例えば、CSF、血液、尿、血漿)中のEVの濃度と比較して、より高い)プロセシング
済みサンプルである。この文脈において、「富化された」または「富化」は、生体サンプ
ル内に含有されるEVの割合が、サンプルの他の成分と比較して増大しているサンプルま
たはプロセスを指す。富化は、サンプルのプロセシング前後のEVの数を比較することに
よって測定されてもよく、サンプルの他の成分と比較したEVの相対数のあらゆる増大が
、富化とみなされる。富化および/または純度は、EVサンプルが生成された生体サンプ
ル(例えば、プロセシング未処理のサンプル、またはプレクリアリングされたサンプル)
と比較して、濃度換算で測定されてもよく、EVの濃度は、生体サンプル(例えば、プロ
セシング未処理のサンプル、またはプレクリアリングされたサンプル)中のEVの濃度よ
りも、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、
50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または9
5%以上高い。富化および/または純度は、EV分子数換算で測定されてもよく、サンプ
ルは、EVサンプルが生成された生体サンプル(例えば、プロセシング未処理のサンプル
、またはプレクリアリングされたサンプル)と比較して、EV中に、約、または少なくと
も約2x、3x、4x、5x、10x、15x、20x、25x、30x、35x、40
x、45x、50x、55x、60x、65x、70x、75x、80x、85x、90
x、95x、100x、110x、120x、130x、140x、150x、160x
、170x、180x、190x、200x、210x、220x、230x、240x
、250x、260x、270x、280x、290x、300x、325x、350x
、375x、400x、425x、450x、475x、500x、525x、550x
、575x、600x、625x、650x、675x、700x、725x、750x
、775x、800x、825x、850x、875x、900x、925x、950x
、975x、1000x、1100x、1200x、1300x、1400x、1500
x、1600x、1700x、1800x、1900x、2000x(倍と同じ)、そし
てそれらの中で導き出せる全て範囲で、富化される。
【0118】
富化のレベルは、EMおよび調整可能な抵抗パルスセンシング(TRPS)を使用して
求めることができる。
【0119】
EVサンプル(言い換えると、EVが富化されたサンプル)は、100%純粋な細胞外
小胞である必要はない。
【0120】
好ましくは、EVサンプルは、最小量の夾雑細胞内容物または夾雑細胞外内容物(例え
ば、EVと結合していない細胞または細胞外のタンパク質、脂質、炭水化物、リポタンパ
ク質)を有する。言い換えると、EVサンプルは、主にEVで構成され得る。この文脈で
は、「最小量」は、10%(濃度)未満の夾雑物、5%(濃度)未満、2%未満、1%未
満、0.5%未満、0.25%未満、0.1%未満等の夾雑物を含んでもよい。夾雑レベ
ルは、0%である必要はない。夾雑レベルは、EMを使用して求めることができる。
【0121】
EVサンプルは、実質的に純粋なEVを含有する単離されたサンプルであってもよい。
単離されたサンプルは、あらゆるEV含有生体サンプルから単離されてもよい。実質的に
純粋なEVを含有する単離されたサンプルを指す場合の用語「実質的に純粋な」または「
実質的な純粋」は、集団内のEVのパーセンテージが、(例えば、対象の組織または血流
内で)EVサンプルが生成された生体サンプル(例えば、プロセシング未処理のサンプル
、またはプレクリアリングされたサンプル)内で見出されるものよりも大幅に高いことを
意味する。典型的には、実質的に純粋なEVを含有する単離されたサンプル中のEVのパ
ーセンテージは、総サンプルの少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、7
0%、75%、より好ましくは少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、
97%、98%、または99%である。
【0122】
細胞外小胞は、当該技術分野において明確に特徴付けられており、そして明確に定義さ
れた意味を有する(Andaloussi et al.,2013にレビュー)。細胞
外小胞は、いくつかの体液から単離されてきた。細胞外小胞は、幹細胞の維持、免疫監視
、および血液凝固が挙げられる生理学的プロセスの調節において、重要な役割を果たすこ
とが示されてきた。また、細胞外小胞は、いくつかの疾患の基礎となる病理において、重
要な役割を果たすことが示されてきた。
【0123】
シナプス小胞とは対照的に、細胞外小胞は、ニューロンから無傷で放出されて、エンド
ソームに由来する多胞体(MVB)から落とされ(shed)得、または原形質膜から直
接芽を出し(bud out)得る。細胞外空間に放出されると、内細胞膜から形成され
たか外細胞膜から形成されたかに応じて、エキソソームまたはエクトソーム(または微小
胞)と呼ばれ、そしてエンドサイトーシスまたは融合を介して他の細胞によって取り込ま
れる。
【0124】
細胞外小胞は、その細胞起源、生物学的機能に従って、またはその生合成に基づいて分
類される(Andaloussi et al.,2013にレビュー)。生合成によっ
て決定される細胞外小胞の3つの主要なクラスは、エキソソーム、微小胞、およびアポト
ーシス小体であり、最初の2つは、生体サンプル内(故に、それに由来するEVサンプル
内)で最も支配的である。EVマーカーが、当該技術分野において周知である。エキソソ
ームマーカーの例として、テトラスパニン(TSPAN29およびTSPAN30等)、
ESCRTコンポーネント、PDCD6IP、TSG101、フロチリン、およびMFG
E8が挙げられる。微小胞マーカーの例として、インテグリン、セレクチン、およびCD
40リガンドが挙げられる。
【0125】
最近の進歩にもかかわらず、用語「エキソソーム」および「微小胞」は、公開されてい
る多くの研究中で、互換的に使用されてきた。本明細書では、用語「細胞外小胞」が、双
方の小胞タイプを指すのに使用されている。
【0126】
本明細書中に記載される方法は、病的プリオン様タンパク質の存在について、対象由来
の細胞外小胞サンプルをアッセイする工程を含む。
【0127】
病的プリオン様タンパク質を検出するのに使用されるアッセイは、そのような検出に適
した、当業者に知られているあらゆる種類のものであってよい。適切には、病的プリオン
様タンパク質を検出するのに使用されるアッセイは、(例えば、プリオン様タンパク質の
凝集速度を経時的に測定することによって、または、サンプル中の凝集したプリオン様タ
ンパク質の存在を判定することによって、もしくはその量を測定することによって)プリ
オン様タンパク質の凝集を検出することができる。当該アッセイは、(例えば、プリオン
様タンパク質の凝集速度の経時的測定によって、または、サンプル中の凝集したプリオン
様タンパク質の存在の判定、もしくはその量の測定によって)検出された病的プリオン様
タンパク質の、参照レベルとの比較を可能にし得る。参照レベルは、対照サンプルから得
られてもよいし、所定の参照レベルであってもよい。対照サンプルまたは所定の参照レベ
ルは、(当該方法が機能していることを確認するための)陽性対照または所定の陽性参照
レベルであってもよいし、(陰性対象または所定の陰性参照レベルを超える/上回る病的
プリオン様タンパク質のあらゆる陽性シグナルまたは検出が、対象のEVサンプル中の病
的プリオン様タンパク質の存在を示すような)陰性対象または所定の陰性参照レベルであ
ってもよい。
immunoEM、RT‐QuIC、およびPMCAが挙げられるがこれらに限定され
ない、適切な種々のアッセイタイプが当業者に知られている。これらのアッセイのそれぞ
れについての詳細な方法論が、Fairfoul et al.,2016およびAta
rashi et al.,2011(RT-QuICについて);ならびにHerva
et al.,2014、Gonzalez-Montalban et al.,2
011、およびSalvadore et al.,2014(PMCAについて)から
わかるように、当該技術分野において十分に確立されている。
特定の例において、Fairfoul et al.,2016のRT-QuIC法を
使用して、本明細書中に記載されるEVサンプル中の病的プリオン様タンパク質の存在に
ついて、特にEVサンプル(CSF、脳組織ホモジェネート、血漿、血清、血小板、また
はバフィーコートから選択される生体サンプルから得られるEVサンプル等)中の病的ア
ルファ-シヌクレインの存在についてアッセイする。
【0128】
上記のアッセイ(ならびに、特に先で参照した論文に記載されているRT-QuIC法
およびPMCA法)は、対象のEVサンプル中のアルファ-シヌクレイン以外の病的プリ
オン様タンパク質の存在を判定して、対応するタンパク質ミスフォールディング神経変性
障害(すなわち、測定される病的プリオン様タンパク質の存在と対応するタンパク質ミス
フォールディング神経変性障害)を発症する等のリスクを識別、監視、判定するするよう
に適合されてもよい。異なる病的プリオン様タンパク質(およびその対応するタンパク質
ミスフォールディング神経変性障害)の例が、先で詳細に説明されている。
【0129】
したがって、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を患っている疑いがある、
またはタンパク質ミスフォールディング神経変性障害の発症リスクが高い対象において、
病的プリオン様タンパク質の存在を判定するインビトロ方法も提供され、当該方法は、以
下の工程を含む:
(a)対象から細胞外小胞サンプルを用意する工程;および
(b)細胞外小胞サンプル中の病的プリオン様タンパク質の存在を判定する工程。
【0130】
病的プリオン様タンパク質の存在は、先で詳細に説明されるアッセイのいずれかを使用
して判定することができる。
【0131】
細胞外小胞サンプルは、先で詳細に説明される方法のいずれかを使用して用意または取
得することができる。
【0132】
適切な対象、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明されてきた
。
【0133】
疾患がある対象について処置を選択する方法も提供され、当該方法は、対象由来の細胞
外小胞サンプル中の病的プリオン様タンパク質の存在を判定する工程を含み、病的プリオ
ン様タンパク質の存在は、対象がタンパク質ミスフォールディング神経変性障害用の処置
から利益を得ることとなることを示す。
【0134】
当該方法は、インビトロ方法であってもよい。
【0135】
病的プリオン様タンパク質の存在は、先で詳細に説明されるアッセイのいずれかを使用
して判定することができる。
【0136】
細胞外小胞サンプルは、先で詳細に説明される方法のいずれかを使用して用意または取
得することができる。
【0137】
適切な対象、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明されてきた
。
【0138】
当該方法はさらに、病的プリオン様タンパク質が、対象由来のEVサンプル中に存在す
るならば、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害用の処置を対象に施す工程を含
んでもよい。
【0139】
処置のタイプは、存在する特定の病的プリオン様タンパク質(故に、対象の対応する、
すなわち、対象が患っている、患っている疑いがある、発症するリスクがある、または発
症するリスクがある疑いがあるタンパク質ミスフォールディング神経変性障害)に応じて
変わることとなる。
【0140】
例えば、病的アルファ-シヌクレインタンパク質が存在すると判定され、そして対象が
、アルファシヌクレイノパチー、例えば、パーキンソン病、レビー小体型認知症、または
多系統萎縮症を患っている、患っている疑いがある、患うリスクがある、または患うリス
クがある疑いがあれば、当該対象は、例えばコリンエステラーゼ阻害剤(DLBについて
);レボドパ(PDについて)による処置から利益を得ることができる。したがって、当
該方法は、コリンエステラーゼ阻害剤(DLBについて);レボドパ(PDについて)を
対象に投与する工程を含んでよい。
【0141】
更なる例として、病的プリオン様タンパク質が存在すると判定され、そして対象が、ク
ロイツフェルト・ヤコブ病を患っている、患っている疑いがある、患うリスクがある、ま
たは患うリスクがある疑いがあれば、当該対象は、示される症状を軽減する化合物による
処置/示される症状を軽減する処置から利益を得ることができる。したがって、当該方法
は、適切な処置化合物を対象に投与する工程を含んでよい。適切な化合物が、当業者に周
知であり、そして対象の具体的な症状によって決まる。
【0142】
更なる例として、病的アミロイドベータタンパク質が存在すると判定され、そして対象
が、アルツハイマー病を患っている、患っている疑いがある、患うリスクがある、または
患うリスクがある疑いがあれば、当該対象は、コリンエステラーゼ阻害剤による処置から
利益を得ることができる。したがって、当該方法は、コリンエステラーゼ阻害剤を対象に
投与する工程を含んでよい。
【0143】
更なる例として、病的タウタンパク質が存在すると判定され、そして対象が、タウオパ
チー(例えば、アルツハイマー病、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺、または皮質基
底核変性症)を患っている、患っている疑いがある、患うリスクがある、または患うリス
クがある疑いがあれば、対象は、示される症状を緩和する化合物/レジメン(例えば、抗
鬱薬または選択的セロトニン再取込み阻害剤(行動症状を処置する)、コリンエステラー
ゼ阻害剤(精神能力を向上させる)、またはレボドパ(動きに関連する疾患症状について
))による処置から利益を得ることができる。したがって、当該方法は、これらの適切な
処置のいずれか1つまたは複数を対象に施す工程を含んでよい。他の適切な処置が、当業
者に周知であり、そして対象の具体的な症状によって決まる。
【0144】
更なる例として、病的ハンチンチンタンパク質が存在すると判定され、そして対象は、
ハンチントン病を患っている、患っている疑いがある、患うリスクがある、または患うリ
スクがある疑いがあれば、対象は、示される症状を緩和する化合物/レジメン(例えば、
適切な処置として、運動障害を軽減する薬物(例えばテトラベナジン);精神症状を緩和
する抗鬱薬、抗精神病薬、および気分安定薬)による処置から利益を得ることができる。
したがって、当該方法は、上述の適切な処置のいずれか1つまたは複数を対象に施す工程
を含んでよい。他の適切な処置が、当業者に周知であり、そして対象の具体的な症状によ
って決まる。
【0145】
更なる例として、病的スーパーオキシドジスムターゼ、c9orf72、またはバロシ
ンタンパク質、および運動ニューロン疾患と関連する他のプリオン様タンパク質が存在す
ると判定され、そして対象は、運動ニューロン疾患を患っている、患っている疑いがある
、患うリスクがある、または患うリスクがある疑いがあれば、対象は、示される症状を緩
和する化合物/レジメン(例えば、リルゾールおよびラディカバ(FDA承認薬);また
は症状を緩和する他の薬物、例えば、抗鬱薬、非ステロイド性抗炎症薬)による処置から
利益を得ることができる。したがって、当該方法は、上述の適切な処置の1つまたは複数
を対象に施す工程を含んでよい。他の適切な処置が、当業者に周知であり、そして対象の
具体的な症状によって決まる。
【0146】
更なる例として、病的アトロフィンタンパク質が存在すると判定され、そして対象が、
デンタトパリドルブロルイジアン萎縮症を患っている、患っている疑いがある、患うリス
クがある、または患うリスクがある疑いがあれば、対象は、示される症状を緩和する化合
物/レジメン(例えば、抗てんかん薬、向精神薬、またはリルゾール)による処置から利
益を得ることができる。したがって、当該方法は、上述の適切な処置の1つまたは複数を
対象に施す工程を含んでよい。他の適切な処置が、当業者に周知であり、そして対象の具
体的な症状によって決まる。
【0147】
更なる例として、病的アタキシンタンパク質(アタキシン-1、アタキシン-2、アタ
キシン-3等)が存在すると判定され、そして対象が、脊髄小脳失調症を患っている、患
っている疑いがある、患うリスクがある、または患うリスクがある疑いがあれば、対象は
、示される症状を緩和する化合物/レジメン(例えば、理学療法、またはリルゾール)に
よる処置から利益を得ることができる。したがって、当該方法は、上述の適切な処置の1
つまたは複数を対象に施す工程を含んでよい。他の適切な処置が、当業者に周知であり、
そして対象の具体的な症状によって決まる。
【0148】
また、対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性障害の識別もしくは監視
のための、または対象におけるタンパク質ミスフォールディング神経変性障害の発症リス
クを判定するためのインビトロ細胞外小胞サンプルの使用が提供される。
【0149】
適切な対象、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明されてきた
。
【0150】
また、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害用の処置レジメンの治療効果を判
定するインビトロ方法が提供され、当該方法は、以下の工程を含む:
a)病的プリオン様タンパク質の存在について、対象由来の細胞外小胞サンプルをアッ
セイする工程;
b)処置後に対象から得られる細胞外小胞サンプルを使用して、工程a)を、ある時間
間隔で(for a time interval)繰り返す工程;および
c)工程a)において判定された病的プリオン様タンパク質のレベルを、工程b)にお
いて判定されたレベルと比較して、処置後に病的プリオン様タンパク質のレベルが低下し
ていれば、処置レジメンが治療効果を有すると確認する工程。
【0151】
適切な対象、処置、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明され
てきた。
【0152】
また、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害用の所定の処置レジメンの、対象
の遵守または厳守(adherence)を判定するインビトロ方法が提供され、当該方
法は、以下の工程を含む:
a)病的プリオン様タンパク質の存在について、対象由来の細胞外小胞サンプルをアッ
セイする工程;
b)処置レジメンの所定の開始後に対象から得られる細胞外小胞サンプルを使用して、
工程a)を繰り返す工程;および
c)工程a)において判定された病的プリオン様タンパク質のレベルを、工程b)にお
いて判定されたレベルと比較して、処置後に病的プリオン様タンパク質のレベルが低下し
ていれば、対象は所定の治療レジメンを順守または厳守してきたと確認する工程。
【0153】
適切な対象、処置、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明され
てきた。
【0154】
本発明者らはまた、PD患者またはDLB患者のCSFサンプルから得られるEVが、
対照と比較して、大きな脂質変化を示すことを確認した。当該データは、患者のEV中の
大きな脂質変化が、病状に重要であることを示唆している。特定の理論に拘束されないが
、当該脂質変化は、本明細書中に記載される病的アルファ-シヌクレインを検出する方法
の高い感度および特異性の一部を構成すると思われる。というのも、アルファ-シヌクレ
イン凝集アッセイは、双方の改変(セラミドおよびシヌクレインフォールディング)に応
答し得るからである。病状におけるセラミドの変化は、非常に重要であり、患者の脳組織
において観察される変化と類似する(PD患者およびDLB患者の双方について;データ
未発表)。有利には、脂質組成の変化は、特にアルファシヌクレイノパチーに関して、よ
り具体的にはPDおよび/またはDLBに関して、疾患(または疾患のリスク)を検出、
監視、かつ識別するためのバイオマーカーとして使用することができる。
【0155】
したがって、対象においてアルファシヌクレイノパチーを識別または監視するインビト
ロ方法が提供され、当該方法は、以下の工程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;なら
びに
b)少なくとも1つのセラミド種の評価量を、少なくとも1つのセラミド種についての
参照値と比較する工程;
ここで、少なくとも1つのセラミド種についての参照値よりも大きい少なくとも1つの
セラミド種の評価量が、アルファシヌクレイノパチーを示す。
【0156】
また、対象がアルファシヌクレイノパチーを発症するリスクを判定するインビトロ方法
が提供され、以下の工程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;
b)少なくとも1つのセラミド種の評価量を、少なくとも1つのセラミド種についての
参照値と比較する工程;
ここで、少なくとも1つのセラミド種についての参照値よりも大きい少なくとも1つの
セラミド種の評価量が、対象がアルファシヌクレイノパチーを発症するリスクが高いこと
を示す。
【0157】
本明細書中の他の場所で説明されているように、アルファシヌクレイノパチーは、パー
キンソン病(パーキンソン病認知症を含む)、レビー小体型認知症、および多系統萎縮症
からなる群から選択されてよい。特に、アルファシヌクレイノパチーは、パーキンソン病
であってもレビー小体型認知症であってもよい。
【0158】
本明細書中の他の場所で説明されているように、当該方法はさらに、以下の工程を含ん
でもよい:
i)対象由来の生体サンプルを用意する工程;および
ii)サイズ排除クロマトグラフィを使用して、生体サンプルから細胞外小胞サンプル
を得る工程。
【0159】
適切な対象、細胞外小胞サンプル、生体サンプル、細胞外小胞サンプルを得る方法、専
門用語、および特徴の組合せまたは順列が、本明細書中の他の場所で説明されており、そ
して本明細書中に記載されるセラミド態様に等しくあてはまる。
【0160】
上記のセラミド種の少なくとも1つの量を評価するのに適した方法が、当該技術分野に
おいて周知である。非限定的な例として、以下の実施例のセクションで使用される方法が
挙げられる;すなわち、例えば、高解像度のThermo Orbitrap Exac
tiveシステムをポジティブイオンモードおよびネガティブイオンモードで使用する(
例えば、C18カラムおよびHILICカラムを使用する)、液体クロマトグラフィ質量
分析(LC-MS)。他の適切な方法が、当業者に周知である。
【0161】
少なくとも1つのセラミド種の評価量は、同セラミド種についての参照値と比較される
。例えば、Cer 32:1およびCer 33:1の量が、当該方法の工程a)におい
て評価されれば、当該方法の工程b)は、工程a)由来のCer 32:1の量を、Ce
r 32:1についての参照値と比較し;そして工程a)由来のCer 33:1の量を
、Cer 33:1についての参照値と比較する等の工程を含む。
【0162】
当該方法は、比較工程(工程b))の間、工程a)における評価量が、対応する参照値
よりも大きい場合に、対象におけるアルファシヌクレイノパチーを示す。
【0163】
当該方法は、上記のセラミド種の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なく
とも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少
なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14種、
または15種全ての量を評価してもよい。
【0164】
複数のセラミド種が、当該方法内で評価されてもよい。この例では、試験したセラミド
種の少なくとも1つ(場合によっては全て)の量が、これらのセラミド種についての参照
値よりも大きければ、アルファシヌクレイノパチー(または対象がアルファシヌクレイノ
パチーを発症する高いリスク)を示す。例として、上記のセラミド種の少なくとも1、少
なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7
、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少
なくとも13、少なくとも14種、または15種全ての量が、これらのセラミド種につい
ての参照値よりも大きければ、アルファシヌクレイノパチー(または対象がアルファシヌ
クレイノパチーを発症する高いリスク)を示す。
【0165】
参照値は、対照サンプルから得られてもよいし、所定の参照値であってもよい。
【0166】
本明細書中で使用される「対照サンプル」は、病的プリオン様タンパク質がないサンプ
ル、例えば、タンパク質ミスフォールディング神経変性障害を患っていない、もしくは患
っている疑いがない健康な対象由来のサンプル、または代わりに、生体試験サンプルが得
られるのと同じ対象由来のサンプル、例えば、あらゆる臨床症状、もしくはタンパク質ミ
スフォールディング神経変性障害を発症するリスク因子の前に得られるサンプルを指す。
他の適切な対照サンプルが、当業者によって容易に識別され得る。
【0167】
本明細書で使用される「所定の参照値」は、参照データベースから構成されてよい参照
レベル(所定のカットオフ値を生じさせるのに使用されてもよい)を指し、すなわち、症
状もしくは疾患、またはその欠如を統計的に予測する診断スコアであってもよいし、標準
的な母集団サンプルに基づいた所定の参照レベルであってもよいし、代わりに、対象のベ
ースライン発現レベルに基づいた所定の参照レベルであってもよく、すなわち、あらゆる
臨床症状、またはタンパク質ミスフォールディング神経変性障害を発症するリスク因子の
前のものである。適切な所定の参照値が、当業者によって容易に識別され得る。
【0168】
適切な対象、細胞外小胞サンプル、生体サンプル、細胞外小胞サンプルを得る方法、セ
ラミド種の量を評価する方法、分析のためのセラミド種の組合せ、参照レベル、専門用語
、および特徴の組合せまたは順列が、本明細書中の他の場所で説明されており、そしてこ
の態様に等しくあてはまる。
【0169】
また、アルファシヌクレイノパチーを患っている疑いがある、またはアルファシヌクレ
イノパチーの発症リスクが高い対象において、Cer 32:1、Cer 33:1、C
er 34:1、Cer 34:2、Cer37:1、Cer 38:1、Cer 38
:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、C
er 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:
2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価するインビ
トロ方法が提供され、当該方法は、以下の工程を含む:
(a)対象から細胞外小胞サンプルを用意する工程;および
(b)細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer 34
:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2、C
er 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer 4
1:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(OH
)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程。
【0170】
少なくとも1つのセラミド種の量は、先で詳細に説明されるアッセイのいずれかを使用
して求めることができる。
【0171】
細胞外小胞サンプルは、先で詳細に説明される方法のいずれかを使用して用意または取
得することができる。
【0172】
適切な対象、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明されてきた
。
【0173】
また、疾患がある対象について処置を選択する方法が提供され、当該方法は、以下の工
程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;
b)少なくとも1つのセラミド種の評価量を、少なくとも1つのセラミド種についての
参照値と比較する工程;
ここで、少なくとも1つのセラミド種についての参照値よりも大きい少なくとも1つの
セラミド種の評価量が、対象がアルファシヌクレイノパチー用の処置から利益を得ること
となることを示す。
【0174】
当該方法は、インビトロ方法であってもよい。
【0175】
少なくとも1つのセラミド種の量は、先で詳細に説明されるアッセイのいずれかを使用
して求めることができる。
【0176】
細胞外小胞サンプルは、先で詳細に説明される方法のいずれかを使用して用意または取
得することができる。
【0177】
適切な対象、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明されてきた
。
【0178】
当該方法はさらに、対象由来のEVサンプル中の少なくとも1つのセラミド種の量が、
少なくとも1つのセラミド種についての参照値よりも大きければ、アルファシヌクレイノ
パチーの処置を対象に施す工程を含んでもよい。
【0179】
例えば、病的アルファ-シヌクレインタンパク質が存在すると判定され、そして対象が
、アルファシヌクレイノパチー、例えば、パーキンソン病、レビー小体型認知症、および
多系統萎縮症を患っている、患っている疑いがある、患うリスクがある、または患うリス
クがある疑いがあれば、当該対象は、コリンエステラーゼ阻害剤(DLBについて)また
はレボドパ(PDについて)による処置から利益を得ることができる。したがって、当該
方法は、コリンエステラーゼ阻害剤(DLBについて)またはレボドパ(PDについて)
を対象に投与する工程を含んでよい。
【0180】
適切な対象、細胞外小胞サンプル、生体サンプル、細胞外小胞サンプルを得る方法、専
門用語、および特徴の組合せまたは順列が、本明細書中の他の場所で説明されており、そ
して本明細書中に記載されるセラミド態様に等しくあてはまる。
【0181】
また、対象におけるアルファシヌクレイノパチーの識別もしくは監視のための、または
対象におけるアルファシヌクレイノパチーの発症リスクを判定するための、Cer 32
:1、Cer 33:1、Cer 34:1、Cer 34:2、Cer37:1、Ce
r 38:1、Cer 38:2、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40
:1、Cer 40:2、Cer 41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(O
H)、およびCer 40:2(OH)からなる群から選択される少なくとも1つの細胞
外小胞セラミド種の使用が提供される。
【0182】
適切な対象、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明されてきた
。
【0183】
また、アルファシヌクレイノパチー用の処置レジメンの治療効果を判定するインビトロ
方法が提供され、当該方法は、以下の工程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;
b)処置後に対象から得られる細胞外小胞サンプルを使用して、工程a)を、ある時間
間隔で繰り返す工程;および
c)工程a)において判定された少なくとも1つのセラミド種の量を、工程b)におい
て判定された量と比較して、処置後に少なくとも1つのセラミド種の量が低下していれば
、処置レジメンが治療効果を有すると確認する工程。
【0184】
適切な対象、処置、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明され
てきた。
【0185】
また、アルファシヌクレイノパチー用の所定の処置レジメンの、対象の遵守または厳守
を判定するインビトロ方法が提供され、当該方法は、以下の工程を含む:
a)対象の細胞外小胞サンプル中の、Cer 32:1、Cer 33:1、Cer
34:1、Cer 34:2、Cer 37:1、Cer 38:1、Cer 38:2
、Cer 39:1、Cer 39:2、Cer 40:1、Cer 40:2、Cer
41:1、Cer 41:2、Cer 40:1(OH)、およびCer 40:2(
OH)からなる群から選択される少なくとも1つのセラミド種の量を評価する工程;
b)処置レジメンの所定の開始後に対象から得られる細胞外小胞サンプルを使用して、
工程a)を繰り返す工程;ならびに
c)工程a)において判定された少なくとも1つのセラミド種の量を、工程b)におい
て判定された量と比較して、処置後に少なくとも1つのセラミド種の量が低下していれば
、対象は所定の治療レジメンを順守または厳守してきたと確認する工程。
【0186】
適切な対象、処置、専門用語、および特徴の順列または組合せが、先で詳細に説明され
てきた。
【実施例】
【0187】
本明細書中で示すデータは、細胞外小胞の使用とRTQUIC法を組み合わせることに
よって、病的タンパク質凝集の検出における当該方法の感度が増すことを示している。
【0188】
本発明者らは、ルーチンのRTQUICアッセイを使用して、死後の脳脊髄液、血漿、
および血小板から精製した細胞外小胞を試験した。アルファ-シヌクレイン病理を検出す
る際のアッセイの感度は、生の(精製していない)検体の使用と比較して、大幅に増す。
初期分析
死後の脳脊髄液の15のサンプル(11がパーキンソン病+レビー小体型認知症(シヌ
クレイノパチー)、そして4が対照)。全ての症例を、臨床的かつ神経病理学的に検証し
た。
【0189】
細胞外小胞を、サイズ排除クロマトグラフィを使用して、全ての症例から精製した。次
に、小胞を、そのサイズおよび濃度(
図1および
図2)について、調整可能な抵抗パルス
センシング(TRPS)によって、そして受け入れられているマーカーの存在(
図3)に
ついて、ウエスタンブロットおよび免疫電子顕微鏡によって分析した。
【0190】
次に、発明者らは、免疫電子顕微鏡法を使用して、アルファ-シヌクレインの存在につ
いて、全てのサンプルをスクリーニングした。小胞膜と付随するアルファ-シヌクレイン
、および内部アルファ-シヌクレインを検出した。シヌクレインの存在を、患者サンプル
および対照サンプルにおいて検出した。1つのPDサンプルは、アルファ-シヌクレイン
の標識を全く示さなかった。アルファ-シヌクレインは、より大きな小胞(平均直径22
1nm)の膜と付随しているようであったが、内部アルファ-シヌクレインの標識は、よ
り小さな小胞(平均直径122nm)に特徴的であった(
図4および
図5)。この観察は
、患者および対照の小胞に特徴的であった。
【0191】
本発明者らは、C18カラムおよびHILICカラムを使用する液体クロマトグラフィ
-質量分析(LC-MS)を、ポジティブイオンモードおよびネガティブイオンモードで
使用して、全小胞の包括的リピドーム分析を実行した。PD患者およびDLB患者由来の
小胞中のセラミド種の存在量の有意な変化を、対照小胞と比較して確認した(
図6および
図7)。
【0192】
特定のいかなる理論にも拘束されないが、これらのデータの一説明として、EV中で変
化するのは、単純にアルファ-シヌクレインではなく、EVの成分それ自体が変化すると
いうもの、そして組成の変化により、RTQUICアッセイの応答の仕方、および/また
はEV内のアルファ-シヌクレインが変わるというものがある。
【0193】
前頭皮質脳組織から精製した細胞外小胞の研究。
本発明者らは、Perez-Gonzalez(2012)によって大幅に変更された
プロトコルを使用して、脳組織からEVを精製した。品質チェック分析を、前述のCSF
EVに従って、すなわち、小胞の純度、濃度、およびサイズを検証するためにTRPS
および透過型電子顕微鏡を使用して、実行した(
図8)。小胞マーカーを、ウエスタンブ
ロッティングによって判定した(
図9および
図10)。カルネキシンの不在は、小胞の純
度、および細胞物質による夾雑の欠如を証明している。本発明者らは、いくつかの神経小
胞タンパク質の形態、すなわちシナプトフィジンおよびsnap25、ならびに小胞と付
随すると思われるごく少量のミトコンドリアタンパク質TFAM(小胞内のミトコンドリ
ア全体の不在を証明する、ミトコンドリア膜マーカーであるポリンの不在に注目)を検出
した。免疫電子顕微鏡法を使用して、EVに関する位置(小胞内または結合)を判定する
ことができる。本発明者らは、患者および対照において、小胞画分中のアルファ-シヌク
レインを検出して、ELISAを使用して定量化した(
図11)。アルファ-シヌクレイ
ンレベルの有意な変化は検出されなかった。
【0194】
RTQUIC
RTQUICアッセイを、精製したCSF小胞およびプロセシング未処理のCSFを使
用して実行した。精製した小胞を使用した場合、アッセイは、100%の感度および10
0%の特異性を示した。さらに、疾患の前駆症状を検出した(臨床的には、パーキンソン
症候群も記憶障害もない対照。しかし、軽度の神経病理学的変化が脳に見られ得、これは
経時的に、臨床的に明らかな疾患に進行することが示唆されている)。以前にFairf
oul 2016に発表されたRTQUICのプロトコル。アッセイの陽性対照を、
図1
3に示す。
【0195】
血液小胞の進行中の研究
RTQUICを使用した以前の研究では、プロセシング未処理の血漿、血小板、または
バフィーコートを使用した場合に、アルファ-シヌクレインの病理は検出されなかった(
図13)。本発明者らは今般、血漿および血小板に由来する精製したEVサンプルにRT
QUICを使用した。代表的なデータを
図14および
図15に示す。血漿由来の細胞外小
胞を使用すると、疾患シグナルの検出が大幅に向上した。有利には、本明細書中に記載す
る方法を使用して、本発明者らは、疾患の臨床前症状であり得る、サンプル由来の陽性シ
グナルを検出することができる。
【0196】
更なる例(
図16~
図22を参照):
以下の臨床的かつ神経病理学的診断を受けた個体由来の、死後CSFの6つのサンプル
を試験した:パーキンソン病(PD、1サンプル)、レビー小体型認知症(DLB、3サ
ンプル)、および健康対照(2サンプル)。また、パーキンソン病の脳ホモジェネート、
ならびにDLBおよび対照の、前頭皮質から単離した細胞外小胞を試験した。
【0197】
また、多系統萎縮症(MSA)、皮質基底核症候群(CBS)、進行性核上性麻痺(P
SP、Steele-Richardson-Olszewski症候群)、または健康
対照のいずれかの、臨床診断を受けた個体由来の7つの尿サンプルを試験した。
【0198】
SECを使用したヒト尿サンプル、および超遠心分離を使用したヒト死後CSFサンプ
ルから、細胞外小胞を、透過型電子顕微鏡によって確認して、首尾よく精製した(
図16
および
図17)。
【0199】
タンパク質凝集アッセイの結果は、以下の通りであった:
1 死後CSFサンプル-サンプル毎に分析した全4反復における、レビー小体の病変
を検出する際の100%の特異性(
図18、
図19、および
図20)。
2 尿サンプル-病状を盲検化して、サンプルを分析した(
図21および
図22)。結
果は、本発明者らが、双方の反復においてMSAの症例を明確に識別することができたこ
とを示している。
【0200】
材料および方法:
死後のCSFおよび血漿からの細胞外小胞の精製:
凍結したCSF、血漿、および血小板を氷上で解凍して、激しくボルテックスして、チ
ューブの壁に付着した可能性のあるものを全て、溶液中に戻した。CSFおよび血漿を、
遠心分離によってプレクリアリングする;CSF 1500g、3000g、および10
,000g、各工程10分;血漿1500g、3000g、3000g、10分の各工程
。
【0201】
500μlを超える原材料が利用可能であれば、サンプルを、VivaSpin遠心濃
縮機(Sartorius)を使用して500μlに濃縮することができる。次に、50
0μlのサンプルを、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラム上にロードする。本
研究において、発明者らは、qEV(Izon)標準500μl SECカラムを使用し
た。CSF/血漿をカラム上にロードして、画分をPBSで溶出した。メーカーの説明書
に従えば、最初の6×500μl画分(合計3mlの画分として収集した)は空隙容量で
あり、小胞は、画分7、8、および9内に含有されている。3つの画分を全て1つのチュ
ーブに収集して、VivaSpin 2(Sartorius)を使用して500μlに
濃縮した。濃縮した小胞を、凍結融解を避けるためにアリコートにして、-80℃にて保
存した。
【0202】
凍結した前頭皮質細胞外小胞の精製
細胞外小胞を、Perez-Gonzalez et al.2012から大幅に変更
されたプロトコルに従って、凍結組織から精製した。最低600mgの凍結した前頭皮質
を氷上で解凍して、切開した。組織を、5 mM L-システイン(Sigma)および
パパイン(Sigma、最終濃度20ユニット/ml)を補充したHibernate
E(Gibco、ThermoFisher)中で37℃にて15分間、振盪しながら解
離させた。プロテアーゼインヒビタカクテル(Roche)を含むHibernate
Eを、総容量10mlにまで加えて、10mlセロロジカルピペットに通過させることに
よって、組織を穏やかにホモジェナイズした。解離した組織を、40μmメッシュフィル
タを使用して濾過して、濾液を300g-10分、2000g-10分、そして10,0
00g-30分にて遠心分離した。各工程で上清を収集した。最終の上清を、0.45μ
mフィルターを使用してさらに濾過して、VivaSpin Turbo 4遠心濃縮機
(Sartorius)を使用して500μlに濃縮した。このサンプルを、SEC q
EVカラムにアプライして、EV単離について、CSF EVに従ってプロセシングした
。
【0203】
TRPSが、Izon Scienceによって提供されている。
【0204】
電子顕微鏡法
PBS中5μlの小胞懸濁液を、グロー放電させた炭素被覆銅グリッドに数秒間アプラ
イした。グリッドを、濾紙に接触させることによって乾燥させて、2%酢酸ウラニルで数
秒間染色した。グリッドを乾燥させた。グリッドを、Philips CM 100 C
ompustage(FEI)透過型電子顕微鏡を使用して調査して、デジタル画像を、
AMT CCDカメラ(Deben)を使用して収集した。
【0205】
ウエスタンブロット
18μlのエキソソーム抽出物を、メーカーの説明書に従って、Invitrogen
NuPAGE 4-12% Bis-Trisゲル電気泳動システムを使用して、ウエ
スタンブロット分析にかけた。CD63およびCD81を、非還元条件下で試験した。全
ての抗体をAbcamから購入したが、Alix(Cell Signalling)お
よびSNAP25(Sigma)を除く。抗体をメンブレンと共に4℃にて一晩、続いて
適切な二次抗体(Dako)と室温にて1時間インキュベートして、Pierce EC
L Plusウエスタンブロッティング基質またはSuperSignal West
Femto Maximum Sensitivity Substrateを使用して
現像した。シグナルを、Amersham Imager 600で検出した。
【0206】
リピドミクス
EV脂質を、クロロホルム/メタノール(2/1、v/v)中に抽出した。C18カラ
ムおよびHILICカラムを使用する高解像度のThermo Orbitrap Ex
activeシステムを、ポジティブイオンモードおよびネガティブイオンモードで使用
して、包括的(非ターゲット)リピドーム分析を、液体クロマトグラフィ質量分析(LC
-MS)によって実行した。データセットを、Non-Linear Dynamics
Progenesis QIソフトウェアを使用してプロセシング(アライン、デコン
ボリューション、および正規化)した。SIMCA-Pソフトウェアを使用して、データ
セットを多変量データ分析(主成分分析(PCA)および直交部分最小二乗法-判別分析
(OPLS-DA))にかけることによって、脂質プロファイルの乱れ(相対変化)を判
定した。脂質の識別は、LIPID MAPS(www.lipidmaps.org/
)、HMDB(http://www.hmdb.ca/)データベースを検索すること
によって行った。脂質クラスを、主要な脂質クラスの代表である内部標準との比較によっ
て定量化した。統計分析には、データセットに従って、Shapiro-Wilk正規性
検定に続く、一元配置Anova、対応のないt検定、またはノンパラメトリック検定を
含めた。
【0207】
ImmunoEM
St Andrews UniversityのEM施設内で実行した。
【0208】
小胞を支持体に結合させて、抗アルファ-シヌクレイン抗体(BD Transduc
tion Laboratories)に続いて、電子密度金粒子マーカーで標識して、
位置を明らかにした。小胞を、メチルセルロースの薄膜中で重金属と対照して引き立たせ
てから、電子顕微鏡で画像化した。
【0209】
アルファ-シヌクレインELISA
ELISAプレートを、抗アルファ-シヌクレイン10D2抗体(Analitik
Jena、1:2000)(コーティングバッファー(炭酸-重炭酸バッファー:50m
lの0.2M重炭酸ナトリウム+5mlの0.2M炭酸ナトリウム)中)で、ウェルあた
り100μlの総容量で4℃にて一晩コーティングした。ウェルを、リン酸緩衝生理食塩
水+0.2%Tween(PBST)で3回洗浄した。プレートを、ウェルあたりPBS
T中1%BSAの200μlでブロックして、ロッキングプレート上で1時間撹拌した。
その後、PBSTで1回洗浄した。組換えアルファ-シヌクレイン標準(Sigma-A
ldrich;40~0.001ng/μl)およびサンプルを、PBS+0.2%Tw
een中で調製して、ウェルあたり100μlをロードして、ロッキングプレート上で2
時間撹拌した。ウェルをPBSTで3回洗浄した。検出抗体αβシヌクレイン(Abca
m、1:1500)(PBST中1%BSA中)を加えて(ウェルあたり100μl)、
ロッキングプレート上で1時間撹拌してから、PBSTで3回洗浄した。コンジュゲート
ヤギ抗ウサギAP(Santa Cruz、1:1000)(PBST中1%BSA中)
を、ウェルあたり100μlの総量で加えて、ロッキングプレート上で1時間撹拌してか
ら、PBST中で3回洗浄した。pNPP(p-ニトロフェニルホスファート;Sigm
a-Aldrich)基質を、基質バッファー(0.05M炭酸ナトリウム+0.001
M MgCl2(dH2O中))中1mg/mlにて加えて、ウェルあたり100μlを
ロードした。プレートを37℃にて30分間インキュベートして、吸光度を412nmに
て記録した。
【0210】
RTQUIC
RTQUICを、Fairfoul at al.2016において以前に発表された
ように実行した。
【0211】
更なる材料および方法(
図16~
図22を参照):
超遠心分離を用いた、死後の脳脊髄液サンプルからの細胞外小胞の精製。
【0212】
凍結した死後の脳脊髄液(CSF)サンプル(1ml~1.5ml)を氷上で解凍して
、激しくボルテックスして、4℃での、500×gにて10分間、2000×gにて15
分間、そして17000×gにて30分間の遠心分離によって、プレクリアリングした(
上清を毎回遠心分離にかけた)。TLA 55 S/N 17U1340ローターを使用
するOptima Max-XP Ultracentrifuge Beckman
Coulter内で、最終の上清を130,000×gにて4℃にて1時間、超遠心分離
した。上清を廃棄して、ペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、130
,000×gにて4℃にて1時間、再度超遠心分離した。上清を廃棄して、ペレットを、
プロテアーゼインヒビタカクテル(Roche)を含むPBS中に再懸濁させた。サンプ
ルを、ネガティブ染色、およびHitachi HT7800 120kV電子顕微鏡に
よる透過型電子顕微鏡法を使用して、画像化した。
【0213】
ヒト尿サンプルからの細胞外小胞の精製。
凍結した尿サンプル(35ml~100ml)を解凍して、激しくボルテックスして、
4℃での、1500×gにて10分間、3000×gにて10分間、そして4600×g
にて30分間の遠心分離によって、プレクリアリングした(上清を毎回遠心分離にかけた
)。最終の上清を、分子量カットオフ100kDaのAmicon限外濾過ユニット(M
erck Millipore)を使用して、500μlに濃縮した。濾液を、1610
0×gにて4℃にて10分間遠心分離して、上清を、メーカーの推奨に従って、qEVオ
リジナル70nm SECカラム(Izon)を使用したサイズ排除クロマトグラフィ(
SEC)にかけた。1500μlの小胞画分を収集して、分子量カットオフ3kDaのA
micon限外濾過ユニット(Merck Millipore)を使用して濃縮した。
サンプルを、ネガティブ染色、およびHitachi HT7800 120kV電子顕
微鏡による透過型電子顕微鏡法を使用して、画像化した。
【0214】
アルファ-シヌクレインタンパク質凝集アッセイ。
タンパク質凝集アッセイを、Fairfoul et al.(2016)に以前に記
載されるように実行した。ThermoFisher VarioskanLUX Mu
ltimodeプレートリーダーを使用して反応を走らせて、蛍光シグナルの測定を、1
15時間にわたって15時間毎に行った。死後CSFサンプルを、2つの異なる量の小胞
を試験する二反復で2回分析した。データを、SkanItソフトウェア(Thermo
Fisher)を使用して分析した。
【0215】
本明細書中で別段の定義がない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語および科学
用語は、本発明が関係する技術の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有
する。例えば、SINGLETON AND SAINSBURY,DICTIONAR
Y OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,
2D ED.,JOHN WILEY AND SONS,NY(1 94);およびH
ALE AND MARHAM,THE HARPER COLLINS DICTIO
NARY OF BIOLOGY,HARPER PERENNIAL,NY(1991
)は、本発明中で使用する多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供している。本明細書
中に記載するものと類似の、または同等のあらゆる方法および材料が、本発明の実施に用
いられるが、好ましい方法および材料を本明細書中に記載している。したがって、直ぐ下
で定義する用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に説明される。また、
本明細書中で使用される単数形の用語「A」、「AN」、および「THE」は、文脈がそ
うでないことを明確に示さない限り、複数の参照を含む。特に明記しない限り、核酸は、
左から右に向けて、5’から3’の向きに書いている;アミノ酸配列は、左から右に向け
て、アミノからカルボキシの向きに書いている。本発明は、記載した特定の方法論、プロ
トコル、および試薬に限定されないことを理解されたい。というのもこれらは、当業者に
よって使用される文脈に応じて変わり得るからである。
【0216】
読者は、本出願に関連する本明細書と同時に、または本明細書の前に提出されており、
かつ本明細書と共に公衆の閲覧に付された全ての論文および文書に留意し、そのような全
ての論文および文書の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0217】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面をいずれも含む)に開示される全
ての特徴、および/またはそこに開示されるあらゆる方法もしくはプロセスの全ての工程
は、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを
除くあらゆる組合せで組み合わされてもよい。
【0218】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、および図面をいずれも含む)に開示される各
特徴は、特に明記しない限り、同じ、同等の、または類似の目的に役立つ代替の特徴によ
って置換されてもよい。ゆえに、特に明記しない限り、開示される各特徴は、一般的な一
連の等価の、または類似の特徴の一例に過ぎない。
【0219】
本発明は、前述のいかなる実施形態の詳細にも制限されない。本発明は、本明細書(添
付の特許請求の範囲、要約、および図面をいずれも含む)に開示される特徴の新規なあら
ゆるもの、または新規なあらゆる組合せ、あるいはそのように開示されるあらゆる方法も
しくはプロセスの工程の新規なあらゆるもの、または新規なあらゆる組合せに及ぶ。
【0220】
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