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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A47G9/10 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024534163
(86)(22)【出願日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2024014262
【審査請求日】2024-06-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511192768
【氏名又は名称】株式会社エコ・ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】尹 炳五
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/097435(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/132308(WO,A1)
【文献】特開2022-142379(JP,A)
【文献】特開2005-334418(JP,A)
【文献】登録実用新案第3131886(JP,U)
【文献】国際公開第2022/244559(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3157554(JP,U)
【文献】登録実用新案第3119790(JP,U)
【文献】米国特許第6202232(US,B1)
【文献】登録実用新案第3217501(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向は、中央部に位置する第一領域と、両端部に位置する第三領域と、前記第一領域と前記第三領域との間に位置する第二領域とからなり、
前記中央部から前記端部にかけて徐々に厚みが大きくなっており、
前記第一領域は、前記第二領域及び前記第三領域よりも幅が大きく、
前記第二領域は、前記第三領域よりも幅が大きく、
前記第三領域は、前記第一領域よりも硬く、
前記第二領域は、前記第三領域よりも硬いことを特徴とする枕。
【請求項2】
複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなり、
前記第二領域は、一方の表面と他方の表面との間に、周囲よりも嵩密度が大きい芯部を有することを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記第二領域において、前記一方の表面から前記芯部までの距離は、前記他方の表面から前記芯部までの距離よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項4】
前記他方の表面と幅方向の一方の端面及び他方の端面との境界部分がカーブ形状を成し、前記他方の表面と床との間には使用者の手が入る隙間が生じることを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項5】
奥行方向は、中央部に位置する第一奥行領域と、両端部に位置する第三奥行領域と、前記第一奥行領域と前記第三奥行領域との間に位置して使用者の首を支持する第二奥行領域とからなり、
前記第二奥行領域は、前記第一奥行領域及び前記第三奥行領域よりも硬く、
前記第三奥行領域は、前記第一奥行領域よりも柔らかいことを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項6】
前記第二領域は幅方向に硬さが異なる複数の小領域からなり、隣接する前記小領域同士では、前記第一領域に近いほうが柔らかいことを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項7】
前記第二領域の前記芯部には、周囲よりも嵩密度が大きい硬部が局所的に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項8】
前記第二領域の前記芯部には、奥行方向に貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の枕。
【請求項9】
前記貫通孔に挿入する冷却材を備えることを特徴とする請求項8に記載の枕。
【請求項10】
前記貫通孔に挿入する前記芯部よりも柔らかいクッション材を備えることを特徴とする請求項8に記載の枕。
【請求項11】
高さ方向に硬さが異なる三層以上の複層構造であり、高さ方向中央部における層よりも一方の表面側及び他方の表面側における層が柔らかいことを特徴とする請求項2に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編成樹脂網状構造体からなる枕に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠の質向上を目的として従来から様々な枕が提案されている。
例えば、特許文献1には、高さ方向は上層と下層と中層とからなり、下層は上層よりも硬く、中層は上層よりは硬く下層よりは柔らかく、上層と中層との境界では、上層の編成樹脂と中層の編成樹脂とが絡み合い、中層と下層との境界では、中層の編成樹脂と下層の編成樹脂とが絡み合い、幅方向は中央領域と端部領域と間領域とからなり、端部領域は中央領域よりも硬く、間領域は中央領域よりは硬く端部領域よりは柔らかく、中央領域と間領域との境界では、中央領域の編成樹脂と間領域の編成樹脂とが絡み合い、間領域と端部領域との境界では、間領域の編成樹脂と端部領域の編成樹脂とが絡み合っている、編成樹脂網状構造体からなる枕が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-142379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の枕によれば、睡眠の質をより効果的に向上させることができる。しかし、人によって枕の好みは様々である。
そこで本発明は、特許文献1の枕とは別の観点から、睡眠の質をより効果的に向上させる枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の枕は、幅方向は、中央部に位置する第一領域10と、両端部に位置する第三領域30と、第一領域10と第三領域30との間に位置する第二領域20とからなり、中央部から端部にかけて徐々に厚みが大きくなっており、第一領域10は、第二領域20及び第三領域30よりも幅が大きく、第二領域20は、第三領域30よりも幅が大きく、第三領域30は、第一領域10よりも硬く、第二領域20は、第三領域30よりも硬いことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の枕において、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなり、第二領域20は、一方の表面2と他方の表面3との間に、周囲よりも嵩密度が大きい芯部40を有することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の枕において、第二領域20において、一方の表面2から芯部40までの距離Hは、他方の表面3から芯部40までの距離Hよりも大きいことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2に記載の枕において、他方の表面3と幅方向の一方の端面6及び他方の端面7との境界部分がカーブ形状を成し、他方の表面3と床との間には使用者の手が入る隙間αが生じることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2に記載の枕において、奥行方向は、中央部に位置する第一奥行領域50と、両端部に位置する第三奥行領域70と、第一奥行領域50と第三奥行領域70との間に位置して使用者の首を支持する第二奥行領域60とからなり、第二奥行領域60は、第一奥行領域50及び第三奥行領域70よりも硬く、第三奥行領域70は、第一奥行領域50よりも柔らかいことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項2に記載の枕において、第二領域20は幅方向に硬さが異なる複数の小領域21からなり、隣接する小領域21同士では、第一領域10に近いほうが柔らかいことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項2に記載の枕において、第二領域20の芯部40には、周囲よりも嵩密度が大きい硬部80が局所的に設けられていることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項2に記載の枕において、第二領域20の芯部40には、奥行方向に貫通孔90が形成されていることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の枕において、貫通孔90に挿入する冷却材を備えることを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項8に記載の枕において、貫通孔90に挿入する芯部40よりも柔らかいクッション材を備えることを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項2に記載の枕において、高さ方向に硬さが異なる三層以上の複層構造であり、高さ方向中央部における層よりも一方の表面2側及び他方の表面3側における層が柔らかいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、睡眠の質をより効果的に向上させる枕を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一実施例による枕の概略正面図
図2】同枕の概略上面図
図3】本発明の第二実施例による枕の概略正面図
図4】同枕の概略上面図
図5】本発明の第三実施例による枕の概略正面図
図6】本発明の第四実施例による枕の概略正面図
図7】本発明の第五実施例による枕の概略正面図
図8】本発明の実施例による枕の製造装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施形態による枕は、幅方向は、中央部に位置する第一領域と、両端部に位置する第三領域と、第一領域と第三領域との間に位置する第二領域とからなり、中央部から端部にかけて徐々に厚みが大きくなっており、第一領域は、第二領域及び第三領域よりも幅が大きく、第二領域は、第三領域よりも幅が大きく、第三領域は、第一領域よりも硬く、第二領域は、第三領域よりも硬いものである。
本実施形態によれば、使用者の寝返りを促し、睡眠の質を向上させることができる。
【0009】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態による枕において、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなり、第二領域は、一方の表面と他方の表面との間に、周囲よりも嵩密度が大きい芯部を有するものである。
本実施形態によれば、第二領域の中間部分のみ硬くして表面部分は柔らかくすることで、使用者が頭を乗せたときのクッション性を高めることができる。
【0010】
本発明の第3の実施形態は、第2の実施形態による枕において、第二領域において、一方の表面から芯部までの距離は、他方の表面から芯部までの距離よりも大きいものである。
本実施形態によれば、一方の表面から芯部までの柔らかい層の厚みが大きいことで、使用者は、第一領域から第二領域へ寝返りしやすくなり、また、頭が第二領域にあるときも良好なクッション性を感じることができる。また、他方の表面から芯部までの柔らかい層が所定の厚みを有することで、枕の底付き感が無くなり使用者の快適性を高めることができる。
【0011】
本発明の第4の実施形態は、第2の実施形態による枕において、他方の表面と幅方向の一方の端面及び他方の端面との境界部分がカーブ形状を成し、他方の表面と床との間には使用者の手が入る隙間が生じるものである。
本実施形態によれば、使用者は枕と床との間に生じた隙間に手を入れることで、より一層リラックスすることができる。
【0012】
本発明の第5の実施形態は、第2の実施形態による枕において、奥行方向は、中央部に位置する第一奥行領域と、両端部に位置する第三奥行領域と、第一奥行領域と第三奥行領域との間に位置して使用者の首を支持する第二奥行領域とからなり、第二奥行領域は、第一奥行領域及び第三奥行領域よりも硬く、第三奥行領域は、第一奥行領域よりも柔らかいものである。
本実施形態によれば、使用者の首等を快適にサポートすることができる。
【0013】
本発明の第6の実施形態は、第2の実施形態による枕において、第二領域は幅方向に硬さが異なる複数の小領域からなり、隣接する小領域同士では、第一領域に近いほうが柔らかいものである。
本実施形態によれば、第二領域は第一領域側が比較的柔らかく第三領域側が比較的硬いものとなり、使用者が寝返りをしやすくなる。
【0014】
本発明の第7の実施形態は、第2の実施形態による枕において、第二領域の芯部には、周囲よりも嵩密度が大きい硬部が局所的に設けられているものである。
本実施形態によれば、硬部を設けることで、幅方向において最も硬い第二領域を、クッション性を損なわずにさらにもう少し硬くすることができる。
【0015】
本発明の第8の実施形態は、第2の実施形態による枕において、第二領域の芯部には、奥行方向に貫通孔が形成されているものである。
本実施形態によれば、芯部のなかに貫通孔が形成されていることで、芯部が高さ方向(厚み方向)に硬さの異なる複層構造を備えるかのようになり、比較的硬い部分である第二領域のクッション性を向上することができる。また、貫通孔があることにより通気性が高まる。
【0016】
本発明の第9の実施形態は、第8の実施形態による枕において、貫通孔に挿入する冷却材を備えるものである。
本実施形態によれば、枕に冷却材を入れることで使用者の頭等が冷やされ、夏場の寝苦しさを改善することができる。
【0017】
本発明の第10の実施形態は、第8の実施形態による枕において、貫通孔に挿入する芯部よりも柔らかいクッション材を備えるものである。
本実施形態によれば、使用者はクッション材を入れることで第二領域のクッション性を調節することができる。
【0018】
本発明の第11の実施形態は、第2の実施形態による枕において、高さ方向に硬さが異なる三層以上の複層構造を有し、高さ方向中央部における層よりも一方の表面側及び他方の表面側における層のほうが柔らかいものである。
本実施形態によれば、使用者が頭部を枕に乗せたときの快適性を向上させることができる。
【実施例
【0019】
まず、本発明の第一実施例による枕について説明する。
図1は第一実施例による枕の概略正面図、図2は同枕の概略上面図である。
第一実施例の枕は、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなる。編成網状構造体の形状自体が枕の形状を成しているため、枕はカバーに入れずにそのまま使用することも可能である。なお、枕は基本的に無色透明又は白色とすることが多いが、説明のため一部に色又は線を付している。
編成樹脂網状構造体は、熱可塑性樹脂を所定温度で溶融混練して得た溶融樹脂を、糸状に流れ落として冷却することで形成される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂などであり、これらを単独で用いることも、二種以上を混合して用いることもできる。
熱可塑性樹脂を原料として製造された編成樹脂網状構造体は、使用後にリサイクルして再び編成樹脂網状構造体の原料等として利用することができる。また、編成樹脂網状構造体は、水等を使用して洗浄可能であるため、枕を清潔に保ちやすい。
【0020】
枕は、幅方向における中央部の厚みが両端部の厚みよりも小さく、中央部と両端部との間に緩やかに傾斜した傾斜部を有する形状である。
枕は、幅方向に硬さ(反発力)が異なる。幅方向を硬さで分けると、中央部に位置し最も柔らかい第一領域10、両端部に位置し二番目に柔らかい第三領域30、第一領域10と第三領域30との間に位置し最も硬い第二領域20となる。例えば、第一領域10の硬さは第二領域20の硬さの約40%、第三領域30の硬さは第二領域20の硬さの約70%である。これらの硬軟(反発力)は、各領域の全体又は一部箇所における嵩密度に差を設けることにより設定している。なお、嵩密度は、重量(g)÷体積(cm)で求まる。
第一領域10は中央部から傾斜部の途中まで、第二領域20は傾斜部の途中から端部の途中まで、第三領域30は端部の残り部分となっている。各領域の大きさはそれぞれ異なり、第一領域10の幅が最も大きく、第二領域20の幅が二番目に大きく、第三領域30の幅が最も小さい。なお、第二領域20及び第三領域30はそれぞれ二箇所あるが、第二領域20同士の大きさは略同じであり、第三領域30同士の大きさも略同じである。
【0021】
枕は、一方の表面2を上側にして使用することも、他方の表面3を上側にして使用することもできる。
枕は、中央部から両端部にかけて徐々に厚みが大きくなっていると共に、第一領域10と第三領域30との間に、最も硬い第二領域20が、第一領域10よりは小さく第三領域30よりは大きい幅をもって設けられていることにより、使用者は寝返りがしやすくなり睡眠の質が向上する。
【0022】
第一領域10と第二領域20との境界では、第一領域10の編成樹脂と第二領域20の編成樹脂とが絡み合い、第二領域20と第三領域30との境界では、第二領域20の編成樹脂と第三領域30の編成樹脂とが絡み合っている。このように各領域の境界において編成樹脂同士が絡み合っていることにより、領域毎に形成した編成樹脂網状構造体を単に幅方向に並べた場合よりも、形状の保持性やクッション性に優れた枕となる。
【0023】
第二領域20は、一方の表面2と他方の表面3との間に周囲よりも嵩密度が大きい芯部40が設けられていることにより、第一領域10及び第三領域30よりも硬くなっている。芯部40の周囲の嵩密度は第一領域10の嵩密度と略同じである。第二領域20は、一方の表面2から他方の表面3まで全体的に嵩密度を大きくすることにより第一領域10及び第三領域30より硬くすることも可能であるが、中間部分のみ硬くして表面部分は柔らかくすることで、使用者が頭を乗せたときのクッション性を向上することができる。
なお、芯部40の幅は、図1等に示すように第二領域20の幅と略同等とする他、第二領域20の幅よりも小さくすることも可能である。
【0024】
一方の表面2から芯部40までの距離Hは、他方の表面3から芯部40までの距離Hよりも大きくすることが好ましい。一方の表面2から芯部40までの柔らかい層の厚みが大きいことで、一方の表面2を上側として用いる使用者は、第一領域10から第二領域20へ寝返りしやすくなり、また、頭が第二領域20にあるときも良好なクッション性を感じることができる。また、一方の表面2を上側にして使用するときは他方の表面3が床と接するが、他方の表面3から芯部40までの柔らかい層が所定の厚みを有していることで、枕の底付き感が無く使用者の快適性を高めることができる。
【0025】
他方の表面3と幅方向の一方の端面6及び他方の端面7との境界部分はカーブ形状を成しており、一方の表面2を上側にして用いる場合、枕の底面(他方の表面3)の端部と床との間には、使用者が手を入れることのできる隙間αが生じる。枕と床との間に生じた隙間αに手を入れることで、使用者はより一層リラックス感を得ることができる。
なお、一方の表面2と側面との境界部分も同様にカーブ形状とすれば、他方の表面3を上側にして用いる場合にも、枕の底面(一方の表面2)の端部と床との間に使用者が手を入れることのできる隙間αを生じさせることができる。
【0026】
枕は、奥行方向にも硬さ(反発力)が異なる。奥行方向を硬さで分けると、図2に示すように、中央部に位置し二番目に柔らかい第一奥行領域50、両端部に位置し最も柔らかい第三奥行領域70、第一奥行領域50と第三奥行領域70との間に位置し最も硬い第二奥行領域60となる。これらの硬軟(反発力)は、各領域の全体又は一部箇所における嵩密度に差を設けることにより設定している。
第二奥行領域60は、使用者の首(頸椎)を支持する首支持部の役割を担う。使用者の首が乗る第二奥行領域60を、使用者の頭が乗る第一奥行領域50よりも硬く、使用者の肩が乗る第三奥行領域70は第一奥行領域50よりも柔らかくしていることで、使用者の首等を快適にサポートすることができる。
【0027】
枕の使用者は、頭を奥行方向の一方の端面4側から枕に乗せることも、奥行方向の他方の端面5側から枕に乗せることもできる。
奥行方向の一方の端面4側にある一方の第二奥行領域(首支持部)61の幅は、他方の端面5側にある他方の第二奥行領域(首支持部)62の幅よりも大きい。奥行方向の一方の端面4側と他方の端面5側とで首支持部60の幅が異なっていることにより、使用者はどちらか好みの幅の首支持部60を選んで頭を乗せる方向を決めることができる。
なお、第二奥行領域60と第三奥行領域70が設けられている部分は、使用者の首の湾曲度合に沿うように、丸く隆起した形状とすることも可能である。そのような形状とすることで、使用者の首をより適切にサポートし快適性を向上させることができる。
【0028】
次に、本発明の第二実施例による枕について説明する。なお、上記した実施例と同一機能部については同一符号を付して説明を省略する。
図3は第二実施例による枕の概略正面図、図4は同枕の概略上面図である。
第二実施例の枕は、第二領域20が幅方向に硬さが異なる複数の小領域21からなり、隣接する小領域21同士では、第一領域10に近いほうが柔らかいものである。なお、第二領域20全体として第三領域30よりも硬ければ、いくつかの小領域21は第三小領域21より柔らかくてもよい。また、図3図4では三つの小領域21からなる第二領域20の例を示しているが、第二領域20を二つの小領域21、又は四つ以上の小領域21で形成することも可能である。
第二実施例のように、第二領域20において第一領域10側を比較的柔らかく第三領域30側を比較的硬くすることで、使用者は寝返りをしやすくなる。
【0029】
次に、本発明の第三実施例による枕について説明する。なお、上記した実施例と同一機能部については同一符号を付して説明を省略する。
図5は第三実施例による枕の概略正面図である。
第三実施例の枕は、第二領域20において、奥行方向の一方の端面4から他方の端面5にかけて、周囲よりも嵩密度が大きい硬部80が局所的に複数設けられているものである。なお、図5では各第二領域20において硬部80を、芯部40の部分に二つ、芯部40と一方の表面2との間の部分に一つ、及び芯部40と他方の表面3との間の部分に一つ設けた例を示しているが、硬部80の数、位置、及び大きさ等は、これに限らず枕の大きさ等に応じて任意に設定することが可能である。但し、芯部40の部分と芯部40でない部分の両方に硬部80を設けることが好ましい。また、第二領域20は、第二実施例と同様に複数の小領域21から形成されていてもよい。
第三実施例のように硬部80を設けることで、幅方向において最も硬い第二領域20を、クッション性を損なわずにさらにもう少し硬くすることができる。
なお、第一領域10に硬部80を複数設けることもでき、その場合は、第一領域10に頭等を乗せたときの枕の沈み込み過ぎを抑制することができる。
【0030】
次に、本発明の第四実施例による枕について説明する。なお、上記した実施例と同一機能部については同一符号を付して説明を省略する。
図6は第四実施例による枕の概略正面図である。
第四実施例の枕は、第二領域20において、芯部40のなかに、奥行方向の一方の端面4から他方の端面5にかけて貫通孔90が形成されているものである。なお、図6では各第二領域20に貫通孔90を一つずつ形成しているが、各第二領域20に複数の貫通孔90を設けることも可能である。また、第二領域20は、第二実施例と同様に複数の小領域21から形成されていてもよい。
第四実施例のように芯部40のなかに貫通孔90を形成することで、あたかも芯部40が高さ方向(厚み方向)に硬さの異なる複層構造を備えたかのようになり、枕のクッション性を向上することができる。また、貫通孔90を形成することで通気性を高めることができる。
【0031】
貫通孔90には、棒状の冷却材を挿入することもできる。冷却材を入れることで使用者の頭部が冷やされ、夏場の寝苦しさを改善することができる。
貫通孔90には、クッション材を挿入することもできる。クッション材は、例えばウレタン製であり、芯部40よりも柔らかい。使用者は、貫通孔90にクッション材を入れることで第二領域のクッション性を調節することができる。なお、柔らかさが異なる複数種類のクッション材を準備しておけば、体調や気分に合わせてクッション材を使い分けること等も可能となる。
【0032】
貫通孔90は、第一領域10に形成することもできる。第一領域10に貫通孔90を形成した場合は、あたかも第一領域10が高さ方向(厚み方向)に硬さの異なる複層構造を備えたかのようになり、枕のクッション性を向上することができる。また、第一領域10に形成した貫通孔90には、上記同様に棒状の冷却材を挿入することが可能である他、周囲よりも硬く形成された芯材を挿入することも可能である。芯材を入れた場合は、使用者が頭等を乗せたときに第一領域10の沈み込み過ぎを抑制することができる。
【0033】
次に、本発明の第五実施例による枕について説明する。なお、上記した実施例と同一機能部については同一符号を付して説明を省略する。
図7は第五実施例による枕の概略正面図である。
第五実施例の枕は、第一領域10において、周囲よりも嵩密度が大きい線状硬部100が設けられているものである。線状硬部100は、幅方向においては一方の端面6側の芯部40から他方の端面7側の芯部40にかけてなり、奥行方向においては一方の端面4から他方の端面5にかけてなる。
第五実施例のように第一領域10に線状硬部100を設けることで、特に他方の表面3を上側にして使用する場合に、頭等を乗せたときの枕の沈み込み過ぎを抑制することができる。
【0034】
また、図示は省略するが、第一から第五実施例の枕は、高さ方向において硬さが異なる複層構造とすることもできる。
複層構造とする場合は、高さ方向中央部における層よりも一方の表面2側の層及び他方の表面3側の層を柔らかくする。これにより使用者が頭等を枕に乗せたときの快適性を向上させることができる。各層の硬軟(反発力)は、例えば、嵩密度を各層で異ならせるか、又は編成樹脂の線径を各層で異ならせることにより設定する。
【0035】
図8は本実施例による枕の製造装置を示す図である。
本実施例による枕の製造装置は、熱可塑性樹脂を所定温度で溶融混練して溶融樹脂とし、所定の押し出し速度で溶融樹脂を押し出す押出機110と、押出機110から押し出された溶融樹脂を受けて底面131の多数の孔(ノズル)から溶融樹脂を糸状に流れ落とす樹脂プール130と、冷却水を貯留する冷却水槽140と、樹脂プール130から流れ落ちる糸状溶融樹脂120が冷却水で冷却されてなる編成樹脂121を下方に引き取る引取機150とを備えている。引取機150は、複数の引取ローラ151を対向して備え、冷却水槽140内に配置されている。また、樹脂プール130と引取機150との間には、ガイダー170が設けられている。
糸状溶融樹脂120は、樹脂プール130の底面131の孔から流れ落ちるときに形成される。糸状溶融樹脂120が冷却水で冷却されてなる編成樹脂121は、引取機150で冷却水槽140の底板側に引き取られ、引取機150を通過した後、冷却水槽140内に配置された引上部材である複数の搬送ローラ160によって、冷却水中で冷却されながら斜め上方へ引き上げられて冷却水槽140外へと搬送される。その後、冷却を経て所定の寸法に裁断することにより、枕としての編成樹脂網状構造体が形成される。例えば、押出方向と直交する方向を枕の幅方向とすることができる。
【0036】
上記した第一実施例等の枕は、芯部40を設けることにより第二領域20を第一領域10及び第二領域20よりも硬くしているが、芯部40は、例えば、樹脂プール130の底面131に設ける孔を芯部40に対応する部分だけ他の部分よりも増やすか、又は当該孔の径を芯部40に対応する部分だけ他の部分よりも大きくすること等により形成することができる。
また、例えば、押出方向に平行な方向に粗密を形成することで第二領域20を第一領域10及び第二領域20よりも硬くすることもできる。
押出方向に平行な方向の粗密は、例えば、引取機150の引き取り速度を所定時間ごとに変えることにより形成する。引き取り速度によって粗密を形成する場合は、引取機150が編成樹脂121を引き取る速度として、第一の速度と、第一の速度よりも遅い第二の速度と、第一の速度よりは遅く第二の速度よりは速い第三の速度を設定する。編成樹脂121のうち引取機150に第二の速度で引き取られた部分は第一の速度で引き取られた部分よりも嵩密度が増すため、第一の速度で引き取られた部分は嵩密度が最も小さい疎の部分である第一領域10となり、第二の速度で引き取られた部分は嵩密度が最も大きい密の部分である第二領域20となり、第三の速度で引き取られた部分はそれらの中間的な嵩密度の部分である第三領域30となる。
よって、引取機150による引き取り速度が、第三の速度→第二の速度→第一の速度→第二の速度→第三の速度のパターンを繰り返すことで、押出方向に平行な方向において、第一領域10と第三領域30との間に第二領域20を有する枕の製造が可能となる。ここで、第一の速度で引き取る時間を最も長く、第二の速度で引き取る時間を次に長く、第三の速度で引き取る時間を最も短くすることで、各領域によって幅を異ならせることができる。なお、第二領域20を細分化して小領域21を設ける場合は、引取機150による引き取り速度を更に細かく変えて設定すればよい。
【0037】
なお、上記実施例における枕は、複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなるものであるが、例えばウレタンなど他の素材からなる枕とすることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
2 一方の表面
3 他方の表面
10 第一領域
20 第二領域
21 小領域
30 第三領域
40 芯部
50 第一奥行領域
60 第二奥行領域(首支持部)
70 第三奥行領域
80 硬部
90 貫通孔
一方の表面から芯部までの距離
他方の表面から芯部までの距離
α 隙間
【要約】
例えば複数の糸状溶融樹脂が絡み合うとともに部分的に熱溶着された編成樹脂網状構造体からなる枕であって、幅方向は、中央部に位置する第一領域10と、両端部に位置する第三領域30と、第一領域10と第三領域30との間に位置する第二領域20とからなり、中央部から端部にかけて徐々に厚みが大きくなっており、第一領域10は、第二領域20及び第三領域30よりも幅が大きく、第二領域20は、第三領域30よりも幅が大きく、第三領域30は、第一領域10よりも硬く、第二領域20は、第三領域30よりも硬い。これにより、睡眠の質をより効果的に向上させることができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8