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  • 特許-赤色系複層塗膜および車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】赤色系複層塗膜および車両
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20241114BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241114BHJP
   B62D 25/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B32B7/023
C09D201/00
B62D25/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020152428
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046383
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】薮下 千聡
(72)【発明者】
【氏名】上林 由佳
(72)【発明者】
【氏名】上原 多麻美
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123248(JP,A)
【文献】特開2014-042891(JP,A)
【文献】特開2016-193385(JP,A)
【文献】特開2010-240596(JP,A)
【文献】特開2011-020021(JP,A)
【文献】特開2002-080787(JP,A)
【文献】特開平02-120369(JP,A)
【文献】特開平03-028276(JP,A)
【文献】特開昭60-132679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0060552(US,A1)
【文献】国際公開第2019/139138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
C09D 201/00
B62D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に、
*88の白色系塗膜と、
マンセル・カラー・システムで1YR~10Yの色相を有する第1ベース塗膜と、
マンセル・カラー・システムで1R~10Rの色相を有する第2ベース塗膜と、
クリヤー塗膜と、を有する赤色系複層塗膜であって、
前記赤色系複層塗膜の、分光反射率に明所視の分光視感効率をかけた値SSから得られる曲線において、波長580nmにおける値が3.0~4.7%であり、かつ、前記曲線の波長590nm~650nmにおいて、16.3~33.0%の極大値を有する、赤色系複層塗膜。(ただし、前記分光反射率は、前記赤色系複層塗膜の前記クリヤー塗膜側において、前記赤色系複層塗膜の法線に対して入射角45°から照射した光に対する、受光角45°で受光した光の分光反射率である。)
【請求項2】
前記曲線の波長500nm~570nmにおいて、1.5~5%の範囲内の極大値を有する、請求項1に記載の赤色系複層塗膜。
【請求項3】
請求項1または2に記載の赤色系複層塗膜を有し、前記クリヤー塗膜側が外側に位置する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色系複層塗膜および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体などの被塗物の表面には、異なる機能を有する複数の塗膜を順次形成して、被塗物を保護すると同時に優れた意匠性を付与している。
【0003】
例えば、自動車車体におけるこのような複数の塗膜の形成方法としては、被塗物上に電着塗膜などの下塗り塗膜を形成し、その上に、中塗り塗膜および上塗り塗膜を順次形成する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。これらの塗膜において、塗膜の意匠性を特に大きく左右するのは、上塗り塗膜であり、上塗り塗膜は、ベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる。
【0004】
さらに、ベース塗膜は、いわゆるメタリック塗膜とソリッド塗膜とに大別することができる。一般的に、メタリック塗膜は、光輝感を有する鱗片状顔料(例えば、アルミフレーク)を含む塗膜であり、ソリッド塗膜は、鱗片状顔料を含まない塗膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-099888号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
メタリック塗膜の他、自動車の意匠性を高める手法の1つとして、高い明度(色の明るさ)と高い彩度(色の鮮やかさ)を有する色を使用することが考えられる。
【0007】
そして、赤色の自動車は生産台数が多く、また、赤色は、自動車の塗装の色において展開される色数も多いため、赤色は、主要な色の1つである。
【0008】
しかし、単層の赤色塗膜では一般に、明度と彩度がトレードオフの関係にあるため、塗膜の明度を高くしようと白色顔料の量を増やすと、塗膜の彩度が低くなり、塗膜の彩度を高くしようと赤色顔料の量を増やすと、明度が低くなる。
【0009】
本発明者らは、ソリッド塗膜で、高い明度と高い彩度とを両立することができれば、色の表現幅が大きく広がり、自動車の意匠性をより高めることができると考えた。
【0010】
そこで、本発明は、高い明度と高い彩度とを有する赤色系塗膜を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の別の目的は、高い明度と高い彩度とを有する赤色系塗膜を有する車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る赤色系複層塗膜は、
順に、
*値80以上の白色系塗膜と、
マンセル・カラー・システムで1YR~10Yの色相を有する第1ベース塗膜と、
マンセル・カラー・システムで1R~10Rの色相を有する第2ベース塗膜と、
クリヤー塗膜と、を有する赤色系複層塗膜であって、
前記赤色系複層塗膜の、分光反射率に明所視の分光視感効率をかけた値SSから得られる曲線において、波長580nmにおける値が5%以下であり、かつ、前記曲線の波長590nm~650nmにおいて、15%以上の極大値を有する、赤色系複層塗膜(ただし、前記分光反射率は、前記赤色系複層塗膜の前記クリヤー塗膜側において、前記赤色系複層塗膜の法線に対して入射角45°から照射した光に対する、受光角45°で受光した光の分光反射率である。)である。これにより、赤色系複層塗膜は、高い明度と高い彩度とを有する。
【0013】
本発明に係る赤色系複層塗膜の一実施形態では、前記曲線の波長500nm~570nmにおいて、1.5~5%の範囲内の極大値を有する。
【0014】
本発明に係る車両は、赤色系複層塗膜を有し、前記クリヤー塗膜側が外側に位置する、車両である。これにより、車両は、高い明度と高い彩度とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い明度と高い彩度とを有する赤色系塗膜を提供することができる。本発明によれば、高い明度と高い彩度とを有する赤色系塗膜を有する車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の赤色系複層塗膜の構成の一例を示す模式断面図である。
図2図2は、本発明の赤色系複層塗膜の構成の別の一例を示す模式断面図である。
図3図3は、分光反射率の測定方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0019】
本発明において、L*値、a*値、b*値およびC*値は、それぞれ、JIS Z 8781-4:2013に定義されるCIE 1976 明度指数、CIELAB 1976 a*座標、CIELAB 1976 b*座標、CIELAB 1976 abクロマである。L*値が大きいほど、測定対象の白色度が高く、明度が高いことを表し、L*値が小さいほど、測定対象の黒色度が高いことを表す。a*値は、マイナスの値が大きいほど、測定対象の緑色度が高いことを表し、プラスの値が大きいほど、測定対象のマゼンタ度が高いことを表す。b*値は、マイナスの値が大きいほど、測定対象の青色度が高いことを表し、プラスの値が大きいほど、測定対象の黄色度が高いことを表す。C*値は、彩度を表す指標であり、値が大きいほど、測定対象の色が鮮やかであることを表し、値が小さいほど、測定対象が無彩色であることを表す。
【0020】
本発明において、赤色系複層塗膜ならびに白色系塗膜のL*値、a*値、b*値およびC*値は、実施例に記載の方法により測定する。
【0021】
本発明において、赤色系複層塗膜の分光反射率は、実施例に記載の方法により測定する。
【0022】
本発明において、各塗膜または層の厚さを「膜厚」と表す。
【0023】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、590~650nmは、590nm以上650nm以下を意味する。
【0024】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
【0025】
添付の図面は、本発明の理解を容易にすることを優先した模式図であるため、図中の各塗膜および層の縮尺は正確ではない。
【0026】
本発明において、第1、第2などの用語は、様々な層を説明するために本明細書で使用されるが、これらの層は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は、ある層を他の層と区別するためにのみ使用される。
【0027】
(赤色系複層塗膜)
本発明に係る赤色系複層塗膜は、
順に、
*値80以上の白色系塗膜と、
マンセル・カラー・システムで1YR~10Yの色相を有する第1ベース塗膜と、
マンセル・カラー・システムで1R~10Rの色相を有する第2ベース塗膜と、
クリヤー塗膜と、を有する赤色系複層塗膜であって、
前記赤色系複層塗膜の、分光反射率に明所視の分光視感効率をかけた値SSから得られる曲線において、波長580nmにおける値が5%以下であり、かつ、前記曲線の波長590nm~650nmにおいて、15%以上の極大値を有する、赤色系複層塗膜(ただし、前記分光反射率は、前記赤色系複層塗膜の前記クリヤー塗膜側において、前記赤色系複層塗膜の法線に対して入射角45°から照射した光に対する、受光角45°で受光した光の分光反射率である。)である。
【0028】
図1は、本発明の赤色系複層塗膜の構成の一例を示す模式断面図である。図1の例の赤色系複層塗膜1は、順に、L*値80以上の白色系塗膜10と、マンセル・カラー・システムで1YR~10Yの色相を有する第1ベース塗膜20と、マンセル・カラー・システムで1R~10Rの色相を有する第2ベース塗膜30と、クリヤー塗膜40とを有する。
【0029】
以下、本発明の赤色系複層塗膜の必須構成要素である、白色系塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜およびクリヤー塗膜について例示説明する。以下、本発明の赤色系複層塗膜の白色系塗膜およびクリヤー塗膜をそれぞれ、単に「白色系塗膜」および「クリヤー塗膜」ということがある。
【0030】
・白色系塗膜
本発明の赤色系複層塗膜の白色系塗膜は、L*値80以上の白色系塗膜であり、中塗り塗膜である。本発明の赤色系複層塗膜の白色系塗膜は、赤色系複層塗膜に明度を付与する働きを有する。
【0031】
白色系塗膜の「白色系」は、日塗工色見本のN8.0~N10.0を表す。
【0032】
白色系塗膜のL*値は、80以上であり、L*値が80未満の場合、赤色系複層塗膜の高い明度と高い彩度とを両立することができない。白色系塗膜のL*値は、例えば、80~95である。一実施形態では、白色系塗膜のL*値は、80以上、81以上、82以上、83以上、84以上、85以上、86以上、87以上、89以上、90以上、91以上、92以上、93以上または94以上である。別の実施形態では、白色系塗膜のL*値は、95以下、94以下、93以下、92以下、91以下、90以下、89以下、88以下、87以下、86以下、85以下、84以下、83以下、82以下または81以下である。
【0033】
白色系塗膜は、白色顔料と塗膜形成樹脂を含む。
【0034】
白色顔料としては、特に限定されず、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などの公知の白色顔料を用いることができる。白色顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
白色系塗膜の白色顔料の量は、L*値が80以上となるように適宜調節すればよいが、例えば、白色系塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して、1~60質量部である。
【0036】
白色系塗膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、鱗片状のアルミフレーク顔料、マイカ顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料などの公知の光輝性顔料を含んでいてもよい。白色系塗膜が、光輝性顔料を含む場合、含有量は、例えば、白色系塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して、5質量部以下、4質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下または0.1質量部以下である。一実施形態では、白色系塗膜は、光輝性顔料を含まない。
【0037】
白色系塗膜の塗膜形成樹脂としては、特に限定されず、公知の中塗り塗膜の塗膜形成樹脂を用いることができる。白色系塗膜の塗膜形成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテル樹脂などが挙げられる。塗膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
白色系塗膜は、白色顔料と塗膜形成樹脂を含めばよく、白色顔料以外の顔料、硬化剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤などのその他の成分を含んでいてもよい。
【0039】
白色系塗膜のL*値を、80以上とする方法としては、例えば、上記の白色顔料を白色系塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して1~60質量部配合すること、高屈折率顔料の使用などが挙げられる。
【0040】
白色系塗膜の膜厚は、特に限定されず、適宜調節すればよいが、例えば、5~50μm、好ましくは10~30μmである。一実施形態では、白色系塗膜の膜厚は、10μm以上、15μm以上、20μm以上または25μm以上である。別の実施形態では、白色系塗膜の膜厚は、30μm以下、25μm以下、20μm以下または15μm以下である。
【0041】
白色系塗膜は、1種単独で用いてもよいし、L*値、膜厚などが異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、赤色系複層塗膜のある部分では、白色系塗膜のL*値が80であり、赤色系複層塗膜の別の部分では、白色系塗膜のL*値が85であってもよい。
【0042】
・第1ベース塗膜
本発明の赤色系複層塗膜の第1ベース塗膜は、マンセル・カラー・システムで1YR~10Yの色相を有する塗膜であり、第1の上塗り塗膜である。本発明の赤色系複層塗膜の第1ベース塗膜は、赤色系複層塗膜に明度と彩度を付与する働きを有する。
【0043】
第1ベース塗膜は、マンセル・カラー・システム(100色相)で1YR~10Yの色相、すなわち、1YR、2YR,3YR,4YR、5YR、6YR、7YR、8YR,9YR,10YR、1Y、2Y、3Y、4Y、5Y、6Y、7Y、8Y、9Yおよび10Yからなる群より選択される1種以上の色相を有する。第1ベース塗膜の色相が、1YRよりも赤色(5R)側の場合、または10Yよりも緑色(5GY)側の場合、赤色系複層塗膜の明度と彩度を高度にバランスさせることができない。第1ベース塗膜の色相は、視感感度を高める観点から、好適な実施形態では、第1ベース塗膜の色相は、6YR、4Y、5Y、6Y、7Y、8Y、9Yおよび10Yからなる群より選択される1種以上である。別の好適な実施形態では、第1ベース塗膜の色相は、4Y、5Y、6Y、7Y、8Y、9Yおよび10Yからなる群より選択される1種以上である。さらに別の好適な実施形態では、第1ベース塗膜の色相は、5Y、6Y、7Y、8Y、9Yおよび10Yからなる群より選択される1種以上である。さらに別の好適な実施形態では、第1ベース塗膜の色相は、5Yおよび10Yからなる群より選択される1種以上である。
【0044】
第1ベース塗膜は、顔料と塗膜形成樹脂を含む。
【0045】
第1ベース塗膜の顔料としては、第1ベース塗膜の色相を1YR~10Yの色相範囲に調節できる顔料であれば特に限定されない。第1ベース塗膜の顔料としては、例えばホスターパームイエローなどの公知の顔料を用いることができる。第1ベース塗膜の顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
第1ベース塗膜の顔料の量は、第1ベース塗膜の色相が1YR~10Yの範囲となるように適宜調節すればよいが、例えば、第1ベース塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して、1~30質量部である。
【0047】
第1ベース塗膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記光輝性顔料を含んでいてもよい。第1ベース塗膜が、光輝性顔料を含む場合、含有量は、例えば、第1ベース塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して、5質量部以下、4質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下または0.1質量部以下である。一実施形態では、第1ベース塗膜は、光輝性顔料を含まない。
【0048】
第1ベース塗膜の塗膜形成樹脂としては、特に限定されず、公知の上塗り塗膜の塗膜形成樹脂を用いることができる。第1ベース塗膜の塗膜形成樹脂としては、例えば、上記白色系塗膜で挙げた塗膜形成樹脂などが挙げられる。塗膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
第1ベース塗膜は、顔料と塗膜形成樹脂を含み、その色相が1YR~10Yの色相範囲に入ればよく、上述した顔料以外の顔料、硬化剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤などのその他の成分を含んでいてもよい。
【0050】
第1ベース塗膜の膜厚は、特に限定されず、適宜調節すればよいが、例えば、2~30μm、好ましくは5~15μmである。膜厚を5μmよりも厚くすることで、赤色系複層塗膜の明度と彩度が高度に高まりやすくなる。また、膜厚を15μmよりも薄くすることで、彩度を高くしながら、下地である白色系塗膜の明度を生かし、赤色系複層塗膜の明度をより高く保つことができる。一実施形態では、第1ベース塗膜の膜厚は、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上または14μm以上である。別の実施形態では、第1ベース塗膜の膜厚は、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下または6μm以下である。
【0051】
第1ベース塗膜は、1種単独で用いてもよいし、色相、膜厚などが異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、赤色系複層塗膜のある部分では、第1ベース塗膜の色相が5Yであり、赤色系複層塗膜の別の部分では、第1ベース塗膜の色相が10Yであってもよい。
【0052】
・第2ベース塗膜
本発明の赤色系複層塗膜の第2ベース塗膜は、マンセル・カラー・システムで1R~10Rの色相を有する塗膜であり、第2の上塗り塗膜である。本発明の赤色系複層塗膜の第2ベース塗膜は、赤色系複層塗膜に彩度を付与する働きを有する。
【0053】
第2ベース塗膜は、マンセル・カラー・システム(100色相)で1R~10Rの色相、すなわち、1R、2R、3R、4R、5R、6R、7R、8R、9Rおよび10Rからなる群より選択される1種以上の色相を有する。第2ベース塗膜の色相が、1Rよりも紫色側の場合、または10Rよりも橙色側の場合、赤色系複層塗膜の明度と彩度を高度にバランスさせることができない。第2ベース塗膜の色相は、明度と彩度の両方の向上の観点から、好適な実施形態では、3R、4R、5R、6Rおよび7Rからなる群より選択される1種以上の色相である。
【0054】
第2ベース塗膜は、顔料と塗膜形成樹脂を含む。
【0055】
第2ベース塗膜の顔料としては、第2ベース塗膜の色相を1R~10Rの色相範囲に調節できる顔料であれば特に限定されない。第2ベース塗膜の顔料としては、例えば、イルガジンDPPレッドなどの公知の顔料を用いることができる。第2ベース塗膜の顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
第2ベース塗膜の顔料の量は、第2ベース塗膜の色相が1R~10Rの範囲となるように適宜調節すればよいが、例えば、第2ベース塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して、1~30質量部である。
【0057】
第2ベース塗膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記光輝性顔料を含んでいてもよい。第2ベース塗膜が、光輝性顔料を含む場合、含有量は、例えば、第2ベース塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して、5質量部以下、4質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下または0.1質量部以下である。一実施形態では、第2ベース塗膜は、光輝性顔料を含まない。
【0058】
第2ベース塗膜の塗膜形成樹脂としては、特に限定されず、公知の上塗り塗膜の塗膜形成樹脂を用いることができる。第2ベース塗膜の塗膜形成樹脂としては、例えば、上記白色系塗膜で挙げた塗膜形成樹脂などが挙げられる。塗膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
第2ベース塗膜は、顔料と塗膜形成樹脂を含み、その色相が1R~10Rの色相範囲に入ればよく、上述した顔料以外の顔料、硬化剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤などのその他の成分を含んでいてもよい。
【0060】
第2ベース塗膜の膜厚は、特に限定されず、適宜調節すればよいが、例えば、2~30μm、好ましくは5~15μmである。膜厚を5~15μmとすることで、赤色系複層塗膜の明度と彩度をより高度にバランスさせることができる。一実施形態では、第2ベース塗膜の膜厚は、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上または14μm以上である。別の実施形態では、第2ベース塗膜の膜厚は、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下または6μm以下である。
【0061】
第2ベース塗膜は、1種単独で用いてもよいし、色相、膜厚などが異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、赤色系複層塗膜のある部分では、第2ベース塗膜の色相が3Rであり、赤色系複層塗膜の別の部分では、第2ベース塗膜の色相が7Rであってもよい。
【0062】
・クリヤー塗膜
本発明の赤色系複層塗膜のクリヤー塗膜は、赤色系複層塗膜に対候性などを付与する働きを有する。クリヤー塗膜は特に限定されず、例えば、特開2016-188332号などに記載の公知のクリヤー塗膜とすることができる。
【0063】
クリヤー塗膜は、塗膜形成樹脂を含む。クリヤー塗膜の塗膜形成樹脂としては、特に限定されず、公知のクリヤー塗膜の塗膜形成樹脂を用いることができる。クリヤー塗膜の塗膜形成樹脂としては、例えば、上記白色系塗膜で挙げた塗膜形成樹脂などが挙げられる。塗膜形成樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
クリヤー塗膜は、塗膜形成樹脂の他、紫外線吸収剤、顔料、硬化剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤などのその他の成分を含んでいてもよい。
【0065】
クリヤー塗膜は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記光輝性顔料を含んでいてもよい。クリヤー塗膜が、光輝性顔料を含む場合、含有量は、例えば、クリヤー塗膜の塗膜形成樹脂の固形分100質量部に対して、3質量部以下、2質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下または0.1質量部以下である。一実施形態では、クリヤー塗膜は、光輝性顔料を含まない。
【0066】
クリヤー塗膜の膜厚は、特に限定されず、適宜調節すればよいが、例えば、10~80μmである。一実施形態では、クリヤー塗膜の膜厚は、10μm以上、20μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上または70μm以上である。別の実施形態では、クリヤー塗膜の膜厚は、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下または20μm以下である。
【0067】
・その他の層
本発明の赤色系複層塗膜は、順に、白色系塗膜と、第1ベース塗膜と、第2ベース塗膜と、クリヤー塗膜とを有すればよく、これらに加えて、他の層を任意の位置に有していてもよい。
【0068】
図2は、本発明の赤色系複層塗膜の構成の別の一例を示す模式断面図である。図2の例の赤色系複層塗膜1は、順に、白色系塗膜10と、金属蒸着層50と、第1ベース塗膜20と、第2ベース塗膜30と、クリヤー塗膜40とを有する。
【0069】
一実施形態では、本発明の赤色系複層塗膜は、順に隣接して、白色系塗膜10と、第1ベース塗膜20と、第2ベース塗膜30と、クリヤー塗膜40とを有する。別の実施形態では、本発明の赤色系複層塗膜は、順に白色系塗膜10と、第1ベース塗膜20と、第2ベース塗膜30と、クリヤー塗膜40との4層からなる。
【0070】
一実施形態では、本津明の赤色系複層塗膜は、光輝性顔料を含まない。
【0071】
赤色系複層塗膜の膜厚は、特に限定されず、適宜調節すればよいが、例えば、40~100である。一実施形態では、赤色系複層塗膜の膜厚は、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上、85μm以上、または90μm以上である。別の実施形態では、赤色系複層塗膜の膜厚は、100μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下または50μm以下である。
【0072】
・分光反射率と明所視の分光視感効率との積から得られる曲線
本発明の赤色系複層塗膜は、赤色系複層塗膜の、分光反射率(%)に明所視の分光視感効率をかけた値SSから得られる曲線において、波長580nmにおける値が5%以下であり、かつ、前記曲線の波長590nm~650nmにおいて、15%以上の極大値を有する。これにより、赤色系複層塗膜は、高い明度と高い彩度とを有する。
【0073】
本発明において、分光反射率(%)は、赤色系複層塗膜のクリヤー塗膜側において、赤色系複層塗膜の法線に対して角度45°(入射角45°)から照射した光に対する、正反射光から入射光方向への角度が45°(受光角45°)で受光した光の分光反射率である(図3参照)。また、分光反射率の対象波長域は、400nm~700nmであり、分光反射率は、波長400nm~700nmの範囲で10nmおきに測定して得られる値とする。
【0074】
分光視感効率は、ヒトの目が光の各波長での明るさを感じる強さを数値(最大で1)で表したものである。明所視の分光視感効率は、明所視におけるCIE 標準分光視感効率である。波長360nm~830nmの範囲の5nmおきの明所視の分光視感効率の値は、例えば、平成4年通商産業省令第80号 計量単位規則の別表第8に規定されている。明所視の分光視感効率は、例えば、波長450nm~650nmでは、以下の表1のとおりであり、波長555nmでの分光視感効率が最大であり、1である。
【表1】
【0075】
本発明では、赤色系複層塗膜の分光反射率だけでなく、その分光反射率に明所視での分光視感効率をかけた値SSによって、目視評価により近い色相と質感の評価が可能となると考えられる。
【0076】
さらに、本発明では、赤色系複層塗膜の、分光反射率に明所視の分光視感効率をかけた値SSから得られる曲線(以下、単に「値SSの曲線」ということがある)は、波長580nmにおける値が5%以下であり、かつ、その曲線の波長590nm~650nmにおいて、15%以上の極大値を有する。赤色系複層塗膜は、このような曲線を有することによって、高い明度と高い彩度とを有する。値SSの曲線の波長580nmにおける値が5%より大きい場合、黄味が強くなり、複層塗膜の発色が赤色から外れる。また、値SSの曲線の波長590nm~650nmにおいて、極大値が15%未満の場合、赤色系複層塗膜の色が黒濁りした色となり、高い明度と高い彩度とを両立することができない。
【0077】
値SSの曲線の波長580nmにおける値は、5%以下である。値SSの曲線の波長580nmにおける値は、例えば、0.1~5.0%である。一実施形態では、値SSの曲線の波長580nmにおける値は、5.0%以下、4.7%以下、4.6%以下、4.5%以下、4.2%以下、4.0%以下、3.8%以下、3.7%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下または0.5%以下である。別の実施形態では、値SSの曲線の波長580nmにおける値は、0.5%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、3.7%以上、3.8%以上、4.0%以上、4.2%以上、4.5%以上、4.6%以上または4.7%以上である。さらに別の実施形態では、値SSの曲線の波長580nmにおける値は、2.5~5.0%である。さらに別の実施形態では、値SSの曲線の波長580nmにおける値は、3.0~4.7%である。
【0078】
赤色系複層塗膜を上述した所定の4層とすることに加えて、例えば、赤色系複層塗膜のa*値を50以上とすることも、波長580nmにおいて、値SSを5%以下とすることに寄与する。
【0079】
値SSの曲線は、波長590nm~650nmにおいて、15%以上の極大値を有する。値SSの曲線の波長590nm~650nmにおける極大値は、例えば、15.0~40.0%である。一実施形態では、値SSの曲線の波長590nm~650nmにおける極大値は、15.0%以上、16.0%以上、16.3%以上、16.5%以上、17.0%以上、17.5%以上、18.0%以上、18.5%以上、19.0%以上、19.4%以上、19.5%以上、20.0%以上、20.5%以上、21.0%以上、21.5%以上、22.0%以上、22.5%以上、23.0%以上、23.5%以上、24.0%以上、24.5%以上、25.0%以上、25.1%以上、25.3%以上、25.5%以上、26.0%以上、26.5%以上、27.0%以上、27.5%以上、28.0%以上、28.5%以上、29.0%以上、29.5%以上、30.0%以上、30.5%以上、31.0%以上、31.5%以上、32.0%以上、32.5%以上、33.0%以上、33.5%以上、34.0%以上、34.5%以上、35.0%以上、36.0%以上、37.0%以上、38.0%以上または39.0%以上である。別の実施形態では、値SSの曲線の波長590nm~650nmにおける極大値は、40.0%以下、39.0%以下、38.0%以下、37.0%以下、36.0%以下、35.0%以下、34.5%以下、34.0%以下、33.5%以下、33.0%以下、32.5%以下、32.0%以下、31.5%以下、31.0%以下、30.5%以下、30.0%以下、29.5%以下、29.0%以下、28.5%以下、28.0%以下、27.5%以下、27.0%以下、26.5%以下、26.0%以下、25.5%以下、25.3%以下、25.1%以下、25.0%以下、24.5%以下、24.0%以下、23.5%以下、23.0%以下、22.5%以下、22.0%以下、21.5%以下、21.0%以下、20.5%以下、20.0%以下、19.5%以下、19.4%以下、19.0%以下、18.5%以下、18.0%以下、17.5%以下、17.0%以下、16.5%以下、16.3%以下、または16.0%以下である。
【0080】
赤色系複層塗膜を上述した所定の4層とすることに加えて、例えば、第1ベース塗膜のL*値およびC*値を65以上とすることも、波長590nm~650nmにおいて、15%以上の極大値を有する値SS得ることに寄与する。
【0081】
値SSの曲線が、15%以上の極大値を有する波長域は、590nm~650nmであるが、赤色系複層塗膜のより高い明度とより高い彩度の赤色を得る観点から、好適な実施形態では、波長600nm~630nmに15%以上の極大値を有し、別の好適な実施形態では、波長610nmに15%以上の極大値を有する。
【0082】
波長660nmにおける値SSが、大きいほど、高い明度と高い彩度が得られる。値SSの曲線の波長660nmにおける値SSは、例えば、0.1~5.0%である。一実施形態では、値SSの曲線の波長660nmにおける値SSは、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下または0.5%以下である。別の実施形態では、値SSの曲線の波長660nmにおける値SSは、0.5%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上または4.5%以上である。
【0083】
値SSの曲線において、波長580nmより短波長側の波長域での値SSおよび曲線の形状は、特に限定されないが、例えば、値SSの曲線は、波長500nm~570nmにおいて、5.0%以下の極大値を有することが好ましい。これにより、赤色系複層塗膜の明度と彩度をより高度にバランスさせることができる。
【0084】
一実施形態では、値SSの曲線は、波長500nm~570nmにおいて、1.0%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.9%以上、2.0%以上、2.1%以上、2.2%以上、2.3%以上、2.4%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上または4.5%以上の極大値を有する。別の実施形態では、値SSの曲線は、波長500nm~570nmにおいて、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.4%以下、2.3%以下、2.2%以下、2.1%以下、2.0%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.0%以下または0.5%以下の極大値を有する。さらに別の実施形態では、値SSの曲線は、波長500nm~570nmにおいて、1.5~5%の範囲内の極大値を有する。
【0085】
値SSの曲線の、波長500nm~570nmにおける値を1.5%以上に調節する手段としては、例えば、第1ベース塗膜のL*値およびC*値を65以上とすることが挙げられる。値SSの曲線の、波長500nm~570nmにおける値を5%以下に調節する手段としては、例えば、赤色系複層塗膜のa*値を50以上とすることが挙げられる。
【0086】
一実施形態では、値SSの曲線は、波長530nm~560nmにおいて、5.0%以下の極大値を有する。別の実施形態では、値SSの曲線は、波長540nm~550nmにおいて、1.5~2.5%以下の極大値を有する。
【0087】
波長400nm~490nmにおける値SSを小さくすると、赤色系複層塗膜の彩度の低下を抑制することができる。一実施形態では、値SSの曲線は、波長400nm~490nmにおいて、値SSが、1.0%以下、0.7%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.2%以下または0.1%以下である。別の実施形態では、値SSの曲線は、波長400nm~450nmにおいて、値SSが、1.0%以下、0.7%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.2%以下または0.1%以下である。
【0088】
値SSの曲線において、波長670nmより長波長側の波長域での値SSおよび曲線の形状は、特に限定されない。波長670nm~700nmにおける値SSが、大きいほど、高い明度と高い彩度が得られる。値SSの曲線の波長670nm~700nmにおける値SSは、例えば、0.1~5.0%である。一実施形態では、値SSの曲線の波長670nm~700nmにおける値SSは、5.0%以下、4.5%以下、4.0%以下、3.5%以下、3.0%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下または0.5%以下である。別の実施形態では、値SSの曲線の波長660nmにおける値SSは、0.5%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上または4.5%以上である。さらに別の実施形態では、値SSの曲線の波長670nm~700nmにおける値は、1.5~2.5%である。
【0089】
・赤色系複層塗膜の形成方法
本発明の赤色系複層塗膜の形成方法は、被塗物の表面に、順に、所定の白色系塗膜、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜およびクリヤー塗膜を形成し、上述した所定の値SSを有するようにすれば、特に限定されない。例えば、被塗物上に電着塗膜を形成し、次いで、電着塗膜上に、白色系塗膜を形成する白色系塗膜用塗料組成物を塗布し、乾燥し、白色系塗膜を形成し、次いで、白色系塗膜上に、第1ベース塗膜を形成する第1ベース塗膜用塗料組成物を塗布し、乾燥し、第1ベース塗膜を形成し、次いで、第1ベース塗膜上に、第2ベース塗膜を形成する第2ベース塗膜用塗料組成物を塗布し、乾燥し、第2ベース塗膜を形成し、次いで、第2ベース塗膜上に、クリヤー塗膜を形成するクリヤー塗膜用塗料組成物を塗布し、乾燥し、クリヤー塗膜を形成することで、赤色系複層塗膜が得られる。または、白色系塗膜用塗料組成物、第1ベース塗膜用塗料組成物、第2ベース塗膜用塗料組成物およびクリヤー塗膜用塗料組成物の1つ以上を塗布して、未硬化の塗膜を形成した後、未硬化の塗膜上に次の塗料組成物を塗布し、未硬化の塗膜をさらに形成し、2以上の未硬化の塗膜を一緒に硬化させてもよい。
【0090】
各塗膜の塗料組成物は、上述した顔料および塗膜形成樹脂に加えて、任意に、溶剤、紫外線吸収剤、硬化剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、硬化触媒、酸化防止剤などを混合することで調製することができる。
【0091】
各塗膜の塗料組成物は、水性塗料組成物であってもよいし、溶剤型塗料組成物であってもよい。
【0092】
溶剤は、例えば、水、エステル系溶剤、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤などが挙げられる。
【0093】
赤色系複層塗膜中のいずれかの塗膜を加熱して硬化させる場合、加熱温度は特に限定されず、適宜調節すればよい。加熱温度は、例えば、80~180℃である。加熱時間は、例えば、5分~60分である。塗膜を加熱せずに常温で乾燥させてもよい。
【0094】
本発明の赤色系複層塗膜を形成する被塗物は、特に限定されず、例えば、金属、プラスチック、発泡体などを挙げることができる。金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛およびこれらの合金が挙げられる。
【0095】
(車両)
本発明に係る車両は、上記赤色系複層塗膜を有し、クリヤー塗膜側が外側に位置する、車両である。これにより、車両は、高い明度と高い彩度とを有する。
【0096】
車両は、特に限定されず、公知の車両とすることができる。車両は、例えば、乗用車、バス、トラック、自動二輪車などの自動車;原動機付自転車;電車;レーシングカーなどが挙げられる。
【0097】
車両は、その少なくとも一部に赤色系複層塗膜を有すればよく、例えば、車両車体、タイヤ、ホイールまたは車両内装などに赤色系複層塗膜を有すればよい
【0098】
車両が有する赤色系複層塗膜は、1種単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0099】
本発明の車両の製造方法としては、車両を被塗物として、上述した赤色系複層塗膜の形成方法を行うことで車両を製造することができる。
【0100】
(物品)
本開示の別の実施形態では、上記赤色系複層塗膜を有し、クリヤー塗膜側が外側に位置する、物品を提供することも可能である。これにより、物品は、高い明度と高い彩度とを有する。
【0101】
物品または被塗物は、特に限定されず、例えば、車両のタイヤ;船;飛行機、ヘリコプターなどの航空機;戸建住宅、マンションなどの集合住宅、オフィスビル、公共施設、商業施設、研究施設、軍事施設、トンネルなどの建築物ないし建造物の壁面、床面、天井、屋根、柱、看板、電子看板(デジタルサイネージ)、ドア、門、窓;車両および建築物などのガラス;橋;自動販売機;道路標識;信号;街灯;LED方式、液晶方式、電球方式などの電光掲示板;作業機械、建築機械;石碑;墓石;包装材;鏡;玩具;ガラス製、アクリル製、ポリカーボネート製などのケース、容器、樹脂板、フィルムなどの透明体などが挙げられる。
【0102】
物品が有する赤色系複層塗膜は、1種単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0103】
物品の製造方法としては、物品を被塗物として、上述した赤色系複層塗膜の形成方法を行うことで物品を製造することができる。
【実施例
【0104】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0105】
実施例で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
ポリエステル・メラミン系塗料:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「OP-30P ホワイト」
白色顔料:CR-97
アクリル樹脂エマルション:特開2020-002244号の段落[0100]に記載の製造例13と同様に調製した
リン酸基含有アクリル樹脂:特開2018-135439号の段落[0121]に記載の製造例4と同様に調製した
非イオン界面活性剤:第一工業製薬社製の商品名「ノイゲンEA-207D」、両親媒性化合物、数平均分子量4200、固形分55%
リノール酸:キシダ化学社製
混合アルキル化型メラミン樹脂:Allnex社製、サイメル327(固形分90%)
電着塗料組成物:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「パワートップU-50)」
クリヤー塗膜用塗料組成物:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「マックフロー-O-1810」
【0106】
実施例で用いた装置の詳細は以下のとおりである。
スプレーガン:アネスト岩田社製の商品名「W-101-132G」
多角度分光測色計:X-Rite社製の商品名「MA68II」
【0107】
・白色系塗膜用塗料組成物1の調製
「OP-30P ホワイト」に白色顔料CR-97を70質量%配合した。その混合液をNo.4フォードカップを使用し、20℃で測定したときの流出時間が25秒となるように希釈して、白色系塗膜用塗料組成物1を調製した。
【0108】
・白色系塗膜用塗料組成物2の調製
白色顔料の量を69質量%に変更したこと以外は、白色系塗膜用塗料組成物1の調製と同様に、白色系塗膜用塗料組成物2を調製した。
【0109】
・第1ベース塗膜用塗料組成物1~6の調製
表2に示す各成分を混合し、均一に分散させた。次いで、その分散液にpHが8.1となるようにジメチルアミノエタノールを添加した。次いで、その分散液を脱イオン水で希釈して、表2に示す樹脂固形分濃度を有する第1ベース塗膜用塗料組成物1~6を調製した。
【0110】
第2ベース塗膜用塗料組成物1~3の調製
表2に示す各成分を混合し、均一に分散させた。次いで、その分散液にpHが8.1となるようにジメチルアミノエタノールを添加した。次いで、その分散液を脱イオン水で希釈して、表2に示す樹脂固形分濃度を有する第2ベース塗膜用塗料組成物1~3を調製した。
【0111】
車両車体を想定した被塗物として、以下の塗板を調製した:リン酸亜鉛処理した厚さ0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、電着塗料組成物を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けて、塗板を調製した。
【0112】
・実施例1
塗板上に白色系塗膜用塗料組成物1をスプレーガンで塗装し、140℃で30分間焼き付け、白色系塗膜を形成した。次いで、第1ベース塗膜用塗料組成物1をスプレーガンで塗装し、4分間のセッティング(放置)を行い、80℃で5分間のプレヒートを行った。次いで、第2ベース塗膜用塗料組成物をスプレーガンで塗装し、4分間のセッティングを行い、80℃で5分間のプレヒートを行った。次いで、この塗装した塗板(以下、「塗装板」という)を室温まで放冷し、クリヤー塗膜用塗料組成物をスプレーガンで塗装し、7分間セッティングを行った。次いで、塗装板を140℃で30分間焼き付けて、赤色系複層塗膜を有する塗板を得た。
【0113】
・実施例2~4、6~
第1ベース塗膜用塗料組成物1を表3に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同
様に複層塗膜を形成して、赤色系複層塗膜を有する塗板を得た。
【0114】
・比較例1
白色系塗膜の厚さを20μmに代えたこと、第1ベース塗膜用塗料組成物を用いなかった(第1ベース塗膜を形成しなかった)ことおよび第2ベース塗膜用塗料組成物1を第2ベース塗膜用塗料組成物2に代えたこと以外は、実施例1と同様に複層塗膜を形成して、複層塗膜を有する塗板を得た。
【0115】
・比較例2
白色系塗膜用塗料組成物1を白色系塗膜用塗料組成物2に代えたことおよび第2ベース塗膜用塗料組成物2を第2ベース塗膜用塗料組成物3に代えたこと以外は、比較例1と同様に複層塗膜を形成して、複層塗膜を有する塗板を得た。
【0116】
多角度分光測色計を用いて、図3に示すようにして、白色系塗膜のL*値ならびに複層塗膜のL*値、a*値、b*値およびC*値を、以下の条件で測定した:、室温測定:約25℃、3回測定し、3回の平均値を算出した。測定結果を表4に合わせて示す。
【0117】
多角度分光測色計を用いて、図3に示すようにして、複層塗膜の分光反射率を、以下の条件で測定した:室温測定:約25℃、測定波長範囲400~700nmにおいて10nm間隔、3回測定し、3回の平均値を算出した。得られた分光反射率に上記別表第8の明所視の分光視感効率をかけて値SSを求めた。結果を表4に合わせて示す。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
本発明によれば、高い明度と高い彩度とを有する赤色系複層塗膜を提供することができた。本発明によれば、高い明度と高い彩度とを有する赤色系塗膜を有する車両を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、高い明度と高い彩度とを有する赤色系複層塗膜を提供することができる。本発明によれば、高い明度と高い彩度とを有する赤色系塗膜を有する車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0123】
1:赤色系複層塗膜
10:白色系塗膜
20:第1ベース塗膜
30:第2ベース塗膜
40:クリヤー塗膜
50:金属蒸着層
図1
図2
図3