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特許7587896合成繊維用処理剤、容器に充填する方法、及び合成繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤、容器に充填する方法、及び合成繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20241114BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20241114BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20241114BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
D06M13/292
D06M13/224
D06M15/53
D06M13/17
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024056223
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】服部 誠
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-159712(JP,A)
【文献】特開2022-159713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の平滑剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記のリン化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、
前記合成繊維用処理剤の1質量%水溶液のpHが6.0以上9.0以下であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
平滑剤(A):アルコールと脂肪酸との完全エステル化合物。
リン化合物(C):下記のリン酸エステル(C1)、有機亜リン酸エステル(C2)、及び有機ホスホン酸エステル(C3)から選ばれる少なくとも一つ。
リン酸エステル(C1):下記の式(1)に示されるリン酸エステル(C1a)、下記の式(2)に示されるリン酸エステル(C1b)、及び下記の式(3)に示されるリン酸エステル(C1c)を含有するリン酸エステル。
【化1】
(式(1)中において、
:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
,M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。)
【化2】
(式(2)中において、
,R:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。)
【化3】
(式(3)中において、
,R:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
n:2又は3の整数。
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。ただし、分子中にMが2以上ある場合は、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記リン化合物(C)がリン酸エステル(C1)である請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記平滑剤(A)が多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物(A1)を含み、
前記多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物(A1)の分子量が700以上である請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記平滑剤(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記リン化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤(A)を20質量%以上70質量%以下、前記ノニオン界面活性剤(B)を20質量%以上79.999質量%以下、及び前記リン化合物(C)を0.001質量%以上10質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
更に水を含有し、前記合成繊維用処理剤における水の含有割合が0.001質量%以上10質量%以下である請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に含窒素系酸化防止剤(D)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
更に下記の高分子量化合物(E)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
高分子量化合物(E):分子中にカルボニル基を含み、且つ質量平均分子量が4000以上である化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を、容器の容積に対する充填率が80%以上となるように容器に充填する方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤を合成繊維に付着する工程を含むことを特徴とする合成繊維の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤、それを容器に充填する方法、及び合成繊維用処理剤が付着している合成繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば繊維の摩擦低減、帯電防止性、集束性等の観点から、繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
例えば、従来、特許文献1~6に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、平滑剤に所定のリン酸化合物を配合して成る合成繊維用処理剤について開示する。
特許文献2は、平滑成分、所定の有機スルホン酸化合物、有機リン酸エステル化合物を含む合成繊維用処理剤について開示する。
【0004】
特許文献3は、ポリエーテル系潤滑剤とフッ素含有架橋重合体、必要により界面活性剤、制電剤、及びpH調整剤から選ばれる1種以上の成分を含有する仮撚加工用合成繊維用紡糸油剤について開示する。
【0005】
特許文献4は、所定の潤滑剤の水性液であってそのpHを7~9に調整した水性液を合成繊維フィラメント糸条に対し潤滑剤が0.1~3重量%となるように且つ水分が潤滑剤の付着量の0.2~10倍となるように付着させた後、水性液を付着させた合成繊維フィラメント糸条をコンタクトヒーター式仮撚加工に供する合成繊維フィラメント糸条方法について開示する。
【0006】
特許文献5は、所定の重量平均分子量を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル成分、所定の重量平均分子量を有するポリオキシアルキレンポリエーテル成分を含有する合成繊維用処理剤について開示する。
【0007】
特許文献6は、所定のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む合成繊維用処理剤であって、前記処理剤の不揮発分の濃度が10重量%である水溶液の25℃における動粘度が2.0~3.0mm/sである合成繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5500745号公報
【文献】特許第5793607号公報
【文献】特許第3762336号公報
【文献】特許第3649422号公報
【文献】国際公開第2019/138866号
【文献】特許第6625449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、従来の合成繊維用処理剤は、長期保管した後、合成繊維用処理剤の性能が低下するという問題があった。特に、合成繊維用処理剤が高温で長期保管された場合、合成繊維用処理剤の性能の低下が著しかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、所定の平滑剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及びリン化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤において、合成繊維用処理剤の1質量%水溶液のpHが6.0以上9.0以下の構成がまさしく好適であることを見出した。
【0011】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の合成繊維用処理剤は、下記の平滑剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記のリン化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維用処理剤の1質量%水溶液のpHが6.0以上9.0以下であることを特徴とする。
【0012】
平滑剤(A):アルコールと脂肪酸との完全エステル化合物。
リン化合物(C):下記のリン酸エステル(C1)、有機亜リン酸エステル(C2)、及び有機ホスホン酸エステル(C3)から選ばれる少なくとも一つ。
【0013】
リン酸エステル(C1):下記の式(1)に示されるリン酸エステル(C1a)、下記の式(2)に示されるリン酸エステル(C1b)、及び下記の式(3)に示されるリン酸エステル(C1c)を含有するリン酸エステル。
【0014】
【化1】
(式(1)中において、
:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
【0015】
,M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。)
【0016】
【化2】
(式(2)中において、
,R:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
【0017】
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。)
【0018】
【化3】
(式(3)中において、
,R:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
【0019】
n:2又は3の整数。
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。ただし、分子中にMが2以上ある場合は、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
態様2は、態様1に記載の合成繊維用処理剤において、前記リン化合物(C)がリン酸エステル(C1)である。
【0020】
態様3は、態様1又は2に記載の合成繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)が多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物(A1)を含み、前記多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物(A1)の分子量が700以上である。
【0021】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記リン化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤(A)を20質量%以上70質量%以下、前記ノニオン界面活性剤(B)を20質量%以上79.999質量%以下、及び前記リン化合物(C)を0.001質量%以上10質量%以下の割合で含有する。
【0022】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に水を含有し、前記合成繊維用処理剤における水の含有割合が0.001質量%以上10質量%以下である。
【0023】
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に含窒素系酸化防止剤(D)を含有する。
態様7は、態様1~6のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に下記の高分子量化合物(E)を含有する。
【0024】
高分子量化合物(E):分子中にカルボニル基を含み、且つ質量平均分子量が4000以上である化合物。
態様8の容器に充填する方法は、態様1~7のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤を、容器の容積に対する充填率が80%以上となるように容器に充填する方法である。
【0025】
態様9の合成繊維の製造方法は、態様1~7のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤を合成繊維に付着する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、長期保管した場合であっても、合成繊維用処理剤の性能の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、下記の平滑剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記のリン化合物(C)を含有する。処理剤は、さらに溶媒、含窒素系酸化防止剤(D)、所定の高分子量化合物(E)を含有してもよい。
【0028】
(平滑剤(A))
本実施形態において供される平滑剤としては、アルコールと脂肪酸との完全エステル化合物が挙げられる。完全エステル化合物としては、例えば後述する炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0029】
完全エステル化合物の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、シクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。完全エステル化合物の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、シクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0030】
完全エステル化合物の具体例としては、例えば(1)2-エチルヘキシルステアラート、オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、ペンタエリスリトールテトラオクタート、トリメチロールプロパントリパーム脂肪酸エステル等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(3)ジオレイルアゼラート、チオジプロピオン酸ジオレイル、チオジプロピオン酸ジイソセチル、チオジプロピオン酸ジイソステアリル等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
【0031】
これらの平滑剤(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中で、平滑剤(A)が多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物(A1)を含むことが好ましい。より具体的には、上記(2)(7)の化合物を含むことが好ましい。さらに、多価アルコールと1価脂肪酸エステルとの完全エステル化合物(A1)の分子量が700以上であることが好ましい。かかる化合物を含むことにより、長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。
【0032】
処理剤中の平滑剤(A)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。かかる含有割合が20質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維の平滑性を向上できる。また、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。かかる平滑剤(A)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。かかる含有割合が70質量%以下の場合、処理剤の安定性を向上できる。また、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0033】
(ノニオン界面活性剤(B))
ノニオン界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合させたアミド化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体等のポリオキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。なお、後述する高分子量化合物(E)に該当するものは含まないものとする。
【0034】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソトリアコンタノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0035】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)乳酸、クエン酸、リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸、(6)アジピン酸、セバシン酸、トリカルバリル等の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0036】
ノニオン界面活性剤(B)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0037】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0038】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪族アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0039】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0040】
ノニオン界面活性剤(B)の具体例としては、例えば硬化ひまし油に対し、アルキレンオキサイドを付加させた化合物、ポリエチレングリコールとオレイン酸とのジエステル、セチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加した化合物、炭素数12,13の混合アルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物、ラウリルアミンにアルキレンオキサイドを付加した化合物、ステアリルアミンにアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
【0041】
これらのノニオン界面活性剤(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中のノニオン界面活性剤(B)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。かかる含有割合が20質量%以上の場合、処理剤の安定性を向上できる。また、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。かかるノニオン界面活性剤(B)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは79.999質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。かかる含有割合が79.999質量%以下の場合、処理剤の安定性を向上できる。また、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0042】
(リン化合物(C))
リン化合物(C)は、下記のリン酸エステル(C1)、有機亜リン酸エステル(C2)、及び有機ホスホン酸エステル(C3)から選ばれる少なくとも一つである。これらの中で、リン化合物(C)がリン酸エステル(C1)であることが好ましい。リン酸エステル(C1)を使用することにより、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。
【0043】
リン酸エステル(C1)は、下記の式(1)に示されるリン酸エステル(C1a)、下記の式(2)に示されるリン酸エステル(C1b)、及び下記の式(3)に示されるリン酸エステル(C1c)を含有するリン酸エステルである。
【0044】
【化4】
(式(1)中において、
:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
【0045】
,M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。)
脂肪族1価アルコールとしては、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖状であってもよいし、分岐鎖構造を有してもよい。
【0046】
脂肪族1価アルコールの具体例としては、例えば、(1)オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、オレイルアルコール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール等が挙げられる。
【0047】
アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たりアルキレンオキサイドの付加モル数は、1モル以上20モル以下、好ましくは2モル以上15モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0048】
又はMは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウムを示す。なお、アルカリ土類金属は、2価のため、アルカリ土類金属(1/2)は、M又はMにおいて1/2モル付加されることを示す。アルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の具体例としては、例えばマグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
【0049】
有機アミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)3-アミノプロペン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0050】
ホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の4級ホスホニウム等が挙げられる。
【0051】
【化5】
(式(2)中において、
,R:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
【0052】
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。)
又はRを構成する炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基の具体例としては、式(1)のRにおいて列挙した具体例を採用できる。
【0053】
の具体例としては、式(1)のM又はMにおいて例示したものが挙げられる。
【0054】
【化6】
(式(3)中において、
,R:炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基。
【0055】
n:2又は3の整数。
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2)、有機アミン塩、アンモニウム、又はホスホニウム。ただし、分子中にMが2以上ある場合は、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
又はRを構成する炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、又は炭素数8以上24以下の脂肪族1価アルコール1モル当たり炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下付加したものから水酸基を除いた残基の具体例としては、式(1)のRにおいて列挙した具体例を採用できる。
【0056】
の具体例としては、式(1)のM又はMにおいて例示したものが挙げられる。
アルカリ過中和前処理したリン酸エステル(C1)のP核NMR測定において、リン酸エステル(C1a)、リン酸エステル(C1b)、リン酸エステル(C1c)、及び無機リン酸又はその塩に帰属されるP核NMR積分比率は特に制限されない。リン酸エステル(C1a)、リン酸エステル(C1b)、リン酸エステル(C1c)、及び無機リン酸又はその塩に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、リン酸エステル(C1c)に帰属されるP核NMR積分比率は、1%以上90%以下が好ましく、10%以上80%以下がより好ましく、15%以上70%以下がさらに好ましい。
【0057】
リン酸エステル(C1c)に帰属されるP核NMR積分比率が上記数値範囲であることにより、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。
上記「アルカリ過中和前処理」とは、リン酸エステル化合物に対して過剰量のアルカリを添加する前処理を意味する。なお、アルカリの具体例としては、特に限定されず、例えば有機アミン、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。また、リン酸エステル塩を合成する場合に使用したアルカリと同じであってもよく、異なっていてもよい。有機アミンの具体例としては、上述したリン酸エステル塩を構成する有機アミンで例示したものが挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0058】
リン酸エステル(C1)の具体例としては、例えばイソセチルアルコールをリン酸化した化合物とラウリルアミン1モルに対しエチレンオキサイド10モルを付加させた化合物との塩、イソセチルアルコールをリン酸化した化合物等が挙げられる。
【0059】
有機亜リン酸エステル(C2)は、亜リン酸(P(OH))に有機基(R:置換基)を有するリン酸化合物(P(OR))である。有機ホスホン酸エステル(C3)は、ホスホン酸(HP(O)(OH))に置換基(R)を有するリン酸化合物(RP(O)(OR))である。P(OR)(亜リン酸エステル)は、RP(=O)(OR)(ホスホン酸エステル)側に互変異性化する。
【0060】
有機亜リン酸エステル(C2)又は有機ホスホン酸エステル(C3)を構成する置換基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。1分子内において、置換基が複数存在する場合、置換基は同一であっても異なっていてもよい。また、モノエステル体であっても、ジエステル体であっても、トリエステル体であってもよい。
【0061】
炭化水素基としては、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。
【0062】
不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。
【0063】
炭化水素基を構成する炭素数としては、特に限定されず、例えば1以上30以下が挙げられる。
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、トリコシル基等が挙げられる。
【0064】
分岐鎖を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基、イソトリコシル基等が挙げられる。
【0065】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基等が挙げられる。
【0066】
芳香族炭化水素基としては、芳香環として単環、縮合環を有する炭化水素基であれば、特に限定されず、例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、アルキルフェニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0067】
有機亜リン酸エステル(C2)又は有機ホスホン酸エステル(C3)の具体例としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルへキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(デシル/ラウリル=1/1)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(炭素原子数12~15のアルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0068】
これらのリン化合物(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中のリン化合物(C)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.001質量%以上の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。かかるリン化合物(C)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。かかる含有割合が10質量%以下の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0069】
処理剤中において、前記平滑剤(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記リン化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤(A)を20質量%以上70質量%以下、前記ノニオン界面活性剤(B)を20質量%以上79.999質量%以下、及び前記リン化合物(C)を0.001質量%以上10質量%以下の割合で含有することが好ましい。含有割合をかかる範囲内に規定することにより、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。
【0070】
(pH)
処理剤の1質量%水溶液のpH(25℃)の下限は、6.0以上、好ましくは6.2以上である。かかるpHが6.0以上の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下を抑制できる。処理剤の1質量%水溶液のpH(25℃)の上限は、9.0以下、好ましくは8.7以下である。かかるpHが9.0以下の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下を抑制できる。なお、pH測定時に処理剤を希釈するイオン交換水のpHは、6.0~7.0(25℃)であって、1質量%水溶液を作成して30分以内に測定した値を示す。また、処理剤中に溶媒を含む場合、溶媒を含む混合物としての1質量%水溶液とする。
【0071】
(溶媒)
本実施形態の処理剤は、必要により溶媒を配合してもよい。溶媒としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン、ノルマルパラフィン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用してもよいし、又は2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、各成分の分散性又は溶解性に優れ、ハンドリング性に優れる観点から水、炭素数10以上15以下のノルマルパラフィンが好ましい。
【0072】
処理剤中の水の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.001質量%以上の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。かかる水の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。かかる含有割合が25質量%以下の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。特に、処理剤が高温で長期保管された場合であっても、処理剤の性能の低下を抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0073】
(含窒素系酸化防止剤(D))
本実施形態の処理剤は、必要により含窒素系酸化防止剤(D)を配合してもよい。処理剤が含窒素系酸化防止剤(D)を配合することにより、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。
【0074】
含窒素系酸化防止剤(D)の具体例としては、例えば(1)1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のフェノール系酸化防止剤、(2)モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン、N-ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系化合物;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系化合物等のアミン系酸化防止剤、(3)6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン等の硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0075】
これらの含窒素系酸化防止剤(D)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中の含窒素系酸化防止剤(D)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。かかる含有割合が0.01質量%以上の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。かかる含窒素系酸化防止剤(D)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。かかる含有割合が5質量%以下の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0076】
(高分子量化合物(E))
本実施形態の処理剤は、必要により高分子量化合物(E)を配合してもよい。処理剤が高分子量化合物(E)を配合することにより、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。高分子量化合物(E)は、分子中にカルボニル基を含み、且つ質量平均分子量が4000以上である化合物である。カルボニル基としては、例えばアルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物等が挙げられる。
【0077】
高分子量化合物(E)の具体例としては、例えばカルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物を、カルボン酸類でエステル化した化合物、硬化ひまし油エチレンオキサイド付加物、硬化ひまし油エチレンオキサイド付加物の2塩基酸縮合物、またその末端を1価脂肪酸で封鎖した化合物、ポリブテニルスクシンイミド、ポリメタクリレート等が挙げられる。
【0078】
これらの高分子量化合物(E)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中の高分子量化合物(E)の含有割合の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含有割合が0.1質量%以上の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。かかる高分子量化合物(E)の含有割合の上限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。かかる含有割合が20質量%以下の場合、処理剤を長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下をより抑制できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0079】
(本実施形態の効果)
第1実施形態の処理剤の効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、前記平滑剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及びリン化合物(C)を含有し、処理剤の1質量%水溶液のpHが6.0以上9.0以下に調整されている。したがって、長期保管した場合であっても、処理剤の性能の低下を抑制できる。より具体的には、製糸工程における、延伸ローラー上のタール洗浄性を低減できる。
【0080】
特に、処理剤が高温で長期保管された場合であっても、処理剤の性能の低下を抑制できる。より具体的には、処理剤が高温で長期保管された場合であっても、製糸工程における、延伸ローラー上のタール洗浄性を低減できる。
【0081】
<第2実施形態>
第2実施形態の処理剤を容器に充填する方法は、まず上記各成分を混合されることにより処理剤が調製される工程が行われ、次に混合された処理剤が容器の容積に対して所定の充填率となるように、製品容器に充填される工程が行われる方法である。製品容器中における処理剤の充填率は、1気圧下、25℃における、下記の式(1)から算出される充填率として80体積%以上100体積%以下の範囲に規定されることが好ましい。
【0082】
【数1】
かかる範囲に規定することにより、処理剤が接触する酸素を低減させ、処理剤の性能低下を抑制できる。また、製品容器に処理剤を充填する場合、酸素との接触を避ける観点から窒素による圧送又はポンプを用いる方法が好ましい。また、容器の素材としては、特に限定されないが、鉄製、ステンレス製、高密度ポリエチレン製、高密度ポリエチレン製の内袋をもつ保存容器が好ましい。
【0083】
(本実施形態の効果)
第2実施形態の処理剤を容器に充填する方法の効果について説明する。
(2-1)上記第2実施形態の方法では、処理剤の容器内の充填率を80体積%以上に規定した。したがって、処理剤が接触する酸素を低減させ、処理剤の性能低下を抑制できる。特に、処理剤が高温で長期保管された場合であっても、処理剤の性能低下を抑制できる。
【0084】
<第3実施形態>
次に、本発明による合成繊維を具体化した第3実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤の不揮発分が表面に付着している処理済み合成繊維である。処理剤が合成繊維の表面に付着することにより改質合成繊維が得られる。なお、不揮発分とは、処理剤を105℃で2時間熱処理して揮発性成分を十分に除去したものをいう。処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、希釈溶媒で希釈した希釈液、例えば有機溶媒溶液、水性液等として付与してもよい。希釈溶媒には、処理剤の繊維への付着性と経済性の観点から炭素数10以上15以下の炭化水素及び/又は水を使用することが好ましい。合成繊維は、水性液等の希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等において合成繊維に付着させる工程を経て得られる。合成繊維に付着した希釈液は、延伸工程、乾燥工程により希釈溶媒を蒸発させてもよい。付着させる工程も紡糸工程であれば特に制限はない。延伸もしくは熱処理工程において、150℃以上のローラーを通過させる工程を有する製造設備、工程での使用により、発明の効果がより期待できる。
【0085】
(合成繊維)
本実施形態の処理剤が付与される合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中でポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に適用されることが好ましい。
【0086】
処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤を合成繊維に対し0.1質量%以上3質量%以下の割合(水等の溶媒を含まない割合)となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用できる。
【0087】
本発明において、合成繊維の用途としては、特に限定されないが、産業資材に用いられる合成繊維が好ましい。例えばエアバッグ用繊維、シートベルト用繊維、タイヤコード用繊維、カーペット用繊維、テント用繊維、広告布用繊維、漁網用繊維、コンベアベルト用繊維、ロープ用繊維等の自動車、建築、商業、農業・水産業、土木等の分野で使用される合成繊維がより好ましい。
【0088】
(本実施形態の効果)
第3実施形態の合成繊維の効果について説明する。第3実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0089】
(3-1)第3実施形態の合成繊維では、第1実施形態の処理剤が付着している。したがって、処理剤を長期保管した場合であっても、各成分による各種効能、例えば長繊維用等に対する効能を有効に発揮できる。特に、タール洗浄性を向上できる。
【0090】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0091】
・上記実施形態の各処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各処理剤等の品質保持のため、その他の成分として、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、上記以外の酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤、上記以外の平滑剤、pH調整剤等の通常処理剤等に用いられる成分がさらに配合されてもよい。pH調整剤としては、例えばpH緩衝作用を有するリン酸塩、カルボン酸塩等が挙げられる。処理剤の不揮発分中におけるpH調整剤の含有量は、タール低減効果をより向上できる観点から2質量%未満が好ましい。処理剤中にカルボン酸塩が存在する場合は、カルボン酸塩/リン化合物(C)の質量比率は、2/1~1/100とすることが好ましく、1/2~1/100がより好ましく、1/10~1/100が更に好ましく、1/20~1/100が特に好ましい。なお、溶媒以外の通常処理剤等に用いられるその他の成分は、本発明の効能を効率的に発揮する観点から各処理剤中において20質量%以下が好ましい。
【実施例
【0092】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0093】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
実施例1の処理剤は、平滑剤(A)としてトリメチロールプロパントリパーム脂肪酸エステル(分子量890)(A-1a)を50部、ノニオン界面活性剤(B)として硬化ひまし油1モルに対し、エチレンオキサイド20モルを付加させたものをオレイン酸2モルでエステル化した化合物(B-2b)を20部、ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)とオレイン酸とのジエステル(B-3)を19部、ラウリルアミン1モルに対し、エチレンオキサイド4モルを付加させた化合物(B-6)を0.5部、リン化合物(C)としてイソセチルアルコールをリン酸化した化合物とラウリルアミン1モルに対しエチレンオキサイド10モルを付加させた化合物との塩(C-1)を1部、含窒素系酸化防止剤(D)として1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸(D-1)を0.5部、高分子量化合物として硬化ひまし油1モルに対し、エチレンオキサイド40モルを付加させたものをマレイン酸とステアリン酸とでエステル化した化合物(質量平均分子量6000)(E-1)を4部、その他成分として2級アルキル(炭素数12~18)スルホン酸ナトリウム(40%水溶液)(F-1)1部及びノルマルパラフィン(炭素数12,13,14)(F-5)4部をビーカーに加えてよく混合し、実施例1の処理剤を調製した。
【0094】
(実施例2~18、比較例1~7)
実施例2~18、比較例1~7の各処理剤は、表1,2に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0095】
各例の処理剤中における平滑剤(A)の種類と含有量、ノニオン界面活性剤(B)の種類と含有量、リン化合物(C)の種類と含有量、含窒素系酸化防止剤(D)の種類と含有量、高分子量化合物(E)の種類と含有量、その他成分の種類と含有量は、表1,2の「平滑剤(A)」欄、「ノニオン界面活性剤(B)」欄、「リン化合物(C)」欄、「含窒素系酸化防止剤(D)」欄、「高分子量化合物(E)」欄、及び「その他成分」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0096】
また、「pH」欄について、処理剤のpHは、処理剤の1%水溶液のpHである。また、pH測定時に処理剤を希釈するイオン交換水のpHは、6.0~7.0(25℃)であって、1%水溶液を作成して30分以内に測定した値を示す。また、pH測定濃度条件は、処理剤中の溶媒(水分やパラフィン等)も含む混合物としての1%水溶液とする。後述する表3~6の「1%水溶液」欄のpH測定方法も同様とする。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
表1,2に記載する平滑剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、リン化合物(C)、含窒素系酸化防止剤(D)、高分子量化合物(E)、その他成分の詳細は以下のとおりである。
【0099】
(平滑剤(A))
下記表3に示される各平滑剤を使用した。
【0100】
【表3】
(ノニオン界面活性剤(B))
下記表4に示されるノニオン性界面活性剤を使用した。
【0101】
【表4】
(リン化合物(C))
下記表5に示されるリン化合物(C)を使用した。
【0102】
【表5】
表5に示される括弧内の数値は、リン酸エステル(C1a)、リン酸エステル(C1b)、リン酸エステル(C1c)、及び無機リン酸又はその塩に帰属されるP核NMR積分比率の合計を100%としたとき、各成分のP核NMR積分比率を示す。
【0103】
(含窒素系酸化防止剤(D))
D-1:1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸(サイテック社製の商品名サイアノックス1790)
rd-1:テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(ADEKA社製の商品名アデカスタブAO60)
(高分子量化合物(E))
E-1:硬化ひまし油1モルに対し、エチレンオキサイド40モルを付加させたものをマレイン酸とステアリン酸とでエステル化した化合物(質量平均分子量6000)(1%水溶液のpH:4.3)
(その他成分)
下記表6に示されるその他成分を使用した。
【0104】
【表6】
試験区分2(タール洗浄性初期の評価)
各種調製した各処理剤を必要に応じてイオン交換水又は有機溶剤の希釈剤にて均一に希釈し、15%希釈液とした。1670デシテックス、96フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に、前記の希釈液を、オイリングローラー給油法にて不揮発分として付与量5.0%となるように付与し、希釈液を乾燥させて試験糸とした。
【0105】
試験糸を、初期張力1.5kg、糸速度0.1m/分で、表面温度250℃の梨地クロムピンに接触させて12時間走行させた。上記の試験で得た梨地クロムピン上に発生した汚れを、5%水酸化ナトリウムグリセリン溶液にしみ込ませた綿棒でふき取り、その洗浄性を、次の基準で評価した。結果を表1,2の「タール洗浄性初期」欄に示す。
【0106】
・タール洗浄性初期の評価基準
5(非常に優れる):10回未満のふき取りで、汚れをふき取ることができる場合
4(優れる):10回以上50回未満のふき取りにより、汚れをふき取ることができる場合
3(良好):50回以上100回未満のふき取りにより、汚れをふき取ることができる場合
2(可):100回以上200回未満のふき取りにより、汚れをふき取ることができる場合
1(不可):200回以上のふき取りによっても、汚れをふき取ることができない場合
試験区分3(タール洗浄性高温処理後の評価)
各種調製した処理剤を密閉した状態で60℃で3週間保管した後に、イオン交換水又は有機溶剤の希釈剤にて均一に希釈し、15%希釈液とした。1670デシテックス、96フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に、前記の希釈液を、オイリングローラー給油法にて不揮発分として付与量5.0質量%となるように付与し、希釈剤を乾燥させ試験糸とした。
【0107】
試験糸を、初期張力1.5kg、糸速度0.1m/分で、表面温度250℃の梨地クロムピンに接触させて12時間走行させた。上記の試験で得た梨地クロムピン上に発生した汚れを、5%水酸化ナトリウムグリセリン溶液にしみ込ませた綿棒でふき取り、その洗浄性を、次の基準で評価した。結果を表1,2の「タール洗浄性高温処理後」欄に示す。
【0108】
・タール洗浄性高温処理後の評価基準
5(非常に優れる):10回未満のふき取りで、汚れをふき取ることができる場合
4(優れる):10回以上50回未満のふき取りにより、汚れをふき取ることができる場合
3(良好):50回以上100回未満のふき取りにより、汚れをふき取ることができる場合
2(可):100回以上200回未満のふき取りにより、汚れをふき取ることができる場合
1(不可):200回以上のふき取りによっても、汚れをふき取ることができない場合
上記表の結果から、本発明によれば、タール洗浄性を向上できる。また、処理剤の高温処理後のタール洗浄性を向上できる。
【要約】
【課題】長期保管した場合であっても、合成繊維用処理剤の性能の低下を抑制できる合成繊維用処理剤、それを用いた容器に充填する方法、及び合成繊維を提供する。
【解決手段】本発明の合成繊維用処理剤は、アルコールと脂肪酸との完全エステル化合物である平滑剤(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及び下記のリン化合物(C)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記合成繊維用処理剤の1質量%水溶液のpHが6.0以上9.0以下であることを特徴とする。リン化合物(C)は、所定のリン酸エステル(C1)、有機亜リン酸エステル(C2)、及び有機ホスホン酸エステル(C3)から選ばれる少なくとも一つ。
【選択図】なし