(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】弁装置、及び水栓
(51)【国際特許分類】
F16J 15/06 20060101AFI20241114BHJP
F16K 11/076 20060101ALI20241114BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F16J15/06 A
F16K11/076 B
E03C1/042 B
(21)【出願番号】P 2020096912
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝典
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01018614(EP,A2)
【文献】特開昭53-075570(JP,A)
【文献】特開2017-180792(JP,A)
【文献】特開2004-316720(JP,A)
【文献】国際公開第95/018324(WO,A1)
【文献】特開昭60-109673(JP,A)
【文献】国際公開第03/006859(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01306595(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/06
F16K 11/076
E03C 1/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングの筒内に同軸配置された回転筒と、を備え、
前記ハウジングには、
周方向に180°離間した
二位置において該ハウジングの外周面に開口する複数の貫通孔が設けられ、
前記回転筒には、前記ハウジングに対する前記回転筒の相対回転に基づき前記各貫通孔の何れかに臨む位置に配置されることにより該貫通孔を介して前記回転筒の筒内と前記ハウジングの筒外とを連通する少なくとも一つの連通孔が設けられるとともに、
前記ハウジングの外周面
を第1の周面要素として、
前記ハウジングの外周面
にシール部材が嵌着された弁装置
であって、
前記シール部材が、
一対のリング部と、
互いに離間した周方向位置において前記両リング部間を接続する2つの柱状部と、
を備え、
互いに対向する第1の周面要素としての前記ハウジングの外周面と、第2の周面要素としてのケースの内周面とが形成する筒状の隙間に介在されて、前記各リング部が該各リング部の全周に亘って前記第1及び第2の周面要素に当接するとともに、前記各柱状部が該各柱状部の全長に亘って前記第1及び第2の周面要素に当接することにより、前記隙間に前記各リング部及び前記各柱状部に囲まれた複数の水密区画を形成しており、
同軸に配置された前記各リング部の軸線方向に沿って前記各柱状部が直線状に延びており、前記各リング部の周方向に180°離間した二位置に2つの前記柱状部を備え、
前記第1及び第2の周面要素が形成する筒状の隙間に組み付けて用いられる前記シール部材が嵌着された
弁装置。
【請求項2】
前記ハウジングの外周面には、前記各リング部及び前記各柱状部の嵌合溝が設けられている請求項
1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記第2の周面要素を構成する内周面を有したケースと、
請求項
1又は請求項
2に記載の弁装置と、を備え、
前記弁装置を構成する前記ハウジングの外周面に嵌着された前記シール部材が、前記ハウジングの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間に前記各水密区画を形成するとともに、
前記ケースは、前記水密区画毎に設けられた複数の吐出口を有し、
前記ハウジングの筒内に配置された前記回転筒の相対回転位置に応じて前記各吐出口を介した通水状態を切替可能に構成された水栓。
【請求項4】
前記ケースには、前記各吐出口として、シャワー吐水口と、カラン吐水口と、が設けられるとともに、
前記シール部材には、前記ハウジングの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間を、前記シャワー吐水口に連通する第1の前記水密区画と、前記カラン吐水口に連通する第2の前記水密区画と、に区画する二本の前記柱状部が設けられている
請求項
3に記載の水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置、及び水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の吐水口を有するとともに、これらの各吐水口を介した通水状態を切り替え可能に構成された水栓がある。例えば、特許文献1に記載の水栓は、シャワー吐水口及びカラン吐水口を備えた壁付き型の湯水混合水栓としての構成を有している。また、この水栓は、これらのシャワー吐水口及びカラン吐水口とともに、その水栓本体に設けられた切り替えハンドルを備えている。更に、この切り替えハンドルは、水栓本体に内蔵された弁装置に連結されている。そして、これにより、その切り替えハンドルの操作位置に基づいて、シャワー吐水口を介した通水状態と、カラン吐水口を介した通水状態と、を切り替えることが可能になっている。
【0003】
具体的には、この従来例の水栓に用いられた弁装置は、その外周面に開口する第1及び第2の開口部を有している。また、この弁装置は、切り替えハンドルの操作位置に応じて、これら第1及び第2の開口部の何れか一方を介した通水を許容する。そして、水栓は、その第1及び第2の開口の一方がシャワー吐水口に連通し、他方側がカラン吐水口に連通する状態で、この弁装置を、その水栓本体に設けられた収容室内に配置する構成となっている。
【0004】
また、この従来例の水栓においては、互いに対向する弁装置の外周面と収容室の内周面とが形成する筒状の隙間に対し、軸方向に離間して三本のシールリングを介在させることにより、第1及び第2の水密区画が形成されている。そして、これらの第1及び第2の水密区画を介して、その第1及び第2のケース側開口と、対応するシャワー吐水口及びカラン吐水口とが連通する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の構成では、組付け作業時、そのシールリングの本数に応じた工数が発生する。そして、これにより、その組付け作業が煩雑なものとなっていることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、組付容易に複数の水密区画を形成することのできるシール部材、弁装置、及び水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するシール部材は、一対のリング部と、互いに離間した周方向位置において前記両リング部間を接続する複数の柱状部と、を備え、互いに対向する第1及び第2の周面要素が形成する筒状の隙間に介在されて、前記各リング部が該各リング部の全周に亘って前記第1及び第2の周面要素に当接するとともに、前記各柱状部が該各柱状部の全長に亘って前記第1及び第2の周面要素に当接することにより、前記隙間に前記各リング部及び前記各柱状部に囲まれた複数の水密区画を形成することが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、第1及び第2の周面要素が形成する筒状の隙間に対し、そのシール部材を構成する各リング部及び各柱状部を、軸方向から一体に組み付けることができる。そして、これにより、組付け容易に、その柱状部の数に応じた複数の水密区画を形成することができる。
【0010】
更に、各柱状部が筒状の隙間を周方向に区画することで、周方向に並んだ複数の水密区画を形成することができる。そして、これにより、これら各水密区画の形成スペースを軸方向に短縮することができる。
【0011】
上記課題を解決するシール部材は、同軸に配置された前記各リング部の軸線方向に沿って前記各柱状部が直線状に延びていることが好ましい。
上記構成によれば、第1及び第2の周面要素間の隙間にシール部材を組付ける際、摺動部となる各柱状部が、その組付け方向に平行な細線状であるため、摩擦や引っ掛かりが起こり難い。そして、これにより、より一層、その組付け作業を容易化することができる。
【0012】
上記課題を解決する弁装置は、筒状のハウジングと、前記ハウジングの筒内に同軸配置された回転筒と、を備え、前記ハウジングには、互いに離間した周方向位置において該ハウジングの外周面に開口する複数の貫通孔が設けられ、前記回転筒には、前記ハウジングに対する前記回転筒の相対回転に基づき前記各貫通孔の何れかに臨む位置に配置されることにより該貫通孔を介して前記回転筒の筒内と前記ハウジングの筒外とを連通する少なくとも一つの連通孔が設けられるとともに、前記ハウジングの外周面を前記第1の周面要素として、前記ハウジングの外周面に上記何れかのシール部材が嵌着される。
【0013】
上記構成によれば、組付け容易に、そのハウジングの外周面に開口する貫通孔毎に、このハウジングの外周面が形成する筒状の隙間に水密区画を形成することができる。そして、これらの水密区画が周方向に並んで形成されることにより、軸方向の小型化を図ることができる。
【0014】
上記課題を解決する弁装置において、前記ハウジングの外周面には、前記各リング部及び前記各柱状部の嵌合溝が設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、容易に正しく、シール部材を組み付けることができる。また、シール部材の配置を安定的に保持することができる。そして、これにより、シール効果を高めて、信頼性の向上を図ることができる。
【0015】
上記課題を解決する水栓は、前記第2の周面要素を構成する内周面を有したケースと、上記何れかの弁装置と、を備え、前記弁装置を構成する前記ハウジングの外周面に嵌着された前記シール部材が、前記ハウジングの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間に前記各水密区画を形成するとともに、前記ケースは、前記水密区画毎に設けられた複数の吐出口を有し、前記ハウジングの筒内に配置された前記回転筒の相対回転位置に応じて前記各吐出口を介した通水状態を切替可能に構成される。
【0016】
上記構成によれば、組付け容易に、そのケースに設けられた複数の吐出口毎に水密区画を形成することができる。
上記課題を解決する水栓は、前記ケースには、前記各吐出口として、シャワー吐水口と、カラン吐水口と、が設けられるとともに、前記シール部材には、前記ハウジングの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間を、前記シャワー吐水口に連通する第1の前記水密区画と、前記カラン吐水口に連通する第2の前記水密区画と、に区画する二本の前記柱状部が設けられていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、簡素な構成にて、組付け容易に、シャワー吐水口及びカラン吐水口に連通する第1及び第2の水密区画を形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、組付容易に複数の水密区画を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】水栓の断面図(
図1におけるV-V線断面)。
【
図6】水栓の断面図(
図1におけるVI-VI線断面)。
【
図7】水栓の断面図(
図1におけるVII-VII線断面)。
【
図8】水栓の拡大断面図(
図1におけるV-V線断面)。
【
図9】水栓の拡大断面図(
図1におけるVI-VI線断面)。
【
図10】弁装置の動作を説明する水栓の拡大断面図(
図1におけるVII-VII線断面)。
【
図13】弁装置の動作を説明する水栓の拡大断面図(
図1におけるVII-VII線断面)。
【
図16】(a)は、シール部材の正面図、(b)は、筒状の隙間を形成する第1及び第2の周面要素の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、シール部材、弁装置、及び水栓の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、水栓1は、給水口2及び吐水口3を有したケース4を備えている。具体的には、ケース4は、略円筒状のケース本体5と、このケース本体5の外周面6から径方向外側に突出した第1及び第2の筒状部7a,7bと、を備えている。このケース4は、軸方向に開口するケース本体5の第1端部5aに給水口2を有している。また、各筒状部7a,7bは、ケース本体5の筒内に開口する状態で略同一の軸方向位置から互いに相反する方向に突設されている。そして、本実施形態のケース4は、これらの各筒状部7a,7bを、その第1及び第2の吐水口3a,3bに用いる構成となっている。
【0021】
また、水栓1は、ケース本体5の第2端部5bに螺着されたナット8と、このナット8を介して第1端部9aがケース4の外側に突出した状態で、そのケース本体5の筒内に同軸配置された操作軸9と、を備えている。そして、本実施形態の水栓1は、この操作軸9を回転させることにより、その第1及び第2の吐水口3a,3bを介した通水状態が切り替わる構成になっている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の水栓1は、例えば、そのケース4の外側を意匠部材10で覆う等により、シャワー吐水口11及びカラン吐水口12を有した湯水混合水栓13の水栓本体15に用いることができる。
【0023】
具体的には、例えば、第1の吐水口3aをシャワー吐水口11に連通させるとともに、第2の吐水口3bをカラン吐水口12に連通させる。また、操作軸9には、切り替えハンドル16を連結する。更に、給水口2には、温調ハンドル17の操作により温度調節された湯水が供給されるようにする。そして、これにより、切り替えハンドル16の操作に基づいて、そのシャワー吐水口11及びカラン吐水口12を介した通水状態を切り替えることができる。
【0024】
尚、本実施形態において説明する水栓1のケース4は、その機能を説明するために必要な最小構成を具備するように、一例として簡易的に成形された模式的なものである。このため、
図2中に例示した湯水混合水栓13の内部構造とは、必ずしも一致しない。
【0025】
さらに詳述すると、
図1及び
図3に示すように、本実施形態の水栓1は、ケース4の内側に収容された弁装置20を備えている。また、操作軸9は、ケース4の内側において、この弁装置20に対して接続されている。更に、弁装置20は、この操作軸9が回転することにより作動状態が切り替わる。そして、水栓1は、これにより、この弁装置20の動作に基づいて、その通水状態が切り替わる構成になっている。
【0026】
また、水栓1は、操作軸9に外挿された状態で、その弁装置20とともにケース4の内側に収容されたストッパ部材21を備えている。そして、本実施形態の水栓1においては、このストッパ部材21によって、その操作軸9の回転範囲が制限されている。
【0027】
図4~
図7に示すように、本実施形態の弁装置20は、略円筒状の外形を有したハウジング22と、このハウジング22の筒内に同軸配置された外筒体23と、を備えている。また、この弁装置20は、その外筒体23の筒内に同軸配置された内筒体24を備えている。更に、この内筒体24の第1端部24aには、操作軸9の第2端部9bが連結されている。そして、本実施形態の弁装置20は、これにより、その操作軸9と一体に内筒体24が回転する構成になっている。
【0028】
尚、
図1、
図3及び
図4に示すように、本実施形態の水栓1において、弁装置20は、ケース本体5の第2端部5b側から、このケース本体5の筒内に挿入される。また、ハウジング22には、その第1端部22a近傍の外周面26から径方向外側に突出する係合突部27が設けられている。更に、ケース本体5の第2端部5bには、この係合突部27を内側に配置するスリット28が設けられている。そして、本実施形態の水栓1は、これにより、そのケース本体5の筒内に収容された弁装置20の回転を規制する構成になっている。
【0029】
また、
図4~
図7に示すように、外筒体23の外周面29には、軸方向に延在する複数の係合突部31が設けられている。更に、ハウジング22の内周面32には、これらの各係合突部31を内側に配置する溝状の係合凹部35が設けられている。そして、本実施形態の弁装置20においては、これにより、そのハウジング22に対する外筒体23の回転が規制されている。
【0030】
尚、本実施形態の弁装置20において、外筒体23は、ハウジング22の第2端部22b側から、このハウジング22の筒内に挿入される。更に、内筒体24は、操作軸9とともに、同じくハウジング22の第2端部22b側から、この外筒体23の筒内に挿入される。そして、本実施形態の弁装置20は、これにより、そのハウジング22及び外筒体23が構成する固定筒33の内側に、その回転筒34としての構成を有する内筒体24を収容する構成となっている。
【0031】
更に、本実施形態の弁装置20は、この内筒体24の第2端部24bが、ケース本体5の第1端部5a側に開口する。そして、本実施形態の水栓1は、これにより、給水口2を介してケース4内に供給された湯水が、その弁装置20を構成する内筒体24の筒内に流入する構成になっている。
【0032】
また、
図4、及び
図8~
図10に示すように、本実施形態の弁装置20は、周方向に約180°離間した二位置において、そのハウジング22の外周面26に開口する第1及び第2の貫通孔36a,36bを備えている。具体的には、これらの各貫通孔36a,36bは、それぞれ、その軸方向に並んで設けられた3つの小孔37により構成されている。そして、本実施形態の水栓1は、その第1の貫通孔36aが第1の筒状部7aの筒内に臨むとともに、第2の貫通孔36bが第2の筒状部7bの筒内に臨む周方向位置に配置される状態で、その弁装置20をケース本体5の内側に収容する構成になっている。
【0033】
更に、本実施形態の弁装置20は、これら第1及び第2の貫通孔36a,36bに臨む位置において、その外筒体23に設けられた第1及び第2の内側貫通孔39a,39bを備えている。具体的には、外筒体23には、周方向に約180°離間した二位置において、この外筒体23を径方向に貫通する一対の孔部41,41が設けられている。また、これら各孔部41,41には、それぞれ、その軸方向に並ぶ3つの小孔43を有したパネル部材42,42が取着されている。そして、本実施形態の弁装置20においては、これらの各パネル部材42,42に設けられた各3つの小孔43によって、その外筒体23に設けられた第1及び第2の内側貫通孔39a,39bが構成されている。
【0034】
また、本実施形態の弁装置20は、ハウジング22の各貫通孔36a,36b及び外筒体23の各内側貫通孔39a,39bと略同じ軸方向位置において、その内筒体24に設けられた連通孔44を備えている。本実施形態の弁装置20においては、この連通孔44もまた、その軸方向に並ぶ3つの小孔47により構成されている。更に、外筒体23の各孔部41,41には、それぞれ、この外筒体23の径方向外側に位置するハウジング22の内周面32、及び、その径方向内側に位置する内筒体24の外周面48に当接する状態で、その各パネル部材42,42と各孔部41,41の開口端との間を水密に封止するシールリング49,49が取着されている。そして、本実施形態の弁装置20においては、これにより、そのハウジング22の内周面32と内筒体24の外周面48との間に、これらの各シールリング49,49に囲まれた第1及び第2の水密室50a,50bが形成されている。
【0035】
即ち、本実施形態の弁装置20において、外筒体23に設けられた第1及び第2の内側貫通孔39a,39bは、それぞれ、その外筒体23によって径方向に区画された第1及び第2の各水密室50a,50bのハウジング22側と内筒体24側とを連通する。更に、この弁装置20は、ハウジング22及び外筒体23に対して内筒体24が相対回転することにより、この内筒体24に設けられた連通孔44が、その周方向に離間する第1の水密室50a又は第2の水密室50bの何れか一方に開口する位置に配置される。そして、本実施形態の弁装置20は、これにより、その内筒体24の筒内とハウジング22の筒外とを連通する構成になっている。
【0036】
具体的には、
図10及び
図11に示すように、本実施形態の弁装置20は、内筒体24の連通孔44が、外筒体23に設けられた第1の内側貫通孔39aに臨む相対回転位置にある場合に、その内筒体24の筒内に流入した湯水が、第1の水密室50aに開口する第1の貫通孔36aを介してハウジング22の筒外に流出する。そして、本実施形態の水栓1は、これにより、その第1の貫通孔36aに連通する第1の筒状部7a、つまりは第1の吐水口3aを介した通水が許容される構成になっている。
【0037】
また、
図12及び
図13に示すように、この弁装置20は、内筒体24の連通孔44が、外筒体23に設けられた第2の内側貫通孔39bに臨む相対回転位置にある場合に、その内筒体24の筒内に流入した湯水が、第2の水密室50bに開口する第2の貫通孔36bを介してハウジング22の筒外に流出する。そして、本実施形態の水栓1は、これにより、その第2の貫通孔36bに連通する第2の筒状部7b、つまりは第2の吐水口3bを介した通水が許容される構成になっている。
【0038】
更に、
図14に示すように、本実施形態の弁装置20は、その内筒体24の連通孔44が、上記各水密室50a,50bから外れた相対回転位置にある場合には、その内筒体24内の湯水が、これらの各水密室50a,50b内に流入しないように構成されている。そして、本実施形態の水栓1は、これにより、その第1及び第2の吐水口3a,3bを介した通水を停止することのできる構成になっている。
【0039】
さらに詳述すると、
図3、及び
図8~
図10に示すように、本実施形態の水栓1は、その弁装置20を構成するハウジング22の外周面26に嵌着された状態で、このハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間に介在されたシール部材60を備えている。
【0040】
図15及び
図16(a)(b)に示すように、このシール部材60は、一対のリング部61,61と、互いに離間した周方向位置において、これらの両リング部61,61間を接続する一対の柱状部62,62と、を備えている。
【0041】
具体的には、このシール部材60において、各リング部61,61は、互いに同一の内径D1及び外径D2を有している。また、各リング部61,61及び各柱状部62,62は、ともに略等しい直径D0を有した略円形の断面形状を有している。更に、各リング部61,61は、各柱状部62,62を介して接続されることにより、その軸線Lに沿う方向に離間した状態で同軸に配置されている。そして、各柱状部62,62は、これら各リング部61,61の周方向に約180°離間した二位置において、それぞれ、その各リング部61,61の軸線Lに沿って直線状に延びている。
【0042】
図3及び
図4、並びに
図8~
図10に示すように、本実施形態の水栓1において、このシール部材60は、弁装置20を構成するハウジング22の外周面26に対し、その軸方向から嵌着される。そして、本実施形態のシール部材60は、これにより、その各リング部61,61が、これら各リング部61,61の全周に亘ってハウジング22の外周面26に当接するとともに、その各柱状部62,62が、これら柱状部62,62の全長に亘って、そのハウジング22の外周面26に当接するように構成されている。
【0043】
更に、本実施形態の水栓1は、この状態で、そのハウジング22がケース本体5の筒内に挿入される。そして、本実施形態のシール部材60は、これにより、その各リング部61,61が、これら各リング部61,61の全周に亘ってケース本体5の内周面51に当接するとともに、その各柱状部62,62が、これら柱状部62,62の全長に亘って、そのケース本体5の内周面51に当接するように構成されている。
【0044】
具体的には、
図15及び
図16(a)(b)に示すように、本実施形態のシール部材60は、各リング部61,61及び各柱状部62,62の直径D0が、その互いに対向するハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間隔D3よりも大きな値に設定されている(D0>D3)。更に、本実施形態のシール部材60は、これにより、その各リング部61,61及び各柱状部62,62が、それぞれ、ハウジング22及びケース本体5の径方向に押し潰された状態で、その第1の周面要素S1を構成するハウジング22の外周面26と第2の周面要素S2を構成するケース本体5の内周面51との間に介在される。そして、本実施形態のシール部材60は、これにより、そのハウジング22の外周面26及びケース本体5の内周面51が形成する筒状の隙間αに、各リング部61,61及び各柱状部62,62に囲まれた第1及び第2の水密区画70a,70bを形成する構成になっている。
【0045】
即ち、
図8~
図10に示すように、本実施形態のシール部材60は、その各リング部61,61が、ハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間の隙間αを軸方向に区画する。また、このシール部材60は、その各柱状部62,62が、各リング部61,61間において、そのハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間の隙間αを周方向に区画する。更に、本実施形態のシール部材60は、これらの各リング部61,61及び各柱状部62,62に囲まれた位置に、それぞれ、その第1及び第2の貫通孔36a,36bを配置する状態でハウジング22の外周面26に嵌着される。そして、本実施形態の水栓1は、これにより、シール部材60が形成する第1及び第2の水密区画70a,70bを介して、そのハウジング22の外周面26に開口する第1及び第2の貫通孔36a,36bとケース本体5の内周面51に開口する第1及び第2の筒状部7a,7bとの間を水密に接続する構成になっている。
【0046】
さらに詳述すると、
図4、
図8~
図10に示すように、本実施形態の弁装置20において、ハウジング22の外周面26には、そのシール部材60を構成する各リング部61,61及び各柱状部62,62の嵌合溝80が設けられている。
【0047】
具体的には、ハウジング22の外周面26には、その周方向に延設された一対の環状突部81,81、及び、その軸方向に延設された一対の突条部82,82が突設されている。更に、本実施形態のハウジング22は、これらの各環状突部81,81及び各突条部82,82の延設方向に沿って、その頂部に凹設された一対の環状溝83,83、及び一対の軸方向溝84,84を有している。そして、本実施形態のシール部材60は、その各環状溝83,83に対して各リング部61,61が嵌合するとともに、その各軸方向溝84,84に対して各柱状部62,62が嵌合する状態でハウジング22の外周面26に取着される構成となっている。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
シール部材60は、ハウジング22の外周面26に対し、その各リング部61,61及び各柱状部62,62が、軸方向から一体に嵌着される。そして、これにより、その組付け作業の工数が低減される。
【0049】
また、このシール部材60が取着された状態で、ハウジング22をケース本体5の筒内に挿入することにより、その各リング部61,61及び各柱状部62,62が、互いに対向するハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間に形成される筒状の隙間αを、それぞれ、周方向及び軸方向に区画する。そして、これにより、そのハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間の隙間αに、周方向に並ぶ第1及び第2の水密区画70a,70bが形成される。
【0050】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)シール部材60は、一対のリング部61,61と、互いに離間した周方向位置において両リング部61,61間を接続する一対の柱状部62,62と、を備える。また、シール部材60は、互いに対向する第1の周面要素S1としてのハウジング22の外周面26及び第2の周面要素S2としてのケース本体5の内周面51が形成する筒状の隙間αに介在される。更に、シール部材60は、各リング部61,61が、その全周に亘ってハウジング22の外周面26及びケース本体5の内周面51に当接するとともに、各柱状部62,62が、その全長に亘ってハウジング22の外周面26及びケース本体5の内周面51に当接する。そして、シール部材60は、これにより、ハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間の隙間αに、その各リング部61,61及び各柱状部62,62に囲まれた第1及び第2の水密区画70a,70bを形成する。
【0051】
上記構成によれば、ハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間の隙間αに対し、そのシール部材60を構成する各リング部61,61及び各柱状部62,62を、軸方向から一体に組み付けることができる。そして、これにより、その組付け容易に、その第1及び第2の水密区画70a,70bを形成することができる。
【0052】
更に、周方向に並んだ第1及び第2の水密区画70a,70bを形成することができる。そして、これにより、これら第1及び第2の水密区画70a,70bの形成スペースを軸方向に短縮することができる。
【0053】
(2)シール部材60において、各柱状部62,62は、同軸に配置された各リング部61,61の軸線方向に沿って直線状に延設される。
上記構成によれば、ハウジング22の外周面26とケース本体5の内周面51との間の隙間αにシール部材60を組付ける際、摺動部となる各柱状部62,62が、その組付け方向に平行な細線状であるため、摩擦や引っ掛かりが起こり難い。そして、これにより、より一層、その組付け作業を容易化することができる。
【0054】
(3)シール部材60は、ハウジング22の外周面26に嵌着される。そして、このハウジング22と一体に、ケース本体5の筒内に挿入される。これにより、より一層、その組付け作業を容易化することができる。
【0055】
(4)ハウジング22の外周面26には、各リング部61,61及び各柱状部62,62の嵌合溝80が設けられる。
上記構成によれば、容易に正しく、シール部材60を組み付けることができる。また、シール部材60の配置を安定的に保持することができる。そして、これにより、シール効果を高めて、信頼性の向上を図ることができる。
【0056】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・上記実施形態では、水栓1の弁装置20を構成するハウジング22の外周面26にシール部材60を嵌着することとしたが、そのケース4側、ケース本体5の内周面51にシール部材60を嵌着する構成としてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、シール部材60は、周方向に約180°離間した二位置に設けられた直線状に延びる一対の柱状部62,62を備えることとした。しかし、これに限らず、柱状部62の数は、3本以上でもよい。これにより、その柱状部62の数と同数の水密区画70を周方向に並んで形成することができる。更に、各柱状部62の配置についてもまた、必ずしも均等間隔に限らず、任意に変更してもよい。そして、その形状についてもまた、直線形状に限らず、例えば、幅広形状や、湾曲形状、或いはクランク形状等、任意に変更してもよい。
【0059】
・また、各リング部61,61についても、必ずしも円環形状でなくともよく、例えば、四角環形状等の多角環形状、或いは異型環形状でもよい。更に、互いの径寸が異なっていてもよい。そして、必ずしも、これらの各リング部61,61が同軸配置に配置されていなくともよい。
【0060】
つまり、シール部材60が介在される第1及び第2の周面要素S1,S2の形状に合わせて、その各リング部61及び各柱状部62が、第1及び第2の周面要素S1,S2に当接して両者の間の隙間αに複数の水密区画70を形成することができればよい。
【0061】
・また、上記実施形態には、シャワー吐水口11及びカラン吐水口12を有した湯水混合水栓13の水栓本体15への適用例を示したが、例えば、ハンドシャワー吐水口、オーバーヘッド吐水口、及びカラン吐水口を有する湯水混合水栓等、3つ以上の吐水口3を有した水栓に適用してもよい。そして、このような場合であっても、吐水口に対応する数の柱状部62をシール部材60に設けることで、簡素な構成にて、容易に、その吐水口3毎に、これらの各吐水口3に連通する複数の水密区画70を形成することができる。
【0062】
・更に、その外周面を第1の周面要素S1として、この第1の周面要素S1に対向する第2の周面要素S2との間に、シール部材60を介在させる構成であれば、水栓1以外の弁装置に適用してもよい。例えば、作動油等、水以外の流体を扱う弁装置に適用してもよい。そして、そのハウジング22の筒外から筒内に向かって流体が流れる弁装置に適用してもよい。
【0063】
・上記実施形態では、水栓1のケース4は、略円筒状のケース本体5と、このケース本体5の筒内に開口する状態で、その外周面6から径方向外側に突出した第1及び第2の筒状部7a,7bと、を備える。そして、その各筒状部7a,7bを第1及び第2の吐水口3a,3bに用いることとした。しかし、これに限らず、例えば、ケース本体5の外周面6に設けられた貫通孔を吐水口3に用いる等、第2の周面要素S2となる内周面を有するものであれば、そのケース4の形状は、任意に変更してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、内筒体24には、その周方向の一箇所に連通孔44が設けられることとしたが、周方向に離間した複数の連通孔44を備える構成であってもよい。
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0065】
(イ)請求項1又は請求項2に記載のシール部材と、前記第1の周面要素を構成する筒状のハウジングを有した弁装置と、前記第2の周面要素を構成する内周面を有したケースと、を備え、前記ハウジングの外周面に嵌着された前記シール部材が、前記ハウジングの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間に前記各水密区画を形成するとともに、前記ケースは、前記水密区画毎に設けられた複数の吐出口を有することにより、前記弁装置の動作に基づいて前記各吐出口を介した通水状態を切替可能に構成された水栓。
【符号の説明】
【0066】
60…シール部材、61…リング部、62…柱状部、S1…第1の周面要素、S2…第2の周面要素、70…水密区画。