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特許7587908運転支援装置、ブレーキ制御装置、ソナーシステム、運転支援方法、ブレーキ制御方法及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】運転支援装置、ブレーキ制御装置、ソナーシステム、運転支援方法、ブレーキ制御方法及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20241114BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241114BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20241114BHJP
   G01S 15/931 20200101ALI20241114BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20241114BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60W30/08
G08G1/16 C
B60R99/00 322
G01S15/931
B60W30/09
B60W30/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021038549
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138585
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 嘉一
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/008537(WO,A1)
【文献】特開2020-071182(JP,A)
【文献】特開2016-080639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0018621(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60R 99/00
G01S 15/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられている第1ソナーから放射された音波の反射波の第1反射強度と、視野角が第1ソナーの視野角よりも制限されている第2ソナーから放射された音波の反射波の第2反射強度とを用いて、前記第2反射強度に対する前記第1反射強度の比率を算出する算出部と、
前記比率が所定の値よりも高い場合、前記車両の周囲に存在する障害物が第1障害物と判定し、前記比率が前記所定の値よりも低い場合、前記障害物が前記第1障害物よりも高さが低い第2障害物と判定する判定部と、
を備え
前記第1ソナーは、前記車両のバンパーに設置され、
前記第2ソナーは、前記第1ソナーよりも低い位置に配置されている、
運転支援装置。
【請求項2】
前記第2ソナーの視野角は、前記車両の底部によって前記第1ソナーの視野角よりも制限されている、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第2ソナーの視野角は、前記車両のバンパーに形成されている凹部よって前記第1ソナーの視野角よりも制限されている、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記第2ソナーの視野角は、前記第2ソナーを覆う筒形状の部材よって前記第1ソナーの視野角よりも制限されている、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記判定部の判定結果に応じて、前記車両のブレーキ、トルク、及び操舵の少なくとも1つを制御する制御部をさらに備える、請求項1から4の何れか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の運転支援装置から送信されるブレーキ指令に基づき前記車両の制動力を制御するブレーキ制御装置。
【請求項7】
請求項1から5の何れか一項に記載の運転支援装置と、前記第1ソナーと、前記第2ソナーとを備えたソナーシステム。
【請求項8】
車両に設けられている第1ソナーから放射された音波の反射波の第1反射強度と、視野角が第1ソナーの視野角よりも制限されている第2ソナーから放射された音波の反射波の第2反射強度とを用いて、前記第2反射強度に対する前記第1反射強度の比率を算出し、
前記比率が所定の値よりも高い場合、前記車両の周囲に存在する障害物が第1障害物との判定結果を出力し、前記比率が前記所定の値よりも低い場合、前記障害物が前記第1障害物よりも高さが低い第2障害物との判定結果を出力する、
運転支援方法であって、
前記第1ソナーは、前記車両のバンパーに設置され、
前記第2ソナーは、前記第1ソナーよりも低い位置に配置されている、
運転支援方法。
【請求項9】
前記第2ソナーの視野角は、前記車両の底部によって前記第1ソナーの視野角よりも制限されている、請求項8に記載の運転支援方法。
【請求項10】
前記第2ソナーの視野角は、前記車両のバンパーに形成されている凹部よって前記第1ソナーの視野角よりも制限されている、請求項8に記載の運転支援方法。
【請求項11】
前記第2ソナーの視野角は、前記第2ソナーを覆う筒形状の部材よって前記第1ソナーの視野角よりも制限されている、請求項8に記載の運転支援方法。
【請求項12】
前記判定結果に応じて、前記車両のブレーキ、トルク、及び操舵の少なくとも1つを制御する、請求項8から11の何れか一項に記載の運転支援方法。
【請求項13】
請求項8から12の何れか一項に記載の運転支援方法を用いた運転支援装置から送信されるブレーキ指令に基づき前記車両の制動力を制御するブレーキ制御方法。
【請求項14】
第1ソナーと、第2ソナーとを備え、請求項8から12の何れか一項に記載の運転支援方法を用いた、ソナーシステム。
【請求項15】
請求項7または14に記載のソナーシステムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置、ブレーキ制御装置、ソナーシステム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動駐車が可能な車両に設けられているソナーを用いて、車両の周辺に存在する障害物を回避した誘導経路を設定する運転支援装置が開示されている。
【0003】
この装置は、車両に設けられているソナーが受信した反射波のレベルと、第1閾値及び第1閾値よりも値が大きい第2閾値とを比較することにより、車両の周囲に存在する障害物が壁であるか、壁よりも高さが低い縁石であるかを判定し、判定結果に応じて車両の誘導経路を設定する。
【0004】
具体的には、反射波のレベルが第2閾値を超えている場合には障害物が壁と判定し、反射波のレベルが第1閾値から第2閾値までの範囲内である場合には障害物が縁石と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/047295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に開示されている従来技術では、音波は伝搬環境(例えば、気温、湿度、風)の変化による減衰の影響を受けやすく、反射波のレベルが変動するため、障害物の種類を正確に判定することが困難となる場合がある。
【0007】
本開示の非限定的な実施例は、音波の伝搬環境に依存せずに障害物の種類を判定できる運転支援装置、ブレーキ制御装置、ソナーシステム及び車両の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施例に係る運転支援装置は、車両に設けられている第1ソナーから放射された音波の反射波の第1反射強度と、視野角が第1ソナーの視野角よりも制限されている第2ソナーから放射された音波の反射波の第2反射強度とを用いて、前記第2反射強度に対する前記第1反射強度の比率を算出する算出部と、前記比率が所定の値よりも高い場合、前記車両の周囲に存在する障害物が第1障害物と判定し、前記比率が前記所定の値よりも低い場合、前記障害物が前記第1障害物よりも高さが低い第2障害物と判定する判定部と、を備え、前記第1ソナーは、前記車両のバンパーに設置され、前記第2ソナーは、前記第1ソナーよりも低い位置に配置されている、運転支援装置である。
【0009】
本開示の一実施例に係るブレーキ制御装置は、上記の運転支援装置から送信されるブレーキ指令に基づき前記車両の制動力を制御する。
【0010】
本開示の一実施例に係るソナーシステムは、上記の運転支援装置と、前記第1ソナーと、前記第2ソナーとを備える。
【0011】
本開示の一実施例に係る車両は、上記のソナーシステムを備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一実施例によれば、音波の伝搬環境に依存せずに障害物の種類を判定できる運転支援装置、ブレーキ制御装置、ソナーシステム及び車両を提供できる。
【0013】
本開示の一実施例における更なる利点及び効果は、明細書及び図面から明らかにされる。かかる利点及び/又は効果は、いくつかの実施形態並びに明細書及び図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つ又はそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施例に係る運転支援装置1を備えている車両100を示す図
図2】運転支援装置1のハードウェア構成例を示す図
図3】CPU1Cの機能構成の一例を示す図
図4】CPU1Cの機能構成を説明するための図
図5】CPU1Cの機能構成を説明するための図
図6】CPU1Cの機能構成を説明するための図
図7】CPU1Cの機能構成を説明するための図
図8】運転支援装置1の動作を説明するためのフローチャート
図9】視野角制限方法の他の例を示す図
図10】視野角制限方法の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
(実施の形態)
まず、本開示に係る実施形態を創作するに至った背景について説明する。
【0017】
例えば特許文献1に記載の公知技術などでは、車両に設けられているソナーが受信した反射波のレベルと、値が異なる第1閾値及び第1閾値よりも大きい第2閾値とを比較することにより、車両の周囲に存在する障害物が壁であるか、壁よりも高さが低い縁石であるかを判定する運転支援装置が開示されている。
【0018】
このような公知技術では、音波の伝搬環境が変化すると反射波のレベルが変動するため、障害物の種類を正確に判定することが困難となる場合がある。
【0019】
このようなことから、音波の伝搬環境に依存せずに障害物の種類を判定できることが望まれる。以下、本開示に係る実施形態について説明する。
【0020】
図1は本開示の一実施例に係る運転支援装置1を備えている車両100を示す図である。車両100は、運転支援装置1、第1ソナー2a及び第2ソナー2bを用いて構成されるソナーシステムを備えている。
【0021】
(運転支援装置1)
運転支援装置1は、車両100における運転の支援に関する各種制御処理を行う電子制御ユニットであり、モータECU(Electronic Control Unit)、ハイブリッドECU、エンジンECUなどである。
【0022】
(第1ソナー2a)
第1ソナー2aは、例えば車両100のリアバンパー104に設けられている。
【0023】
(第2ソナー2b)
第2ソナー2bは、例えば車両100の底面部101の内、フロントタイヤ102とリアタイヤ103との間の領域に設けられている。底面部101は、例えば、車両100の底に装着されるアンダカバーの表面、クロスメンバの表面である。第2ソナー2bが車両100の底面部101に設けられることにより、第2ソナー2bから放射される音波の放射幅及び受波幅が絞られる。このため、第2ソナー2bの視野角(Angular Field of View;AFOV)は、第1ソナー2aの視野角よりも制限されている。
【0024】
例えば、第1ソナー2aと第2ソナー2bが同じ部品(仕様、性能が同じである)である場合、第2ソナー2bを底面部101に設置することで、第2ソナー2bから掃射された音波は底面部101と路面に遮蔽され、反射波も底面部101の隙間を通って戻る音波に限って受波する。これに対して、第1ソナー2aはリアバンパー104に設置されているため、掃射された音波を妨げるものが周囲に無く、放射幅及び受波幅は絞られない。このため、第2ソナー2bの視野角は第1ソナー2aよりも視野角が制限される。
【0025】
次に図2を参照して運転支援装置1のハードウェア構成例について説明する。図2は運転支援装置1のハードウェア構成例を示す図である。
【0026】
車両100は、前述の運転支援装置1、第1ソナー2a、第2ソナー2bの他、ハンドル制御装置3、ブレーキ制御装置4、及びトルク制御装置5を備えている。
【0027】
(運転支援装置1)
運転支援装置1は、補助記憶装置1A、メモリ装置1B、CPU1C、及びインタフェース装置1Dを備える。
【0028】
補助記憶装置1A、メモリ装置1B、CPU1C、及びインタフェース装置1Dは、互いにバスライン1Eで接続される。
【0029】
(補助記憶装置1A)
補助記憶装置1Aは、運転支援装置1の処理に使用するファイル、データなどを格納する。補助記憶装置1Aは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリを含む構成である。
【0030】
(メモリ装置1B)
メモリ装置1Bは、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1Aからプログラムを読み出して格納し、読み出したプログラムで利用されるデータを一時的に記憶する。
【0031】
(CPU1C)
CPU1Cは、メモリ装置1Bに格納されたプログラムを実行し、プログラムに従って運転支援装置1の各種機能を実現する。
【0032】
(インタフェース装置1D)
インタフェース装置1Dは、CPU1Cに、第1ソナー2a、第2ソナー2b、ハンドル制御装置3、ブレーキ制御装置4、及びトルク制御装置5を接続するインタフェースである。
【0033】
(ハンドル制御装置3)
ハンドル制御装置3は、ハンドル(ステアリング)の回転量を制御することにより、車両前輪の舵角を調整する。
【0034】
例えば、運転支援装置1は、第1ソナー2a及び第2ソナー2bのそれぞれから放射された音波の反射波の反射強度に基づき、走行中の車両100の周囲に障害物、例えば、別の車両、車止め、壁が存在すると判定し、かつ、物体との間の車間距離が所定距離よりも短くなった場合、トルク制御、ブレーキ制御と組み合わせて、操舵信号を生成してハンドル制御装置3に送信する。
【0035】
操舵信号を受信したハンドル制御装置3は、操舵信号に基づきハンドルの回転量を制御する。これにより傷害物への衝突を回避することができる。
【0036】
(ブレーキ制御装置4)
ブレーキ制御装置4は、不図示のブレーキ装置の油圧を制御することにより、所定の制動力を発生させる。
【0037】
例えば、運転支援装置1は、第1ソナー2a及び第2ソナー2bのそれぞれから放射された音波の反射波の反射強度に基づき、車両100の周囲に存在する障害物が壁であると判定し、かつ、壁から車両100までの距離が所定距離よりも短いと判定した場合、トルク制御を停止させ、そのまま車両が進行し続ける場合にはブレーキ指令を生成して、ブレーキ制御装置4に送信する。これにより緊急ブレーキが作動する。
【0038】
ブレーキ指令を受信したブレーキ制御装置4は、油圧を制御することによって、ブレーキパッドをブレーキロータに押し付ける。これにより所定の制動力が発生して、車両100が壁に衝突することを回避することができる。
【0039】
(トルク制御装置5)
トルク制御装置5は車両100の駆動源のトルクを制御する。駆動源は例えば内燃機関である。
【0040】
例えば、運転支援装置1は、車道に面した駐車スペースへ自動運転で駐車するとき、第1ソナー2a及び第2ソナー2bのそれぞれから放射された音波の反射波の反射強度に基づき、駐車スペースに設けられている障害物が、車止めであると判定する。
【0041】
この場合、運転支援装置1は、車止めに緩やかに接触するように、トルク制御を停止させる信号を生成し、生成した信号をトルク制御装置5に送信する。
【0042】
上記のように、運転支援装置は、ハンドル制御装置3、ブレーキ制御装置4、トルク制御装置5を組み合わせ制御することができ、障害物への衝突の回避、車止めへの緩やかな接触を実現することができる。
【0043】
次に図3図4図5図6及び図7を参照して、CPU1Cの機能構成について説明する。図3はCPU1Cの機能構成の一例を示す図であり、図4図5図6及び図7のそれぞれはCPU1Cの機能構成を説明するための図である。
【0044】
図3に示すように、CPU1Cは、入力部10、算出部11、判定部12、制御部13、及びソナー制御部14を備えている。これらの各部の機能は、図2に示されるメモリ装置1B、又は補助記憶装置1Aに格納されるプログラムを、CPU1Cが実行することにより実現される。
【0045】
(ソナー制御部14)
ソナー制御部14は、第1ソナー2a、第2ソナー2bにおける音波の掃射を制御する。音波の掃射方法は、例えば、時間、外気の状況によって、変更してもよい。
【0046】
(入力部10)
入力部10は、図2に示す第1ソナー2a及び第2ソナー2bのそれぞれで受信された
反射波に基づいて、反射波の強度を示す情報、物体までの距離に関する情報、が入力される。なお、物体までの距離は、音波掃射時刻と受波時刻に基づいて算出してもよい。
【0047】
(算出部11)
算出部11は、入力部10に入力された情報に基づき、第1ソナー2aから放射された音波の反射波の第1反射強度と、視野角が第1ソナー2aの視野角よりも制限されている第2ソナー2bから放射された音波の反射波の第2反射強度との間の比率を算出する。また、算出部11は、入力部10に入力された情報に基づき、第1ソナー2aが検知した物体までの距離と、第2ソナー2bが検知した物体までの距離とを算出する。
【0048】
図4図5図6及び図7を参照して算出部11による比率の算出例を説明する。
【0049】
(第1障害物30が存在する場合の比率の算出例)
図4に示すように車両100の周囲に第1障害物30が存在する場合、第1ソナー2aから放射された音波の大半は、第1障害物30で反射した後、第1ソナー2aに向かって進行する。残りの音波は、第1障害物30で反射した後、第1ソナー2aとは異なる方向に向かって進行する。第1障害物30は、例えば、建物の壁、別の車両といったように所定の高さを有する物体であり、例えば、高さ30cm以上と設定してもよい。
【0050】
第2ソナー2bから放射された音波は、第2ソナー2bの視野角が制限されているため、そのほとんどが第1障害物30の下側の領域で反射され、第2ソナー2bに向かって進行する。
【0051】
図5には、車両100の周囲に第1障害物30が存在する場合に、第1ソナー2aで受信された反射波の第1反射強度WF1と、第2ソナー2bで受信された反射波の第2反射強度WF2とが示されている。横軸はそれぞれ第1と第2のソナーの送波開始時刻を起点とした、時間を表し、縦軸は反射強度を表す。
【0052】
なお、図5では、第2ソナー2bで受信された反射波の受信時刻が、第1ソナー2aで受信された反射波の受信時刻よりも遅れているが、これは、図4に示すように第2ソナー2bから第1障害物30までの距離が、第1ソナー2aから第1障害物30までの距離よりも長いためである。
【0053】
第1ソナー2aと第2ソナー2bのそれぞれから放射される音波の強度が等しい場合、図5に示すように、第1反射強度WF1は、第2反射強度WF2よりも高い値となる。このため、第2反射強度WF2に対する第1反射強度WF1の比率が1前後ではなく、1を超える値であり、例えば、図5の例では、約4倍となっている。これは、第1ソナー2aから放射された音波の大半が第1障害物30で反射して、第1ソナー2aで受信されるためである。なお、第2反射強度WF2に対する第1反射強度WF1の比率は、第2ソナーの視野角に対する第1ソナーの視野角の比率に近い値になる。また、第2反射強度WF2に対する第1反射強度WF1の比率は、約4倍に限定されるものではない。
【0054】
なお算出部11は、比率を算出するとき、第1ソナー2aで受信された反射波と、第2ソナー2bで受信された反射波とが同一の第1障害物30で反射したものであることを確認した上で反射強度の比率を算出する。
【0055】
例えば、算出部11は、検出された第2ソナー2bから第1障害物30までの距離と、第1ソナー2aから第1障害物30までの距離との差分が第1ソナー2aと第2ソナー2bとの間の距離に所定の誤差範囲内で一致するか否かを判定することにより、上記2つの反射波が同一の第1障害物30で反射したものであることを判断してもよい。
【0056】
(第2障害物31が存在する場合の比率の算出例)
図6に示すように、車両100の周囲に第2障害物31が存在する場合、第1ソナー2aから放射された音波の大半は、第2障害物31とは異なる方向に伝搬し、一部の音波が、第2障害物31に反射した後、第1ソナー2aに向かって進行する。このため、第1ソナー2aの受波する反射波は、図5と比較すると減少する。
【0057】
第2障害物31は、高さが図4に示す第1障害物30よりも低い障害物であり、例えば、車道と駐車スペースとの境界部に設けられている縁石、駐車スペースに設けられている車止め用の縁石、コインパーキングに設けられているフラップ板、小動物、子供などである。
【0058】
第2ソナー2bから放射された音波は、図4に示す場合と同様に、車両100の底面部101によって第2ソナー2bの視野角(送波幅、受波幅)が制限されているため、そのほとんどが第2障害物31で反射した後、第2ソナー2bに向かって進行する。このため、第2ソナー2bの受波する反射波は、図5と比較するとあまり減少しない。
【0059】
図7には、車両100の周囲に第2障害物31が存在する場合に、第1ソナー2aで受信された反射波の第1反射強度WF1と、第2ソナー2bで受信された反射波の第2反射強度WF2とが示されている。横軸はそれぞれ第1ソナー2bと第2ソナー2bの送波開始時刻を起点とした、時間を表し、縦軸は反射強度を表す。
【0060】
なお、図7では、第2ソナー2bで受信された反射波の受信時刻が、第1ソナー2aで受信された反射波の受信時刻よりも遅れているが、これは、図6に示すように第2ソナー2bから第2障害物31までの距離が、第1ソナー2aから第2障害物31までの距離よりも長いためである。
【0061】
第1ソナー2aと第2ソナー2bのそれぞれから放射される音波の強度が等しい場合、図7に示す例では、第1反射強度WF1は、第2反射強度WF2よりも僅かに大きい値、又は第2反射強度とほぼ等しい値となる。
【0062】
このため、第2反射強度WF2に対する第1反射強度WF1の比率が、1前後の値であり、図7の例では約1.5倍となっている。これは、第1ソナー2aから放射された音波の大半が第2障害物31とは異なる方向に伝搬し、一部の音波が第2障害物31で反射して、第1ソナー2aで受信されるためである。また、第2反射強度WF2に対する第1反射強度WF1の比率は、約1.5倍に限定されるものではない。
【0063】
なお算出部11は、比率を算出するとき、第1ソナー2aで受信された反射波と、第2ソナー2bで受信された反射波とが同一の第2障害物31で反射したものであることを確認した上で反射強度の比率を算出する。
【0064】
例えば、算出部11は、検出された第2ソナー2bから第2障害物31までの距離と、第1ソナー2aから第2障害物31までの距離との差分が第1ソナー2aと第2ソナー2bとの間の距離に所定の誤差範囲内で一致するか否かを判定することにより、上記2つの反射波が同一の第2障害物31で反射したものであると判断してもよい。
【0065】
なお、算出部11は、第1障害物30が存在する場合の比率、及び、第2障害物31が存在する場合の比率の算出時に、第2反射強度WF2に対する第1反射強度WF1の比率に代えて、第1反射強度WF1に対する第2反射強度WF2の比率を算出してもよい。
【0066】
(判定部12)
図3に戻り、判定部12は、算出部11から送信された比率に関する情報を受信する。判定部12は、受信した比率に関する情報に基づき、算出部11で算出された比率が所定の値よりも高いか否かを判定する。
【0067】
図4に示すように、第1障害物30が車両100の周囲に存在するために、第2反射強度に対する第1反射強度の比率が所定の値よりも高い場合、判定部12は、障害物が第1障害物30のように、所定値以上の高さである物体と判定する。
【0068】
図6に示すように、第2障害物31が車両100の周囲に存在するために、第2反射強度に対する第1反射強度の比率が所定の値よりも低い場合、判定部12は、障害物が第2障害物31のように、所定値以下の高さである物体と判定する。
【0069】
このように判定部12は、第2反射強度と第1反射強度との間の比率に関する情報に基づき、車両100の周囲に存在する障害物の種類を判定することができる。
【0070】
また音波の伝搬環境、例えば気温、湿度などが変化した場合、第1反射強度及び第2反射強度のそれぞれが等しく変動する。このため、判定部12は、第2反射強度と第1反射強度との間の比率に関する情報を利用することで、音波の伝搬環境に影響を受けることなく、障害物の種類を正確に判定することができる。
【0071】
なお、算出部11が、第2反射強度に対する第1反射強度の比率に代えて、第1反射強度に対する第2反射強度の比率を算出した場合は、第1反射強度に対する第2反射強度の比率が所定の値よりも低い場合、判定部12は、障害物が第1障害物30であると判定し、第1反射強度に対する第2反射強度の比率が所定の値よりも高い場合、判定部12は、障害物が第2障害物31であると判定する。
【0072】
(制御部13)
制御部13は、判定部12の判定結果に応じて、車両のブレーキ、トルク、及び操舵の何れか乃至は複数を制御する。
【0073】
例えば、自動運転で駐車100に駐車する際に、車止めがなく、壁が存在する場合、制御部13は、ブレーキ指令を生成して、図2に示すブレーキ制御装置4に送信することで、自動ブレーキを発生させて、車両100の壁への衝突を回避させてもよい。
【0074】
また、自動運転で駐車100の周囲に車止めが存在する場合、制御部13は、ブレーキ指令、トルク信号を生成して、図2に示すトルク制御装置5に送信することで、車止めに緩やかに接触するように駐車スペースへ自動で駐車させてもよい。
【0075】
また、自動運転で駐車100に駐車する際に、別の車両が存在する場合、制御部13は、車間距離が所定距離よりも短くなったときに操舵信号を生成して、図2に示すハンドル制御装置3に送信することで、別の車両への衝突を回避させてもよい。
【0076】
次に図8を参照して運転支援装置1の動作を説明する。図8は運転支援装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0077】
ステップS1において、第1ソナー2a及び第2ソナー2bのそれぞれから音波が放射され、ステップS2において、物体によって反射された音波を受信すると、ステップS3において、算出部11は、第2反射強度に対する第1反射強度の比率を算出する。
【0078】
次にステップS4において、判定部12は、算出部11で算出された比率が所定の値よりも低いか否かを判定する。
【0079】
第2反射強度に対する第1反射強度の比率が所定の値よりも低い場合(ステップS4,YES)、ステップS5において、判定部12は、第2障害物31と判定し、判定結果を示す情報を制御部13に送信する。制御部13は、判定結果を示す情報、物体までの距離、車両の速度、ハンドルの操舵角に応じて、車両100のブレーキ、トルク、及び操舵の何れかを制御した後、一連の処理が終了する。なお、第2障害物31が縁石などの場合には、制御部13は、車両100のブレーキ、トルク、及び操舵の何れも制御しないで、一例の処理が終了する場合もある。
【0080】
ステップS4に戻り、第2反射強度に対する第1反射強度の比率が所定の値よりも高い場合(ステップS4,NO)、ステップS6の処理が実行される。
【0081】
ステップS6において、判定部12は、第1障害物30と判定し、判定結果を示す情報を制御部13に送信する。制御部13は、判定結果を示す情報、物体までの距離、車両の速度、ハンドルの操舵角に応じて、車両100のブレーキ、トルク、及び操舵の何れかを制御した後、一連の処理が終了する。
【0082】
(視野角制限方法の他の例)
なお、第2ソナー2bの視野角は、以下の方法で制限してもよい。図9及び図10のそれぞれは視野角制限方法の他の例を示す図である。
【0083】
図9に示すように、リアバンパー104に形成されている凹部104aの奥側に第2ソナー2bを設けることにより、凹部104aの形成している壁面によって、第2ソナー2bの視野角が制限される。当該視野角制限方法は、車高が低いスポーツカー、底面部101に突起物を設けることができない車両100などに好適である。
【0084】
また、図10に示すように、リアバンパー104の下側に第2ソナー2bを覆う筒形状の部材105を設けることにより、部材105の内側面によって、第2ソナー2bの視野角が制限される。当該視野角制限方法では、リアバンパー104に部材105を後付けすることができるため、リアバンパー104を製造する金型の設計し直す必要がなく、また車両100の仕様変更に対しても容易に対策が可能になる。
【0085】
なお、本実施の形態では、第1ソナー2a及び第2ソナー2bのそれぞれは、少なくとも1つ以上であればよく、第1ソナー2aの数と及び第2ソナー2bの数とが、同数でなくもてよい。
【0086】
また、第1ソナー2a及び第2ソナー2bのそれぞれの位置は、図示例の場所に限定されず、例えば車両100の天井面、バックドア、サイドドア、フロントバンパーでもよい。
【0087】
以上に説明したように、本実施の形態に係る運転支援装置1は、第1ソナー2aから放射された音波の反射波の第1反射強度と、視野角が第1ソナーの視野角よりも制限されている第2ソナー2bから放射された音波の反射波の第2反射強度との間の比率の大きさに応じて、車両100の周囲に存在する障害物の種類を判定するように構成されている。
【0088】
この構成により、例えば、車両100の排気ガスによって車両100の後方の気温が高くなった場合でも、第1反射強度及び第2反射強度のそれぞれが等しく変動するため、第2反射強度と第1反射強度との間の比率の大きさによって、障害物の種類を正確に判定することができる。
【0089】
また、第2ソナー2bを車両100の底面部101、リアバンパー104などに設けた場合、カメラなどの撮像手段を利用することなく、車両100の後方に存在する小動物、子供などを検出することができる。
【0090】
また、ソナーは、撮像手段に比べて安価に製造できるため、小型車、軽自動車など、製造原価が比較的低い車両にも広く利用することができる。
【0091】
第2ソナー2bが車両100の底面部101に設けられている場合、既存の部品(アンダカバー、クロスメンバなど)を加工せずに、第2ソナー2bの視野角を第1ソナー2aの視野角よりも制限することができる。
【0092】
なお、例えば、以下のような態様も本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
(1)本開示の一実施例に係る運転支援装置は、車両に設けられている第1ソナーから放射された音波の反射波の第1反射強度と、視野角が第1ソナーの視野角よりも制限されている第2ソナーから放射された音波の反射波の第2反射強度との間の比率を算出する算出部と、前記比率が所定の値よりも高い場合、前記車両の周囲に存在する障害物が第1障害物と判定し、前記比率が前記所定の値よりも低い場合、前記障害物が前記第1障害物よりも高さが低い第2障害物と判定する判定部と、を備える。
【0094】
(2)前記第2ソナーは、前記車両の底部によって視野角が制限されている。
【0095】
(3)前記第2ソナーは、前記車両のバンパーに形成されている凹部よって視野角が制限されている。
【0096】
(4)前記第2ソナーは、前記第2ソナーを覆う筒形状の部材よって視野角が制限されている。
【0097】
(5)前記判定部の判定結果に応じて、前記車両のブレーキ、トルク、及び操舵の少なくとも1つを制御する制御部をさらに備える。
【0098】
(6)本開示の一実施例に係るブレーキ制御装置は、運転支援装置から送信されるブレーキ指令に基づき前記車両の制動力を制御する。
【0099】
(7)本開示の一実施例に係る車両は、上記の運転支援装置と、前記第1ソナーと、前記第2ソナーとを備える。
【0100】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、本開示に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0101】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術は、本開示において例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
【0102】
上述の実施の形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0103】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。
【0104】
なお、本開示は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、又は、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。また、プログラム製品は、コンピュータープログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な媒体である。
【0105】
上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部又は全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0106】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本開示の一実施例は、運転支援装置、ブレーキ制御装置、ソナーシステム及び車両に好適である。
【符号の説明】
【0108】
1 運転支援装置
1A 補助記憶装置
1B メモリ装置
1C CPU
1D インタフェース装置
1E バスライン
2a 第1ソナー
2b 第2ソナー
3 ハンドル制御装置
4 ブレーキ制御装置
5 トルク制御装置
10 入力部
11 算出部
12 判定部
13 制御部
14 ソナー制御部
30 第1障害物
31 第2障害物
100 車両
101 底面部
102 フロントタイヤ
103 リアタイヤ
104 リアバンパー
104a 凹部
105 部材
WF1 第1反射強度
WF2 第2反射強度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10