(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】JAKキナーゼ阻害剤としての小分子化合物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20241114BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20241114BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241114BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241114BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241114BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
C07D401/14
A61K31/506
A61P1/04
A61P3/10
A61P9/00
A61P17/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P37/08
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2023521674
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CN2021120120
(87)【国際公開番号】W WO2022073425
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】202011072699.4
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522167375
【氏名又は名称】特科▲羅▼生物科技(成都)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】方 文奎
(72)【発明者】
【氏名】李 冠群
(72)【発明者】
【氏名】蔡 雨▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】潘 翔
(72)【発明者】
【氏名】朱 文浩
(72)【発明者】
【氏名】汪 ▲楊▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲増▼全
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110862380(CN,A)
【文献】特表2011-503194(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110862376(CN,A)
【文献】特表2019-514953(JP,A)
【文献】特表2016-519147(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110734428(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで表される化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される
塩である、ことを特徴とする、小分子化合物:
【化1】
ここで、
R
1~R
5はそれぞれ独立してC又はNから選択され、
Rは、
以下に示す式II又は式IIIによって表される構造を有し、
【化2】
ここで、
R
6
はC又はNから選択され、
R
7
は、水素、ハロゲン、アルキル、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R
8
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R
9
はC又はNから選択され、
R
10
は、水素、ハロゲン、アルキル、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R
11
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択される。
【請求項2】
R
1~R
5のうち最大2つがNである、ことを特徴とする、請求項1に記載の小分子化合物。
【請求項3】
R
7及びR
8は、それぞれ独立して、水素、アルキル又はシクロアルキルから選択される、ことを特徴とする、請求項
1に記載の小分子化合物。
【請求項4】
R
10及びR
11は、それぞれ独立して、水素、アルキル又はシクロアルキルから選択される、ことを特徴とする、請求項
1に記載の小分子化合物。
【請求項5】
前記アルキル基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであり、前記シクロアルキル基はシクロプロピル、シクロブチル又はシクロプロピルメチルである、ことを特徴とする、請求項
3又は
4に記載の小分子化合物。
【請求項6】
JAKキナーゼ
を阻害
するための、請求項1~
5のいずれか一項に記載の小分子化合物
を含有する薬剤。
【請求項7】
疾患の病因がいずれもJAKシグナル伝達の調節不全に関連している、自己免疫疾患及び免疫関連炎症性皮膚疾患を予防又は治療するための
薬剤であって、請求項1~
5のいずれか一項に記載の小分子化合物
を含有する薬剤。
【請求項8】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発性硬化症、I型糖尿病、シェーグレン症候群、及び血管炎のうちの少なくとも1つから選択される、請求項
7に記載の
薬剤。
【請求項9】
前記免疫関連炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、湿疹、円形脱毛症、乾癬、白斑、扁平苔癬、光沢苔癬、硬化性苔癬、脂肪織炎、座瘡、及び化膿性汗腺炎のうちの少なくとも1つか
ら選択される、請求項
7に記載の
薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[本出願の相互参照]
本発明は、2020年10月9日に提出された出願番号CN202011072699.4及び発明の名称「JAKキナーゼ阻害剤としての小分子化合物及びその用途」の特許出願の優先権を主張するものである。
【0002】
[技術分野]
本発明は、小分子化合物の分野に属し、特に、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎及び全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患、又は乾癬、湿疹、白斑及び円形脱毛症などの関連する炎症性皮膚疾患を予防又は治療、緩和するために用いられる小分子化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
JAK(ヤヌスキナーゼ、Janus Kinase)は、細胞内非受容体型チロシンキナーゼのファミリーであり、JAK1、JAK2、JAK3、及びTyk2の4つのメンバーが含まれる。JAK-STAT(Signal Transducer and Activator of Transcription proteins、転写タンパク質のシグナル伝達物質及び活性化因子)シグナル伝達経路は、炎症性サイトカインと受容体との組み合わせによって引き起こされるシグナルの細胞内伝達の主要な経路である。多くの証拠は、JAK-STATシグナル伝達経路が多くの疾患、特に関節リウマチ、エリテマトーデス、炎症性腸疾患、多発性硬化症、シェーグレン症候群、乾癬、円形脱毛症及び白斑などの自己免疫疾患、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、湿疹などのアレルギー疾患などの病因において不可欠な推進的役割を果たしていることを示している。したがって、JAKキナーゼ活性、特にJAK1、TYK2キナーゼ活性を阻害するための高効率の小分子の使用は、炎症反応に関与するサイトカイン媒介シグナル伝達経路を遮断し、それによって炎症を抑制し、自己免疫性及び/又はアレルギー性炎症性疾患を効果的に治療することができる。
【0004】
異なる炎症性疾患の発症過程において、T細胞はウイルス又は細菌感染などの異なる炎症誘発因子によって異なる方向に分化し、Th1、Th2、Th17などのT細胞サブセットを生成し、これらのT細胞はそれに応じて様々なサイトカインを生成する。例えば、ウイルス感染による急性炎症に関連するTh1細胞はIFNγ、IL-2を生成し、アレルギーに関連するTh2細胞はIL-4、IL-5、IL-13を生成し、自己免疫に関連するTh17細胞はIL-17、IL-12、IL-21、IL-22、IL-23を生成し、これらのサイトカインは細胞表面の受容体に結合し、細胞内のJAKを介して炎症シグナルを伝達して、疾患の病理学的過程を推進する。さらに重要なのは、病因が不明な多くの炎症性疾患は、異なる段階又は同じ段階に複数のT細胞サブセットが関与する複雑なメカニズムが公開されている。つまり、複数のJAK経路が関与しており、JAKを標的とした炎症性疾患の治療薬の開発に新たな用件を提示している。
【0005】
いくつかの研究では、JAK1阻害剤がTh2系アレルギー性炎症を特異的に阻害できることが報告されているが、JAK1及び/又はTYK2阻害剤の効果的な阻害に関する報告はほとんどない。しかし、JAK1/Tyk2二重阻害剤及びTyk2阻害剤は、特に自己免疫異常が病因となる炎症性疾患において、より広い臨床的展望があると考えている。さらに、より多くの炎症性疾患、特に炎症性皮膚疾患の病因には複数のJAKが関与している可能性があるため、JAK1及びTyk2の強力な単一又は二重阻害剤を開発することは非常に重要であり、特に皮膚疾患のための外用治療において、強力な阻害剤は優れた治療効果を発揮するほか、体系的な投薬による副作用を回避することができるが、これは同時に強力な活性阻害を必要とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、高効率のJAK1/Tyk2二重阻害剤及びTyk2特異的阻害剤を得て、異なる炎症性疾患の標的治療を提供することにある。例えば、JAK1/Tyk2二重阻害剤は、SLE、白斑、IBD及び湿疹及び他の炎症性疾患に適している可能性があり、Tyk2特異的阻害剤は、関節リウマチ、乾癬、円形脱毛症などの治療により適している同時に、JAK2の阻害によって引き起こされる造血阻害及び凝固異常を克服できる可能性がある。また、炎症性皮膚疾患などの外用に適したJAKファミリーの阻害剤を、病因及び症状に応じて特性の異なるものを選択し、疾患に介入して症状を抑制することにより、良好な治療効果を得ることができる。
【0007】
上記目的を達成するために、一態様において、本発明は、下記式Iで表される化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩又はプロドラッグである小分子化合物を提供する。
【化1】
ここで、
R
1~R
5はそれぞれ独立してC又はNから選択され、
Rは、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールから選択される。
【0008】
一実施形態において、R1~R5のうち最大2つがNである。
【0009】
別の実施形態において、Rは、以下に示す式IIによって表される構造を有する。
【化2】
ここで、
R
6はC又はNから選択され、
R
7は、水素、ハロゲン、アルキル、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R
8は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択される。
【0010】
別の実施形態において、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素、アルキル又はシクロアルキルから選択される。
【0011】
別の実施形態において、Rは、以下に示す式IIIによって表される構造を有する。
【化3】
ここで、
R
9はC又はNから選択され、
R
10は、水素、ハロゲン、アルキル、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R
11は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択される。
【0012】
別の実施形態において、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素、アルキル又はシクロアルキルから選択される。
【0013】
別の実施形態において、前記アルキル基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであり、前記シクロアルキル基はシクロプロピル、シクロブチル又はシクロプロピルメチルである。
【0014】
別の態様において、本発明は、さらにJAKキナーゼの阻害における上記小分子化合物の用途を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、さらにJAK関連自己免疫疾患及び免疫関連炎症性皮膚疾患を予防又は治療するための医薬品の調製における上記小分子化合物の用途を提供する。
【0016】
一実施形態において、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発性硬化症、I型糖尿病、シェーグレン症候群、及び血管炎のうちの少なくとも1つから選択される。
【0017】
別の実施形態において、前記免疫関連炎症性皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎、湿疹、円形脱毛症、乾癬、白斑、扁平苔癬、光沢苔癬、硬化性苔癬、脂肪織炎、座瘡、及び化膿性汗腺炎のうちの少なくとも1つからなる選択される。
【0018】
本発明の作用及び効果は以下のとおりである:
本発明は、JAKキナーゼのタンパク質構造、特にTyk2のタンパク質構造にしたがって、小分子化合物の意図的かつ合理的な設計を行った。合成された化合物は、最初にJAKキナーゼの生物化学的活性について試験され、IC50によってSAR(構造活性相関(structure-activity relationship))を確立し、また200nM未満のIC50を有する強力な阻害剤について細胞学的試験を実施し、化合物の選択性を決定した。具体的な活性実験データを参照すると、本発明に関与する化合物が良好なJAKキナーゼ活性及び細胞生物学的活性の阻害能力を有することが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。ここに記載された具体的な実施形態は、本発明の説明及び解釈のためにのみ使用され、本発明を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0020】
本明細書に開示される範囲のエンドポイント及び任意の値も、該正確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近づく値を含むということを理解されたい。数値範囲の場合、各範囲のエンドポイント間、各範囲のエンドポイントと個々のポイント値との間、及び個々のポイント値の間を互いに組み合わせて、1つ以上の新しい数値範囲を取得することが可能であり、これらの数値範囲は本明細書に具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0021】
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するものであり、本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解されたい。本明細書に記載の本発明をより完全に理解できるようにするために、以下の用語が用いられ、それらの定義を以下のとおりである。特に明記しない限り、ここで使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0022】
一態様において、本発明は、下記式Iで表される化合物、又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、水和物、溶媒和物、及び薬学的に許容される塩又はプロドラッグである小分子化合物を提供する。
【化4】
ここで、
R
1~R
5
はそれぞれ独立してC又はNから選択され、
Rは、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール又は置換ヘテロアリールから選択される。
【0023】
即ち、R1、R2、R3、R4及びR5は、C又はNからそれぞれ独立して選択され得る。好ましい実施形態では、R1~R5の最大3つ(即ち、0、1、2又は3)がNであってもよい。好ましい実施形態では、R1~R5の最大2つ(即ち、0、1又は2)がNであってもよい。別の好ましい実施形態では、R1~R5の最大1つ(即ち、0又は1)がNであってもよい。
【0024】
本発明によれば、好ましい実施形態において、Rは、以下に示す式IIによって表される構造を有し得る。
【化5】
ここで、
R
6はC又はNから選択されてもよく、
R
7は、水素、ハロゲン、アルキル、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択されてもよく、
R
8は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択されてもよい。
【0025】
より好ましい実施形態において、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素、アルキル又はシクロアルキルから選択されてもよく、さらに、前記アルキルはメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであってもよく、前記シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル又はシクロプロピルメチルであってもよい。
【0026】
例えば、具体的な実施形態において、R
6はCであり、R
7は水素であり、R
8はエチルである。この場合、Rは以下に示す構造を有することができる。
【化6】
【0027】
例えば、具体的な実施形態において、R
6はNであり、R
7はメチルであり、R
8はメチルである。この場合、Rは以下に示す構造を有することができる。
【化7】
【0028】
例えば、具体的な実施形態において、R
6はCであり、R
7はメチルであり、R
8はエチルである。この場合、Rは以下に示す構造を有することができる。
【化8】
【0029】
例えば、具体的な実施形態において、R
6はNであり、R
7はメチルであり、R
8は水素である。この場合、Rは以下に示す構造を有することができる。
【化9】
【0030】
本発明によれば、別の好ましい実施形態において、Rは、以下に示す式IIIによって表される構造を有する。
【化10】
ここで、
R
9はC又はNから選択され、
R
10は、水素、ハロゲン、アルキル、アミノ、アミド、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択され、
R
11は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールから選択される。
【0031】
より好ましい実施形態において、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素、アルキル又はシクロアルキルから選択され、さらに、前記アルキル基はメチル、エチル、プロピル又はイソプロピルであり、前記シクロアルキル基はシクロプロピル、シクロブチル又はシクロプロピルメチルである。
【0032】
例えば、具体的な実施形態において、R
9はNであり、R
10は水素であり、R
11はメチルである。この場合、Rは以下に示す構造を有することができる。
【化11】
【0033】
本発明によれば、別の好ましい実施形態において、Rはさらに以下に示す構造を有することができる。
【化12】
【0034】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、本発明による化合物の生物学的活性又は特性に影響を与えず、比較的非毒性である物質を意味する。即ち、該物質は、生物学的不良反応を引き起こしたり、組成物に含まれる成分のいずれと望ましくない形で相互作用したりすることなく、個体に投与することが可能である。本発明において、「薬学的に許容される塩」には、無機塩及び有機塩が含まれ、前記有機塩には、アンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、銅、アルミニウム、亜鉛、バリウム又は第4級アンモニウム塩が含まれるが、これらに限定されなく;前記無機塩には、アルギニン、tert-ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、イミダゾール、リジン、メチルアミン、ピリジン、ピリジンカルボン酸エステル、ピペラジン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン又は尿素塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
別の態様において、本発明はJAKキナーゼを阻害するための、特にJAK1/Tyk2二重阻害剤及びTyk2特異的阻害剤としての上記小分子化合物の用途を提供する。
【0036】
別の態様において、本発明は、さらに自己免疫疾患及び免疫関連炎症性皮膚疾患を予防又は治療するための医薬品の調製における上記小分子化合物の用途を提供する。研究により、これらの疾患の病因はいずれもJAKシグナル伝達の調節不全に関連していることが明らかとなっている。
【0037】
本明細書で使用される「治療」という用語は、治療方案による治療薬の任意の投与によって前記治療方案が所望の効果、即ち、発症の一部又は完全な軽減、改善、緩和、阻害、遅延、重症度の低下、及び/又は特定の疾患、障害及び/又は病症の1つ又は複数の症状又は特徴の発生率の低下を達成することを意味する。いくつかの実施形態において、治療方案による治療剤の投与は、所望の効果の達成に関連する。そのような治療は、関連する疾患、障害、及び/又は病症を示さない被験者、及び/又は疾患、障害、及び/又は病症の初期徴候のみを示す被験者を対象としてもよい。代替的又は追加的に、そのような治療は、関連する疾患、障害及び/又は病症の1つ又は複数の識別された徴候を示す被験者を対象としてもよい。いくつかの実施形態において、治療は、関連する疾患、障害、及び/又は病症と診断された被験者を対象としてもよい。いくつかの実施形態において、治療は、関連する疾患、障害、及び/又は病症の発症リスクの増加と統計的に関連する1つ又は複数の感染しやすい素因を有する被験者を対象としてもよい。
【0038】
本発明によれば、上記用途により調製される医薬品は、有効量の本発明による小分子化合物、及び薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤を含んでもよい。
【0039】
本明細書で使用される「有効量」、「治療有効量」又は「薬学的有効量」という用語は、任意の薬物治療に適した適切な利益/リスク比で、治療対象に治療効果を与える治療薬の量を意味する。そのような治療効果は、客観的(即ち、いくつかの試験又は標記によって測定可能)でもよく、又は主観的(即ち、被験者からの指示又は感じた効果)でもよい。いくつかの実施形態において、「治療有効量」とは、疾患に関連する症状を改善し、疾患の発症を予防又は遅延させ、及び/又は疾患の症状の重症度又は頻度を低下させることなどによって、関連する疾患又は病症を効果的に治療、改善又は予防(例えば、発症の遅延)し、及び/又は検出可能な治療効果又は予防効果を示す、治療薬又は組成物の量を意味する。
【0040】
当業者は、投与される前記小分子化合物の治療有効量が、被験者及び疾患の性質及び重症度、被験者の身体的状態、治療方案(例えば、第2治療薬の使用の有無)、及び選択された投与経路に応じて変化することを認識するだろう。適切な投与量は、当業者によって容易に決定され得る。一方、該薬物の個々の投与の最適な回数及び間隔は、治療される病状の性質及び程度、投与の形態、経路及び部位、治療される特定の被験者の年齢及び病状によって決定され、且つ、最終的には医師によって適切な投与量が決定される。この投与量は、必要に応じて複数回繰り返してもよく、副作用が発生した場合は、通常の臨床診療に従って、投与の量及び/又は頻度を変更又は減少してもよい。
【0041】
本発明において、「薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤」には、関連する政府管理部門によって、ヒト又は家畜のための使用に許容可能と承認された、任意の補助剤、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味料、希釈剤、保存剤、染料/着色剤、香味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶剤又は乳化剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明によれば、さらに、上記用途により調製される医薬品は、本発明による小分子化合物を有効成分として含有する以外に、自己免疫疾患及び免疫関連炎症性皮膚疾患の予防又は治療のために使用可能な薬剤を他の有効成分として含有してもよい。前記薬剤の実施例では、ビタミンD誘導体、ビタミンA誘導体、グルココルチコイド、カルシニューリン阻害剤、非ステロイド系抗炎症剤等が挙げられるが、これらに限定されない。該薬剤が複数の有効成分を含有する場合、各有効成分は、医師の判断に従って、同時、順次又は別々に投与されてもよい。
【0043】
一方、本発明の小分子化合物は、経口、経皮、皮下、鼻腔内、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、領域又は局所(例えば、粘膜)などの様々な経路によって患者に投与することができる。任意の場合における最適な投与経路は、被験者及び疾患の性質及び重症度、及び被験者の身体的状態などによって決定される。一実施形態において、本発明の小分子化合物は、静脈内投与を可能とする。別の実施形態において、本発明の小分子化合物は、経口投与を可能とする。したがって、異なる投与形態によって、本発明による医薬品は、異なる剤形に調製することができる。例えば、一実施形態において、前記医薬品は、錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤、ネブライザー剤、スプレー剤、又は注射剤として調製することができる。
【0044】
研究を通じて、本発明の小分子化合物又はそれにより調製された医薬品が、JAK関連自己免疫疾患及び免疫関連炎症性皮膚疾患の予防又は治療に使用される場合に優れた効果を発揮できることを発見した。具体的には、前記自己免疫疾患には、関節リウマチ、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発性硬化症、I型糖尿病、シェーグレン症候群、及び血管炎などが含まれるが、これらに限定されず;前記免疫関連炎症性皮膚疾患には、アトピー性皮膚炎、湿疹、円形脱毛症、乾癬又は白斑、扁平苔癬、光沢苔癬、硬化萎縮性苔癬、脂肪織炎、座瘡及び化膿性汗腺炎などが含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
以下、実施例を通じて、本発明の特定の小分子化合物の効果について詳細に説明する。
【実施例】
【0046】
<実施例1:化合物1の一般的な合成方法(TDM-180973)>
【化13】
ステップ1:化合物1c(2-クロロ-4-(1H-ピロール-3-イル)ピリミジン)の調製
250mLの3口フラスコに、化合物1a(2g、13.43mmol)、化合物1b(4.69g、13.43mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(940mg、1.08mmol)、炭酸カリウム(3.7g、26.85mmol)、ジオキサン(120mL)及び水(120ml)を添加する。反応液を数回窒素置換した後、温度を80℃に上げて45分間反応させ、LCMS[M+H]
+=180で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濃縮乾固し、得られた粗生成物をカラム[溶離液:(EA/PE)=0~30%]に通して、黄色固体の目的化合物(化合物1c、1.13g、収率46.86%)を得る。
LCMS [M+1]
+ = 180。
【0047】
ステップ2:化合物1e(3-(3-(2-クロロピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル)-3-(シアノメチル)アゼチジン-1-カルボン酸ターシャリーブチルエステル)の調製
化合物1c(1.23g、6.88mmol)のアセトニトリル(100ml)溶液に、化合物1d(1.47g、7.56mmol)、1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(710mg、4.68mmol)を添加し、反応液を70℃まで昇温させ、2時間攪拌する。LCMS[M+H]+=374で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濃縮乾固し、得られた粗生成物をカラム[溶離液:(EA/PE)=0~30%]に通して、黄色固体の目的化合物(化合物1e、2.085g、収率81.09%)を得る。
LCMS [M+H]+ = 374。
【0048】
ステップ3:化合物1f(2-(3-(3-(2-クロロピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル)アゼチジン-3-イル)アセトニトリル)の調製
化合物1e(1.6g、4.3mmol)のジクロロメタン(128ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(25.6ml)を加え、反応液を室温で1時間撹拌する。LCMS[M+H]+=274で、反応完了が検出される。後処理:反応溶液を氷浴下でトリエチルアミンで中和し、濃縮乾固し、得られた粗生成物をカラム[溶離液:(D/M=10/1):DCM=0~50%]通して、黄色固体の目的化合物(化合物1f、950mg、収率89.7%)を得る。
LCMS [M+H]+ = 274。
【0049】
ステップ4:化合物1h((S)-2-(3-(3-(2-クロロピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル))の調製
化合物1f(1g、3.65mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(100ml)溶液に、2-(7-アザベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(2.78g、7.3mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5g、7.3mmol)及び化合物1g(450mg、3.65mmol)を添加する。反応液を室温で1時間撹拌し、LCMS[M+H+=378で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濃縮乾固し、得られた粗生成物をカラム[溶離液:(EA/PE)=0~50%]に通して、黄色固体の目的化合物(化合物1h、1120mg、収率81.16%)を得る。
LCMS[ M+H]+ = 378。
【0050】
ステップ5:化合物1((S)-4-((4-(1-(3-(シアノメチル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル)-1H-ピロール-)3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-エチルベンズアミド)の調製
化合物1h(120mg、0.317mmol)のn-ブタノール(20ml)溶液に、化合物1i(104mg、0.64mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(120.8mg、0.64mmol)を添加する。反応溶液を110℃に昇温させ、2時間撹拌し、LCMS[M+H]+=506で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濃縮乾固し、白色固体の目的化合物(化合物1、29mg、収率18.1%)を得る。
LCMS[M+H+ = 506.2。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 9.71(s、1H)、8.41(d、J = 5.3 Hz、1H)、8.25(t、J = 5.5 Hz、1H)、7.95 - 7.86(m、3H)、7.79(d, J = 8.8 Hz、2H)、7.25 - 7.10(m、2H)、6.84(dd、J = 2.9、1.6 Hz、1H)、4.71(ddd、J = 52.1、41.5、9.6 Hz、2H)、4.48 - 4.19(m、2H)、3.60(s、2H)、3.30 - 3.22(m、2H)、2.79(dq、J = 13.2、8.8 Hz、1H)、2.00 - 1.84(m、2H)、1.12(t, J = 7.2 Hz、3H)。
【0051】
<実施例2:化合物2の一般的な合成方法(TDM-180975)>
【化14】
ステップ1:化合物2b(3-メチル-5-ニトロピコリルアミド)の調製
化合物2a(3g、18.4mmol)及び濃硫酸(18ml)の混合溶液を、80℃まで加熱し、25分間攪拌する。LCMS[M+H]
+=182で、反応完了が検出される。後処理:反応液を室温まで冷却し、氷水(100ml)に注ぎ、炭酸ナトリウムでpHを中性に調整し、混合液を酢酸エチル(3×100ml)で3回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、吸引ろ過、濃縮、乾燥して、黄色の目的化合物(化合物2b、3.33g、収率94.2%)を得る。
LCMS[M+1]
+ = 182。
【0052】
ステップ2:化合物2c(5-アミノ-3-メチルピコリルアミド)の調製
窒素保護下で、化合物2b(3.14g、17.33mmol)のメタノール(150ml)溶液に、パラジウム炭素(10%、300mg)を添加し、真空下で数回水素置換し、反応液を室温で水素バルーン下で2時間攪拌する。LCMS[M+H]+=152で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濾過してパラジウム炭素を除去し、濾液を濃縮乾固し、得られた粗生成物を再結晶して、白色固体の目的化合物(化合物2c、2.3g、収率87.8%)を得る。
LCMS [M+1] + = 152。
【0053】
ステップ3:化合物2((S)-5-((4-(1-(3-(シアノメチル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル)-1H-ピロール-)3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-3-メチルピリジンアミド)の調製
化合物2d(150mg、0.397mmol)のn-ブタノール(15ml)溶液に、化合物2c(120mg、0.79mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(151mg、0.79mmol)を添加する。反応液を110℃まで加熱し、7時間攪拌し、LCMS[M+H]+=493で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濃縮乾固し、残留物を水及び酢酸エチル(3×30ml)で抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、吸引ろ過、乾燥して、粗生成物を調製してオフホワイトの固体の目的化合物(化合物2、7.9mg、収率4.04%)を得る。
LCMS[M+H]+ = 493.2。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 9.89(s、1H)、8.80(s、1H)、8.44(d、J = 5.3 Hz、1H)、8.32(s、1H)、7.89(d、J = 21.0) Hz、2H)、7.26 ~ 7.15(m、3H)、6.84(dd、J = 2.9、1.6 Hz、1H)、4.71(ddd、J = 53.5、41.8、9.6 Hz、2H)、4.46 ~ 4.24(m、 2H)、3.58(d、J = 16.7 Hz、2H)、2.78(dt、J = 11.7、8.9 Hz、1H)、2.61(s、3H)、2.00 - 1.84(m、2H)。
【0054】
<実施例3:化合物3の一般的な合成方法(TDM-180976)>
【化15】
ステップ1:化合物3b(エチル3-メチル-5-ニトロリノレエート)の調製
0℃のエタノール(160ml)溶液に、濃硫酸(40ml)をゆっくりと添加し、反応液に化合物3a(4g、24.5mmol)をバッチで加え、反応液を加熱還流させ、72時間攪拌する。LCMS[M+H]
+=211で、反応完了が検出される。後処理:反応液を室温に冷却し、水(50ml)に注ぎ、酢酸エチル(3×50mL)で3回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、吸引ろ過、濃縮乾固して、黄色の目的化合物(化合物3b、3.73g、収率72.56%)を得る。
LCMS[M+1]
+ = 211。
【0055】
ステップ2:化合物3c(3-メチル-5-ニトロリノール酸)の調製
化合物3b(4.2g、20.03mmol)のテトラヒドロフラン(200ml)溶液に、1N水酸化ナトリウム(120ml、120.16mmol)溶液を添加し、反応液を室温で1時間撹拌し、LCMS[M+H]+=183で、反応完了が検出される。後処理:反応液を氷水(30ml)にゆっくりと注ぎ、水相をジクロロメタン(2×15mL)で2回抽出し、水相を1N希塩酸でpH=5~6に調整し、酢酸エチル(3×15mL)で3回抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、吸引濾過、濃縮乾固し、粗生成物を再結晶して、黄色固体の目的化合物(化合物3c、3.0g、収率82.19%)を得る。
LCMS [M+1] + = 183。
【0056】
ステップ3:化合物3e(N,3-ジメチル-5-ニトロリノレアミド)の調製
化合物3c(3.0g、16.48mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(100ml)溶液に、2-(7-アザベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(10.03g、26.37mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(7.5g、57.68mmol)及び化合物3d(2.26g、32.96mmol)を添加する。反応液を室温で1時間撹拌し、LCMS [M+H]+=196で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濃縮乾固し、得られた粗生成物をカラム[溶離液:(EA/PE)=0~30%]に通し、粗生成物を再結晶して、黄色固体の目的化合物(化合物3e、3.0g、収率93.75%)を得る。
LCMS [M+1] + = 196。
【0057】
ステップ4:化合物3f(5-アミノ-N,3-ジメチルピリジンカルボキサミド)の調製
窒素保護下で、化合物3e(3.5g、17.9mmol)のメタノール(200ml)溶液に、パラジウム炭素(10%、350mg)を加え、真空下で数回水素置換し、反応液を室温で水素バルーン下で2時間攪拌する。LCMS[M+H]+=166で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濾過し、パラジウム炭素を除去し、ろ液を濃縮乾固し、得られた粗生成物をカラム[溶離液:(D/M=10/1):DCM=0~10%]に通し、再結晶して、黄色固体の目的化合物(化合物3f、1.8g、収率60.87%)を得る。
LCMS [M+1] + = 166。
【0058】
ステップ5:化合物3((S)-5-((4-(1-(3-(シアノメチル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル)-1H-ピロール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N,3-ジメチルピリジンカルボン酸アミド)の調製
化合物3g(150mg、0.40mmol)のn-ブタノール(35ml)溶液に、化合物3f(131.2mg、0.79mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(151.03mg、0.79mmol)を添加する。反応液を110℃まで加熱し、7時間攪拌し、LCMS[M+H]+=507で、反応完了が検出される。後処理:反応液を濃縮乾固し、残留物を水及び酢酸エチル(3×30ml)で抽出し、有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、吸引濾過、乾燥し、粗生成物を調製して、オフホワイトの固体の目的化合物(化合物3、6.8mg、収率3.38%)を得る。
LCMS[M+1]+ = 507.2。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 9.88(s、1H)、8.82(d、J = 2.3 Hz、1H)、8.45(dd、J = 8.9、4.8 Hz、2H)、8.30(s、1H)、7.91(s、1H)、7.32 - 7.10(m、2H)、6.83(dd、J = 2.9、1.6 Hz、1H)、4.71(ddd、J = 53.5、41.7、9.6 Hz, 2H)、4.48 - 4.19( m、2H)、3.60(s、2H)、2.82 - 2.70(m、4H)、2.61(s、3H)、1.97 - 1.85(m、2H)。
【0059】
<実施例4:化合物4の一般的な合成方法(TDM-180978)>
【化16】
ステップ1:化合物4((S)-4-((4-(1-(3-(シアノメチル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル)-1H-ピロール-)3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-エチル-2-メチルベンズアミド)の調製
同様の方法の調製により化合物4(オフホワイトの固体、16.8mg、収率4.3%)を得る。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 9.52(s、1 H)、8.38(d、J = 5.2 Hz、1H)、8.05(t、J = 5.6 Hz、1H)、7.87(t、J = 1.8 Hz、1H)、7.74(d、J = 2.5 Hz、1H)、7.69(d、J = 8.5 Hz、1H)、7.29(d、J = 8.4 Hz、1H)、7.23 - 7.14(m、1H)、7.10(dd、J = 5.2、3.8 Hz、1H)、6.83(dd、J = 2.9、1.6 Hz、1H)、4.71(ddd、J = 53.1、42.0、9.6 Hz、2H)、4.48 - 4.19(m、2H)、3.60(s、2H)、3.26 - 3.17(m、2H)、2.79(dd、J = 12.3、9.6 Hz、1H)、2.34(d、J = 13.1 Hz、3H)、1.93(dd、J = 17.3、9.3 Hz)、2H)、1.11(t、J = 7.2 Hz、3H)。
LCMS [M+H]
+ =520.2。
【0060】
<実施例5:化合物5の一般的な合成方法(TDM-180996)>
【化17】
ステップ1:化合物5(2-1-((S)-2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)-3-(3-(2-((6-(1-ヒドロキシプロパン-2-塩基)ピリジン-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル)アゼチジン-3-イル)アセトニトリル)の調製
同様の方法の調製により化合物5(オフホワイトの固体、19.2mg、収率7.35%)を得る。
1H NMR(401 MHz、DMSO)δ 9.50(s、1H)、8.81(d、J = 2.5 Hz、1H)、8.36(d、J = 5.3 Hz、1H)、8.21(d、J = 8.5 Hz、1H)、8.15(s、1H)、7.87(s、1H)、7.17(dd、J = 8.3、5.6 Hz、2H)、7.10(dd、J = 5.2、4.0 Hz、1H)、6.81(dd、J = 2.8、1.6 Hz、1H)、4.75(dt、J = 18.0、9.6 Hz、2H)、4.58(d、J = 9.5 Hz、1H)、4.42(dd、J = 10.6、5.9 Hz、1H)、4.36 - 4.21(m、1H)、3.68 - 3.57(m、3H)、3.48(dd、J = 10.2、7.0 Hz、1H)、2.90(dd、J = 13.7、 6.9 Hz、1H)、2.83 - 2.72(m、1H)、1.99 - 1.81(m、2H)、1.19(d、J = 6.9 Hz、3H)。
LCMS [M+H]
+ =494.2。
【0061】
<実施例6:化合物6の一般的な合成方法(TDM-180982)>
【化18】
ステップ1:化合物6c(3-(シアノメチル)-3-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール-1-の調製)イル)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル)の調製
室温下で、化合物6a(2g、10.3mmol)のアセトニトリル(40mL)混合物に、化合物6b(2g、10.3mmol)及び1,8-ジアザビシクロウンデク-7-エン(1mL、10.3mmol)を加え、混合物を70℃まで加熱し、一晩攪拌する。反応終了後、混合物を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=0%~50%)で精製して、白色固体の目的化合物(化合物6c、2.42g、収率60.5%)を得る。
LCMS [M - C
4H
9 ]
+ = 333.2。
【0062】
ステップ2:化合物6e(3-(4-(2-クロロピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)-3-(シアノメチル)アゼチジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル)の調製
化合物6d(2.13g、5.486mmol)、化合物6c(1.31g、8.777mmol)、炭酸ナトリウム(1.16g、10.972mmol)、1,1’-ビスジフェニルホスフィノフェロセンジクロロパラジウム(401mg、0.549mmol)の混合物に、ジオキサン(120ml)及び水(20ml)を加え、窒素置換を数回行った後、80℃に昇温させて1時間攪拌する。混合物を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=0%~42%)で精製して、淡黄色固体の目的化合物(化合物6e、1.67g、収率81.2%)を得る。
LCMS[M+H]+ = 375。
【0063】
ステップ3:化合物6f(2-(3-(4-(2-クロロピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アゼチジン-3-イル)アセトニトリル)の調製
化合物6e(1.4g、3.735mmol)のジクロロメタン(80ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(16ml)を滴下し、混合物を室温で1時間撹拌する。反応終了後、混合物に水を加えて、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、ジクロロメタン(80ml×3)で抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/10%メタノールを含むジクロロメタン溶液=0%~100%)で精製し、白色固体の目的化合物(化合物6f、571.1mg、収率55.7%)を得る。
LCMS[M+H]+ = 275。
【0064】
ステップ4:化合物6h((S)-2-(3-(4-(2-クロロピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル))アゼチジン-3-イル)アセトニトリル)の調製
化合物6g(293.3mg、2.403mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(30ml)溶液に、2-(7-アザベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(913.7mg、2.403mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(776.2mg、3.003mmol)を添加し、混合物を5分間攪拌した後、化合物6f(550mg、2.002mmol)を加え、混合物を室温で1時間攪拌する。反応終了後、水を加えて酢酸エチル(50ml×3)で抽出し、有機層を合わせて水(50mL×3)及び飽和食塩水(50ml)で洗浄し、ナトリウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=0%~50%)で精製し、白色固体の目的化合物(化合物6h、566mg、収率74.6%)を得る。
LCMS[M+H]+ = 379。
【0065】
ステップ5:化合物6((S)-4-((4-(1-(3-(シアノメチル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N-エチルベンズアミド)の調製
化合物6h(50mg、0.132mmol)のn-ブタノール(5ml)溶液に、化合物6i(43.4mg、0.264mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(50.2mg、0.264mmol)を添加する。得られた混合物を110℃まで加熱し、3時間攪拌する。混合物を減圧濃縮し、残渣を分取HPLC(ギ酸)で精製し、白色固体の目的化合物TDM-180982(化合物6、11.4mg、収率17.1%)を得る。
LCMS[M+H]+ = 507.2。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 9.85(s、1H)、8.86(d、J = 4.6 Hz、1H)、8.51(d、J = 5.2 Hz、1H)、8.32(s、1H)、8.27(t、J = 5.5 Hz、1H)、7.90(d、J = 8.8 Hz、2H)、7.81(d、J = 8.8 Hz、2H)、7.23(dd、J = 5.2、1.4 Hz、1H)、4.86(dd、J = 35.3、9.6 Hz、1H)、4.67(dd、J = 41.8、9.6 Hz、1H)、4.51(t、J = 9.9 Hz、1H)、4.31(t、J = 10.2 Hz、1H)、3.72(d、J = 2.8 Hz、2H)、3.30 - 3.23(m、2H)、2.90 - 2.74(m、1H)、1.92(qd、J = 11.0、7.4 Hz、2H)、1.12(t、J = 7.2Hz、3H)。
【0066】
<実施例7:化合物7の一般的な合成方法(TDM-180983)>
【化19】
ステップ1:化合物7((S)-5-((4-(4-(4-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボキサミド)フェニル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N,3-ジメチルピリジンアミド)の調製
同様の方法の調製により化合物7(白色固体、12.7mg、収率14.5%)を得る。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 9.66(s、1H)、8.84(d、J = 4.2 Hz、1H)、8.49(d、J = 5.2 Hz、1H)、8.30(s、1H)、8.06(t、J=5.6Hz、1H)、7.73 - 7.65(m、2H)、7.34 - 7.27(m、1H)、7.19(dd、J=5.1、1.9Hz、1H)、4.84(dd、J=34.2、9.6Hz)、1H)、4.66(dd、J = 42.4、9.5 Hz、1H)、4.49(t、J = 10.3 Hz、1H)、4.30(t、J = 10.2 Hz、1H)、3.72(d、J = 1.8 Hz、2H)、3.27 - 3.16(m、2H)、2.82(ddd、J = 19.2、12.0、9.0 Hz、1H)、2.36(s、3H)、2.00 - 1.85(m、2H)、1.11(t、J = 7.2 Hz、3H)。
LCMS[M+H]
+ =521.1。
【0067】
<実施例8:化合物8の一般的な合成方法(TDM-180985)>
【化20】
ステップ1:化合物8((S)-5-((4-(1-(3-(シアノメチル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-N,3-ジメチルピリジンカルボン酸アミド)の調製
化合物8a(80mg、0.258mmol)のn-ブタノール(8mL)溶液に、化合物8b(85mg、0.517mmol)及びp-トルエンスルホン酸一水和物(98mg、0.517mmol)を加える。得られた混合物を115℃まで加熱し、一晩撹拌する。反応終了後、室温まで冷却し、水を加え、酢酸エチル(30ml×3)で抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ液を減圧濃縮し、残渣を分取HPLC(ギ酸)で精製し、オフホワイト固体の目的化合物TDM-180985(化合物8、10.2mg、収率6.2%)を得る。
LCMS [M+H]
+ =508.2。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.01(s、1H)、8.88(d、J = 4.5 Hz、1H)、8.81(d、J = 2.3 Hz、1H)、8.55(d、J = 5.2 Hz、1H)、8.46(d、J = 4.8 Hz、1H)、8.30(s、1H)、8.27(d、J = 2.1 Hz、1H)、7.28(dd、J = 5.2、1.9 Hz、1H)、4.85(dd、J = 33.3、9.6 Hz、1H)、4.67(dd、J = 42.3、9.6 Hz、1H)、4.49(t、J = 10.4 Hz、1H)、4.31(t、J = 10.3 Hz、1H)、3.72(s、2H)、2.89 - 2.74(m、4H)、2.61(s、3H)、2.01 - 1.84(m、2H)。
【0068】
<実施例9:化合物9の一般的な合成方法(TDM-180986)>
【化21】
ステップ1:化合物9((S)-5-((4-(1-(3-(シアノメチル)-1-(2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)アゼチジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)-3-メチルピリジンアミド)の調製
同様の方法の調整により化合物9(オフホワイトの固体、10.7mg、収率8.4%)を得る。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 10.03(s、1H)、8.88(d、J = 4.4Hz、1H)、8.80(d、J = 2.0Hz、1H)、8.55(d、J = 5.2Hz、1H)、8.29(d、J = 11.4 Hz、2H)、7.87(s、1H)、7.38 - 7.16(m、2H)、4.85(dd、J = 33.3、9.6 Hz、1H)、4.67(dd、J = 42.5、9.6 Hz、1H)、4.49(t、J = 10.4 Hz、1H)、4.31(t、J = 10.2 Hz、1H)、3.72(s、2H)、2.90 - 2.75(m、1H)、2.61(s、3H)、1.94(d、J = 8.0 Hz、2H)。
LCMS[M+H ]
+ = 494.3。
【0069】
<実施例10:化合物10の一般的な合成方法(TDM-180990)>
【化22】
ステップ1:化合物10(2-(1-((S)-2,2-ジフルオロシクロプロパン-1-カルボニル)-3-(4-(2-(((6-(1-ヒドロキシプロパン-2-イル))ピリジン))-3-イル)アミノ)ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)アゼチジン-3-イル)アセトニトリル)の調製
化合物10a(190mg、0.502mmol)、化合物10b(153mg、1.003mmol)、酢酸パラジウム(11.4mg、0.050mmol)、4,5-ビス(ジフェニルホスフィン)-9,9-ジメチルキサンテン(58.1mg、0.1mmol)及び炭酸セシウム(461mg、1.506mmol)の混合物に、ジオキサン(40mL)を加える。混合物をアルゴンで数回置換し、混合物を100℃まで加熱し、1時間攪拌する。反応終了後、反応物に水(60mL)を加え、酢酸エチル(60mL×3)で抽出し、有機層を合わせ、水(100mL)及び飽和食塩水(100mL×2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=0%~70%)及び分取HPLC(ギ酸)で精製し、白色固体の目的化合物TDM-180990(化合物10、76.6mg、収率30.9%)を得る。
LCMS [M+H]
+ = 495.2。
1H NMR(400 MHz、DMSO)δ 9.65(s、1H)、8.85(d、J = 4.3Hz、1H)、8.79(s、1H)、8.47(d、J = 5.2Hz、1H)、8.29(s、1H)、8.21(dt、J = 8.5、2.9 Hz、1H)、8.17(s、1H)、7.19(dd、J = 10.2、5.1 Hz、2H)、4.85(dd、J = 33.3、9.6 Hz、1H)、4.66(dd、J = 42.4、9.6Hz、2H)、4.50(t、J = 11.0Hz、1H)、4.30(t、J = 10.2Hz、1H)、3.71(d、J = 2.8Hz、2H)、3.63(dd、J = 10.2、6.6Hz、1H)、3.49(dd、J=10.2、7.0Hz、1H)、2.90(dt、J=12.7、6.4Hz、1H)、2.81(ddd、J=13.2、10.4、6.2Hz、1H)、2.00 - 1.86(m、2H)、1.20(d、J = 6.9 Hz、3H)。
【0070】
試験例1.JAKキナーゼの小分子阻害剤の酵素活性阻害アッセイ
実験プログラム
1.試薬の調製
キナーゼ反応緩衝液:キナーゼ反応緩衝液を準備し、成分は次のとおりである:50mM HEPES、pH7.5、1mM EGTA、10mM MgCl2、2mM DTT、0.01% Tween20。
【0071】
1Xアッセイ緩衝液:アッセイ緩衝液を準備し、脱イオン水9:1で10Xアッセイ緩衝液を1Xに希釈する。
【0072】
4Xキナーゼ溶液:キナーゼ反応緩衝液で、JAKキナーゼを4Xの最終濃度(JAK1:80nM、JAK2/JAK3/Tyk2:4nM)に希釈する。
【0073】
4X基質溶液:キナーゼ反応緩衝液で、ULight(商標)-JAK(Tyr1023)基質を200nM(最終濃度:50nM)に希釈する。
【0074】
4X ATP溶液:キナーゼ反応緩衝液で、ATPを4Xの最終濃度(JAK1:160μM、JAK2/JAK3/Tyk2:40μM)に希釈する。
【0075】
4X試験用化合物溶液:DMSOで試験用化合物を10mMストック液に溶解し、3倍勾配で希釈して必要な濃度に調製し、各化合物に10個の濃度ポイントを設定し、試験用化合物の最終濃度範囲は10μM-0.5nMである。
【0076】
4X酵素反応停止溶液:1Xアッセイ緩衝液でEDTAを40mM(EDTA最終濃度:10mM)に溶解する。
【0077】
4Xアッセイ抗体溶液:1Xアッセイ緩衝液でEu標識アッセイ抗体(抗リン酸化チロシン(PT66))を8nM(抗体の最終濃度:2nM)に希釈する。
【0078】
2.実験プロセス
2.5μLの4Xキナーゼ溶液及び希釈済の異なる濃度の4X試験用化合物溶液2.5μLを、384マイクロウェルプレートに順に加え、濃度ごとに2つの複製ウェルを設定し、同時に酵素溶液のブランク対照群及び陰性対照群(DMSO群)を設定する。384ウェルプレートを振とうし、酵素と化合物とを混合し、1000rpmで1分間遠心分離し、室温で60分間インキュベートする。2.5μLの4X基質溶液を384ウェルプレートに加え、1000rpmで1分間遠心分離する。2.5μLの4X ATP溶液を384ウェルプレートに加え、1000rpmで1分間遠心分離して酵素反応を開始する。JAK1は室温で2時間、JAK2/JAK3/Tyk2は室温で1時間反応する。JAK1反応の各成分の最終濃度は、JAK1:20nM、基質:50nM、ATP:40uMであり、試験用化合物の最終濃度範囲は、10μM~0.5nMである。JAK2/JAK3/Tyk2反応の各成分の最終濃度は、JAK2:1nM、基質:50nM、ATP:10μMであり、試験用化合物の最終濃度範囲は:10μM~0.5nMである。酵素反応完了後、384ウェルプレートの各ウェルに、5μLの4X酵素反応停止液を加え、1000rpmで1分間遠心分離し、室温で5分間インキュベートする。384ウェルプレートの各ウェルに、5μLの4Xアッセイ抗体溶液を加え(アッセイ抗体の最終濃度は2nM)、1000rpmで1分間遠心分離し、室温で1時間インキュベートする。抗体のインキュベーション後、Envisionプレートリーダーにより各ウェルのシグナル値を測定する。
【0079】
3.データ分析
酵素溶液のブランク対照群を阻害率100%、陰性対照群(DMSO群)を阻害率0%として、各濃度に対応する阻害率を算出する。GraphPad Prismソフトウェアによって、アッセイ化合物の濃度の対数及び対応するパーセント阻害率に対して非線形回帰分析が実行され、アッセイ化合物の半数阻害濃度(IC50)が得られる。実施例1~10の化合物により得られた実験結果を以下の表1に示す。
【0080】
【0081】
上記表1の結果から分かるように、本出願の化合物は、酵素活性データに優れ、上記具体的な化合物について測定した半数阻害濃度が低く、特にTyk2、JAK1及びJAK2の場合は、基本的に0.01~約0.1μMに達し、特に化合物TDM-180973、TDM-180975、TDM-180976及びTDM-180978では、半数阻害濃度がすべて約0.01μMである。したがって、上記実験により、本出願の小分子化合物がJAKファミリーへの強い標的性及び優れた酵素活性を有する化合物であり、JAK1/Tyk2二重阻害剤及びTyk2特異的阻害剤として使用可能ということが証明された。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態の具体的な内容に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で本発明の技術的解決策について種々な簡単な変更を加えることが可能であり、これらの簡単な変更はすべて本発明の保護範囲に属する。
【0083】
更に留意されたいのは、上記具体的な実施形態に記載された種々な具体的な技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方法で組み合わせることが可能であり、不必要な重複を避けるために、本発明は様々な可能な組み合わせの形態について別途説明しない。
【0084】
また、本発明による様々な異なる実施形態の間も任意の組み合わせが可能であり、本発明の趣旨に反しない限り、それらも同様に本発明の開示内容として見なされるべきである。