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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】縫製装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
D05B19/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020136468
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032580
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】福田 悠二
(72)【発明者】
【氏名】安西 哲也
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-248285(JP,A)
【文献】特開平08-024459(JP,A)
【文献】特表平05-500318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製パターンに従って縫製を行う縫製部と、
前記縫製パターンについて縫製に関する設定である縫製条件を設定する入力部と、
前記縫製パターンと縫製条件とが定められた縫製パターンデータに基づいて縫製が行われるように前記縫製部の動作制御を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、縫製が行われた前記縫製パターンデータに対して縫製条件が変更された場合に、縫製が行われた前記縫製パターンデータを履歴として不揮発性の記憶手段に記憶し、
前記入力部は、履歴として記憶された複数の前記縫製パターンデータを一覧表示すると共に、
前記制御装置は、一覧表示された複数の前記縫製パターンデータの中から選択されたものについて、前記履歴として記憶された前記縫製パターンデータを読み出して縫製を実行可能とすることを特徴とする縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製パターンデータに従って縫製を行う縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の縫製装置は、特定の縫い目や模様縫い等を行うための縫製パターンデータを制御装置が記憶し、当該記憶装置に接続されたタッチパネル等の入力装置から、縫製パターンデータの選択やパラメータの変更等の編集作業が行われていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-290083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の縫製装置では、縫製パターンデータについて各種の縫製条件の設定を行った場合に、縫製パターンデータについて行われた各種の縫製条件が記録されず、次回の縫製の際に再現するには、また、縫製条件の設定をし直さねばならなかった。
【0005】
本発明は、縫製パターンについて設定された縫製条件も含めて再現可能な縫製装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、縫製装置において、縫製パターンに従って縫製を行う縫製部と、前記縫製パターンについて縫製に関する設定である縫製条件を設定する入力部と、前記縫製パターンと縫製条件とが定められた縫製パターンデータに基づいて縫製が行われるように前記縫製部の動作制御を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、縫製が行われた前記縫製パターンデータを履歴として不揮発性の記憶手段に記憶すると共に、当該履歴として記憶された前記縫製パターンデータを読み出して縫製を実行可能とすることを特徴とする。
【0007】
また、前記制御装置は、縫製が行われた前記縫製パターンデータに対して縫製条件が変更された場合に、縫製が行われた前記縫製パターンデータを履歴として前記記憶手段に記憶し
前記入力部は、履歴として記憶された複数の前記縫製パターンデータを一覧表示すると共に、
前記制御装置は、一覧表示された複数の前記縫製パターンデータの中から選択されたものについて、前記履歴として記憶された前記縫製パターンデータを読み出して縫製を実行可能としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、縫製パターンについて設定された縫製条件も含めて容易に再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】発明の実施形態であるミシンの正面図である。
図2】ミシンの左側面図である。
図3】ミシンの制御系を示す機能ブロック図である。
図4】表示入力装置の表示部に表示される入力画面の表示例を示す説明図である。
図5】入力画面の複数の表示エリアの区画を仮想線で示した説明図である。
図6】ミシンアーム部の上蓋に設けられた縫製パターンの一覧表の正面図である。
図7】表示入力装置の表示部に表示される履歴画面の表示例を示す説明図である。
図8】履歴記憶処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[発明の実施形態の概略]
以下、図面を参照して、本発明にかかる縫製装置について説明する。図1は縫製装置としてのミシン10の正面図、図2は左側面図、図3は制御系を示す機能ブロック図である。
【0011】
ミシン10は、ミシンモーター11を駆動源として縫い針2を保持する針棒に上下動動作を付与する針上下動機構と、ミシンモーター11の動力を利用して針板の下から送り歯によって被縫製物を送る下送り機構と、ミシンモーター11の動力を利用して被縫製物の上から接する上送り4により被縫製物を送る上送り機構と、釜機構と、針板上の被縫製物を上から押さえる布押さえ3と、針棒を布送り方向に直交する方向に任意に移動させる針振り機構と、縫い針2に通す上糸に糸張力を付与する糸調子装置と、上糸の引き上げを行う天秤と、上糸及び下糸の縫い終わり端部を切断する糸切り装置と、縫製に関する各種の情報を表示し、各種の設定の入力を受け付ける入力部としての表示入力装置80と、ミシン10の各構成の動作制御を行う制御装置90と、ミシン10の各構成を格納又は支持するミシンフレーム20とを備えている。
以下の説明において、上記針上下動機構、下送り機構、上送り機構、布押さえ3、釜機構、針振り機構、糸調子装置、天秤、糸切り装置の構成を総称して「縫製部」とする。
【0012】
なお、以下の説明では、下送り機構が被縫製物を送る方向に平行な水平方向をX軸方向とし、被縫製物の送り方向下流側を「前」、送り方向上流側を「後」とする。また、水平であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、前方を向いて左手側を「左」、右手側を「右」とする。また、X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、その一方を「上」、他方を「下」とする。
【0013】
ミシンフレーム20は、Y軸方向に沿って延在するミシンベッド部21と、ミシンベッド部21の右端部から立ち上げられた立胴部22と、立胴部22の上端部からY軸方向に沿って左方に延出されたミシンアーム部23とを備えている。
縫い針2を保持する針棒、布押さえ3及び上送り4は、ミシンアーム部23の左端下部に支持されている。
【0014】
立胴部22の前面側には、表示入力装置80の矩形の表示画面が配置されている。立胴部22の前面及び当該前面と面一となる表示入力装置80の表示画面は、X-Z平面の上側と左側を幾分後方に傾斜させた傾斜面からなる。
表示入力装置80の表示画面は、上記傾斜により、ミシン10の針落ち位置に対して後方から向かい合って作業を行うミシンの操作者から見えやすくなっている。
【0015】
ミシンベッド部21は、上面がX-Y平面に沿った平滑面となっており、縫い針2の針落ち位置に図示しない針板がミシンベッド部21の上面と面一で配置されている。
【0016】
針上下動機構は、周知の機構と同じであるため詳細な説明は省略する。針上下動機構は、ミシンに内蔵されたミシンモーター11を駆動源として、クランク機構により針棒を上下動させることができる。
【0017】
針振り機構は、周知の機構と同じであるため詳細な説明は省略する。針振り機構は、針棒を上下動可能に支持する支持枠と、支持枠を介して針棒の先端部をY軸方向に沿って任意に移動させる針振りモーター15を備えている。
【0018】
釜機構は、周知の機構と同じであるため詳細な説明は省略する。釜機構は、ミシンモーター11から動力を得て回転する釜を針板の下側に有し、下降する縫い針2から上糸のループを捕捉して下糸を絡め、被縫製物に縫い目を形成する。
天秤は、ミシンモーター11から動力を得て針落ちと同周期で上下動を行う。天秤には、縫い針に向かう上糸が掛け渡されており、釜が上糸と下糸の縫い目を形成したときに上糸を引き上げて縫い目を締結する。
【0019】
下送り機構は、周知の機構と同じであるため詳細な説明は省略する。下送り機構は、針板の開口部から歯先を出没させる送り歯を有し、ミシンモーター11からX軸方向の往復動作とZ軸方向の往復動作を取り出して送り歯に付与する。これにより、送り歯は、長手方向がX軸方向に沿ったY軸回りの長円運動を行う。そして、送り歯は、長円運動の軌跡の上部を通過する際に、歯先が針板の開口部から上方に突出しながら前方に移動を行い、針板上の被縫製物を前方に送る。
また、下送り機構は、ミシンモーター11から伝わるX軸方向の往復動作のストローク幅を調節する下送り調節モーター12を備えており、送り歯による被縫製物の送り量を任意に調節することができる。
【0020】
上送り機構は、周知の機構と同じであるため詳細な説明は省略する。上送り機構は、針板上方から針落ち位置にある被縫製物に上から当接して送り動作を行う上送りを有し、ミシンモーター11からX軸方向の往復動作とZ軸方向の往復動作を取り出して上送りに付与する。これにより、上送りは、長手方向がX軸方向に沿ったY軸回りの長円運動を行う。そして、上送りは、長円運動の軌跡の下部を通過する際に、先端部が針板上面に沿って前方に移動を行い、針板上の被縫製物を前方に送る。
また、上送り機構は、ミシンモーター11から伝わるX軸方向の往復動作のストローク幅を調節する上送り調節モーター13を備えており、送り歯による被縫製物の送り量を任意に調節することができる。
また、上送りは、手動操作により、送りを行わない退避位置と送りを行う送り位置とに切り替えることができ、上送りの実行の有無を選択することができる。上送りが退避位置と送り位置のいずれに位置するかを検出するセンサを設け、制御装置90にその検出信号を入力する構成としても良い。
【0021】
布押さえ3は、針板の針落ち位置の上側に設けられ、上から被縫製物を押さえることができる。布押さえ3は、ミシンアーム部23の左端下部から垂下支持された押さえ棒の下端部に取り付けられている。押さえ棒は、ミシンアーム部23内においてバネ圧が付与されており、布押さえ3は針板側に向かって押圧されて、被縫製物に押さえ圧を付与する。
布押さえ3は、複数の種類があり、縫いの種類に応じて適切な布押さえ3に交換することができる。
また、押さえ棒は、図示しない手動レバー又は押さえモーター14により、布押さえ3を上方に退避させることができる。さらに、押さえモーター14は、布押さえの押さえ圧を任意に調節することが可能である。
【0022】
糸調子装置は、周知の機構と同じであるため詳細な説明は省略する。糸調子装置は、図示を省略しているが、上糸の経路の途中において、上糸を挟持し、挟持圧によって上糸に張力を付与する。糸調子装置は、糸調子ソレノイド16により挟持圧を調節可能であり、これによって上糸に任意の糸張力を付与することができる。
【0023】
糸切り装置は、周知の機構と同じであるため詳細な説明は省略する。糸切り装置は、針板と釜機構との間で作動するメスを備え、上糸及び下糸を切断する。糸切り装置は、メスを作動させるための糸切りソレノイド17を備えている。
【0024】
表示入力装置80は、ミシンフレーム20の立胴部22の前面側に設けられた表示部81と、表示部81の表側に重ねて設けられたタッチパネル82と、表示部81のすぐ下側に略Y軸方向に並んで設けられた三つのダイヤル83,84,85とを備えている。
表示部81は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)からなり、制御装置90による表示制御によって、後述する入力画面G1の表示を行う。タッチパネル82は、ミシンの操作者による接触入力位置を検出し、入力画面G1に対する入力操作を検出する入力検出部として機能する。
三つのダイヤル83,84,85は、それぞれ、エンコーダー831,841,851が内蔵されており、操作者による回転操作量がエンコーダー831,841,851を通じて制御装置90に入力される。
【0025】
[ミシンの制御系]
次に、図3に基づきミシン10の制御系の構成について説明する。
ミシン10の制御装置90は、後述する各種の制御及び処理を行うための各種プログラムと各種の縫いを行うための縫製パターンデータその他各種設定データを記憶するROM92と、ROM92内の各種のプログラムを実行するCPU91と、各種のプログラムの実行に際して作業領域となるRAM93と、不揮発性の記憶手段であるデータメモリ97と、CPU91,ROM92,RAM93及びデータメモリ97とバスを介して接続された入出力インターフェイス94及び出力インターフェイス95とを備えている。
【0026】
出力インターフェイス95には、駆動回路11a,12a,13a,14a,15a,16a,17aを介してミシンモーター11,下送り調節モーター12,上送り調節モーター13,押さえモーター14,針振りモーター15,糸調子ソレノイド16,糸切りソレノイド17が接続されている。CPU91はこれらの動作制御を行うことができる。
入出力インターフェイス94には、表示入力装置80の各構成と電源スイッチ96とスタートボタン98とが接続されている。
【0027】
ミシン10は、制御装置90により、下送り調節モーター12による前後の送り量と針振りモーター15による左右の針振り量とを制御して、被縫製物に対して、X-Y平面の任意の位置に針落ちを行うことが可能である。
【0028】
データメモリ97には、複数の縫製パターンデータが記憶されている。図6に示すように、ミシンアーム部23の開閉式の上蓋231の内側には、予め用意されている縫製パターンとそのパターンナンバーとを示す一覧表表示232が設けられている。
縫製パターンデータは、縫製パターンに応じて定められたX-Y平面内の複数の針落ち位置と当該縫製パターンの縫製における縫製条件の設定とが記録されている。
縫製条件は、「縫製の開始端部における止め縫い」、「縫製の終了端部における止め縫い」、「糸張力」、「縫製パターンの基線位置」、「上送り」、「布押さえの押さえ上げ」、「糸切りの実行」、「押さえ圧」、「縫い目幅」、「縫い目長さ」に関する設定である。これらの縫製条件は、後述する入力画面G1で設定内容を変更することができる。
【0029】
上記データメモリ97は、初期データ記憶部971と履歴記憶部972とを備えており、初期データ記憶部971には、一覧表表示232のそれぞれの縫製パターンに関する縫製パターンデータが格納されている。この初期データ記憶部971に格納された縫製パターンデータは、いずれも、縫製条件について初期設定データ(デフォルトデータ)が定められている。
一方、履歴記憶部972には、縫製条件が変更され、実際に縫製が行われた縫製パターンの縫製パターンデータが記憶される。
【0030】
制御装置90は、初期データ記憶部971又は履歴記憶部972内の縫製パターンデータを読み込み、下送り調節モーター12及び針振りモーター15を制御して、縫製パターンに応じた縫い目を形成する縫製を行うことができる。
【0031】
[表示入力装置の表示制御]
上記制御装置90が行う表示入力装置80の表示制御について説明する。以下に説明する表示入力装置80の表示制御及び入力によって行われる処理は、全て、制御装置90のCPU91がROM92内のプログラムを実行することによって行われる。
【0032】
図4は表示入力装置80の表示部81に表示される入力画面G1の表示例を示す説明図、図5は入力画面G1の複数の表示エリアの区画を仮想線で示した説明図である。これらの表示例を示す説明図並びに後述する他の表示例を示す説明図では、紙面における上下左右がミシン10における上下左右に略一致している。
【0033】
図示のように入力画面G1は、全体的に縦長矩形であって、画面上端部の左右全幅に渡って延在する第一領域R1と、その下に左右全幅に渡って延在する第二領域R2と、その下側に配置された第三~第五領域R3~R5と、画面下端部の左右全幅に渡って延在する第六領域R6とに区分されている。
第三~第五領域R3~R5は、第二領域R2と第六領域R6との間の領域を左右に三分割した上下に長い矩形の領域であり、左側が第三領域R3、真ん中が第四領域R4、右側が第五領域R5となっている。
第三~第五領域R3~R5は、図5の例では、左右方向に三等分されているが、これに限られず、個々の比率は増減可能である。例えば、中央の第四領域R4の左右の幅を全体幅の1/4~1/2の範囲で変更し、その両側で第三領域R3と第五領域R5の左右の幅を等しくしても良い。
【0034】
第一領域R1には、各種の入力画面に切り替えるための、文字列表示からなるサポートボタンB11、設定ボタンB12、ソーイングボタンB13、履歴ボタンB14、ポータルボタンB15が左から右に向かって順番に並んで配置されている。
これら各ボタンB11~B15は、各ボタン位置に対するタッチ操作でボタン入力を行うことができる。また、第一領域R1を左右にスワイプすることで各ボタンB11~B15の位置をスクロールさせることができる。
【0035】
サポートボタンB11は、ミシン10の操作マニュアル等の表示を行うサポート画面に表示を切り替えるためのボタンである。
設定ボタンB12は、図示しない作業ライトの明るさ、図示しないスピーカー音量等、ミシン10の周囲環境に関する設定等を行うための設定画面に表示を切り替えるためのボタンである。
ソーイングボタンB13は、図4の入力画面G1に表示を切り替えるためのボタンである。この入力画面G1は、縫製に関する各種の設定を行うことができる。
履歴ボタンB14は、後述する履歴画面G2に表示を切り替えるためのボタンである。履歴画面G2は、過去に縫製が行われた複数の縫製パターンについて、縫製パターンデータとその縫製時における設定に関する記録データを呼び出すための入力画面である。履歴画面G2については、後述する。
ポータルボタンB15は、ネットワーク回線を通じて、ミシン10のポータルサイトに接続するためのブラウザ画面に表示を切り替えるためのボタンである。
【0036】
第二領域R2には、図柄と文字列表示からなる布押さえ候補表示枠W21、各種の表示画面に切り替えるための操作部としての縫製パターンの選択ボタンB21と縫製パターンの設定ボタンB22とサイクル選択ボタンB23とが左から順番に並んで配置されている。
【0037】
布押さえ候補表示枠W21には、現在選択中の縫製パターンに適した布押さえ3の種類が表示される。例えば、図4の例では、布押さえAと布押さえBが選択中の縫製パターンに適していることを示す図柄情報及び文字情報が表示されている。
【0038】
縫製パターンの選択ボタンB21は、略矩形の接触範囲が設定されており、当該接触範囲内にタッチすると、縫製パターンの選択画面に表示が切り替えられる。この選択画面からは、前述したデータメモリ97の初期データ記憶部971内のデフォルトの縫製パターンデータを選択することができる。
前述したように、各縫製パターンにはパターンナンバーが定められている。選択画面でパターンナンバーを選択し決定すると、選択ボタンB21の略矩形の接触範囲内に選択されたパターンナンバーが表示される。
【0039】
縫製パターンの設定ボタンB22は、円形の接触範囲が設定されており、その内側に設定ボタンであることを示すアイコンが表示されている。この設定ボタンB22の接触範囲内にタッチすると、所定の設定画面に表示が切り替えられる。この設定画面からは、後述するボタンB31~B53によって設定されるパラメータ以外の縫製パターンに関する設定を行うことができる。例えば、この設定画面から、縫製パターンの上下反転や左右反転等のパターン編集を行うことができる。
【0040】
サイクル選択ボタンB23は、円形の接触範囲が設定されており、その内側にサイクル選択ボタンであることを示すアイコンが表示されている。サイクル選択ボタンB23の接触範囲内にタッチすると、縫製パターン一つ分の縫製を行う単発縫製と繰り返しの縫製を行う連続縫製のいずれを行うかを設定することができる。このサイクル選択ボタンB23については、単発縫製が設定された場合にはアイコンの内側に「1」の数字が表示され、繰り返しの縫製が選択中の場合にはアイコンの内側の数字が消去される表示制御が行われる。
【0041】
第三領域R3と第五領域R5とには、それぞれ、縫製パターンについて所定の設定を行うための操作部としてのボタンが、上下に三つずつ並んで設けられている。
第三領域R3には、縫い始め処理設定ボタンB31、糸張力設定ボタンB32、縫い終わり処理設定ボタンB33が上から順番に並んで配置されている。
第五領域R5には、上送り設定ボタンB51、押さえ上げ設定ボタンB52、糸切り設定ボタンB53が上から順番に並んで配置されている。
これら各種の設定ボタンB31,B32,B33,B51,B52,B53は、円形の接触範囲が設定されており、その内側には各設定ボタンから入力する内容を示した内容表示部としてのアイコンが表示されている。
また、各種の設定ボタンB31,B32,B33,B51,B52,B53の外側下部には、それぞれ、各設定ボタンから入力する内容とその設定値又は設定状態を文字情報で示した内容表示部としての設定情報表示部W31,W32,W33,W51,W52,W53が配置されている。
【0042】
縫い始め処理設定ボタンB31は、縫製の開始端部における止め縫いの実行の有無と止め縫いの種別を選択するボタンである。例えば、縫い始め処理設定ボタンB31の接触範囲内を繰り返しタッチすることで、返し縫い、玉止め縫い、止め縫いなしの設定を切り替えることができる。
【0043】
糸張力設定ボタンB32は、糸調子ソレノイド16による糸調子装置の糸張力を任意に設置するためのボタンである。糸張力設定ボタンB32の接触範囲内にタッチすると、糸張力の入力画面が表示され、画面に対する入力操作又はダイヤル84の回転による入力操作によって糸張力を設定することができる。
【0044】
縫い終わり処理設定ボタンB33は、縫製の終了端部における止め縫いの実行の有無と止め縫いの種別を選択するボタンである。例えば、縫い終わり処理設定ボタンB33の接触範囲内を繰り返しタッチすることで、返し縫い、玉止め縫い、止め縫いなしの設定を切り替えることができる。
【0045】
上送り設定ボタンB51は、上送り4による上送りの実行の有無と上送り量(送り歯による下送り量に対する差分値)を設定するボタンである。上送り設定ボタンB51の接触範囲内にタッチすると、上送りの実行の有りと無しの設定が切り替わる。また、上送りの実行の有りが設定された場合には、上送り量の入力画面が表示され、画面に対する入力操作又はダイヤル84の回転による入力操作によって上送り量を設定することができる。
【0046】
押さえ上げ設定ボタンB52は、縫製パターンの縫製終了時に自動的に布押さえ3を上昇させて被縫製物を解放するか否かを設定するボタンである。押さえ上げ設定ボタンB52の接触範囲内にタッチすると、自動的な布押さえ3の上昇の実行の有無の設定を切り替えることができる。
【0047】
糸切り設定ボタンB53は、縫製パターンの縫製終了時に自動的に糸切り装置による糸切りを実行するか否かを設定するボタンである。糸切り設定ボタンB53の接触範囲内にタッチすると、自動的な糸切りの実行の有無の設定を切り替えることができる。
【0048】
第四領域R4には、現在選択中の縫製パターンの画像を表示するパターン画像表示枠W41、操作部としての基線位置設定ボタンB42が上から順番に並んで配置されている。
【0049】
パターン画像表示枠W41には、現在選択中の縫製パターンの図柄からなる縫製パターン画像が表示される。この縫製パターン画像は、縫製動作に連動する動画像であり、画像の上端部に現在針落ちが行われている左右方向における針落ち位置が表示される。また、針落ち位置の下側には、これから針落ちが行われる針落ち位置に形成される縫い目が表示される。この縫製パターン画像は、一針の針落ちが行われるごとに一針分の縫い目が上方に移動する動画像からなる。
また、この縫製パターン画像は、後述する縫い目長さ及び縫い目幅の設定値に応じて、その形状が変化する。
【0050】
基線位置設定ボタンB42は、円形の接触範囲が設定されており、その内側に基線位置設定ボタンB42から入力する内容を示した内容表示部としてのアイコンが表示されている。
基線は、布送り方向に沿った縫製パターンの基準線であり、当該基線を基準として縫製パターンの個々の針落ち位置の針振り量が定められている。
この基線位置設定ボタンB42の接触範囲内にタッチすると、基線位置の入力画面が表示され、画面に対する入力操作又はダイヤル84の回転による入力操作によって基線位置を設定することができる。
基線位置設定ボタンB42の外側下部には、当該ボタンから入力する内容とその設定値を文字情報で示した内容表示部としての設定情報表示部W42が配置されている。
【0051】
第六領域R6には、布押さえ3による押さえ圧の設定値を数値表示する押さえ圧表示部W61、縫製パターンの針振りの左右方向幅の設定値を数値表示する縫い目幅表示部W62、一針ごとの布送り方向の間隔(縫いピッチ)の設定値を数値表示する縫い目長さ表示部W63が左から順番に並んで配置されている。
【0052】
押さえ圧表示部W61、縫い目幅表示部W62、縫い目長さ表示部W63は、それぞれ、ダイヤル83、84、85のすぐ上側となるように配置されている。
押さえ圧は、エンコーダー831によって検出されるダイヤル83の入力回転量に基づいて設定され、入力された押さえ圧の設定値が押さえ圧表示部W61で数値表示される。
縫い目幅は、エンコーダー841によって検出されるダイヤル84の入力回転量に基づいて設定され、入力された縫い目幅の設定値が縫い目幅表示部W62で数値表示される。
縫い目長さは、エンコーダー851によって検出されるダイヤル85の入力回転量に基づいて設定され、入力された縫い目長さの設定値が縫い目長さ表示部W63で数値表示される。
【0053】
[履歴記憶処理]
前述したように、制御装置90は、縫製パターンデータについて履歴の記憶処理を行う。
図7は履歴記憶部972内の履歴に基づく縫製パターンデータを読み出す履歴画面G2の表示例である。
履歴画面G2の上端部には、入力画面G1と同様に、サポートボタンB11、設定ボタンB12、ソーイングボタンB13、履歴ボタンB14、ポータルボタンB15が左から右に向かって順番に並んで配置されている。
そして、その下側の領域には、履歴として記録された縫製パターンデータが上下に並んで表示されている。これらの縫製パターンデータは、履歴として新しいものが上側となるように配置されている。
また、履歴として記録された縫製パターンデータは、記憶可能な個数の上限が決められており、当該上限の個数を超えると、古い履歴の縫製パターンデータから消去される。
【0054】
履歴画面G2の画面左側には、履歴として記録された縫製パターンデータの縫製パターンのパターンナンバーの表示枠W71が表示され、画面右側には、履歴として記録された縫製パターンデータの縫製パターン画像の表示枠W72が表示される。
また、任意の縫製パターン画像の表示枠W72に対してタッチ操作を行うと、当該履歴として記録された縫製パターンデータの入力画面G1に遷移する。入力画面G1の表示状態において、スタートボタン98により履歴として記録された縫製パターンデータに基づく縫製を実行することができる。
また、入力画面G1から履歴として記録された縫製パターンデータの縫製条件の設定を変更することも可能である。
【0055】
次に、制御装置90が行う履歴としての縫製パターンデータの記憶処理について図8のフローチャートに基づいて説明する。
制御装置90は、スタートボタン98が押下されるか否かの判定を行い(ステップS1)、スタートボタン98が押下されると、現在選択されている縫製パターンデータに基づいて縫製を実行する(ステップS3)。
その後、現在選択されている縫製パターンデータに対して、変更があったか否かを判定する(ステップS5)。
この判定では、縫製パターンと縫製条件の両方について同一であるかを判定する(ステップS5)。即ち、パターンナンバーの変更による縫製パターンの変更と縫製条件の設定の変更のいずれか一方でも行われた場合には、変更ありと判定する。
【0056】
そして、縫製パターンデータの変更ありと判定した場合には(ステップS5:YES)、履歴記憶部972に新しい履歴としてステップS3で縫製が実行された縫製パターンデータが格納され(ステップS7)、ステップS1のスタートボタン98の押下判定に処理が戻される。
また、縫製パターンデータの変更がない場合には(ステップS5:NO)、履歴記憶部972に縫製パターンデータが格納されることなく、ステップS1のスタートボタン98の押下判定に処理が戻される。
【0057】
[発明の実施形態における技術的効果]
以上のように、ミシン10の制御装置90は、縫製が行われた縫製パターンデータを履歴としてデータメモリ97の履歴記憶部972に記憶する。また、履歴として縫製パターンデータを記憶する際には、制御装置90は、ミシンの操作者による記録指令の入力操作を要することなく自動的に記憶する。
このため、履歴として記憶された縫製パターンデータを読み出して新たに縫製することができ、以前に行ったことがある縫製を再び行う際に、その実行が容易となる。
また、履歴としてデータメモリ97の履歴記憶部972に記憶する要件として、縫製が行われた縫製パターンデータであることを要求するので、縫製を行っていない縫製パターンデータを排除することができ、履歴記憶部972内に記憶されるデータ量を低減することができる。また、履歴記憶部972として記憶容量の小さいメモリを利用することが可能となる。
【0058】
また、制御装置90は、縫製が行われた縫製パターンデータに対して変更された場合に、縫製が行われた縫製パターンデータを履歴として履歴記憶部972に記憶するので、同一の縫製パターンデータが連続して履歴記憶部972に記憶されることを回避することができ、履歴記憶部972内に記憶されるデータ量をさらに低減することができる。また、履歴記憶部972として記憶容量の小さいメモリを利用することが可能となる。
【0059】
特に、制御装置90は、縫製が行われた縫製パターンデータから縫製パターンと縫製条件のいずれか一方でも変更が行われた場合に縫製が行われた縫製パターンデータを履歴として履歴記憶部972に記憶するので、以前に行ったことがある縫製を再び行う際に、改めて、縫製条件を再設定し直す必要がなくなり、容易且つ便利に縫製を行うことが可能となる。
【0060】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の各実施形態に限られない。上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、制御装置90は、縫製が行われた縫製パターンデータに変更が加えられた場合に履歴として保存する場合を例示したが、これに加えて、縫製が行われた縫製パターンデータが履歴記憶部972に記憶された全ての縫製パターンデータと異なる場合に縫製が行われた縫製パターンデータを履歴として履歴記憶部972に記憶する処理を行ってもよい。
この場合には、履歴記憶部972内に記憶されるデータ量をさらに低減することができる。また、履歴記憶部972として、記憶容量の小さいメモリを利用することが可能となる。
【0061】
また、データメモリ97は、EEPROMやフラッシュメモリ等のような半導体メモリに限らず、磁気式又は光学式の記録媒体などの不揮発性のあらゆるデータ記憶手段を利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 ミシン(縫製装置)
80 表示入力装置(入力部)
90 制御装置
91 CPU
97 データメモリ(不揮発性の記憶手段)
G1 入力画面
G2 履歴画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8