(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/40 20060101AFI20241114BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B29C45/40
B29C45/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020044503
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-28
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505387130
【氏名又は名称】コメルシアル・デ・ウティレス・イ・モルデス・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】COMERCIAL DE UTILES Y MOLDES, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァラ プルナ アルベルト
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0482102(KR,B1)
【文献】特開昭52-025816(JP,A)
【文献】特開2000-038964(JP,A)
【文献】特開2018-149810(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02735423(EP,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02649640(FR,A1)
【文献】国際公開第2017/119228(WO,A1)
【文献】特表2001-508710(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02286974(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355118(US,A1)
【文献】特開平08-118435(JP,A)
【文献】特開平09-076236(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第03073442(FR,A1)
【文献】Cumsa.com,「KR - Cooled Lifter Rack Installation Demo」,YouTube[online][video],2019年01月30日,[2023年12月18日検索],<https://www.youtube.com/watch?v=Nc2PXCOIyDs>,0:30,0:36,0:44,1:42,2:03
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/40
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置であって、成形されるべき部品と相補的な形状を有する型インサート(2)が一方の端部に設けられたエジェクタ(1)を備える装置において、
前記エジェクタ(1)が、前記型インサート(2)を冷却する冷却用内管(12)を収容する外管(11)を備え、
前記外管(11)が可撓性材料で作られている
ことを特徴とする、熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項2】
前記外管(11)が、炭素繊維、ガラス繊維と混合された炭素繊維、またはグラフェンで作られている、請求項
1に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項3】
前記型インサート(2)が、接合ヘッド(3)によって前記エジェクタ(1)に接合されている、請求項1に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項4】
前記接合ヘッド(3)が少なくとも1つの気密シール(4、5)を備える、請求項
3に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項5】
前記冷却用内管(12)がステンレス鋼で作られている、請求項1に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項6】
前記エジェクタ(1)が、上部セグメント(13)および下部セグメント(14)を形成しており、前記上部セグメント(13)の長手方向軸線が、前記下部セグメント(14)の長手方向軸線と鋭角(A)をなす、請求項1に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項7】
前記上部セグメント(13)の前記長手方向軸線が前記下部セグメント(14)の前記長手方向軸線となす前記鋭角(A)が、6°以下である、請求項
6に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項8】
ガイドブッシュ(7)をさらに備え、前記エジェクタ(1)が、前記ガイドブッシュ(7)の内面に沿って移動する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項9】
前記エジェクタ(1)が、固定ベース(10)、締付けコーン(14)、および締付けナット(15)によってエジェクタプレート(9)に固定されている、請求項1に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【請求項10】
前記エジェクタ(1)が、前記エジェクタ(1)の、前記型インサート(2)から遠い端部に、冷却液用の入口(17)および冷却液用の出口(18)が設けられた冷却源(16)を備え、前記冷却液の前記入口が、前記内管(12)に通じて形成されており、前記冷却液の前記出口が、前記外管(11)と内管(12)との間に形成された空間に通じて形成されている、請求項1に記載の熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂射出成形金型(thermoplastic injection moulds)内のネガティブ部(negatives)を離型するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂射出成形用のすべての金型は、成形されるべき製品のサイズに適した寸法を有する少なくとも2つの鋼板を備えており、2つの鋼板は、2つの鋼板の間のガイドカラムを用いて、2つの鋼板が分離されたり組み合わされたりするたびに2つの鋼板が完全に合致するように、2つの鋼板が案内される態様で分離されることが可能である。
【0003】
これらの鋼板は、2つの鋼板がまさに注入している機械の2つの鋼板の各側にそれぞれ個別に連結されることができるように設計され、したがって、各射出サイクルで、2つの鋼板は、注入するための閉鎖するプロセス、または注入された製品を離型するための分離するプロセスの操作性に応じて分離されたり組み合わされたりする。この分野では、これらの鋼板はキャビティプレート(cavity plates)およびパンチプレート(punch plates)と呼ばれる。
【0004】
キャビティプレートは、注入製品の見える面に対応する機械加工が再現されなければならないプレートであり、パンチプレートは、その製品の内面が機械加工されねばならないプレートである。
【0005】
通常、パンチプレートは、これが製品の目に見えない部分であるので、細部の仕上げをそれほど必要としない面であり、したがって、実行されるべきジョブが細部の仕上げをそれほど必要としないプレートである。
【0006】
金型のこの部分は、製品を離型するためのすべてのエジェクタ(ejectors)が収容される部分、ならびに各製品がその製品を離型するために必要とし得る機構であり、キャビティプレートは、細部をより良く仕上げる必要があり、かつ、最終製品に、当該の製品の見える部分に悪影響を及ぼし得る審美的表面上のマークまたは凹凸を有し得るインサートを可能な限りなくす必要がある面である。
【0007】
これらのプレートはそれぞれ、製品の仕様に従って機械加工されなければならないので、その点で適切に計算された冷却システムを機械加工することが不可欠であり、したがって、その部分にホットメルト材料が高温で注入されるときに、溶融部分は可能な限り速く冷えて凝固し、完全に硬化した製品の離型が可能となり得る。
【0008】
冷却プロセスはすべての射出成形金型にとって極めて重要である、というのは、注入されたばかりの部品は、その後起こり得る変形を防止するのに十分な時間金型の中にあらねばならないからである。
【0009】
しかしながら、部品が特定の要件を満たすために、一定の要求が満たされなければならないので、すべてがプロセスの速度の問題ではなく、3つの基本的な側面、すなわち、品質、外観および機械抵抗が、製品の最終目的に応じて異なる優先順位で際立つ。
【0010】
注入されるべき部品が、その部品の構造に離型するのが困難な領域がある場合、各ケースに十分に適合して、金型の残り部分と同じ冷却特性を維持するべき機構の使用が要求される、というのは、そうでなければ、これらの領域は、十分に冷却されていないことにより、例えば、自動車、電化製品、化粧品、電子機器、電話などの分野向けの部品において、放出の瞬間を遅らせることによってしか修正することができない視覚的品質の深刻な問題を抱える可能性があるからである。
【0011】
材料が半液体状態でどのように金型に入るかにかかわらず、材料が融解している温度のために、材料は、圧力を使用してすべての空洞がいっぱいになるまで注入され、一定期間の間、機械は閉鎖圧力を保持し続け、冷却回路は金型に冷気を供給し、製品を凝固させ続ける。これはプロセスの最も重要な局面である、というのは、部品が十分に硬化していない場合、まだペースト状の状態にある領域は空洞の外側で硬化し始め、これらの領域は、部品が完全には注入されていないことを明確に示すひけマークを示すからである。
【0012】
現在、必要な機構が特定の寸法を有する場合、独立した冷却回路を作ることに大きな欠点はないが、これらの機構の寸法が小さい場合、これを実現するのは事実上不可能である。
【0013】
これらのケースでは、残る唯一の選択肢は射出サイクルを延長して、部品が離型される前に完全に凝固し、部品が所望の外観を有することができるようにすることである。
【0014】
この問題は頻繁に現れる、というのは、産業界で競争するために、毎回、生産の増大、製造コストの削減、および品質の向上が期待されるからである。
【0015】
したがって、これらの小型インサートを冷却することができれば、生産の大幅な増加、ならびに生産コストの大幅な削減を達成できるであろう。
【0016】
同じ所持者の欧州特許出願公開第3372377号明細書は、熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置を記述しており、この装置は、ネガティブ部領域の離型を困難な解決策で実現することを可能にするが、製造されるべき製品を冷却する手段を備えていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、得られるべき部品を冷却することを可能にする、熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置であって、冷却回路が金型の型領域(figure area)に達する、装置を提供することである。
【0018】
上述の欠点は、本発明の装置で解決されるとともに、以下に記述される他の利点を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置は、成形されるべき部品と相補的な形状を有する型インサート(figure insert)が一方の端部に設けられたエジェクタを備え、前記エジェクタは、前記型インサートを冷却する冷却用内管を収容する外管を備える。
【0020】
好適には、前記外管は可撓性材料で作られる。例えば、外管は、炭素繊維、ガラス繊維と混合された炭素繊維、またはグラフェンで作られる。
【0021】
さらに、本発明による装置では、前記型インサートは接合ヘッドによってエジェクタに接合され、前記接合ヘッドは少なくとも1つの気密Oリングを備える。
【0022】
好ましい一実施形態によれば、冷却用内管はステンレス鋼で作られるが、冷却用内管は任意の適切な材料で作られてもよい。
【0023】
好適には、前記エジェクタは上部セグメントおよび下部セグメントを形成し、上部セグメントの長手方向軸線は下部セグメントの長手方向軸線と鋭角をなす。例えば、上部セグメントの長手方向軸線が下部セグメントの縦シャフトとなす前記鋭角は6°以下である。
【0024】
さらに、本発明による熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置は、ガイドブッシュも備え、前記エジェクタがガイドブッシュの内面に沿って移動し、エジェクタは、固定ベース、締付けコーン、および締付けナットによってエジェクタプレートに固定される。
【0025】
好適には、前記エジェクタは、エジェクタの、型インサートから遠い端部に、冷却液用の入口および冷却液用の出口が設けられた冷却源を備え、冷却液の入口は前記内管に通じて形成され、冷却液の出口は外管と内管との間に形成された空間に通じて形成される。
【0026】
本発明による装置では、冷却回路によって冷却液を可撓性エジェクタの内部に通して循環させて型領域を冷却できることが実現される。
【0027】
この解決策では、冷却回路を固定ベースから型インサートまで接続することが可能になるが、冷却回路の機械的抵抗によって、装置が耐える必要のある圧力を固定ベースおよび型インサートが支えることが可能になるとともに、腐食を防ぐこと、可能な限り正確に扱われかつ調整されるのに十分な機械抵抗を有すること、および冷却回路の操作に共通する他の機械的特性が可能になるものである。
【0028】
このケースでは、様々な材料の挙動が研究され、これらの特性をもつことができる少なくとも2つの材料、すなわちグラフェンおよび炭素繊維があるという結論に至った。
【0029】
特に、炭素とガラス繊維を組み合わせることにより、これを十分に使用することで所要の目的を達成できることが実証されている。
【0030】
開示されている内容をより良く理解するために、実際的な実施形態が単に非限定的な例として概略的に描かれているいくつかの図面が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置の横断立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
まず初めに、本発明による装置は、この装置のネガティブ部領域内の、通常は小さいと考えられるネガティブ部、すなわち寸法が3mm未満のネガティブ部を離型するために使用されることが示されなければならない。
【0033】
図1に示されるように、熱可塑性樹脂射出成形金型内のネガティブ部を離型するための装置は、成形されるべき部品と相補的な形状を有する型インサート2が一方の端部に設けられたエジェクタ1を備える。
【0034】
本発明によれば、前記エジェクタ1は、冷却用内管12を収容する外管11を備え、冷却用内管12は前記型インサート2を冷却する。
【0035】
前記外管11は、可撓性材料、例えば、炭素繊維、ガラス繊維と混合された炭素繊維、またはグラフェン、あるいは他の適切な材料で作られる。
【0036】
さらに、前記エジェクタ1は上部セグメント13および下部セグメント14を形成し、上部セグメント13の長手方向軸線は下部セグメント14の長手方向軸線と鋭角(A)をなし、この角度は6°以下である。
【0037】
図1に示されるように、前記下部セグメント14は略まっすぐに配置され、前記上部セグメント13は前述のように最大6°までわずかに傾いている。
【0038】
エジェクタ1の一方の端部には、接合ヘッド3と呼ばれる接続ブッシュが、好ましくは高抵抗二成分接着剤によって接合され、接合ヘッド3は、接合ヘッド3内にOリングシール4、5、すなわち上部シール4および下部シール5を収容するために、2つの機械加工溝を支持し、上部シール4および下部シール5は2つの必要な要件を満たす必要がある。
【0039】
上部シール4は、各金型セッタが製造する型インサート2の冷却の気密性を確保するという目的を有するが、下部シール5は、真空を射出プロセスに組み込んで金型内の装置の気密性を保証するように機能することになる。
【0040】
この接合ヘッド3は、各型インサート2の接続および位置決めを確実にするために、迅速交換システム用のハウジング6をさらに組み込んでいる。
【0041】
装置を金型のパンチプレート8の対応する位置に固定する場合、所要の離型傾斜(最大6°の傾斜)を有するガイドブッシュ7と呼ばれるねじ付きブッシュが使用され、ガイドブッシュ7のドリル穴あけは全体として、プレート8をすべて貫通しなければならない。
【0042】
このブッシュ7は、外管11がブッシュ7の離型運動で滑り抜けるガイドであり、型インサート2のハウジングの下に配置される。
【0043】
金型内への装置の最終組立てのために、最初に、外管11は、固定ベース10と呼ばれる同じエジェクタプレート9間に適切に収容されたブッシュと装置を正確に固定する締付けコーン14および締付けナット15とを用いて、エジェクタプレート9内に固定するために、インサート2とともに、パンチプレート8内に挿入されたガイドブッシュ7を滑り抜けねばならない。
【0044】
次いで、外管11は、エジェクタプレート9の下で切断され、外管11の最終的な長さは、冷却用入口17および冷却用出口18を備えた冷却源16を連結できるようにしなければならない。
【0045】
エジェクタプレート9の厚さは金型の寸法に応じて可変であるので、各金型セッタは、冷却源16を固定するための正確な位置を決定することになる。
【0046】
冷却源16は、冷却源16の内側に気密シール19を組み込んでおり、気密シール19は、冷却剤の漏れを防止するとともに、前記内管12が冷却源16に適切に固定されるという目的を有し、内管12は、内管12のインサート2までの長さに切断される必要がある。
【0047】
この内管12を通して、型インサート2の冷却を引き起こすために冷却液が入り、この冷却液の排出は、まさに外部の管11と内管12との間の空間を通して行われる。
【0048】
したがって、冷却源16は、この目的のために作られたねじを用いて外管11の下端部に固定される。冷却源16はすでに気密シール19を組み込んでいるので、気密シール19により入口および出口の方向を各ニーズに適した方向に配置することが可能になる。
【0049】
したがって、全長、すなわち外管11と内管12の両方の長さが、各用途に応じて切断される必要がある。
【0050】
冷却源16に適切に接続された、冷却回路にフィードする管をすべて収容するために、エジェクタプレートと金型のベースプレートとの間に十分な空間が配置されなければならないことが考慮されるべきである。
【0051】
本発明の特定の実施形態に言及したにもかかわらず、記述されている装置はいくつかの変形および修正の影響を受けやすいこと、および、前述したすべての詳細は、添付の特許請求の範囲によって定義される保護の範囲から逸脱することなく、他の技術的に等価なものに置き換えることができることは当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1…エジェクタ、2…型インサート、3…接合ヘッド、4…Oリングシール、気密シール、上部シール、5…Oリングシール、気密シール、下部シール、6…ハウジング、7…ガイドブッシュ、8…パンチプレート、9…エジェクタプレート、10…固定ベース、11…外管、12…冷却用内管、13…上部セグメント、14…下部セグメント、締付けコーン、15…締付けナット、16…冷却源、17…冷却用入口、冷却液用入口、18…冷却用出口、冷却液用出口、19…気密シール、A…鋭角。