(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】付加合成のための複合粒子を有するマルチマテリアル粉末
(51)【国際特許分類】
B22F 1/17 20220101AFI20241114BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20241114BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20241114BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20241114BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20241114BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20241114BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20241114BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241114BHJP
C04B 35/628 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B22F1/17
B22F1/102
B22F1/16
B22F3/105
B22F3/16
B29C64/314
B33Y40/00
B33Y70/00
C04B35/628 020
(21)【出願番号】P 2019510332
(86)(22)【出願日】2017-09-08
(86)【国際出願番号】 FR2017052396
(87)【国際公開番号】W WO2018046871
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-22
(32)【優先日】2016-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517433625
【氏名又は名称】エイチ.イー.エフ
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】イアコブ コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ブシェ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】エオ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】プロスト ファブリス
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】粟野 正明
【審判官】土屋 知久
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-525930(JP,A)
【文献】特開2016-93840(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114189(WO,A1)
【文献】特開2016-156068(JP,A)
【文献】特開平3-94078(JP,A)
【文献】特開2010-232225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金およびプラスチック成形の分野に使用されるマルチマテリアル粉末であって、
10~45μmのメジアン粒径分布d50を有する担持粒子と、前記担持粒子に対して10~1000倍低いメジアン粒径分布d50を有する機能性粒子とを含み、
前記担持粒子および前記機能性粒子がコア-シェル構造を有する複合粒子を形成し、前記複合粒子の各々は、
-
前記担持粒子によって形成されるコアと、
- 前記担持粒子の表面の10~100%を覆い、前記機能性粒子の少なくとも1つの表面層によって形成されるシェルと
を有しており、
前記機能性粒子が、100nm以上のメジアン粒径分布d50を有しており、
前記担持粒子の全数に対する、前記シェルによって覆われる前記担持粒子の
数の割合が、0.9~1であり、
粒子のスケールでの前記
シェルの表面の総粗度Rtが、0.1~5μmであり
、
前記複合粒子は、球状形態を有しており、
前記担持粒子は、金属粒子であり、
前記金属粒子は、Cu粒子およびAl粒子からなる群から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする、マルチマテリアル粉末。
【請求項2】
前記機能性粒子が、セラミックおよび/もしくは金属および/もしくは有機
粒子ならびに/またはホウ素、炭素、酸素およ
び窒素
からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む粒子である、請求項
1に記載のマルチマテリアル粉末。
【請求項3】
付加合
成または噴霧による表面処理のための材料としての、請求項
1または2に記載の粉末の使用。
【請求項4】
請求項
1または2に記載の粉末を製造する方法であって、
- 高エネルギー機械的破砕型の反応器を反応器として使用し、
- 前記担持粒子および前記機能性粒子を前記反応器に導入し、
- 前記反応器において、0℃~+150℃の温度での機械的作用による前記担持粒子上への前記機能性粒子のグラフトを実施する、方法。
【請求項5】
前記グラフトを実施する温度が10℃~80℃である、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
グラフトステップの後、循環流動床を使用した前記複合粒子の加熱および/または表面処理のステップをさらに含む、請求項
4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加合成および噴霧による表面処理の技術における適用のための、異なる分野(冶金、プラスチック成形(plasturgy)など)において使用されるマルチマテリアル粉末の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
付加合成技術という用語は、本発明に関して、粉末の圧密によって三次元物体を得ることを可能にする任意の技術を意味する。特に非限定的な例として、3D印刷技術(SLM、SLSなど)、射出技術(PIM、MIM)、粉末噴霧技術(コールドスプレー、Dガンなど)、および従来の圧縮/焼結技術を挙げることができる。
【0003】
現在、マルチマテリアル粉末として、開発方法に応じて構成要素の程度の差はあるが均一な分散を有する異なる性質の粉末の混合物、または構成する種々の要素が固溶体および/もしくは規定された化合物の形態である合金粉末が存在する。このような粉末を合成する方法は、比較的よく知られている。
【0004】
溶融金属を噴霧する技術は特に、球状形態を有する高密度の粉末を得ることを可能にする。しかしながら、この技術によって得られる材料は純粋な元素、または例えば、ある特定の鋼などの混和性元素の単相合金、ニッケル、アルミニウムもしくはチタンの合金である。これらの粉末は、今日、付加製造における用途のための提供物の大部分を形成する。
【0005】
同時粉砕(機械的合成)による技術は、特許文献1、特許文献2および特許文献3などの、ビーズ破砕による支援を受けて高エネルギー下で、異なる性質の粉末を密接に混合することによってマルチマテリアル粉末を製造することを可能にする。この方法により、広範な組成の許容度を有する複合粒子を得ることが可能となる。しかしながら、この実施形態によって得られる粉末の形態および/または粒径分布は、付加製造におけるその適用には好ましくない。さらに、この技術によって得られる粒子は、程度の差はあるが、種々の構成要素の均一な分散から形成され、表面上に機能性コアの構造を有さない。
【0006】
特許文献4、特許文献5および特許文献6に記載されているものなどの、噴霧乾燥技術もまた、粉末、溶媒および有機結合剤から構成される懸濁液の噴霧および乾燥を実施することによって、マルチマテリアル粉末を製造することを可能にする。このように、凝集から生じる複合粒子が、接着剤の役割を果たす有機結合剤を介して、懸濁液中に存在する元素粉末から得られる。この実施形態によって得られた粒子は球状形態を有する。しかしながら、それらの粒内多孔性、ならびに有機結合剤の存在は、それらを付加製造における使用に不適切にする。この実施形態では、噴霧/乾燥操作後の粒子の温度の増加に基づく様々な技術によって、粒子の脱結合および高密度化のステップを追加することができる。次いで、噴霧による表面処理方法または付加合成による製造方法において使用することができる、十分に高密度で球状の複合粒子を得ることが可能になる。しかしながら、このようにして得られた粒子は、種々の構成要素の不均一な分散から形成された凝集体であり、表面上に機能性コアの構造を有していない。
【0007】
さらに、化学蒸着(通常、頭字語CVDによって指定される)または物理蒸着(通常、頭字語PVDによって指定される)などの乾燥堆積技術もまた、マルチマテリアル粉末を合成するために粒状基材上で使用することができる。次いで、これらの技術は一般に、特に、特許文献7に教示されているように、粒状基材を可動式で配置することができるデバイス、例えば、流動床、回転反応チャンバまたは振動板を実装することを可能にする方法と組み合わされる。このような方法では、粒子の表面に堆積物を得ることができる。PVD技術は、微粒子(その直径が100μm未満)の処理を行うことができないという点で、非常に限定されている。それはまた、それらの妥当な処理期間についての機能化速度の点で非常に制限される。CVD技術は、使用される前駆体の毒性およびコストを考慮すると、ほとんどの場合、技術的または経済的に有利ではない。
【0008】
最後に、特許文献8、特許文献9および特許文献10に記載されているように、湿式化学堆積による担持粒子の表面処理によってマルチマテリアル粒子を合成することが可能である。この場合、粒子の表面に堆積物を得ることができる。しかしながら、これらの実施形態は、環境に有害であるかなりの量の排出物を生成し、高価で危険な化学試薬の使用を必要とし、これらの合成経路の工業的開発を大いに複雑にする。これらの技術は、粒子のスケールで異なる材料を結合させることを可能にする。
【0009】
しかしながら、多種多様な合金、擬合金、複合材料、およびサーメットの製造を可能にし、容易にするために、異なる材料が粒子のスケールで結合されている粉末を有することが必要であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第3,816,080号
【文献】米国特許第3,591,362号
【文献】米国特許第4,706,894号
【文献】米国特許第5,122,182号
【文献】米国特許第3,617,358号
【文献】米国特許第4,915,733号
【文献】米国特許第7,632,355号
【文献】米国特許第6,372,346号
【文献】米国特許第5,064,463号
【文献】米国特許第4,309,457号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本出願人は、層状の微細構造を得るために、粒状形態の付加要素によって粒子または担持粒子の表面を機能化することによって得られる複合粒子を得ることを可能にする方法を開発した。
【0012】
このような複合粒子を有することができる利点は複数ある:
- 一般に、組成物は粒子のスケールで得られるので、その貯蔵の間または使用の間に均質性および分離の問題が生じる、担持要素および付加要素の簡単な混合(第2による第1の機能化の代わり)を回避することによって、その実施を容易にするため;
- 材料の均質性およびこれらの粉末を形成する方法の再現性を実質的に改善するため;
- 粒内多孔性を防ぎ、これらの機能性粒子から製造された材料の特に有利な微細構造を得るため;
- 例えば、低融点の粒子を機能化することにより、高融点の担持粒子を機能化することにより、液相における焼結プロセスおよび拡散速度を促進するため。この例は、サーメットの製造に特に十分に適している;
- 噴霧によって生成されるコーティングの高密度化を改善するように固相における変形のプロセスを促進するため:特に、脆い担持粒子が、高密度で付着性の堆積を得るために必要とされる塑性変形を提供する延性担持粒子によって機能化されるコールドスプレーの場合を挙げることができる。
【0013】
したがって、より詳細には、本発明は、
1μm~100μmのメジアン粒径分布d50を有する担持粒子と、前記担持粒子に対して10~1000倍低いメジアン粒径分布d50を有する機能性粒子とを含み、
前記担持粒子および前記機能性粒子がコア-シェル構造を有する複合粒子を形成し、前記複合粒子の各々は、
- 担持粒子によって形成されるコアと、
- 前記担持粒子の表面の10~100%を覆い、前記機能性粒子の少なくとも1つの表面層によって形成されるシェルと
を有することを特徴とする、マルチマテリアル粉末を有することを目的とする。
【0014】
機能性粒子の少なくとも1つの表面層から構成されるシェルによって提供される利点は、特に以下に関連する:
- 一方では、このように形成された複合粒子の比表面積の増加、それによる、焼結の間の良好な反応性の誘導;
- また、粉末床の見掛け密度およびタップ密度の増加は、付加製造における粒子の融合の間の急速な高密度化に有利である。
【0015】
本発明において、特許請求される粒径分布の範囲は、本発明によるマルチマテリアル粉末が数の分布を有するという仮説を立てることによって、所与の区間d10~d90に対応する。
【0016】
「メジアン粒径分布d50(またはメジアン直径d50)」という用語は、本発明に関して、粒子の50%以下が存在する寸法を意味する。
【0017】
有益には、機能性粒子は100nm以上のメジアン粒径分布d50を有し、これは、シェルが100nm以上の厚さを有するという結果をもたらす。機能性粒子のこのサイズは、特に、ナノ粒子の操作の間、ナノ粒子の毒性に関連する衛生および安全性の問題を制限することを可能にする。
【0018】
好ましくは、機能性層によって覆われる担持粒子の割合は、0.8~1、好ましくは0.9~1であり得る。
【0019】
コーティングした担持粒子の割合という用語は、本発明に関して、マルチマテリアル粉末の試料について機能性層によって覆われる担持粒子の数と担持粒子の全粒子の数との比の数値を意味する。この割合は、マルチマテリアル粒子の集団の顕微鏡により得られた画像の分析によって決定される。
【0020】
0.9より大きい割合のコーティングされた担持粒子によって提供される利点は、粒子のスケールでの微細構造の均質性に関連する。それは、コーティングされた担持粒子の全てが実際に機能化され、同等の方法で機能化されたことを保証する。この特性は、粉末から開発された材料の微細構造欠陥が存在しないこと、したがってその性能に直接影響を与える。それはまた、これらの特徴の再現性に関して大きな保証を提供する。
【0021】
好ましくは、粒子のスケールでの機能性層の表面の総粗度Rtは、10μm未満、好ましくは0.1~5μmであり得る。
【0022】
粗い表面は、典型的には「ピーク」と呼ばれる凹凸と、「中空」と呼ばれる空洞とを含む。
【0023】
総粗度Rtという用語は、本発明に関して、ピークの最高頂部と中空の最低底部との間の最大降下を意味する。
【0024】
粒子のスケールでの機能性層の総粗度は、顕微鏡により得られた、断面としての粒子の画像の分析によって決定される。
【0025】
10μm未満の粒子のスケールでの機能性層の総粗度によって提供される利点は、機能化処理後に劣化する可能性がある担持粒子の流動特性に関連する。実際に、粒子のスケールでの過剰な総粗度は粉末の流動性の低下をもたらし、粉末の流動特性が不可欠なパラメータである付加製造および溶射の技術におけるその使用を困難にする。他方で、所与の粒径分布および担持粒子の形態について、それに関連する比表面積の減少を考慮すると、ゼロに近い総粗度は望ましくない
【0026】
有益には、前記担持粒子のメジアン粒径分布d50は1~45μmであってもよく、これらの値はそれぞれ、好ましい1μmの寸法d10および45μmの寸法d90に対応し得る。
【0027】
好ましくは、前記担持粒子のメジアン粒径分布d50は10~45μmであってもよく、これは特に、付加製造の方法に十分に適した粒径分布に対応する。
【0028】
複合粒子は、1より大きい形状係数を有する不規則な形態、または1に近い形状係数を有する実質的に球状形態を有することができる。
【0029】
形状係数という用語は、本発明に関して、粒子の主軸と呼ばれる最大寸法の軸のサイズと、粒子の副軸と呼ばれる最小寸法の軸のサイズとの間の比を意味する。本発明による複合粒子は、より好ましくは、実質的に球状形態を有することができる。
【0030】
本発明の枠組みにおいて使用することができる担持粒子に関して、特に金属、セラミックまたは有機粒子を挙げることができる。
【0031】
本発明の枠組みにおいて使用することができる機能性粒子に関して、特に、セラミックおよび/もしくは金属、および/もしくは有機粒子ならびに/またはホウ素、炭素、酸素および/もしくは窒素を含む群から選択される少なくとも1種の元素を含む粒子を挙げることができる。
【0032】
本発明による複合粒子に関して、特に以下を挙げることができる:
- サーメットを製造するための金属によって機能化されたセラミック粒子、例えば、WC/Co、WC/Cu、WC/NiCr、TiC/Ni、B4C/Al、FexNy/Ni、Feα(N)/Niなど;
- セラミックマトリクス複合材料(CMC)を製造するためのセラミックによって機能化された金属粒子、例えば、Ti/ZrB2、Ti/TiC、Ti/SiC、Ti/ZrB
2
/SiC、Al/SiC、Fe/SiC、TA6V/ZrO
2
、Al6061/TiC/WCなど;
- 合金、金属間化合物および擬合金の製造のための金属によって機能化された金属粒子、例えば、W/Cu、W/Ni、Ti/Al、Ti/Al/C、Al/Cu、Al/Zn、Cu/Ni、Ti/AgCu、Ti/Mo、Mg/TiNi、Al/TiNi、Al6061/TiNi/SiCなど;
- セラミックによって機能化されたセラミック粒子、例えば、ZrB2/SiC、Al203/SiO2、Si3N4/SiCなど;
- 機能性複合材料を製造するための金属によって機能化された有機粒子、例えば、PA/Ag、PEKK/Ag、PTFE/Ag、PE/Niなど;ならびに
- 有機材料によって機能化された金属またはセラミック粒子、例えば、Fe
3
O
4
/PA、C/PEKK、Cu/PEなど。
【0033】
本発明はまた、付加合成などの焼結による成形技術および/またはフレームスプレー、HVOF、プラズマスプレーまたはコールドスプレーなどのスプレーによる表面処理に使用することができる材料として本発明によるマルチマテリアル粉末を使用することを目的とする。
【0034】
本発明はさらに、本発明による粉末を製造する方法(第1の実施形態)を目的とし、その方法は以下を含む:
- 空気圧および/または油圧または機械的手段によって担持粒子を撹拌し、抵抗加熱を使用して担持粒子の温度を増加させるために、担持粒子の循環流動床反応器への導入;
- 機能性粒子の懸濁液の、有機溶媒および有機結合剤の混合物中での生成、次いで
- 反応器において、流動化の担持粒子上に懸濁液を噴霧することによる担持粒子上への機能性粒子のグラフト。
- 流動床反応器における温度の増加および維持による機能性粒子の熱処理。
【0035】
本発明による粉末を形成する複合粒子を得る目的のために本発明による方法において実施される担持粒子および機能性粒子は本明細書上記に定義されている。
【0036】
循環流動床という用語は、本発明に関して、一方では粒子をその上部で捕捉し、他方では粒子をその下部に再導入することを可能にするシステムを備えた流動床反応器を意味する。このような反応器は、二相(固体/ガス)または三相(固体/ガス/液体)様式で動作することができる。これは、さらに、有益には、窒素、炭素、ホウ素および酸素などのヘテロ原子の拡散処理を容易にするために、大気圧でのコールドプラズマトーチによって支援され得る。
【0037】
本発明はまた、本発明による粉末を製造する方法(第2の実施形態)であって、反応器として、担持粒子の表面に機能性粒子を注入するように特に設計された高エネルギー機械的反応器を使用する方法を目的とする。
【0038】
このような実施形態において、方法は以下のように広げられる:
- 担持粒子を反応器に導入し、粒子を機能化すること;
- 反応器において、0℃~+150℃の温度、好ましくは10℃~80℃の温度にて機械的作用によって担持粒子に機能性粒子をグラフトすること。
【0039】
本発明による粉末を形成する複合粒子を得る目的のために本発明に従って本発明において実施される担持粒子および機能性粒子はまた、本明細書上記に定義されているものである。
【0040】
有益には、本発明による方法は、グラフトステップの後、本明細書上記に定義されているような循環流動床を使用して複合粒子の加熱および/または表面処理のステップをさらに含むことができる。
【0041】
有益には、本発明による方法は、複合粒子が球状形態を有さない場合、ホットプラズマ流動床によって前記粒子を球状化するステップをさらに含むことができる。
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、説明の目的で、非限定的な形式で、添付の図面を参照して与えられている以下の説明を読むと、より明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に従って本発明の方法を実施するために使用されるデバイス(流動床反応器)のブロック図を示す。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に従って本発明の方法を実施するために使用されるデバイス(粉砕デバイス)のブロック図を断面図として示す。
【
図3】
図3Aおよび3Bは、本発明による複合粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)により取得した写真である。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、本発明による複合粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)により取得した写真である。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、本発明による複合粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)により取得した写真である。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、本発明による複合粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)により取得した写真である。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、従来の鉄と銅の混合物(
図7A)から、および銅で機能化した鉄粉末(
図7B)から圧縮/焼結によって作製した複合鉄-銅材料の断面としての顕微鏡検査を示す光学顕微鏡によって取得した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図3A~7Bは本明細書以下の実施例において説明される。
【0045】
図1および2に示される同一の要素は同一の参照番号によって識別される。
【0046】
図1は、第1の実施形態に従って本発明の方法を実施するために使用されるデバイス(循環流動床反応器)のブロック図を示す。それは以下の要素から構成される:
- 反応器を充填するためのダクト1、
- 反応器を空にするためのダクト2、
- 円筒形反応エンクロージャ3、
- サイクロン4、
- 多孔性プレート5、
- 流動化ガスを供給するためのダクト6、
- スプレーノズル7、
- 4つのコールドプラズマトーチ8、
- 粉末を循環させるためのダクト9、
- ガスを排気するためのダクト10、
- ホットプラズマトーチ11、
- プラズマガスの供給口12、
- 粉末の供給口13、
- 熱抵抗器14、
- 粉末床15。
【0047】
図2は、第2の実施形態に従って本発明の方法を実施するために使用されるデバイス(機械的デバイス)のブロック図を断面図として示す。それは以下の要素から構成される:
- 円筒形エンクロージャ3、
- 以下:
- シャフト161、
- 圧縮部分162、および
- 締結軸163
から構成されるロータ16、
- 担持粉末と機能性粒子の混合物17、
- 冷却水を循環させるための二重シェル18、
- 冷却水の入口および出口のためのダクト19、
- 粉末を充填および取り出すためのダクト20。
【0048】
本発明はまた、以下の実施例においてより詳細に示される。これらの実施例において、他に言及しない限り、パーセンテージおよび部の全ては重量パーセンテージで表される。
【実施例】
【0049】
実施例1
10μmの粒径分布d50を有する炭化タングステン粉末を、0.9μmの粒径分布d50を有するコバルト粉末を使用して機能化する。
【0050】
この操作は第2の実施形態に従って行う。
【0051】
粉末を80%WCおよび20%Coの重量比で高エネルギー機械的デバイスに導入する。水の再循環による冷却システムにより、反応チャンバを20℃に維持することができる。不活性雰囲気下で操作を実施するためにエンクロージャをアルゴンによってパージする。圧縮部分の端部をエンクロージャの壁から1~3mmの距離に調節する。後者を、30分~60分の反応時間の間、4000~6000rpmの速度の回転に設定する。エンクロージャ内部で測定した温度は50~80℃である。
図3Aに示す、このように得られた複合粉末は、担持粒子の表面の90%より多くを覆うコバルトの粒子によって表面上で機能化された炭化タングステンの粒子から構成される。
【0052】
実施例2
実施例1と同じ炭化タングステン粉末を、実施例1と同じ操作パラメータに従って、0.9μmの粒径分布d50を有する銅粉末を使用して機能化する。
【0053】
図4Aに示す、このように得られた複合粉末は、担持粒子の表面の60%より多くを覆う銅の粒子によって表面上で機能化された炭化タングステンの粒子から形成される。
【0054】
実施例3
40μmの粒径分布d50のアルミニウム粉末を、3.5μmの粒径分布d50を有する炭化ケイ素粉末を使用して機能化する。
【0055】
この操作は実施例1と同じ操作パラメータに従って行う。
【0056】
粉末を85%Alおよび15%SiCの重量比で高エネルギー機械的デバイスに導入する。
【0057】
図3B(断面図)に示す、このように得られた複合粉末は、1μmより大きい層を形成する炭化ケイ素の粒子によって表面上で機能化したアルミニウムの粒子から構成される。
【0058】
実施例4
50μmを中心とする粒径分布を有するコバルト合金粉末(ステライト)を、本発明による方法の第1の実施形態に従って、循環流動床に導入する。
【0059】
粉末を、1000~1500l/hのガスの流速下で窒素によって流動化に置く。粉末を150~200℃の温度に加熱する。2μmを中心とする粒径分布を有するニッケル粉末の水性懸濁液(有機結合剤としてポリビニルアルコールを加える)を、スプレーノズルを使用した噴霧によって流動床のエンクロージャに導入する。窒素を、3~8barの圧力、および300~700l/hの流速で噴霧ガスとして使用する。懸濁液を0.8~1.2l/hの流速でポンプで送り込む。噴霧操作の終わりに、粉末を、脱結合の第1のレベルに相当する250℃~350℃の温度に加熱する。
【0060】
次いで後者を500℃~700℃の温度で拡散熱処理に供する。粉末を最後に冷却し、調整(コンディショニング(conditioned))する。
【0061】
図5A(断面図)に示す、2μmより大きい厚さを有するニッケルの層によって機能化されたコバルト合金粉末がこのように得られる。
【0062】
実施例5
実施例4と同じ実施形態に従って(本発明による方法の第1の実施形態に従って)、同じコバルト合金粉末が、5μmを中心とする粒径分布を有する銅粉末を使用することによって銅によって機能化される。
【0063】
この場合、銅粉末の懸濁液を、有機結合剤としてポリ酢酸ビニルを使用することによって有機溶媒中で生成する。噴霧操作の間、コバルト合金粉末を80~150℃の温度で流動化に維持する。次いで機能化された粉末を本明細書上記の同じ熱処理サイクルに供する。
【0064】
図5B(断面図)に示すような、1μmより大きい厚さの銅の層によって機能化されたコバルト粉末がこのように得られる。
【0065】
実施例6
同じ実施形態(本発明による方法の第1の実施形態)および実施例4と同じ操作パラメータに従って、40μmを中心とする粒径分布(d50)を有する銅球状粉末を、
図4Bに示すように、担持粒子の表面の95%より多くを覆うニッケルによって機能化する。
【0066】
実施例7
60μmの粒径分布d50を有するポリアミド粉末(PA)を、2μmの粒径分布d50を有する銀粉末を使用して機能化する。
【0067】
この操作は本発明による方法の第2の実施形態に従って行う。
【0068】
粉末を93%のPAおよび7%の銀の重量比で高エネルギー機械的デバイスに導入する。
【0069】
水の再循環による冷却システムにより、反応チャンバの冷却が可能となる。圧縮部分の端部を、エンクロージャの壁から1~3mmの距離に調節する。後者を、3000~5000rpmの速度での回転および10分~30分の粉砕時間に設定する。エンクロージャの内部で測定した温度は20~50℃である。
【0070】
図6AおよびBに示す、このように得られた複合粉末は、担持粒子の表面の10%より多くを覆う銀の粒子によって表面上で機能化したポリアミドの粒子から構成される。
【0071】
実施例8
図7Aおよび7Bは、圧縮/焼結により作製した複合鉄-銅材料の断面図としての顕微鏡検査を示す光学顕微鏡により取得した写真であり、一方では、鉄および銅の従来の混合物からの写真(
図7Aに示す)であり、他方では、銅で機能化した鉄粉末からの写真(
図7Bに示す)である。
【0072】
粉末を700MPaの一軸圧力下でマトリクスにおいて予め圧縮し、次いで得られた平板を1120℃にて制御した雰囲気下で焼結する。
【0073】
特に、
図7Aは、これらの鉄(50μmのd50)および銅(5μmのd50)粉末の従来の混合物から得られた材料の微細構造を示す。
【0074】
図7Bは、実施例5と同様に本発明による方法の同じ実施形態に従って銅機能化鉄粉末から得られた同じ材料の微細構造を示す。
【0075】
2つの微細構造の間の有意な差が視覚的に観察される:
- 粉末の混合物(
図7Aに示す)から得られた微細構造の場合、構成物質の不均質な分布が示され、一方で、
- 機能化粉末(
図7Bに示す)から得られた微細構造の場合、特定の微細構造が、均質な分散の鉄の粒子と相互接続された銅のマトリクスから形成されることが観察される。