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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電動式建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20241114BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241114BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241114BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20241114BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20241114BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241114BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/20 C
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/10
B60L3/00 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020175903
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067276
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木原 聖一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 肇
(72)【発明者】
【氏名】古川 祐太
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-288894(JP,A)
【文献】特開2007-325431(JP,A)
【文献】特開2009-084838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0301284(US,A1)
【文献】特開2005-068830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/20
E02F 9/26
B60R 13/00
B60Q 1/00- 1/56
B60L 1/00- 3/12
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体を備え、前記車体には、動力源となる電動モータと、前記電動モータに供給する電力を貯えるバッテリと、前記電動モータまたは前記バッテリに給電するための給電ケーブルが接続される給電口とが設けられた電動式建設機械において、
前記車体の前側には、運転席を覆う建屋が設けられ、
前記建屋には、停車状態で前記給電口に接続された前記給電ケーブルを介して外部電源からの電力を前記バッテリに充電する充電モードと、前記バッテリに貯えられた電力によって前記電動モータを駆動するバッテリ動作モードと、前記給電口に接続された前記給電ケーブルを介して外部電源からの電力によって前記電動モータを駆動する給電動作モードとのいずれの動作モードであるかを表示する表示灯が設けられ
前記表示灯は、前記建屋の前側に配置されると共に、前記建屋の上面よりも上側に突出した使用位置と前記建屋の上面よりも下がった格納位置とに移動可能に設けられ、
前記建屋は、前窓と右窓との間の角部に上下方向に延びて設けられた右前ピラーを有するキャブからなり、
前記表示灯は、前記右前ピラーに取付けられていることを特徴とする電動式建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電動式建設機械において、
前記給電口は、前記車体の後側に配置されていることを特徴とする電動式建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の電動式建設機械において、
前記車体の後側には、前記車体の前側に設けられた作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトが設けられ、
前記給電口は、前記カウンタウエイトに配置され、
前記表示灯は、前記給電口と対角となる位置に配置されていることを特徴とする電動式建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の電動式建設機械において、
前記カウンタウエイトは、前記車体の後側で左右方向に延びて設けられ、
前記給電口は、前記カウンタウエイトの左側に配置されていることを特徴とする電動式建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の電動式建設機械において、
前記建屋の内部には、前記充電モード、前記バッテリ動作モードおよび前記給電動作モードのいずれかのモードを前記表示灯と同時に表示するモニタが設けられていることを特徴とする電動式建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動力源としての電動モータとバッテリを備えた電動式建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式建設機械の代表例としては、電動式油圧ショベルが知られている。この電動式油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられ、下部走行体と共に車体を形成する上部旋回体と、上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置とを有している。
【0003】
上部旋回体は、旋回フレームと、旋回フレームの前側に設けられ、運転席を覆うキャブと、旋回フレームの後側に設けられ、作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、旋回フレームに設けられた電動モータと、電動モータに供給する電力を貯えるバッテリと、バッテリに給電するための給電ケーブルが接続される給電口と、を含んで構成されている(特許文献1)。
【0004】
また、電動式油圧ショベルには、電動モータに給電するためのケーブルが接続される給電口が設けられたものがある(特許文献2)。この電動式油圧ショベルは、給電ケーブルから供給される外部電源からの電力によって電動モータを駆動する。さらに、電動式油圧ショベルには、給電口から電動モータに給電およびバッテリに充電する機能を有し、バッテリを使い切っても給電ケーブルからの外部電源によって作業を継続できるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5737598号公報
【文献】特開2020-147969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各特許文献の電動式油圧ショベルは、バッテリを充電するために停車状態で給電口に給電ケーブルを接続した充電モードと、給電口に給電ケーブルを接続せずにバッテリの電力のみで動作するバッテリ動作モードと、給電口に給電ケーブルを接続した状態でバッテリの電力または外部電源(商用電源)で動作する給電動作モードとを含む各種の動作モードを有している。
【0007】
給電ケーブルを接続する給電口は、作業装置との干渉を避けるために、上部旋回体の後側に設けられている。従って、電動式油圧ショベルの前側からは給電口に給電ケーブルが接続されているか否かの確認が難しい。また、給電口に給電ケーブルが接続されていることを確認できても、充電モードで停車状態にあるのか、給電ケーブルが接続されたまま動き出すのかを判断することができない場合がある。
【0008】
ここで、電動式油圧ショベルの周囲で作業を行う場合、電動式油圧ショベルが動き出すのか、給電ケーブルを接続した状態で動作するのかにより、電動式油圧ショベルとの距離や作業内容が異なる。このために、電動式油圧ショベルの周囲で作業を行う作業者は、作業を行う前に、給電口に給電ケーブルが接続されているか、キャブにオペレータが搭乗しているか等を確認したり、オペレータや監督者に作業予定を確認したりしなくてはならない上に、作業中にも電動式油圧ショベルの状態を確認しなくてはならず、作業性が悪いという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、動作モードを容易に確認することができ、周囲で作業する作業者の作業性を向上できるようにした電動式建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、自走可能な車体を備え、前記車体には、動力源となる電動モータと、前記電動モータに供給する電力を貯えるバッテリと、前記電動モータまたは前記バッテリに給電するための給電ケーブルが接続される給電口とが設けられた電動式建設機械において、前記車体の前側には、運転席を覆う建屋が設けられ、前記建屋には、停車状態で前記給電口に接続された前記給電ケーブルを介して外部電源からの電力を前記バッテリに充電する充電モードと、前記バッテリに貯えられた電力によって前記電動モータを駆動するバッテリ動作モードと、前記給電口に接続された前記給電ケーブルを介して外部電源からの電力によって前記電動モータを駆動する給電動作モードとのいずれの動作モードであるかを表示する表示灯が設けられ、前記表示灯は、前記建屋の前側に配置されると共に、前記建屋の上面よりも上側に突出した使用位置と前記建屋の上面よりも下がった格納位置とに移動可能に設けられ、前記建屋は、前窓と右窓との間の角部に上下方向に延びて設けられた右前ピラーを有するキャブからなり、前記表示灯は、前記右前ピラーに取付けられている。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、動作モードを容易に確認することができ、周囲で作業する作業者の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る電動式油圧ショベルを示す右側面図である。
図2】キャブの上部を前側から拡大して示す正面図である。
図3】上部旋回体の後側を拡大して示す斜視図である。
図4】給電口に給電ケーブルを接続した状態を図3と同様位置から示す斜視図である。
図5】キャブの上部と使用位置に配置された表示灯を示す右側面図である。
図6】キャブの上部と格納位置に配置された表示灯を図5と同様位置から示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電動式建設機械の実施形態を、電動式油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図6を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1において、電動式油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。電動式油圧ショベル1の車体は、下部走行体2と上部旋回体3とにより構成されている。上部旋回体3の前側には、スイング式の作業装置4が設けられ、この作業装置4を用いて土砂の掘削作業等が行われる。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5を備えている。旋回フレーム5には、キャブ6、カウンタウエイト7、電動モータ9、バッテリ10等が搭載されている。
【0015】
キャブ6は、旋回フレーム5の左前側に配置されている。キャブ6は、オペレータが着座する運転席(図示せず)の全周を覆うボックス形状の建屋を構成している。図1ないし図3に示すように、キャブ6は、前面の前窓6A、後面の後窓6B、左側面の左窓(図示せず)および右側面の右窓6Cを有している。また、キャブ6は、前窓6Aと左窓との間の角部に上下方向に延びた左前ピラー6Dと、前窓6Aと右窓6Cとの間の角部に上下方向に延びた右前ピラー6Eとを有している。さらに、キャブ6には、運転席の上方を覆う上面としての上面部6Fが設けられている。
【0016】
キャブ6内には、前述した運転席の他に、作業用の操作レバー、走行用の操作レバー、後述のモニタ20等が設けられている。また、キャブ6の右前ピラー6Eには、上側に位置して後述の表示灯15が取付けられている。
【0017】
カウンタウエイト7は、上部旋回体3の後側に設けられている。カウンタウエイト7は、キャブ6よりも後側に位置して旋回フレーム5の後部に取付けられている。カウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランス、即ち、上部旋回体3の重量バランスをとっている。カウンタウエイト7は、上部旋回体3の幅方向となる左右方向に延びると共に、左右方向の中央部が後方に突出して湾曲している。これにより、カウンタウエイト7の後面7Aは、左右方向の中央部が後方に突出した円弧面をなしている。円弧状のカウンタウエイト7の後面7Aは、上部旋回体3が旋回したときに一定の旋回半径内に収まる構成となっている。
【0018】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム5の後部から立ち上がり、後述のバッテリ10等を後方から覆っている。また、カウンタウエイト7の上面7Bには、左側に位置して後述の給電口13が設けられている。一方、上面7Bの右側には、後述のケーブル支持装置14が設けられている。さらに、カウンタウエイト7の中央部には、点検用の開口を覆うように点検カバー8が開閉可能に設けられている。
【0019】
動力源となる電動モータ9は、旋回フレーム5に搭載されている。電動モータ9は、外部電源またはバッテリ10から供給される電力によって作動し、油圧ポンプ(図示せず)を駆動する。油圧ポンプは、作業装置4の各アクチュエータ、下部走行体2の走行モータ等に圧油を供給する。
【0020】
バッテリ10は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5の後部側に搭載されている。バッテリ10は、電動モータ9に供給する電力を貯えるために、例えば、互いに電気的に接続された複数のバッテリモジュール(図示せず)、複数のバッテリモジュールを収容する筐体を含んで構成されている。
【0021】
外装カバー11は、上部旋回体3の右側を覆うように旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー11は、電動モータ9、油圧ポンプ、バッテリ10等を、カウンタウエイト7と協働して覆っている。
【0022】
ケーシング12は、カウンタウエイト7の左側に位置して上面7Bから上方に突出したボックス構造体として形成されている。ケーシング12内には、電動モータ9またはバッテリ10と電気的に接続された内部ケーブル(図示せず)が延びている。
【0023】
給電口13は、上部旋回体3の後側となるカウンタウエイト7の上部にケーシング12を介して設けられている。この上で、給電口13は、キャブ6の後側となるカウンタウエイト7の左側に配置されている。給電口13は、ケーシング12内で内部ケーブルに接続され、外部は、ケーシング12の上部から右斜め下側に向けて延びたカプラを形成している。図4に示すように、給電口13には、後述する給電ケーブル21のカプラ21Aが着脱可能に取付けられる。これにより、外部電源からの電力は、給電ケーブル21、給電口13、内部ケーブル等を介して電動モータ9およびバッテリ10に供給される。
【0024】
ケーブル支持装置14は、カウンタウエイト7の上面7Bの右側に設けられている。ケーブル支持装置14は、給電口13に接続された給電ケーブル21の途中部位を支持する。ケーブル支持装置14は、カウンタウエイト7の上面7Bから上方に延びるスタンド14Aと、スタンド14Aの上部にスイング可能に設けられたアーム14Bと、アーム14Bの先端に設けられ、給電ケーブル21の途中部分を把持するケーブルクランプ14Cとを含んで構成されている。ケーブル支持装置14は、給電口13に接続された給電ケーブル21が急激に屈曲するのを防止する。
【0025】
次に、本実施形態の特徴部分である表示灯15の構成および作用効果について詳細に説明する。
【0026】
表示灯15は、上部旋回体3の上部、具体的には、キャブ6の上部の右前側に設けられている。より詳しくは、表示灯15は、キャブ6の右前ピラー6Eの上部位置に取付けられている。この表示灯15の位置は、キャブ6の左前角と右前角のうち、カウンタウエイト7の左側に配置された給電口13に対して対角となる右前角となっている。
【0027】
また、表示灯15は、電動式油圧ショベル1の停車状態で給電口13に接続された給電ケーブル21を介して外部電源からの電力をバッテリ10に充電する充電モードと、バッテリ10に貯えられた電力によって電動モータ9を駆動するバッテリ動作モードと、給電口13に接続された給電ケーブル21を介して外部電源からの電力によって電動モータ9を駆動する給電動作モードとのいずれの動作モードにあるかを表示することができる。表示灯15は、後述の固定座16、表示灯取付板17、表示灯本体19を含んで構成されている。
【0028】
図2に示すように、固定座16は、キャブ6を構成する右前ピラー6Eの上部の右面に取付けられている。固定座16には、上下方向に間隔をもって2個のねじ孔(図示せず)が設けられている。
【0029】
表示灯取付板17は、固定座16にボルト18を用いて着脱可能(位置調整可能)に取付けられている。図5図6に示すように、表示灯取付板17は、右前ピラー6Eに沿って上下方向に延びた長板状の長板部17Aと、長板部17Aの上下方向の中間部から右窓6C側(後側)に延びた延長部17Bとを有している。
【0030】
長板部17Aには、上下方向(長さ方向)に離れた位置、具体的には、上下方向の中間位置に2個の使用位置ボルト孔17C(図6参照)が設けられ、上側位置に2個の格納位置ボルト孔17D(図5参照)が設けられている。2個の使用位置ボルト孔17Cの間隔、2個の格納位置ボルト孔17Dの間隔は、それぞれ固定座16の2個のねじ孔の間隔に対応している。
【0031】
また、延長部17Bには、表示灯本体19のロッド部19Aを表示灯取付板17に固定する固定具17Eが上下方向に間隔をもって2個設けられている。各固定具17Eは、ロッド部19Aを挟んでボルトで締付ける構成となっている。なお、固定具17Eは、延長部17Bに表示灯本体19を取付ける手段の一例として示したもので、固定具17Eを廃止し、ボルトを用いて表示灯本体を延長部に直接的に取付ける構成としてもよい。
【0032】
ここで、表示灯取付板17は、使用位置ボルト孔17Cに挿通したボルト18を固定座16のねじ孔に螺着することにより、表示灯本体19をキャブ6の上面部6Fよりも上側に突出した使用位置(図5の位置)に配置することができる。一方、表示灯取付板17は、格納位置ボルト孔17Dに挿通したボルト18を固定座16のねじ孔に螺着することにより、キャブ6に対する取付位置を下げて表示灯本体19をキャブ6の上面部6Fよりも下がった格納位置(図6の位置)に配置することができる。この場合、格納位置では、表示灯本体19の上端をキャブ6の上面部6Fよりも低くせずに、例えば表示灯本体19の上下方向の半分以上をキャブ6の上面部6Fよりも下げるだけでもよい。
【0033】
表示灯本体19は、円筒状のロッド部19Aと、ロッド部19Aの先端部(上部)に設けられた発光部19Bとを含んで構成されている。発光部19Bは、円柱状の外観を有し、上側から順に第1ランプ19B1、第2ランプ19B2、第3ランプ19B3を備えている。この3種類のランプ19B1~19B3は、ハーネス19Cを介してコントローラ(図示せず)に接続されている。
【0034】
表示灯本体19は、ロッド部19Aが表示灯取付板17の各固定具17Eに挟まれてボルトで締付けられることにより、表示灯取付板17に対して固定される構成となっている。従って、表示灯本体19は、各固定具17Eのボルトを緩めることによって表示灯取付板17に対して上下方向に位置調整することができる。即ち、表示灯の取付位置とキャブの上面部との間隔が異なる他の機種に取付ける場合でも、表示灯本体を正しい使用位置に配置することができる。
【0035】
第1ランプ19B1、第2ランプ19B2、第3ランプ19B3は、全方向(全周)に光を放つことができる。この場合の各ランプ19B1,19B2,19B3の点灯条件、点灯時の光色について、その一例を説明する。
【0036】
第1ランプ19B1は、電動式油圧ショベル1の停車状態で給電口13に給電ケーブル21が接続されている充電モードのときに橙色で点灯する。第1ランプ19B1は、例えばキャブ6内に設けられた充電スイッチ(図示せず)がONに切換えられたことを検知したコントローラによって点灯される。
【0037】
第2ランプ19B2は、バッテリ10によって動作するバッテリ動作モードのときに青色で点灯する。第2ランプ19B2は、例えば給電口13に給電ケーブル21が接続されていないことをコントローラが検知し、電動式油圧ショベル1のキャブ6内に設けられた起動スイッチ(図示せず)がON(ACC)に切換えられたことを検知したコントローラによって点灯される。
【0038】
第3ランプ19B3は、給電口13に給電ケーブル21が接続されている状態で動作する給電動作モードのときに緑色で点灯する。第3ランプ19B3は、例えば給電口13に給電ケーブル21が接続されていることをコントローラが検知し、電動式油圧ショベル1のキャブ6内に設けられた起動スイッチがON(ACC)に切換えられたことを検知したコントローラによって点灯される。なお、各ランプ19B1,19B2,19B3の配置、点灯時の光色、点灯条件等は、上述したものに限るものではない。
【0039】
このように構成された表示灯15は、図1図2図5に示すように、表示灯取付板17による使用位置では、キャブ6の上面部6Fよりも上側に突出している。この状態で表示灯15は、表示灯本体19に設けられた発光部19Bの第1ランプ19B1を橙色に点灯することで、電動式油圧ショベル1が充電モードにあることを周囲の作業者に報知することができる。また、表示灯15は、第2ランプ19B2を青色に点灯することで、電動式油圧ショベル1がバッテリ動作モードにあることを報知することができる。さらに、表示灯15は、第3ランプ19B3を緑色に点灯することで、電動式油圧ショベル1が給電動作モードにあることを報知することができる。
【0040】
この上で、表示灯15は、給電口13と対角位置となるキャブ6の右前側に配置されているから、給電口13が上部旋回体3の前側ないし右斜め前側から見え難い左側に配置されている場合でも、周囲の作業者に動作モードを知らせることができる。
【0041】
一方、表示灯15は、図6に示すように、表示灯取付板17による格納位置では、キャブ6の上面部6Fよりも下がった位置に配置されている。これにより、表示灯15は、電動式油圧ショベル1をトラックに載せて搬送する場合に、高さ制限の範囲内に配置することができる。
【0042】
これにより、表示灯15は、電動式油圧ショベル1の周辺の全方向や離れた位置からでも、各ランプ19B1,19B2,19B3の点灯状態を周囲の作業者に目視させることができる。即ち、作業者は、表示灯15の各ランプ19B1,19B2,19B3を見るだけで、電動式油圧ショベル1の動作モード(稼働状態)を認識でき、この動作モードに適した作業を素早く選択することができる。
【0043】
図1中に点線で示すように、モニタ20は、キャブ6の内部に設けられている。モニタ20は、充電モード、バッテリ動作モードおよび給電動作モードを表示してキャブ6内のオペレータに報知する。この場合、モニタ20によるモード表示は、表示灯15の点灯と同時に表示される。
【0044】
図4に示すように、給電ケーブル21は、外部電源からの電力を電動モータ9またはバッテリ10に供給するときに用いられる。給電ケーブル21は、ケーブル支持装置14のケーブルクランプ14Cに途中部位が支持された状態で、先端のカプラ21Aを給電口13に接続することにより、電動モータ9またはバッテリ10に給電することができる。
【0045】
本実施形態による電動式油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、以下、電動式油圧ショベル1の動作について説明する。
【0046】
外部電源を確保できる作業現場では、外部電源から延びる給電ケーブル21を、電動式油圧ショベル1のカウンタウエイト7の上部左側に配置された給電口13に接続する。これにより、外部電源からの電力が給電ケーブル21、給電口13等を介して電動モータ9に供給され、電動モータ9は、外部電源からの電力によって油圧ポンプを駆動する。また、給電ケーブル21を給電口13に接続した状態で、バッテリ10に貯えた電力を用いて油圧ポンプを駆動することもできる。この作業状態が給電動作モードとなる。
【0047】
一方、外部電源を確保できない作業現場では、給電口13から給電ケーブル21が取外された状態で、バッテリ10に貯えられた電力によって電動モータ9が油圧ポンプを駆動する。この作業状態がバッテリ動作モードとなる。
【0048】
そして、電動モータ9によって駆動された油圧ポンプは、作業装置4の各アクチュエータ、下部走行体2の走行モータ等に圧油を供給する。この状態で、オペレータが走行用の操作レバーを操作することにより、電動式油圧ショベル1を作業位置まで走行させることができる。また、作業位置では、オペレータが作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置4によって土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0049】
次に、外部電源からの電力を、バッテリ10に供給(充電)する充電作業について説明する。
【0050】
バッテリ10の充電作業では、給電ケーブル21を電動式油圧ショベル1の給電口13に接続し、充電スイッチをONに切換える。これにより、外部電源からの電力は、給電ケーブル21、給電口13、内部ケーブル等を介してバッテリ10に供給(充電)することができる。この作業状態が充電モードとなる。
【0051】
ここで、電動式油圧ショベル1の動作モードには、充電モード、バッテリ動作モード、給電動作モードがある。例えば、充電モードでは、電動式油圧ショベル1が動き出すことがないから、電動式油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業者は、電動式油圧ショベル1を気にすることなく、電動式油圧ショベル1の近くで作業を行うことができる。また、バッテリ動作モードでは、電動式油圧ショベル1が動き出すために、周囲の作業者は、電動式油圧ショベル1の動作を見ながら作業を行う。さらに、給電動作モードでは、電動式油圧ショベル1が動き出し、電動式油圧ショベル1に接続された給電ケーブル21も電動式油圧ショベル1の後側で動くために、周囲の作業者は、電動式油圧ショベル1と給電ケーブル21の動作を見ながら作業を行う。
【0052】
従って、電動式油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業者は、給電口13に給電ケーブル21が接続されているか、キャブ6にオペレータが搭乗しているか等を確認したり、オペレータや監督者に作業予定を確認したりする必要がある。また、給電口13に給電ケーブル21が接続されているか否かを確認する場合、電動式油圧ショベル1の前側ないし右斜め前側からはキャブ6が邪魔になって給電口13や給電ケーブル21を目視できない場合がある。
【0053】
然るに、本実施形態によれば、車体の前側には、運転席を覆うキャブ6が設けられ、キャブ6の右前側、具体的には、キャブ6の右前ピラー6Eの上部位置には、停車状態で給電口13に接続された給電ケーブル21を介して外部電源からの電力をバッテリ10に充電する充電モードと、バッテリ10に貯えられた電力によって電動モータ9を駆動するバッテリ動作モードと、給電口13に接続された給電ケーブル21を介して外部電源からの電力によって電動モータ9を駆動する給電動作モードとのいずれの動作モードであるかを表示する表示灯15が設けられている。
【0054】
従って、電動式油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業者は、表示灯15を見るだけで、電動式油圧ショベル1が充電モード、バッテリ動作モード、給電動作モードのいずれの動作モードであるかを容易かつ正確に知ることができる。この結果、電動式油圧ショベル1の周囲の作業者は、電動式油圧ショベル1の動作モードに適した作業を素早く選択することができ、作業性を向上することができる。
【0055】
また、給電口13は、車体の後側となるカウンタウエイト7に配置され、表示灯15は、建屋の前側となるキャブ6の前側に配置されている。詳しくは、給電口13は、カウンタウエイト7の左側に配置され、表示灯15は、給電口13と対角となるキャブ6の右前ピラー6Eの上部に配置されている。これにより、キャブ6に隠れて前側から給電口13や給電ケーブル21が見え難い場合、特に、キャブ6を挟んで給電口13が最も見え難い対角位置となる右斜め前側で作業する作業者に対し、表示灯15は、電動式油圧ショベル1の稼働状態を報知することができる。
【0056】
一方、表示灯15は、キャブ6に対する表示灯取付板17の取付位置を上側または下側に移動させることにより、表示灯本体19をキャブ6の上面部6Fよりも上側に突出させた使用位置と、表示灯本体19がキャブ6の上面部6Fよりも下がった格納位置とに配置することができる。これにより、表示灯15の使用位置では、表示灯本体19を高くして視認性を高めることができる。一方、表示灯15を格納位置に配置した状態では、電動式油圧ショベル1をトラックに載せて搬送する場合の高さ制限の範囲内に表示灯15(表示灯本体19)を配置することができる。これにより、搬送時の高さ制限の限界まで高く設計された電動式油圧ショベル1に対しても、表示灯15を装備することができる。
【0057】
しかも、表示灯15は、キャブ6の右前ピラー6Eに設けているから、表示灯本体19を使用位置に移動するのを忘れた場合には、ランプ19B1~19B3が点灯したときに、その光が右窓6Cを通してオペレータに届くことで、表示灯15の上げ忘れを防止することができる。
【0058】
さらに、キャブ6の内部には、充電モード、バッテリ動作モードおよび給電動作モードを表示灯15と同時に表示するモニタ20が設けられている。従って、オペレータは、キャブ6内に居ながら表示灯15の点灯状態を確認することができる。
【0059】
なお、実施形態では、表示灯15の表示灯本体19に、橙色で点灯する第1ランプ19B1と青色で点灯する第2ランプ19B2と緑色で点灯する第3ランプ19B3との3個のランプを設けた場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、2個または4個以上のランプを設ける構成としてもよい。一方で、表示灯本体に1個のランプを設け、光色を動作モードに対応して切換える構成としてもよい。
【0060】
実施形態では、建屋として運転席の全周を覆うボックス形状のキャブ6を適用した場合を例示している。しかし、本発明はこの構成に限るものではなく、建屋として運転席の上側を覆うキャノピを適用することもできる。この場合には、キャノピを構成するルーフに表示灯を取付ける構成となる。
【0061】
実施形態では、下部走行体2と上部旋回体3とからなる車体を備えた電動式油圧ショベル1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電動式ホイールローダ等の上部旋回体を持たない電動式建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 電動式油圧ショベル(電動式建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
6 キャブ(建屋)
6A 前窓
6C 右窓
6E 右前ピラー
6F 上面部(上面)
7 カウンタウエイト
9 電動モータ
10 バッテリ
13 給電口
15 表示灯
20 モニタ
21 給電ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6