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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ガス遮断器及びその動作診断方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/00 20060101AFI20241114BHJP
   H02B 13/065 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01H33/00 A
H02B13/065 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021026102
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127880
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕明
(72)【発明者】
【氏名】屋嘉 広行
(72)【発明者】
【氏名】小山 祐貴
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-151990(JP,A)
【文献】特開2016-225262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/00
H02B 13/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に絶縁性ガスが封入され、固定接触子と可動接触子を有する遮断部を内蔵した接地容器と、前記可動接触子を前記固定接触子に対して開極又は閉極させるための投入ばね及び遮断ばねを駆動源としたばね操作器と、該ばね操作器と前記可動接触子とを連結するリンク機構と、前記接地容器の端部に、該接地容器の密閉のために設けられたフランジとを備えたガス遮断器であって、
前記ばね操作器の前記遮断ばねを収納するケースに、前記可動接触子のストロークを検出するストローク検出手段が設置されていると共に、前記遮断部の動作に伴い受動的な振動が生じる前記接地容器或いは前記フランジに振動検出手段が設置されており、
前記振動検出手段により検出された前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の加速度と、前記ストローク検出手段により検出された前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の前記可動接触子のストロークに基づいて、前記可動接触子のストロークの異常及び前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点との重なり量(ワイプ量)を推定することを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
請求項に記載のガス遮断器であって、
前記振動検出手段は加速度センサ、前記ストローク検出手段はストローク検出センサであることを特徴とするガス遮断器。
【請求項3】
請求項に記載のガス遮断器であって、
前記ストローク検出センサの測定対象は、前記ばね操作器の遮断ばねを受ける遮断ばね受けのストロークであることを特徴とするガス遮断器。
【請求項4】
請求項又はに記載のガス遮断器であって、
前記加速度センサは、前記遮断部の動作に伴い受動的な振動が生じる部材が前記接地容器の場合は前記接地容器の下部に設置され、
前記可動接触子のストローク開始時間をC1、前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点の導通がONになった瞬間をC2、前記可動接触子と前記固定接触子の投入(閉極)操作が終わった瞬間をC3とすると、前記接地容器の下部に設置された前記加速度センサにより前記C2を把握し、このC2の瞬間のストロークと前記C3のストロークとの差が、前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点との前記重なり量(ワイプ量)であることを特徴とするガス遮断器。
【請求項5】
請求項に記載のガス遮断器であって、
前記加速度センサにより検出された前記C2に相当する波形の立ち上がりが遅くなり、前記ワイプ量が減少した際には、前記ワイプ量の減少量を前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の摩耗量とすることを特徴とするガス遮断器。
【請求項6】
請求項に記載のガス遮断器であって、
前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の前記摩耗量が、予め設定された閾値を超えた場合には、前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の交換を促す警報を出すことを特徴とするガス遮断器。
【請求項7】
請求項に記載のガス遮断器であって、
前記加速度センサ及び前記ストローク検出センサからの信号を増幅する増幅器(アンプ)と、該増幅器の出力を入力とする監視装置と、該監視装置からの出力に基づいて前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の前記摩耗量を判定する比較・判定装置と、該比較・判定装置での判定結果を表示する表示装置とを備え、
前記加速度センサ及び前記ストローク検出センサの検出結果から推定された前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の前記摩耗量が、前記増幅器及び前記監視装置を経由して前記比較・判定装置に入力され、前記比較・判定装置で前記摩耗量が予め設定された閾値を超えたか否かを判定し、その判定結果が予め設定された閾値を超えた場合には、前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の交換を促す警報を前記表示装置に表示することを特徴とするガス遮断器。
【請求項8】
内部に絶縁性ガスが封入され、固定接触子と可動接触子を有する遮断部を内蔵した接地容器と、前記可動接触子を前記固定接触子に対して開極又は閉極させるための投入ばね及び遮断ばねを駆動源としたばね操作器と、該ばね操作器と前記可動接触子とを連結するリンク機構と、前記接地容器の端部に、該接地容器の密閉のために設けられたフランジとを備えたガス遮断器の動作診断を行うに当たり、
前記ばね操作器の前記遮断ばねを収納するケースに、前記可動接触子のストロークを検出するストローク検出手段が設置されていると共に、前記遮断部の動作に伴い受動的な振動が生じる前記接地容器或いは前記フランジに振動検出手段が設置され、
前記振動検出手段により前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の加速度を検出し、前記ストローク検出手段により前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の前記可動接触子のストロークを検出し、この両者の検出値に基づいて前記可動接触子のストロークの異常及び前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点との重なり量(ワイプ量)を推定することを特徴とするガス遮断器の動作診断方法。
【請求項9】
請求項に記載のガス遮断器の動作診断方法であって、
前記振動検出手段は加速度センサ、前記ストローク検出手段はストローク検出センサであり、
前記加速度センサは、前記遮断部の動作に伴い受動的な振動が生じる部材が前記接地容器の場合は前記接地容器の下部に設置され、
前記可動接触子のストローク開始時間をC1、前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点の導通がONになった瞬間をC2、前記可動接触子と前記固定接触子の投入(閉極)操作が終わった瞬間をC3とすると、前記接地容器の下部に設置された前記加速度センサにより前記C2を把握し、このC2の瞬間のストロークと前記C3のストロークとの差が、前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点との前記重なり量(ワイプ量)であることを特徴とするガス遮断器の動作診断方法。
【請求項10】
請求項に記載のガス遮断器の動作診断方法であって、
前記加速度センサにより検出された前記C2に相当する波形の立ち上がりが遅くなり、前記ワイプ量が減少した際には、前記ワイプ量の減少量を前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の摩耗量とすることを特徴とするガス遮断器の動作診断方法。
【請求項11】
請求項10に記載のガス遮断器の動作診断方法であって、
前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の前記摩耗量が、予め設定された閾値を超えた場合には、前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の交換を促す警報を出すことを特徴とするガス遮断器の動作診断方法。
【請求項12】
請求項11に記載のガス遮断器の動作診断方法であって、
前記加速度センサ及び前記ストローク検出センサからの信号を増幅する増幅器(アンプ)と、該増幅器の出力を入力とする監視装置と、該監視装置からの出力に基づいて前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の前記摩耗量を判定する比較・判定装置と、該比較・判定装置での判定結果を表示する表示装置とを備え、
前記加速度センサ及び前記ストローク検出センサの検出結果から推定された前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の前記摩耗量が、前記増幅器及び前記監視装置を経由して前記比較・判定装置に入力され、前記比較・判定装置で前記摩耗量が予め設定された閾値を超えたか否かを判定し、その判定結果が予め設定された閾値を超えた場合には、前記可動接触子の接点及び/又は前記固定接触子の接点の交換を促す警報を前記表示装置に表示することを特徴とするガス遮断器の動作診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス遮断器及びその動作診断方法に係り、特に、ガス遮断器の動作異常を推定するものに好適なガス遮断器及びその動作診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の先行技術文献として、スイッチングデバイスの摩耗を推定する電気スイッチングデバイス及び摩耗検出方法が特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1には、ケーシングに加速度計を設け、この加速度計による加速度測定信号に基づいてスイッチの投入状態と遮断状態との間の時間を推定し、その推定した時間に基づいてスイッチングデバイスの摩耗を推定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-61948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、多頻度で動くガス遮断器の動作異常を判定するために変位センサ等を使用する場合、変位センサそのものの寿命や変位センサの設置位置(後付けが困難)に課題がある。
【0006】
このため、ばね操作器のガス遮断器にあっては、遮断部の接点が起動、停止するタイミングを変位センサがない状態で検出することが望まれていた。
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1は、加速度計による加速度測定信号に基づいてスイッチの投入状態と遮断状態との間の時間を推定し、その推定した時間に基づいてスイッチングデバイスの摩耗を推定することは記載されているが、遮断部の接点が起動、停止するタイミングを変位センサがない状態で検出することまでは、想定していない。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、遮断部の接点が起動、停止するタイミングを変位センサがない状態で検出することが可能なガス遮断器及びその動作診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス遮断器は、上記目的を達成するために、内部に絶縁性ガスが封入され、固定接触子と可動接触子を有する遮断部を内蔵した接地容器と、前記可動接触子を前記固定接触子に対して開極又は閉極させるための投入ばね及び遮断ばねを駆動源としたばね操作器と、該ばね操作器と前記可動接触子とを連結するリンク機構と、前記接地容器の端部に、該接地容器の密閉のために設けられたフランジとを備えたガス遮断器であって、前記ばね操作器の前記遮断ばねを収納するケースに、前記可動接触子のストロークを検出するストローク検出手段が設置されていると共に、前記遮断部の動作に伴い受動的な振動が生じる前記接地容器或いは前記フランジに振動検出手段が設置されていることを特徴とする。
【0010】
具体的には、本発明のガス遮断器は、前記振動検出手段により検出された前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の加速度と、前記ストローク検出手段により検出された前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の前記可動接触子のストロークに基づいて、前記可動接触子のストロークの異常及び前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点との重なり量(ワイプ量)を推定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のガス遮断器の動作診断方法は、上記目的を達成するために、内部に絶縁性ガスが封入され、固定接触子と可動接触子を有する遮断部を内蔵した接地容器と、前記可動接触子を前記固定接触子に対して開極又は閉極させるための投入ばね及び遮断ばねを駆動源としたばね操作器と、該ばね操作器と前記可動接触子とを連結するリンク機構と、前記接地容器の端部に、該接地容器の密閉のために設けられたフランジとを備えたガス遮断器の動作診断を行うに当たり、前記ばね操作器の前記遮断ばねを収納するケースに、前記可動接触子のストロークを検出するストローク検出手段が設置されていると共に、前記遮断部の動作に伴い受動的な振動が生じる前記接地容器或いは前記フランジに振動検出手段が設置され、前記振動検出手段により前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の加速度を検出し、前記ストローク検出手段により前記可動接触子と前記固定接触子が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の前記可動接触子のストロークを検出し、この両者の検出値に基づいて前記可動接触子のストロークの異常及び前記可動接触子の接点と前記固定接触子の接点との重なり量(ワイプ量)を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遮断部の接点が起動、停止するタイミングを変位センサがない状態で検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のガス遮断器の実施例1の全体構成を示す正面図である。
図2】本発明のガス遮断器の実施例1における遮断部及びばね操作器の詳細を示し、投入(閉極)状態の断面図である。
図3】本発明のガス遮断器の実施例1における遮断部及びばね操作器の詳細を示し、遮断(開極)状態の断面図である。
図4】本発明のガス遮断器の実施例1における遮断部の詳細を示す断面図である。
図5】本発明のガス遮断器の実施例1の無負荷(通電しない)状態での閉路操作における接地容器の下部に設けられた加速度センサによる測定波形を示す図である。
図6】本発明のガス遮断器の実施例1の無負荷(通電しない)状態での開路操作における接地容器の下部に設けられた加速度センサによる測定波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のガス遮断器及びその動作診断方法を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0015】
図1図2図3及び図4を用いて本発明のガス遮断器の実施例1を説明する。
【0016】
図1には、本発明のガス遮断器の実施例1の全体構成を、図2には、本発明のガス遮断器の実施例1における遮断部及びばね操作器の投入(閉極)状態の詳細を、図3には、本発明のガス遮断器の実施例1における遮断部及びばね操作器の遮断(開極)状態の詳細を、図4には、本発明のガス遮断器の実施例1における遮断部の詳細を、それぞれ示す。
【0017】
該図に示すように、本実施例のガス遮断器100は、円筒形の接地容器103が架台105上に設置されており、この円筒形の接地容器103には、絶縁性のガス、例えばSFガス(六弗化硫黄ガス)が規定の圧力で封入されている。また、接地容器103の軸方向中間部から斜め上方には、ブッシングトップ101a及び102aを有するブッシング101及び102が突き出ており、このブッシング101及び102内に変電所や開閉所の電線を接続して電路を構成する導体101b及び102bが収納されている。また、架台105の側部には、ガス遮断器100のばね操作器77が取付けられている。
【0018】
また、接地容器103内には、接点62aを有する固定接触子62と接点63aを有する可動接触子63から成る遮断部103aが内蔵されている。図2は、遮断部103aの固定接触子62の接点62aに可動接触子63の接点63aが投入(閉極)されている状態であり、可動接触子63が固定接触子62に接し、図3は、遮断部103aの固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aが遮断(開極)されている状態であり、可動接触子63が固定接触子62から離れる。
【0019】
また、可動接触子63は、固定接触子62との接触端との反対端に、絶縁ロッド64が接続され、接地容器103には回転軸66が回動自在に支持されている。この回転軸66に第1のレバー65及び第2のレバー67の一端が固定され、第1のレバー65の他端は絶縁ロッド64の一端に接続され、同様に第2のレバー67の他端はリンク68に接続されている。
【0020】
また、ばね操作器77内のばね操作機構の主軸4には、第3のレバー69の一端が固定されており、第3のレバー69の他端はリンク68に接続されている。主軸4及び第3のレバー69、リンク68、第2のレバー67、回転軸66が4節リンク機構を形成して、ばね操作器77内のばね操作機構と遮断部103aとを接続している。
【0021】
このように構成した本実施例のガス遮断器100の動作を説明する。
【0022】
通電時には、図示しない系統から上流側のブッシング101内の導体101bに電流が供給され、導体101bから接地容器103内の固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aに電流が導かれ、下流側のブッシング102内の導体102bを経て、再び系統に供給される。
【0023】
落雷などで系統に事故が発生すると、ばね操作器77を駆動して、主軸4及び第3のレバー69を図2の状態から時計回りに回転させて、リンク68を下方に移動させる(図3の状態)。リンク68が下方に移動すると、第2のレバー67と回転軸66及び第1のレバー65が時計回りに回転し、絶縁ロッド64を図の右方へ移動させ、これにより、固定接触子62から可動接触子63が離れて接点が開き、電流が遮断される。
【0024】
なお、本実施例では、接地容器103を水平方向に延在しているが、鉛直方向に延在してもよい。また、接地容器103にブッシング101及び102を直接取付ける単体のガス遮断器100を説明するが、ガス絶縁開閉装置の中に組み込まれた遮断器であってもよい。また、SFガスを使用したガス遮断器を例にとり説明するが、真空遮断器など他の開閉装置であってもよい。
【0025】
図2を用いてばね操作器77を説明する。
【0026】
図2は、ばね操作器77の投入ばね28及び遮断ばね26が共に圧縮されているガス遮断器100の投入状態を示す。
【0027】
図2に示すように、ばね操作器77は、筐体1内に回動自在に支持されたばね操作器用回転軸2の一端にカム3が取付けられている。投入ばね28が配置されている投入ばねリンク27の他端部には、投入ばね受け35が取付けられており、投入ばね28の一端側を保持している。投入ばね28は、そのコイル部が投入ばねリンク27の外周に配置されており、投入ばね受け35の反対側が固定端として、筐体1によって保持されている。また、投入ばね28の外周に円筒状の投入ばねケース72が設けられている。
【0028】
次に、遮断ばね26について説明する。図2に示すように、主軸4には、略Y字型の主レバー5の中間部が取付けられており、略Y字型をした主レバー5の2つの端部には、ローラが取付けられ、主レバー5の残りの端部には、遮断ばねリンク25の一端が回動自在に取付けられている。遮断ばねリンク25の他端には金属製の遮断ばね受け34が取付けられており、遮断ばねリンク25の外周に配置されたコイル状の遮断ばね26が保持されている。
【0029】
また、遮断ばね26は、遮断ばね受け34で保持された自由端部と、この自由端部と反対側を固定端部として筐体1で保持されている。また、遮断ばね26の外周に円筒状の遮断ばねケース71を設けている。遮断ばねケース71は、一端が筐体1に接続され、他端が自由になっているが、この自由端に可動接触子63のストロークを検出するストローク検出手段であるストロー検出センサ502が設置されている。
【0030】
一方、本実施例のガス遮断器100では、遮断部103aの固定接触子62と可動接触子63の動作に伴い受動的な振動が生じる部材、本実施例では接地容器103の下部に振動検出手段である加速度センサ501が設置されている。
【0031】
そして、本実施例では、加速度センサ501により検出された可動接触子63と固定接触子62が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の加速度と、ストローク検出センサ502により検出された可動接触子63と固定接触子62が閉極(ON)になった時に急峻に立ち上がる瞬間の可動接触子63のストロークに基づいて、可動接触子63のストロークの異常及び可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aとの重なり量(ワイプ量)を推定することを特徴とする。
【0032】
以下、これについて図5及び図6を用いて説明する。
【0033】
図5は、本実施例のガス遮断器100の実施例1の無負荷(通電しない)状態での遮断部103aの閉路操作における接地容器103の下部に設けられた加速度センサ501による測定波形を示す図であり、図6は、本実施例のガス遮断器100の実施例1の無負荷(通電しない)状態での遮断部103aの開路操作における接地容器103の下部に設けられた加速度センサ501による測定波形を示す図である。
【0034】
図5及び図6は、何れも変電所内において、無負荷(通電しない)状態でのガス遮断器100の動作を測定したものであり、具体的には、図1に示したブッシング101及び102のブッシングトップ101a及び102aに導線を繋いで、数Vの直流電源を接続し、図2図3及び図4に示した遮断部103aの固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aの導通を測定している。
【0035】
固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aの導通の測定は、無負荷(通電しない)状態でしか行えない。これは、系統に入っているガス遮断器100には数千Aの電流が流れており、事故電流になると数十kAになるためである。
【0036】
本実施例では、図3に示すように、可動接触子63のストロークを、ばね操作器77の遮断ばね26を収納する遮断ばねケース71に設置されたストローク検出センサ502で測定している。ここでは、ばね操作器77の遮断ばね受け34を測定対象としている。
【0037】
図3で、遮断部103aの可動接触子63の接点63aのストローク量はL1であり、遮断ばね受け34で図ったストロークにばね操作機構部のリンク比を乗じた値を図5及び図6では、可動接触子63の接点63aのストロークとしている。図5及び図6には、上記の他に、ガス遮断器100の開閉操作のきっかけとなる投入ソレノイドコイルの電流波形も示している。
【0038】
図5を詳細に説明する。
【0039】
ガス遮断器100に閉路指令が入ると図示しない投入制御機構の投入ソレノイドコイルが励磁され、図3に示した投入ばね28が解放されてカム3と第3のレバー69が起動し、遮断ばね26を圧縮していく(遮断ばね26が図3の右方向に移動する)。これに伴い、遮断ばね受け34がストローク検出センサ502から離れていくので、図5に示すようなストローク波形Xが得られる。
【0040】
本実施例では、接地容器103の下部の固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aの中間部分に加速度センサ501が設置されているが、加速度センサ501の設置場所は、特に、特定するものではない。また、本実施例での加速度センサ501は、接地容器103の下部に設置しているが、遮断部103aの動作に伴い受動的な振動が生じる部材である接地容器103の密閉のために端部に設けられたフランジ106に設けても構わない。
【0041】
図5において、加速度センサ501で計測した加速度波形Yは、可動接触子63のストローク開始時間C1、可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aの導通がONになった瞬間C2、可動接触子63と固定接触子62の投入(閉極)操作が終わった瞬間C3のいずれでも急峻に立ち上がるのが分かる。
【0042】
本実施例では、可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aの導通がONになった瞬間C2が重要である。
【0043】
なぜなら、上述したように、実際のガス遮断器100では、固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aの導通の測定は、無負荷(通電しない)状態でしか行えないが、本実施例では、接地容器103の下部に設置された加速度センサ501により、確実に固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aが投入(ON)になった瞬間を把握している。
【0044】
この可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aの導通がONになった瞬間C2のストロークと、可動接触子63と固定接触子62の投入(閉極)操作が終わった瞬間C3のストロークとの差L2が、固定接触子62の接点62aと可動接触子63の接点63aとの重なり量(ワイプ量)である。
【0045】
系統に設置されているガス遮断器100では、電流負荷を入り切りするので、可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aが消耗して、ワイプ量が減少する可能性がある。その場合、接地容器103の下部に設置された加速度センサ501での、可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aの導通がONになった瞬間C2に相当する波形の立ち上がりが遅くなるので、ストローク検出センサ502で可動接触子63のストロークを同時に測定しておくことで、ワイプ量の減少量、即ち、可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの摩耗量を把握することができる。
【0046】
また、可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの摩耗量が、予め設定された閾値を超えた場合には、変電所の指令所に可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの交換を促す警報を出すことができるようになっている。
【0047】
即ち、本実施例のガス遮断器100は、図2及び図3に示すように、加速度センサ501とストローク検出センサ502からの信号を増幅する増幅器(アンプ)40と、この増幅器40の出力を入力とするFFTアナライザ41及び監視装置42と、このFFTアナライザ41及び監視装置42からの出力に基づいて可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの摩耗量を判定する比較・判定装置43と、この比較・判定装置43での判定結果を表示する変電所にある表示装置44とを備えている。
【0048】
そして、加速度センサ501とストローク検出センサ502の検出結果から推定された可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの摩耗量が、増幅器40とFFTアナライザ41及び監視装置42を経由して比較・判定装置43に入力され、この比較・判定装置43で可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの摩耗量が、予め設定された閾値を超えたか否かを判定し、その判定結果が予め設定された閾値を超えた場合には、可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの交換を促す警報を変電所にある表示装置44に表示することで、ガス遮断器100の保守の効率化を図ることができる。
【0049】
次に、図6について説明する。
【0050】
ガス遮断器100に閉路指令が入ると図示しない投入制御機構の投入ソレノイドコイルが励磁され、図2に示した遮断ばね26が解放される。これに伴い、遮断ばね受け34がストローク検出センサ502に近づくので、図6に示すようなストローク波形X及び加速度波形Yが得られる。
【0051】
図6において、開路操作では、接地容器103の下部に設置された加速度センサ501の波形の振幅が大きく、数百Hzの周波数で振動する。そのため、遮断部103aの可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aの導通がOFFになる瞬間を加速度波形Yから推定することは難しいが、閉路操作で可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aが入る瞬間を推定できれば良いので、差し支えない。
【0052】
このような本実施例の構成とすることにより、加速度センサ501で検出された加速度そのものを使用するわけではなく、急峻に加速度が立ち上がる瞬間を把握できれば良いので、加速度センサ501を安価に構成することが可能となるし、電流が投入される瞬間も検出できるので、可動接触子63の接点63a及び/又は固定接触子62の接点62aの消耗の有無を推定可能である。
【0053】
従って、本実施例によれば、遮断部103aの可動接触子63の接点63aと固定接触子62の接点62aが起動、停止するタイミングを、変位センサがない状態で検出することが可能となる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…筐体、2…ばね操作器用回転軸、3…カム、4…主軸、5…主レバー、25…遮断ばねリンク、26…遮断ばね、27…投入ばねリンク、28…投入ばね、34…遮断ばね受け、35…投入ばね受け、40…増幅器(アンプ)、41…FFTアナライザ、42…監視装置、43…比較・判定装置、44…表示装置、62…固定接触子、62a…固定接触子の接点、63…可動接触子、63a…可動接触子の接点、64…絶縁ロッド、65…第1のレバー、66…回転軸、67…第2のレバー、68…リンク、69…第3のレバー、71…遮断ばねケース、72…投入ばねケース、77…ばね操作器、100…ガス遮断器、101、102…ブッシング、101a、102a…ブッシングトップ、101b、102b…導体、103…接地容器、103a…遮断部、105…架台、106…フランジ、501…加速度検出センサ、502…ストローク検出センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6