(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/086 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C01B21/086
(21)【出願番号】P 2024526826
(86)(22)【出願日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 CN2023110970
(87)【国際公開番号】W WO2024046025
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】202211055475.1
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524165768
【氏名又は名称】安徽新宸新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】NOVEL COSMOS ADVANCED MATERIAL (ANHUI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】East of Chuangxin Road, Salt Chemical Park,Luqiao Town, Dingyuan County Chuzhou, Anhui 233290 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】王馳偉
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-507459(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113912028(CN,A)
【文献】特表2015-531744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/086
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除水剤をリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品含有の前処理液に添加し、20℃~40℃の条件で脱水反応を行い、反応系に酸性ガスが発生しなくなった後、さらに1h~6h反応させ、濾過し、濾液を得るステップであって、前記除水剤は、三塩化ビスマス又は三塩化アンチモンであるステップ1と、
前記濾液を蒸発濃縮し、濃縮物を再結晶し、高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るステップ2と、を含み、
ステップ1において、前記除水剤と前記前処理液におけるH
2Oとのモル比は、1~2:1であり、
ステップ1において、前記前処理液は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品及び有機溶媒を含み、且つ前記有機溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、酢酸ブチル又は酢酸エチルのうちの少なくとも1種であり、
ステップ2において、蒸発濃縮の条件は、温度が10℃~40℃で、真空度が100Pa~600Paのことである、
ことを特徴とするリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【請求項2】
ステップ1において、前記除水剤と前記前処理液におけるH
2Oとのモル比は、1.02~1.1:1である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【請求項3】
ステップ1において、前記除水剤の添加時間は、40min~60minである、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【請求項4】
ステップ1において、前記前処理液中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度は、10wt%~25wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【請求項5】
ステップ1において、前記前処理液は、ビス(フルオロスルホニル)イミドとリチウム化試薬とをイオン交換反応させ、濾過して得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品含有の溶液であり、前記リチウム化試薬は、水酸化リチウム又は炭酸リチウムである、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【請求項6】
ステップ1において、前記脱水反応の撹拌速度は、60rpm~300rpmである、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【請求項7】
ステップ1において、前記酸性ガスは、アルカリ性溶液を用いて回収する、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【請求項8】
ステップ2において、蒸発濃縮後、前記濾液中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が30wt%~40wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2022年08月31日に提出された、中国特許出願No.CN202211055475.1の優先権を主張する。先行出願の開示内容全体は引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、精製技術の分野に関し、特にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)は、優れた電気化学的安定性、熱安定性及び低温性能を有し、電池の正負極材料とより良好な適応性を有し、且つ安全性がより高く、一次リチウム電池、二次リチウムイオン電池及びスーパーキャパシタなどの新エネルギーデバイスにおける重要な高性能電解質材料であり、現在最も産業化の将来性を有する新規なリチウム塩である。
【0004】
LiFSIは、主に、まずクロロスルホン酸、塩化チオニル及びスルファミン酸を反応させることによりイミドジスルフリルクロリドを得、又はクロロスルホン酸とクロロスルホニルイソシアネートを反応させることによりイミドジスルフリルクロリドを得、さらにイミドジスルフリルクロリドを原料とし、フッ素化試薬と反応させてビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)又はビス(フルオロスルホニル)イミド金属塩を得、HFSI又はビス(フルオロスルホニル)イミド金属塩をリチウム化試薬(水酸化リチウム又は炭酸リチウム)と反応させてLiFSIを得る合成経路により得られる。しかし上記合成経路に副生成物の水が生成され、且つLiFSIが極めて吸水しやすいため、LiFSI粗製品中に水が含まれ、ひいては1つの結晶水が錯体化される。研究によれば、吸水後のLiFSIは熱安定性が悪くなり、長期保存に適さず、含有水分が多いほど、その分解速度が速い。そのため、通常の物理的方法は、基本的にLiFSI粗製品中の水分を効果的に除去することができず、除水剤を添加してLiFSI粗製品中の水と化学反応させる方式により除水を行うことが多い。
【0005】
現在よく用いられる除水剤は、塩化チオニル又は他の感水性物質であり、例えば塩化アセチル又は塩化スルフリル系の物質であり、優れた除水効果を達成できるが、顕著な塩化物イオンの残留が発生し、リチウム電池の性能に深刻な影響を与え、また処理しにくい混合廃ガスによる汚染が発生し、環境保護のストレスを増やす。したがって、除水効果が高く、塩化物イオンの残留が発生せず、安全で環境に優しいLiFSI精製方法を求めることが望まれており、リチウム電池の電解質の安定性を保証し、リチウム電池の円滑な普及を促進することに重要な意味を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の目的は、従来技術における上記問題を解決するために、三塩化ビスマス又は三塩化アンチモンを除水剤とし、さらに再結晶により水分含有量が5ppm~20ppmのみで、且つ塩化物イオンの残留が存在しない高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記出願の目的を達成するために、本願の実施例は、以下の技術的解決手段を採用する。
【0008】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法は、
除水剤をリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品含有の前処理液に添加し、20℃~40℃の条件で脱水反応を行い、反応系に酸性ガスが発生しなくなった後、さらに1h~6h反応させ、濾過し、濾液を得るステップであって、前記除水剤は、三塩化ビスマス又は三塩化アンチモンであるステップ1と、
前記濾液を蒸発濃縮し、濃縮物を再結晶し、高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得るステップ2と、を含む。
【0009】
本願は、再結晶の形態を特に限定するものではなく、例えばリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの貧溶媒(すなわちリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドに対して低い溶解性を有する溶媒)を用いて晶析を行うなど、当業者によく知られた再結晶方法を採用すればよい。
【0010】
前記三塩化ビスマス及び三塩化アンチモンの脱水原理は、以下に示され、
SbCl3+H2O→SbOCl↓+2HCl↑
BiCl3+H2O→BiOCl↓+2HCl↑。
【0011】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、前記除水剤をリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品含有の前処理液に添加し、30℃~35℃の条件で脱水反応を行い、前記反応系に酸性ガスが発生しなくなった後、さらに1h~2h反応させ、濾過し、前記濾液を得る。
【0012】
上記実施例における好ましい反応条件は、脱水反応の進行を促進することに有利であり、前処理液中の水分及び残留塩化物イオンを効果的に除去することができる。
【0013】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、前記除水剤と前記前処理液中のH2Oとのモル比は、1~2:1である。
【0014】
さらに選択的に、ステップ1において、前記除水剤と前記前処理液中のH2Oとのモル比は、1.02~1.1:1である。
【0015】
本願は、上記前処理液中のH2O含有量の測定方法について特に限定せず、例えばカールフィッシャークーロン法による測定など、当業者によく知られた測定方法を用いればよい。
【0016】
好ましい除水剤の添加量は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品中の水分を完全に除去することを保証できるだけでなく、また前処理液中の残留塩化物イオンを除去することができ、それにより高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得る。
【0017】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、前記除水剤の添加時間は、40min~60minである。
【0018】
脱水反応中に除水剤が発熱する可能性があるため、脱水反応の温度≦40℃を保証し、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの分解を引き起こすことで、精製後の収率を低下させることを回避するように、上記除水剤を一度に添加してもよいし、除水剤の添加時間を制御することにより数回に分けて添加することを実現してもよい。
【0019】
本願の1つの実施例として、前記前処理液の製造過程は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品を有機溶媒に溶解することであり、且つ前記有機溶媒は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、酢酸ブチル又は酢酸エチルのうちの少なくとも1種である。
【0020】
本願は、前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品の由来について特に限定せず、本分野によく用いられる製造方法を採用してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品を得ればよい。本願において、前記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品中の水分含有量は、>100ppmであってもよく、純度は、<99.9%であってもよい。
【0021】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、前記前処理液中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度は、10wt%~25wt%である。
【0022】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、前記前処理液は、ビス(フルオロスルホニル)イミドとリチウム化試薬とをイオン交換反応させ、濾過して得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品含有の溶液である。
【0023】
本願における前記前処理液は、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びリチウム化試薬を原料としてイオン交換反応により混合液を得、さらに濾過により得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品含有の溶液であってもよい。リチウム化試薬は、本分野の通常のリチウム化反応を発生可能な試薬、例えば水酸化リチウム又は炭酸リチウムを選択する。当該溶液を直接精製し、反応ステップを簡略化し、含水量が極めて低く、塩化物イオンの残留がない高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得る。
【0024】
本願は、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びリチウム化試薬の溶媒を同類溶媒に限定し、且つ当該同類溶媒は、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどを含むが、これらに限定されず、また、本願は、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びリチウム化試薬を原料とする反応過程について特に限定せず、当業者によく知られた製造方法を用いればよい。
【0025】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、前記脱水反応の撹拌速度は、60rpm~300rpmである。
【0026】
上記実施例における好ましい撹拌速度は、体系における各成分の均一な混合を保証し、脱水反応の円滑な進行を促進することができる。
【0027】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、前記酸性ガスは、アルカリ性溶液を用いて回収する。
【0028】
本願は、三塩化ビスマス又は三塩化アンチモンを除水剤とし、生成された塩化水素ガスは単一の副生成物であり、アルカリ性溶液により回収利用を極めて容易に実現し、混合廃ガスによる汚染の発生を回避し、環境保護のストレスを低減する。
【0029】
本願は、前記アルカリ性溶液について特に限定せず、NaOH溶液、KOH溶液、炭酸ナトリウム溶液などであってもよい。
【0030】
いくつかの実施例において、酸性ガスを気泡発生器を経た後にアルカリ性溶液に入れて回収することができる。気泡発生器に気泡が発生しなくなると、酸性ガスが発生しなくなることが示される。
【0031】
本願の1つの実施例として、ステップ2において、蒸発濃縮の条件は、温度が10℃~40℃で、真空度が100Pa~600Paのことである。
【0032】
本願の1つの実施例として、ステップ2において、前記濾液中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が30wt%~40wt%になるまで蒸発濃縮する。
【0033】
上記実施例における好ましい蒸発濃縮の条件は、濾液中の一部の溶媒の除去に有利であり、後続の再結晶過程の進行に有利である。
【0034】
本願の1つの実施例として、ステップ1において、濾過は、水分含有量が10ppmよりも低いグローブボックス内で行う。
【0035】
上記前処理液は、脱水反応を経た後、反応系における含水量が極めて低く、基本的に20ppm以下であり、そのため、グローブボックス内で濾過する必要があり、そうでなければ脱水後の反応系が環境における水分を再吸収し、脱水効果に影響を与える。
【発明の有益な効果】
【0036】
本願は、三塩化ビスマス又は三塩化アンチモンを除水剤とし、その加水分解を利用してリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品中の水分を除去し、有機溶媒及び水にいずれも難溶性のオキシ塩化物を生成し、さらに濾過により難溶性のオキシ塩化物を除去し、塩化物イオンの残留を回避し、しかもビス(フルオロスルホニル)イミドはアニオンの体積が大きく、ビスマス元素又はアンチモン元素がビス(フルオロスルホニル)イミドと塩を形成しにくいため、新たな不純物の発生を回避し、また、金属イオンM3+(Sb3+又はBi3+)は、酸性条件で、Cl-と結合して難溶性のオキシ塩化物MOClになることができ、それにより溶液中の塩化物イオンを除去することに役立ち、純度が高く、含水量が極めて低く、塩化物イオンの残留がない高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得る。
【0037】
本願は、三塩化ビスマス又は三塩化アンチモンを除水剤とし、粗製品に含まれる水を除去し、さらに蒸発濃縮を行って一部の有機溶媒を除去し、最後に再結晶して純度が99.95%以上と高く、塩化物イオン含有量が<5ppmで、水分含有量が<20ppmのリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得る。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本願の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、実施例を参照し、本願をさらに詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は、本願を解釈するためだけに用いられ、本願を限定するものではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0039】
本願の実施例は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法を提供し、
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品(純度98.5%、水分5000ppm)37.4g(0.2mol)をジメチルカーボネート200gに溶解し、前処理液を形成し、
35℃の条件で、上記前処理液に三塩化ビスマス3.47gを40min内に数回に分けて添加して脱水反応を行い、反応系に発生した酸性ガスが気泡発生器を経た後にNaOH溶液に吸収され、反応系に酸性ガスが発生しなくなった後、さらに2h反応させ、水分が10ppmよりも低いグローブボックス内で濾過し、濾液を得るステップ1と、
濾液を真空度が600Paで、温度が10℃の条件で蒸発濃縮し、濾液中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が30wt%になるまで濃縮し、続いて濃縮物を再結晶し、真空乾燥し、純度が99.97%で、収率が96.7%の高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド35.63gを得るステップ2と、を含む。
【実施例2】
【0040】
本願の実施例は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法を提供し、
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品(純度98.2%、水分6000ppm)37.4g(0.2mol)をプロピレンカーボネート300gに溶解し、前処理液を形成し、
20℃の条件で、上記前処理液に三塩化ビスマス5.4gを50min内に数回に分けて添加して脱水反応を行い、反応系に発生した酸性ガスが気泡発生器を経た後にNaOH溶液に吸収され、反応系に酸性ガスが発生しなくなった後、さらに5.5h反応させ、水分が10ppmよりも低いグローブボックス内で濾過し、濾液を得るステップ1と、
濾液を真空度が350Paで、温度が25℃の条件で蒸発濃縮し、濾液中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が35wt%になるまで濃縮し、続いて濃縮物を再結晶し、真空乾燥し、純度が99.96%で、収率が96.5%の高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド35.46gを得るステップ2と、を含む。
【実施例3】
【0041】
本願の実施例は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法を提供し、
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド粗製品(純度98.1%、水分6800ppm)37.4g(0.2mol)をメチルtert-ブチルエーテル115gに溶解し、前処理液を形成し、
40℃の条件で、上記前処理液に三塩化ビスマス4.5gを60min内に数回に分けて添加して脱水反応を行い、反応系に発生した酸性ガスが気泡発生器を経た後にNaOH溶液に吸収され、反応系に酸性ガスが発生しなくなった後、さらに3h反応させ、水分が10ppmよりも低いグローブボックス内で濾過し、濾液を得るステップ1と、
濾液を真空度が100Paで、温度が40℃の条件で蒸発濃縮し、濾液中のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が40wt%になるまで濃縮し、続いて濃縮物を再結晶し、真空乾燥し、純度が99.96%で、収率が96.8%の高純度のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド35.53gを得るステップ2と、を含む。
【0042】
本願の技術的解決手段をよりよく説明するために、以下、比較例により本願の実施例とさらに比較する。
【比較例1】
【0043】
本比較例は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法を提供し、実施例1とは異なり、ステップ1において、三塩化ビスマス3.47gを無水塩化第二鉄1.78gに置き換え(脱水剤とH2O含有量とのモル比は、実施例1と同じ)、純度が93.5%で、収率が78.4%のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド30.99gを得た。
【比較例2】
【0044】
本比較例は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法を提供し、実施例1とは異なり、ステップ1において、三塩化ビスマス3.47gを三塩化アルミニウム1.47gに置き換え(除水剤とH2O含有量とのモル比は、実施例1と同じ)、純度が95.2%で、収率が85.4%のリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド33.05gを得た。
【0045】
本願の実施例にて提供されるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの精製方法の特性をよりよく説明するために、以下、実施例1~3及び比較例1~2で製造されたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド中の含水量、塩化物イオンの残留を検出し、検出結果を以下の表1に示す。
【0046】
【0047】
上記リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド中の水分含有量、塩化物イオン含有量は、いずれも中華人民共和国化工業界規格HG/T4066-2015 六フッ化リン酸リチウムにおける方法に従って検出された。
【0048】
表1から分かるように、本願は、三塩化ビスマス又は三塩化アンチモンを除水剤とし、粗製品に含まれる水を顕著に除去することができるだけでなく、またその残留塩化物イオンを除去することができ、水分含有量が20ppmよりも小さく、塩化物イオン含有量が5ppmよりも小さく、純度が99.95%以上と高いリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを得る。
【0049】
以上、本願の好ましい実施例にすぎず、本願を制限するものではなく、本願の精神と原則内で行われたあらゆる修正、同等の置換又は改良などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。