IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7587931水性組成物及びその硬化物、止水剤原料セット、止水剤、並びに漏水部からの漏水を止水する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】水性組成物及びその硬化物、止水剤原料セット、止水剤、並びに漏水部からの漏水を止水する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20241114BHJP
   C09K 17/22 20060101ALI20241114BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241114BHJP
   C08F 299/02 20060101ALN20241114BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C08F290/06
C09K17/22 P
C09K3/10 E
C08F299/02
C09K103:00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020097167
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2020200455
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019107330
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392035064
【氏名又は名称】保土谷建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100201226
【弁理士】
【氏名又は名称】水木 佐綾子
(72)【発明者】
【氏名】樽本 直浩
(72)【発明者】
【氏名】生田目 渉
(72)【発明者】
【氏名】上西 将史
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-099911(JP,A)
【文献】特開2015-048386(JP,A)
【文献】特開2004-115646(JP,A)
【文献】特開平09-040837(JP,A)
【文献】特開昭53-019615(JP,A)
【文献】特開昭62-034977(JP,A)
【文献】特開昭61-231081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C09K 17/22
C09K 3/10
C08F 299/02
C09K 103/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される単官能(メタ)アクリレート、及び下記式(2)で表されるモノアリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性モノマーと、ジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物であって、
前記水性組成物中の固形分全量を基準として、前記重合性モノマーの含有量が25質量%未満であり、前記ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量が62質量%より大きく、
多官能(メタ)アクリレート、及び下記式(11)で表されるポリアルキレングリコールジアリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種を5~20質量%含有する、水性組成物。
【化1】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは、オキシアルキレン基を有する1価の基を表す。]
【化2】

[式中、Rは、オキシアルキレン基を有する1価の基を表す。]
【化3】

[式中、R13はアルキレン基を表し、wは2以上の整数を表す。]
【請求項2】
前記式(1)及び前記式(2)におけるオキシアルキレン基を有する1価の基が、下記式(3)で表される基である、請求項1に記載の水性組成物。
【化4】

[式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、mは2~30の整数を表し、nは1~50の整数を表し、*は結合手を表す。]
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水性組成物である第1の原料と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物である第2の原料と、を備える止水剤原料セット。
【請求項4】
過硫酸塩を含む組成物である第3の原料を更に備える、請求項3に記載の止水剤原料セット。
【請求項5】
前記第1の原料とは別個に、請求項1又は2に記載の水性組成物である第4の原料を更に備える、請求項3又は4に記載の止水剤原料セット。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体と、過硫酸塩と、を含有する混合物の硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物からなる止水剤。
【請求項8】
漏水部からの漏水を止水する方法であって、
請求項1又は2に記載の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物と、過硫酸塩を含む組成物と、を含有する混合物を得る混合工程と、
前記混合物を漏水部に注入する注入工程と、を備える、方法。
【請求項9】
前記注入工程の前に、前記漏水部に多孔質体を配置する工程を更に備え、
前記注入工程において、前記多孔質体に前記混合物を注入する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物及び硬化物、止水剤原料セット、止水剤、並びに漏水部からの漏水を止水する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物に発生するひび割れからの漏水、又はケーブルを収納したパイプの管路口からの漏水による浸水を止水する方法として、様々な高分子系止水剤を漏水部に注入してこれを硬化させる方法が知られている。
【0003】
一般に、コンクリート構造物からの漏水又は湧水を止水するためには、液状やスラリー状のセメント系止水剤を注入する。漏水部のクラック(ひび割れ)幅が大きく、漏水量が多い場合は、ケイ酸ソーダ(水ガラス)又はケイ酸ソーダとセメントとの混合物を漏水部に注入して止水する方法が行われている。また、クラック幅の小さな漏水部、又は漏水量が微量である箇所には、微粒子のセメントを注入する方法が一般的に用いられている。しかしながら、ケイ酸ソーダ又はケイ酸ソーダとセメントとの混合物を注入する方法では、ケイ酸ソーダのゲル化物が脆く、且つ収縮率が大きいため、止水後に再び漏水が生じやすい。一方、微粒子セメントを注入する方法では、短時間での固結が困難であること、微小なクラックに深く浸透しないこと、自己収縮によるクラック生成が頻繁に起こること、といった問題があり、解決が望まれていた。
【0004】
上記のセメント系止水剤の他には、ポリウレタン系の止水剤等も使用されている。ポリウレタン系の止水剤は、硬化後の止水剤のコンクリート、木材、金属等からなる漏水部の材料への接着力が強い。しかし、漏水部の材料温度や振動等の外的環境条件の変化に追随しきれず、接着部から新たなクラックが生じることがある。
【0005】
一方、上記の止水剤に代えて、(メタ)アクリル酸エステル系の止水剤が開発され、使用されている。(メタ)アクリル酸エステル系の止水剤として、特許文献1及び2には、アクリルモノマーとして水酸基末端型のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含有する止水剤が開示されている。また、特許文献3及び4には、アクリルモノマーとしてポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを主に含有する止水剤が開示されている。特許文献5には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩とを所定量含む水性組成物を用いた止水剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭58-206680号公報
【文献】特許第4916695号公報
【文献】特開昭61-221281号公報
【文献】特開2015-205981号公報
【文献】特開2019-14878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(メタ)アクリル酸エステル系止水剤は、漏水部に充填されることにより、漏水を抑制し、止水効果が発揮される。この際、可能な限り長期間にわたって止水効果を持続させるために、止水剤には優れた水膨張性(水を吸収して膨張する性質)が求められる。しかし、特許文献1~4に記載されているようなアクリル系止水剤においては、必ずしも十分な水膨張性が得られず、止水効果を持続させることが難しい。
【0008】
また、(メタ)アクリル酸エステル系止水剤が上水設備内で使用された場合、止水剤が上水に接触すると、止水剤より上水中に水溶性成分が浸出することがある。例えば、上水中に水溶性アミン類が浸出することにより、上水中のアミン濃度の増加が起こり、更に、残留塩素濃度が大幅に低減する場合がある。また、上水中に非反応性成分であるモノエチレングリコール類が浸出することにより、上水中の全有機炭素(TOC)濃度が増加する場合がある。特許文献1~4に記載されているアクリル系止水剤においては、アミン類、モノエチレングリコール類が含まれているため、上水中のアミン類の濃度上昇及び残留塩素の大幅な低減、並びに全有機炭素濃度の大幅な増加を抑制することが困難である。
【0009】
一方、特許文献5に記載の(メタ)アクリル酸エステル系止水剤は、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートと、ジ(メタ)アクリル酸塩とを所定量用いることにより、水膨張性に優れた止水剤を得ることができる。
【0010】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、止水剤に求められる水膨張性は120~180%が好ましく、止水剤の水膨張性が高すぎる場合、上水に接触する止水剤の面積が増大し、止水剤から上水中へ水溶性成分がより多く浸出してしまうことが明らかになった。そのため、特許文献5に記載の止水剤には、水溶性成分の浸出を抑制する点で未だ改善の余地がある。
【0011】
本発明の一側面は、水中に浸出する全有機炭素濃度を低減可能な止水剤を得るための水性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面は、下記式(1)で表される単官能(メタ)アクリレート、及び下記式(2)で表されるモノアリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性モノマーと、ジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物であって、水性組成物中の固形分全量を基準として、重合性モノマーの含有量が25質量%未満であり、ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量が62質量%より大きい、水性組成物を提供する。
【化1】

[式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは、オキシアルキレン基を有する1価の基、グリセリル基、又はグリシジル基を表す。]
【化2】

[式中、Rは、オキシアルキレン基を有する1価の基、グリセリル基、又はグリシジル基を表す。]
【0013】
式(1)及び式(2)におけるオキシアルキレン基を有する1価の基は、好ましくは、下記式(3)で表される基である。
【化3】

[式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、mは2~30の整数を表し、nは1~50の整数を表し、*は結合手を表す。]
【0014】
水性組成物は、好ましくは、多官能(メタ)アクリレートを更に含有する。
【0015】
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、好ましくは、水性組成物中の固形分全量を基準として20質量%以下である。
【0016】
水性組成物は、下記式(11)で表されるポリアルキレングリコールジアリルエーテルを更に含有してもよい。
【化4】

[式中、R13はアルキレン基を表し、wは2以上の整数を表す。]
【0017】
本発明の第2の側面は、上記の水性組成物である第1の原料と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物である第2の原料と、を備える止水剤原料セットを提供する。
【0018】
止水剤原料セットは、好ましくは、過硫酸塩を含む組成物である第3の原料を更に備える。
【0019】
止水剤原料セットは、好ましくは、第1の原料とは別個に、上記の水性組成物である第4の原料を更に備える。
【0020】
本発明の第3の側面は、上記の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体と、過硫酸塩と、を含有する混合物の硬化物を提供する。
【0021】
本発明の第4の側面は、上記の硬化物からなる止水剤を提供する。
【0022】
本発明の第5の側面は、漏水部からの漏水を止水する方法であって、上記の水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物と、過硫酸塩を含む組成物と、を含有する混合物を得る混合工程と、混合物を漏水部に注入する注入工程と、を備える、方法を提供する。
【0023】
上記の方法では、注入工程の前に、漏水部に多孔質体を配置する工程を更に備え、注入工程において、多孔質体に混合物を注入してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一側面によれば、水中に浸出する全有機炭素濃度を低減可能な止水剤を得るための水性組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本明細書における単官能(メタ)アクリレートとは、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物を意味し、多官能(メタ)アクリレートとは、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物を意味する。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートを、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味する。
【0027】
本発明の一実施形態における止水剤は、第1の原料と、第2の原料と、をそれぞれ別個に備える止水剤原料セットから調製され、これらの原料を含有する混合物の硬化物である。
【0028】
第1の原料は、一実施形態において、下記式(1)で表される単官能(メタ)アクリレート、及び下記式(2)で表されるモノアリルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性モノマー(以下、「重合性モノマーX」ともいう。)と、ジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物である。本明細書における水性組成物とは、水を含有する組成物を意味する。
【化5】

式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは、オキシアルキレン基を有する1価の基、グリセリル基、又はグリシジル基を表す。
【化6】

式中、Rは、オキシアルキレン基を有する1価の基、グリセリル基、又はグリシジル基を表す。
【0029】
及びRで表されるオキシアルキレン基を有する1価の基は、好ましくは、下記式(3)で表される基である。
【化7】

式中、Rは水素原子又はアルキル基を表し、mは2~30の整数を表し、nは1~50の整数を表し、*は結合手を表す。
【0030】
がアルキル基である場合、Rで表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上であり、また、好ましくは、50以下、30以下、25以下、20以下、10以下、5以下、又は3以下の整数である。Rで表されるアルキル基は、メチル基、又はエチル基であってもよい。
【0031】
mは、好ましくは2以上の整数であり、また、好ましくは、30以下、25以下、20以下、10以下、5以下、又は3以下の整数である。mは、特に好ましくは2である。同一分子内に含まれる複数の-(C2m-O)-においては、それぞれのmが異なる数であってもよい。
【0032】
nの数は、式(1)で表される単官能(メタ)アクリレート又は式(2)で表されるモノアリルエーテルにおける、オキシアルキレン部分の重合度を意味し、1~50の整数を表す。nは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上の整数であり、また、好ましくは、50以下、40以下、30以下、又は20以下の整数である。nが1以上の整数である場合、水性組成物の水溶性が更に向上し、止水剤を調製することが容易になり、更には、得られる硬化物の架橋密度を高めることにより硬化物の強度を向上させることができる。一方、nが50以下の整数であることにより、硬化物を調製した際に重合性二重結合間の距離が長くなりすぎないため、硬化物の強度低下を抑制することができる。
【0033】
及びRは、グリシジル基、すなわち、下記式(4)で表される基であってもよい。R及びRは、グリセリル基、すなわち、下記式(5)で表される基であってもよい。
【化8】

【化9】
【0034】
重合性モノマーXが式(1)で表される単官能(メタ)アクリレートである場合、単官能(メタ)アクリレートは、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(式(1)において、Rが式(3)で表される基であり、式(3)において、Rが水素原子であり、nが2以上である化合物)、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(式(1)において、Rが式(3)で表される基であり、式(3)において、Rがアルキル基であり、nが2以上である化合物)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(式(1)において、Rが式(3)で表される基であり、式(3)において、Rが水素原子であり、nが1である化合物)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(式(1)において、Rが式(3)で表される基であり、式(3)において、Rがアルキル基であり、nが1である化合物)、グリシジル(メタ)アクリレート(式(1)において、Rがグリシジル基である化合物)、グリセリン(メタ)アクリレート(式(1)において、Rがグリセリル基である化合物)であってよい。
【0035】
ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(式(3)において、mが2である化合物)、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(式(3)において、mが3である化合物)、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(式(3)において、mが2の基、及びmが3の基を有する化合物)、ポリエチレングリコール-ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート(式(3)において、mが2の基、及びmが4の基を有する化合物)、プロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート(式(3)において、mが3の基、及びmが4の基を有する化合物)等が挙げられる。
【0036】
アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(式(3)において、Rがメチル基であり、mが2である化合物)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(式(3)において、Rがメチル基であり、mが3である化合物)等が挙げられる。
【0037】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
単官能(メタ)アクリレートは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート又はアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートにおいては、重合させて得られる硬化物のエステル部分が加水分解されにくく、例えば、アルカリ性の条件下でもエステル部分が崩壊しにくい。そのため、得られる硬化物が十分な強度を保持することができる。
【0039】
アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、好ましくは、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0040】
上述した単官能(メタ)アクリレートは、市販品を用いることができる。ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの市販品としては、ブレンマー(登録商標、以下同様)PE-90、ブレンマーPE-200、ブレンマーPE-350、ブレンマーPE-350G、ブレンマーPP-1000、ブレンマーPP-500、ブレンマーPP-800、ブレンマー50PEP-300、ブレンマー70PEP-350B、ブレンマー55PET-800、ブレンマー10PPB-500B、ブレンマーAE-90U、ブレンマーAE-200、ブレンマーAE-400、ブレンマーAP-200、ブレンマーAP-400、ブレンマーAP-550、ブレンマーAP-800(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0041】
アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの市販品としては、NKエステルM-20G、NKエステルM-40G、NKエステルM-90G、NKエステルM-130G、NKエステルM-230G、NKエステルAM-30G、NKエステルAM-90G、NKエステルAM-130G、NKエステルAM-230G(以上、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0042】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの市販品としては、アクリックス(登録商標、以下同様)HEA(東亞合成(株)製)等が挙げられる。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの市販品としては、アクリックスC-1(東亞合成(株)製)が挙げられる。グリシジル(メタ)アクリレートの市販品としては、ブレンマーG、ブレンマーGH、ブレンマーGS(以上、日油(株)製)等が挙げられる。グリセリン(メタ)アクリレートの市販品としては、ブレンマーGLM、ブレンマーGLM-R(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0043】
重合性モノマーXが式(2)で表されるモノアリルエーテルである場合、モノアリルエーテルは、例えば、ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(2)において、Rが式(3)で表される基であり、式(3)において、Rが水素原子である化合物)、アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(式(2)において、Rが式(3)で表される基であり、式(3)において、Rがアルキル基である化合物)、アリルグリシジルエーテル(式(2)において、Rがグリシジル基である化合物)、グリセリンモノアリルエーテル(式(2)において、Rがグリセリル基である化合物)であってよい。
【0044】
ポリアルキレングリコールモノアリルエーテルとしては、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル(式(3)において、mが2である化合物)、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(式(3)において、mが3である化合物)、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(式(3)において、mが2の基、及びmが3の基を有する化合物)等が挙げられる。
【0045】
アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルとしては、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル(式(3)において、Rがメチル基であり、mが2である化合物)、ブトキシ-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノアリルエーテル(式(3)において、Rがブチル基であり、mが2の基及びmが3の基を有する化合物)等が挙げられる。
【0046】
上述したモノアリルエーテルは、市販品を用いることができる。ポリアルキレングリコールモノアリルエーテルの市販品としては、ユニオックス(登録商標、以下同様)PKA-5001、ユニオックスPKA-5002、ユニオックスPKA-5003、ユニオックスPKA-5004、ユニオックスPKA-5005、ユニセーフPKA-5011、ユニセーフPKA-5012、ユニルーブ(登録商標)PKA-5013、ユニセーフPKA-5014TF(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0047】
アルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルの市販品としては、ユニオックスPKA-5006、ユニオックスPKA-5007、ユニオックスPKA-5008、ユニオックスPKA-5009、ユニオックスPKA-5010、ユニセーフPKA-5015、ユニセーフPKA-5016、ユニセーフPKA-5017(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0048】
アリルグリシジルエーテルの市販品としては、エピオール(登録商標)A(日油(株)製)等が挙げられる。グリセリンモノアリルエーテルの市販品としては、ネオアリル(登録商標)E-10((株)大阪ソーダ製)等が挙げられる。
【0049】
重合性モノマーXの含有量は、硬化物から水中に浸出する全有機炭素濃度を低減する観点、及び硬化物の水膨張性を調整する観点から、水性組成物中の固形分全量を基準として、25質量%未満である。重合性モノマーXの含有量は、水性組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは、22質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下である。重合性モノマーXの含有量は、水性組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、又は2.5質量%以上である。なお、水性組成物中の固形分とは、水性組成物中に含まれる水以外の成分を意味し、以下において同様である。
【0050】
重合性モノマーXの含有量は、水性組成物全量を基準として、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。重合性モノマーXの含有量は、水性組成物全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は0.7質量%以上であってよい。
【0051】
重合性モノマーXが式(1)で表される単官能(メタ)アクリレートである場合、単官能(メタ)アクリレートは、非反応性不純物として、ポリアルキレングリコールが含有されていることがある。これらの不純物は非反応性であるため、これらを用いた硬化物を水中に浸漬させた場合、水中に水溶性、且つ、非反応性の有機物が浸出し、水中に溶解する有機物濃度を上昇させる。そのため、硬化物中から水中への有機物の浸出を考慮した場合、上記式(1)で示される単官能(メタ)アクリレートは、非反応性不純物が少ない方が好ましい。単官能(メタ)アクリレートにおける非反応性不純物(ポリアルキレングリコール)の含有量(質量比)は、好ましくは、単官能(メタ)アクリレート全量基準で、5000ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下、更に好ましくは500ppm以下である。
【0052】
ジ(メタ)アクリル酸塩は、水性組成物の硬化物に弾力性を与える。ジ(メタ)アクリル酸塩としては、例えば、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛、アルミニウム等の金属塩などが挙げられる。ジ(メタ)アクリル酸塩は、硬化物の弾力性及び水膨張性を高める観点から、好ましくは、マグネシウム塩、カルシウム塩及び亜鉛塩である。
【0053】
ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、硬化物から水中に浸出する全有機炭素濃度を低減する観点、及び硬化物の弾力性を高める観点から、水性組成物中の固形分全量を基準として、62質量%より大きい。ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、水性組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは、65質量%以上、67質量%以上、70質量%以上、72質量%以上、74質量%以上、76質量%以上、78質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、又は87質量%以上である。ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、水性組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは、99.9質量%以下、99.5質量%以下、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、又は90質量%以下である。
【0054】
ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、水性組成物全量を基準として、60質量%以上、62質量%以上、65質量%以上、67質量%以上、70質量%以上、72質量%以上、74質量%以上、75質量%以上、又は78質量%以上であってよい。ジ(メタ)アクリル酸塩の含有量は、水性組成物全量を基準として、99質量%以下、97質量%以下、96質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、87質量%以下、85質量%以下、83質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0055】
第1の原料である水性組成物は、多官能(メタ)アクリレートを更に含有してもよい。多官能(メタ)アクリレートは、例えば、ジ(メタ)アクリレート(二官能(メタ)アクリレート)、又はトリ(メタ)アクリレート(三官能(メタ)アクリレート)であってよい。多官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0056】
ジ(メタ)アクリレートとは、好ましくは、下記式(6)で表されるジ(メタ)アクリレートである。
【化10】

式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Rは2価の有機基を表す。
【0057】
で表される2価の有機基としては、下記式(7)~(9)で表される基が挙げられる。
【化11】

式中、pは2~30の整数を表し、qは2~50の整数を表す。
【化12】

【化13】

式中、R及びRはそれぞれアルキレン基を表し、s及びtは、それぞれ独立に2以上の整数を表す。
【0058】
式(7)におけるpは、2以上の整数であり、また、好ましくは、30以下、25以下、20以下、10以下、5以下、又は3以下の整数である。pは、特に好ましくは2である。
【0059】
式(7)におけるqは、2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上の整数であり、また、好ましくは、50以下、40以下、30以下、20以下、又は10以下の整数である。
【0060】
式(9)におけるアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキレン基の炭素数は、2~30、2~20、又は2~10であってよい。
【0061】
式(9)におけるs及びtは、それぞれ独立に2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上の整数であり、また、好ましくは、50以下、40以下、30以下、20以下、又は10以下の整数である。
【0062】
式(6)で表されるジ(メタ)アクリレートは、好ましくは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(式(6)におけるRが式(7)で表される基であり、式(7)におけるpが2である化合物)である。
【0063】
トリ(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(10)で表されるトリ(メタ)アクリレート(アルコキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート)であってよい。
【化14】

式中、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、x、y、及びzは、それぞれ独立に正の整数を表す。
【0064】
式(10)において、R10、R11、及びR12で表されるアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキレン基の炭素数は、2~30、2~20、又は2~10であってよい。R10、R11、及びR12で表されるアルキレン基は、メチレン基又はプロピレン基であってもよい。
【0065】
式(10)において、x、y、及びzの合計は、好ましくは3~30であり、より好ましくは5~28であり、更に好ましくは8~25である。
【0066】
上述した多官能(メタ)アクリレートは、市販品を用いることもできる。ジ(メタ)アクリレートの市販品としては、ブレンマーPDE-100、ブレンマーPDE-150、ブレンマーPDE-200、ブレンマーPDE-400、ブレンマーPDE-600、ブレンマーPDP-400N、ブレンマーPDT-650、ブレンマーADE-200、ブレンマーADE-300、ブレンマーADE-400A、ブレンマーADP-400、ブレンマーADT-250、ブレンマーGMR-R、ブレンマーGMR-M、ブレンマーGAM、ブレンマーGAM-R、ブレンマーPDBE-200A、ブレンマーPDBE-250、ブレンマーPDBE-450A、ブレンマーPDBE-1300(以上、日油(株)製)、NKエステル4G、NKエステル9G、NKエステル14G、NKエステル23G、NKエステルA-200、NKエステルA-400、NKエステルA-600、NKエステルA-1000、NKエステルA-BPE-30、NKエステルBPE-1300N(以上、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0067】
トリ(メタ)アクリレートの市販品としては、NKエステルA-GLY-9E、NKエステルA-GLY-20E(以上、新中村化学(株)製)等が挙げられる。
【0068】
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、硬化物の分子量分布を高める観点から、水性組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上である。多官能(メタ)アクリレートの含有量は、水性組成物中の固形分全量を基準として、好ましくは、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下である。
【0069】
多官能(メタ)アクリレートの含有量は、水性組成物全量を基準として、好ましくは、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上である。多官能(メタ)アクリレート、又は式(2)で表されるモノアリルエーテル以外のアリルエーテルの含有量は、水性組成物全量を基準として、好ましくは、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下である。
【0070】
第1の原料である水性組成物は、上述した式(2)で表されるモノアリルエーテル以外の他のアリルエーテルを更に含有してもよい。他のアリルエーテルは、例えば、下記式(11)で表されるポリアルキレングリコールジアリルエーテルであってよい。
【化15】

式中、R13はアルキレン基を表し、wは2以上の整数を表す。
【0071】
式(11)において、R13で表されるアルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキレン基の炭素数は、2~30、2~20、又は2~10であってよい。R13で表されるアルキレン基は、メチレン基又はプロピレン基であってもよい。
【0072】
式(11)におけるwは、2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上の整数であり、また、好ましくは、50以下、40以下、30以下、20以下、又は10以下の整数である。
【0073】
ポリアルキレングリコールジアリルエーテルは、市販品を用いてもよい。ポリアルキレングリコールジアリルエーテルの市販品としては、ユニセーフPKA-5018、ユニオックスAA-480R、ユニオックスAA-800(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0074】
式(2)で表されるモノアリルエーテル以外の他のアリルエーテルの含有量は、水性組成物中の固形分全量を基準として、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよく、22質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0075】
式(2)で表されるモノアリルエーテル以外の他のアリルエーテルの含有量は、水性組成物全量を基準として、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってよく、20質量%以下、18質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよい。
【0076】
第1の原料である水性組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0077】
水性組成物における固形分の含有量は、水性組成物全量を基準として、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは17質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、37質量%以下、又は35質量%以下である。
【0078】
水性組成物のpHは、硬化物を得るための重合反応を早める観点から、好ましくは7以下であり、7になるべく近い値である。水性組成物のpHは、好ましくは、5.0以上であり、より好ましくは5.2以上であり、更に好ましくは5.4以上であり、また、好ましくは7以下であり、より好ましくは6.9以下であり、更に好ましくは6.8以下である。
【0079】
第2の原料は、一実施形態において、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物である。アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム等のアスコルビン酸の塩、アスコルビン酸リン酸エステル等のアスコルビン酸の無機酸エステル、アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸の配糖体などが挙げられる。本明細書におけるアスコルビン酸又はその誘導体には、L-アスコルビン酸の異性体である、エリソルビン酸、及びその誘導体も含まれる。エリソルビン酸の誘導体としては、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム等のエリソルビン酸の塩、エリソルビン酸リン酸エステル等のエリソルビン酸の無機酸エステル、エリソルビン酸-2-グルコシド等のエリソルビン酸の配糖体などが挙げられる。
【0080】
第2の原料は、粉末等の固形状で原料セットに備えられてよく、水溶液として原料セットに備えられてもよい。第2の原料が粉末等の固形状の原料セットの場合、第1の原料に粉末を溶解させてもよく、使用前に水溶液にした後に第1の原料と混合してもよい。第2の原料が水溶液である場合、アスコルビン酸又はその誘導体の含有量は、水溶液全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下である。
【0081】
第2の原料は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸塩、硫酸第一鉄等が挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0082】
止水剤原料セットは、第3の原料として、第1の原料及び第2の原料とは別個に、過硫酸塩を含む組成物を更に備えてもよい。過硫酸塩における塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等であってよく、好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0083】
第3の原料は、粉末等の固形状で原料セットに備えられてよく、水溶液として原料セットに備えられてもよい。第3の原料を水に溶解して水溶液として用いる場合、又は、第3の原料が水溶液である場合、過硫酸塩の含有量は、水溶液全量を基準として、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、更に好ましくは0.4質量%以上であり、また、好ましくは、40質量%以下であり、35質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下である。
【0084】
第3の原料は、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、過塩素酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0085】
止水剤原料セットは、第4の原料として、第1の原料、第2の原料及び第3の原料とは別個に、上述した重合性モノマーXと、上述したジ(メタ)アクリル酸塩と、を含有する水性組成物を更に備えてもよい。
【0086】
第4の原料は、上述した多官能(メタ)アクリレート、又は式(2)で表されるモノアリルエーテル以外の他のアリルエーテルを更に含有してよく、必要に応じて、その他の添加剤を更に含有してもよい。その他の添加剤は、上述した第1の原料に用いられるものと同様であってよい。第4の原料は、第1の原料と同一の組成であっても異なる組成であってもよい。
【0087】
本実施形態に係る止水剤原料セットは、第1の原料及び第2の原料、更には、第3の原料及び第4の原料をそれぞれ別々に保管することができるため、長期間の保存を可能とすることができる。
【0088】
止水剤原料セットは、上述した原料の他に、その他の原料として、腐食抑制剤、カチオン性電解質モノマー、セメント類、焼却灰等を更に備えてもよい。これらの原料は、第1の原料~第4の原料とは別個の原料として止水剤原料セットに備えられてもよく、第1の原料~第4の原料のいずれかに含有された状態であってもよい。
【0089】
腐食抑制剤は、カルボン酸及びその塩、リン酸及びその塩、リン酸エステル、亜硝酸及びその塩、アミン及びその塩からなる群より選ばれた1種類以上であってよい。腐食抑制剤を添加することにより、止水剤が、金属、特に汎用される鉄系材料である鉄鋼等に対して、強い腐食抑制効果を示す。
【0090】
カチオン性電解質モノマーは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその塩及び第四級化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその塩及び第四級化物、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとその塩及び第四級化物等であってよい。これらの塩としては、塩酸、硫酸等の無機塩との塩、ジ(メタ)アクリル酸との塩が用いられる。第四級化物としては、メチルクロライド、ジメチル硫酸等による第四級化物、あるいはそれらの複合塩が用いられる。カチオン性電解質モノマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0091】
セメント類は、各種ポルトラントセメント類、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、ジェットセメント、アルミナセメント、スラグセメント等であってよい。焼却灰は、フライアッシュ、シリカヒューム、高炉スラグ、石膏、下水処理汚泥等であってよい。セメント類及び焼却灰は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0092】
次に、一実施形態に係る止水剤について説明する。一実施形態に係る止水剤は、上述した重合性モノマーXと、ジ(メタ)アクリル酸塩とを含有する水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体と、過硫酸塩と、を含有する混合物の硬化物からなる。硬化物は、重合性モノマーXに由来する構造単位と、ジ(メタ)アクリル酸塩に由来する構造単位と、アスコルビン酸又はその誘導体に由来する構造単位とを含む。硬化物は、多官能(メタ)アクリレートに由来する構造単位を更に含んでいてよい。過硫酸塩は、重合性モノマーXの重合を開始させる重合開始剤としての役割をもっており、アスコルビン酸又はその誘導体は、重合性モノマーXの重合を促進させる重合促進剤としての役割をもっている。この硬化物は、上述した原料セットの各原料を混合することにより得られる。
【0093】
硬化物の原料となる水性組成物、アスコルビン酸又はその誘導体、及び過硫酸塩は、上述した第1の原料及び第4の原料、第2の原料、並びに第3の原料として使用できるものと同様であってよい。
【0094】
硬化物において、重合性モノマーXに由来する構造単位の含有量は、硬化物中の固形分全量を基準として、25質量%以下、23質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下である。重合性モノマーXに由来する構造単位の含有量は、硬化物中の固形分全量を基準として、好ましくは、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、又は2.5質量%以上である。
【0095】
硬化物において、ジ(メタ)アクリル酸塩に由来する構造単位の含有量は、硬化物中の固形分全量を基準として、60質量%以上、65質量%以上、67質量%以上、70質量%以上、72質量%以上、74質量%以上、76質量%以上、78質量%以上、80質量%以上、又は83質量%以上である。ジ(メタ)アクリル酸塩に由来する構造単位の含有量は、硬化物中の固形分全量を基準として、99.9質量%以下、99.5質量%以下、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下、87質量%以下、又は85質量%以下である。
【0096】
重合性モノマーXに由来する構造単位と、ジ(メタ)アクリル酸塩に由来する構造単位との含有量の合計は、硬化物の強度と耐久性を高める観点から、硬化物中の固形分全量を基準として、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは82質量%以上であり、更に好ましくは85質量%以上である。重合性モノマーXと、ジ(メタ)アクリル酸塩との含有量の合計は、経済的観点から、硬化物全量を基準として、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは97質量%以下であり、更に好ましくは95質量%以下である。
【0097】
硬化物において、アスコルビン酸又はその誘導体に由来する構造単位の含有量は、硬化物中の固形分全量を基準として、好ましくは、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、又は0.07質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは17質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下である。
【0098】
硬化物が上述した多官能(メタ)アクリレートを更に含有する場合、多官能(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、硬化物の固形分全量を基準として、好ましくは、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、又は3質量%以上である。多官能(メタ)アクリレートの含有量は、硬化物の固形分全量を基準として、好ましくは、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、又は7質量%以下である。
【0099】
硬化物は、水分を含有するゲル状の硬化物である。硬化物における固形分の含有量は、硬化物の強度を高める観点から、硬化物全量を基準として、好ましくは、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、又は35質量%以上である。硬化物における固形分の含有量は、硬化物の原料を溶解しやすくし、硬化物を容易に調製する観点から、硬化物全量を基準として、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
【0100】
硬化物中における水分の含有量は、硬化物全量を基準として、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上であってよく、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよい。
【0101】
本実施形態に係る止水剤によれば、止水時に水又は上水へ浸出する有機物量(全有機炭素濃度)を、上水施設への止水材として使用が可能な濃度まで低減出来るため、優れた安全性が得られる。例えば、本止水剤は、日本水道協会で制定された規格である、水道用資機材の浸出試験中の試験項目において、コンディショニング処理(硬化物からの浸出物を安定させるための操作)をしなくても、浸出後の水中に含まれる有機物(全有機炭素(TOC)の濃度)を3.0mg/L未満に低減できる。
【0102】
本実施形態に係る止水剤によれば、止水時に水又は上水中の残留塩素濃度を低減させにくいため、水中の塩素含有量の基準を下回らせることなく使用することができる。例えば、止水剤は、日本水道協会で制定された規格である、水道用資機材の浸出試験の試験項目において、コンディショニング処理をしなくても、浸出後の水中における残留塩素の減量を0.7mg/L未満に調整することができる。
【0103】
本実施形態に係る止水剤によれば、止水時に水又は上水へ浸出するアミン量を、上水施設への止水材として使用が可能な濃度まで低減出来るため、優れた安全性が得られる。例えば、止水剤は、日本水道協会で制定された規格である、水道用資機材の浸出試験中の試験項目において、コンディショニング処理(硬化物からの浸出物を安定させるための操作)をしなくても、高速液体クロマトグラフ法(検出下限値0.002ppm)により測定される、浸出後の水中に含まれるアミン類の濃度を0.01mg/L未満に低減できる。
【0104】
次に、上述した硬化物からなる止水剤を用いた、漏水部からの漏水を止水する方法(以下、単に「止水方法」と呼ぶことがある。)について説明する。一実施形態に係る止水方法は、上述した水性組成物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物と、過硫酸塩を含む組成物と、を含有する混合物を得る混合工程と、混合物を漏水部に注入する注入工程と、を備える。
【0105】
混合工程は、一実施形態において、以下の方法により行われる。まず、上述した水性組成物(第1の原料)と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む組成物(第2の原料)と、が混合された混合物(A液)と、過硫酸塩を含む組成物(第3の原料)と、第1の原料とは別個の、上述した水性組成物(第4の原料)が混合された混合物(B液)と、をそれぞれ得る。そして、A液とB液とを混合して、上記の原料が混合された混合物を得る。A液とB液とを混合する方法としては、例えば、A液とB液をY字管や二重管等に送液し、Y字管の合流部及び二重管の先端で混合すればよい。A液とB液は、好ましくはA液:B液=1:1(体積比)で混合される。
【0106】
注入工程においては、混合工程によって得られた混合物を、漏水部に注入する。注入された混合物が硬化することにより、漏水部における漏水が止水される。混合物の注入の際、例えば、コンクリート壁面に漏水部が存在する場合には、高圧で注入する必要があるため、エアーピストン方式のプランジャーポンプ等が用いられる。一方、混合物の注入は、例えば、ケーブル管路口に漏水部が存在する場合には、低圧で注入することができるため、低圧に調圧したエアーコンプレッサー又は圧縮ガスボンベ等を用いて、容器に入れた液を圧送することにより行われる。
【0107】
止水方法は、他の実施形態において、注入工程の前に、漏水部に多孔質体を配置する工程を更に備えてもよい。この場合、注入工程においては、多孔質体に混合物を注入し、含浸させる。本実施形態に係る止水方法は、ケーブル管路口における漏水部に適している。混合物が含浸された多孔質体は、止水板等の止水用シール材としても用いられる。
【0108】
多孔質体は、好ましくは、機械的強度、伸縮性、耐候性に優れ、また、止水剤(混合物)の浸透性にも優れるものであり、連続気泡構造の発泡体、又は、繊維が絡み合って出来た繊維塊等であってよい。多孔質体は、好ましくはウレタン発泡体である。多孔質体の形状は特に制限されないが、ケーブル管路口における漏水部に配置する場合は、好ましくは円柱状であり、コンクリート構造物と構造物との間の目地部における漏水部に配置する場合は、好ましくはシート状である。
【0109】
本実施形態において、多孔質体は2個以上用いられてもよい。例えば、ケーブル管路口における漏水部において、ケーブルが単一ケーブルである場合は、止水方法は、ケーブル形状に合わせた穴あけ加工等を行った円柱状の多孔質体を漏水部に配置し、この多孔質体に混合物を注入する方法であってよい。ケーブルが多条ケーブルである場合は、止水方法は、多孔質体を2個以上使用し、それらの隙間に混合物を注入する方法であってよく、これにより、方法が簡便で止水効果がより優れるようになる。
【0110】
これらの実施形態に係る止水方法は、コンクリート構造物における漏水、ケーブル管路口の漏水等を容易に止水することを可能とする。これらの実施形態の方法によって止水した箇所は、耐薬品性、耐水圧性、耐凍結融解性、耐乾燥収縮性等に優れる。
【実施例
【0111】
以下に実施例、比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
<第1の原料の調製>
実施例及び比較例においては、表1~表3に示す組成に基づき、以下のものを用いて水性組成物を調製した。これらをそれぞれ各実施例における第1の原料とした。なお、表1~表3において、A-1の含有量は、A-1a、A-1b、A-1c、A-1d、及びA-1eの合計の含有量を意味し、A-2の含有量は、A-2a、A-2b、及びA-2cの合計の含有量を意味し、A-3の含有量は、A-3a、A-3b、A-3c、A-3d、A-3e、A-3f、A-3g、及びA-3hの合計の含有量を意味する。また、表1~表3の各数値においては小数点第三位を四捨五入して表示している。
【0113】
<式(1)又は式(2)で表される重合性モノマー>
(A-1a):下記式(1A)で表されるメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n≒13、製品名:NKエステルM-130G、新中村化学工業(株)製)
【化16】

(A-1b):下記式(1B)で表されるメトキシポリエチレングリコールアクリレート(n≒13、製品名:NKエステルAM-130G、新中村化学工業(株)製)
【化17】

(A-1c):上記式(1C)で表されるメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n≒23、製品名:NKエステルM-230G、新中村化学工業(株)製)
【化18】

(A-1d):下記式(1D)で表されるヒドロキシポリエチレングリコールメタクリレート(n≒13、製品名:ブレンマーPE-350、日油(株)製)
【化19】

(A-1e):下記式(2A)で表されるヒドロキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(n≒13、製品名:ユニオックスPKA-5001、日油(株)製)
【化20】
【0114】
<ジ(メタ)アクリル酸塩>
(A-2a):ジアクリル酸マグネシウム塩(製品名:MA-35、浅田化学工業(株)製)の35質量%水溶液
(A-2b):ジアクリル酸カルシウム塩(製品名:CA-25、浅田化学工業(株)製)の25質量%水溶液
(A-2c):ジアクリル酸亜鉛塩(製品名:ZA-30、浅田化学工業(株)製)の30質量%水溶液
【0115】
<多官能(メタ)アクリレート又はポリアルキレングリコールジアリルエーテル>
(A-3a):下記式(6A)で表されるポリエチレングリコールジアクリレート(q≒13、製品名:NKエステルA-600、新中村化学工業(株)製)
【化21】

(A-3b):下記式(6B)で表されるポリエチレングリコールジアクリレート(q≒9、製品名:NKエステルA-400、新中村化学工業(株)製)
【化22】

(A-3c):下記式(6C)で表されるポリエチレングリコールジアクリレート(q≒23、製品名:NKエステルA-1000、新中村化学工業(株)製)
【化23】
【0116】
(A-3d):下記式(6D)で表されるポリエチレングリコールジメタクリレート(q≒14、製品名:NKエステル14G、新中村化学工業(株)製)
【化24】

(A-3e):下記式(6E)で表されるポリエチレングリコールジメタクリレート(q≒23、製品名:NKエステル23G、新中村化学工業(株)製)
【化25】

(A-3f):下記式(6F)で表されるエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(s+t≒30、製品名:NKエステルBPE-1300N、新中村化学工業(株)製)
【化26】
【0117】
(A-3g):下記式(10A)で表されるエトキシグリセリントリアクリレート(x+y+z≒20、製品名:NKエステルA-GLY-20E、新中村化学工業(株)製)
【化27】

(A-3h):下記式(11A)で表されるポリエチレングリコールジアリルエーテル(w≒10、製品名:ユニオックスAA-480R、新中村化学工業(株)製)
【化28】
【0118】
(A-4):水酸化ナトリウム(和光純薬株式会社製)の4質量%水溶液
(A-5):水道水
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
<硬化物(止水剤)の調製>
第1の原料106gと、第2の原料として、第2の原料全量基準で表4及び表5に記載の固形分含有量にした水溶液10gとを混合したA液と、水10gを用いて、表4及び表5に記載の固形分含有量に調整した水溶液である第3の原料と、第4の原料106gとを混合したB液と、を調製した。A液とB液との混合物を直ちにプラスチック容器内に流し込み、撹拌混合することによって硬化物を得た。第1の原料としては上述した水性組成物を用い、第2の原料及び第3の原料としては、それぞれ下記に示すものから選択して用いた。第4の原料としては、上記において調製した水性組成物のいずれかを使用した。
【0123】
[第2の原料]
(2-1):L-アスコルビン酸水溶液
(2-2):L-アスコルビン酸ナトリウム水溶液
(2-3):エリソルビン酸水溶液
(2-4):エリソルビン酸ナトリウム水溶液
[第3の原料]
(3-1):過硫酸アンモニウム水溶液
(3-2):過硫酸ナトリウム水溶液
(3-3):過硫酸カリウム水溶液
【0124】
実施例及び比較例における、第1の原料~第4の原料の組み合わせを表4及び表5に示す。第1の原料、及び第4の原料については、上述した表1~表3における配合番号によりその種類を表す。第2の原料及び第3の原料については、第2の原料全量基準、又は第3の原料全量基準での固形分含有量を括弧書きで表4及び表5に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
<評価>
実施例及び比較例の硬化物について、水中へ浸漬された後の水中の全有機炭素(TOC)濃度、アミン量、及び残留塩素の低減量を測定した。全有機炭素濃度は、全有機炭素測定法(検出下限値0.3ppm)により測定し、アミン量は吸光光度法により測定し、また、残留塩素低減量は、ジエチル-p-フェニレンジアミン法により測定した。結果を表6、表7及び表8に示す。また、実施例及び比較例の硬化物の固形分含有量、及び水分含有量(小数点第三位を四捨五入)についても、表6~表8に併せて示す。
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】