(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】道路舗装機械、スクリード加熱システム、及びスクリード加熱方法
(51)【国際特許分類】
E01C 19/48 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
E01C19/48 A
(21)【出願番号】P 2024019199
(22)【出願日】2024-02-13
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000235163
【氏名又は名称】範多機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏輔
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-129695(JP,A)
【文献】特開2019-143465(JP,A)
【文献】特開2018-168690(JP,A)
【文献】特開2015-206172(JP,A)
【文献】特開2015-135026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0337504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリード装置の底板を電気で加熱するための電気式発熱装置を備える道路舗装機械であって、
前記電気式発熱装置に電力を供給する発電機と、
前記発電機を回転させる油圧モータと、
前記油圧モータの回転数を制御する制御弁と、
前記制御弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が前記制御弁を制御して前記油圧モータの回転数を制御することで、前記発電機の電圧を制御して、前記電気式発熱装置の発熱量を制御
し、
前記底板の温度を検出するための底板温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記底板温度センサが検出した信号に基づいて、前記底板の温度が目標温度に達したか否かを判断し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した場合に、前記目標温度を超える場合は、前記油圧モータの前記回転数を下げる指令を前記制御弁に送信し、前記目標温度を下回る場合は、前記油圧モータの前記回転数を上げる指令を前記制御弁に送信して、前記発電機の電圧を制御し、
前記制御装置は、加熱開始から前記底板の温度が前記目標温度に達するまでの間、前記発電機を予め決めた最大値で回転させるように、前記油圧モータの回転数を制御し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した後、前記底板の温度が所定の範囲を下回った場合、前記発電機を予め決めた最大値で回転させるように、前記油圧モータの回転数を制御し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した後、前記底板の温度が所定の範囲を上回った場合、前記発電機を停止又はアイドリングさせるように、前記油圧モータの回転数を制御することを特徴とする、道路舗装機械。
【請求項2】
前記発電機を回転させる前記油圧モータは、前記道路舗装機械の作業機器用の油圧ポンプとは別の専用の油圧ポンプによって作動する構成となっていることを特徴とする、請求項1に記載の道路舗装機械。
【請求項3】
前記電気式発熱装置は、電気ヒータであることを特徴とする、請求項1に記載の道路舗装機械。
【請求項4】
道路舗装機械のスクリード装置の底板を電気で加熱するためのスクリード加熱システム
であって、
電気で発熱する電気式発熱装置と、
前記電気式発熱装置に電力を供給する発電機と、
前記発電機を回転させる油圧モータと、
前記油圧モータの回転数を制御する制御弁と、
前記制御弁を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置が前記制御弁を制御して前記油圧モータの回転数を制御することで、前記
発電機の電圧を制御して、前記電気式発熱装置の発熱量を制御
し、
前記底板の温度を検出するための底板温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記底板温度センサが検出した信号に基づいて、前記底板の温度が目標温度に達したか否かを判断し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した場合に、前記目標温度を超える場合は、前記油圧モータの前記回転数を下げる指令を前記制御弁に送信し、前記目標温度を下回る場合は、前記油圧モータの前記回転数を上げる指令を前記制御弁に送信して、前記発電機の電圧を制御し、
前記制御装置は、加熱開始から前記底板の温度が前記目標温度に達するまでの間、前記発電機を予め決めた最大値で回転させるように、前記油圧モータの回転数を制御し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した後、前記底板の温度が所定の範囲を下回った場合、前記発電機を予め決めた最大値で回転させるように、前記油圧モータの回転数を制御し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した後、前記底板の温度が所定の範囲を上回った場合、前記発電機を停止又はアイドリングさせるように、前記油圧モータの回転数を制御することを特徴とする、スクリード加熱システム。
【請求項5】
道路舗装機械のスクリード装置の底板を電気で加熱するためのスクリード加熱方法であって、
前記道路舗装機械は、電気で発熱する電気式発熱装置と、前記電気式発熱装置に電力を供給する発電機と、前記発電機を回転させる油圧モータと、前記油圧モータの回転数を制御する制御弁と、前記制御弁を制御する制御装置と
、前記底板の温度を検出するための底板温度センサとを備え、
前記制御装置が前記制御弁を制御して前記油圧モータの回転数を制御することで、前記発電機の電圧を制御して、前記電気式発熱装置の発熱量を制御
し、
前記制御装置は、前記底板温度センサが検出した信号に基づいて、前記底板の温度が目標温度に達したか否かを判断し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した場合に、前記目標温度を超える場合は、前記油圧モータの前記回転数を下げる指令を前記制御弁に送信し、前記目標温度を下回る場合は、前記油圧モータの前記回転数を上げる指令を前記制御弁に送信して、前記発電機の電圧を制御し、
前記制御装置は、加熱開始から前記底板の温度が前記目標温度に達するまでの間、前記発電機を予め決めた最大値で回転させるように、前記油圧モータの回転数を制御し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した後、前記底板の温度が所定の範囲を下回った場合、前記発電機を予め決めた最大値で回転させるように、前記油圧モータの回転数を制御し、
前記制御装置は、前記底板の温度が前記目標温度に達した後、前記底板の温度が所定の範囲を上回った場合、前記発電機を停止又はアイドリングさせるように、前記油圧モータの回転数を制御することを特徴とする、スクリード加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装機械に関し、より特定的には、スクリードプレート(底板)を電気的に加熱する際の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路舗装機械(アスファルトフィニッシャ)は、作業前にアスファルト合材が接するスクリードの底板を温める必要がある。
底板の温度は低過ぎると合材が付着してしまう原因となる。逆に、底板の温度が高過ぎると合材の焼けの原因となってしまい、いずれの場合も、舗装面の仕上がりに影響するため、底板を適正な温度範囲に保つ必要がある。
【0003】
底板は、作業前の準備の際に加熱をするが、他の準備もありスクリード周辺に作業員を付きっきりにするのは困難である。
多くの道路舗装機械は、ガスバーナーで底板を加熱している。そのため、自動で底板を適正温度に保つのは、困難である。
【0004】
ガス流量を可変させたり、自動で着火させたりなど、手段は考えられるが、風などの外的要因により、ガスバーナーの火が消火する可能性もあり、このような自動制御は難しかった。
従来、底板が、設定温度になるとガスを止めるという制御は行われていたが、底板温度が下がった際の再着火は、作業員による目視確認を前提とした手動操作としていた。
【0005】
しかし、作業員は、他の作業もおこなっているため、底板温度への配慮が疎かになりやすい。そのため、施工を始める際に底板温度が下がり過ぎている場合もある。
【0006】
このような事情から、ガスバーナーによる底板の加熱に変えて、電気ヒータを用いて、底板の温度を自動で設定温度付近に保ちたいというニーズが存在する。電気ヒータで底板を加熱すれば、失火トラブルも回避でき、安全に、自動で適正温度を保つことが可能となる。
【0007】
上記のような事情において、スクリードプレートを電気ヒータで加熱する仕様の道路舗装機械も開発されてきている。電気加熱仕様の道路舗装機械では、発電機をエンジン又は油圧モータにより駆動して、発電機にAVR(Automatic Voltage Regulator:自動電圧調整器)を接続し、電圧を一定にして、電気ヒータに電力を供給している。電気ヒータの加熱具合の調整時には、たとえば、SSR(Solid State Relay:ソリッドステートリレー、「無接点素子」ともいう)を用いて、デューティ比を変更して、電気ヒータの発熱量を変化させている。
【0008】
特許文献1に記載の道路舗装機械では、SSRを用いて、電気ヒータに電圧印加する時間と電圧印加を行わない時間の割合(デューティ比)を制御することにより、SSRが電気ヒータに供給する電力量を滑らかに変化させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6377395号公報
【文献】特許第6162613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来の電気加熱仕様の道路舗装機械の場合、発電機に接続するAVRや、SSR、インバータなどの電気的な制御機器が必要となる。
【0011】
それゆえ、本発明は、底板を電気的に加熱する道路舗装機械において、出来る限り電気的な制御機器を減らすことを目的とする。
【0012】
なお、特許文献2には、アスファルト合材を敷き均す道路舗装機械であって、スクリードプレートを加熱する電気ヒータと、アスファルト合材を搬送する作業機と、電気ヒータ及び作業機を駆動する駆動源と、電気ヒータ及び作業機のそれぞれに対する駆動源の出力配分を切り替える手動切替部とを備える道路舗装機械が記載されている。
【0013】
特許文献2に記載の道路舗装機械では、電気ヒータに電力を供給する発電機を備えている。上記駆動源は、エンジンによって駆動される油圧ポンプである。発電機は、油圧ポンプによって駆動される第1油圧モータによって駆動される。作業機は、油圧ポンプによって駆動される第2油圧モータによって駆動される。そして、手動切替部は、第1油圧モータ及び第2油圧モータのそれぞれに対する油圧ポンプが吐出する作動油の供給量の配分を切り替える構成としている。
しかし、特許文献2に記載の道路舗装機械では、電気ヒータの温度を自動的に制御する方法については、記載がされていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。
本発明は、スクリード装置の底板を電気で加熱するための電気式発熱装置を備える道路舗装機械であって、電気式発熱装置に電力を供給する発電機と、発電機を回転させる油圧モータと、油圧モータの回転数を制御する制御弁と、制御弁を制御する制御装置とを備える。
制御装置が制御弁を制御して油圧モータの回転数を制御することで、発電機の電圧を制御して、電気式発熱装置の発熱量を制御する。
【0015】
好ましくは、道路舗装機械は、底板の温度を検出するための底板温度センサをさらに備える。
制御装置は、底板温度センサが検出した信号に基づいて、底板の温度が目標温度に達したか否かを判断する。
【0016】
好ましくは、制御装置は、底板の温度が目標温度に達した場合に、所定時間毎のフィードバック制御によって、油圧モータの回転数を補正することで、底板の温度が所定の範囲内に収まるように、発電機の電圧を制御する。
【0017】
好ましくは、制御装置は、加熱開始から底板の温度が目標温度に達するまでの間、発電機を予め決めた最大値で回転させるように、油圧モータの回転数を制御する。
【0018】
好ましくは、制御装置は、底板の温度が目標温度に達した後、底板の温度が所定の範囲を下回った場合、発電機を予め決めた最大値で回転させるように、油圧モータの回転数を制御する。
【0019】
好ましくは、制御装置は、底板の温度が目標温度に達した後、底板の温度が所定の範囲を上回った場合、発電機を停止又はアイドリングさせるように、油圧モータの回転数を制御する。
【0020】
好ましくは、発電機を回転させる油圧モータは、道路舗装機械の作業機器用の油圧ポンプとは別の専用の油圧ポンプによって作動する構成となっている。
【0021】
好ましくは、電気式発熱装置は、電気ヒータである。
【0022】
また、本発明は、道路舗装機械のスクリード装置の底板を電気で加熱するためのスクリード加熱システムであって、電気で発熱する電気式発熱装置と、電気式発熱装置に電力を供給する発電機と、発電機を回転させる油圧モータと、油圧モータの回転数を制御する制御弁と、制御弁を制御する制御装置とを備える。
制御装置が制御弁を制御して油圧モータの回転数を制御することで、発電機の電圧を制御して、電気式発熱装置の発熱量を制御する。
【0023】
また、本発明は、道路舗装機械のスクリード装置の底板を電気で加熱するためのスクリード加熱方法であって、道路舗装機械は、電気で発熱する電気式発熱装置と、電気式発熱装置に電力を供給する発電機と、発電機を回転させる油圧モータと、油圧モータの回転数を制御する制御弁と、制御弁を制御する制御装置とを備える。
制御装置が制御弁を制御して油圧モータの回転数を制御することで、発電機の電圧を制御して、電気式発熱装置の発熱量を制御する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、油圧モータの回転数を制御することで、発電機の電圧が制御される。そのため、発電機の電力量が制御されて、電気式発熱装置の発熱量が制御されることとなる。よって、出来る限り電気的な制御機器を減らしつつも、電気式発熱装置の発熱量を制御することができる。
【0025】
結果、コストダウンも可能となる。
【0026】
目標温度に達したあとは、所定の範囲内に収まるように制御する際も、油圧モータの回転数を補正するだけでよいので、電気的な制御機器を減らすことができる。
【0027】
加熱のスタート時点では、予め決められた最大値で、発電機を回転させることで、いち早く底板温度を上げることができる。
【0028】
もし、所定温度を下回れば、予め決められた最大値で、発電機を回転させることで、いち早く底板温度を元に戻すことができる。
【0029】
逆に、もし、所定温度を上回ったら、発電機を停止又はアイドリングさせて、底板を冷ますことで、いち早く底板温度を元に戻すことができる。
【0030】
発電機を回転させる油圧モータを、作業機器用の油圧ポンプとは別の専用の油圧ポンプで作動することで、発電機の制御を、他の作業機器の動作状況と切り離して制御することができる。
【0031】
電気式発電機として、電気ヒータを用いれば、底板の加熱コストを下げることができる。
【0032】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る道路舗装機械1の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、道路舗装機械1の制御装置3の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、制御装置3による制御の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施形態に係る道路舗装機械1の機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1において、道路舗装機械1は、スクリード装置2と、制御装置3と、エンジン4と、電磁比例弁(制御弁)5と、油圧ポンプ6a,6b,6c,6d,6eと、油圧モータ7a,7b,7c,7d,7eと、発電機8と、走行装置10と、前輪11と、各種シリンダ12と、フィーダ13と、スクリュ14と、入力表示装置15とを備える。スクリード装置2は、少なくとも1つのヒータ2bと、バイブレータ9と、底板温度センサ2aとを含む。
【0035】
(一般的機能)
一般的な道路舗装機械の構成と同一の機能を有する部分については、以下に、簡易的に説明するに留める。
エンジン4を駆動させることで、油圧ポンプ6a,6b,6c,6d,6eが作動するように構成されている。作動油タンクについては、図示を省略している。
【0036】
油圧ポンプ6bは、走行装置10を回転させる。
走行装置10は、道路舗装機械1を走行させるためのクローラや車輪等の装置である。
なお、走行装置10の専用のエンジンがあってもよいことは言うまでもない。
油圧ポンプ6cは、舗装面に振動を与えるためのバイブレータ9を駆動させる。
油圧ポンプ6dは、前輪11を回転させる。
【0037】
油圧ポンプ6eは、道路舗装機械1に使用されるその他の各種(油圧)シリンダ12を駆動させる。各種シリンダ12の駆動によって、各種装置のシリンダ系の動作が実現される。たとえば、スクリード装置2の上下や拡張等の制御に必要なシリンダや道路舗装機械の左右移動のためのシリンダ、アスファルト合材のためのホッパの開閉などは、各種シリンダ12によって実現される。
【0038】
油圧ポンプ6aは、電磁比例弁5に接続されている。電磁比例弁5から分配された作動油によって、フィーダ13用の油圧モータ7b,7cが回転し、スクリュ14用の油圧モータ7d,7eが回転する。
油圧モータ7b,7cの回転によって、フィーダ13が回転する。
油圧モータ7d,7eの回転によって、スクリュ14が回転する。
【0039】
制御装置3は、作業員からの指示や自動制御等によって、電磁比例弁5に送る信号を制御して、油圧モータ7b,7cの回転を制御することで、フィーダ13の回転を制御する。また、制御装置3は、同じく、油圧モータ7d,7eの回転を制御することで、スクリュ14の回転を制御する。
また、制御装置3は、各種シリンダ12の動作も制御する。なお、シリンダの制御系統は図示を省略している。
【0040】
入力表示装置15は、タッチパネル等であり、制御装置3に、作業者が必要な情報を入力すると共に、情報が表示される装置である。
【0041】
以上が、一般的な道路舗装機械についての概略的な構成及び制御である。これらの構成及び制御は周知の技術であるので、これ以上の詳述は行わない。
次に、本発明の実施形態に特有の構成及び制御について説明する。
【0042】
(スクリード装置2の電気ヒータ2bの制御)
電磁比例弁5には、発電機8用の油圧モータ7aが接続されている。制御装置3は、電磁比例弁5を制御することで、油圧モータ7aに供給する作動油の流量を制御することで、油圧モータ7aの回転数をコントロールする。
なお、油圧モータ7aの回転数を制御するための制御弁は、上記例示した電磁比例弁5に限定されるものではない。
発電機8は、油圧モータ7aの回転数に応じた電力を発電する仕様となっている。油圧モータ7aの回転数を変化させることで、発電機8の電圧が変化するようになっている。
【0043】
スクリード装置2は、底板(図示せず)に複数の電気ヒータ(単に、「ヒータ」と表記)2bを備えている。複数の電気ヒータ2bが加熱することで、底板が加熱される仕組みになっている。
なお、電気ヒータの種類は、本発明を限定しない。本発明では、電気で底板を加熱し、印加する電圧で温度を変えることができる装置であればよいので、総称して、電気式発熱装置ということにする。
スクリード装置2には、底板の温度を測定するための底板温度センサ2aが取付けられている。底板温度センサ2aは、要所に複数取付けられていても良い。
【0044】
上記構成に基づいて、制御装置3による電気ヒータ2bの制御について
図2を参照しながら説明する。また、適宜、
図3を用いて、制御の例も説明していく。
図2において、制御装置3は、底板の目標温度(たとえば、120℃)が設定される(S101)。この設定は、手動でも自動でもどちらでもよい。
【0045】
次に、入力表示装置15で、加熱システムの起動スイッチがオンにされる(S102)。この時点で、加熱が開始する(
図3の「加熱開始」)。
加熱が開始すると、制御装置3は、発電機8の回転数が仕様において最大の回転数となるように、電磁比例弁5を制御して、油圧モータ7aの回転数を制御する(S103)。たとえば、
図3に示すように、このとき、たとえば、発電機8は、200Vの電圧を出力する。
なお、最大でなくても、90%とか80%とか、そのような回転数でもよいことはいうまでもない。要するに、制御装置3は、発電機8を予め決めた最大値で回転させればよく、その予め決めた最大値が、仕様の最大である必要はない。本明細書において、仕様最大で回転させるとの主旨の記載がある箇所については、同様である。
【0046】
制御装置3は、底板温度センサ2aからの底板温度信号に基づいて、底板の温度を常時監視する(S104)。
合せて、制御装置3は、エンジン負荷率が所定値以上となっているか否かも監視している(S105)。油圧モータ7aを仕様最大で回転し続けることによって、エンジン負荷率が所定値以上となれば(S105のYES)、制御装置3は、発電機8の回転数を下げる又は停止するように、電磁比例弁5を制御して、油圧モータ7aの回転数を落とすことにする(S106)。どこまで、回転数を落とすかは、各種装置の性能等で適宜決められる。なお、発電機8の停止には、アイドリングも含むこととする(以下同様)
【0047】
S104及びS105の常時監視制御と並行して、制御装置3は、底板温度信号から得られる底板温度が目標温度を超えたかを判断する(S107)。目標温度に達した場合(S107のYES)、制御装置3は、保温モードに移行する(S108)。
【0048】
図3に示すように、保温モードに移行すると、制御装置3は、たとえば、発電機8が発電する電圧を130V及び電流値を555mAとなるようにするが、供給する電力の数値は、一例に過ぎず、電気ヒータ2bの性能や数で決まる。
なお、電気ヒータ2bの抵抗値に応じて、電圧値を変化させれば、電流値も変化するので、供給する電力は、発電機8の電圧を変化させることで変化させることができる。
【0049】
保温モードに移行すると、制御装置3は、発電機8の回転数を下げるように、電磁比例弁5を制御して、油圧モータ7aの回転数を制御する(S108)。
そして、制御装置3は、目標温度をキープするために、所定時間(たとえば、1分間)毎に、電磁比例弁5の制御を補正(微調整)する。
【0050】
図3に示すように、たとえば、目標温度よりも高くなっている場合は、発電機8からの電流値が-5mAになるように、油圧モータ7aの回転数を下げる指令を電磁比例弁5に送る。
なお、電気ヒータ2bの抵抗値に応じて、電圧値を変化させれば、電流値も変化するので、発電機8からの電流値、すなわち、電気ヒータ2bに流れる電流値を所望の値にするには、それに応じた電圧が発電機8からの電圧となるように油圧モータ7aの回転数を制御する(以下同様)。
また、逆に、目標温度よりも低くなっている場合は、発電機8からの電流値が+5mAになるように、油圧モータ7aの回転数を上げる指令を電磁比例弁5に送る。
なお、数値は、一例であることは、言うまでもない。
なお、制御装置3から電磁比例弁5へ指令信号については、電磁比例弁5の仕様に基づいて行われる。
【0051】
このように、保温モードに移行したあとは、所定時間毎に、フィードバック制御がかかって、制御装置3が電磁比例弁5を制御して、底板の温度が自動的に一定の範囲内に収まることになる。
図3では、その一定の範囲を「+所定温度」及び「-所定温度」で表すこととする。
S108の動作の間、予期せぬ要因によって、急きょ、底板温度が目標温度よりも下がったり、上がったりして、「±所定温度」の範囲に入らなくなる可能性がある。
【0052】
そのため、制御装置3は、S108の動作と並行して、S109及びS111の判断を行っている。
S109では、底板温度≦目標温度-所定温度となっていないかが判断される。すなわち、制御装置3は、底板温度が一定の範囲を下がっていないかを判断している。
S111では、底板温度≧目標温度+所定温度となっていないかが判断される。すなわち、制御装置3は、底板温度が一定の範囲を上回っていないかを判断している。
【0053】
もし、S109において、底板温度≦目標温度-所定温度となっていると判断した場合、制御装置3は、電磁比例弁5を制御して、発電機8が最大電圧を出力するように油圧モータ7aを回転させて発電させる。
図3に示すように、外的要因(たとえば、急な外気温の下降など)によって、所定温度以下になった場合は、回転数を最大にして、200Vを発電機8に発電させて、いち早く、目標温度まで、底板を加熱する。目標温度に達したら、制御装置8は、保温モードに移行して、S108の動作によって、電流値(すなわち、電圧値)の微調整を行う。
【0054】
もし、S111において、底板温度≧目標温度+所定温度となっていると判断した場合、制御装置3は、電磁比例弁5を制御して、発電機8による発電を停止する。
図3に示すように、外的要因(たとえば、急な外気温の上昇など)によって、所定温度以上となった場合は、発電を停止して、いち早く、目標温度まで、底板の温度を下げる。目標温度に達したら、制御装置8は、保温モードに移行して、S108の動作によって、電流値の微調整を行う。
【0055】
(変形例)
上記実施形態では、発電機8を回転させるための油圧モータ7aを制御するために、フィーダ13及びスクリュ14を駆動させる油圧モータ7b,7c,7d,7eを制御する電磁比例弁5に、油圧モータ7aを接続することとしたが、これは、あくまでも一例に過ぎない。
【0056】
たとえば、
図4に示すように、油圧モータ7aを、油圧モータ7b,7c,7d,7eのための電磁比例弁5とは、別に、エンジン4に接続された油圧ポンプ6fに直接又は制御弁を介して間接的に接続して、油圧モータ7aの回転数を制御するようにしてもよい。
【0057】
すなわち、本発明では、電気ヒータ2bの発電機8のための専用の油圧モータ7aは、フィーダ13やスクリュ14などの他の作業機器の油圧ポンプとは別に、専用の油圧ポンプ6fで回転させる構成にしてもよい。もちろん、
図4の系統は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【0058】
(小括)
以上のように、本発明の一実施形態によれば、電気ヒータなどの電気式発熱装置に印加する電圧を制御することで、電気式発熱装置の発熱量を制御装置が制御する。
その際、電気式発熱装置に印加する電圧は、油圧モータによって回転した発電機から供給されるが、制御装置が、油圧モータの回転数を制御することで、発電機の回転数を制御して、発電される電力量を制御することで、電気式発熱装置の発熱量をコントロールする。
【0059】
このような構成にすることで、出来る限り電気的な制御機器を減らすことが可能となる。
【0060】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。本明細書上の具体的な表現については、あくまでも、例示であり、本発明には、当該例示的表現を概念化したものも含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、道路舗装機械であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 道路舗装機械
2 スクリード装置
2a 底板温度センサ
2b 電気ヒータ(電気式発熱装置)
3 制御装置
4 エンジン
5 電磁比例弁
6a,6b,6c,6d,6e,6f 油圧ポンプ
7a,7b,7c,7d,7e 油圧モータ
8 発電機
9 バイブレータ
10 走行装置
11 前輪
12 各種シリンダ
13 フィーダ
14 スクリュ
15 入力表示装置
【要約】
【課題】底板を電気的に加熱する道路舗装機械において、出来る限り電気的な制御機器を減らすこと。
【解決手段】道路舗装機械1は、電気ヒータ2bに電力を供給する発電機8と、発電機8を回転させる油圧モータ7aと、油圧モータ7aの回転数を制御する電磁比例弁5と、電磁制御弁5を制御する制御装置3と、底板温度センサ2aとを備える。制御装置3が電磁比例弁5を制御して油圧モータ7aの回転数を制御することで、発電機8の電圧を制御して、電気ヒータ2bの発熱量を制御する。制御装置3は、底板温度センサ2aが検出した信号に基づいて、底板の温度が目標温度に達したか否かを判断する。制御装置3は、底板の温度が目標温度に達した場合に、所定時間毎のフィードバック制御によって、油圧モータ7aの回転数を補正することで、底板の温度が所定の範囲内に収まるように、発電機8の電圧を制御する。
【選択図】
図1