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  • 特許-チューブ容器、及び吐出容器 図1
  • 特許-チューブ容器、及び吐出容器 図2
  • 特許-チューブ容器、及び吐出容器 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】チューブ容器、及び吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/12 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B65D35/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020193181
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022081931
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】井上 治
(72)【発明者】
【氏名】関根 俊明
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-282691(JP,A)
【文献】特開2019-011101(JP,A)
【文献】特開2020-007018(JP,A)
【文献】実開平06-076080(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が封止され内側に内容物を収容する胴部と、該胴部の他端部に設けられる肩部と、該肩部に設けられ吐出キャップを装着可能な口部とを有するチューブ容器であって、
前記肩部は、前記口部の軸線を周回する向きに延在して、該口部に装着された前記吐出キャップの外周壁における先端部が、前記他端部から前記一端部に向かう向きで当接する環状壁を有し、
前記環状壁は、前記肩部から前記他端部側に突出し、前記環状壁における内周面は、前記軸線に近づくにつれて前記他端部から前記一端部に向かう向きに傾く傾斜面であり、
前記傾斜面の角度は、水平方向に対し0°より大きく15°以下であり、
前記外周壁の前記先端部は、前記環状壁の外周面に対し径方向内側に離間した位置で前記傾斜面に当接する、チューブ容器。
【請求項2】
一端部が封止され内側に内容物を収容する胴部と、該胴部の他端部に設けられる肩部と、該肩部に設けられる口部とを有するチューブ容器と、
内容物を吐出させる吐出口を備え前記口部に装着される吐出キャップと、
前記吐出口を覆って前記吐出キャップに装着され前記チューブ容器を倒立姿勢で維持する蓋体と、を備える吐出容器であって、
前記肩部は、前記口部の軸線を周回する向きに延在して、該口部に装着された前記吐出キャップの外周壁における先端部が、前記他端部から前記一端部に向かう向きで当接する環状壁を有し、
前記環状壁は、前記肩部から前記他端部側に突出し、前記環状壁における内周面は、前記軸線に近づくにつれて前記他端部から前記一端部に向かう向きに傾く傾斜面であり、
前記傾斜面の角度は、水平方向に対し0°より大きく15°以下であり、
前記外周壁の前記先端部は、前記環状壁の外周面に対し径方向内側に離間した位置で前記傾斜面に当接する、吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器、及びチューブ容器を備える吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば洗顔剤等の内容物が収容されるチューブ容器、及びこのようなチューブ容器に吐出キャップ等を装着した吐出容器が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の吐出容器は、チューブ容器の口部が下側に位置する倒立姿勢で保管できるように、蓋体の天面が平坦状に形成されている。すなわち内容物は、保管時においてチューブ容器の口部近くに溜まるため、使用時に胴部を押圧すると内容物をすぐに吐出させることができる。
【0003】
このような吐出容器は、多くの場合、浴室や洗面所など水を使用する場所で使用された後もそのまま浴室等で保管される。ここで、チューブ容器の外表面を伝って水滴が吐出キャップに向かって流れ、チューブ容器の肩部と吐出キャップの外周壁との隙間から水が浸入すると、吐出キャップの内側に溜まった水が原因となって、カビの発生や雑菌の繁殖を引き起こすおそれがある。このため特許文献1に示されているように従来の吐出容器は、チューブ容器の肩部から垂直方向に(口部の軸線に沿う方向に)円形状の壁部を起立させ、この壁部の内周面に円筒状となる吐出キャップの外周壁の外周面を当接させるようにしている。すなわち、チューブ容器と吐出キャップが周方向に当接することによって、チューブ容器の外表面を伝う水滴がこれらの間から吐出キャップの内側に浸入しにくくなるため、衛生的に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-7018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、成型条件等によっては、上述したチューブ容器の壁部や吐出キャップの外周壁の形状が径方向にばらついて意図した円形状にならないことがある。すなわち、チューブ容器の壁部と吐出キャップの外周壁との間に隙間が生じることがあり、この隙間に水が溜まってカビの発生や雑菌の繁殖につながるおそれがあった。一方、当初からチューブ容器の壁部を若干小さめに(或いは吐出キャップの外周壁を若干大きめに)形成しておけば、成型時のばらつきを吸収して隙間が生じないようにすることができるものの、チューブ容器に吐出キャップを装着するにあたっては、吐出キャップを強い力で回転させなければならないため、作業性の点で問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、成型条件等による形状のばらつきにかかわらず、吐出キャップを装着した状態での水の浸入を有効に防止することができ、また吐出キャップを装着する際の作業性も損なうことがないチューブ容器、及びこのようなチューブ容器を備える吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一端部が封止され内側に内容物を収容する胴部と、該胴部の他端部に設けられる肩部と、該肩部に設けられ吐出キャップを装着可能な口部とを有するチューブ容器であって、前記肩部は、前記口部の軸線を周回する向きに延在して、該口部に装着された前記吐出キャップの外周壁における先端部が、前記他端部から前記一端部に向かう向きで当接する環状壁を有し、前記環状壁は、前記肩部から前記他端部側に突出し、前記環状壁における内周面は、前記軸線に近づくにつれて前記他端部から前記一端部に向かう向きに傾く傾斜面であり、前記傾斜面の角度は、水平方向に対し0°より大きく15°以下であり、前記外周壁の前記先端部は、前記環状壁の外周面に対し径方向内側に離間した位置で前記傾斜面に当接する、チューブ容器である。
【0008】
また本発明は、一端部が封止され内側に内容物を収容する胴部と、該胴部の他端部に設けられる肩部と、該肩部に設けられる口部とを有するチューブ容器と、内容物を吐出させる吐出口を備え前記口部に装着される吐出キャップと、前記吐出口を覆って前記吐出キャップに装着され前記チューブ容器を倒立姿勢で維持する蓋体と、を備える吐出容器であって、前記肩部は、前記口部の軸線を周回する向きに延在して、該口部に装着された前記吐出キャップの外周壁における先端部が、前記他端部から前記一端部に向かう向きで当接する環状壁を有し、前記環状壁は、前記肩部から前記他端部側に突出し、前記環状壁における内周面は、前記軸線に近づくにつれて前記他端部から前記一端部に向かう向きに傾く傾斜面であり、前記傾斜面の角度は、水平方向に対し0°より大きく15°以下であり、前記外周壁の前記先端部は、前記環状壁の外周面に対し径方向内側に離間した位置で前記傾斜面に当接する、吐出容器でもある。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチューブ容器において、肩部に設けた環状壁の内周面は、口部の軸線に近づくにつれてチューブ容器の他端部から一端部に向かう向きに傾く傾斜面である。すなわち、チューブ容器を倒立姿勢にした状態において、この傾斜面は口部の軸線に近づくにつれて上方に傾いているため、水滴がチューブ容器の胴部を伝って流れてきても、この傾斜面を越えて流れることはできず、それ故、吐出キャップの内側への水の浸入を防止することができる。また、本発明による水の浸入防止機能は上記のように環状壁の内周面が傾斜面であることにより得られるため、従来のようにチューブ容器や吐出キャップの形状が径方向にばらついたとしても、浸入防止機能に大きく影響することはない。また、環状壁に対して吐出キャップの外周壁における先端部を、他端部から一端部に向かう向きで近接又は当接させるようにしていて、従来のように吐出キャップを装着する途中において、チューブ容器と吐出キャップとが周方向で強く押し当たることがないため、吐出キャップを装着する際の作業性が損なわれることもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に従うチューブ容器の一実施形態を示す、(a)は平面図であり(b)は半断面図である。
図2図1に示すチューブ容器を備える吐出容器の半断面図である。
図3】倒立姿勢にした状態での水滴の流れについて示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に従うチューブ容器の一実施形態(チューブ容器1)、及び吐出容器の一実施形態(吐出容器5)について説明する。なお、本明細書等において上下方向とは、図示した口部1cの軸線Oに沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。そして、図2はチューブ容器1を正立姿勢にした状態を示していて、図3はこれを倒立姿勢にした状態を示している。
【0012】
図1(b)に示すようにチューブ容器1は、胴部1aと、肩部1bと、口部1cとを備えている。
【0013】
胴部1aは、単一の素材によって、又は積層させた複数の素材によって筒状に形成されている。胴部1aの下方に位置する一端部(図1(b)では図示省略)は封止されていて、胴部1aの内側には、内容物が収容される収容空間Sが形成されている。なお本実施形態の胴部1aの外径は、約φ45mmである。
【0014】
本実施形態の肩部1bと口部1cは、例えばコンプレッション成形や射出成形によって形成され、胴部1aの他端部に溶着等によって固着されるヘッド2により構成されている。図1(b)に示すようにヘッド2は、円環壁2aと、円環壁2aの上端部から傾斜して(軸線Oに近づくにつれて上方に傾いて)延在する傾斜壁2bと、傾斜壁2bの内端部から上方に向けて延在する円筒壁2cとを備えている。ここで、円環壁2aと傾斜壁2bは肩部1b(胴部1aの一部を含む)を構成する部位であり、円筒壁2cは口部1cを構成する部位である。
【0015】
円筒壁2cの外周面には、後述する吐出キャップ3を装着するための雄ねじ部2dが設けられている。また円筒壁2cの下端部(傾斜壁2bとの連結部)には、図1(a)に示すように、装着した吐出キャップ3の回り止めとなる大突起2eと小突起2fが、周方向に間隔をあけて設けられている。
【0016】
そして傾斜壁2bの上面には、大突起2eと小突起2fの径方向外側において周方向に延在する環状壁2gが設けられている。本実施形態の環状壁2gは、図1(b)の部分拡大図に示すように横断面形状が略三角形状になるものであって、傾斜壁2bの上面からの突出量(傾斜壁2bの上面から環状壁2gの頂点までの高さ)は、約1.5mmである。
【0017】
環状壁2gの外周面2hは、本実施形態では上方に向かうにつれて軸線Oに近づく向きに若干傾いて(約5~10°傾いて)延在している。外周面2hは、軸線Oに対して略平行に延在していてもよいし、実施形態とは逆の向きに傾いて延在していてもよい。
【0018】
そして環状壁2gの内周面2jは、軸線Oに近づくにつれて下方に傾いて延在する傾斜面として形成されている。内周面2jの傾く角度は、後述するように外周壁3gの先端部が内周面2jに対して上下方向に近接又は当接するように(外周壁3gの先端部が内周面2jに対して周方向に近接又は当接するよりも優先して上下方向に近接又は当接するように)水平方向に対して0°より大きく45°以下に設定されるが、0°より大きく30°以下が好ましく、0°より大きく15°以下が更に好ましい。本実施形態の内周面2jは、水平方向に対して約10°傾いて延在している。
【0019】
なお、本実施形態における環状壁2gの突出量や外周面2h、内周面2jの角度は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0020】
上述したチューブ容器1は、図2に示すように、吐出キャップ3と蓋体4を備えて吐出容器5として構成される。
【0021】
吐出キャップ3は、口部1cを構成する円筒壁2cの上方を覆う頂壁3aを備えている。頂壁3aの中央部には、頂壁3aを貫通する吐出口3bが設けられていて、吐出口3bの周囲には、頂壁3aから立ち上がる筒状の吐出筒3cが設けられている。
【0022】
頂壁3aの下面には、円筒壁2cの上端部内周面に対して液密に当接するシール筒3dと、円筒壁2cを取り囲む筒状の内周壁3eが設けられている。内周壁3eの内周面には、雄ねじ部2dに適合する雌ねじ部3fが設けられている。頂壁3aの外縁部には、下方に向けて延在する筒状の外周壁3gが設けられている。そして内周壁3eと外周壁3gの間には、板状をなす回り止めリブ3hが設けられている。
【0023】
図2において仮想線で示した蓋体4は、有蓋筒状になるものであって、不図示のヒンジによって吐出キャップ3に対して開閉可能に連結している。なお図2は、蓋体4で吐出口3bを覆い隠した閉蓋状態を示している。また図示したように蓋体4の天壁4aは、平坦状になっている。
【0024】
このような吐出キャップ3をチューブ容器1に装着するにあたっては、チューブ容器1に対して吐出キャップ3を回転させて、雄ねじ部2dと雌ねじ部3fとを螺合させる。本実施形態においては、吐出キャップ3を最後まで回転させると、回り止めリブ3hが小突起2fを乗り越えて大突起2eと小突起2fの間でこれが挟まれるようにしている。このため、チューブ容器1に装着した吐出キャップ3が不用意に回転して外れてしまう不具合を防止することができる。
【0025】
吐出キャップ3を最後まで回転させてチューブ容器1に装着した際、図2の部分拡大図に示すように外周壁3gの先端部は、環状壁2gの内周面2jに対して上下方向に近接している。すなわち、従来のように吐出キャップを装着する途中において、チューブ容器と吐出キャップとが周方向で強く押し当たることがなく、吐出キャップを装着する際の作業性が損なわれることはない。なおこの状態において、外周壁3gの先端部を内周面2jに当接させてもよい。
【0026】
このような形態になる吐出容器5は、天壁4aが平坦状になっているため、図3に示すように、チューブ容器1が傾倒姿勢になる状態で浴室等に保管することができる。この状態においてチューブ容器1の外表面に水滴がついた場合、水滴は、図3の部分拡大図に示した矢印のようにチューブ容器1の外表面を伝って下方に向けて流れていく。一方、環状壁2gの内周面2jは、チューブ容器1を傾倒姿勢にした状態において、軸線Oに近づくにつれて上方に傾いている。従って、流れてきた水滴は内周面2jを越えることができずにそのまま落下するため、吐出キャップ3の内側への水の浸入を有効に防止することができる。ここで、外周壁3gの先端部を内周面2jに当接させる場合は、吐出キャップ3の内側への水の浸入をより確実に防止することができる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0028】
例えば本実施形態では、雄ねじ部2dと雌ねじ部3fとを螺合させることによって吐出キャップ3をチューブ容器1に装着するように構成したが、チューブ容器1に外向き突起を設け、吐出キャップ3に内向き突起を設けて両者を係合させるようにしてもよい。また蓋体4は、ヒンジによって吐出キャップ3に連結するものに限られず、吐出キャップ3から分離させてねじ等で取り付けられるようにしてもよい。また本発明は、上述したチューブ容器1のように胴部1aの他端部にヘッド2を固着したものに限られず、ブロー成形等によって、胴部1a、肩部1b、及び口部1cが一体的に形成されるものでもよい。
【符号の説明】
【0029】
1:チューブ容器
1a:胴部
1b:肩部
1c:口部
2:ヘッド
2a:円環壁
2b:傾斜壁
2c:円筒壁
2d:雄ねじ部
2e:大突起
2f:小突起
2g:環状壁
2h:外周面
2j:内周面
3:吐出キャップ
3a:頂壁
3b:吐出口
3c:吐出筒
3d:シール筒
3e:内周壁
3f:雌ねじ部
3g:外周壁
3h:回り止めリブ
4:蓋体
4a:天壁
5:吐出容器
O:軸線
S:収容空間
図1
図2
図3