(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両の運転者支援システムを支援モードで作動する方法及び運転者支援システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20241114BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241114BHJP
B60W 40/107 20120101ALI20241114BHJP
B60W 30/165 20200101ALI20241114BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241114BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W60/00
B60W40/107
B60W30/165
G08G1/16 D
B60T7/12 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020170970
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】10 2019 215 647.9
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2020 204 082.6
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】カミッロ・マッツァ
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・ショリ
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-111184(JP,A)
【文献】特開2006-243248(JP,A)
【文献】特開2013-067301(JP,A)
【文献】特開2019-023021(JP,A)
【文献】特開2018-086949(JP,A)
【文献】特開平08-310272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)の運転者支援システム(102)を支援モードで作動する方法であって、
前記車両(100)の走行方向に向けられた前記車両(100)の少なくとも1つのセンサ(124)によって、車両(100)の前方を走行する目標車両(104)を検出し、
前記センサ(124)のセンサデータを使用して前記目標車両(104)の加速度である目標加速度値(120)を決定し、
前記車両(100)の運転者(106)が車両(100)のアクセルペダル(110)又はハンドスロットル(110)の角度位置によって現在表している運転者要求(112)を、
前記車両(100)の現在の車両加速度値(118)及び
前記目標加速度値(120)に基づいて、車両(100)の車両加速度に影響を及ぼす車両(100)の出力目標値(114)に変換し、
目標車両(104)の運転挙動を模倣するように運転者(106)を支援する方法
であって、
前記車両(100)の現在の車両位置(134)が目標位置(132)に対応する場合に前記目標車両(104)の目標位置(132)で検出された前記目標加速度値(120)を使用し、
前記車両加速度値(118)が前記目標加速度値(120)よりもブレーキ許容範囲以上大きい場合に、前記車両(100)のブレーキシステム(122)を制御する、
方法。
【請求項2】
車両(100)の運転者支援システム(102)を支援モードで作動する方法であって、
前記車両(100)の走行方向に向けられた前記車両(100)の少なくとも1つのセンサ(124)によって、車両(100)の前方を走行する目標車両(104)を検出し、
前記センサ(124)のセンサデータを使用して前記目標車両(104)の
加速度である目標加速度値(120)を決定し、
前記車両(100)の運転者(106)が車両(100)のアクセルペダル(110)又はハンドスロットル(110)の角度位置によって現在表している運転者要求(112)を、
前記車両(100)の現在の車両加速度値(118)及び
前記目標加速度値(120)に基づいて、車両(100)の車両加速度に影響を及ぼす車両(100)の出力目標値(114)に変換し、
目標車両(104)の運転挙動を模倣するように運転者(106)を支援する方法
であって、
前記車両(100)の現在の車両位置(134)が目標位置(132)に対応する場合に前記目標車両(104)の目標位置(132)で検出された前記目標加速度値(120)を使用し、
目標車両(104)の運転挙動を模倣するために、前記車両加速度値(118)が、許容範囲以上前記目標加速度値(120)と異なる場合に前記出力目標値(114)を変更する、
方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の方法であって、
データ伝送システム(130)とのインターフェースを介して読み込まれた前記目標車両(104)の目標経路(128)から前記目標加速度値(120)を導く、
方法。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法であって、
目標車両(104)の運転挙動を模倣するために、前記車両加速度値(118)と前記目標加速度値(120)とに基づいて、前記出力目標値(114)を段階的に変更する、
方法。
【請求項5】
請求項1
~4のいずれか一項に記載の方法であって、
目標車両(104)の運転挙動を模倣するために、前記運転者要求(112)が最小閾値より大きい場合に、前記出力目標値(114)を変更する
、
方法。
【請求項6】
請求項1
~5のいずれか一項に記載の方法であって、
目標車両(104)の運転挙動を模倣するために、前記車両(100)の車両慣性を考慮して前記出力目標値(114)を変更する
、
方法。
【請求項7】
運転者支援システム(102)であって、
対応する装置で請求項1
~6のいずれか一項に記載の方法を実
行するように構成された
、
運転支援システム(102)。
【請求項8】
請求項1
~6のいずれか一項に記載の方法を実
行するように設定されたコンピュータプログラ
ム。
【請求項9】
請求項
8に記載のコンピュータプログラ
ムが記憶された機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者支援システムを支援モードで作動する方法、及びそのような支援モードを有する対応する運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
距離コントローラを備える車両の場合、前方を走行する車両との状況に依存した目標距離が設定される。前方を走行する車両に接近した場合、距離コントローラは、車両が目標距離をおいて、前方を走行する車両の速度で、前方を走行する車両の後方を走行するまで、車両のアクセルペダルでピックアップされた車両の運転者の運転者要求に対して車両のエンジン出力を低減する。距離コントローラは、例えば、前方を走行する車両を追い越すためにアクセルペダルを踏み込むことによって停止にすることができる。
【発明の概要】
【0003】
このような背景に基づいて、ここに提示されるアプローチは、独立請求項に記載の車両の運転者支援システムを支援モードで作動する方法及び対応する運転者支援システム、並びに最後に、対応するコンピュータプログラム製品及び機械可読記憶媒体を提示する。ここに提示されたアプローチの有利な構成及び改良が説明から明らかであり、従属請求項に記載されている。
【0004】
発明の利点
本発明の実施形態では、例えば、前方を走行する目標車両の走行挙動を模倣して車両の運転者を支援することができることが利点である。例えば、運転者が、目標車両と同様にカーブから外れて加速するために十分にペダルを踏み込まない場合、ここで提示されるアプローチによって、目標車両の加速をほぼ達成するために、特に車両のエンジン管理に介入することができる。
【0005】
本出願及び記載された発明の範囲では、特に、車両加速度値を設定するための運転者コマンド又は運転者要求の入力もしくはアクセルペダルの角度位置に基づいて作動される運転者支援システムについて言及する。走行跡が2本の車両の場合、運転者コマンドを入力するためのこのような装置は、運転者の足によって操作されるアクセルペダルであってもよい。代替的には、この入力装置の変形がアクセルペダルと同じ役割を果たすことも可能である。これらは、例えば、ほとんどの車両製造業者によって特別な付属品として提供されるような手動スロットル操作のための装置、又はスクータ、オートバイなどの走行跡が1本の車両、又は電動三輪(トライク)又はクアッドなどで使用されるような手動スロットル回転レバー又は速度回転ハンドルである。
【0006】
このような代替案は明らかであり、当業者は、当然ながら、発明に従事していなくとも市場で確立されたこれらの代替装置に容易に想到するであろう。
【0007】
さらに本出願の範囲では、より容易な理解及び読みやすさの理由からアクセルペダルという用語のみを使用するが、これは、手動スロットルハンドル又は手動回転ハンドル又は速度回転ハンドルを介して制御される運転者支援システムなど、当業者に明らかである全ての他の代替物を含む。
【0008】
車両の運転者支援システムを支援モードで作動する方法が提案され、車両の運転者が車両のアクセルペダルの角度位置によって現在表現しているドライバの要求が、車両の現在の車両加速度値及び目標車両の目標加速度値に依存して、車両の車両加速度に影響を及ぼす車両の出力目標値に変換され、これにより目標車両の走行挙動を模倣して運転者を支援する。
【0009】
本発明の実施形態に関するアイデアは、とりわけ、以下に記載される思想及び認識に基づくものとみなすことができる。
【0010】
車両の運転者支援システムは、異なる機能モジュールを備えることができる。機能モジュールは距離コントローラであってもよい。別の機能モジュールは支援モードであってもよい。
【0011】
車両のドライブトレインは出力目標値によって制御することができる。出力目標値は、実質的に運転者要求によって設定することができる。運転者要求は、車両のアクセルペダルを介して読み込むことができる。運転者支援システムによって出力目標値に影響を及ぼすことができる。
【0012】
距離コントローラは、特に、アクセルペダルによって制御することができる。この場合、アクセルペダルの角度位置及び/又は角速度によって前方を走行する車両との距離の調整に影響を及ぼすことができる。角度位置及び/又は角速度は運転者要求を表すことができる。
【0013】
距離コントローラは、運転者要求を、現在の距離に依存して出力目標値に変換する。運転者要求の変化は、現在の距離に依存して出力目標値の変化に変換される。現在の距離が距離目標値に近いほど出力目標値の変化は小さくなる。
【0014】
他車両がブレーキをかけ、距離目標値が保持されない場合には、出力目標値が低減され、必要に応じて、車両を同様に制動するために車両の制動システムが制御される。
【0015】
支援モードでは、運転者支援システムは、目標車両とできるだけ同様に走行するように運転者を支援することができる。目標車両は、例えば、トレーナーによって走行することができる。この場合、運転者は、生徒又は訓練生と呼ぶことができる。目標値として、支援モードでは目標車両の距離から加速度に切り換えることができる。目標車両の加速度は目標加速度と呼ぶことができる。目標加速度は目標加速度値によって表すことができる。支援モードは、運転者のコマンドにより起動することができる。支援モードは、例えば、ボタンを押すことによって起動することができる。支援モードが起動された場合には、車両の加速度が目標車両の目標加速度を模倣するように出力目標値を設定することができる。車両の加速度は車両加速度と呼ぶことができる。車両加速度は車両加速度値によって表すことができる。しかしながら、車両間の接触を回避するために、速度に依存する最小距離を依然として保持することができる。言い換えれば、支援モードが起動された場合にも距離コントローラはバックグラウンドで作動し、距離目標値として最小距離に調整することができるようになっていてもよい。
【0016】
車両加速度値が目標加速度値よりも小さい場合には出力目標値を増加させることができる。車両加速度値が目標加速度値よりも大きい場合には出力目標値を低減することができる。目標加速度値を使用して出力目標値を制御することができる。
【0017】
目標車両は、走行方向に向けられた車両の少なくとも1つのセンサによって検出することができる。目標加速度値は、センサのセンサデータを使用して決定することができる。例えば、車両のレーダセンサは目標車両を検出することができる。車両は、目標車両を検出するためのライダーセンサ又はカメラを有することもできる。センサデータから目標車両の目標経路を計算することができる。
【0018】
代替的に、目標加速度値は、データ伝送システムとのインターフェースを介して読み込まれた目標車両の目標経路から導くことができる。目標経路は目標車両の走行挙動を模倣することができる。目標軌跡として多数の座標点を保存することができる。例えば、目標車両が座標点を通過した時点をそれぞれの座標点に割り当てることができる。目標車両の目標速度値及び目標加速度値を目標経路から導くことができる。目標加速度値は、直接に座標点ごとに保存することもできる。目標経路は、例えばナビゲーションシステムを使用して目標車両に記録し、データ伝送システムに伝送することができる。目標経路は人工的に生成することもできる。次いで、例えばヘッドアップシステムを介して車両の前方の運転者に対して目標車両を表示することができる。目標経路の遠隔送信によって、複数の車両が同じ区間で次々に同じ目標経路をたどることが可能になる。
【0019】
目標車両の目標位置で検出された目標加速度値を使用して、車両の現在の車両位置が実質的に目標位置に対応する場合に運転者要求を出力目標値に変換することができる。目標位置は、目標経路上の座標点であってもよい。車両が目標位置を通過する場合に、対応する目標加速度値を使用することができる。目標位置は、例えば、カーブの前方の制動点、又はカーブの終わりの加速点であってもよい。不慣れな運転者にとっては、制動点は、カーブから異常に遠く離れている可能性がある。目標加速度値は制動点で著しく低下し、負になることもある。加速点は、カーブの頂点に位置する場合もある。不慣れな運転者にとっては、加速点は、カーブ出口よりも遥か手前にある可能性がある。目標加速度値は加速点において著しく増加することがある。目標車両は、過去の時点で既に制動点及び加速点を通過しており、そこで制動又は加速されている可能性がある。このようにして、複数の車両間の安全距離を保持することができる。
【0020】
車両のブレーキシステムは、車両加速度値が制動許容範囲を超えて目標加速度値よりも大きい場合に制御することができる。ブレーキシステムが制御された場合には、出力目標値はゼロに低減することができる。ブレーキシステムにより達成されるべきブレーキトルクは、ブレーキトルク目標値に基づいて設定することができる。ブレーキシステムの制御よって、例えば、カーブで制動する場合に運転者を支援することができる。制動許容範囲は選択可能になっていてもよい。
【0021】
車両加速度値が許容範囲を超えて目標加速度値から逸脱する場合には、出力目標値を変更することができる。車両加速度値は、目標加速度値からわずかに正又は負に逸脱してもよい。許容範囲では、運転者は自然な運転間隔を有することができる。許容範囲は選択可能になっていてもよい。
【0022】
出力目標値は、車両加速度値と目標加速度値との差に依存して段階的に変更することができる。差が大きいほど、出力目標値の変化を大きくすることができる。出力目標値は、運転者が支援モードの介入を感じることができるように、あらかじめ設定されたステップで変更することができる。1つのステップから次のステップにジャンプする場合には、感じ取ることができる衝撃が車両に加えられてもよい。ステップの大きさは、あらかじめ設定することによって選択可能になっていてもよい。
【0023】
運転者要求が最小閾値よりも大きい場合、出力目標値を変更することができる。運転者がアクセルペダルを離し、もはや目標車両に追従することを望んでいないか、又は追従できないことが明らかである場合には、支援モードによる介入を行わず、及び/又は支援モードは自動的に停止することができる。最小閾値は、目標加速度値に比例することができる。支援モードが停止された場合には、運転者支援システムの別のモードを自動的に起動することができる。例えば、距離コントローラを自動的に起動することができる。最小閾値は選択可能になっていてもよい。
【0024】
出力目標値は、車両の車両慣性を考慮して変更することができる。車両慣性は、車両のドライブトレインの応答挙動と車両の質量慣性とからなる場合がある。目標加速度値の変化を早期に特定するために、目標加速度値をあらかじめ監視することができる。車両慣性を考慮して、車両が目標加速度値の変化の箇所に到達した場合に車両の出力を調整できるように、出力目標値を少し前もって調整することができる。
【0025】
この方法は、例えば、ソフトウェア又はハードウェアで、あるいは、ソフトウェア及びハードウェアの混合形式で、例えば、制御器において実施することができる。
【0026】
ここで提示されるアプローチは、ここで提示される方法の実施形態のステップを適切な装置において実行、制御、又は実施するように構成された運転者支援システムをもたらす。
【0027】
ドライバ支援システムは、信号又はデータを処理するための少なくとも1つの処理ユニットと、信号又はデータを記憶するための少なくとも1つのメモリユニットと、通信プロトコルに埋め込まれたデータを読み込み、又は出力するための少なくとも1つのインターフェース及び/又は通信インターフェースとを有する電気機器であってもよい。計算ユニットは、例えば、信号プロセッサ、いわゆる「システムASIC」、又はセンサ信号を処理し、センサ信号に基づいてデータ信号を出力するマイクロコントローラであってもよい。メモリユニットは、例えば、フラッシュメモリ、EPROM、又は磁気メモリユニットであってもよい。インターフェースは、センサのセンサ信号を読み取るためのセンサインターフェースとして、及び/又はデータ信号及び/又は制御信号をアクチュエータに出力するためのアクチュエータインターフェースとして構成されていてもよい。通信インターフェースは、データを無線及び/又は有線で読み込み、又は出力するように構成されていてもよい。インターフェースは、例えば、他のソフトウェアモジュールと共にマイクロコントローラに設けられたソフトウェアモジュールであってもよい。
【0028】
半導体メモリ、ハードディスク、又は光メモリなどの機械可読キャリア又は記憶媒体上に格納することができ、上述のいずれか1つの実施形態により方法のステップを実施、実行、及び/又は制御するために使用されるプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムは、特に、プログラム製品又はプログラムがコンピュータ又は装置で実行される場合には有利である。
【0029】
本発明の可能な特徴及び利点のいくつかは、異なる実施形態を参照して本明細書に記載されることに留意されたい。当業者は、本発明のさらなる実施形態に想到するために、運転者支援システム及び方法の特徴を適切に組み合わせ、適合させ、又は入れ替えることができることを認識している。
【0030】
以下に添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、図面及び説明は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】例示的な実施形態による運転者支援システムを有する車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この図は、概略的なものにすぎず、縮尺通りではない。図において、同じ参照符号は、同じ、又は同様に作用する特徴を示す。
【0033】
図1は、例示的な実施形態による運転者支援システム102を有する車両100の図を示す。車両100は、遮断されたトレーニングエリアでトレーナーによって制御される目標車両104の後方を走行している。車両のドライバ106は、目標車両104の走行挙動をできるだけ正確に模倣しようとする。
【0034】
運転者支援システム102は支援モードを有する。運転者106は、運転挙動を模倣する場合に支援されるように、車両100の操作要素108を介して支援モードを起動している。操作要素108は、例えば、車両100のステアリングホイールのボタンであってもよい。
【0035】
支援モードが起動された場合には、車両100のアクセルペダル110の角度位置を介して検出された運転者106による運転者要求112は、車両100のドライブトレイン116の出力目標値114に直接に変換されない。運転者支援システム102は支援モードで運転者要求112を読み込み、車両100の現在の加速度を表す車両加速度値118と、目標車両104の加速度を表す目標加速度値120とを比較し、比較結果を用いて運転者要求112を出力目標値114に変換する。車両加速度値118が目標加速度値120の周辺の許容範囲内にある場合には、運転者要求112を直接に出力目標値114に変換することができる。
【0036】
車両加速度値118が許容範囲を超えて目標加速度値120よりも小さい場合には、運転者106のアクセルペダルの踏込みがあまりに少なく、ドライバ要求112は、目標加速度値120にほぼ到達するには小さすぎる。したがって、出力目標値114は増大される。
【0037】
車両加速度値118が許容範囲を超えて目標加速度値120よりも大きい場合には、運転者106はアクセルペダルを踏み込みすぎ、運転者要求112は過度に大きい。したがって、出力目標値114は低減される。車両加速度値118が大きすぎ、出力目標値114を低減するだけでは車両100を十分に制動することができない場合には、例示的な実施形態では、車両100のブレーキシステム122が制御される。車両加速度値118が制動許容範囲を超えて目標加速度値120よりも大きい場合にはブレーキシステム122を制御することができる。目標車両104までの距離が最小距離未満である場合にもブレーキシステム122を制御することができる。
【0038】
出力目標値114は、支援モードが作動していることを運転者106が感知するように、段階的に増加及び/又は減少させることができる。段階は、車両加速度値118が目標加速度値120から大きく逸脱するほど大きくすることができる。
【0039】
一実施形態では、目標車両104は実際に存在し、車両100の少なくとも1つのセンサ124によって検出される。目標加速度値120は、目標車両104がセンサ124の検出領域126内に位置する場合には、センサ124のセンサデータから決定することができる。目標車両104が検出領域126の外側を走行し、したがってもはや検出できない場合、又は目標車両104が仮想的にのみ、もしくはシミュレーションとして存在する場合にも、目標加速度値120を目標車両104の目標経路128から導くことができる。目標経路128は目標車両104によって記録し、例えば、データ伝送システム130を介して提供することができる。実際の目標車両104が全く存在しない場合には、例えば、車両100のデータメモリから目標経路128を取り出すことができる。
【0040】
実質的に、目標車両104のそれぞれの目標位置132について目標経路128から目標加速度値120を導くことができる。車両100は距離をおいて目標車両104の後方を走行しているので、例示的な実施形態では、この目標加速度値120は、車両100の現在の車両位置134が実質的に目標位置132に対応する場合に使用される。特に、この目標加速度値120は、現在の車両位置134が目標経路128に垂直な目標位置を通る線上にある場合に使用することができる。
【0041】
例示的な実施形態では、運転者要求112が最小閾値未満である場合には、支援モードは自動的に停止される。このようにして、運転者106は、アクセルを明確に解除することによって支援モードをスイッチオフすることができる。操作要素108を介して再び起動された後にようやく支援モードは再びスイッチオンされる。支援モードは、操作要素108を介していつでもスイッチオフすることもできる。最小閾値は目標加速度値120に依存していてもよい。例えば、最小閾値は、目標加速度値120に対して固定比を有することができる。
【0042】
言い換えれば、
図1には、距離を保証する運転者支援機能(DDA)のための付加的特徴としてのパフォーマンスアシストが示されている。
【0043】
現在、例えば、アダプティブクルーズコントロール(ACC)及びハイウェイアシスト(HWA)など、運転者の快適性及び安全性の向上をもたらす様々な運転者支援システムが存在する。さらに他の支援システムは、距離警告及び非常ブレーキ介入によって安全確保を成し遂げる。
【0044】
運転者指向の支援機能「ダイナミック・ディスタンス・アシスト」(DDA)では、運転者は、ペダルによる制動から大幅に解放され、衝突が防止され、それにもかかわらず、依然としてアクセルペダル、もしくは二輪車ではグリップが運転者にゆだねられている。
【0045】
ACCを自己加速機能として用いる場合、加速度及び加速度生成値は制限され、ブレーキペダルが機能的安全性の理由から操作された場合にはこの機能は停止される。DDAではアクセルペダルがまだ運転者にゆだねられていることにより、スポーツ車の性能を活かすことができ、ブレーキペダルの操作後にも機能を有効に保つことができる。
【0046】
ここで提示されるアプローチでは、DDAは、運転イベント及び運転訓練のためのサーキットとしてさらに開発される。アイデアは、運転イベントの参加者がプロの運転者に追従する(フォロー・ザ・インストラクタ)ということである。プロの運転者は自身の経験に基づいて、運転方式及びラップタイムを訓練生の能力及びレベルに合わせて設計することができる。ラップタイム最適化と運転の楽しみとの間で、意識的にフォーカスを様々にシフトさせることができる。
【0047】
例えば、サーキットにおける運転イベントでは「フォロー・ザ・インストラクタ」イベントにおけるDDAの保護的な側面に加えて、パフォーマンスアシストを提供することができる。DDAは既に安全距離を保証しているが、他の支援によって加速挙動を段階的に最適化することもできる。カーブから外れて加速する場合に、例えばアクセルペダル値が不十分であることにより、訓練運転者がプロの運転者に十分な速さで追従しない場合には、段階的で調整可能な加速度上昇によって運転者がトレーナーに追従するのを支援する。
【0048】
DDAの補足としてのパフォーマンスアシストによって、前方を走行するトレーナーまでの調整可能な最大距離及び特定の速度差を超えないことが保証される。
【0049】
運転者が、調整可能な閾値よりも大きい所定の加速度を要求した場合には、この加速度は、トレーナーまでの所定の距離及び所定の速度差を超えないために必要な加速度と比較される。所望の距離及び速度差は、特に、トレーナーの速度及び加速度、並びにカーブ半径に依存する。
【0050】
(例えば、ステアリングコラムスイッチで)起動後に付加的な操作要素が不要であることにより、フォーカスはレーストラックに留まる。このことは、このアプローチを、例えば、ロックオンターゲットなどの従来のアプローチから区別する。
【0051】
(例えば、ボタンによる)一般的なスイッチオン及びスイッチオフオプションのみが存在する。
【0052】
アクセルペダルにより運転者が実際に要求した加速度(a_demand)と、追従するために必要な加速度(a_required)とを比較し、正の差(a_required?a_demand>0)が生じた場合、この差を低減することができる。
【0053】
様々な要因やオフセットを有する差分(a_demand-a_required)が、実際に要求される加速度(a_demand)に加算され(a_demand+(a_required?a_demand)*f_Korrektur_x)、異なる段階/モードに設定可能である。
【0054】
同様に、短時間にわたる加速による衝撃は、加速度を上げることを運転者に示すことができる。この場合の作用原理は、非常ブレーキシステムにおけるブレーキの衝撃に類似している。このようにして、プロのトレーナーに追従するように訓練運転者を支援することができる。
【0055】
運転者がブレーキをかけるか、アクセルペダルを戻すか、又は所定の加速度要求未満となった場合には、加速度上昇は許容されず、訓練運転者は、不都合な増大をいつでもできるだけ迅速に防止することができる。
【0056】
パフォーマンスアシストの一般的なスイッチオフは、付加的にボタンによって行うことも可能である。このようにして、訓練者までの距離が大きすぎる場合、不都合な加速度上昇を回避することができる。
【0057】
訓練運転者が所定の距離を下回った場合、又は大きすぎる正の速度差を生成し、加速要求(a_demand)を低減する必要がある場合には、DDAは制御を行い、a_demandをa_allowedに制限し、この場合にa_allowedは遅延を要求することもできる。
【0058】
このパフォーマンスアシスト補助とDDAへの移行とによって、運転の楽しさをさらに高めることができる。訓練運転者は、トレーナー及び機能による適切な支援によって自身の能力を向上させることができる。付加的な操作要素がないことによってルート及びトレーナーへの集中は決して失われることはなく、重要な状況において訓練運転者及びトレーナーの安全性が保証されている。
【0059】
最後に、「有する」、「含む」等の用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、「1つの」等の用語は、複数を排除するものではないことに留意されたい。特許請求の範囲における参照符号は、限定とみなされるべきではない。
【符号の説明】
【0060】
100 車両
102 運転者支援システム
104 目標車両
106 運転者
108 操作要素
110 アクセルペダル
112 運転者要求
114 出力目標値
116 ドライブトレイン
118 車両加速度値
120 目標加速度値
122 ブレーキシステム
124 センサ
126 検出領域
128 目標経路
130 データ伝送システム
132 目標位置
134 車両位置