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特許7587883デバイス、抵抗測定方法、細胞融合方法およびエレクトロポレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】デバイス、抵抗測定方法、細胞融合方法およびエレクトロポレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/07 20060101AFI20241114BHJP
   C12N 15/02 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20241114BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N27/07
C12N15/02 Z
C12N15/87 Z
C12M1/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023201081
(22)【出願日】2023-11-28
【審査請求日】2023-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502251061
【氏名又は名称】株式会社ベックス
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】森泉 康裕
(72)【発明者】
【氏名】眞壁 壮
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-257379(JP,A)
【文献】特開2008-249482(JP,A)
【文献】特開2020-106497(JP,A)
【文献】特許第2621384(JP,B2)
【文献】特開2018-014916(JP,A)
【文献】特開昭62-257378(JP,A)
【文献】国際公開第2021/111837(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/002775(WO,A1)
【文献】特開2020-067323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0251780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
C12M 1/00-1/42
G01R 27/00-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルに電圧または電流を印加するためのデバイスであって、
該デバイスは、電極部と、非導電性材料で形成された蓋部と、を含み、
前記電極部は、
非導電性材料で形成された第1基材と、
第1電極と、
第2電極と、
を含み、
前記第1電極の一端は前記第1基材に固定され、前記第1電極の他端は前記第1基材から突出している第1突出端を有し、
前記第2電極の一端は前記第1基材に固定され、前記第2電極の他端は前記第1基材から突出している第2突出端を有し、
前記第1電極および前記第2電極は、互いに非接触となるように前記第1基材に固定され、
前記蓋部は、前記第1突出端および前記第2突出端側から前記電極部に嵌合した際に、
前記第1突出端および前記第2突出端を覆う第2基材と、
前記第2基材から突出し、前記第1電極および/または前記第2電極に使用者が接触することを防止するための遮蔽部と、
1端子挿入孔と、
2端子挿入孔と、
を含み、
前記第1端子挿入孔は、前記電極部および前記蓋部が嵌合した状態で、前記蓋部を介して、電源に接続した第1端子を前記第1電極に接触する際に使用され、
前記第2端子挿入孔は、前記電極部および前記蓋部を嵌合した状態で、前記蓋部を介して、電源に接続した第2端子を前記第2電極に接触する際に使用され、
前記第1電極には、前記第1端子を接触する際に前記第1端子を固定するためのねじ穴が形成されることが除かれ、且つ、
前記第2電極には、前記第2端子を接触する際に前記第2端子を固定するためのねじ穴が形成されることが除かれ、
前記電極部に前記蓋部を嵌合した際に、
前記第1電極に接続し且つ前記蓋部の外部に突出する電源接続用の端子と、および、
前記第2電極に接続し且つ前記蓋部の外部に突出する電源接続用の端子と、
を含まない
デバイス。
【請求項2】
前記サンプルが液体サンプルであり、前記デバイスが前記液体サンプルの抵抗を測定する抵抗測定装置として用いられる
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記サンプルが細胞を含み、前記デバイスが細胞融合装置またはエレクトロポレーション装置として用いられる
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1電極が、前記一端および前記第1突出端以外は無端状に形成され、
前記第2電極が、前記一端および前記第2突出端以外は無端状に形成され、
前記第1基材に固定された前記第1電極および前記第2電極において、外側に固定された電極を第1電極と規定し、前記第1電極の内側に固定された電極を第2電極と規定し、
前記第1電極および前記第2電極の間に形成される空間をサンプル収容部と規定し、
前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面を第1電極内面と規定し、前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第1電極外面と規定し、
前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面を第2電極内面と規定し、前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第2電極外面と規定した際に、
前記遮蔽部は、
前記第2基材から突出するように形成され、且つ、使用者が前記第1電極外面に接触することを防止するための第1遮蔽部を含む
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記遮蔽部は、前記第2基材から突出するように形成され、使用者が前記第2電極外面に接触することを防止するための第2遮蔽部を更に含む
請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1電極および前記第2電極を前記第1突出端および前記第2突出端側から見た際に、前記第1電極および前記第2電極は直径が異なる略円形状に形成され、
前記第1遮蔽部が、前記第1電極の外形より大きい内形を有する略円形状に形成されている
請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1電極および前記第2電極を前記第1突出端および前記第2突出端側から見た際に、前記第1電極および前記第2電極は非円形状の相似形に形成され、
前記第1遮蔽部の内形は前記第1電極の外形と相似形であり、且つ、前記内形が前記第1電極の外形より大きい
請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1電極および前記第2電極は略板状であり、且つ、略平行となるように前記第1基材に固定され、
前記第1電極および前記第2電極の間に形成される空間をサンプル収容部と規定し、
前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面を第1電極内面と規定し、前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第1電極外面と規定し、
前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面を第2電極内面と規定し、前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第2電極外面と規定した際に、
前記遮蔽部は、
前記第2基材から突出するように形成され、且つ、使用者が前記第1電極外面および前記第2電極外面に接触することを防止するように形成されている
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1電極外面に、前記第1端子挿入孔を介して挿入した前記第1端子の一部を収容する第1凹部が形成され、
前記第2電極外面に、前記第2端子挿入孔を介して挿入した前記第2端子の一部を収容する第2凹部が形成されている
請求項4~8の何れか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
請求項1~2、4~8の何れか一項に記載のデバイスを用いた液体サンプルの抵抗測定方法であって、該抵抗測定方法は、
電極部の第1電極および第2電極の間に形成されるサンプル収容部に液体サンプルを投入するサンプル投入工程と、
前記電極部に蓋部を嵌合する蓋部嵌合工程と、
前記蓋部を前記電極部に勘合した状態で、
電源に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入し、前記第1電極に接触させ、
電源に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入し、前記第2電極に接触さる、
第1端子および第2端子挿入工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧または電流を印加する電圧または電流印加工程と、
液体サンプルの抵抗を測定する抵抗測定工程と、
を含む
液体サンプルの抵抗測定方法。
【請求項11】
請求項1、3~8の何れか一項に記載のデバイスを用いた細胞融合方法であって、該細胞融合方法は、
電極部の第1電極および第2電極の間に形成されるサンプル収容部に細胞を含むサンプル液を投入するサンプル投入工程と、
前記電極部に蓋部を嵌合する蓋部嵌合工程と、
前記蓋部を前記電極部に勘合した状態で、
電源に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入し、前記第1電極に接触させ、
電源に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入し、前記第2電極に接触さる、
第1端子および第2端子挿入工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する電圧印加工程と、
電圧の印加により細胞を融合する細胞融合工程と、
を含む
細胞融合方法。
【請求項12】
請求項1、3~8の何れか一項に記載のデバイスを用いたエレクトロポレーション方法であって、該エレクトロポレーション方法は、
電極部の第1電極および第2電極の間に形成されるサンプル収容部に細胞および導入物質を含むサンプル液を投入するサンプル投入工程と、
前記電極部に蓋部を嵌合する蓋部嵌合工程と、
前記蓋部を前記電極部に勘合した状態で、
電源に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入し、前記第1電極に接触させ、
電源に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入し、前記第2電極に接触さる、
第1端子および第2端子挿入工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する電圧印加工程と、
電圧の印加により細胞内に導入物質を導入する物質導入工程と、
を含む
エレクトロポレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願における開示は、抵抗測定装置、細胞融合装置またはエレクトロポレーション装置として用いられるデバイス(以下、単に「デバイス」と記載することがある。)、並びに、抵抗測定方法、細胞融合方法およびエレクトロポレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルに電圧を印加するためのデバイスが知られている。デバイスの一例として、特許文献1には、透明樹脂成型により容器と蓋が形成され、前記容器には槽が設けられており、前記槽は同じ幅のものが破壊可能な隔壁を介して幅方向と直交する方向に隣接しており、前記隔壁を破壊して複数槽を一連のものとすることができる細胞電気処理チャンバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2621394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の細胞電気処理チャンバは、1種類の細胞電気処理チャンバで少量ずつの細胞懸濁液の処理と多量の細胞懸濁液の処理の両方の用途に利用できるようにすることを課題とした発明である。そして、特許文献1に記載の発明では、容器に設けられる槽は同じ幅のものが破壊可能な隔壁を介して幅方向と直交する方向に隣接したものとし、隔壁を破壊して複数槽を一連のものとすることができるように形成し、槽を設けた容器側ではなく蓋側に電極を配置することで、当該課題を解決している。
【0005】
ところで、サンプルに電圧または電流を印加するためのデバイスとしては、液体サンプルの抵抗測定装置、細胞融合装置またはエレクトロポレーション装置が知られている。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、細胞融合またはエレクトロポレーションに特化した装置である。抵抗測定装置、細胞融合装置およびエレクトロポレーション装置の何れにも使用でき、且つ、シンプルな構成で且つ安全性が高いデバイスは知られていない。
【0006】
本出願の開示は、上記問題点を解決するためになされたものである。すなわち、本出願の開示の目的は、抵抗測定装置、細胞融合装置およびエレクトロポレーション装置の何れにも使用でき、且つ、シンプルな構成で且つ安全性が高いデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願における開示は、以下に示す、デバイス、抵抗測定方法、細胞融合方法およびエレクトロポレーション方法に関する。
【0008】
(1)サンプルに電圧または電流を印加するためのデバイスであって、
該デバイスは、電極部と、非導電性材料で形成された蓋部と、を含み、
前記電極部は、
非導電性材料で形成された第1基材と、
第1電極と、
第2電極と、
を含み、
前記第1電極の一端は前記第1基材に固定され、前記第1電極の他端は前記第1基材から突出している第1突出端を有し、
前記第2電極の一端は前記第1基材に固定され、前記第2電極の他端は前記第1基材から突出している第2突出端を有し、
前記第1電極および前記第2電極は、互いに非接触となるように前記第1基材に固定され、
前記蓋部は、前記第1突出端および前記第2突出端側から前記電極部に嵌合した際に、
前記第1突出端および前記第2突出端を覆う第2基材と、
前記第2基材から突出し、前記第1電極および/または前記第2電極に使用者が接触することを防止するための遮蔽部と、
電源に接続するための第1端子を、前記電極部および前記蓋部が嵌合した状態で前記蓋部を介して前記第1電極に接触させるための第1端子挿入孔と、
電源に接続するための第2端子を、前記電極部および前記蓋部を嵌合した状態で前記蓋部を介して前記第2電極に接触させるための第2端子挿入孔と、
を含む
デバイス。
(2)前記サンプルが液体サンプルであり、前記デバイスが前記液体サンプルの抵抗を測定する抵抗測定装置として用いられる
上記(1)に記載のデバイス。
(3)前記サンプルが細胞を含み、前記デバイスが細胞融合装置またはエレクトロポレーション装置として用いられる
上記(1)に記載のデバイス。
(4)前記第1電極が、前記一端および前記第1突出端以外は無端状に形成され、
前記第2電極が、前記一端および前記第2突出端以外は無端状に形成され、
前記第1基材に固定された前記第1電極および前記第2電極において、外側に固定された電極を第1電極と規定し、前記第1電極の内側に固定された電極を第2電極と規定し、
前記第1電極および前記第2電極の間に形成される空間をサンプル収容部と規定し、
前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面を第1電極内面と規定し、前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第1電極外面と規定し、
前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面を第2電極内面と規定し、前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第2電極外面と規定した際に、
前記遮蔽部は、
前記第2基材から突出するように形成され、且つ、使用者が前記第1電極外面に接触することを防止するための第1遮蔽部を含む
上記(1)に記載のデバイス。
(5)前記遮蔽部は、前記第2基材から突出するように形成され、使用者が前記第2電極外面に接触することを防止するための第2遮蔽部を更に含む
上記(4)に記載のデバイス。
(6)前記第1電極および前記第2電極を前記第1突出端および前記第2突出端側から見た際に、前記第1電極および前記第2電極は直径が異なる略円形状に形成され、
前記第1遮蔽部が、前記第1電極の外形より大きい内形を有する略円形状に形成されている
上記(4)に記載のデバイス。
(7)前記第1電極および前記第2電極を前記第1突出端および前記第2突出端側から見た際に、前記第1電極および前記第2電極は非円形状の相似形に形成され、
前記第1遮蔽部の内形は前記第1電極の外形と相似形であり、且つ、前記内形が前記第1電極の外形より大きい
上記(4)に記載のデバイス。
(8)前記第1電極および前記第2電極は略板状であり、且つ、略平行となるように前記第1基材に固定され、
前記第1電極および前記第2電極の間に形成される空間をサンプル収容部と規定し、
前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面を第1電極内面と規定し、前記第1電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第1電極外面と規定し、
前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面を第2電極内面と規定し、前記第2電極の前記サンプル収容部を形成する面と反対側の面を第2電極外面と規定した際に、
前記遮蔽部は、
前記第2基材から突出するように形成され、且つ、使用者が前記第1電極外面および前記第2電極外面に接触することを防止するように形成されている
上記(1)に記載のデバイス。
(9)前記第1電極外面に、前記第1端子挿入孔を介して挿入した前記第1端子の一部を収容する第1凹部が形成され、
前記第2電極外面に、前記第2端子挿入孔を介して挿入した前記第2端子の一部を収容する第2凹部が形成されている
上記(4)~(8)の何れか一つに記載のデバイス。
(10)上記(1)~(2)、(4)~(8)の何れか一つに記載のデバイスを用いた液体サンプルの抵抗測定方法であって、該抵抗測定方法は、
電極部の第1電極および第2電極の間に形成されるサンプル収容部に液体サンプルを投入するサンプル投入工程と、
前記電極部に蓋部を嵌合する蓋部嵌合工程と、
前記蓋部を前記電極部に勘合した状態で、
電源に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入し、前記第1電極に接触させ、
電源に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入し、前記第2電極に接触さる、
第1端子および第2端子挿入工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧または電流を印加する電圧または電流印加工程と、
液体サンプルの抵抗を測定する抵抗測定工程と、
を含む
液体サンプルの抵抗測定方法。
(11)上記(1)、(3)~(8)の何れか一つに記載のデバイスを用いた細胞融合方法であって、該細胞融合方法は、
電極部の第1電極および第2電極の間に形成されるサンプル収容部に細胞を含むサンプル液を投入するサンプル投入工程と、
前記電極部に蓋部を嵌合する蓋部嵌合工程と、
前記蓋部を前記電極部に勘合した状態で、
電源に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入し、前記第1電極に接触させ、
電源に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入し、前記第2電極に接触さる、
第1端子および第2端子挿入工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する電圧印加工程と、
電圧の印加により細胞を融合する細胞融合工程と、
を含む
細胞融合方法。
(12)上記(1)、(3)~(8)の何れか一つに記載のデバイスを用いたエレクトロポレーション方法であって、該エレクトロポレーション方法は、
電極部の第1電極および第2電極の間に形成されるサンプル収容部に細胞および導入物質を含むサンプル液を投入するサンプル投入工程と、
前記電極部に蓋部を嵌合する蓋部嵌合工程と、
前記蓋部を前記電極部に勘合した状態で、
電源に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入し、前記第1電極に接触させ、
電源に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入し、前記第2電極に接触さる、
第1端子および第2端子挿入工程と、
前記第1電極および前記第2電極に電圧を印加する電圧印加工程と、
電圧の印加により細胞内に導入物質を導入する物質導入工程と、
を含む
エレクトロポレーション方法。
【発明の効果】
【0009】
本出願で開示するデバイスは、抵抗測定装置、細胞融合装置およびエレクトロポレーション装置の何れにも使用できる。また、本出願で開示するデバイスは、サンプル収容部を形成する2つの電極を固定した電極部を蓋部で嵌合した後で、電源に接続するための端子を蓋部に設けた端子挿入孔に挿入し電極部の電極に接触する構造を採用している。つまり、蓋部を端子の位置決め機能と電極の遮蔽機能を奏するために使用している。そのため、蓋をしない状態で電極間に電圧または電流を印加することが困難な構成とすることで、シンプルな構成で且つ安全性が高いデバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aはデバイス1を構成する電極部2の概略上面図で、図1B図1AのX-X’方向の矢視断面図である。
図2図2Aはデバイス1を構成する蓋部3の概略上面図で、図2B図2AのX-X’方向の矢視断面図である。
図3図3A図1Bに示す電極部2に図2Bに示す蓋部3を嵌合した際の断面図で、図3B図3Aに更に第1端子41および第2端子42を挿入した状態を示す断面図である。
図4図4Aはデバイス1を構成する電極部2の概略上面図で、図4B図4AのX-X’方向の矢視断面図、図4C図4AのY-Y’方向の矢視断面図である。
図5図5Aは蓋部3の概略上面図で、図5B図4Bに示す電極部2に蓋部3を嵌合し、第1端子41および第2端子42を挿入した状態を示す断面図である。
図6図6Aは変形例3に係る蓋部3の概略上面図で、図6B図1Bに示す電極部2に変形例3に係る蓋部3を嵌合し、第1端子41および第2端子42を挿入した状態を示す断面図である。
図7図7は、任意付加的事項の概略を説明するための図で、電極部2をZ方向にみた概略上面図である。
図8図8は図面代用写真で、図8Aは実施例1で作製した電極部2の写真、図8Bは実施例1で作製した蓋部3の写真である。
図9図9は実施例2の細胞融合実験の結果を示す図面代用写真で、図9Aは電圧印加前の写真、図9Bは電圧印加後の写真、図9C図9Bを拡大した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、デバイスの実施形態について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0012】
また、図面において示す各構成の位置、大きさ、範囲などは、理解を容易とするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本出願における開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0013】
(方向の定義)
本明細書において、鉛直下向き方向をZ方向はと定義する。
【0014】
(デバイス1の実施形態)
図1乃至図3を参照して、デバイス1の各種実施形態について説明する。図1Aはデバイス1を構成する電極部2の概略上面図で、図1B図1AのX-X’方向の矢視断面図である。図2Aはデバイス1を構成する蓋部3の概略上面図で、図2B図2AのX-X’方向の矢視断面図である。図3A図1Bに示す電極部2に図2Bに示す蓋部3を嵌合した際の断面図で、図3B図3Aに更に第1端子41および第2端子42を挿入した状態を示す断面図である。
【0015】
実施形態に係るデバイス1は、電極部2と、非導電性材料で形成された蓋部3と、を含む。電極部2は、非導電性材料で形成された第1基材21と、第1電極22と、第2電極23と、を含む。
【0016】
第1電極22の一端は第1基材21に固定され、第1電極22の他端は第1基材21から突出している第1突出端22aを有する。第2電極23の一端は第1基材21に固定され、第2電極23の他端は第1基材21から突出している第2突出端23aを有する。第1電極22および第2電極23は、互いに非接触となるように第1基材21に固定されている。
【0017】
第1基材21は、非導電性材料であれば特に制限はなく、当該技術分野で公知の樹脂等を用いればよい。なお、デバイス1を細胞融合装置やエレクトロポレーション装置として用いる場合、電極部2は繰り返し高温加圧処理(約120℃、約2気圧)される場合がある。高温加圧処理を繰り返しても変形せず、且つ、顕微鏡で観察できることが好ましいことから、第1基材21は透明な耐熱性樹脂であることが好ましい。そのような特性を有する樹脂としては、限定されるものではないが、例えば、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリアリレート(PAR)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0018】
第1電極22および第2電極23は、導電性の材料であれば特に制限はない。限定されるものではないが、細胞融合やエレクトロポレーションの分野で一般的に用いられている導電性材料であれば特に制限はない。例えば、鉄、ステンレス、白金、アルミ、金、カーボン等が挙げられる。
【0019】
図1乃至図3に示すデバイス1の実施形態は、第1電極22の一端および第1突出端22a以外は無端状(略円形状)に形成されている。第2電極23も同様に、一端および第2突出端23a以外は無端状(略円形状)に形成されている。また、第2電極23は第1電極22より小さな相似形で形成され、且つ、第2電極23は第1電極22より内側に配置されている。そのため、図1乃至図3に示すデバイス1では、第1電極22および第2電極23の間に形成される空間がサンプル収容部24となる。なお、本明細書では、第1電極22のサンプル収容部24を形成する面を第1電極内面2bと規定し、第1電極22のサンプル収容部24を形成する面と反対側の面を第1電極外面22cと規定する。また、第2電極23のサンプル収容部24を形成する面を第2電極内面23bと規定し、第2電極23のサンプル収容部24を形成する面と反対側の面を第2電極外面23cと規定する。
【0020】
第1電極22および第2電極23は第1基材21に液密となるように固定される必要がある。電極部2を高温加圧処理する必要がない場合は、図1に示すように、第1電極22および第2電極23は第1基材21に接着剤等を用いて接着すればよい。
【0021】
一方、電極部2を繰り返し高温加圧処理する場合、接着剤を用いると接着剤が劣化し、第1電極22および/または第2電極23と第1基材21を固定した部分に隙間が生じる可能性がある。そのため、電極部2を繰り返し高温加圧処理する場合は、図3Aに示すように、第1電極22および第2電極23に孔を設け、ネジ等の固定部材25を用いて第1基材21と第1電極22および第2電極23を固定すればよい。なお、図1および図3に示す例では、第1電極22および第2電極23の一端は、第1基材21に接するように固定されている。代替的に、第1電極22および/または第2電極23の一端は、第1基材21に埋設されてもよい。
【0022】
第1電極22および第2電極23の距離w、換言すると、第1電極内面22bと第2電極内面23bの距離は、目的に応じて適宜設定すればよい。限定されるものではないが、距離wは、デバイス1を抵抗測定装置として用いる場合は0.1mm~100mm、細胞融合装置として用いる場合は0.1mm~10mm、エレクトロポレーション装置として用いる場合は0.1mm~10mmが好ましい例として挙げられる。なお、第1電極22および第2電極23の距離wが場所により異なると、実験条件が異なることになる。そのため、第1電極22および第2電極23の距離wは、場所を問わず同じ長さとなることが好ましい。つまり、Z方向に見た時に、第1電極内面22bと第2電極内面23bは相似形となるように形成することが好ましい。
【0023】
第1電極22の厚さLは、第1基材21に固定することができ、形状を維持できる(第1電極22と第2電極23の距離wが変化しない)範囲内であれば特に制限はない。限定されるものではないが、第1電極22の厚さLは、1mm~20mmが好ましい例として挙げられる。第2電極23の厚さLは、第1電極23の厚さLと同様1mm~20mmの範囲で同じにしてもよいし、形状を維持できる範囲内であれば、第1電極22の厚さLと異なっていてもよい。
【0024】
蓋部3は、電極部2の第1突出端22aおよび第2突出端23a側から電極部2に嵌合した際に、第1突出端22aおよび第2突出端23aを覆う第2基材31と、第2基材31から突出し第1電極22および/または第2電極23に使用者が接触することを防止するための遮蔽部32と、を含む。また、蓋部3は、電極部2および蓋部3が嵌合した状態で、電源4に接続するための第1端子41を第1電極22に接触させるための第1端子挿入孔33と、電源4に接続するための第2端子42を第2電極23に接触させるための第2端子挿入孔34と、を含む。
【0025】
蓋部3を形成する非導電性材料も、非導電性であれば特に制限はなく、当該技術分野で公知の樹脂等を用いればよい。蓋部3を形成する材料としては、第1基材21と同様、高温加圧処理を繰り返しても変形せず、且つ、顕微鏡で観察できることが好ましく、限定されるものではないが、例えば、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリアリレート(PAR)、ポリアリルサルホン(PASF)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0026】
遮蔽部32は、第1電極22および第2電極23に電圧または電流を印加する際に、使用者が誤って第1電極22および/または第2電極23に接触することを防止できれば特に制限はない。図1に示す例では、Z方向に見た時の第1電極22は略円形状に形成されている。したがって、図2に示す遮蔽部32は、第1電極22の外形26(換言すると、Z方向に見た時の第1電極外面22cが形成する形状。図1に示す例では円形。)より大きい内形35を有する略円形状に形成され、第1電極外面22cを遮蔽する。したがって、使用者が第1電極外面22cに誤って接触することを防止する。なお、本明細書において「第1電極22の外形26より大きい内形35を有する」と記載した場合、蓋部3を電極部2に嵌合する際に、遮蔽部32と第1電極22との間に大きな摩擦力が発生せず、且つ、不必要な隙間を生じない程度の大きさであることを意味する。限定されるものではないが、蓋部3を電極部2に嵌合した際に、第1電極外面22cと遮蔽部32との間の隙間が、0.1mm~10mm程度となるようにすればよい。
【0027】
また、図2および図3に示す例では、第2基材31には第1端子挿入孔33および第2端子挿入孔34以外に孔は形成されていない。したがって、遮蔽部32が第1電極外面22cを遮蔽することで、使用者が第2電極23に接触することを防止できる。なお、本明細書において、無端状の第1電極22の第1電極外面22cを遮蔽する遮蔽部を、第1遮蔽部32aと記載することがある。
【0028】
遮蔽部32は、第2基材31と一体的に形成されてもよい。代替的に、遮蔽部32は、第2基材31とは別体として形成され、第2基材31に接着剤または固定部材を用いて固定されてもよい。
【0029】
第1端子挿入孔33を形成する場所は、挿入した第1端子41が第1電極22の第1電極外面22cに接触できる位置に形成されればよい。第2端子挿入孔34を形成する場所は、挿入した第2端子42が第2電極23の第2電極外面23cに接触できる位置に形成されればよい。
【0030】
また、図3に示す例では、第2端子挿入孔34は、挿入した第2端子42が第2電極外面23cに確実に接触するための位置決め作用を有する。仮に、第2基材31の厚さが第2端子の長さに比べて極端に薄く且つ第2端子42のサイズに比べて第2端子挿入孔34が大きい場合、第2端子挿入孔34が第2端子42の回動中心となり、第2端子42が第2電極23に接触しないおそれがある。そのため、使用する第2端子42を確実に位置決めできるようにするため、使用する第2端子のサイズに応じて、第2基材31の厚さおよび第2端子挿入孔34の大きさを調整すればよい。
【0031】
図3に示す例では、第1端子挿入孔33は、遮蔽部32(第1遮蔽部32a)の一部にも形成されている。そのため、第1端子41は、第2基材31部分に形成された孔部分に加え遮蔽部32に形成された孔部分にも当接することから、位置決め効果が高くなる。つまり、本出願で開示する遮蔽部32は、使用者が誤って電極に接触することを防止する遮蔽機能と、第1電極22に通電するための電源に接続した第1端子41の位置決め機能という異なる効果を同時に奏する。
【0032】
なお、図1乃至図3に示す例は、デバイス1のいくつかの実施形態の一例に過ぎない。デバイス1は、本出願で開示する技術思想の範囲内であれば、各種の変更が可能である。
【0033】
(デバイス1の変形例1)
図1乃至図3に示す例では、第1電極22および第2電極23はZ方向に見た際に略円形状である。図示は省略するが、第1電極22および第2電極23は非円形状、例えば、楕円形状、3角形、4角形、5角形、6角形、7角形、8角形、9角形、10角形、11角形、12角形等の多角形状であってもよい。第1電極22および第2電極23が非円形状である場合、第1電極22および第2電極23を第1基材21に固定した時の距離wが同じとなるようにするため、第1電極22および第2電極23は相似形とすればよい。また、遮蔽部32(第1遮蔽部32a)の内形35は、第1電極22の外形(換言すると、無端状の第1電極外面22c)と相似形であり、且つ、第1電極22の外形(換言すると、Z方向に見た時の無端状の第1電極外面22cの形状。)より大きくすればよい。変形例1に係るデバイスは、第1電極22および第2電極23、並びに、遮蔽部32の形状が異なる以外は図1乃至図3に示すデバイス1と同じである。したがって、その他の構成要素の詳しい記載は省略する。
【0034】
(デバイス1の変形例2)
図1乃至図3に示す例では、第1電極22および第2電極23はZ方向に見た際に無端状に形成されている。代替的に、図4に示すように、第1電極22および第2電極23は略板状に形成されてもよい。図4Aはデバイス1を構成する電極部2の概略上面図で、図4B図4AのX-X’方向の矢視断面図、図4C図4AのY-Y’方向の矢視断面図である。図5Aは蓋部3の概略上面図で、図5B図4Bに示す電極部2に蓋部3を嵌合し、第1端子41および第2端子42を挿入した状態を示す断面図である。
【0035】
図4に示す例では、略板状の第1電極22および第2電極23を略平行となるように第1基材21に固定し、サンプル収容部24からサンプルが流出しないように、略平行に配置した第1電極22および第2電極23の両端部に非導電性の材料で形成した提部21aが形成されている以外は、図1乃至図3に示す電極部2と同じである。堤部21aは、第1基材21と一体形成されてもよい。代替的に、堤部21aは、第1基材21とは別体として形成され、第1基材21ならびに第1電極22および第2電極23に液密となるように固定されてもよい。固定方法は、接着剤または固定部材を用いて固定すればよい。
【0036】
図1乃至図3に示すデバイス1の蓋部3の遮蔽部32は、第1電極22の第1電極外面22cを遮蔽するように形成されている。一方、変形例2に係るデバイス1の遮蔽部32は、第1電極22および第2電極23に使用者が接触することを防止するため、少なくとも、第1電極外面22cおよび第2電極外面23cを遮蔽するように形成されている点で図1乃至図3に示すデバイス1と異なる。なお、図5に示す例では、遮蔽部32は、第1電極外面22cおよび第2電極外面23cに加え、堤部21aの側面も遮蔽するように形成されている。代替的に、遮蔽部32は第1電極外面22cおよび第2電極外面23cのみを遮蔽し、第2基材31が堤部21aの先端に当接するようにすることで、第2基材31および遮蔽部32でサンプル収容部24が露出しないようにしてもよい。変形例2に係るデバイス1は、第1電極22および第2電極23の形状、並びに、遮蔽部32の形状および遮蔽する対象が異なり、且つ、電極部2が堤部21aを有する以外は図1乃至図3に示すデバイス1と同じである。したがって、その他の構成要素の詳しい記載は省略する。
【0037】
(デバイス1の変形例3)
図1乃至図3に示す例では、蓋部3はZ方向に見た際に略円形状である。換言すると、第2基材31は、第1端子挿入孔33および第2端子挿入孔34以外に孔部は形成されていない。代替的に、図6に示すように、蓋部3の第2基材31の中央部には、孔が形成されていてもよい。図6Aは変形例3に係る蓋部3の概略上面図で、図6B図1Bに示す電極部2に変形例3に係る蓋部3を嵌合し、第1端子41および第2端子42を挿入した状態を示す断面図である。
【0038】
図6Aおよび図6Bに示す例では、第2基材31の中央部分に孔が形成されている。そのため、使用者が第2電極23の第2電極外面23cに接触することを防止するための第2遮蔽部32bが、第2基材31から突出するように形成されている。図6Aおよび図6Bに示す例では、第2電極23は略円形状であることから、第2遮蔽部32bは、第2電極外面23cより小さな外形を有する略円形状に形成すればよい。図示は省略するが、第1電極22および第2電極23が非円形状の場合、第2遮蔽部32bは第2電極外面23cよい小さな内形を有する相似形に形成すればよい。変形例3に係るデバイス1は、蓋部3の第2基材31の中央に孔部が形成され且つ第2遮蔽部材32bが形成される以外は図1乃至図3に示すデバイス1と同じである。したがって、その他の構成要素の詳しい記載は省略する。
【0039】
変形例3に係る蓋部3では、第2端子挿入孔34が第2遮蔽部32bの一部にも形成されている。そのため、第2遮蔽部32bは、第1遮蔽部32aと同様に、使用者が誤って第2電極23に接触することを防止する遮蔽機能と、第2端子42の位置決め機能という異なる効果を同時に奏する。
【0040】
なお、図示は省略するが、図2および図3に示す蓋部3に、第2遮蔽部32bを追加形成してもよい。図2および図3に示す例では、蓋部3の第2基材31の中央部に孔が形成されていないことから、電極部2に蓋部3を嵌合した状態で使用者が第2電極23に接触することはない。したがって、第2遮蔽部32bの形成は必須ではない。一方、図2および図3に示す蓋部3に第2遮蔽部32bを形成することで、第2端子42の位置決め機能が向上する。
【0041】
(デバイス1の変形例4)
図1乃至図3に示す例では、第1端子挿入孔33および第2端子挿入孔34は、蓋部3の第2基材31に形成され、第1端子41および第2端子42はZ方向に挿入をされている。代替的に、図示は省略するが、第1端子挿入孔33および/または第2端子挿入孔34は、遮蔽部32に形成されてもよい。変形例4に係るデバイスは、蓋部3における第1端子挿入孔33および/または第2端子挿入孔34が形成される位置が異なる以外は図1乃至図3に示すデバイス1と同じである。したがって、その他の構成要素の詳しい記載は省略する。
【0042】
なお、上記に例示した変形例1~4は、デバイス1が採用可能な変形例の一例にすぎず、その他の変形例であってもよい。また、変形例1~4に記載した変形例から選択した2以上の変形例を組み合わせてもよい。
【0043】
本出願で開示するデバイス1は、以下の効果を奏する。
(1)デバイス1は、第1基材21に固定した第1電極22および第2電極23を含む電極部2と蓋部3で構成されている。したがって、構造が非常にシンプルである。
(2)特許文献1等に記載の従来のデバイスは、電源との接続性を向上するため、第1電極および第2電極自体に接続用の端子が連結している。そのため、電極が露出した状態で電源と容易に接続できることから、使用者の不注意により感電する恐れがあった。一方、本出願で開示するデバイス1は、電極部2を蓋部3で遮蔽した状態で、第1端子41および第2端子42を挿入し、第1電極22および第2電極23に端子が安定的に接触できる構造となっている。つまり、本出願の蓋部3は、電極部2を使用者から遮蔽するという機能と、第1端子41および第2端子42の位置決め機能という異なる機能を同時に奏する。
(3)第1電極22および第2電極23が無端状に形成される実施形態では、サンプル収容部24の容量を大きくできる。例えば、実験室レベルで細胞融合等を行う場合には、極微小な平行電極を基板上に形成したデバイスで充分可能である。一方、産業レベルで細胞融合等を行う場合は、サンプル収容部の容量を大きくすることが望ましいが、サンプル収容部を大きくすると高電圧を印加する必要があり、感電した際のリスクが大きくなる。一方、本出願で開示するデバイス1は、電極部2に蓋部3を嵌合した状態で第1端子41および第2端子42を蓋部3に形成した挿入孔を介して、それぞれ、第1電極22および第2電極23に接続する。したがって、本出願で開示するデバイス1の構成により、高電圧を印加する場合でも使用者の感電リスクを軽減できる。
(4)第1電極22および第2電極23が、無端状且つ非円形状の場合、または、略板状であり且つ略平行となるように第1基材21に固定されている場合、電極部2に蓋部3を嵌合した状態で蓋部3が電極部2に対して回転することはない。したがって、デバイス1の取り扱いの利便性が向上する。
【0044】
(デバイス1が採用可能な任意付加的事項)
次に、図7を参照してデバイス1が採用可能な任意付加的事項について説明する。図7は、任意付加的事項の概略を説明するための図で、電極部2をZ方向にみた概略上面図である。図7に示す例では、
・第1電極外面22cに、第1端子挿入孔33を介して挿入した第1端子41の一部を収容する第1凹部22dが形成され、
・第2電極外面23cに、第2端子挿入孔34を介して挿入した第2端子42の一部を収容する第2凹部23dが形成され、
・第1端子挿入孔33および第2端子挿入孔34の位置を調整する、
以外は、図1乃至図3に示す実施形態と同じである。したがって、重複記載となることから第1凹部22dおよび第2凹部23d以外の記載は省略する。
【0045】
図7に示す例では、第1端子41の一部が第1凹部22dに収容されることから、第1端子41と第1電極22をより確実に接触することができるという効果を奏する。また、第2端子42の一部が第2凹部23dに収容されることから、第2端子42と第2電極23をより確実に接触することができるという効果を奏する。なお、図示は省略するが、第1電極22および第2電極23が非円形状の場合でも、略板状の場合でも、前述の効果が奏する。
【0046】
なお、第1電極22および第2電極23が略円形状の場合、図3Bに示す状態において、デバイス1の使用中に蓋部3と電極部2が相対回転し、作業の妨げになる可能性がある。一方、図7に示す例では、第1端子挿入孔33に挿入された第1端子41の一部が第1凹部22dに収容されることから、第1端子41は電極部2および蓋部3が相対回転することを防止するストッパーとしても機能する。なお、電極部2および蓋部3の相対回転のストッパーとの観点で第1凹部22dまたは第2凹部23dを用いる場合は、第1凹部22dまたは第2凹部23dの何れか一方を用いれば効果を達成するが、勿論両方を用いてもよい。また、図7に示す例では、第1凹部22dは第1電極外面22cに形成され、第2凹部23dは第2電極外面23cに形成されている。代替的に、図示は省略するが、第1凹部22dは第1電極22の第1突出端22aから第1電極22の一端方向に形成された筒状の凹部(換言すると、第1突出端22aに形成された開口以外は第1電極22で覆われている。)であってもよいし、第2凹部23dは第2電極23の第2突出端23aから第2電極23の一端方向に形成された筒状の凹部(換言すると、第2突出端23aに形成された開口以外は第2電極23で覆われている。)であってもよい。
【0047】
図7に示す任意付加的追加事項は、上述のデバイス1およびその変形例の何れの実施形態にも追加できることは言うまでもない。
【0048】
(抵抗測定方法の実施形態)
次に、抵抗測定方法の実施形態について説明する。実施形態に係る抵抗測定方法は、上述したデバイス1の何れかを用いて実施される。抵抗測定方法は、
電極部2の第1電極22および第2電極23の間に形成されるサンプル収容部24に液体サンプルを投入するサンプル投入工程と、
電極部2に蓋部3を嵌合する蓋部嵌合工程と、
蓋部3を電極部3に勘合した状態で、
電源4に接続した第1端子41を第1端子挿入孔33に挿入し、第1電極22に接触させ、
電源4に接続した第2端子42を第2端子挿入孔34に挿入し、第2電極23に接触さる、
第1端子41および第2端子42挿入工程と、
第1電極22および第2電極23に電圧または電流を印加する電圧または電流印加工程と、
液体サンプルの抵抗を測定する抵抗測定工程と、
を含む。
【0049】
液体サンプルは、電圧または電流を印加することで抵抗変化を測定できれば特に制限はなく、例えば、生化学実験に用いるTAEやPBS等の溶液を用いればよい。また、抵抗測定工程は、液体サンプルの抵抗を測定できれば特に制限はない。なお、サンプルに電流Iを印加すると、抵抗Rとその抵抗Rに電圧Vが発生し、抵抗R=電圧V/電流Iの関係となる。上記関係に基づく抵抗測定の方式としては、サンプルに定電流を印加する方式、サンプルの両端に定電圧を印加する方式等が知られている。抵抗測定装置は、上記方式の抵抗演算に使用できる定電圧または定電流を印加できる電源を含めばよい。当該電源を含む公知の抵抗測定装置としては、限定されるものではないが、株式会社ベックス社製のGenome Editor、CUY21EDIT II等が挙げられる。上記のとおり、本明細書において「電源」と記載した場合、文字通りの「電源」に加え、「電源を含む装置」を包含する概念である。
【0050】
(細胞融合方法の実施形態)
次に、細胞融合方法の実施形態について説明する。実施形態に係る細胞融合方法は、上述したデバイス1の何れかを用いて実施される。細胞融合方法は、
電極部2の第1電極22および第2電極23の間に形成されるサンプル収容部24に細胞を含むサンプル液を投入するサンプル投入工程と、
電極部2に蓋部3を嵌合する蓋部嵌合工程と、
蓋部3を電極部3に勘合した状態で、
電源4に接続した第1端子41を第1端子挿入孔33に挿入し、第1電極22に接触させ、
電源4に接続した第2端子42を第2端子挿入孔34に挿入し、第2電極23に接触さる、
第1端子41および第2端子42挿入工程と、
第1電極22および第2電極23に電圧を印加する電圧印加工程と、
電圧の印加により細胞を融合する細胞融合工程と、
を含む。
【0051】
細胞は、電圧を印加することで細胞融合する細胞であれば特に制限はなく、公知の細胞を用いればよい。電圧印加工程は、細胞融合できる範囲内で電圧を印加すればよい。限定されるものではないが、交流の場合は1~85V、直流の場合は1~3000V程度が挙げられる。電源としては公知の細胞融合用電源装置を用いることができる。限定されるものではないが、株式会社ベックス社製のCFB16-HB等が挙げられる。
【0052】
(エレクトロポレーション方法の実施形態)
次に、エレクトロポレーション方法の実施形態について説明する。実施形態に係るエレクトロポレーション方法は、上述したデバイス1の何れかを用いて実施される。エレクトロポレーション方法は、
電極部2の第1電極22および第2電極23の間に形成されるサンプル収容部24に細胞および導入物質を含むサンプル液を投入するサンプル投入工程と、
電極部2に蓋部3を嵌合する蓋部嵌合工程と、
蓋部3を電極部3に勘合した状態で、
電源4に接続した第1端子41を第1端子挿入孔33に挿入し、第1電極22に接触させ、
電源4に接続した第2端子42を第2端子挿入孔34に挿入し、第2電極23に接触さる、
第1端子41および第2端子42挿入工程と、
第1電極22および第2電極23に電圧を印加する電圧印加工程と、
電圧の印加により細胞内に導入物質を導入する物質導入工程と、
を含む。
【0053】
細胞は、電圧を印加することで物質を導入できる細胞であれば特に制限はなく、公知の細胞を用いればよい。また、導入物質は、核酸、タンパク質等、公知の物質を用いることができる。電圧印加工程は、細胞内に導入物質を導入できる範囲内で電圧を印加すればよい。限定されるものではないが、ポレーションパルス(PpまたはPLPp)は1~1000V、ドライビングパルス(Pd)は1~100Vが挙げられる。電源としては公知のエレクトロポレーション用電源装置を用いることができる。限定されるものではないが、株式会社ベックス社製のCUY21EDIT II、CUY21EX等が挙げられる。
【0054】
以下に実施例を掲げ、各実施形態を具体的に説明するが、この実施例は単にその具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は、発明の範囲を限定したり、あるいは制限するものではない。
【実施例
【0055】
<実施例1>
[デバイスの作製]
以下の手順により、デバイスを作製した。
(1)電極部2の作製
電極部2の第1基材21(樹脂部分)は材料としてポリメチルペンテン(三井化学株式会社、型番 RT18)を使用し、射出成型で作製した。
第1電極22および第2電極23は、ステンレス(SUS304)を使用して切削加工にて作製した。第1基材21と第1電極22および第2電極23は、PEEK樹脂製ネジ(株式会社ウィルコ、型番PEC-0310)でネジ止めし、さらにシリコンゴム(信越シリコーン、型番KE-441-T)にて目止めした。
作製した電極部2の写真を図8Aに示す。第1電極22および第2電極23は円筒状に形成され、第1電極22および第2電極23の厚さLは約5mmであった。第1電極22内面22bの直径は約75mmで、第1電極22と第2電極23の幅wは約5mmであった。また、図8Aに示すように、第1電極外面22cには第1端子41の一部を収容する第1凹部22dが形成され、第2電極外面23cには第2端子42の一部を収容する第2凹部23dが形成された。
【0056】
(2)蓋部3の作製
蓋部3の材料としてポリメチルペンテン(三井化学株式会社、型番 RT18)を使用し、第1遮蔽部32aおよび第2遮蔽部32bを含むように射出成型で作製した。作製した蓋部3の写真を図8Bに示す。図8Bに示すように、第2基材32から第1遮蔽部32aの一部に凹部を形成するように第1端子挿入孔33が形成された。また、第2基材32から第2遮蔽部32bの一部に凹部を形成するように第2端子挿入孔34が形成された。
【0057】
<実施例2>
[細胞融合の実施]
1.材料
実験に用いた材料は以下のとおり。
・細胞融合用バッファー:0.3Mマンニトール、0.1mM MgCl、0.1mM CaCl
・細胞株:JKT-beta-del(JCRB0147)
【0058】
2.実験手順
以下の手順で細胞融合実験を行った。
(1)JKT-beta-delを培養した。
(2)培養した細胞数を計測し、細胞数が1x10^7cells/mLになるように350×g、5min、4℃で遠心分離した。
(3)上清除去し、細胞融合用バッファーに懸濁した。
(4)遠心分離およびバッファーの懸濁を2回繰り返した。
(5)細胞懸濁液5mlを、実施例1で作製した第1電極および第2電極の間に形成されたサンプル収容部に投入した。
(6)電源として、ベックス社製CFB16-HBを用いた。電源に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入して第1電極に接触させ、電源に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入して第2電極に接触させ、以下の条件で電圧を印加することで細胞融合を行った。
・ACV:70V、AC Time:20S、DCV:1200V、On Time:30μs、Off Time:500ms,DC cycles:3、Post Time:7s、Fade:On
(7)細胞を観察し、融合を確認した。
【0059】
図9Aは電圧印加前の写真、図9Bは電圧印加後の写真、図9C図9Bを拡大した写真である。図9Cの矢印に示す部分が融合した細胞を示している。以上の結果から、本出願で開示するデバイスを用いることで、細胞融合ができることを確認した。なお、エレクトロポレーションの実験は省略するが、細胞融合が実施できたことから、エレクトロポレーションも実施できることは実験するまでもなく明らかである。
【0060】
<実施例3>
[抵抗の測定]
次に、実施例1で作製したデバイスを用いて、液体の抵抗を測定する実験を以下の手順で行った。
1.サンプル
・10×PBS(-)(富士フイルム和光純薬社製)
・50×TAE(ニッポンジーン社製)
【0061】
2.実験手順
以下の手順で液体の抵抗を測定した。
(1)以下の結果に示す濃度および容量の液体を、実施例1で作製した第1電極および第2電極の間に形成されたサンプル収容部に投入した。
(2)抵抗測定装置として、ベックス社製Genome Editorを用いた。抵抗測定装置に接続した第1端子を第1端子挿入孔に挿入して第1電極に接触させ、抵抗測定装置に接続した第2端子を第2端子挿入孔に挿入して第2電極に接触させ、サンプルの抵抗を測定した。
(3)測定結果
以下に、サンプルの濃度および投入した容量、並びに、測定した抵抗値を記載する。なお、抵抗値は3回測定した結果を記載する。
a:1×PBSに希釈、容量10ml
0.002kΩ、0.001kΩ、0.001kΩ。
b:0.1×PBSに希釈、容量5ml
0.041kΩ、0.040kΩ、0.040kΩ。
c:0.1×PBSに希釈、容量10ml
0.016kΩ、0.016kΩ、0.016kΩ。
d:1×TAEに希釈、容量10ml
0.019kΩ、0.022kΩ、0.020kΩ。
【0062】
以上の結果から、実施例1で作製したデバイスを用いることで、溶液の抵抗を測定できることを確認した。
【0063】
一般的に、細胞融合やエレクトロポレーションを行うデバイスと、液体の抵抗を測定するデバイスは異なる。しかしながら、本出願で開示するデバイスは、蓋部で安全性を確保しながら、抵抗測定装置、細胞融合装置およびエレクトロポレーション装置の何れにも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本出願で開示するデバイスは、シンプルな構造でありながら、抵抗測定装置、細胞融合装置またはエレクトロポレーション装置として用いることができ、且つ、感電を防止できることから安全性が高い。したがって、分析分野、医療分野等で有用である。
【符号の説明】
【0065】
1…デバイス、2…電極部、21…第1基材、21a…堤部、22…第1電極、22a…第1突出端、22b…第1電極内面、22c…第1電極外面、22d…第1凹部、23…第2電極、23a…第2突出端、23b…第2電極内面、23c…第2電極外面、23d…第2凹部、24…サンプル収容部、25…固定部材、26…外形、3…蓋部、31…第2基材、32…遮蔽部、32a…第1遮蔽部、32b…第2遮蔽部、33…第1端子挿入孔、34…第2端子挿入孔、35…内形、4…電源、41…第1端子、42…第2端子、
【要約】      (修正有)
【課題】抵抗測定装置、細胞融合装置およびエレクトロポレーション装置の何れにも使用でき、且つ、シンプルな構成で且つ安全性が高いデバイスを提供する。
【解決手段】サンプルに電圧または電流を印加するためのデバイスであって、該デバイスは、電極部2と、非導電性材料で形成された蓋部3とを含み、電極部は、非導電性材料で形成された第1基材21と、第1電極と、第2電極とを含み、第1電極および第2電極は、互いに非接触となるように第1基材に固定され、第1電極および/または第2電極に使用者が接触することを防止するための遮蔽部32と、電源に接続するための第1端子41を電極部および蓋部が嵌合した状態で蓋部を介して第1電極に接触させるための第1端子挿入孔33と、電源に接続するための第2端子42を電極部および蓋部を嵌合した状態で蓋部を介して第2電極に接触させるための第2端子挿入孔34とを含むデバイス1。
【選択図】図3
図1
図2
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図9