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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】充放電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20241114BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H02J7/00 301B
H01M50/293
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020162240
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054948
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】柴野 隆志
(72)【発明者】
【氏名】川上 洋一
(72)【発明者】
【氏名】原口 智生
(72)【発明者】
【氏名】石橋 輝人
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175670(JP,A)
【文献】特開2006-081310(JP,A)
【文献】特開2015-186319(JP,A)
【文献】特開2010-140844(JP,A)
【文献】特開2010-078576(JP,A)
【文献】特開2013-219986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H02J 7/00
H01M 50/20-298
H01M 10/44-46
G01R 31/36-396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な複数の二次電池を、厚さ方向に並べてトレイに収容した状態で、前記各二次電池の正極及び負極に第1、第2の充放電プローブをそれぞれ接続して、前記二次電池の充放電を行う充放電装置において、
前記第1、第2の充放電プローブ側には第1の磁気吸引体が、前記二次電池側には前記第1の磁気吸引体と対となる第2の磁気吸引体が、それぞれ前記二次電池の厚さ方向に沿って複数設けられ、
複数の前記第1の磁気吸引体がそれぞれ個別に、対となる前記第2の磁気吸引体の位置に応じて、前記二次電池の厚さ方向に沿って、移動可能であり、
対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体との磁気吸引力により、前記第1、第2の充放電プローブが前記二次電池の正極及び負極に対して移動し、前記第1、第2の充放電プローブと前記二次電池の正極及び負極との位置決めが行われて、前記第1、第2の充放電プローブが前記二次電池の正極及び負極にそれぞれ接続されることを特徴とする充放電装置。
【請求項2】
請求項1記載の充放電装置において、前記第1、第2の充放電プローブと前記二次電池の正極及び負極との位置決めは、対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体とが、前記磁気吸引力により接触又は隙間を有して配置されて行われることを特徴とする充放電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の充放電装置において、前記第1の磁気吸引体は前記第1、第2の充放電プローブ側に、対となる前記第1、第2の充放電プローブごとに、又は、複数の対となる前記第1、第2の充放電プローブを複数の組に区分した該組ごとに、設けられていることを特徴とする充放電装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の充放電装置において、前記第1、第2の磁気吸引体の双方が磁石であることを特徴とする充放電装置。
【請求項5】
請求項4記載の充放電装置において、前記第1、第2の充放電プローブ側及び前記二次電池側の前記磁石は、それぞれ前記二次電池の厚さ方向に沿ってS極とN極が交互に配置されていることを特徴とする充放電装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の充放電装置において、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか一方が磁石であり、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか他方が磁性体であることを特徴とする充放電装置。
【請求項7】
請求項4又は6記載の充放電装置において、前記磁石は電磁石であることを特徴とする充放電装置。
【請求項8】
請求項4~6のいずれか1項に記載の充放電装置において、前記磁石には凹凸が設けられていることを特徴とする充放電装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の充放電装置において、前記トレイに収容された隣り合う前記二次電池の間にはスペーサが配置され、該スペーサに前記第2の磁気吸引体が設けられていることを特徴とする充放電装置。
【請求項10】
請求項1又は2記載の充放電装置において、前記第1の磁気吸引体は磁石であり、前記第2の磁気吸引体は前記二次電池の磁気特性を有する接続部であることを特徴とする充放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池の充放電を行う充放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド自動車、その他の電気製品等において、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を始めとする充放電可能な二次電池が広く使用されている。
この電池の製造においては、従来の充放電用電池と同様、製造した電池の充放電試験を行い、電池が所定の性能や特性を満たしているか否かを検査してから出荷している。
この充放電試験は、複数の二次電池を、厚さ方向に並べてトレイに収容した状態で、充放電装置の電源(充放電電源)を、充放電プローブを介して各二次電池の端子(正極及び負極)にそれぞれ接続することで行われている。
しかし、トレイに収容された複数の二次電池は、必ずしも均等(同一ピッチ)に配置されておらず、例えば、複数の二次電池のうち、一部の隣り合う二次電池が接触したり、隙間を有したりして配置されるため、一部の二次電池の端子が充放電プローブに接続できない場合がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、1又は2以上の組みになった二次電池ごとに電源側端子を持った複数の充放電ユニットを備え、この充放電ユニットが、二次電池の並び方向にスライド可能に取り付けられた充放電装置が開示されている。また、この充放電ユニットは、二次電池を一つずつ挟み込むスペーサの間に入り込んで、二次電池に対して位置決めする倣い歯が形成されたものであることが記載されている。
特許文献2には、複数の単電池の積層方向の前後にそれぞれ配置する複数のスペーサを備え、このスペーサの突出部の突出寸法を、各単電池の積層方向の前側から後側に向けて段階的に大きくし、複数のプローブを支持するための支持部材を各単電池の積層方向に対して平行に列置すると共に、各単電池の積層方向に向けて変位可能に構成し、支持部材に形成された係止部と、この係止部に対応する突出部が、所定の寸法だけ重なる寸法とし、かつ、各単電池の積層方向の前側から後側に向けて段階的に小さくした充放電装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、充放電時の各二次電池の膨張及び収縮に伴う各正極端子及び各負極端子の移動に追従して、各コンタクトプローブを均等な間隔で移動させるコンタクトユニットを備えた充放電装置が開示されている。
特許文献4には、充放電試験中の二次電池の膨張及び収縮に合わせて押圧機構の押圧力を調整することにより、正極端子及び負極端子の位置変動を制限し、複数の二次電池を所定のピッチで保持する充放電試験機が開示されている。
特許文献5には、電池トレイのベースの長手方向に摺動可能に保持され、二次電池と交互に配置されるセパレータが、二次電池の幅方向に沿って配置される仕切り部と、この仕切り部の両側部に設けられたガイド部とを有し、押圧手段で押圧されることにより、隣接するセパレータのガイド部同士が接触して、各二次電池と各セパレータがそれぞれ一定間隔で保持され、充放電に伴う各二次電池の膨張及び収縮を各仕切り部の弾性変形によって吸収し、各二次電池の規定量以上の膨張を制限する充放電試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5312000号公報
【文献】特開2013-219986号公報
【文献】特許第6461401号公報
【文献】特許第6644230号公報
【文献】特許第6490287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1の技術は、充放電ユニットの構成が複雑になると共に、スペーサの形状を倣い歯に対応した形状とする必要がある。また、倣い歯はスペーサの間に入り込む構成であるため摩耗し易く、メンテナンスを行う頻度が多くなる。
特許文献2の技術は、複数のスペーサの形状が全て同一形状ではないため、各スペーサの配置場所を間違えた場合、正常な動作ができなくなる。
特許文献3の技術は、各正極端子及び各負極端子の移動に追従して各コンタクトプローブを均等な間隔で移動させる必要があるため、構成が複雑になる。
特許文献4の技術は、二次電池の膨張及び収縮に合わせて押圧機構の押圧力を調整する必要があるため、構成が複雑になる。
特許文献5の技術は、セパレータが仕切り部とガイド部とを有し、充放電に伴う各二次電池の膨張及び収縮を各仕切り部の弾性変形によって吸収するため、セパレータを特定の材質で構成する必要があり、また、構成が複雑になる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、構成を簡単にでき、従来よりもメンテナンス性を向上できる充放電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る充放電装置は、充放電可能な複数の二次電池を、厚さ方向に並べてトレイに収容した状態で、前記各二次電池の正極及び負極に第1、第2の充放電プローブをそれぞれ接続して、前記二次電池の充放電を行う充放電装置において、
前記第1、第2の充放電プローブ側には第1の磁気吸引体が、前記二次電池側には前記第1の磁気吸引体と対となる第2の磁気吸引体が、それぞれ前記二次電池の厚さ方向に沿って複数設けられ、
対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体との磁気吸引力により、前記第1、第2の充放電プローブと前記二次電池の正極及び負極との位置決めが行われる。
【0009】
本発明に係る充放電装置において、前記第1、第2の充放電プローブと前記二次電池の正極及び負極との位置決めは、対となる前記第1の磁気吸引体と前記第2の磁気吸引体とを、前記磁気吸引力により接触又は隙間を有して配置して行うことができる。
【0010】
本発明に係る充放電装置において、前記第1の磁気吸引体は前記第1、第2の充放電プローブ側に、対となる前記第1、第2の充放電プローブごとに、又は、複数の対となる前記第1、第2の充放電プローブを複数の組に区分した該組ごとに、設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る充放電装置において、前記第1、第2の磁気吸引体の双方を磁石にすることができる。
なお、前記第1、第2の充放電プローブ側及び前記二次電池側の前記磁石は、それぞれ前記二次電池の厚さ方向に沿ってS極とN極を交互に配置するのがよい。
【0012】
本発明に係る充放電装置において、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか一方を磁石に、前記第1、第2の磁気吸引体のいずれか他方を磁性体にすることもできる。
なお、前記磁石は電磁石でもよい。
また、前記磁石には凹凸を設けることが好ましい。
【0013】
本発明に係る充放電装置において、前記トレイに収容された隣り合う前記二次電池の間にはスペーサが配置され、該スペーサに前記第2の磁気吸引体が設けられているのがよい。
【0014】
本発明に係る充放電装置において、前記第1の磁気吸引体は磁石であり、前記第2の磁気吸引体は前記二次電池の磁気特性を有する接続部であってもよい。
【0015】
本発明に係る充放電装置において、前記第1の磁気吸引体は前記二次電池の厚さ方向に沿って移動可能であり、前記磁気吸引力による前記第1の磁気吸引体の移動に伴って、前記第1、第2の充放電プローブが前記二次電池の正極及び負極に対して移動し、前記位置決めが行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る充放電装置は、第1、第2の充放電プローブ側に第1の磁気吸引体を、二次電池側に第2の磁気吸引体を、それぞれ設け、対となる第1、第2の磁気吸引体の磁気吸引力により、第1、第2の充放電プローブと二次電池の正極及び負極との位置決めを行うので、従来のように、第1、第2の充放電プローブ側の構成を複雑にすることなく、また、櫛歯等も使用することなく、正確な位置決めができる。
従って、構成を簡単にでき、従来よりもメンテナンス性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)~(C)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る充放電装置で充放電を行う二次電池の平面図、正面図、側面図、(D)~(F)はそれぞれ二次電池のトレイへの収容時に使用するスペーサの平面図、正面図、側面図、(G)~(I)はそれぞれスペーサに二次電池が装着された状態を示す平面図、正面図、側面図、である。
図2】同充放電装置で充放電を行う二次電池のトレイへの収容状況を示す説明図である。
図3】(A)、(B)はそれぞれ同二次電池がトレイへ収容された状態を示す平面図、側面図である。
図4】(A)~(C)は本発明の一実施の形態に係る充放電装置の充放電プローブピンと二次電池との接続状況を側面視した説明図である。
図5】(A)~(C)は同充放電装置の充放電プローブピンと二次電池との接続状況を正面視した説明図である。
図6】(A)~(C)は変形例に係る充放電装置の充放電プローブピンと二次電池との接続状況を側面視した説明図である。
図7】(A)~(C)はそれぞれ本発明の他の実施の形態に係る充放電装置で充放電を行う二次電池の平面図、正面図、側面図である。
図8】(A)~(C)は同充放電装置の充放電プローブピンと二次電池との接続状況を正面視した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図5に示すように、本発明の一実施の形態に係る充放電装置10は、充放電可能な複数(ここでは10個)の二次電池11を、厚さ方向に並べてトレイ(搬送トレイ)12に収容した状態で、この各二次電池11の正極13及び負極14に第1、第2の充放電プローブ15、16をそれぞれ接続して、複数の二次電池11の充放電(充放電試験(充放電検査))を同時に行う装置である。なお、二次電池11は、図1(A)~(C)に示すように、厚み方向両側に幅広面を備える直方体状の形状となっている。
以下、詳しく説明する。
【0019】
充放電装置10は、図4(A)~(C)、図5(A)~(C)に示すように、トレイ12を収納するための収容部17が設けられた充放電棚(図示しない)を有している。この収容部17内であって、トレイ12に並べて配置された複数の二次電池11の上方には、各二次電池11の正極13と負極14に当接可能な対となる第1、第2の充放電プローブ15、16が配置され、この第1、第2の充放電プローブ15、16が電源(充放電電源)に接続されている。
なお、電源は、一つの二次電池11に対して一つ使用されるものであり、1つのトレイ12に収容配置される二次電池11の最大個数が、電源の個数と同じになる。この二次電池には、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等、種々あるが、充放電可能な電池であれば特に限定されるものではない。
【0020】
収容部17内には、二次電池11が収容配置されたトレイ12に対し、第1、第2の充放電プローブピン15、16を昇降させる昇降手段18が設けられている。この昇降手段18は、二次電池11の厚さ方向に沿って配置された昇降部本体19と、この昇降部本体19の長手方向に同一ピッチで設けられた複数の取付け部20と、この各取付け部20の幅方向両側に、その上下方向にスライド可能に設けられた当接部21とを有している。
取付け部20には、第1、第2の充放電プローブピン15、16がその軸心を鉛直方向に合わせて設けられ、各当接部21の下端面には、第1の磁石(第1の磁気吸引体の一例)22が設けられている(第1の磁石22が対となる第1、第2の充放電プローブピン15、16ごとに設けられている)。なお、自由状態では、第1、第2の充放電プローブピン15、16の下端位置が、各当接部21の下端面より上方位置となるように、第1、第2の充放電プローブピン15、16が取付け部20に設けられている。
【0021】
トレイ12は、図2図3(A)、(B)に示すように、長方形状の底板23と、この底板23の長手方向(二次電池11の厚さ方向)両端部にそれぞれ立設された側板24と、この対向する側板24同士をその上端部で連結する連結シャフト25とで構成され、上部の開口した部分から二次電池11が出し入れ可能になっている。
トレイ12に収容された隣り合う二次電池11の間には、図2図3(A)、(B)に示すように、スペーサ26が配置されている。なお、スペーサ26は、絶縁性を備えた材質で構成されていれば、特に限定されるものではない。
このスペーサ26は、図1(D)~(I)に示すように、その高さが、正極13と負極14を除いた二次電池11と同程度で、その幅が、二次電池11の幅より広く、幅方向両側部は一側に突出して、平面視してコ字状(断面凹状)となっている。このようにして、スペーサ26に形成された凹部27内に二次電池11が配置される。具体的には、凹部27の内幅が二次電池11の幅より僅かに広く、また、凹部27の深さが二次電池11の厚みより僅かに深くなっている。
【0022】
なお、図2では、便宜上、二次電池11がスペーサ26に装着された状態で、トレイ12内に収容される状況を記載しているが、実際は、複数(トレイ12内への二次電池11の最大収容数)のスペーサ26がトレイ12内に収容配置された状態で、各凹部27内に二次電池11がそれぞれ収容され、図3(A)、(B)に示す状態となる。
スペーサ26の凹部27(凹部27に挿入される二次電池11)を挟んで両側上部には、図1(D)~(I)、図3(A)、(B)に示すように、昇降手段18の当接部21に設けられた第1の磁石22と対となる第2の磁石(第2の磁気吸引体の一例)28が設けられている。このため、平面視して各二次電池11の幅方向両側に位置し、第1、第2の充放電プローブピン15、16側に設けられた一対の第1の磁石22と二次電池11側に設けられた一対の第2の磁石28は、二次電池11の厚さ方向に沿って、トレイ12内に収容される二次電池11の最大個数と同じ組数(ここでは10組)設けられている。
この第1の磁石22と第2の磁石28は、磁気吸引力によって引き付け合うものであり、第1、第2の磁石22、28のいずれか一方がS極であり、他方がN極である。
【0023】
使用にあっては、まず、図2図3(A)、(B)に示すように、複数の二次電池11がそれぞれスペーサ26の凹部27に嵌挿された状態で収容されたトレイ12を、図4(A)、図5(A)に示すように、収容部17に収容する。これにより、図4(A)に示すように、昇降手段18に設けられた第1、第2の充放電プローブ15、16の下方に二次電池11が配置される。
なお、複数の対となる第1の磁石22は昇降手段18に、第1、第2の充放電プローブピン15、16ごとに、その厚さ方向に沿って同一ピッチで設けられているが、複数の対となる第2の磁石28は、トレイ12内に水平方向に移動可能に収容配置されたスペーサ26に設けられている。このため、第1、第2の充放電プローブ15、16に対して、これに接触する二次電池11の正極13及び負極14が、図4(A)に示すように、トレイ12の長さ方向にずれた位置となる。
【0024】
次に、図4(B)、図5(B)に示すように、トレイ12に収容配置された二次電池11に対し、昇降手段18を下降させる。このとき、当接部21に設けられた第1の磁石22と、これに対応する第2の磁石28との磁気吸引力により、第1の磁石22に第2の磁石28が引き付けられ、トレイ12内でスペーサ26が移動した後、第1の磁石22と第2の磁石28とが接触する。
これにより、第1、第2の充放電プローブ15、16に対して、二次電池11の正極13及び負極14が、平面視して重なるように、二次電池11がトレイ12内で移動して、第1、第2の充放電プローブ15、16に対する二次電池11の正極13及び負極14の位置決めが行われる。なお、この位置決めが行われれば、第1の磁石22と第2の磁石28とが、必ずしも接触する必要はなく、隙間(例えば、0.1mm~数mm程度)を有して配置された状態でもよい。
【0025】
ここで、第1の磁石22は、第2の磁石28の位置に応じて、二次電池11の厚さ方向に沿って移動可能であることが好ましい。
具体的には、複数の取付け部20をそれぞれ、昇降部本体19に沿って個別に移動可能にすることで、各取付け部20に一体となって設けられた第1、第2の充放電プローブピン15、16と第1の磁石22を、昇降部本体19に沿って移動可能にできる。
これにより、第2の磁石28が設けられた複数のスペーサ26が、トレイ12内に異なる間隔で収容配置されていても、当接部21に設けられた第1の磁石22と、これに対応する第2の磁石28との磁気吸引力により、第1の磁石22が第2の磁石28に引き付けられ、取付け部20が昇降部本体19に沿って移動した後、第1の磁石22と第2の磁石28とが接触する。
従って、各スペーサ26の凹部27内に配置された二次電池11の正極13及び負極14に対して、各取付け部20に設けられた第1、第2の充放電プローブ15、16が、平面視して重なるように移動するため、二次電池11の正極13及び負極14に対する第1、第2の充放電プローブ15、16の位置決めが行われる。
【0026】
続いて、図4(C)、図5(C)に示すように、昇降手段18を更に下降させることで、昇降部本体19が下降し、取付け部20に取付けられた第1、第2の充放電プローブ15、16を、二次電池11の正極13及び負極14にそれぞれ接触させることができる。
そして、予め設定した試験プログラムに従って、各電源で同じ又は異なる充放電試験を遂行する。
以上の方法により、二次電池11の充放電を行った後は、昇降手段18を上昇させることで、昇降部本体19が上昇して、第1、第2の充放電プローブ15、16が二次電池11の正極13及び負極14から離れ、昇降手段18を更に上昇させることで、第1の磁石22が第2の磁石28から離れる。ここで、第1の磁石22は、磁気吸引力に抗してスペーサ26(二次電池11等)の自重により第2の磁石28から離れる。
【0027】
なお、上記した各対の第1の磁石をS極又はN極で構成し、このS極とN極を二次電池の厚さ方向に沿って交互に配置することもできる。この場合、各対の第2の磁石も第1の磁石に対応してN極又はS極で構成し、このN極とS極を二次電池の厚さ方向に沿って交互に配置する。これにより、厚さ方向に隣り合う磁石の間で斥力(反発する力)が働くため、より高精度の位置決めができる。
また、上記した第1、第2の磁石の表面は滑らかであるが、粗面にする(凹凸を設ける)こともでき、これにより、第1の磁石と第2の磁石との接触状態が維持し易くなり、より高精度の位置決めができる。
そして、第1、第2の磁石のいずれか一方又は双方に、電気を流すことで磁化する電磁石を使用することもできる。
更に、第1、第2の磁気吸引体のいずれか一方に磁石を使用し、他方に磁性体(強磁性体)を使用することもできる。なお、磁性体には、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト、非酸化金属磁性体(オキサイド)等を使用できる。
【0028】
続いて、変形例に係る充放電装置10aについて、図6(A)~(C)を参照しながら説明する。なお、充放電装置10aの基本的な構成は、前記した充放電装置10と略同様であるため、同一部材には同一符号を付して説明する。
充放電装置10aが有する充放電棚の収容部17内には、二次電池11が収容配置されたトレイ12に対して第1、第2の充放電プローブピン15、16を昇降させる昇降手段18aが設けられている。この昇降手段18aは、二次電池11の厚さ方向に沿って配置された昇降部本体19と、この昇降部本体19の長手方向に間隔を有して設けられた複数の取付け部20a、20bと、この各取付け部20a、20bの幅方向両側に、その上下方向にスライド可能に設けられた当接部21とを有している。
【0029】
複数の対となる第1、第2の充放電プローブピン15、16は複数の組に区分され、各取付け部20a、20bには、組ごとに第1、第2の充放電プローブピン15、16が設けられている。具体的には、取付け部20aには、2対の第1、第2の充放電プローブピン15、16が一組みとなって設けられ、取付け部20bには、3対の第1、第2の充放電プローブピン15、16が一組みとなって設けられている。
この取付け部20aには当接部21が、取付け部20aの一側(ここでは左側の第1、第2の充放電プローブ15、16に対応する位置)にスライド可能に設けられ、また、取付け部20bには当接部21が、取付け部20bの他側(ここでは右側の第1、第2の充放電プローブ15、16に対応する位置)にスライド可能に設けられている(即ち、当接部21は、少なくとも二次電池11の厚さ方向両端部を含むように設けられている)。
【0030】
このように、当接部21は、二次電池11の厚さ方向に沿って間隔をあけて設けられているため、当接部21の下端面に設けられた第1の磁石22と対となる第2の磁石28も、二次電池11の厚さ方向に沿って間隔をあけて設けられている。
具体的には、取付け部20aに設けられた2対の第1、第2の充放電プローブピン15、16のうち、一側(ここでは左側)に位置する第1、第2の充放電プローブ15、16が接続される二次電池11が嵌挿されたスペーサ26に、第2の磁石28が設けられ、また、取付け部20bに設けられた3対の第1、第2の充放電プローブピン15、16のうち、他側(ここでは右側)に位置する第1、第2の充放電プローブ15、16が接続される二次電池11が嵌挿されたスペーサ26に、第2の磁石28が設けられている(即ち、第2の磁石28は一部のスペーサ26に設けられている)。
【0031】
使用にあっては、まず、複数の二次電池11が収容されたトレイ12を、図6(A)に示すように、収容部17に収容する。
次に、図6(B)に示すように、トレイ12に収容配置された二次電池11に対し、昇降手段18aを下降させる。このとき、第1の磁石22と第2の磁石28との磁気吸引力により、第1の磁石22に第2の磁石28が引き付けられ、第2の磁石28が設けられたスペーサ26と、このスペーサ26の近傍に位置するスペーサ26とが、トレイ12内で移動した後、第1の磁石22と第2の磁石28とが接触する。
これにより、第1、第2の充放電プローブ15、16に対して、二次電池11の正極13及び負極14が、平面視して重なるように、二次電池11がトレイ12内で移動して、第1、第2の充放電プローブ15、16に対する二次電池11の正極13及び負極14の位置決めが行われる。
【0032】
ここで、第1の磁石22は、第2の磁石28の位置に応じて、二次電池11の厚さ方向に沿って移動可能であることが好ましい。
具体的には、複数の取付け部20a、20bをそれぞれ、昇降部本体19に沿って個別に移動可能にすることで、各取付け部20a、20bに一体となって設けられた第1、第2の充放電プローブピン15、16と第1の磁石22を、昇降部本体19に沿って移動可能にできる。この場合、取付け部20bに当接部21を、取付け部20bの厚さ方向中央部(ここでは3対の第1、第2の充放電プローブピン15、16のうち、中央部の第1、第2の充放電プローブ15、16に対応する位置)にスライド可能に設けるのがよい。
これにより、各スペーサ26の凹部27内に配置された二次電池11の正極13及び負極14に対して、各取付け部20a、20bに設けられた第1、第2の充放電プローブ15、16が、平面視して重なるように移動して、二次電池11の正極13及び負極14に対する第1、第2の充放電プローブ15、16の位置決めが行われる。
【0033】
続いて、図6(C)に示すように、昇降手段18aを更に下降させることで、昇降部本体19が下降し、取付け部20a、20bに取付けられた第1、第2の充放電プローブ15、16を、二次電池11の正極13及び負極14に接触させることができる。
従って、対となる第1、第2の磁石22、28の個数を、二次電池11の個数よりも少なくできるため、装置構成を更に簡単にできる。
なお、複数の組に区分された対となる第1、第2の充放電プローブピン15、16の1組あたりの数は、第1、第2の充放電プローブ15、16に対する二次電池11の正極13及び負極14の位置決めを行うことができれば、特に限定されるものではなく、例えば、4対や5対程度でもよい。このとき、スペーサを、上記した組に対応して、二次電池を収容可能な収容穴(貫通孔)が複数形成された構成とすることもできる。
【0034】
次に、図7(A)~(C)、図8(A)~(C)を参照しながら、本発明の他の実施の形態に係る充放電装置30について説明する。なお、前記した充放電装置10と同一部材には同一符号を付して、詳しい説明を省略する。
この充放電装置30で充放電する二次電池11aは、厚さ方向両側に幅広面を備える直方体状の形状となって、その上端部に正極13a及び負極14aが設けられ、この正極13a及び負極14aにそれぞれボルト(磁気特性を有する接続部の一例)31が設けられたボルト付き電池である。このボルト31は、正極13a及び負極14aにおける二次電池11aの幅方向中央側に、上方へ向けて突出した状態で取付けられている。なお、この二次電池11aにおいて、正極13a及び負極14aとボルトを除く部分は、磁気特性を有しておらず、ボルト31が第2の磁気吸引体になる。
【0035】
充放電装置30が有する充放電棚の収容部17内には、二次電池11aが収容配置されたトレイ12に対し、第1、第2の充放電プローブピン15、16を昇降させる昇降手段32が設けられている。
この昇降手段32は、二次電池11aの厚さ方向に沿って配置された昇降部本体19と、この昇降部本体19の長手方向に同一ピッチで設けられた複数の取付け部33と、この各取付け部33の幅方向中央部に、その上下方向にスライド可能に設けられた当接部21aとを有している。この取付け部33の幅方向両側には、第1、第2の充放電プローブピン15、16がその軸心を鉛直方向に合わせて設けられ、各当接部21aの下端面(第1、第2の充放電プローブピン15、16側)には、第1の磁石22が設けられている。なお、第1の磁石22は、平面視して第1の充放電プローブピン15と第2の充放電プローブピン16との間に配置されている。
【0036】
使用にあっては、図8(A)に示す、トレイ12に収容配置された二次電池11aに対し、図8(B)に示すように、昇降手段32を下降させる。このとき、第1の磁石22とボルト31との磁気吸引力により、第1の磁石22に二次電池11aのボルト31が引き付けられ、第1の磁石22とボルト31とが接触する。具体的には、第1、第2の充放電プローブ15、16に対し、二次電池11の正極13a及び負極14aが、平面視して重なるように、二次電池11がトレイ12内で移動して、第1、第2の充放電プローブ15、16に対する二次電池11の正極13a及び負極14aの位置決めが行われる。
ここで、複数の取付け部33をそれぞれ、昇降部本体19に沿って個別に移動可能にすることで、各取付け部33に一体となって設けられた第1、第2の充放電プローブピン15、16と第1の磁石22を、昇降部本体19に沿って移動可能にすることもできる。これにより、第1の磁石22とボルト31との磁気吸引力により、二次電池11aのボルト31に第1の磁石22が引き付けられ、第1の磁石22とボルト31とが接触して、二次電池11の正極13a及び負極14aに対する第1、第2の充放電プローブ15、16の位置決めが行われる。
これにより、図8(C)に示すように、昇降手段32を更に下降させることで、昇降部本体19が下降し、取付け部33に取付けられた第1、第2の充放電プローブ15、16を、二次電池11の正極13a及び負極14aに接触させることができる。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の充放電装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
前記実施の形態においては、第1の磁石(第1の磁気吸引体)を第1、第2の充放電プローブの位置に対応させ、また、第2の磁石(第2の磁気吸引体)を二次電池の位置に対応させた場合について説明したが、昇降手段等に対する複数の第1、第2の充放電プローブの取付け位置と、トレイに対する二次電池の配置位置が、それぞれ決まっていれば(複数の第1、第2の充放電プローブが昇降手段等に動かない状態で取付けられ、トレイ内で二次電池が動かない状態で収容配置されていれば)、第1の磁石を第1、第2の充放電プローブの位置に対応させることなく、また、第2の磁石を二次電池の位置に対応させることなく、設けることもできる(例えば、第2の磁石をトレイに設けることもできる)。
【0038】
また、前記実施の形態においては、第1、第2の充放電プローブピンと二次電池(正極と負極)との接触に際し、二次電池が収容配置されたトレイに対し、第1、第2の充放電プローブピンを下降させた場合について説明したが、固定配置された第1、第2の充放電プローブピンに対し、二次電池が収容配置されたトレイを上昇させてもよい。
そして、前記実施の形態においては、トレイに収容された二次電池の個数が10個の場合について説明したが、特に限定されるものではなく、9個未満(例えば、5個以上)でもよく、10個超(上限は、例えば、30個程度)でもよいが、トレイに収容される二次電池の個数が多くなるに伴い、第1、第2の充放電プローブの位置に対して二次電池の正極及び負極の位置がずれ易くなることから、二次電池の個数が多い方が、本発明の作用効果がより顕著になる。
【符号の説明】
【0039】
10、10a:充放電装置、11、11a:二次電池、12:トレイ、13、13a:正極、14、14a:負極、15:第1の充放電プローブ、16:第2の充放電プローブ、17:収容部、18、18a:昇降手段、19:昇降部本体、20、20a、20b:取付け部、21、21a:当接部、22:第1の磁石(第1の磁気吸引体)、23:底板、24:側板、25:連結シャフト、26:スペーサ、27:凹部、28:第2の磁石(第2の磁気吸引体)、30:充放電装置、31:ボルト(接続部)、32:昇降手段、33:取付け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8