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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ガス抜きピン
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/34 20060101AFI20241114BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B29C45/34
B29C45/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023214145
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390027753
【氏名又は名称】フルヤ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004129
【氏名又は名称】弁理士法人石田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 貴
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123118(JP,A)
【文献】特開平6-285864(JP,A)
【文献】特開平6-126786(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0156271(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0049291(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/34
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用金型装置の構成部材に使用され、先端部に複数のプレートを有し、該複数のプレートの間隙をガスが通過するようにしたガス抜きピンにおいて、
前記複数のプレートの基端側に取り付けられるピン基端側本体部と、
前記ピン基端側本体部の少なくとも一部と前記複数のプレートとを保持するピン先端側本体部と、
前記ピン基端側本体部と前記ピン先端側本体部とを固定する固定手段と、
を備え、
前記固定手段を解除することにより前記ピン基端側本体部、前記ピン先端側本体部を分離可能とするとともに、前記複数のプレートを当該プレートごとに分離可能としたことを特徴とする、ガス抜きピン。
【請求項2】
前記プレートは、第1面に、長手方向に連続する第1溝部を有し、一の前記プレートの前記第1面と他の前記プレートの第2面とを当接することにより前記一のプレートの前記第1溝部と前記他のプレートの第2面によって前記間隙を形成したことを特徴とする、請求項1に記載のガス抜きピン。
【請求項3】
前記プレートは、少なくとも第1面に幅方向に連続する第2溝部を有し、かつ、前記第2の溝部内に第1貫通穴を有し、
前記ピン先端側本体部は、第2貫通穴を有し、
前記第1溝部によって形成される第1溝部形成空間と、前記第2溝部によって形成される第2溝部形成空間と、前記第1貫通穴によって形成される第1貫通穴形成空間と、前記第2貫通穴によって形成される第2貫通穴形成空間が、連続した第1流路を形成し、先端部から導入されるガスが前記第1流路によって排出されるようにしたことを特徴とする、請求項2に記載のガス抜きピン。
【請求項4】
前記ピン先端側本体部は、周方向に連続する第3溝部をその外周面に有し、前記第2貫通穴は前記第3溝部内に開口し、さらに、前記第3溝部から長手方向に連続して第4溝部を有し、
第3溝部と前記構成部材との間に形成される第3溝部形成空間と、第4溝部と前記構成部材との間に形成される第4溝部形成空間が、連続した第2流路を形成し、前記第1流路と前記第2流路が連続した第3流路を形成し、先端部から導入されるガスが前記第3流路によって排出されるようにしたことを特徴とする、請求項3に記載のガス抜きピン。
【請求項5】
前記ピン先端側本体部は第1嵌合孔を備え、前記ピン基端側本体部は第2嵌合孔を備え、前記固定手段が、前記第1嵌合孔および第2嵌合孔に嵌合することを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれか1項に記載のガス抜きピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、射出成形用金型装置に用いられるエジェクターピン、スプルーロックピン等のピンであって、ガス抜きの機構を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形の過程において、射出成形用金型装置の構成部材(金型、金型の近傍の構成部材を含む。)内で存在する空気や樹脂材料を溶融する際に生じた気体などのガスを、当該構成部材内から除去するために、当該構成部材にはガス抜きの機構が設けられている。射出成形用金型装置の構成部材に用いられるエジェクターピン、スプルーロックピン等のピンにおいても、ガス抜きの機構を設けることができる。以下、ガス抜きの機構を有するピンを、ガス抜きピンという。
【0003】
ガス抜きピンとしては、複数のスリットからなるガスベントを設けることにより、射出成形で発生するガスを排出するガス抜きピンであって、ガスベントは金型のキャビティ側の端面から一定の長さを有し、断面積が前記ガスベントよりも大きく、かつキャビティ側とは反対側の端面まで伸びた孔からなるガスニゲに連通し、ガスベント入口からガスニゲとの接合箇所まではガスの排出をするための勾配を設けたガス抜きピンが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、先端部分はスリット形状を有するものではないが、基端部分に対して先端部分を着脱交換可能に組み付けて構成し、基端部分と先端部分は夫々装着状態で互いに連通する通路を有し、先端部分が多孔質材料で構成されている、ガス抜きピンが公知である(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4678616号
【文献】実開平7-31330
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係るガス抜きピンは、先端に複数のスリットを形成するために、複数のガスベントピースを彫り込みに埋め込んで接着し、レーザー溶接及び研削加工による追加工を行って構成される。
【0007】
ガス抜きピンは、長期間に亘る使用により溶融樹脂成分の固化物による目詰まりが生じやすいところ、当該構成のガス抜きピンは、目詰まりを解消することが困難である。別途開発された洗浄装置(例えば、特開2022-106260等)を用いること等により、再使用は可能となると考えられるものの、そのような洗浄装置を必要とする点で、問題がある。
【0008】
一方で、特許文献2に示すように、ピンの先端部分を多孔質材料とした場合には、当該多孔質材料からなる先端部分の目詰まりに対して洗浄が困難であることから、先端部分を着脱交換可能とすることが開示される。
ここで、特許文献2の着脱交換可能とする構成を、特許文献1に適用したとしても、結局、目詰まりした先端部分は廃棄することとなり、損失が大きい。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、特別な洗浄装置を必要とせず、目詰まりが生じても先端部分を廃棄する必要もない、分解清掃可能となる、画期的なガス抜きピンを提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【0010】
また、特許文献1において、ガス抜きピンは、先端に複数のスリットを形成するために、複数のガスベントピースを彫り込みに埋め込んで接着し、レーザー溶接及び研削加工による追加工を行って構成されるため、精度の確保においても優れているとは言えない。射出成形に使用する樹脂の種類等によって、ガスベントの最適な条件も変わることから、最適な条件となる構成に適宜変更できることが望まれる。
【0011】
このため、本発明は上記解決しようとする課題に加えて、ガスベントの最適な条件となる構成に適宜変更できるガス抜きピンを提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、射出成形用金型装置の構成部材に使用され、先端部に複数のプレートを有し、該複数のプレートの間隙をガスが通過するようにしたガス抜きピンにおいて、前記複数のプレートの基端側に取り付けられるピン基端側本体部と、前記ピン基端側本体部の少なくとも一部と前記複数のプレートとを保持するピン先端側本体部と、前記ピン基端側本体部と前記ピン先端側本体部とを固定する固定手段と、を備え、前記固定手段を解除することにより前記ピン基端側本体部、前記ピン先端側本体部を分離可能とするとともに、前記複数のプレートを当該プレートごとに分離可能としたことを特徴とする、ガス抜きエジェクターピンを、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、先端部の複数のプレートを当該プレートごとに分離可能に備えたことによって、プレート単体の洗浄が可能となり、目詰まりを解消できる。
また、ガスベントの最適な条件となる間隙を形成する複数のプレートを用いることによって、適宜ガスベントの最適な条件を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係るガス抜きピンを示す斜視図およびその一部拡大図である。
図2】本発明の実施例に係るガス抜きピンを分解した状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施例に係るガス抜きピンのプレート1を示す斜視図およびその一部拡大図である。
図4】本発明の実施例に係るガス抜きピンのピン先端側本体部の(a)平面、正面、左側面を表す斜視図、(b)平面、正面、右側面を表す斜視図である。
図5】本発明の実施例に係るガス抜きピンのピン基端側本体部を示す斜視図である。
図6】本発明の実施例に係るガス抜きピンの固定手段を示す(a)斜視図、(b)正面図、(c)平面図、(d)左側面図である。
図7】本発明の実施例に係るガス抜きピンのプレートを重合した状態を示す斜視図である。
図8】本発明の実施例に係るガス抜きピンの重合した複数のプレートとピン基端側本体部とを係合させた状態を示す斜視図である。
図9】本発明の実施例に係るガス抜きピンの複数のプレートとピン基端側本体部に対してピン先端側本体部を被嵌し、固定手段を取り付ける状態を示す斜視図である。
図10】本発明の実施例に係るガス抜きピンを射出成型用金型装置の構成部材の摺動孔に挿入した状態における、ガスの流れを示す一部断面とした斜視図である。
図11】本発明の実施例に係るガス抜きピンの重合されたプレート1に対するガスの流れを示す説明斜視図である。
図12】(a)~(d)はいずれも本発明の他の実施例に係るガス抜きピンの先端形状を例示する斜視図であり、(a)はプレートを7枚用いてフラット形状としピン先端側本体部のみをZ型形状とした先端形状、(b)はフラット形状とした先端形状、(c)は半球状とした先端形状、(d)は傾斜面を形成した先端形状である。なお、図12の各図において各プレート間にあらわれる間隙である第1溝部形成空間は図示省略している。
図13】(a)~(c)はいずれも本発明の他の実施例に係るガス抜きピンの先端形状を例示する斜視図であり、(a)は傾斜した湾曲面を形成した先端形状、(b)はプレートとピン先端側本体部の双方をZ型形状とした先端形状、(c)は凹状の湾曲面を形成した先端形状である。なお、図13の各図において各プレート間にあらわれる間隙である第1溝部形成空間は図示省略している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係るガス抜きピンは、射出成形用金型装置の構成部材に使用され、先端部に複数のプレートを有し、該複数のプレートの間隙をガスが通過するようにしたガス抜きピンであって、前記複数のプレートの基端側に取り付けられるピン基端側本体部と、前記ピン基端側本体部の少なくとも一部と前記複数のプレートとを保持するピン先端側本体部と、前記ピン基端側本体部と前記ピン先端側本体部とを固定する固定手段と、を備え、前記固定手段を解除することにより前記ピン基端側本体部、前記ピン先端側本体部を分離可能とするとともに、前記複数のプレートを当該プレートごとに分離可能なものとすることができる(第1の構成)。
【0016】
上記第1の構成によれば、先端部の複数のプレートを当該プレートごとに分離可能に備えたことによって、プレート単体の洗浄が可能となり、目詰まりを解消できる。また、ガスベントの最適な条件となる間隙を形成するプレートを用いることによって、適宜ガスベントの最適な条件を実現することができる。
【0017】
また、上記第1の構成において、前記プレートは、第1面に、長手方向に連続する第1溝部を有し、一の前記プレートの前記第1面と他の前記プレートの第2面とを当接することにより前記一のプレートの前記第1溝部と前記他のプレートの第2面によって前記間隙を形成した構成とすることができる(第2の構成)。
【0018】
上記第2の構成によれば、上記第1の構成の作用効果を奏する上に、プレート相互を当接した状態でガスを通過させる間隙を形成でき、プレートの固定を確実に行うことができる。また、第1溝部の幅、深さを変更することによって、ガスの通過条件の異なるプレートとすることができ、プレートの選択によって適宜ガスベントの最適な条件を実現することができる。
【0019】
また、上記第2の構成において、前記プレートは、少なくとも第1面に幅方向に連続する第2溝部を有し、かつ、前記第2の溝部内に第1貫通穴を有し、前記ピン先端側本体部は、第2貫通穴を有し、前記第1溝部によって形成される第1溝部形成空間と、前記第2溝部によって形成される第2溝部形成空間と、前記第1貫通穴によって形成される第1貫通穴形成空間と、前記第2貫通穴によって形成される第2貫通穴形成空間が、連続した第1流路を形成し、先端部から導入されるガスが前記第1流路によって排出されるようにした構成とすることができる(第3の構成)。
【0020】
上記第3の構成によれば、上記第1の構成および第2の構成の作用効果を奏する上に、先端部の複数のプレート間から導入されるガスを第1流路によって当該ガス抜きピンの側方へ移動でき、構成部材に設けた摺動孔との隙間から、構成部材の外へ排出することができる。
【0021】
また、上記第3の構成において、前記ピン先端側本体部は、周方向に連続する第3溝部をその外周面に有し、前記第2貫通穴は前記第3溝部内に開口し、さらに、前記第3溝部から長手方向に連続して第4溝部を有し、第3溝部と前記構成部材との間に形成される第3溝部形成空間と、第4溝部と前記構成部材との間に形成される第4溝部形成空間が、連続した第2流路を形成し、前記第1流路と前記第2流路が連続した第3流路を形成し、先端部から導入されるガスが前記第3流路によって排出されるようにした構成とすることができる(第4の構成)。
【0022】
上記第4の構成によれば、上記第3の構成の作用効果を奏する上に、第3の流路、即ち、第1の流路から第2の流路である第3溝部内へ移動させさらに当該ガス抜きピンの側周から第4溝部に移動させる流路によって、ガスをピンの基端側まで効率的に誘導し、排出することができる。
【0023】
また、上記第1から第4の構成において、前記ピン先端側本体部は第1嵌合孔を備え、前記ピン基端側本体部は第2嵌合孔を備え、前記固定手段が、前記第1嵌合孔および第2嵌合孔に嵌合する構成とすることができる(第5の構成)。
【0024】
上記第5の構成によれば、上記第1から第4の構成の作用効果を奏する上に、ピン先端側本体部の第1嵌合孔、ピン基端側本体部の第2嵌合孔を連通して固定手段により固定することができる。また、当該固定手段は、第1嵌合孔および第2嵌合孔から解除(脱着を含む。)することができる。
【実施例
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施例に係るガス抜きピンPについて説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成が省略されたりしている。また、各図に示された構成間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0026】
本発明の実施例に係るガス抜きピンPは、直径6mm、長さ150mm程度の大きさを有し、図1および図2に示すように、複数のプレート1と、ピン先端側本体部2と、ピン基端側本体部3と、固定手段4と、から構成されるものである。本実施例に係るガス抜きピンPは、先端がZ型のスプルーロックピンとしている。
【0027】
本実施例におけるプレート1は、図3に示すように、厚さ0.3mm程度、長さ24mm、幅3mm程度の金属製の板部材である。先端側は当該スプルーロックピンの先端において平坦な端面を有する平板である。
【0028】
図3に表れるプレート1の第1面10Aには、先端から基端側に至る方向(長手方向)に向けて、第1溝部11を複数平行して設けている。本実施例においては、第1溝部11は4本設けている。第1溝部11は、第2溝部12の位置まで設けている。
尚、第2溝部12からプレート1の基端部までの位置には、製造過程の関係から第1溝部11と同様の形状が表れていてもよいし、平滑面であってもよい。
また、図3に表れないプレート1の裏面となる第2面10Bは、第1溝部11を形成することなく、平滑面としている。
【0029】
第2溝部12は、プレート1の先端側寄り位置において幅方向に設けられている。
第2溝部12は、プレート1の先端から5mm程度の位置で幅2mmに亘って形成されている。第2溝部12は、第1溝部11よりも深く形成されている。
【0030】
また、第2溝部12の中央位置には、直径1mm程度の第1貫通穴13が穿設されている。
【0031】
プレート1の基端部は、鉤状輪郭を有するプレート側鉤状輪郭部14が形成されている。プレート側鉤状輪郭部14は、ピン基端側本体部3との係合部として機能する部分である。プレート側鉤状輪郭部14は、プレート側狭幅部14Aと該プレート側狭幅部14Aから基端側に連続するプレート側広幅部14Bとから構成される。
【0032】
本実施例においては、以上に示すプレート1が8枚重合される。
【0033】
なお、本実施例においては、保持穴25の開口輪郭である四角形状の四隅は、厳密には円弧形状となっており、重合されるプレート1のうち両端に配置されるプレート1a、1bについては、保持穴25の開口輪郭の形状にあわせて、R面取加工を行ったものとしている。即ち、両端に配置されるプレート1のうち、一枚のプレート1aは第1面側の両端にR面取加工がされており、他の一枚のプレート1bは第2面側の両端にR面取加工がされている。他の6枚のプレート1cは、R面取加工はされないものとしている。
【0034】
次に、本実施例に係るピン先端側本体部2について説明する。ピン先端側本体部2は、複数のプレート1とピン基端側本体部3の一部を保持する。実施例に係るピン先端側本体部2は、図4に示すように、軸方向(長手方向)に角穴状の保持穴25を有する略円筒部材であり、直径6mm、長さ40mm程度の大きさを有する。先端はスプルーを引掛けるための側面視Z形状の輪郭を有する。
【0035】
プレート1の第1貫通穴13に対応する位置、即ち、ピン先端側本体部2の先端に近い位置(先端から5mm程度の位置)には、第2貫通穴20を設けている。そして、第2貫通穴20を有する外周面には、周方向に第3溝部21を設けている。換言すれば、第3溝部21内に第2貫通穴20が開口している。
【0036】
ピン先端側本体部2の外周面において、第2貫通穴20が形成された第3溝部21から基端に向けて、長手方向に第4溝部22を設けている。第4溝部22は第3溝部21と同等の深さで形成されている。
【0037】
またピン先端側本体部2の長手方向において基端寄りの位置に、固定手段4に対応する第1嵌合孔23Aおよび第3嵌合孔23Bを有している。
第1嵌合孔23Aおよび第3嵌合孔23Bは、いずれもピン先端本体部2の外側から内側の角穴25まで貫通している。また第3嵌合孔23Bは、第1嵌合孔23Aと軸先端本体部2の回転軸Sを基準に対称となる位置に設けられている。このため第1嵌合孔23Aと第3嵌合孔23Bは、平面視において中心軸Sを基準に180度間隔で、設けられることとなる。第1嵌合孔23Aの内面の1箇所に微小な逆戻り防止用の突起24Aを形成している。また第3嵌合孔23Bの内面の4箇所に微小な抜け防止用の突起24Bを形成している。第1嵌合孔23Aは、固定手段4を嵌合させる際の入口側となる嵌合孔であり、第3嵌合孔23Bは、反対側(出口側)となる嵌合孔である。
【0038】
次に、本実施例に係るピン基端側本体部3について説明する。
基端側本体部3は、図5に示すように、基端にピン頭部30を有し、ピン頭部30から先端側に連続する円柱状部31と、該円柱状部31から先端側に連続する角柱状の先端柱状部32と、該先端柱状部32の先端に形成される本体側鉤状輪郭部33を有する。
本体側鉤状輪郭部33は、本体側狭幅部33Aと該本体側狭幅部33Aから先端側に連続する本体側広幅部33Bとから構成される。
円柱状部31と先端柱状部32の境界には、段部35が形成される。また先端柱状部32には、固定手段4に対応する第2嵌合孔34が、その側面に開口して設けられる。
段部35から第2嵌合孔34までの距離は、ピン先端側本体部2の基端から第1嵌合孔23Aまでの距離と一致している。
【0039】
円柱状部31の外径寸法は6mmであり、ピン先端側本体部2の外径寸法と概ね共通する。また先端柱状部32は、重合された複数のプレート1と、幅方向断面の輪郭の外形寸法が共通する矩形であり、いずれもピン先端側本体部2の保持穴25に嵌合する形状、寸法である。
【0040】
本実施例に係る固定手段4は、金属製のキーである。本実施例においては、図6(a)から(d)に示すように、概ね直方体形状を有する。表面には、差込方向に連続する凹部40と、該凹部40の形成されない平坦部41とが連続して形成されている。なお省略される底面図は(c)平面図と同一形状であり、省略される右側面図は(d)左側面図と左右対称である。このため、表面(平面)側と裏面(底面)側の形状が同一であるため、表裏を逆にしても第1嵌合孔23Aに対して挿入可能な形状としている。
【0041】
以上の構成を有するプレート1、ピン先端側本体部2、ピン基端側本体部3、固定手段4により、本実施例に係るガス抜きピンPは、以下の手順により組み立てることができる。
【0042】
先ず、図7に示すように、互いに合同な複数のプレート1を当接して重合する。複数のプレート1を重合することにより、厚さ方向に第1貫通穴13による第1貫通穴形成空間が形成され、各プレート1間には、第1溝部11による長手方向の間隙である第1溝部形成空間11A、第2溝部12による幅方向の間隙である第2溝部形成空間12Aが形成される。また、重合された複数のプレート1の基端側には、プレート側鉤状輪郭部14が当該複数枚分の厚みを有して構成される。これによって、第1溝部形成空間11A、第2溝部形成空間12A、第1貫通穴形成空間13Aは繋がった空間となる。なお、プレート1相互は当接して重合するだけでよく、相互の接着等は行わない。
【0043】
次に、図8に示すように、プレート側鉤状輪郭部14(即ち、プレート1側の係合部)と、ピン基端側本体部3の本体側鉤状輪郭部33(即ち、ピン基端側本体部3の係合部)とを、係合させる。具体的には、プレート側狭幅部14Aと本体側広幅部33Bが当接し、かつ、プレート側広幅部14Bと本体側狭幅部33Aが当接するように係合させる。厚さ方向から相互を相対的にスライドさせることによって、係合させることができる。
複数のプレート1とピン基端側本体部3とが係合することによって、当該複数のプレート1とピン基端側本体部3の先端柱状部32とが一本の角柱を形成するように配置される。
【0044】
そして、図9に示すように、複数のプレート1が係合したピン基端側本体部3の先端側から、ピン先端側本体部2を被嵌する。ピン先端側本体部2の基端をピン基端側本体部3の段部35に当接させる。段部35から第2嵌合孔34までの距離は、ピン先端側本体部2の基端から第1嵌合孔23Aまでの距離と一致しているため、第1嵌合孔23Aと第2嵌合孔34は重なる位置となる。また段部35からプレート1の第1貫通穴13までの距離は、ピン先端側本体部2の基端から第2貫通穴20までの距離と一致するものとしている。このため、第1貫通穴13と第2貫通穴20は重なる位置となる。換言すれば、第1貫通穴形成空間13A(第1貫通穴13によって形成される空間)と第2貫通穴形成空間20A(第2貫通穴20によって形成される空間)が接続される。この状態において、保持穴25の先端から複数のプレートの先端が露呈する。
【0045】
さらに図9に示すように、第1嵌合孔23A、第2嵌合孔34、第3嵌合孔23Bに対して、第1嵌合孔23A側から順次固定手段4を嵌合する。第1嵌合孔23Aの微小な突起24Aは、固定手段4の凹部40に摺動して平坦部41を乗り上げることで、固定手段4の逆戻りを防止する。また、第3嵌合孔23Bの微小な突起24Bは、固定手段4の差込側が第3嵌合孔23Bから抜けることを防止する。以上の手順によって、本実施例に係るガス抜きピンPは構成される。
【0046】
本実施例に係るガス抜きピンPを分解する際には、上記組立手順と逆手順によって行うことができる。
【0047】
即ち、先ず、固定手段4の取り外し作業を行う。固定手段4の取り外しは、治具となる棒状物(図示省略する。)で一方の第3嵌合孔23B側から固定手段4を押圧し、180度位置となる(反対側の)他方の第1嵌合孔23Aから、当該固定手段4を押し出すことで行うことができる。
【0048】
次に、ピン先端側本体部2を長手方向にスライドさせてピン基端側本体部3から離脱させる。
【0049】
そして、露出した複数のプレート1を厚さ方向にスライドさせて、ピン基端側本体部3から取り外すことができる。
【0050】
以上に示した実施例に係るガス抜きピンPのガス抜きの経路を以下に説明する。
【0051】
図10および図11に示すように、プレート1の先端側に開口する間隙(即ち、一のプレート1の第1面10Aに形成される第1溝部11と、これに当接する他のプレート1の第2面10Bとによって形成された間隙、即ち、第1溝部形成空間11A)からガスが導入される。第1溝部11と第2溝部12は連通していることから、ガスは、第2溝部12によって形成される間隙(即ち、一のプレート1の第1面10Aに形成される第2溝部12と、これに当接する他のプレート1の第2面10Bとによって形成された間隙、即ち、第2溝部形成空間12A)へ移動し、さらに、第2溝部12に開口する第1貫通穴13の第1貫通穴形成空間13Aへ移動する。
その後、ガスは、第1貫通穴13と重なって配置される第2貫通穴20の第2貫通穴形成空間20Aへ移動し、当該ガス抜きピンPの側方から外部の第3溝部形成空間21A(第3溝部21と射出成型用金型装置の構成部材5の摺動孔50の内面で形成される空間)および第4溝部形成空間22A(第4溝部22と射出成型用金型装置の構成部材5の摺動孔50の内面で形成される空間)へ移動し、当該構成部材5の外へ排出される。
【0052】
以上に本発明の実施例に係るガス抜きピンPについて示したが、本発明は上記実施例の構成に限定されるものではない。例えば、ガス抜きピンPは、上記実施例においてはスプルーロックピンを例示しているが、当該スプルーロックピンに限らず、エジェクターピン等とすることもできる。従って、ガス抜きピンPの先端の形状は、図12図13に例示するように、ガス抜きピンPの用途に応じた形状とすることができる。なお、図12図13はあくまでも例示であり、本発明は、その技術的思想の範囲内において、適宜変更された実施例に及ぶものである。
【0053】
また、ガス抜きピンPの各部の比率や大きさ等は、上記実施例に限定されるものではない。
【0054】
また、ガス抜きピンPのプレート1の枚数は、上記実施例において8枚としているがこれに限定されるものではなく、図12図13に開示するように7枚としてもよいし、その他の枚数としてもよい。ガス抜きピンPのプレート1の形状は、本実施例では、重合されるプレート1のうち両端のプレート(1a)(1b)の形状をR面取加工して他のプレート(1c)と異なる形状としているが、本発明においては、全てのプレート1が完全に同一であってもよい。また、本発明においては、相互に全く形の異なる複数のプレート1を用いることも可能である。
【0055】
尚、本発明によれば、先端がZ型のスプルーロックピンとした場合であっても、図12(a)、図13(b)のように先端面のほぼ全域にプレート1の端部が露出する構成とすることで、当該スプルーロックピンの先端面のほぼ全域においてガスの通過を可能とすることができる。このため、効率的なガスの排出を行うことが可能である。
【0056】
また固定手段4の戻り防止、抜け防止の構造として、上記実施例においては、固定手段4に凹部40および平坦部41を設け、第1嵌合孔23Aに突起24A、第3嵌合孔23Bに突起24Bを設ける構成としているが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、固定手段4側に微小な突起を設け、第1嵌合孔23Aもしくは第3嵌合孔23Bに対応する凹部等を設けた構成とすることも可能である。また、突起等を設けず、はめあい公差を適宜決定して固定手段4の不慮の戻り、抜けを防止することも可能である。
【0057】
また固定手段4は上記実施例においてキーを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、小ピンとすることもできる。
【符号の説明】
【0058】
G ガス進行方向
P ガス抜きピン
1 プレート
1a (第1面にR面取加工を有する)プレート
1b (第2面にR面取加工を有する)プレート
1c (R面取加工を有しない)プレート
10A 第1面
10B 第2面
11 第1溝部
11A 第1溝部形成空間
12 第2溝部
12A 第2溝部形成空間
13 第1貫通穴
13A 第1貫通穴形成空間
14 プレート側鉤状輪郭部
14A プレート側狭幅部
14B プレート側広幅部
2 ピン先端側本体部
20 第2貫通穴
20A 第2貫通穴形成空間
21 第3溝部
21A 第3溝部形成空間
22 第4溝部
22A 第4溝部形成空間
23A 第1嵌合孔
23B 第3嵌合孔
24A 突起
24B 突起
25 保持穴
3 ピン基端側本体部
30 ピン頭部
31 円柱状部
32 先端柱状部
33 本体側鉤状輪郭部
33A 本体側狭幅部
33B 本体側広幅部
34 第2嵌合孔
35 段部
4 固定手段
40 凹部
41 平坦部
5 構成部材
50 摺動孔
【要約】
【課題】特別な洗浄装置を必要とせず、目詰まりが生じても先端部分を廃棄する必要もない、分解清掃可能で、ガスベントの最適な条件となる構成に適宜変更できるガス抜きピンの提供。
【解決手段】射出成形用金型装置の構成部材に使用され、先端部に複数のプレートを有し、複数のプレートの間隙をガスが通過するようにし、複数のプレートの基端側に取り付けられるピン基端側本体部と、ピン基端側本体部の少なくとも一部と複数のプレートとを保持するピン先端側本体部と、ピン基端側本体部とピン先端側本体部とを固定する固定手段とを備え、固定手段を解除することによりピン基端側本体部、ピン先端側本体部を分離可能とするとともに、複数のプレートをプレートごとに分離可能としたガス抜きピン。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13