(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241114BHJP
G01B 11/26 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01B11/26 H
(21)【出願番号】P 2020158128
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森迫 慶州
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009932(JP,A)
【文献】特開2020-008364(JP,A)
【文献】特開2020-020410(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110261027(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 - 13/045
99/00
F16B 23/00 - 43/02
G01B 11/00 - 11/30
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
30/418
40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高力ボルト及びナットを用いた複数の鉄骨部材の接合部を検査対象とし、前記高力ボルト及び前記ナットの締付け後の検査を行う検査システムであって、
前記検査対象を撮影可能な撮影部と、
前記撮影部を介した前記検査対象の映像を用いて、当該検査対象の前記ナットの回転量を算出する算出部と、
前記算出部の算出結果に基づいて、前記検査対象の合否判定を行う判定部と、
を具備し、
前記撮影部と、
前記撮影部を介した前記検査対象の映像を表示可能であり、かつ、前記映像における位置情報の入力が可能な表示部と、
を有する端末と、
前記表示部を介して入力された前記位置情報を取得する位置情報取得部と、
を具備し、
前記算出部は、
前記位置情報取得部により取得された前記位置情報に基づいて前記ナットの回転量を算出する、
検査システム。
【請求項2】
前記検査対象の映像を、映像データとして記憶する記憶部を具備し、
前記算出部は、
前記記憶部により取得された前記映像データに基づいて前記ナットの回転量を算出する、
請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記映像データから、前記ナットの回転量を測定するために付された目印の画像を抽出する抽出部を具備し、
前記算出部は、
前記抽出部により抽出された前記目印の画像に基づいて前記ナットの回転量を算出する、
請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
無人航空機を具備し、
前記撮影部は、前記無人航空機に搭載される、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の検査システム。
【請求項5】
前記表示部は、
前記検査対象の形状に対応した画像と、前記撮影部を介した前記検査対象の映像と、を重ねて表示可能であり、
前記位置情報取得部は、
前記検査対象の形状に対応した画像に基づいた前記位置情報を取得する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高力ボルト及びナットの締付け後の検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の鉄骨部材を高力ボルト及びナットを用いて接合した後に、接合部について高力ボルト及びナットの締付け後の検査を行うことが知られている。このような検査の項目の一つとして、接合部に設けられた複数のナットの回転量のばらつきを検査するものがある。上記検査では、一次締め(仮締め)された状態のナットにマーキングを施し、当該ナットを本締めした後にマークのずれを測定することで、ナットの回転量を求める。
【0003】
特許文献1には、ナット回転量について検査を行うためのナット回転量検査器具が記載されている。上記ナット回転量検査器具は、レールに対してスライド移動可能な本体が設けられており、上記本体に設けられた基準線を、鉄骨部材の接合部の複数のナットに施されたマークに合わせることで、ナットの回転量を測定することができる。
【0004】
しかしながら、鉄骨部材の接合部には、膨大な数のナットが存在する。このため、上記ナット回転量検査器具の本体を上記ナットに施されたマークの全てに合わせる作業は困難であることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、締付け後のナットの回転量の検査を容易に行うことができる検査システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、高力ボルト及びナットを用いた複数の鉄骨部材の接合部を検査対象とし、前記高力ボルト及び前記ナットの締付け後の検査を行う検査システムであって、前記検査対象を撮影可能な撮影部と、前記撮影部を介した前記検査対象の映像を用いて、当該検査対象の前記ナットの回転量を算出する算出部と、前記算出部の算出結果に基づいて、前記検査対象の合否判定を行う判定部と、を具備し、前記撮影部と、前記撮影部を介した前記検査対象の映像を表示可能であり、かつ、前記映像における位置情報の入力が可能な表示部と、を有する端末と、前記表示部を介して入力された前記位置情報を取得する位置情報取得部と、を具備し、前記算出部は、前記位置情報取得部により取得された前記位置情報に基づいて前記ナットの回転量を算出するものである。
【0009】
請求項2においては、前記検査対象の映像を、映像データとして記憶する記憶部を具備し、前記算出部は、前記記憶部により取得された前記映像データに基づいて前記ナットの回転量を算出するものである。
【0010】
請求項3においては、前記映像データから、前記ナットの回転量を測定するために付された目印の画像を抽出する抽出部を具備し、前記算出部は、前記抽出部により抽出された前記目印の画像に基づいて前記ナットの回転量を算出するものである。
【0011】
請求項4においては、無人航空機を具備し、前記撮影部は、前記無人航空機に搭載されるものである。
【0013】
請求項5においては、前記表示部は、前記検査対象の形状に対応した画像と、前記撮影部を介した前記検査対象の映像と、を重ねて表示可能であり、前記位置情報取得部は、前記検査対象の形状に対応した画像に基づいた前記位置情報を取得するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、締付け後のナットの回転量の検査を容易に行うことができる。
【0016】
請求項2においては、締付け後のナットの回転量の検査をより容易に行うことができる。
【0017】
請求項3においては、締付け後のナットの回転量の検査をより容易に行うことができる。
【0018】
請求項4においては、映像データの取得をより容易に行うことができる。
【0020】
請求項5においては、ナットの回転量を測定するための情報を好適に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る検査システムの検査対象となる鉄骨部材の接合部を示した斜視図。
【
図2】一次締め後の高力ボルトセットを示した斜視図。
【
図3】本締め後の高力ボルトセットを示した正面図。
【
図5】カメラにより撮影された映像データを示した模式図。
【
図7】第一のナット回転量検査処理を示したフローチャート。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る検査システムの無人航空機を示した模式図。
【
図9】無人航空機に搭載されたカメラにより撮影された映像データを示した模式図。
【
図10】本発明の第三実施形態に係る検査システムの端末を示した模式図。
【
図11】端末を用いて検査者が行う操作を示したフローチャート。
【
図12】端末の表示部に表示された高力ボルトセットの映像を示した模式図。
【
図13】第二のナット回転量検査処理を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の第一実施形態に係る検査システム1について説明する。また、以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0023】
検査システム1は、鉄骨部材10同士を接合するために用いられる高力ボルト31の締付け後に、接合部の検査を行うものである。
【0024】
以下では、まず、検査システム1の検査対象となる鉄骨部材10の接合部について説明する。
図1は、施工段階の鉄骨構造の建物における鉄骨部材10の接合部を示すものである。ここで、接合部とは、複数の鉄骨部材10の端部同士を、添え板20及び高力ボルトセット30を用いて接合した部分である。
【0025】
鉄骨部材10は、鉄骨構造の建物の柱や梁を構成する部材である。図例では、一例として、梁として用いた鉄骨部材10を示している。本実施形態では、鉄骨部材10として、H形鋼を採用している。鉄骨部材10は、フランジ11及びウェブ12を具備する。
【0026】
フランジ11は、鉄骨部材10のうち上下方向外側に位置する部分である。フランジ11は、厚さ方向を上下方向に向けた板形状に形成される。フランジ11には、後述する高力ボルト31が挿通される複数の孔が形成されている。
【0027】
ウェブ12は、上下のフランジ11を接続する部分である。ウェブ12は、厚さ方向を水平方向(前後方向)に向けた板形状に形成される。ウェブ12には、後述する高力ボルト31が挿通される複数の孔が形成されている。
【0028】
添え板20は、複数の鉄骨部材10同士の継手となる板形状の部材である。添え板20は、複数の鉄骨部材10に跨るように取り付けられる。添え板20は、複数の鉄骨部材10の上下のフランジ11の上面及び下面にそれぞれ設けられる。また、添え板20は、ウェブ12の前面及び後面にそれぞれ設けられる。添え板20には、後述する高力ボルト31が挿通される複数の孔が形成されている。
【0029】
図1及び
図2に示す高力ボルトセット30は、複数の鉄骨部材10及び添え板20を固定するものである。高力ボルトセット30は、複数の鉄骨部材10のフランジ11及びウェブ12の接合部において、複数箇所に設けられる。高力ボルトセット30は、高力ボルト31、ナット32及び座金33を具備する。
【0030】
図2に示す高力ボルト31は、フランジ11、ウェブ12及び添え板20に形成された孔に挿通されるものである。高力ボルト31としては、締付けの際に所定以上のトルクがかかると、ボルト軸の先端部に設けられたピンテール31aが破断するトルシア形ボルトが採用される。なお、
図2では、ピンテール31aが破断される前の状態の高力ボルト31を示し、
図1では、ピンテール31aが破断した状態の高力ボルト31を示している。
【0031】
ナット32は、高力ボルト31のボルト軸に螺合されるものである。ナット32を回転させることで、高力ボルトセット30を用いた締結が可能となる。
【0032】
座金33は、高力ボルト31のボルト軸に挿通されると共に、ナット32と当該ナット32により固定される部材(添え板20)との間に介在されるものである。
【0033】
上述した複数の鉄骨部材10及び添え板20に形成された孔に高力ボルト31を挿通すると共に、当該高力ボルト31のボルト軸にナット32及び座金33を挿通した状態(高力ボルトセット30を取り付けた状態)で、ナット32を締付けることで、複数の鉄骨部材10及び添え板20が互いに固定され、複数の鉄骨部材10同士が接合される。
【0034】
次に、高力ボルトセット30の締付けにより鉄骨部材10を接合する際に、作業者が行う作業手順について説明する。当該作業手順には、一次締め、マーキング及び本締めが含まれる。
【0035】
まず、作業者は一次締めを行う。一次締めは、複数の鉄骨部材10及び添え板20に高力ボルトセット30を取り付けた状態で、ナット32を仮締めする工程である。一次締めは、一次締め用の電動工具を用いて行われる。一次締めにおいては、高力ボルト31のピンテール31aは破断しない。
【0036】
次に、作業者はマーキングを行う。マーキングは、一次締めを行った後の接合部(添え板20及び高力ボルトセット30)に、後述する締付け後の検査のための目印となるマークMを施す工程である。マーキングは、
図2に示すように、高力ボルト31のボルト軸(ピンテール31a)、ナット32、座金33及び添え板20に亘って連続した線状のマークMが施されるように行われる。マーキングは、所定のペン等の筆記具により行われる。
【0037】
次に、作業者は本締めを行う。本締めは、マーキングを行った後、ナット32を完全に締付ける工程である。本締めを行うことで、一次締めが行われたナット32が更に回転する。本締めでは、作業者は、本締め用の電動工具を用いて高力ボルト31のピンテール31aが破断するまでナット32を締付ける。
【0038】
図3は、本締めを行った後の高力ボルトセット30の一例を示すものである。本締めを行ったことにより、高力ボルト31、座金33及び添え板20に施されたマーク(以下では第一のマークMaと称する)に対して、ナット32に施されたマーク(以下では第二のマークMbと称する)の位置がずれる。
【0039】
上述した一次締め、マーキング及び本締めの工程は、接合部の全ての高力ボルトセット30について行われる。また、上述した一次締め及び本締めの工程は、一次締めや本締めに適した一定のトルクで、各高力ボルトセット30に行われる。
【0040】
ここで、鉄骨部材10の接合部においては、本締めが行われた後、高力ボルトセット30に対して締付け後の検査が行われる。締付け後の検査は、「建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事」(6節 高力ボルト接合 6.6 締付け後の検査)に準拠して行われる。
【0041】
締付け後の検査では、全ての高力ボルト31について、ピンテール31aが破断されているか、共回り・軸回りの有無、ナット32の回転量、ナット32から突き出したボルトの余長の過不足を目視で検査し、いずれについても異常が認められないものを合格とする。上記締付け後の検査は、締付けが行われた全ての高力ボルトセット30に行われる。
【0042】
ここで、上記締付け後の検査においてナット32の回転量を検査した結果、ナット32の回転量に著しいばらつきの認められるボルト群(共通の添え板20に取り付けられた複数の高力ボルトセット30)については、そのボルト群の全てのナット32に対して、回転量の検査(ナット回転量検査)を行う。以下では、
図3を用いて、ナット回転量検査の具体的な手順について説明する。
【0043】
まず、検査者は、所定のボルト群の全てのナット32の回転量(回転角)を計測する。ナット32の回転量は、ボルト群の各所に施された第一のマークMaと、第二のマークMbと、がなす角度を計測することで得られる。上記計測は、ボルト群を撮影した写真に基づいて計測してもよく、実際のナット32の回転量を測定してもよい。
【0044】
次に、検査者は、ボルト群の全てのナット32の回転量(回転角度)の平均(平均回転角度)を算出する。
【0045】
次に、検査者は、ボルト群の全てのナット32の回転量が平均回転角度±30°の範囲内であるか否かを判定する。ボルト群の全てのナット32の回転量が平均回転角度±30°以内である場合は、ナット回転量検査は合格と判定される。一方、ボルト群に、回転量が平均回転角度±30°の範囲外であるナット32が含まれる場合は、ナット回転量検査は不合格と判定される。ナット回転量検査が不合格であった場合は、ナット32の回転量が平均回転角度±30°の範囲外であった高力ボルトセット30は、新しいものと交換される。
【0046】
検査システム1は、上述したナット回転量検査を行う処理(後述する第一のナット回転量検査処理)を実行可能なものである。以下では、検査システム1の詳細について説明する。
図4に示すように、検査システム1は、主として、制御装置40及びカメラ50を具備する。
【0047】
制御装置40は、各種の情報の処理が可能なものである。制御装置40は、通信部41、記憶部42、制御部43、表示部44及び入力部45を具備する。
【0048】
通信部41は、後述するカメラ50に対して情報の受信等を行うものである。
【0049】
記憶部42は、各種のプログラムや通信部41により受信された情報等が記憶されるものである。記憶部42は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
【0050】
制御部43は、記憶部42に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部43は、CPUにより構成される。
【0051】
表示部44は、各種の情報を表示するものである。表示部44は、液晶ディスプレイ等により構成される。
【0052】
入力部45は、各種の情報を入力するためのものである。入力部45は、キーボード、マウス等により構成される。
【0053】
このように、制御装置40としては、一般的なパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
【0054】
カメラ50は、所定のレンズ部(不図示)を介して撮影した映像データを取得するものである。カメラ50は、鉄骨部材10の接合部のボルト群を撮影した映像データを取得可能である。カメラ50により撮影された映像データは、所定の通信手段を介して通信部41に送信され、記憶部42に記憶される。
【0055】
カメラ50としては、一般的なカメラを採用可能である。また、カメラ50としては、撮影機能を有する情報端末(タブレットやスマートフォン)に搭載されたカメラも採用可能である。
【0056】
図5は、カメラ50により撮影された映像データの一例を示すものである。図例では、鉄骨部材10のウェブ12の接合部(添え板20及び高力ボルトセット30)を、略正面から撮影した映像データを示している。映像データには、撮影された接合部の場所の情報や仕様の情報(図例では「サイズ」)を示す画像が含まれる。図例では、接合部の場所や仕様の情報を記載した工事用のホワイトボードWを、接合部と共に撮影した映像データを示している。また、ホワイトボードWには、工事の状況(図例では「本締め後」)が記載される。
【0057】
ここで、接合部の仕様とは、鉄骨部材10及び添え板20の寸法や、接合部の形状等の情報を示すものである。
図6は、接合部の仕様の一例を示すものである。図例では、接合部の仕様として、「サイズ」、「形状」、「フランジ」及び「ウェブ」の項目を示している。
【0058】
「サイズ」には、鉄骨部材10の寸法の情報や、当該仕様を特定する番号(図例では「RJ-24」)が示される。「形状」には、接合部を示す図面が示される。図例では、フランジ11の接合部を示す図面(上段)と、ウェブ12の接合部を示す図面(下段)と、を示している。「フランジ」には、フランジ11の接合部に設けられる添え板20及び高力ボルトセット30の寸法が示される。「ウェブ」には、フランジ11の接合部に設けられる添え板20及び高力ボルトセット30の寸法が示される。
【0059】
上記映像データの取得方法としては、検査者等の撮影者の手により支持されたカメラ50により接合部を撮影する方法が考えられる。撮影者(検査者)は、例えば、目視による締付け後の検査の結果、ナット32の回転量に著しいばらつきがあると判断した接合部(ボルト群)を撮影して、ナット回転量検査を行うための映像データを取得する。
【0060】
上述の如き検査システム1は、カメラ50による映像データを用いて、ナット回転量検査を行う第一のナット回転量検査処理を実行可能である。第一のナット回転量検査処理は、制御部43により実行される。
【0061】
以下では、
図7のフローチャートを用いて、第一のナット回転量検査処理において制御部43が行う処理について説明する。
【0062】
ステップS10において、制御部43は、鉄骨部材10の接合部の映像データを取得する。映像データは、撮影者(例えば検査者)により事前に撮影されており、記憶部42に記憶されている。制御部43は、ステップS10の処理を実行した後、ステップS11の処理へ移行する。
【0063】
ステップS11において、制御部43は、映像データからマークMの画像を抽出する。具体的には、制御部43は、
図5に示すような映像データから、第一のマークMaの画像及び第二のマークMbの画像を抽出する。上記画像の抽出は、既知の画像認識処理によって行われる。制御部43は、映像データに含まれるボルト群の全てのマークMの画像を抽出する。制御部43は、ステップS11の処理を実行した後、ステップS12の処理へ移行する。
【0064】
ステップS12において、制御部43は、ナット32の回転量を算出する。具体的には、制御部43は、ステップS11で抽出した第一のマークMaの画像及び第二のマークMbの画像に基づいて、第一のマークMaと、第二のマークMbと、がなす角度を算出する。上記角度を算出する方法としては、例えば、映像データに含まれるナット32や高力ボルト31の画像から抽出したナット32の中心点と、第一のマークMaの画像及び第二のマークMbの画像の一部(例えば径方向外側端部)から抽出した二点と、の三点を用いて当該角度を算出する方法を採用可能である。制御部43は、映像データに含まれるボルト群の全てのナット32の回転量を算出する。制御部43は、ステップS12の処理を実行した後、ステップS13の処理へ移行する。
【0065】
ステップS13において、制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量の平均回転角度を算出する。具体的には、制御部43は、ステップS12において算出した全てのナット32の回転量の平均値を算出する。制御部43は、ステップS13の処理を実行した後、ステップS14の処理へ移行する。
【0066】
ステップS14において、制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量が所定の範囲内であるか否か、または判定不能かを判定する。ここで、所定の範囲内とは、ボルト群のナット32の平均回転角度±30°以内の範囲である。制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量が所定の範囲内であると判定した場合は、ステップS15の処理へ移行する。また、制御部43は、ボルト群に、回転量が所定の範囲外であるナット32が含まれていると判定した場合には、ステップS16の処理へ移行する。また、制御部43は、ボルト群に、回転量が判定不能なナット32が含まれていると判定した場合には、ステップS17の処理へ移行する。
【0067】
ステップS15において、制御部43は、合格判定を行う。この場合、制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量が所定の範囲内(平均回転角度±30°以内)である旨を、表示部44に表示する。制御部43は、ステップS15の処理を実行した後、第一のナット回転量検査処理を終了する。
【0068】
ステップS14から移行したステップS16において、制御部43は、不合格判定を行う。この場合、制御部43は、ボルト群に回転量が所定の範囲外であるナット32が含まれている旨を、表示部44に表示する。また、この場合、制御部43は、上記回転量が所定の範囲外であるナット32を判別可能なように適宜の方法(例えば、当該ナットの色を変えたり、所定の枠で囲む等)で示す表示を実行可能である。制御部43は、ステップS16の処理を実行した後、第一のナット回転量検査処理を終了する。
【0069】
ステップS14から移行したステップS17において、制御部43は、警告を行う。この場合、制御部43は、ボルト群に回転量が判定不能なナット32が含まれている旨の警告を、表示部44に表示する。また、この場合、制御部43は、検査者(撮影者)に対して、再検査(再撮影)することを促す表示を実行可能である。制御部43は、ステップS17の処理を実行した後、第一のナット回転量検査処理を終了する。
【0070】
上述の如き第一のナット回転量検査処理を実行することで、締付け後の検査におけるナット回転量検査を容易に行うことができる。すなわち、第一のナット回転量検査処理を実行することで、鉄骨部材10の接合部の映像データに基づいて、所定のボルト群のナット回転量検査を自動で行うことができる。これにより、ナット回転量検査の対象となるボルト群について、検査者の手によってナット32の回転量の測定や平均回転角度の算出等を行う必要が無く、検査者の手間を軽減することができる。
【0071】
以上のように、本発明の第一実施形態に係る検査システム1は、
高力ボルト31及びナット32を用いた複数の鉄骨部材10の接合部を検査対象とし、前記高力ボルト31及び前記ナット32の締付け後の検査を行う検査システム1であって、
前記検査対象を撮影可能なカメラ50(撮影部)と、
前記カメラ50(撮影部)を介した前記検査対象の映像を用いて、当該検査対象の前記ナット32の回転量を算出する算出部(制御部43)と、
前記算出部(制御部43)の算出結果に基づいて、前記検査対象の合否判定を行う判定部(制御部43)と、
を具備するものである。
【0072】
このような構成により、締付け後のナット32の回転量の検査を容易に行うことができる。すなわち、カメラ50(撮影部)を介した検査対象の映像を用いて、算出部(制御部43)により検査対象のナット32の回転量を算出し、算出部(制御部43)の算出結果に基づいて、判定部(制御部43)により検査対象の合否判定を行うことができる。これにより、検査者の手によってナット32の回転量の算出や合否判定を行う必要が無く、検査者の手間を軽減することができる。
【0073】
また、検査システム1は、
前記検査対象の映像を、映像データとして記憶する記憶部42を具備し、
前記算出部(制御部43)は、
前記記憶部42により取得された前記映像データに基づいて前記ナット32の回転量を算出するものである。
【0074】
このような構成により、締付け後のナット32の回転量の検査をより容易に行うことができる。すなわち、記憶部42により記憶された映像データに基づいてナット32の回転量を算出可能な構成としたことで、当該映像データを持ち帰った後でナット32の回転量の算出や合否判定を行うことができる。
【0075】
また、検査システム1は、
前記映像データから、前記ナット32の回転量を測定するために付されたマークM(目印)の画像を抽出する抽出部(制御部43)を具備し、
前記算出部(制御部43)は、
前記抽出部(制御部43)により抽出された前記マークM(目印)の画像に基づいて前記ナット32の回転量を算出するものである。
【0076】
このような構成により、締付け後のナット32の回転量の検査をより容易に行うことができる。すなわち、映像データに基づいて、自動でナット32の回転量の算出や合否判定を行うことができ、検査者の手間を軽減することができる。
【0077】
なお、本実施形態に係る制御部43は、本発明に係る算出部、判定部、映像データ取得部及び抽出部の一形態である。
また、本実施形態に係るカメラ50は、本発明に係る撮影部の一形態である。
【0078】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、本実施形態では、第一のナット回転量検査処理において、取得した映像データに基づいて自動的に第一のマークMa及び第二のマークMbの画像を抽出する例を示したが、このような構成に限られない。例えば、入力部45を介した適宜の操作により映像データに含まれる第一のマークMa及び第二のマークMbの画像をそれぞれ指定し、当該指定された画像の情報に基づいて、ナット32の回転量を算出するようにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、映像データの取得方法として、撮影者の手により支持されたカメラ50によりボルト群を撮影する方法を採用したが、このような構成に限られない。例えば、
図8及び
図9に示す本発明の第二実施形態に係る検査システム1Aの構成を採用してもよい。
【0081】
第二実施形態に係る検査システム1Aは、無人航空機60にカメラ50を搭載した点で、第一実施形態に係る検査システム1と異なる。無人航空機60は、ドローンやUAVとも呼ばれる人が搭乗しない小型の航空機である。無人航空機60は、複数のローター(回転翼)を具備し、安定した飛行を行うことができる。
【0082】
図8に示すように、無人航空機60は、鉄骨部材10の接合部の近傍を飛行すると共に、カメラ50による撮影を行うことができる。無人航空機60は、適宜のGPS受信機や、高度センサを備えている。無人航空機60は、適宜の操作手段からの情報や、GPS受信機、高度センサから取得した情報に基づいて、所定の位置まで飛行することができる。また、無人航空機60は、適宜の照明部を備えている。無人航空機60は、カメラ50による撮影を行う際に、必要に応じて照明部によって撮影の対象に光を照射することができる。
【0083】
無人航空機60に搭載されたカメラ50により撮影された映像データは、所定の通信手段を介して通信部41に送信され、記憶部42に記憶される。また、この際に、無人航空機60のGPS受信機や高度センサによる情報も、通信手段を介して通信部41に送信され、記憶部42に記憶される。これにより、映像データを撮影した場所を把握することができ、当該映像データの接合部が、建物のどの接合部であるかを特定することができる。
【0084】
図9は、無人航空機60に搭載されたカメラ50により撮影された映像データの一例を示すものである。図例では、鉄骨部材10のウェブ12に設けられた接合部を、略正面から撮影した映像データを示している。本実施形態では、鉄骨部材10の接合部(添え板20)の近傍に、予め接合部の仕様を特定する番号(図例では「RJ-24」)が記載されている。これにより、ホワイトボードWを用いなくても、映像データの接合部の仕様の情報を把握することができる。また、本実施形態では、鉄骨部材10の接合部の近傍に、当該接合部が位置する階(図例では「5F」)や、平面図における位置を特定する通り名(図例では「A-1」)が記載されている。これにより、映像データの接合部の階や平面図における位置の情報を把握することができる。
【0085】
なお、無人航空機60による鉄骨部材10の接合部の撮影は、鉄骨構造の建物の躯体の施工完了後、壁や床を取り付ける前に行われる。
【0086】
本実施形態においても、上記第一実施形態と同様、映像データを用いた第一のナット回転量検査処理を実行可能である。
【0087】
以上のように、本発明の第二実施形態に係る検査システム1Aは、
無人航空機を具備し、
前記撮影部は、前記無人航空機に搭載されるものである。
【0088】
このような構成により、映像データの取得をより容易に行うことができる。すなわち、検査者が鉄骨部材10の接合部の近くまで行かずとも、映像データを取得することができる。これにより、検査者の手間を軽減することができる。
【0089】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0090】
例えば、上記各実施形態では、記憶部42に記憶させた映像データに基づいて第一のナット回転量検査処理を実行した例を示したが、このような態様に限られない。例えば、
図10から
図12までに示す本発明の第三実施形態に係る検査システム1Bの構成を採用してもよい。
【0091】
第三実施形態に係る検査システム1Bは、カメラ50に代えて、端末70を用いてナット回転量検査を行う点で、第一実施形態に係る検査システム1と異なる。
【0092】
図10に示す端末70は、各種の情報を入出力可能なものである。端末70としては、携帯可能な情報端末(タブレットやスマートフォン)等を用いることができる。端末70は、カメラ部71及びタッチパネル72を具備する。
【0093】
カメラ部71は、カメラ50と概ね同様、所定のレンズ部(不図示)を介して、撮影対象を撮影可能なものである。
【0094】
タッチパネル72は、任意の情報を出力(表示)可能なものである。タッチパネル72には、カメラ50を介して映された映像が表示される。また、タッチパネル72は、任意の情報を入力することも可能である。
【0095】
また、タッチパネル72は、種々のアイコン(ボタン)や画像を表示することができる。
図10に示す例では、タッチパネル72に、図面ラインXを表示した例を示している。
【0096】
図面ラインXは、接合部の仕様の「形状」(
図6を参照)の図面に基づく線の画像である。
図6に示すように、図面ラインXとしては、所定の番号で特定される仕様の「形状」のうち、フランジ11の接合部を示す図面とウェブ12の接合部を示す図面とのうちの一方が表示される。図例では、図面ラインXとして、「RJ-24」の番号で特定される仕様の「形状」のうち、ウェブ12の接合部を示す図面(
図6の「形状」の下段の図面)の画像を表示している。
【0097】
図面ラインXは、
図10に示すように、高力ボルトセット30を示す図形であるボルトラインXaを具備する。ボルトラインXaは、高力ボルトセット30(ナット32)の外形を示す円形の線と、当該円形の線の左右方向中心を通る縦線と、当該円形の線の上下方向中心を通る横線と、により構成される。上記縦線及び横線の交点は、ボルトラインXaの中心を示す。また、図面ラインXには、ボルトラインXaの他、鉄骨部材10や添え板20を示す図形が含まれる。図面ラインXの情報は、記憶部42に記憶されている。ここで、記憶部42は、端末70に搭載されている。
【0098】
図面ラインXは、タッチパネル72を介した任意の情報の入力を行うことで、当該タッチパネル72に表示される。例えば、
図10に示す例では、特定の番号の図面ラインXを表示させるための入力フォーム72aをタッチパネル72に表示させている。タッチパネル72を介した操作により、入力フォーム72aに接合部の仕様を特定する番号(図例では「RJ-24」)を入力することで、当該番号に対応する図面ラインXを表示させることができる。
【0099】
また、
図10に示す例では、図面ラインXとして、フランジ11の接合部を示す図面を表示させるフランジボタン72bと、ウェブ12の接合部を示す図面を表示させるウェブボタン72cと、をタッチパネル72に表示させている。フランジボタン72b及びウェブボタン72cのうちの一方をタップして選択することで、フランジ11の接合部を示す図面と、ウェブ12の接合部を示す図面と、のうちの一方を図面ラインXとしてタッチパネル72に表示させることができる。
【0100】
また、
図10に示す例では、タッチパネル72に表示された図面ラインXの向き(例えば左右方向の向き)を反転させる反転ボタン72dをタッチパネル72に表示させている。これにより、例えば、互いに左右に反転した形状の二種類の接合部が建物に含まれる場合に、タッチパネル72に表示された図面ラインXの向きと、検査対象の接合部の向きと、が異なる場合でも、反転ボタン72dをタップして、タッチパネル72に表示された図面ラインXの向きを検査対象の接合部の向きと一致するように適宜反転させることができる。これによれば、上記二種類の接合部のうち、一方の形状に対応した図面ラインXを記憶部42に記憶させれば、当該図面ラインXの向きを検査対象の接合部の向きと一致させることが可能となる。
【0101】
また、
図10に示す例では、接合部の階を入力する階入力フォーム72eをタッチパネル72に表示させている。タッチパネル72を介した操作により、階入力フォーム72eに接合部の階を特定する情報(図例では「5F」)を入力することで、当該接合部の階を記録する(記憶部42に記憶させる)ことができる。
【0102】
また、
図10に示す例では、接合部の通り名を入力する通り名入力フォーム72fをタッチパネル72に表示させている。タッチパネル72を介した操作により、接合部の通り名を入力する通り名入力フォーム72fに接合部の通り名を特定する情報(図例では「A-1」)を入力することで、当該接合部の通り名を記録する(記憶部42に記憶させる)ことができる。なお、上述したタッチパネル72の表示態様は一例であり、タッチパネル72には、上述した例の他、種々のアイコン(ボタン)や画像を表示可能である。
【0103】
また、端末70は、タッチパネル72に図面ラインXを表示させた状態で、カメラ50により映された映像を同時に表示させることができる。これにより、タッチパネル72において、カメラ50により映された鉄骨部材10の接合部の映像に、図面ラインXを重ね合わせて表示させることができる。
【0104】
上述の如き検査システム1は、端末70を用いて、ナット回転量検査を行う第二のナット回転量検査処理を実行可能である。第二のナット回転量検査処理は、制御部43により実行される。ここで、制御部43は、端末70に搭載されている。
【0105】
まず、
図11のフローチャートを用いて、制御部43による処理を実行する前に、端末70に対して検査者が行う操作について説明する。
【0106】
ステップS20において、検査者は、端末70のタッチパネル72に、検査対象である鉄骨部材10の接合部を映す。具体的には、検査者は、端末70のカメラ部71を鉄骨部材10の接合部に向けることで、タッチパネル72に当該接合部の映像を表示させる。検査者は、ステップS20の操作を実行した後、ステップS21の操作を行う。
【0107】
ステップS21において、検査者は、タッチパネル72に図面ラインXを表示させる。具体的には、検査者は、
図10に示す入力フォーム72aに、検査対象の接合部の仕様を特定する番号を入力すると共に、フランジボタン72b及びウェブボタン72cのうちの一方をタップして、所望の図面ラインXを表示させる。検査者は、ステップS21の操作を実行した後、ステップS22の操作を行う。
【0108】
ステップS22において、検査者は、タッチパネル72に表示された図面ラインXと、カメラ部71により映された鉄骨部材10の接合部の映像と、を一致させる。具体的には、検査者は、図面ラインXのボルトラインXaを、鉄骨部材10の接合部のボルト群の高力ボルトセット30(ナット32)の映像と一致させる。この際、例えば、タッチパネル72を適宜操作することで図面ラインXの大きさを拡大又は縮小したり、カメラ部71のズーム機能を用いて接合部の映像を拡大又は縮小することができる。
【0109】
図12は、破線で示す図面ラインXのボルトラインXaを、高力ボルトセット30(ナット32)の映像と一致させた状態を示す拡大図である。図例では、ボルトラインXaの中心(縦線と横線との交点)を、高力ボルトセット30(ナット32)の映像の中心と略一致させている。また、ボルトラインXaの円形の線を、ナット32の外形と略一致させている。ステップS22においては、ボルト群の全ての高力ボルトセット30の映像と、図面ラインXの各ボルトラインXaと、を一致させる。検査者は、ステップS22の操作を実行した後、ステップS23の操作を行う。
【0110】
ステップS23において、検査者は、図面ラインXと接合部の映像とを一致させた状態で、当該接合部の映像のうちマークMの二点をタップする。具体的には、
図12に示すように、検査者は、タッチパネル72上において、タッチパネル72に表示された第一のマークMaの画像の一部である第一の点A(図例では径方向外側端部)と、第二のマークMbの画像の一部である第二の点B(図例では径方向外側端部)と、をそれぞれタップする。この操作により、制御部43は、タッチパネル72における第一の点A及び第二の点Bの位置情報を取得する。検査者は、接合部のボルト群の全てのマークMについて、第一の点A及び第二の点Bをタップする。
【0111】
なお、上記ステップS22及びステップS23においては、
図10に示すように、図面ラインXの全体を表示した状態で、当該図面ラインXの全てのボルトラインXaと接合部のボルト群の映像とを一致させ、この状態で各高力ボルトセット30のマークMの二点をタップする方法を採用可能である。また、上記方法に代えて、図面ラインXのうちの所定のボルトラインXaを拡大してタッチパネル72に表示すると共に、当該拡大表示したボルトラインXaに対応する高力ボルトセット30(ナット32)の映像を一致させ、この状態でマークMの二点をタップする方法を採用可能である。この場合、検査者は、上記操作を行った後に、他のボルトラインXaを拡大表示し、上記操作を繰り返す。検査者は、ステップS23の操作を実行した後、ステップS24の操作を行う。
【0112】
ステップS24において、検査者は、タッチパネル72を介して、第二のナット回転量検査処理を実行する操作を行う。上記操作を契機として、制御部43は、第二のナット回転量検査処理を実行する。
【0113】
以下では、
図13のフローチャートを用いて、第二のナット回転量検査処理において制御部43が行う処理について説明する。
【0114】
ステップS30において、制御部43は、ナット32の回転量を算出する。具体的には、制御部43は、ステップS23の操作においてタップされた第一の点A及び第二の点Bの位置情報を取得し、当該二点とボルトラインXaの中心との三点の位置情報を用いて、第一のマークMaと第二のマークMbとがなす角度を算出する。制御部43は、接合部の映像に含まれるボルト群の全てのナット32の回転量を算出する。制御部43は、ステップS30の処理を実行した後、ステップS31の処理へ移行する。
【0115】
ステップS31において、制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量の平均回転角度を算出する。具体的には、制御部43は、ステップS30において算出した全てのナット32の回転量の平均値を算出する。制御部43は、ステップS31の処理を実行した後、ステップS32の処理へ移行する。
【0116】
ステップS32において、制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量が所定の範囲内であるか否か、または判定不能かを判定する。ここで、所定の範囲内とは、ボルト群のナット32の平均回転角度±30°以内の範囲である。制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量が所定の範囲内であると判定した場合は、ステップS33の処理へ移行する。また、制御部43は、ボルト群に、回転量が所定の範囲外であるナット32が含まれていると判定した場合には、ステップS34の処理へ移行する。また、制御部43は、ボルト群に、回転量が判定不能なナット32が含まれていると判定した場合には、ステップS35の処理へ移行する。
【0117】
ステップS33において、制御部43は、合格判定を行う。この場合、制御部43は、ボルト群の全てのナット32の回転量が所定の範囲内(平均回転角度±30°以内)である旨を、タッチパネル72に表示する。制御部43は、ステップS33の処理を実行した後、第二のナット回転量検査処理を終了する。
【0118】
ステップS32から移行したステップS34において、制御部43は、不合格判定を行う。この場合、制御部43は、ボルト群に回転量が所定の範囲外であるナット32が含まれている旨を、タッチパネル72に表示する。また、この場合、制御部43は、ボルト群の映像のうち、回転量が所定の範囲外であるナット32を判別可能な表示を実行可能である。制御部43は、ステップS34の処理を実行した後、第二のナット回転量検査処理を終了する。
【0119】
ステップS32から移行したステップS35において、制御部43は、警告を行う。この場合、制御部43は、ボルト群に回転量が判定不能なナット32が含まれている旨の警告を、タッチパネル72に表示する。また、この場合、制御部43は、検査者(撮影者)に対して、再検査(再撮影)することを促す表示を実行可能である。制御部43は、ステップS35の処理を実行した後、第二のナット回転量検査処理を終了する。
【0120】
上述の如き第二のナット回転量検査処理を実行することで、締付け後の検査におけるナット回転量検査を容易に行うことができる。すなわち、端末70に表示させた鉄骨部材10の接合部の映像に基づいて、所定のボルト群のナット回転量検査を自動で行うことができる。これにより、ナット回転量検査の対象となるボルト群について、検査者の手によってナット32の回転量の測定や平均回転角度の算出等を行う必要が無く、検査者の手間を軽減することができる。
【0121】
以上のように、本発明の第三実施形態に係る検査システム1Bは、
前記カメラ部71(撮影部)と、
前記カメラ部71(撮影部)を介した前記検査対象の映像を表示可能であり、かつ、前記映像における位置情報の入力が可能なタッチパネル72(表示部)と、
を有する端末と、
前記タッチパネル72(表示部)を介して入力された前記位置情報を取得する位置情報取得部(制御部43)と、
を具備し、
前記算出部(制御部43)は、
前記位置情報取得部(制御部43)により取得された前記位置情報に基づいて前記ナット32の回転量を算出するものである。
【0122】
このような構成により、締付け後のナット32の回転量の検査を容易に行うことができる。すなわち、端末70に表示させた鉄骨部材10の接合部の映像に基づいて、算出部により検査対象のナット32の回転量を算出し、算出部の算出結果に基づいて判定部により検査対象の合否判定を行うことができる。これにより、ナット32の回転量のばらつきがあると認められたボルト群について、その場で、端末70を用いた所定の操作を行うことで、検査対象の合否判定を行うことができる。
【0123】
また、前記タッチパネル72(表示部)は、
前記検査対象の形状に対応した画像(図面ラインX)と、前記カメラ部71(撮影部)を介した前記検査対象の映像と、を重ねて表示可能であり、
前記位置情報取得部(制御部43)は、
前記検査対象の形状に対応した画像(図面ラインX)に基づいた前記位置情報を取得するものである。
【0124】
このような構成により、ナット32の回転量を測定するための情報を好適に取得することができる。すなわち、検査対象の形状に対応した画像(図面ラインX)と、カメラ部71(撮影部)を介した前記検査対象の映像と、を重ねて表示した状態で、タッチパネル72(表示部)を介して入力された位置情報を取得することができる。これにより、図面ラインXを基準とした位置情報を取得することができる。
【0125】
なお、本実施形態に係るカメラ部71は、本発明に係る撮影部の一形態である。
また、本実施形態に係るタッチパネル72は、本発明に係る表示部の一形態である。
また、本実施形態に係る図面ラインXは、本発明に係る検査対象の形状に対応した画像の一形態である。
【0126】
以上、本発明の第三実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0127】
例えば、本実施形態では、
図11に示すステップS21において、端末70のタッチパネル72に図面ラインXを表示させた例を示したが、このような構成に限られない。例えば、タッチパネル72に図面ラインXを表示させない構成としてもよい。この場合は、ナット32の回転量の測定のための位置情報を取得する際に、タッチパネル72に表示された第一の点A及び第二の点Bに加えて、ナット32の中心点をタップし、上記三点の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0128】
また、本実施形態では、端末70のカメラ部71を介して取得した映像を端末70に記憶させずに、第二のナット回転量検査処理を実行した例を示したが、このような構成に限られない。例えば、カメラ部71を介して取得した映像を、端末70の適宜の記憶部に映像データとして記憶させ、当該記憶した映像データに基づいて、
図11に示すステップS22からステップS24までの操作を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1、1A、1B 検査システム
31 高力ボルト
32 ナット
43 制御部
50 カメラ
60 無人航空機
70 端末
71 カメラ部
72 表示部