(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/06 20140101AFI20241114BHJP
E05B 85/16 20140101ALI20241114BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E05B79/06 C
E05B85/16 Z
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2020175757
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】佐▲崎▼ 光宏
(72)【発明者】
【氏名】越智 啓太
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-037378(JP,A)
【文献】特開2007-002621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を形成されたドアパネルの内側に配置され、軸受部を有するベースと、
前記ドアパネルの外側に配置され、前記貫通孔を介して前記ドアパネルの内側に延びるアーム部を有し、前記アーム部には、被規制部、及び前記軸受部に回転可能に支持される軸着部が形成されているハンドルレバーと、
前記ベースへの取付状態で、前記被規制部の移動を規制する規制部を有する規制部材と、
前記ベースに前記規制部材を取り付けるための取付部材と、
を備
え、
前記ハンドルレバーは、レバー本体と、前記レバー本体から延び、屈曲部を有するアーム部とを備え、
前記被規制部は、前記アーム部の屈曲部に設けられ、
前記軸着部は、前記アーム部の先端部に設けられる、ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記取付部材は、頭部およびねじ部を有する雄ねじ部材と、前記ねじ部が螺合するねじ孔を有する雌ねじ部材とを含み、
前記頭部と前記雌ねじ部材の間に、前記ドアパネル、前記ベース及び前記規制部材を位置させ、前記ねじ孔に前記ねじ部を螺合することにより挟持し、前記被規制部の近傍に前記規制部を配置する、請求項
1に記載のドアハンドル装置。
【請求項3】
前記雌ねじ部材は、前記ハンドルレバーに覆われる前記ドアパネルの外側に配置され、前記貫通孔を構成する縁部に当接する当接部を備える、請求項
2に記載のドアハンドル装置。
【請求項4】
前記規制部材を付勢する付勢部材をさらに備え、
前記ねじ孔への前記ねじ部の螺合位置は、前記ベースに前記規制部材を仮止めする仮止め位置と、前記ベースへの前記規制部材の取り付けが完了する取付位置とを含み、
前記ねじ孔への前記ねじ部の螺合位置が仮止め位置であるとき、前記規制部材は、前記付勢部材の付勢力により、前記規制部が前記被規制部から離間する仮止め位置に位置する、請求項
2又は
3に記載のドアハンドル装置。
【請求項5】
前記ベースは、
前記ドアパネ
ル側に形成され、前記雌ねじ部材又は前記雄ねじ部材のいずれか一方が配置される第1凹部と、
前記ドアパネルとは反対側に形成され、前記雌ねじ部材又は前記雄ねじ部材の残る他方が配置される第2凹部とを有し、前記第1凹部と前記第2凹部とは、前記雄ねじ部材のねじ部が挿通する連通孔により連通されている、請求項
2から
4のいずれか1項に記載のドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドルレバーの一端側が車両の上下方向に沿って延びる回転軸によってドアパネルに支持され、他端側が車両の外側に向かって回動できるように構成されたドアハンドル装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来のドアハンドル装置では、ハンドルレバーの一部を別部品で構成する等、ドアパネルからのハンドルレバーの抜け止め構造が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡単な構成でドアパネルからのハンドルレバーの抜け止めを図ることができるドアハンドル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、貫通孔を形成されたドアパネルの内側に配置され、軸受部を有するベースと、前記ドアパネルの外側に配置され、前記貫通孔を介して前記ドアパネルの内側に延びるアーム部を有し、前記アーム部には、被規制部、及び前記軸受部に回転可能に支持される軸着部が形成されているハンドルレバーと、前記ベースへの取付状態で、前記被規制部の移動を規制する規制部を有する規制部材と、前記ベースに前記規制部材を取り付けるための取付部材と、を備え、前記ハンドルレバーは、レバー本体と、前記レバー本体から延び、屈曲部を有するアーム部とを備え、前記被規制部は、前記アーム部の屈曲部に設けられ、
前記軸着部は、前記アーム部の先端部に設けられる、ドアハンドル装置である。
【0007】
この構成によれば、ハンドルレバーのドアパネルの外面側に現れる部分には何ら加工を施す必要がない。そして、取付部材によってベースに規制部材を取り付けるだけで、ドアパネルからのハンドルレバーの抜け止めを図ることができる。
【0009】
前記取付部材は、頭部およびねじ部を有する雄ねじ部材と、前記ねじ部が螺合するねじ孔を有する雌ねじ部材とを含み、前記頭部と前記雌ねじ部材の間に、前記ドアパネル、前記ベース及び前記規制部材を位置させ、前記ねじ孔に前記ねじ部を螺合することにより挟持し、前記被規制部の近傍に前記規制部を配置するのが好ましい。
【0010】
この構成によれば、雌ねじ部材のねじ孔に雄ねじ部材のねじ部を螺合させるだけで、ドアパネルに対してベース及び規制部材を取り付けることができる。つまり、雌ねじ部材と雄ねじ部材により、規制部材によるドアパネルからのハンドルレバーの抜け止めと、ドアパネルへのベースの固定の両方を行い、部品点数を抑えることが可能となる。
【0011】
前記雌ねじ部材は、前記ハンドルレバーに覆われる前記ドアパネルの外側に配置され、前記貫通孔を構成する縁部に当接する当接部を備えるのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、雌ねじ部材に対してドアパネルの内側から雄ねじ部材を螺合させることにより、ドアパネルに対してベース及び規制部材を取り付けることができる。
【0013】
前記規制部材を付勢する付勢部材をさらに備え、前記ねじ孔への前記ねじ部の螺合位置は、前記ベースに前記規制部材を仮止めする仮止め位置と、前記ベースへの前記規制部材の取り付けが完了する取付位置とを含み、前記ねじ孔への前記ねじ部の螺合位置が仮止め位置であるとき、前記規制部材は、前記付勢部材の付勢力により、前記規制部が前記被規制部から離間する仮止め位置に位置するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、取付部材と付勢部材によって、予めベースに対して規制部材を仮止めしておくことができる。したがって、ベースにハンドルレバーを取り付けた後、ねじ孔にねじ部を螺合するだけで、雌ねじ部材と雄ねじ部材によりハンドルレバーの抜け止めを図ることができる。つまり、作業効率よくハンドルレバーを取り付けることが可能となる。
【0015】
前記ベースは、前記ドアパネル側に形成され、前記雌ねじ部材又は前記雄ねじ部材のいずれか一方が配置される第1凹部と、前記ドアパネルとは反対側に形成され、前記雌ねじ部材又は前記雄ねじ部材の残る他方が配置される第2凹部とを有し、前記第1凹部と前記第2凹部とは、前記雄ねじ部材のねじ部が挿通する連通孔により連通されているのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、雄ねじ部材と雌ねじ部材を第1凹部と第2凹部とによってそれぞれ位置決めすることができる。したがって、ベースへの規制部材の取付作業を安定させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハンドルレバーには構造上の大きな加工を施す必要なく、取付部材によってベースに規制部材を取り付けるだけで、ハンドルレバーの被規制部の近傍に規制部材の規制部を配置することができる。これにより、簡単な構成であるにも拘わらず、容易にドアパネルからハンドルレバーの抜け止めを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るドアハンドル装置の正面図。
【
図3B】
図2のベースの一部を矢印Y1方向側から見た状態を示す斜視図。
【
図5】
図2のハンドルレバーのアーム部を示す斜視図。
【
図7】
図2に示すドアパネルに取り付けたベースへのハンドルレバーの組み付けを説明するための部分断面図。
【
図8】
図2に示すドアパネルに取り付けたベースへのハンドルレバーの組み付けを説明するための部分断面図。
【
図9】
図2に示すドアパネルに取り付けたベースへのハンドルレバーの組み付けを説明するための部分断面図。
【
図10】
図2に示すドアパネルに取り付けたベースへのハンドルレバーの組み付けを説明するための部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(構成)
図1は、車両のサイドドアに採用されるドアパネル1の一部を示す正面図、
図2は、その分解斜視図である。
図2中、X軸の矢印X1が車両の前方、X2が車両の後方をそれぞれ示し、Y軸の矢印Y1が車両の左方向、Y2が車両の右方向をそれぞれ示し、Z軸の矢印Z1が車両の上方、Z2が下方をそれぞれ示す。
【0021】
(ドアパネル1)
ドアパネル1は、矢印X1,X2方向に延び、外面から内面(矢印Y2方向)側へと窪んだ凹部2を有する。凹部2の矢印X1方向側には貫通孔3aが形成され、矢印X2方向側には操作孔3bが形成されている。貫通孔3aは、矢印X1方向側に形成される第1開口部3a1と、矢印X2方向側に形成される第2開口部3a2とで構成されている。第1開口部3a1と第2開口部3a2とは互いに連通している。また、第2開口部3a2は、第1開口部3a1に比べて矢印Z1,Z2方向に幅狭であり、矢印X1,X2方向に短い。
【0022】
ドアパネル1には、本実施形態に係るドアハンドル装置4が設けられている。ドアハンドル装置4は、ベース5、ハンドルレバー6、規制部材7及び取付部材8を備える。
【0023】
(ベース5)
ベース5は合成樹脂材料を成形加工したもので、ドアパネル1の内面(凹部2が形成されることにより内面側に突出した部分)に沿って矢印X1,X2方向に延びている。
【0024】
図3A及び
図3Bに示すように、ベース5の一端(矢印X1方向)側には軸受部9が設けられている。軸受部9は、矢印Y1,Y2方向に開口する筒状に形成されている。軸受部9の矢印X1方向側が幅狭部10であり、矢印X2方向側が幅広部11である。
【0025】
幅狭部10には、矢印Z1,Z2方向に対向する対向面10aに、互いに接近する方向へと突出する断面円形の軸部12がそれぞれ形成されている。これら軸部12は、後述するハンドルレバー6の軸着部27を回転可能に支持する。
【0026】
幅広部11には、矢印Z1,Z2方向に対向する対向面に矢印X1,X2方向に延び、互いに接近する方向へと突出する突条13がそれぞれ形成されている。各突条13は、軸部12に回転可能に支持されるハンドルレバー6のアーム部23の矢印Y1方向への移動を規制する。
【0027】
軸受部9には、矢印Y1,Y2方向に沿って、
図3Aに示すように、矢印Y1方向側から第1凹部14、
図3Bに示すように、矢印Y2方向側から第2凹部15がそれぞれ形成されている。第1凹部14は、平面視台形状であり、そこには後述する雌ねじ部材46が配置される。第2凹部15は、側面の中央部分が軸受部9の幅広部11に連通し、底面から係合片16が矢印Y2方向に突出している。第1凹部14と第2凹部15とは、第1凹部14と第2凹部15の間の隔壁17に設けた連通孔17aによって連通している。
【0028】
ベース5の他端(矢印X2方向)側には矢印Y1,Y2方向に貫通するガイド孔18が形成されている(
図2参照)。
【0029】
(ハンドルレバー6)
図4に示すように、ハンドルレバー6はレバー本体19とハンドルカバー20とを備える。
【0030】
レバー本体19は、矢印X1,X2方向に延び、表面(矢印Y1方向)側には凹所21が形成されている。凹所21にはアンテナ部材22が収容され、そのコードはドアパネル1の内側へと引き出されている。レバー本体19の一端部(矢印X1方向側の端部)にはアーム部23が形成されている。
【0031】
図5も併せて参照すると、アーム部23は、レバー本体19から斜めに突出する傾斜部25と、傾斜部25に連続する屈曲部26と、屈曲部26から矢印X1方向に延びる軸着部27とを備える。また、アーム部23は、傾斜部25及び屈曲部26の一部と軸着部27とが矢印Z1,Z2方向に分離した一対のアーム片24で構成されている。
【0032】
軸着部27は、各アーム片24の外面に先端から基端に向かって延びる溝部28を有する。溝部28は基端側が平面視半円状に形成されている。溝部28には、先端(矢印X1方向)側からベース5の軸部12がそれぞれ挿入されて基端で位置決めされる。アーム片24の間にはスペーサ29が配置されている。スペーサ29は、アーム片24が内側に変形して溝部28から軸部12が脱落することを防止する。
【0033】
傾斜部25から屈曲部26の範囲で、各アーム片24には側方(矢印Z1,Z2方向)に広がった延在部30(一方は図示せず)が形成されている。また、屈曲部26と軸着部27との境界部分には、各アーム片24に下面(矢印Y2方向)側に突出する係合爪31がそれぞれ形成されている。
【0034】
屈曲部26には被規制部32が形成されている。被規制部32は、屈曲部26を構成する湾曲面26aの幅(矢印Z1,Z2)方向の中央部から矢印X2及びY2方向に突出している。被規制部32は、矢印X2方向側に形成される被規制面32aと、矢印Y2方向側に形成される底面32bとを備える。被規制面32aと底面32bとは互いに直交している。被規制面32aには、後述するように、ハンドルレバー6の取付位置で規制部材7の規制面44が当接可能となっている。
【0035】
レバー本体19の他端部(矢印X2側の端部)には、ベース5のガイド孔18に装着される操作部34が形成されている。
【0036】
(ハンドルカバー20)
図4に示すように、ハンドルカバー20は、レバー本体19の表面側全体を覆う。ハンドルカバー20の先端側には補助カバー35が取り付けられている。補助カバー35は、被覆部36と、そこから斜めに延びるフレーム状の取付部37とを備える。取付部37は、アーム部23の傾斜部25及び屈曲部26に配置される。取付部37に係合爪31が係合することにより、補助カバー35はレバー本体19に取り付けられる。この取付状態で、被覆部36がレバー本体19の先端下面の開口部分を覆う。
【0037】
(規制部材7)
図6に示すように、規制部材7は、規制部本体38と、そこから突出する規制片39とで構成されている。規制部本体38は、中央に貫通孔40が形成された平面部41と、その両側部から直角に突出して所定間隔で対向する側面部42とからなる。規制片39は、先端に向かうに従って徐々に幅狭となり、平面部41に比べて上面側に厚みが増している。先端の規制部43には、前面(矢印X1方向)側に向かって徐々に上方(矢印Y1方向)側へと突出するように傾斜した規制面44が形成されている。規制面44は、ハンドルレバー6が
図9に示す被操作位置に位置するときと、
図10に示す操作位置に位置するときのいずれであっても被規制面32aに対向する。規制部材7は、ベース5の第2凹部15及び軸受部9に配置される。詳しくは、規制部本体38がベース5の第2凹部15に配置され、規制片39が軸受部9の幅広部11へと突出する。
【0038】
(取付部材8)
図6に示すように、取付部材8は雄ねじ部材45及び雌ねじ部材46を備える。
【0039】
雄ねじ部材45は、頭部47とねじ部48とを備える。雄ねじ部材45には、例えばワッシャ付きネジ(ワッシャ部分は頭部47の一部である。)を使用できる。ねじ部48の周囲には、付勢部材としてコイルスプリング49が配置される。
【0040】
雌ねじ部材46は、ナット部50とブッシュ部51とで構成されている。ナット部50は、当接部として機能する鍔部52と筒部53とからなる。鍔部52には、一部が切除されることにより弦部52aが形成されている。筒部53は断面六角形である。ナット部50の中心には、雄ねじ部材45のねじ部48が螺合するねじ孔54が形成されている。ブッシュ部51も、ナット部50と同様、鍔部55と筒部56とからなる。鍔部55の外形形状はナット部50と平面視同一外形形状である。筒部56は、断面長方形の一方の長辺両端部を面取りしてなる断面六角形である。筒部56は、ベース5の第1凹部14に配置される。ブッシュ部51の中心には取付孔51aが形成されている。取付孔51aにはナット部50の筒部53が隙間なく配置され、ナット部50とブッシュ部51とが一体化されて雌ねじ部材46となる。
【0041】
(組付方法)
前記構成からなるドアハンドル装置4は、次のようにしてドアパネル1に組み付ける。
【0042】
予めハンドルレバー6を組み立てておく。すなわち、
図2に示すように、レバー本体19内にアンテナ部材22を装着し、レバー本体19にハンドルカバー20を取り付ける。また、アーム片24の間にスペーサ29を配置する。さらに、アーム部23に補助カバー35を取り付けて、レバー本体19の先端側開口部分を覆う。
図5に示すように、アーム部23に補助カバー35を取り付けた状態では、補助カバー35からアーム部23に形成した被規制部32が突出する。
【0043】
次に、ベース5に規制部材7及び取付部材8を取り付ける。詳しくはまず、ベース5の第2凹部15に規制部材7を配置する。このとき、規制部材7の貫通孔40に雄ねじ部材45の軸部12を挿通し、その外周にコイルスプリング49を配置する。そして、連通孔17aに雄ねじ部材45のねじ部48を挿通し、頭部47が係合片16の先端爪部を乗り越えた係合状態となるまで押し込む。係合片16より、雄ねじ部材45の矢印Y2方向への移動が規制され、コイルスプリング49及び規制部材7が第2凹部15内に仮保持される。この状態では、規制部材7はコイルスプリング49の付勢力により、係合片16に移動規制された雄ねじ部材45の頭部に当接する仮止め位置に保持される。
【0044】
一方、雌ねじ部材46のブッシュ部51の筒部56をベース5の第1凹部14に配置する。そして、雄ねじ部材45のねじ部48の先端部分を雌ねじ部材46のねじ孔54に螺合する。これにより、雌ねじ部材46は雄ねじ部材45によって保持され、雌ねじ部材46のブッシュ部51の鍔部55とベース5の第1凹部14の開口縁部との間には、ドアパネル1の厚みよりも広い隙間が形成される。
【0045】
続いて、ドアパネル1の内面にベース5を仮固定する。すなわち、ベース5に取り付けた取付部材8の雌ねじ部材46を貫通孔3aの第1開口部3a1から外面(矢印Y1方向)側へと突出させ、ベース5を第2開口部3a2側(矢印X2方向)に移動させる。これにより、雌ねじ部材46のブッシュ部51の鍔部55が貫通孔3aの第2開口部3a2を構成する縁部に当接する。また、ベース5の矢印X2方向側に設けた係止爪(図示せず)が操作孔3bの矢印X2側の縁部に係止する。
【0046】
ベース5の仮固定状態では、
図7に示すように、コイルスプリング49が規制部材7の平面部41と隔壁17との間で圧縮状態となり、規制部材7はドアパネル1から離れた矢印Y2方向側の仮止め位置に位置決めされる。この状態で、ハンドルレバー6のアーム部23をドアパネル1の外側から貫通孔3aを介してドアパネル1の内側へと導き、軸着部27を軸受部9へと挿入する。また、ハンドルレバー6の操作部34をドアパネル1の外側から操作孔3bを介してドアパネル1の内側へと導き、ベース5のガイド孔18へと挿入する。そして、軸着部27の溝部28にベース5の軸部12を侵入させる。この場合、規制部材7はコイルスプリング49の付勢力によって仮止め位置に位置決めされているので、アーム部23を規制部材7の規制片39とは干渉することなくスムーズに挿入することができる。
【0047】
図8に示すように、溝部28の基端側に軸部12が回転可能に位置決めされ、ドアパネル1へのハンドルレバー6の取り付けが完了すれば、雌ねじ部材46に対して雄ねじ部材45を締め付ける。
【0048】
図9に示すように、規制部材7は仮止め位置から矢印Y1方向の取付位置へと移動する。取付位置では、規制部材7の規制片39がハンドルレバー6のアーム部23へと接近し、屈曲部26に形成した被規制部32に至る。そして、規制片39の規制面44が被規制部32の被規制面32aの矢印X2方向側近傍、すなわちハンドルレバー6の抜け方向側近傍に位置する。
【0049】
ここで、雄ねじ部材45を締め付けると、ドアパネル1の第2開口部3a2の縁部が、鍔部52とベース5の第1凹部14の縁部との間に挟持され、ベース5がドアパネルに固定される。
【0050】
以上のようにしてドアパネル1に組み付けられたドアハンドル装置4では、
図9に示す非操作位置のハンドルレバー6を軸着部27の抜け(矢印X2)方向に引っ張ったとしても、規制部材7の規制面44によってハンドルレバー6の被規制面32aの移動が阻止される。このため、ハンドルレバー6の軸着部27とベース5の軸部12の間の軸着状態が解除されることはない。
【0051】
また、
図9に示す非操作位置のハンドルレバー6を矢印Y1方向に引っ張れば、ハンドルレバー6は軸部12を中心として、
図9に示す非操作位置から
図10に示す操作位置へと回動する。このとき、アーム部23が軸部12を中心としてその位置を変位させる。ハンドルレバー6を最も引っ張り出した操作位置においても、規制部材7の規制片39がアーム部23の被規制部32の矢印X2方向近傍に位置する。ハンドルレバー6をそれ以上回動させようと引っ張っても、被規制部32の被規制面32aに規制片39の規制面44が当接する。したがって、軸着部27と軸部12の軸着状態が解除されることはなく、ドアパネル1からのハンドルレバー6の脱落が防止される。
【0052】
前記構成のドアハンドル装置4によれば、次のような効果が得られる。
(1)ハンドルレバー6にドアパネル1からの抜け止め構造を設ける必要がない。すなわち、ハンドルレバー6を分割して、その一方側を他方側の抜止め部材とする必要がない。このため、ハンドルレバー6を外観に優れたものとすることができる。
(2)取付部材8を雄ねじ部材45と雌ねじ部材46で構成し、規制部材7の位置決めのみならず、ドアパネル1へのベース5の固定をも行って、部品点数を抑えることができる。
(3)規制部材7を仮止めしておくことができる。すなわち、コイルスプリング49の付勢力が作用した状態で、ベース5に対して規制部材7を仮止め位置に位置決めしておくことができる。したがって、ハンドルレバー6のアーム部23を挿入する際に邪魔にならず、後に雄ねじ部材45を締め付けるだけで簡単にハンドルレバー6の抜け止めを図ることが可能となる。
【0053】
(他の実施形態)
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0054】
前記実施形態では、ベース5に対して矢印Y1方向側から挿入した雌ねじ部材46に対して、ベース5に対して矢印Y2方向側から雄ねじ部材45を螺合するようにしたが、これらは逆の位置に設けるようにしてもよい。すなわち、ベース5に対して矢印Y2方向側からベース5に雌ねじ部材46を配置し、ベース5に対して矢印Y1方向側から雄ねじ部材45を挿入し、雌ねじ部材46に螺合するようにしてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、コイルスプリング49の付勢力によって規制部材7を仮止め位置に保持するようにしたが、係合片16のような弾性を有する爪を設け、その爪を仮止め位置の規制部材7に係合して保持するようにしてもよい。この場合、雄ねじ部材45を螺合して規制部材7を取付位置側に移動させると、爪が弾性変形して係合状態を解除するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ドアパネル
2 凹部
3a 貫通孔
3b 操作孔
4 ドアハンドル装置
5 ベース
6 ハンドルレバー
7 規制部材
8 取付部材
9 軸受部
10 幅狭部
11 幅広部
12 軸部
13 突条
14 第1凹部
15 第2凹部
16 係合片
17 隔壁
17a 連通孔
18 ガイド孔
19 レバー本体
20 ハンドルカバー
21 凹所
22 アンテナ部材
23 アーム部
24 アーム片
25 傾斜部
26 屈曲部
27 軸着部
28 溝部
29 スペーサ
30 延在部
31 係合爪
32 被規制部
32a 被規制面
34 操作部
35 補助カバー
36 被覆部
37 取付部
38 規制部本体
39 規制片
40 貫通孔
41 平面部
42 側面部
43 規制部
44 規制面
45 雄ねじ部材
46 雌ねじ部材
47 頭部
48 ねじ部
49 コイルスプリング
50 ナット部
51 ブッシュ部
52 鍔部
53 筒部
54 ねじ孔
55 鍔部
56 筒部