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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20241114BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241114BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20241114BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J7/34 B
H02J7/34 D
H02J7/35 K
H01M10/44 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020143052
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038505
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-168806(JP,A)
【文献】特開2017-22919(JP,A)
【文献】特開2017-28776(JP,A)
【文献】特開2019-165561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0130556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/34
H02J 7/35
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、
前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、
前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、
前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、
少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記第一の配電線を上流側に流れる電力があって、前記第一蓄電池が放電していない場合、
前記第一の配電線を上流側に流れる電力に基づいて、前記第二蓄電池に充電指示を行う、
力供給システム。
【請求項2】
系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、
前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、
前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、
前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、
少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記第一の配電線を上流側に流れる電力があって、前記第一蓄電池が放電している場合、
前記第二蓄電池に充電の停止指示を行う、
力供給システム。
【請求項3】
系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、
前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、
前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、
前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、
少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、
前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第二の配電線に出力可能な第二発電部と、
を具備し、
前記第二蓄電池は、
前記第二発電部の発電電力を充放電可能であり、
前記制御部は、
前記第一の配電線及び前記第二の配電線を上流側に流れる電力があって、前記第一蓄電池が放電していない場合、
前記第一の配電線及び前記第二の配電線を上流側に流れる電力に基づいて、前記第二蓄電池に充電指示を行う、
力供給システム。
【請求項4】
系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、
前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、
前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、
前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、
前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、
少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、
前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第二の配電線に出力可能な第二発電部と、
を具備し、
前記第二蓄電池は、
前記第二発電部の発電電力を充放電可能であり、
前記制御部は、
前記第一の配電線を上流側に流れる電力がなく、前記第二の配電線を前記中途部側に流れる電力がある場合、
前記第二の配電線を上流側に流れる電力に基づいて、前記第二蓄電池に充電指示を行う、
力供給システム。
【請求項5】
前記制御部は、
系統電源からの電力が前記第一の配電線を前記第一電力負荷側に流れている場合、
前記第二蓄電池に放電指示を行う、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷へ電力を供給可能な電力供給システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷へ電力を供給可能な電力供給システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、蓄電池(第一蓄電池)及び太陽光発電部を有した複数の蓄電システムを具備し、当該第一蓄電池の放電電力や太陽光発電部の発電電力を複数の負荷(住宅)に融通可能な電力供給システムが記載されている。前記電力供給システムにおいて、複数の蓄電システムは、系統電源と複数の負荷とを接続する配電線(第一の配電線)に設けられている。
【0004】
しかしながら、前記電力供給システムにおいて、複数の蓄電システムから第一の配電線に出力された電力は、複数の蓄電システムを基準として系統電源と反対側(下流側)に設けられた複数の負荷へと供給することができるものの、例えば第一の配電線の中途部から別の配電線(第二の配電線)を介して接続された別の負荷や、当該別の負荷と共に前記第二の配電線に設けられた蓄電池(第二蓄電池)に供給することは想定されていない。そのため、蓄電システムから第一の配電線に出力された電力に応じて、第二の配電線に設けられた第二蓄電池を有効に活用することができる技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-165561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、第一の配電線の電力の流通態様に応じて、第二の配電線に設けられた第二蓄電池を有効に活用することができる電力供給システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記第一の配電線を上流側に流れる電力があって、前記第一蓄電池が放電していない場合、前記第一の配電線を上流側に流れる電力に基づいて、前記第二蓄電池に充電指示を行うものである。
【0009】
請求項2においては、系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記第一の配電線を上流側に流れる電力があって、前記第一蓄電池が放電している場合、前記第二蓄電池に充電の停止指示を行うものである。
【0010】
請求項3においては、系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第二の配電線に出力可能な第二発電部と、を具備し、前記第二蓄電池は、前記第二発電部の発電電力を充放電可能であり、前記制御部は、前記第一の配電線及び前記第二の配電線を上流側に流れる電力があって、前記第一蓄電池が放電していない場合、前記第一の配電線及び前記第二の配電線を上流側に流れる電力に基づいて、前記第二蓄電池に充電指示を行うものである。
【0011】
請求項4においては、系統電源と第一電力負荷とを接続する第一の配電線と、前記第一の配電線の中途部と第二電力負荷とを接続する第二の配電線と、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線に出力可能な第一発電部と、前記第一の配電線の前記中途部よりも系統電源側に設けられ、電力を検出可能な第一電力センサと、前記第一の配電線の前記中途部と前記第一電力負荷との間に設けられ、前記第一発電部の発電電力を充放電可能であり、前記第一電力センサの検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線に出力可能な第一蓄電池と、前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、電力を充放電可能である第二蓄電池と、少なくとも前記第一の配電線の電力の流通態様に応じて前記第二蓄電池を制御する制御部と、前記第二の配電線の前記第二電力負荷よりも前記中途部側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第二の配電線に出力可能な第二発電部と、を具備し、前記第二蓄電池は、前記第二発電部の発電電力を充放電可能であり、前記制御部は、前記第一の配電線を上流側に流れる電力がなく、前記第二の配電線を前記中途部側に流れる電力がある場合、前記第二の配電線を上流側に流れる電力に基づいて、前記第二蓄電池に充電指示を行うものである。
【0012】
請求項5においては、前記制御部は、系統電源からの電力が前記第一の配電線を前記第一電力負荷側に流れている場合、前記第二蓄電池に放電指示を行うものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
本発明においては、第一の配電線の電力の流通態様に応じて、第二の配電線に設けられた第二蓄電池を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電力供給システムの構成を示したブロック図。
図2】制御部の接続関係を示した図。
図3】第一蓄電システム動作制御を示したフローチャート。
図4】第二蓄電システム動作制御を示したフローチャート。
図5】第一蓄電システム動作制御を実行する場合の電力の流通態様の一例を示した図。
図6図5の続きを示した図。
図7】第二蓄電システム動作制御を実行する場合の電力の流通態様の第一の例を示した図。
図8図7の続きを示した図。
図9】第二蓄電システム動作制御を実行する場合の電力の流通態様の第二の例を示した図。
図10図9の続きを示した図。
図11】第二蓄電システム動作制御を実行する場合の電力の流通態様の第三の例を示した図。
図12図11の続きを示した図。
図13】第二蓄電システム動作制御を実行する場合の電力の流通態様の第四の例を示した図。
図14図13の続きを示した図。
図15】第二蓄電システム動作制御を実行する場合の電力の流通態様の第五の例を示した図。
図16図15の続きを示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の一実施形態に係る電力供給システム1について説明する。
【0018】
図1に示す電力供給システム1は、所定の事業者(アグリゲータ)によりエネルギー管理が行われる所定の地域(以下では「一括受電エリアA」と称する)に適用される。アグリゲータは、高圧一括受電を行って、受けた電力を一括受電エリアAにおける種々の需要家に供給することで、一括したエネルギー管理を行っている。なお、一括受電エリアAには、前記需要家の一例として、商業施設S及び住宅街区A1が設けられる。
【0019】
商業施設Sは、商業を目的とした施設である。商業施設Sには、例えばスーパーマーケットやドラッグストア等がテナントとして入居している。商業施設Sには、後述するように各種の電気機器が設けられる。商業施設Sでは、使用する電力がアグリゲータから売却される。また、商業施設Sで余剰した電力をアグリゲータへ売却することもできる。
【0020】
住宅街区A1は、エネルギー(例えば電力や熱)を互いに融通可能な複数の住宅Hの集合体である。住宅街区A1には、後述するように各種の電気機器が設けられる。住宅街区A1では、使用する電力がアグリゲータから各住宅Hへ売却される。また、住宅街区A1で余剰した電力をアグリゲータへ売却することもできる。なお、本実施形態においては、住宅街区A1に4つの住宅Hが設けられるものとする。また以下では、4つの住宅Hをそれぞれ、第一住宅H1、第二住宅H2、第三住宅H3及び第四住宅H4と称する場合がある。
【0021】
図1及び図2に示すように、電力供給システム1は、商業施設Sの電気機器(施設側分電盤10及び施設側蓄電システム20)、引込分電盤30、住宅街区A1の電気機器(住宅側分電盤40及び住宅側蓄電システム50)、複数の電力メータ及び制御部70等を具備する。なお以下の説明において「上流側」及び「下流側」とは、系統電源Kからの電力の供給方向を基準とする。
【0022】
商業施設Sの電気機器には、施設側分電盤10及び施設側蓄電システム20が含まれる。
【0023】
施設側分電盤10は、所定の供給元から供給されてくる電力を、商業施設Sに入居しているテナントに分配するものである。施設側分電盤10には、前記テナント(すなわち、商業施設S)で消費される電力負荷が接続される(不図示)。なお以下では便宜上、施設側分電盤10を、商業施設Sの電力負荷と称する場合もある。施設側分電盤10は、第一配電線L1及び第二配電線L2を介して系統電源Kに接続される。第一配電線L1は、上流側端部が系統電源Kに接続されると共に、下流側端部が後述する第二接続点P2に接続される。また、第二配電線L2は、上流側端部が第二接続点P2に接続されると共に、下流側端部が施設側分電盤10(電力負荷)に接続される。
【0024】
なお、本実施形態において、商業施設Sの電力負荷は、例えば後述する住宅街区A1の電力負荷と比較して非常に大きい。また、商業施設Sの電力負荷は、後述する施設側蓄電システム20が出力可能な電力(施設側蓄電池22の最大放電電力や施設側発電部21の最大出力電力)と比較しても非常に大きい。具体的には、例えば商業施設Sが営業中であれば、施設側蓄電池22が最大放電電力で放電すると共に施設側発電部21が最大出力電力で発電した場合であっても、当該電力負荷を賄えない程度に大きい。
【0025】
施設側蓄電システム20は、太陽光を利用して発電可能であると共に、電力を充放電可能なものである。施設側蓄電システム20は、第二配電線L2の中途部に接続される。具体的には、施設側蓄電システム20は、第二配電線L2において施設側分電盤10の上流側に接続される。施設側蓄電システム20は、施設側発電部21、施設側蓄電池22、施設側センサ23及び施設側パワコン24を具備する。
【0026】
施設側発電部21は、太陽光を利用して発電する装置である。施設側発電部21は、太陽電池パネル等により構成される。施設側発電部21は、例えば商業施設Sの屋上等の日当たりの良い場所に設置される。
【0027】
施設側蓄電池22は、電力を充放電可能に構成されるものである。施設側蓄電池22は、例えばリチウムイオン電池等により構成される。なお、本実施形態において、施設側蓄電池22の最大放電電力は2000Wである。また、施設側蓄電池22の最大充電電力は2000Wである。施設側蓄電池22は、後述する施設側センサ23の検出結果に基づいて充放電電力の大きさを調整する負荷追従運転を行うことができる。施設側蓄電池22は、予め設定された複数の運転モードのうち一の運転モードを実行することにより充放電等の所定の動作を行う。複数の運転モードには、放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モードが含まれる。なお、これらのモードについての詳細な説明は後述する。
【0028】
施設側センサ23は、設置された箇所を流れる電力を検出するものである。施設側センサ23は、第一配電線L1の中途部に設けられる。具体的には、施設側センサ23は、第一配電線L1において、系統電源Kと後述する第二接続点P2との間に設置される。施設側センサ23は、後述する施設側パワコン24と接続される。
【0029】
施設側パワコン24は、電力を適宜変換可能なハイブリッドパワーコンディショナである。施設側パワコン24は、施設側発電部21と施設側蓄電池22との間に設けられ、当該施設側発電部21と施設側蓄電池22とに接続される。施設側パワコン24は、施設側発電部21や施設側蓄電池22の直流電力を交流電力に変換することができる。施設側パワコン24は、第二配電線L2において施設側分電盤10の上流側に接続される。こうして施設側パワコン24により、施設側蓄電システム20が第二配電線L2に接続される。なお以下では、第二配電線L2における施設側パワコン24(施設側蓄電システム20)との接続点を「第一接続点P1」と称する。
【0030】
こうして、施設側パワコン24は、施設側発電部21の発電電力を第二配電線L2へ出力することができる。また、施設側パワコン24は、施設側発電部21の発電電力や第二配電線L2を流れる電力を施設側蓄電池22に充電することができる。また、施設側パワコン24は、施設側蓄電池22の放電電力を第二配電線L2へ出力することができる。また、施設側パワコン24は、施設側蓄電池22の動作を制御することができる。
【0031】
また、施設側パワコン24は、施設側発電部21と信号を送受信可能に構成され、当該信号に基づいて施設側発電部21の発電電力等に関する情報を取得することできる。また、施設側パワコン24は、施設側蓄電池22と信号を送受信可能に構成され、当該信号に基づいて施設側蓄電池22の残量や実行中の運転モード等に関する情報を取得することできる。また、施設側パワコン24は、施設側センサ23の信号を受信可能に構成され、当該施設側センサ23の検出結果に関する情報を取得することができる。
【0032】
このように、商業施設Sにおいては、当該商業施設Sの電力負荷に対して、施設側蓄電システム20の施設側発電部21の発電電力や施設側蓄電池22の放電電力を供給することができる。しかしながら、上述の如く本実施形態においては、商業施設Sは、電力負荷が非常に大きいため、施設側発電部21の発電電力や施設側蓄電池22の放電電力だけでは基本的に(例えば夜間を含む商業施設Sが営業していない場合等の例外を除いて)必要な電力が不足する。そのため、商業施設Sは、多くの場合、系統電源Kから比較的大きい電力を購入している。
【0033】
引込分電盤30は、所定の供給元から供給されてくる電力を適宜分配するものである。引込分電盤30は、第三配電線L3の中途部に設けられる。なお、第三配電線L3の上流側端部は、第一配電線L1と第二配電線L2との接続点(以下では「第二接続点P2」と称する)に接続される。また、第三配電線L3の下流側端部は、4つに分岐すると共に、分岐したそれぞれが4つの住宅Hの後述する住宅側分電盤40に接続される。
【0034】
住宅街区A1の電気機器には、各住宅Hの電気機器が含まれる。また、各住宅Hの電気機器には、住宅側分電盤40及び住宅側蓄電システム50が含まれる。
【0035】
なお、各住宅Hの住宅側分電盤40及び住宅側蓄電システム50の構成は、これらの配置を除いて互いに同一である。そこで以下では、特に断りが無ければ4つの住宅Hのうち第一住宅H1を例にあげて、当該第一住宅H1の住宅側分電盤40及び住宅側蓄電システム50について説明するものとする。
【0036】
住宅側分電盤40は、所定の供給元から供給されてくる電力を、当該住宅側分電盤40に接続された第一住宅H1の電化製品(不図示)に分配するものである。なお以下では、住宅側分電盤40を、第一住宅H1の電力負荷と称する場合もある。なお、第一住宅H1の電力負荷は、商業施設Sの電力負荷と比較して非常に小さい。例えば多くの場合、全ての住宅Hの電力負荷の合計であっても、商業施設Sの電力負荷よりも小さい。住宅側分電盤40は、第三配電線L3の分岐した下流側端部に接続される。こうして、住宅側分電盤40は、第三配電線L3において引込分電盤30よりも下流側に設けられる。
【0037】
住宅側蓄電システム50は、太陽光を利用して発電可能であると共に、電力を充放電可能なものである。住宅側蓄電システム50は、引込分電盤30に接続される。すなわち、住宅側分電盤40は、引込分電盤30を介して第三配電線L3に接続される。住宅側蓄電システム50は、住宅側発電部51、住宅側蓄電池52、住宅側センサ53及び住宅側パワコン54を具備する。
【0038】
住宅側発電部51は、太陽光を利用して発電する装置である。住宅側発電部51は、太陽電池パネル等により構成される。住宅側発電部51は、例えば第一住宅H1の屋根等の日当たりの良い場所に設置される。なお、本実施形態において、住宅側発電部51の最大出力電力は5500Wである。
【0039】
住宅側蓄電池52は、電力を充放電可能に構成されるものである。住宅側蓄電池52は、例えばリチウムイオン電池等により構成される。なお、本実施形態において、住宅側蓄電池52の最大放電電力は2000Wである。また、住宅側蓄電池52の最大充電電力は2000Wである。住宅側蓄電池52は、後述する住宅側センサ53の検出結果に基づいて充放電電力の大きさを調整する負荷追従運転を行うことができる。住宅側蓄電池52は、予め設定された複数の運転モードのうち一の運転モードを実行することにより充放電等の所定の動作を行う。複数の運転モードには、商業施設Sの施設側蓄電池22と同様の放電モード等が含まれる。
【0040】
住宅側センサ53は、設置された箇所を流れる電力を検出するものである。住宅側センサ53は、第一配電線L1の中途部に設けられる。具体的には、住宅側センサ53は、第一配電線L1において、施設側センサ23よりも上流側に設置される。住宅側センサ53は、後述する住宅側パワコン54と接続される。
【0041】
なお、4つの住宅Hの住宅側センサ53は、第一配電線L1に上流側から下流側へと順番に並ぶように設置される。本実施形態においては、4つの住宅側センサ53のうち、上流側から見て一番目(最も上流側)に第一住宅H1の住宅側センサ53が設置され、二番目に第二住宅H2の住宅側センサ53が設置され、三番目に第三住宅H3の住宅側センサ53が設置され、四番目(最も下流側)に第四住宅H4の住宅側センサ53が設置される。
【0042】
住宅側パワコン54は、電力を適宜変換可能なハイブリッドパワーコンディショナである。住宅側パワコン54は、住宅側発電部51と住宅側蓄電池52との間に設けられ、当該住宅側発電部51と住宅側蓄電池52とに接続される。住宅側パワコン54は、住宅側発電部51や住宅側蓄電池52の直流電力を交流電力に変換することができる。また、住宅側パワコン54は、引込分電盤30に接続される。こうして住宅側パワコン54により、住宅側蓄電システム50が引込分電盤30に接続される。
【0043】
なお、4つの住宅Hの住宅側パワコン54は、引込分電盤30に上流側から下流側へと順番に並ぶように接続される。本実施形態においては、上流側から下流側へと順番に、第一住宅H1の住宅側パワコン54、第二住宅H2の住宅側パワコン54、第三住宅H3の住宅側パワコン54、第四住宅H4の住宅側パワコン54が並ぶように接続される。すなわち、4つの住宅側蓄電システム50においても、前記4つの住宅側パワコン54を介して、上流側から見て一番目(最も上流側)に第一住宅H1の住宅側蓄電システム50が引込分電盤30に接続され、二番目に第二住宅H2の住宅側蓄電システム50が接続され、三番目に第三住宅H3の住宅側蓄電システム50が接続され、四番目(最も下流側)に第四住宅H4の住宅側蓄電システム50が接続される。
【0044】
こうして、住宅側パワコン54は、住宅側発電部51の発電電力を引込分電盤30へ出力することができる。また、住宅側パワコン54は、住宅側発電部51の発電電力や引込分電盤30からの電力を住宅側蓄電池52に充電することができる。また、住宅側パワコン54は、住宅側蓄電池52の放電電力を引込分電盤30へ出力することができる。また、住宅側パワコン54は、住宅側蓄電池52の動作を制御することができる。
【0045】
また、住宅側パワコン54は、住宅側発電部51と信号を送受信可能に構成され、当該信号に基づいて住宅側発電部51の発電電力等に関する情報を取得することできる。また、住宅側パワコン54は、住宅側蓄電池52と信号を送受信可能に構成され、当該信号に基づいて住宅側蓄電池52の残量や実行中の運転モード等に関する情報を取得することできる。また、住宅側パワコン54は、住宅側センサ53の信号を受信可能に構成され、当該住宅側センサ53の検出結果に関する情報を取得することができる。
【0046】
複数の電力メータは、設置された箇所を流れる電力を検出するものである。複数の電力メータには、買電メータ61、第一売買電メータ62、第二売買電メータ63及び第三売買電メータ64が含まれる。
【0047】
買電メータ61は、第三配電線L3の中途部に設けられる。具体的には、買電メータ61は、第三配電線L3における下流側端部の分岐点と引込分電盤30との間に設置される。買電メータ61は、引込分電盤30から4つの住宅Hの住宅側分電盤40(電力負荷)へと流れる電力を取得することができる。すなわち、買電メータ61は、住宅街区A1の電力負荷の合計を取得することができる。
【0048】
第一売買電メータ62は、第一配電線L1の中途部に設けられる。具体的には、第一売買電メータ62は、第一配電線L1における施設側センサ23と第二接続点P2との間に設置される。第一売買電メータ62は、系統電源Kから一括受電エリアAへと流れた電力(系統電源Kから購入した電力)を取得することができる。また、第一売買電メータ62は、一括受電エリアAから系統電源Kへと逆潮流された電力(系統電源Kへ売却した電力)を取得することができる。
【0049】
第二売買電メータ63は、第二配電線L2の中途部に設けられる。具体的には、第一売買電メータ62は、第二配電線L2における第二接続点P2と第一接続点P1との間に設置される。第二売買電メータ63は、所定の供給元から商業施設Sの電気機器(施設側分電盤10及び施設側蓄電システム20)側へ流れた電力(商業施設Sが購入した電力)を取得することができる。また、第二売買電メータ63は、商業施設Sの施設側蓄電システム20から上流側へ逆潮流された電力(商業施設Sから売却した電力)を取得することができる。
【0050】
第三売買電メータ64は、第三配電線L3の中途部に設けられる。具体的には、第三売買電メータ64は、第三配電線L3における上流側端部(第二接続点P2)と引込分電盤30との間に設置される。第三売買電メータ64は、所定の供給元から住宅街区A1の電気機器(4つの住宅Hの住宅側分電盤40及び住宅側蓄電システム50)側へ流れた電力(住宅街区A1が購入した電力)を取得することができる。また、第三売買電メータ64は、住宅街区A1から上流側へ逆潮流された電力(住宅街区A1から売却した電力)を取得することができる。
【0051】
図2に示す制御部70は、電力供給システム1の動作を管理するエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)である。制御部70は、一括受電エリアAにおける電力の供給態様を設定することができる。制御部70は、CPU等の演算処理部、RAMやROM等の記憶部及びタッチパネル等の入出力部等を具備し、所定の演算処理や記憶処理等を行うことができる。制御部70には、電力供給システム1の動作を制御する際に用いられる種々の情報やプログラム等が予め記憶される。制御部70は、施設側蓄電システム20の施設側パワコン24、4つの住宅側蓄電システム50の住宅側パワコン54、複数の電力メータ(買電メータ61、第一売買電メータ62、第二売買電メータ63及び第三売買電メータ64)に接続される。
【0052】
制御部70は、商業施設Sの施設側蓄電システム20の動作を制御することができる。具体的には、制御部70は、施設側蓄電システム20の施設側パワコン24を介して施設側蓄電池22の動作(運転モード)を制御することができる。また、制御部70は、4つの住宅Hの住宅側蓄電システム50の動作を制御することができる。具体的には、制御部70は、各住宅側蓄電システム50の住宅側パワコン54を介して住宅側蓄電池52の動作(運転モード)を制御することができる。
【0053】
また、制御部70は、施設側蓄電システム20に関する情報を取得することができる。具体的には、制御部70は、施設側蓄電システム20の施設側パワコン24を介して、施設側発電部21の発電電力や、施設側蓄電池22の残量や実行中の運転モード等を取得することができる。
【0054】
また、制御部70は、4つの住宅側蓄電システム50に関する情報を取得することができる。具体的には、制御部70は、各住宅側蓄電システム50の住宅側パワコン54を介して住宅側発電部51の発電電力や、住宅側蓄電池52の残量や実行中の運転モード(動作状況)等を取得することができる。また、制御部70は、取得した情報に基づいて、各住宅側蓄電池52が設置された後、現在に至るまでの間に放電された電力量の総和である積算放電量を算出することができる。
【0055】
また、制御部70は、複数の電力メータ(買電メータ61、第一売買電メータ62、第二売買電メータ63及び第三売買電メータ64)の検出結果を取得することができる。
【0056】
また、制御部70は、住宅側パワコン54を介して取得した各住宅Hの住宅側発電部51の発電電力に基づいて、全ての住宅側発電部51の(住宅街区A1全体としての)発電電力の合計(以下では「PV総発電」と称する)を取得(算出)することができる。また、制御部70は、買電メータ61から取得した検出結果に基づいて、全ての住宅Hの電力負荷の合計(以下では「住宅総負荷」と称する)を取得(算出)することができる。
【0057】
以下では、施設側蓄電システム20の施設側蓄電池22及び住宅側蓄電システム50の住宅側蓄電池52の運転モード(放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モード)について説明する。
【0058】
なお、施設側蓄電池22及び住宅側蓄電池52の運転モードの内容は、負荷追従運転を行う際に用いるセンサを除いて互いに同一である。そこで以下では、特に断りが無ければ施設側蓄電池22を例にあげて、運転モードについて説明を行うものとする。
【0059】
施設側蓄電池22の放電モードとは、放電を行うモードである。放電モードが実行された場合、施設側蓄電池22は、負荷追従運転により施設側センサ23の検出結果に基づいて放電を行う。具体的には、放電モードが実行されると、施設側蓄電池22は、施設側センサ23が下流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応した大きさの電力を放電する。なお、施設側蓄電池22の電池残量が放電可能な残量でない場合(例えば、電池残量が残量下限値である場合や最低残量である場合)には、施設側センサ23が下流側へ流れる電力を検出した場合であっても、施設側蓄電池22は放電を行わない(待機状態となる)。
【0060】
施設側蓄電池22の充電モードとは、充電を行うモードである。充電モードが実行された場合、施設側蓄電池22は、施設側発電部21の発電電力を充電する。また、施設側蓄電池22は、施設側発電部21が発電していない場合や、施設側発電部21の発電電力が施設側蓄電池22の最大充電電力よりも小さい場合には、施設側蓄電システム20の上流側から供給されてくる電力(例えば系統電源Kから購入した電力)も充電する。なお、充電モードが実行された場合であっても、施設側発電部21の発電電力が施設側蓄電池22の充電電力よりも大きい場合には、当該発電電力のうち余剰した電力が第二配電線L2に出力される。また、施設側蓄電池22が満充電である場合には、充電モードが実行された場合であっても施設側蓄電池22は充電を行わない(待機状態となる)。
【0061】
施設側蓄電池22の待機モードとは、待機するモードである。すなわち、待機モードが実行された場合、施設側蓄電池22は稼動したまま充放電を行わない(待機状態となる)。なお以下では、待機状態を「停止」と称する場合もある。
【0062】
施設側蓄電池22の充放電モードとは、充放電を行うモードである。充放電モードが実行された場合、施設側蓄電池22は、負荷追従運転により施設側センサ23の検出結果に基づいて充放電を行う。
【0063】
具体的には、充放電モードが実行された場合、施設側蓄電池22は、放電モードと同様に、施設側センサ23が下流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応した大きさの電力を放電する。なお、施設側センサ23が下流側へ流れる電力を検出した場合であっても、施設側蓄電池22の電池残量が放電可能な残量でない場合等には、施設側蓄電池22は放電を行わない(待機状態となる)。
【0064】
また、充放電モードが実行された場合、施設側蓄電池22は、施設側センサ23が上流側へ流れる電力を検出した場合に、当該検出した電力に対応した大きさの電力を充電する。なお、施設側センサ23が上流側へ流れる電力を検出した場合であっても、満充電である場合等には、施設側蓄電池22は充電を行わない(待機状態となる)。
【0065】
なお、施設側蓄電池22の運転モードは、施設側パワコン24を介して行われる制御部70からの指示により切り替えられる。以下では、制御部70による施設側蓄電池22の放電モード、充電モード、待機モード及び充放電モードを実行する(切り替える)ための指示を、それぞれ放電指示、充電指示、待機(停止)指示及び充放電指示と称する場合がある。
【0066】
また、上述の如く施設側蓄電池22を例にあげて説明を行ったが、住宅側蓄電池52の運転モードの内容も同一である。具体的には、住宅側蓄電池52は、当該住宅側蓄電池52に対応する住宅側センサ53に検出結果に基づいて放電モードや充放電モードを実行する。なお、前記住宅側蓄電池52に対応する住宅側センサ53とは、4つの住宅側蓄電システム50のうち同一の住宅側蓄電システム50にある住宅側蓄電池52と住宅側センサ53との関係を意味する。
【0067】
上述の如く構成された電力供給システム1においては、制御部70による住宅街区A1及び商業施設Sへの制御により電力の流通態様が決定される。制御部70による住宅街区A1及び商業施設Sへの制御では、当該住宅街区A1の住宅側蓄電池52及び商業施設Sの施設側蓄電池22の運転モードの切り換えが行われる。
【0068】
なお以下では、制御部70による住宅街区A1への制御、すなわち住宅側蓄電池52の運転モードの切り換え制御を「第一蓄電システム動作制御」と称する。また、制御部70による商業施設Sへの制御、すなわち施設側蓄電池22の運転モードの切り換え制御を「第二蓄電システム動作制御」と称する。制御部70による第一蓄電システム動作制御及び第二蓄電システム動作制御は、予め規定されたタイミング(例えば5分ごと)に繰り返し実行される。
【0069】
以下では、図3を用いて、制御部70による第一蓄電システム動作制御(住宅側蓄電池52の運転モードの切り換え制御)について説明する。
【0070】
ステップS101において、制御部70は、現時点の住宅総負荷及びPV総発電に関する情報を取得する。なお、住宅総負荷とは、上述の如く、全ての(4つの)住宅Hの住宅負荷の消費電力の合計である。また、PV総発電とは、上述の如く、全ての(4つの)住宅側発電部51の発電電力の合計である。制御部70は、ステップS101の処理を実行した後、ステップS102の処理を実行する。
【0071】
ステップS102において、制御部70は、住宅総負荷がPV総発電以上であるか否かを判定する。制御部70は、住宅総負荷がPV総発電以上であると判定した場合(ステップS102:YES)、ステップS105の処理を実行する。一方、制御部70は、住宅総負荷がPV総発電よりも小さいと判定した場合(ステップS102:NO)、ステップS103の処理を実行する。
【0072】
ステップS103において、制御部70は、充電モードを実行する住宅側蓄電池52の台数を算出する。
【0073】
ここで、ステップS103の処理を実行する場合、住宅総負荷がPV総発電よりも小さいため、4つの住宅側発電部51の発電電力が4つの住宅Hの電力負荷に対して余剰した状態となっている。
【0074】
そこで、制御部70は、余剰電力で何台の住宅側蓄電池52を充電させるのかを、「充電する蓄電池台数=(PV総発電-住宅総負荷)/蓄電池の最大充電電力」の式(1)によって算出する。なお、式(1)によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下を切り捨てる。制御部70は、ステップS103の処理を実行した後、ステップS104の処理を実行する。
【0075】
ステップS104において、制御部70は、ステップS103にて算出した台数の住宅側蓄電池52に充電指示を行う。このとき、制御部70は、全ての住宅側蓄電池52(又は、充電指示を行うことが可能な住宅側蓄電池52)から電池残量を取得し、当該電池残量が少ない住宅側蓄電池52から順に前記台数分だけ充電指示を行う(充電モードを実行させる)。また、制御部70は、充電指示を行った住宅側蓄電池52以外の住宅側蓄電池52に待機指示を行う(待機モードを実行させる)。制御部70は、ステップS104の処理を実行した後、第一蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0076】
また、ステップS102で住宅総負荷がPV総発電以上であると判定した場合に移行するステップS105において、制御部70は、放電モードを実行する住宅側蓄電池52の台数を算出する。
【0077】
ここで、ステップS105の処理を実行する場合、住宅総負荷がPV総発電以上であるため、4つの住宅側発電部51の発電電力だけでは4つの住宅Hの電力負荷に対して不足した状態となっている。
【0078】
そこで、制御部70は、不足電力が何台の住宅側蓄電池52の放電で賄えるのかを、「放電する蓄電池台数=(住宅総負荷-PV総発電)/蓄電池の最大放電電力」の式(2)によって算出する。なお、式(2)によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下を切り上げる。制御部70は、ステップS105の処理を実行した後、ステップS106の処理を実行する。
【0079】
ステップS106において、制御部70は、放電優先順位が高い蓄電システムから順に、ステップS105にて算出した台数分の住宅側蓄電池52に放電指示を行う。また、制御部70は、放電指示を行った住宅側蓄電池52以外の住宅側蓄電池52に待機指示を行う。制御部70は、ステップS106の処理を実行した後、第一蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0080】
なお、放電優先順位とは、複数の住宅側蓄電池52のうちどの住宅側蓄電池52を他の住宅側蓄電池52に対して優先的に放電させるのかの判断基準となるものである。制御部70は、放電優先順位を決定するために、まず全ての住宅側蓄電池52の積算放電量を取得する。具体的には、制御部70は、住宅側蓄電池52ごとに、設置してから現在に至るまでの間に放電された電力量の総和を取得する。そして、制御部70は、全ての住宅側蓄電池52に対して、積算放電量の少ない順番に高い放電優先順位(本実施形態においては、第1位、第2位、第3位)を設定する。
【0081】
このような第一蓄電システム動作制御により、住宅街区A1内において余剰電力がある場合(ステップS102:NO)は、住宅側発電部51の発電電力を、適宜な台数の住宅側蓄電池52に充電させることができる(ステップS103、ステップS104)。これにより、住宅街区A1内における住宅側発電部51の発電電力の自己消費率を向上させることができる。
【0082】
また、住宅街区A1内において不足電力がある場合(ステップS102:YES)は、適宜な台数の住宅側蓄電池52を放電させることができる(ステップS105、ステップS106)。これにより、4つの住宅Hの電力負荷を全体で一つの電力負荷として、当該4つの住宅Hの住宅側蓄電池52からの放電電力を供給(融通)することができる。こうして、住宅街区A1内における不足電力が、住宅街区A1外から供給された電力(例えば系統電源Kから購入した電力)によって賄われるのを可及的に抑制することができる。
【0083】
なお、住宅側蓄電池52は、放電モードを実行する場合、対応する住宅側センサ53の検出結果に基づく負荷追従運転を行う。ここで、住宅側センサ53が設置された第一配電線L1は、上述の如く商業施設Sの比較的大きな電力負荷を賄うための、系統電源Kからの比較的大きな電力が流れている。したがって、多くの場合、放電モードを実行する住宅側蓄電池52は、対応する住宅側センサ53が検出する比較的大きな電力に基づいて、最大放電電力(2000W)で放電を行うこととなる。
【0084】
こうして、本実施形態においては、どの住宅側蓄電池52であっても、放電モードを実行する場合には、多くの場合最大放電電力で放電を行うことができる。すなわち、住宅側蓄電システム50及び住宅側センサ53の配置の上流側・下流側や住宅総負荷に対する不足電力の大小にかかわらず、住宅側蓄電池52の放電電力が小さくなること(放電効率が低下すること)を防止することができる。
【0085】
なお、上述の如く、4つの住宅側発電部51の余剰電力で、何台の住宅側蓄電池52を充電させるのかを算出する場合に、式(1)によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下を切り捨てる(ステップS103)。すなわち、余剰電力の全てが住宅側蓄電池52に充電されず、一部が第三配電線L3を上流側へ流れることとなる。また、上述の如く、4つの住宅側発電部51の不足電力が何台の住宅側蓄電池52の放電で賄えるのかを算出する場合に、式(2)によって算出された数に小数点が含まれる場合は、小数点以下を切り上げる(ステップS105)。すなわち、(上述の如く最大放電電力である)住宅側蓄電池52の放電電力の全てが住宅負荷に供給されず(住宅側蓄電池52の放電電力の一部が余剰するため)、一部が第三配電線L3を上流側へ流れることとなる。
【0086】
ここで、図5及び図6は、第一蓄電システム動作制御を実行した場合の電力の流通態様の一例を示す図である。
【0087】
図5に示す状態においては、住宅街区A1の電力負荷の合計(合計使用電力)が、7000Wであるものとする。また、住宅街区A1の住宅側発電部51の発電電力の合計が、0Wであるものとする。また、商業施設Sの電力負荷の合計(合計使用電力)が、10000Wであるものとする。また、系統電源Kからの電力(合計購入電力)が、17000Wであるものとする。
【0088】
このような場合、住宅総負荷がPV総発電以上であるため、放電モードを実行する住宅側蓄電池52の台数が算出される(ステップS102:YES、ステップS105)。図5に示す状態においては、放電モードを実行する住宅側蓄電池52の台数として、4が算出される。すなわち、住宅街区A1の全ての住宅側蓄電池52に放電指示が行われる。
【0089】
その結果、図6に示すように、住宅街区A1の全ての住宅側蓄電池52の放電電力の合計(合計放電電力)が、8000Wとなっている。そして、8000Wのうち、7000Wが住宅街区A1の電力負荷へと供給される。そして、残りの1000Wが第三配電線L3を上流側へと流れて、第二配電線L2を介して商業施設Sの電力負荷へと供給(融通)される。そして、系統電源Kからの電力(合計購入電力)が、9000Wへと減少される。このように、第一蓄電システム動作制御を実行したことにより、住宅街区A1における発電電力の一部を商業施設Sへと融通することができる。
【0090】
以下では、後述する第二蓄電システム動作制御の技術的意義を明確にするため、まず制御部70による施設側蓄電池22の運転モードの切り換え制御が行われない場合(具体的には、施設側蓄電池22の運転モードとして充放電モードが継続して実行されている場合)の、商業施設Sにおける電力の流通態様について説明する。
【0091】
施設側蓄電池22は充放電モードを実行すると、上述の如く負荷追従運転により施設側センサ23の検出結果に基づいて充放電を行う。
【0092】
ここで、上述の如く、商業施設Sにおいては、多くの場合、施設側発電部21の発電電力だけでは電力負荷に対して電力が不足するため、比較的大きい電力を系統電源Kから購入する。すなわち、施設側センサ23が設置された第一配電線L1では、商業施設Sの比較的大きな電力負荷を賄うための、系統電源Kからの(下流側への)比較的大きな電力が流れている。したがって、充放電モードを実行する施設側蓄電池22は、施設側センサ23が検出する比較的大きな電力に基づいて、最大放電電力(2000W)での放電を継続することとなる。
【0093】
このように、充放電モードを継続して実行した場合、施設側蓄電池22は放電を継続するため、系統電源Kからの電力や施設側発電部21の発電電力を充電する機会が無い。また仮に施設側蓄電池22が充電する機会を得たとしても、商業施設Sでの電力の使用量が非常に多いため、施設側蓄電池22は直ぐに放電してしまう。すなわち、施設側蓄電池22は、(放電可能な量以上に)電池残量を有した状態となっていることが殆どない。こうして、仮に施設側蓄電池22の運転モードの切り換え制御が行われない場合には、例えば停電が発生した場合に放電電力を利用できない等、施設側蓄電池22を有効に活用しているとは言い難い。
【0094】
そこで、電力供給システム1においては、施設側蓄電池22を有効に活用するため、第二蓄電システム動作制御を実行する。
【0095】
以下では、図4を用いて、制御部70による第二蓄電システム動作制御(施設側蓄電池22の運転モードの切り換え制御)について説明する。
【0096】
なお、第二蓄電システム動作制御を開始する時点では、施設側蓄電池22の運転モードは特に限定されない。
【0097】
ステップS201において、制御部70は、住宅街区A1で電力を購入しているかの判定を行う。制御部70は、第三売買電メータ64の検出結果に基づいて判定を行う。制御部70は、住宅街区A1で電力を購入している(住宅街区A1側に電力が流れている)と判定した場合(ステップS201:YES)、ステップS202の処理を実行する。一方、制御部70は、住宅街区A1で電力を購入していない(住宅街区A1側に電力が流れていない)と判定した場合(ステップS201:NO)、ステップS203の処理を実行する。
【0098】
ステップS202において、制御部70は、商業施設Sの施設側蓄電池22に対して放電指示を行う。すなわち、制御部70は、施設側蓄電池22の運転モードを放電モードに切り換える(既に放電モードであれば当該モードを維持する)。こうして、施設側蓄電池22は、施設側センサ23の検出結果に基づいて負荷追従運転により放電を行うこととなる。制御部70は、ステップS202の処理を実行した後、第二蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0099】
ステップS203において、制御部70は、住宅街区A1から逆潮流があるかを判定する。制御部70は、第三売買電メータ64の検出結果に基づいて判定を行う。制御部70は、住宅街区A1から逆潮流があると判定した場合(ステップS203:YES)、ステップS204の処理を実行する。一方、制御部70は、住宅街区A1から逆潮流がないと判定した場合(ステップS203:NO)、ステップS208の処理を実行する。
【0100】
ステップS204において、制御部70は、住宅街区A1の住宅側蓄電池52が放電しているかを判定する。より詳細には、制御部70は、住宅街区A1の4つ(全ての)住宅側蓄電池52のうち少なくともいずれかの住宅側蓄電池52が放電しているかを判定する。制御部70は、住宅街区A1の各住宅側パワコン54を介して取得した住宅側蓄電池52の動作状況に基づいて判定を行う。制御部70は、住宅街区A1の住宅側蓄電池52が放電していない(いずれの住宅側蓄電池52も放電していない)と判定した場合(ステップS204:NO)、ステップS205の処理を実行する。一方、制御部70は、住宅街区A1の住宅側蓄電池52が放電している(少なくともいずれかの住宅側蓄電池52が放電している)と判定した場合(ステップS204:YES)、ステップS210の処理を実行する。
【0101】
ステップS205において、制御部70は、商業施設Sから逆潮流があるかを判定する。制御部70は、第二売買電メータ63の検出結果に基づいて判定を行う。制御部70は、商業施設Sから逆潮流がないと判定した場合(ステップS205:NO)、ステップS206の処理を実行する。一方、制御部70は、商業施設Sから逆潮流があると判定した場合(ステップS205:YES)、ステップS207の処理を実行する。
【0102】
ステップS206において、制御部70は、商業施設Sの施設側蓄電池22に対して、住宅街区A1からの逆潮流分の電力の充電指示を行う。すなわち、制御部70は、施設側蓄電池22の運転モードを充電モードに切り換える(既に充電モードであれば当該モードを維持する)と共に、第三売買電メータ64の検出結果と同一の大きさの電力を充電するよう、施設側蓄電池22に対して指示を行う。こうして、施設側蓄電池22は、住宅街区A1からの逆潮流分の電力を充電することができる。制御部70は、ステップS206の処理を実行した後、第二蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0103】
また、ステップS207において、制御部70は、商業施設Sの施設側蓄電池22に対して、総逆潮流分(すなわち、商業施設S及び住宅街区A1からの逆潮流分の合計)の電力の充電指示を行う。すなわち、制御部70は、施設側蓄電池22の運転モードを充電モードに切り換える(既に充電モードであれば当該モードを維持する)と共に、第二売買電メータ63及び第三売買電メータ64の検出結果の合計と同一の大きさの電力を充電するよう、施設側蓄電池22に対して指示を行う。こうして、施設側蓄電池22は、商業施設S及び住宅街区A1からの逆潮流分の合計の電力を充電することができる。制御部70は、ステップS207の処理を実行した後、第二蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0104】
また上述の如く住宅街区A1から逆潮流がないと判定した場合(ステップS203:NO)に移行するステップS208において、制御部70は、商業施設Sから逆潮流があるかを判定する。制御部70は、第二売買電メータ63の検出結果に基づいて判定を行う。制御部70は、商業施設Sから逆潮流があると判定した場合(ステップS208:YES)、ステップS209の処理を実行する。一方、制御部70は、商業施設Sから逆潮流がないと判定した場合(ステップS208:NO)、第二蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0105】
ステップS209において、商業施設Sの施設側蓄電池22に対して、商業施設Sからの逆潮流分の電力の充電指示を行う。すなわち、制御部70は、施設側蓄電池22の運転モードを充電モードに切り換える(既に充電モードであれば当該モードを維持する)と共に、第二売買電メータ63の検出結果と同一の大きさの電力を充電するよう、施設側蓄電池22に対して指示を行う。こうして、施設側蓄電池22は、施設側蓄電池22からの逆潮流分の電力を充電することができる。制御部70は、ステップS209の処理を実行した後、第二蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0106】
また上述の如く住宅街区A1の住宅側蓄電池52が放電していると判定した場合(ステップS204:YES)に移行するステップS210において、制御部70は、施設側蓄電池22に対して待機(停止)指示を行う。すなわち、制御部70は、施設側蓄電池22の運転モードを待機モードに切り換える(既に待機モードであれば当該モードを維持する)。こうして、施設側蓄電池22は、充電や放電を行っていたい場合であっても停止することができる。制御部70は、ステップS210の処理を実行した後、第二蓄電システム動作制御を一旦終了させる。
【0107】
以下では、上述の如き第二蓄電システム動作制御を実行した場合の電力の流通態様の一例について説明する。
【0108】
まず、図7及び図8は、第二蓄電システム動作制御を実行した場合の電力の流通態様の第一の例を示す図である。
【0109】
図7に示す状態においては、住宅街区A1の電力負荷の合計(合計使用電力)が、7000Wであるものとする。また、住宅街区A1の住宅側発電部51の発電電力の合計(合計発電電力)が、8000Wであるものとする。そして、8000Wのうち、7000Wが住宅街区A1の電力負荷へと供給され、残りの1000Wが上流側へと流れて商業施設Sの電力負荷へと供給(融通)されているものとする。また、商業施設Sの電力負荷の合計(合計使用電力)が、10000Wであるものとする。また、商業施設Sの施設側発電部21の発電電力(太陽光発電)が、8000Wであるものとする。また、系統電源Kからの電力(合計購入電力)が、1000Wであるものとする。
【0110】
このような場合、住宅街区A1から逆潮流があり、かつ、住宅街区A1の住宅側蓄電池52が放電しておらず、かつ、商業施設Sから逆潮流がないため(ステップS203:YES、ステップS204:NO、ステップS205:NO)、施設側蓄電池22は住宅街区A1からの逆潮流分の電力を充電する(ステップS206)。
【0111】
その結果、図8に示すように、住宅街区A1の住宅側発電部51の発電電力のうち、上流側へ流れた1000W分の電力が、施設側蓄電池22に充電される。こうして、系統電源Kからの電力(合計購入電力)が、2000Wへと増加するものの、施設側蓄電池22に住宅街区A1の余剰電力を充電させることができる。
【0112】
次に、図9及び図10は、第二蓄電システム動作制御を実行した場合の電力の流通態様の第二の例を示す図である。
【0113】
図9に示す状態においては、住宅街区A1の電力負荷の合計(合計使用電力)が、7000Wであるものとする。また、住宅街区A1の住宅側蓄電池52の放電電力の合計(合計放電電力)が、8000Wであるものとする。そして、8000Wのうち、7000Wが住宅街区A1の電力負荷へと供給され、残りの1000Wが上流側へと流れて商業施設Sの電力負荷へと供給(融通)されているものとする。また、商業施設Sの電力負荷の合計(合計使用電力)が、10000Wであるものとする。また、商業施設Sの施設側発電部21の発電電力(太陽光発電)が、0Wであるものとする。また、系統電源Kからの電力(合計購入電力)が、9000Wであるものとする。
【0114】
このような場合、住宅街区A1から逆潮流があり、かつ、住宅街区A1の住宅側蓄電池52が放電しているため(ステップS203:YES、ステップS204:YES)、施設側蓄電池22は停止する(ステップS210)。
【0115】
その結果、図10に示すように、住宅街区A1の住宅側発電部51の発電電力のうち、上流側へ流れた1000Wの電力が、そのまま商業施設Sの電力負荷へと供給(融通)される。こうして、図8に示した場合とは異なり、施設側蓄電池22は、住宅街区A1から上流側へと流れる電力がある場合、当該電力が住宅側蓄電池52の放電電力である場合には、充電を行わない。こうして、一旦他の蓄電池(住宅側蓄電池52)に充電された電力を再度異なる蓄電池(施設側蓄電池22)に充電するという、非効率的な動作を回避することができる。
【0116】
次に、図11及び図12は、第二蓄電システム動作制御を実行した場合の電力の流通態様の第三の例を示す図である。
【0117】
図11に示す状態においては、住宅街区A1の電力負荷の合計(合計使用電力)が、4000Wであるものとする。また、住宅街区A1の住宅側発電部51の発電電力の合計(合計発電電力)が、4000Wであるものとする。また、商業施設Sの電力負荷の合計(合計使用電力)が、1000Wであるものとする。また、商業施設Sの施設側発電部21の発電電力(太陽光発電)が、5000Wであるものとする。そして、5000Wのうち、1000Wが商業施設Sの電力負荷へと供給され、残りの4000Wが上流側へと流れて系統電源Kへと売却されているものとする。なおこのような状態(施設側発電部21の発電電力が商業施設Sの電力負荷に余剰している状態)は、商業施設Sが営業していない(定休日である)ことが想定される。
【0118】
このような場合、住宅街区A1から逆潮流がなく、かつ、商業施設Sから逆潮流があるため(ステップS203:NO、ステップS208:YES)、施設側蓄電池22は、商業施設Sからの逆潮流分の電力を充電する(ステップS209)。
【0119】
その結果、図12に示すように、施設側蓄電池22は、商業施設Sの施設側発電部21の発電電力のうち、上流側へ流れていた4000W分の電力に対して充電を行う。なお、施設側蓄電池22の最大充電電力は2000Wであるため、図12に示す状態においては4000Wではなく2000Wの電力が充電されている。こうして、系統電源Kへと売却する電力は減少するものの、施設側蓄電池22に施設側発電部21の余剰電力(施設側発電部21の発電電力のうち商業施設Sの電力負荷に余剰する電力)を充電させることができる。
【0120】
次に、図13及び図14は、第二蓄電システム動作制御を実行した場合の電力の流通態様の第四の例を示す図である。
【0121】
図13に示す状態においては、住宅街区A1の電力負荷の合計(合計使用電力)が、4000Wであるものとする。また、住宅街区A1の住宅側発電部51の発電電力の合計(合計発電電力)が、5000Wであるものとする。そして、5000Wのうち、4000Wが住宅街区A1の電力負荷へと供給され、残りの1000Wが上流側へと流れて系統電源Kへと売却されているものとする。また、商業施設Sの電力負荷の合計(合計使用電力)が、1000Wであるものとする。また、商業施設Sの施設側発電部21の発電電力(太陽光発電)が、5000Wであるものとする。そして、5000Wのうち、1000Wが商業施設Sの電力負荷へと供給され、残りの4000Wが上流側へと流れて系統電源Kへと売却されているものとする。また、系統電源Kへの売却する電力の電力(合計逆潮流)が、5000Wであるものとする。
【0122】
このような場合、住宅街区A1から逆潮流があり、かつ、住宅街区A1の住宅側蓄電池52が放電しておらず、かつ、商業施設Sから逆潮流があるため(ステップS203:YES、ステップS204:NO、ステップS205:YES)、施設側蓄電池22は、商業施設S及び住宅街区A1からの逆潮流分の合計の電力を充電する(ステップS207)。
【0123】
その結果、図14に示すように、施設側蓄電池22は、商業施設Sの施設側発電部21の発電電力のうち上流側へ流れた4000W分と、住宅街区A1の住宅側発電部51の発電電力のうち上流側へ流れた1000W分との合計の電力に対して充電を行う。なお、施設側蓄電池22の最大充電電力は2000Wであるため、図14に示す状態においては5000Wではなく2000Wの電力が充電されている。こうして、系統電源Kへと売却する電力は減少するものの、施設側発電部21及び住宅側発電部51の余剰電力を施設側蓄電池22に充電させることができる。
【0124】
次に、図15及び図16は、第二蓄電システム動作制御を実行した場合の電力の流通態様の第五の例を示す図である。
【0125】
図15に示す状態においては、住宅街区A1の電力負荷の合計(合計使用電力)が、10000Wであるものとする。また、住宅街区A1の住宅側蓄電池52の放電電力の合計(合計放電電力)が、8000Wであるものとする。また、住宅街区A1の電力負荷に対して住宅街区A1の住宅側蓄電池52の放電電力では不足するため、系統電源Kからの電力(購入電力)が、2000Wであるものとする。また、商業施設Sの電力負荷の合計(合計使用電力)が、10000Wであるものとする。また、系統電源Kからの電力(合計購入電力)が、12000Wであるものとする。
【0126】
このような場合、住宅街区A1で電力を購入しているため(ステップS201:YES)、施設側蓄電池22は、施設側センサ23の検出結果に基づいて負荷追従運転により放電を行う(ステップS202)。
【0127】
その結果、図16に示すように、施設側センサ23の検出結果が10000Wとなることから、施設側蓄電池22は最大放電電力である2000Wで放電を行う。施設側蓄電池22の放電電力は商業施設Sの電力負荷へと供給される。すなわち、商業施設Sの電力負荷の一部を、施設側蓄電池22の放電電力で賄うことができる。こうして、系統電源Kからの電力(合計購入電力)を減少させることができる。
【0128】
以上の如く、本実施形態に係る電力供給システム1においては、
系統電源Kと住宅側分電盤40(第一電力負荷)とを接続する第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)と、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)の第二接続点P2(中途部)と施設側分電盤10(第二電力負荷)とを接続する第二の配電線(第二配電線L2)と、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)の前記第二接続点P2(中途部)と前記住宅側分電盤40(第一電力負荷)との間に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)に出力可能な住宅側発電部51(第一発電部)と、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)の前記第二接続点P2(中途部)よりも系統電源K側に設けられ、電力を検出可能な住宅側センサ53(第一電力センサ)と、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)の前記第二接続点P2(中途部)と前記住宅側分電盤40(第一電力負荷)との間に設けられ、前記住宅側発電部51(第一発電部)の発電電力を充放電可能であり、前記住宅側センサ53(第一電力センサ)の検出結果に基づいた電力を前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)に出力可能な住宅側蓄電池52(第一蓄電池)と、
前記第二の配電線(第二配電線L2)の前記施設側分電盤10(第二電力負荷)よりも前記第二接続点P2(中途部)側に設けられ、電力を充放電可能である施設側蓄電池22(第二蓄電池)と、
少なくとも前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)の電力の流通態様に応じて前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)を制御する制御部70と、
を具備するものである。
【0129】
このような構成により、第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)の電力の流通態様に応じて施設側蓄電池22を有効に活用することができる。
具体的には、第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)の電力の流通態様、すなわち住宅側蓄電システム50(住宅側発電部51や住宅側蓄電池52)から第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)に出力された電力が上流側へ流れているかに応じて施設側蓄電池22の充放電を行うことができるため、施設側蓄電池22を有効に活用することができる。
【0130】
また、電力供給システム1において、
前記制御部70は、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)を上流側に流れる電力があって、前記住宅側蓄電池52(第一蓄電池)が放電していない場合、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)を上流側に流れる電力に基づいて、前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)に充電指示を行うものである(ステップS203:YES、ステップS204:NO、ステップS206)。
【0131】
このような構成により、本実施形態のように、商業施設Sの電力負荷が施設側蓄電システム20が出力可能な電力と比較しても非常に大きい場合に、住宅街区A1から上流側へ流れる電力に基づいて、施設側蓄電池22を充電させることができる。こうして、施設側蓄電池22は充電した電力を適宜放電可能となるため、当該施設側蓄電池22を有効に活用することができる。
【0132】
また、電力供給システム1において、
前記制御部70は、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)を上流側に流れる電力があって、前記住宅側蓄電池52(第一蓄電池)が放電している場合、
前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)に充電の停止指示を行うものである(ステップS203:YES、ステップS204:YES、ステップS210)。
【0133】
このような構成により、施設側蓄電池22は、住宅街区A1から上流側へと流れる電力がある場合であっても、当該電力が住宅側蓄電池52の放電電力である場合には充電を行わない。こうして、施設側蓄電池22において、一旦他の蓄電池(住宅側蓄電池52)に充電された電力を再度充電するという非効率的な動作を回避することができ、当該施設側蓄電池22を有効に活用することができる。
【0134】
また、電力供給システム1において、
前記第二の配電線(第二配電線L2)の前記施設側分電盤10(第二電力負荷)よりも前記第二接続点P2(中途部)側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第二の配電線(第二配電線L2)に出力可能な施設側発電部21(第二発電部)を具備し、
前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)は、
前記施設側発電部21(第二発電部)の発電電力を充放電可能であり、
前記制御部70は、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)及び前記第二の配電線(第二配電線L2)を上流側に流れる電力があって、前記住宅側蓄電池52(第一蓄電池)が放電していない場合、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)及び前記第二の配電線(第二配電線L2)を上流側に流れる電力に基づいて、前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)に充電指示を行うものである(ステップS203:YES、ステップS204:NO、ステップS206、ステップS207)。
【0135】
このような構成により、施設側発電部21及び住宅側発電部51の余剰電力に基づいて施設側蓄電池22に充電させることができる。こうして、施設側蓄電池22を有効に活用することができる。
【0136】
また、電力供給システム1において、
前記第二の配電線(第二配電線L2)の前記施設側分電盤10(第二電力負荷)よりも前記第二接続点P2(中途部)側に設けられ、自然エネルギーを用いて発電可能であって発電電力を前記第二の配電線(第二配電線L2)に出力可能な施設側発電部21(第二発電部)を具備し、
前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)は、
前記施設側発電部21(第二発電部)の発電電力を充放電可能であり、
前記制御部70は、
前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)を前記第二接続点P2(中途部)側に流れる電力がなく、前記第二の配電線(第二配電線L2)を上流側に流れる電力がある場合、
前記第二の配電線(第二配電線L2)を上流側に流れる電力に基づいて、前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)に充電指示を行うものである(ステップS203:NO、ステップS208:YES、ステップS209)。
【0137】
このような構成により、施設側発電部21の余剰電力に基づいて施設側蓄電池22に充電させることができる。こうして、施設側蓄電池22を有効に活用することができる。
【0138】
また、電力供給システム1において、
前記制御部70は、
系統電源Kからの電力が前記第一の配電線(第一配電線L1及び第三配電線L3)を前記住宅側分電盤40(第一電力負荷)側に流れている場合、
前記施設側蓄電池22(第二蓄電池)に放電指示を行うものである(ステップS201:YES、ステップS202)。
【0139】
このような構成により、例えば住宅街区A1からの電力が上流側へ流れている場合(すなわち、住宅街区A1からの電力が商業施設Sの電力負荷へ融通されている場合)とは異なるタイミングで施設側蓄電池22を放電させることができる。こうして、施設側蓄電池22の放電電力を可及的に商業施設Sの電力負荷へと供給することができ、施設側蓄電池22を有効に活用することができる。
【0140】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0141】
例えば、本実施形態において、施設側蓄電池22及び住宅側蓄電池52は、太陽光を利用して発電するものとしたが、他の自然エネルギー(例えば、水力や風力)を利用して発電するものであってもよい。
【0142】
また、本実施形態において、住宅側蓄電池52が設置したから現在に至るまでの間に放電された電力量の総和を積算放電量としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば所定の一定期間(例えば、直近の24時間)の間に放電された電力量の総和を積算放電量とてもよい。また、本実施形態においては、積算放電量に基づいて放電優先順位を決定するものとしたが、放電優先順位を決定する基準はこれに限定されるものではなく、例えば住宅側蓄電池52の充電状態(電力を蓄積可能な定格容量に対して蓄積されている電池残量の割合)や充電回数に基づいて決定するものであってもよい。
【0143】
また、本実施形態においては、住宅Hや住宅側蓄電システム50は4つであるとしたが、これに限定するものではない。すなわち、住宅Hや住宅側蓄電システム50は任意の数とすることができる。また同様に、商業施設Sや施設側蓄電システム20も任意の数とすることができる。
【0144】
また、各種の電力メータの配置は、本実施形態に係るものに限定されない。すなわち、制御部70は所望の情報を取得できるならば、電力メータの配置は任意に設定することができる。
【0145】
また、住宅側蓄電システム50及び施設側蓄電システム20には、例えば固体高分子形燃料電池(PEFC)や、固体酸化物形燃料電池(SOFC : Solid Oxide Fuel Cell)等の燃料電池を設けることができる。また、住宅側蓄電池52及び施設側蓄電池22は、前記燃料電池の発電電力を充放電することもできる。
【符号の説明】
【0146】
1 電力供給システム
10 施設側分電盤
22 施設側蓄電池
40 住宅側分電盤
51 住宅側発電部
52 住宅側蓄電池
53 住宅側センサ
70 制御部
K 系統電源
L1 第一配電線
L2 第二配電線
P2 接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16