IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -負荷駆動装置 図1
  • -負荷駆動装置 図2
  • -負荷駆動装置 図3
  • -負荷駆動装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】負荷駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H02J7/00 T
H02J7/00 302B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020162117
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054867
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小室 豊一
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】北井 直樹
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-224135(JP,A)
【文献】特開平11-146558(JP,A)
【文献】特開2007-082374(JP,A)
【文献】特開平10-229639(JP,A)
【文献】特開2013-255017(JP,A)
【文献】特開2019-103015(JP,A)
【文献】特開2020-036146(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145733(WO,A1)
【文献】特開2017-139866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の下流側にソースが接続されたNチャンネル型の第1のMOSFETと、
ONまたはOFFに動作して前記負荷の駆動を制御するNチャンネル型の第2のMOSFETと、を備え、
前記第1のMOSFETのドレインに前記第2のMOSFETのドレインが接続された負荷駆動装置において、
前記第1のMOSFETのゲートに接続され、前記第2のMOSFETがONのときにのみ閾値電圧よりも高いゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達する電気的伝達機能を有するゲート電圧制御回路と、
前記ゲート電圧制御回路に接続され、電源が正接続された場合には電源電圧よりも低く前記閾値電圧よりも高い電圧を前記ゲート電圧制御回路に出力し、電源が逆接続された場合には前記ゲート電圧制御回路への前記電圧の出力を中止する電気的スイッチ機能を有するゲート電圧供給回路と、をさらに備え、
電源が逆接続された場合には、前記ゲート電圧供給回路から前記ゲート電圧制御回路への前記電圧の出力が中止されることで前記第1のMOSFETがOFFとなり、前記第1のMOSFETの内蔵ダイオードにより前記負荷への逆電流が防止され、
前記ゲート電圧制御回路は、前記電気的伝達機能を実現するために、記ゲート電圧供給回路の出力側にアノードが接続され前記第1のMOSFETのゲートにカソードが接続されたダイオードと、前記第1のMOSFETのゲートとソースとの間に接続された抵抗と、を備え、
前記ゲート電圧制御回路は、電源が正接続された場合であって、前記第2のMOSFETがONのときには、前記ダイオードは導通して、前記電源電圧よりも低く前記閾値電圧よりも高いゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達し、
電源が正接続された場合であって、前記第2のMOSFETがOFFのときには、前記ダイオードは導通せず、前記第1のMOSFETのソース電位とほぼ同じゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達し、
電源が逆接続された場合には、前記第2のMOSFETがONとOFFのいずれのときでも、前記ダイオードは導通せず、前記第1のMOSFETのソース電位とほぼ同じゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達することを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷駆動装置において、
前記ゲート電圧供給回路は、前記電気的スイッチ機能を実現するためのトランジスタを備えたことを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の負荷駆動装置において、
複数の前記負荷を個別に制御するために、複数の前記負荷にそれぞれ接続された複数の前記第1のMOSFETと、
複数の前記第1のMOSFETにそれぞれ接続された複数の前記第2のMOSFETと、
複数の前記第1のMOSFETのゲートにそれぞれ接続された複数の前記ゲート電圧制御回路と、
全ての前記ゲート電圧制御回路に接続され、全ての前記ゲート電圧制御回路に前記電圧の供給が可能な単一の前記ゲート電圧供給回路と、を備えたことを特徴とする負荷駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばソレノイド等のような負荷の駆動に用いて好適な負荷駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や建設機械などに搭載される電子制御装置には、バッテリ(以下、「電源」という)を逆接続したときの保護機能が要求される。電源に接続された負荷を、負荷の下流側で駆動する負荷駆動装置において、電源逆接続に対する保護方法として、電源のプラス端子と負荷の間にダイオードを挿入する方法が知られている。ダイオードは電圧が発生する素子であるため、電流が増えると無効な電力を消費して発熱が大きくなるという問題がある。それを解決するために、ダイオードに代わってNチャンネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用して、電源逆接続に対する保護を行う負荷駆動装置が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された負荷駆動装置では、第1のNチャンネル型MOSFETおよび第2のNチャンネル型MOSFETは、互いに直列接続された状態で、負荷の下流側に接続されている。第2のNチャンネル型MOSFETは、制御信号に従って負荷を駆動する。第1のNチャンネル型MOSFETは、電源の逆接続から回路を保護している。第1のNチャンネル型MOSFETを用いて電源逆接続に対する保護を行うためには、第1のNチャンネル型MOSFETのソースを負荷側に接続し、電源が逆接続されたときに内蔵ダイオードの向きが逆バイアスとなるように接続する必要がある。Nチャンネル型MOSFETを制御する場合、ソース電位よりもゲート電位を高くする必要がある。このため、通常はNチャンネル型MOSFETのソースを低電位側に接続するのが一般的であるが、第1のNチャンネル型MOSFETのソースは高電位側に接続している。このような接続においても第1のNチャンネル型MOSFETを制御できるようにするために、従来技術では光スイッチを用いてゲート電圧を発生させ、第1のNチャンネル型MOSFETの制御を可能としている。
【0004】
電源が正接続された状態では、光スイッチによりゲート電圧が発生し、第1のNチャンネル型MOSFETは常時ONとなる。このとき、第2のNチャンネル型MOSFETを用いて負荷をONとOFFを制御することができる。一方で、電源が逆接続された状態では、光スイッチは発光せずにゲート電圧が発生しないため、第1のNチャンネル型MOSFETはOFFとなる。このとき、第1のNチャンネル型MOSFETの内蔵ダイオードにより負荷へ流れる電流を防止することができるため、電源逆接続に対する保護が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-146558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来技術では、第1のNチャンネル型MOSFETの駆動に光スイッチを使用している。このような光スイッチは、一次側の発光素子と二次側の受光素子とを備えている。一方、例えば建設機械に使用される負荷駆動装置は、装置内部が100℃を超えるような高温環境条件で使用されることが多いのに加え、長期間の稼働が求められる。これに対し、光スイッチは、温度サイクルの厳しい過酷な環境下で使用すると、光半導体の性質や構造に基づいて、一次側の発光素子と二次側の受光素子との間で結合度が低下する傾向がある。このため、高温環境下での長期間の稼働が必要な用途に対しては、従来技術による装置は、光スイッチの寿命が大幅に短くなるために適さない。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の一実施形態の目的は、高温環境下においても長期的な稼働が可能となる負荷駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の一実施形態は、負荷の下流側にソースが接続されたNチャンネル型の第1のMOSFETと、ONまたはOFFに動作して前記負荷の駆動を制御するNチャンネル型の第2のMOSFETと、を備え、前記第1のMOSFETのドレインに前記第2のMOSFETのドレインが接続された負荷駆動装置において、前記第1のMOSFETのゲートに接続され、前記第2のMOSFETがONのときにのみ閾値電圧よりも高いゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達する電気的伝達機能を有するゲート電圧制御回路と、前記ゲート電圧制御回路に接続され、電源が正接続された場合には電源電圧よりも低く前記閾値電圧よりも高い電圧を前記ゲート電圧制御回路に出力し、電源が逆接続された場合には前記ゲート電圧制御回路への電圧の出力を中止する電気的スイッチ機能を有するゲート電圧供給回路と、をさらに備え、電源が逆接続された場合には、前記ゲート電圧供給回路から前記ゲート電圧制御回路への電圧の出力が中止されることで前記第1のMOSFETがOFFとなり、前記第1のMOSFETの内蔵ダイオードにより前記負荷への逆電流が防止され、前記ゲート電圧制御回路は、前記電気的伝達機能を実現するために、記ゲート電圧供給回路の出力側にアノードが接続され前記第1のMOSFETのゲートにカソードが接続されたダイオードと、前記第1のMOSFETのゲートとソースとの間に接続された抵抗と、を備え、前記ゲート電圧制御回路は、電源が正接続された場合であって、前記第2のMOSFETがONのときには、前記ダイオードは導通して、前記電源電圧よりも低く前記閾値電圧よりも高いゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達し、電源が正接続された場合であって、前記第2のMOSFETがOFFのときには、前記ダイオードは導通せず、前記第1のMOSFETのソース電位とほぼ同じゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達し、電源が逆接続された場合には、前記第2のMOSFETがONとOFFのいずれのときでも、前記ダイオードは導通せず、前記第1のMOSFETのソース電位とほぼ同じゲート電圧を前記第1のMOSFETのゲートに電気的に伝達することを特徴としている。

【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態による負荷駆動装置は、高温環境下においても長期的な稼働が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態による負荷駆動装置を示す回路図である。
図2図1中のゲート電圧供給回路を示す回路図である。
図3図1中のゲート電圧制御回路を示す回路図である。
図4】本発明の第2の実施形態による負荷駆動装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態による負荷駆動装置について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1ないし図3は、第1の実施形態による負荷駆動装置1を示している。
【0013】
電源20は、例えばバッテリのような直流電源である。電源20には、例えば12Vか24Vのバッテリが一般的に多く使用される。電源20は、どちらの電圧のバッテリでもよく、それ以外の電圧のバッテリでもよい。
【0014】
電源20の両端は、第1端子21と第2端子22に接続される。電源20は、第1端子21と第2端子22との間に、電源電圧Vbを供給する。ここで、電源正接続状態とは、電源20のプラス側が第1端子21に接続され、電源20のマイナス側が第2端子22に接続された状態をいう。電源逆接続状態とは、電源20のプラス側が第2端子22に接続され、マイナス側が第1端子21に接続された状態をいう。また、電源20のマイナス側の電位をゼロボルト(0V)とする。負荷30は、例えば建設機械の電磁弁を駆動するソレノイドである。負荷30の上流側となる第1端子31は、第1端子21に接続されている。負荷30と第2端子22との間には、負荷駆動装置1が接続されている。このとき、負荷駆動装置1は、負荷30のローサイド(マイナス側)で負荷30の駆動を制御する。
【0015】
負荷駆動装置1は、第1のMOSFET2および第2のMOSFET3を備えている。負荷駆動装置1は、ゲート電圧供給回路4およびゲート電圧制御回路5をさらに備えている。
【0016】
第1のMOSFET2は、Nチャンネル型のMOSFETによって構成されている。第1のMOSFET2のソースSは、負荷30の下流側となる第2端子32に接続されている。第1のMOSFET2のドレインDは、第2のMOSFET3のドレインDに接続されている。第1のMOSFET2のゲートGは、ゲート電圧制御回路5に接続されている。第1のMOSFET2は、ゲート電圧制御回路5から供給されるゲート電圧に応じて、ONとOFFが制御される。
【0017】
第1のMOSFET2のドレインDとソースSとの間には、内蔵ダイオード2Aが形成されている。内蔵ダイオード2Aは、ソースSからドレインDに向かう方向が順方向となり、ドレインDからソースSに向かう方向が逆方向となっている。
【0018】
第2のMOSFET3は、Nチャンネル型のMOSFETによって構成されている。第2のMOSFET3のドレインDは、第1のMOSFET2のドレインDに接続されている。第2のMOSFET3のソースSは、電源20のマイナス側となる第2端子22に接続されている。第2のMOSFET3のゲートGは、制御回路7に接続されている。第2のMOSFET3は、制御回路7から供給されるゲート電圧に応じて、ONとOFFが制御される。第2のMOSFET3は、ONまたはOFFに動作して負荷30の駆動を制御する。
【0019】
第2のMOSFET3のドレインDとソースSとの間には、内蔵ダイオード3Aが形成されている。内蔵ダイオード3Aは、ソースSからドレインDに向かう方向が順方向となり、ドレインDからソースSに向かう方向が逆方向となっている。
【0020】
負荷駆動装置1には、レギュレータ6が接続されると共に、負荷30のONとOFFを制御するための制御回路7が接続されている。制御回路7は、負荷駆動装置1の第2のMOSFET3に制御信号となるゲート電圧を供給する。
【0021】
レギュレータ6は、ダイオード8を介して第1端子21に接続されている。レギュレータ6は、直流安定化電源であり、所定の直流電圧を出力する2つの出力端子を有している。レギュレータ6の第1出力端子は、制御回路7に接続されている。レギュレータ6の第2出力端子は、ゲート電圧供給回路4に接続されている。レギュレータ6は、ゲート電圧供給回路4に電圧Vrを供給する。電圧Vrは、第1のMOSFET2の閾値電圧よりも高く、電源20の電源電圧Vbよりも低い電圧に設定されている。電圧Vrは、制御回路7の電源電圧や他の回路用の電源電圧と共通化してもよく、負荷駆動装置1に専用でなくてもよい。
【0022】
レギュレータ6の電圧Vrは、例えば5V~10V程度が適切な値である。図1では、制御回路7は、その電源となるレギュレータ6と分離された構成とした。本発明はこれに限らず、例えば制御回路7の内蔵電源を、制御回路7と、負荷駆動装置1のゲート電圧供給回路4とで共用してもよい。即ち、制御回路7の内蔵電源からの電圧Vrを負荷駆動装置1のゲート電圧供給回路4に供給してもよい。
【0023】
ダイオード8は、レギュレータ6の入力側に接続されている。ダイオード8のアノードAは第1端子21に接続され、ダイオード8のカソードKはレギュレータ6に接続されている。ダイオード8は、電源逆接続状態ではレギュレータ6へ電流が流れないようにして、レギュレータ6を保護する役割を果たす。ダイオード8には負荷30へ流れる電流は流れない。このため、負荷30の電流が増えても、消費する電力が増加することはない。なお、ダイオード8の代わりに、電源逆接続からレギュレータ6を保護する回路を備えてもよい。
【0024】
ゲート電圧供給回路4は、3つの端子T41,T42,T43を備えている。端子T41は、レギュレータ6に接続されている。端子T42は、電源20のマイナス側となる第2端子22に接続されている。端子T43は、ゲート電圧制御回路5の端子T51に接続されている。
【0025】
図2に示すように、ゲート電圧供給回路4は、例えばトランジスタ4Aと、2つの抵抗4B,4Cと、ダイオード4Dとを備えている。トランジスタ4Aは、例えばPNP型のバイポーラトランジスタによって構成されている。トランジスタ4AのエミッタEは、端子T41に接続されている。トランジスタ4AのエミッタEとベースBとの間には、抵抗4Bが接続されている。トランジスタ4AのコレクタCは、端子T43に接続されている。抵抗4Bの第1端子は、端子T41とトランジスタ4AのエミッタEに接続されている。抵抗4Bの第2端子は、抵抗4Cの第1端子に接続されると共に、トランジスタ4AのベースBに接続されている。抵抗4Cの第2端子は、ダイオード4DのアノードAに接続されている。ダイオード4DのカソードKは、端子T42に接続されている。
【0026】
図1に示すように、ゲート電圧供給回路4は、ゲート電圧制御回路5に接続されている。ゲート電圧供給回路4は、電源20が正接続された状態(電源正接続状態)では、閾値電圧よりも高い電圧Voをゲート電圧制御回路5に出力する。ゲート電圧供給回路4は、電源20が逆接続された状態(電源逆接続状態)では、ゲート電圧制御回路5への電圧Voの出力を中止する。
【0027】
ゲート電圧制御回路5は、第1のMOSFET2のゲートGに接続され、第2のMOSFET3がONのときにのみ閾値電圧よりも高いゲート電圧を第1のMOSFET2のゲートGに電気的に伝達する電気的伝達機能を有する。ゲート電圧制御回路5は、3つの端子T51,T52,T53を備えている。端子T51は、ゲート電圧供給回路4の端子T43に接続されている。端子T52は、第1のMOSFET2のゲートGに接続されている。端子T53は、第1のMOSFET2のソースSに接続されている。
【0028】
図3に示すように、ゲート電圧制御回路5は、例えばダイオード5Aと、抵抗5Bとを備えている。ダイオード5AのアノードAは、端子T51に接続されている。ダイオード5AのカソードKは、端子T52に接続されている。即ち、ダイオード5AのカソードKは、第1のMOSFET2のゲートGに接続されている。抵抗5Bの第1端子は、端子T53に接続されている。即ち、抵抗5Bの第1端子は、第1のMOSFET2のソースSに接続されている。抵抗5Bの第2端子は、端子T52に接続されている。即ち、抵抗5Bの第2端子は、ダイオード5AのカソードKに接続されると共に、第1のMOSFET2のゲートGに接続されている。
【0029】
次に、電源正接続状態での負荷駆動装置1の動作について、図1ないし図3を参照して説明する。
【0030】
電源正接続状態では、レギュレータ6は、電圧Vrを出力する。この電圧Vrにより、ゲート電圧供給回路4の抵抗4B、抵抗4Cおよびダイオード4Dに電流が流れ、トランジスタ4Aのベース・エミッタ間に電圧が発生する。これにより、トランジスタ4AがONとなり、ゲート電圧供給回路4は、ゲート電圧制御回路5に電圧Voを出力する。このように、電源正接続状態では、ゲート電圧供給回路4の端子T43には、第1のMOSFET2の閾値電圧よりも高く、電源電圧Vbよりも低い電圧Voが常時供給されている。
【0031】
この状態で、制御回路7から第2のMOSFET3のゲートGに対してOFFの制御信号が伝達された場合(以下、「負荷駆動OFF」という)、第2のMOSFET3はOFFとなる。第2のMOSFET3がOFFのときは、負荷30は駆動されず、負荷30には電流が流れない。このとき、第1のMOSFET2のソース電位は、ほぼ電源電圧Vbに等しくなり、ゲート電圧供給回路4からの電圧Voよりも高くなる。ゲート電圧制御回路5は、ソース電位が電圧Voよりも高い場合、電圧Voを第1のMOSFET2のゲートGに伝達せず、ソース電位を第1のMOSFET2のゲートGに伝達する。
【0032】
具体的に説明すると、ゲート電圧制御回路5の抵抗5Bによって、第1のMOSFET2のゲート電位はほぼソース電位と同じ電源電圧Vbとなる。これにより、ゲート電圧制御回路5のダイオード5Aは、逆バイアスとなって導通しない。従って、第1のMOSFET2のゲート電位は閾値電圧よりも低くなり、第1のMOSFET2はOFFとなる。
【0033】
一方、制御回路7から第2のMOSFET3のゲートGに対してONの制御信号が伝達された場合(以下、「負荷駆動ON」という)、第2のMOSFET3がONになる。第2のMOSFET3がONになると、第2のMOSFET3のドレイン電位がほぼ0Vになる。このとき、第1のMOSFET2の内蔵ダイオード2Aを通して負荷30が電源20のマイナス側に導通し、負荷30に電流が流れる。これにより、負荷30は駆動される。
【0034】
負荷駆動ONになった直後は、第1のMOSFET2のソース電位は、第2のMOSFET3のドレイン電位よりも内蔵ダイオード2Aの順方向電圧分だけ高くなる。しかしながら、第1のMOSFET2のソース電位は、電源20のマイナス側となる第2端子22の電位(0V)に近い値まで低下する。即ち、第1のMOSFET2のソース電位は、内蔵ダイオード2Aの順方向電圧分だけ0Vよりも高い電位になるが、1V以下の低い電位となる。
【0035】
ゲート電圧制御回路5は、第1のMOSFET2のソース電位がゲート電圧供給回路4からの電圧Voよりも低い場合、電圧Voを第1のMOSFET2のゲートGに伝達し、第1のMOSFET2をONさせる。このとき、ゲート電圧制御回路5のダイオード5Aは順方向バイアスとなり、第1のMOSFET2のゲートGには、ゲート電圧供給回路4からの電圧Voよりダイオード5Aの順方向電圧だけ低い電圧が印加される。例えば、電圧Vrを7Vに設定した場合、トランジスタ4Aのコレクタ・エミッタ間の飽和電圧を0.1Vとし、ダイオード5Aの順方向電圧降下を0.7Vとすると、第1のMOSFET2のゲートGには約6.2Vが印加される。一般的なMOSFETのゲート閾値電圧は2~3V程度であるので、この状態で第1のMOSFET2を十分にONさせることができる。このように第1のMOSFET2のゲートGに印加される電圧が第1のMOSFET2の閾値電圧よりも高くなるように、レギュレータ6から出力される電圧Vrを設定することで、第1のMOSFET2をONさせることが可能となる。
【0036】
第1のMOSFET2がONした後には、第1のMOSFET2のソースSはほぼ0V近くまで下がる。負荷駆動ONになってから第1のMOSFET2がONされるまでの時間は短く、内蔵ダイオード2Aへはごく短い時間しか負荷30の電流が流れない。このため、内蔵ダイオード2Aの発熱が大きくなることはない。
【0037】
このようにして、ゲート電圧制御回路5は、負荷駆動OFFのときには、第1のMOSFET2のソース電位をゲートGに伝達するように制御を行う。ゲート電圧制御回路5は、負荷駆動ONのときには、ゲート電圧供給回路4から出力される電圧Voを第1のMOSFET2のゲートGへ伝達する。これにより、負荷30の駆動が可能となる。
【0038】
次に、電源逆接続状態での負荷駆動装置1の動作について、図1ないし図3を参照して説明する。
【0039】
電源逆接続状態では、ゲート電圧供給回路4のダイオード4Dが逆バイアスとなるため、ダイオード4Dは導通せず、トランジスタ4AはOFFとなる。このため、ゲート電圧供給回路4は、電圧Voを出力しない。ダイオード8およびダイオード4Dは必ずしも両方が必要なわけではない。電源逆接続のときにトランジスタ4AがOFFとなるような回路構成であればよく、例えばダイオード8およびダイオード4Dのうちいずれか一方を装備すればよい。
【0040】
負荷30の第1端子31は、電源20のマイナス側の第1端子21に接続されており、0Vとなる。ゲート電圧供給回路4からの電圧Voが発生しないため、ダイオード5Aは導通せず、第1のMOSFET2のゲート電位はほぼソース電位と等しくなる。このため、第1のMOSFET2のゲート電位は閾値電圧よりも低くなり、第1のMOSFET2はOFFとなる。
【0041】
即ち、電源逆接続状態では、ゲート電圧供給回路4は、端子T43へ電圧Voを出力しない。これにより、ゲート電圧制御回路5は、第1のMOSFET2のソース電位をゲートGに伝達するように制御し、第1のMOSFET2をOFFさせる。
【0042】
第2のMOSFET3のソースSは、電源20のプラス側の第2端子22に接続されている。このため、第1のMOSFET2のドレインDには、電源20の第2端子22から第2のMOSFET3の内蔵ダイオード3Aを通して電源電圧Vbが伝達される。このとき、内蔵ダイオード3Aは順方向バイアスでONとなり、第2のMOSFET3のドレイン電位は、電源電圧Vbから内蔵ダイオード3Aの順方向電圧分だけ低い電位になる。
【0043】
一方、第1のMOSFET2の内蔵ダイオード2Aは、逆バイアスとなる。このため、内蔵ダイオード2Aは導通せず、負荷30に電流は流れない。従って、電源逆接続状態では、負荷30へ電流が流れず、回路が保護される。
【0044】
以上のように構成することで、電源逆接続状態から回路を保護するために、Nチャンネル型の第1のMOSFET2を使用することができると共に、第1のMOSFET2を使用して電源正接続状態での消費電力を軽減させることができる。さらに、ゲート電圧供給回路4とゲート電圧制御回路5を、光スイッチよりも高温環境下で劣化の少ない半導体素子で構成することにより、高温環境条件下でも長期稼働が可能な負荷駆動装置1を実現することが可能となる。
【0045】
また、ゲート電圧供給回路4およびゲート電圧制御回路5は、簡易な回路で構成できる。これに加え、光スイッチのような高温特性に弱い部品を使わずに、負荷30を駆動することができると共に、電源逆接続状態に対する回路の保護が可能となる。
【0046】
なお、ゲート電圧供給回路4のトランジスタ4Aはスイッチ制御できる素子であればよく、トランジスタに限らず他の素子で構成しても構わない。
【0047】
かくして、第1の実施形態によれば、負荷駆動装置1は、第1のMOSFET2のゲートGに接続され、第2のMOSFET3がONのときにのみ閾値電圧よりも高いゲート電圧を第1のMOSFET2のゲートGに電気的に伝達する電気的伝達機能を有するゲート電圧制御回路5と、ゲート電圧制御回路5に接続され、電源20が正接続された場合には閾値電圧よりも高い電圧をゲート電圧制御回路5に出力し、電源20が逆接続された場合にはゲート電圧制御回路5への電圧Voの出力を中止する電気的スイッチ機能を有するゲート電圧供給回路4と、を備えている。電源20が逆接続された場合には、ゲート電圧供給回路4からゲート電圧制御回路5への電圧Voの出力が中止されることで、第1のMOSFET2がOFFとなり、第1のMOSFET2の内蔵ダイオード2Aにより負荷30への逆電流が防止される。
【0048】
このように、負荷駆動装置1では、電気的な伝達によって第1のMOSFET2のゲート電圧が制御される。即ち、負荷駆動装置1の回路は、光スイッチよりも劣化の少ない半導体素子を用いて構成されている。この結果、高温度環境下でも長期的に負荷駆動装置1および負荷30を稼働することができる。
【0049】
また、ゲート電圧制御回路5は、電気的伝達機能を実現するためのダイオード5Aを備えている。これにより、ゲート電圧制御回路5の回路構成を簡素化することができ、負荷駆動装置1の低コスト化が可能になる。
【0050】
さらに、ゲート電圧供給回路4は、電気的スイッチ機能を実現するためのトランジスタ4Aを備えている。これにより、簡易な回路構成でスイッチ制御が可能になるから、負荷駆動装置1の低コスト化が可能になる。
【0051】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態による負荷駆動装置の特徴は、複数の負荷に対応して複数の第1のMOSFETと、複数の第2のMOSFETと、複数のゲート電圧制御回路とを備えると共に、全てのゲート電圧制御回路に電圧が供給可能な単一のゲート電圧供給回路を備えることにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
第2の実施形態では、第1の実施形態に比べて負荷40を増設している。第2の実施形態による負荷駆動装置11は、2つの負荷30,40を個別に駆動させる。このとき、負荷40の上流側となる第1端子41は、電源20のプラス側となる第1端子21に接続されている。負荷30,40と第2端子22との間には、負荷駆動装置11が接続されている。このとき、負荷駆動装置11は、負荷30,40のローサイド(マイナス側)で負荷30,40の駆動を制御する。
【0053】
負荷駆動装置11は、負荷30に対応した第1のMOSFET2、第2のMOSFET3およびゲート電圧制御回路5を備えるのに加え、負荷40に対応した第1のMOSFET2、第2のMOSFET3およびゲート電圧制御回路5を備えている。このため、負荷駆動装置11は、2つの負荷30,40に対応して、第1のMOSFET2、第2のMOSFET3およびゲート電圧制御回路5を2つずつ備えている。
【0054】
負荷40に対応した第1のMOSFET2、第2のMOSFET3およびゲート電圧制御回路5は、負荷30に対応した第1のMOSFET2、第2のMOSFET3およびゲート電圧制御回路5と同様に接続されている。このため、第1のMOSFET2のソースSは、負荷40の下流側となる第2端子42に接続されている。第1のMOSFET2のドレインDは、第2のMOSFET3のドレインDに接続されている。第1のMOSFET2のゲートGは、ゲート電圧制御回路5に接続されている。
【0055】
2つのゲート電圧制御回路5は、単一のゲート電圧供給回路4に接続されている。2つのゲート電圧制御回路5には、単一のゲート電圧供給回路4からそれぞれ電圧Voが供給される。第2の実施形態による制御回路12は、第1の実施形態による制御回路7と同様に構成されている。但し、制御回路12は、負荷30に対応した第2のMOSFET3に制御信号となるゲート電圧を供給すると共に、負荷40に対応した第2のMOSFET3に制御信号となるゲート電圧を供給する。これにより、負荷30,40は、制御回路12によって個別に制御される。
【0056】
かくして、このように構成される第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、第2の実施形態による負荷駆動装置11は、複数の負荷30,40を個別に制御するために、複数の負荷30,40にそれぞれ接続された複数の第1のMOSFET2と、複数の第1のMOSFET2にそれぞれ接続された複数の第2のMOSFET3と、複数の第1のMOSFET2のゲートGにそれぞれ接続された複数のゲート電圧制御回路5と、全てのゲート電圧制御回路5に接続され、全てのゲート電圧制御回路5に電圧Voの供給が可能な単一のゲート電圧供給回路4と、を備えている。
【0057】
このとき、第1のMOSFET2および第2のMOSFET3は、いずれも電圧駆動素子である。このため、ゲート電圧制御回路5には微小電流しか流れない。従って、負荷30に対して負荷40を増設しても、ゲート電圧供給回路4は、1つの回路ブロックのみを装備すればよく、2つのゲート電圧制御回路5に対して電圧Voを供給することができる。このような構成により、負荷40を増設しても負荷駆動装置11を小型化でき、さらにコストを低減することができる。
【0058】
なお、前記第2の実施形態では、2つの負荷を駆動する負荷駆動装置11を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、3つ以上の負荷を駆動する負荷駆動装置に適用してもよい。
【0059】
前記各実施形態では、ゲート電圧供給回路4は、電気的スイッチ機能を実現するために、トランジスタ4Aを用いて構成されるものとした。本発明はこれに限らず、ゲート電圧供給回路は、MOSFETを用いて構成されるものでもよく、マルチプレクサを用いて構成されるものでもよい。
【0060】
前記各実施形態では、負荷30,40が電磁弁のソレノイドである場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らない。負荷は、例えば油圧ポンプのレギュレータを駆動する電磁比例弁のソレノイドでもよい。また、本発明の負荷駆動装置は、建設機械の電磁弁に限らず、例えば自動車の電磁弁に適用してもよく、各種の電気的な負荷を備えた機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1,11 負荷駆動装置
2 第1のMOSFET
2A,3A 内蔵ダイオード
3 第2のMOSFET
4 ゲート電圧供給回路
4A トランジスタ
5 ゲート電圧制御回路
5A ダイオード
6 レギュレータ
7,12 制御回路
20 電源
21 第1端子
22 第2端子
30,40 負荷
図1
図2
図3
図4