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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】昇降階段通路の組み立て構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 23/00 20060101AFI20241114BHJP
   B61D 1/06 20060101ALI20241114BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B61D23/00
B61D1/06
B61D17/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021026326
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022128029
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽島 健太郎
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210707392(CN,U)
【文献】特開2014-055430(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03453585(EP,A1)
【文献】中国実用新案第206243175(CN,U)
【文献】欧州特許出願公開第02184419(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 23/00
B61D 1/06
B61D 17/00
B60R 3/00
B62D 25/22
E04F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床の高さが出入台と異なる客室を有する鉄道車両において、前記出入台と前記客室との間を接続する昇降階段通路の組み立て構造であって、
車両構体に設けられる骨組と、
踏板と蹴上とが交互に設けられた階段部と、
前記昇降階段通路の向かい合う内壁をなす2つのパネルと、
前記階段部の最下段を前記骨組に対して取り付けるための下部ボルト止め構造、及び、前記階段部の最上段を前記骨組に対して取り付けるための上部ボルト止め構造と、
前記2つのパネルの各々の下方部を前記階段部に接続するための下部取付金、及び、前記2つのパネルの各々の上方部を前記骨組に取り付けるための上部取付金と、を含み、
前記昇降階段通路は、平面視で曲がりながら前記出入台と前記客室との間を接続するものであり、
前記骨組は、平面視で前記曲がりの中心近傍に立設される仕切柱を含み、
該仕切柱は、前記階段部が設置される高さ範囲の少なくとも一部にわたる中途部分が、前記仕切柱の上端側及び下端側から分割部を介して分割可能な3分割構造を有し、前記分割部がボルトによって接続されることを特徴とする昇降階段通路の組み立て構造。
【請求項2】
前記階段部は、前記踏板及び前記蹴上を覆う床材と、該床材の上から前記踏板の端部に取り付けられた滑り止めステップと、前記踏板及び前記蹴上の側方に取り付けられた側壁と、を含み、
前記下部取付金により、前記2つのパネルの各々の下方部が前記側壁に対して接続されることを特徴とする請求項1記載の昇降階段通路の組み立て構造。
【請求項3】
前記上部ボルト止め構造のボルト穴は、前記骨組に対して前記最上段が取り付けられた状態で、前記客室又は前記出入台の床材及び前記最上段の前記滑り止めステップによって覆われることを特徴とする請求項2記載の昇降階段通路の組み立て構造。
【請求項4】
前記下部ボルト止め構造のボルト穴は、前記骨組に対して前記最下段が取り付けられた状態で、前記出入台又は前記客室の床材によって覆われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の昇降階段通路の組み立て構造。
【請求項5】
前記2つのパネルの各々は、板材の表面に化粧シートが貼り付けられて構成され、
前記下部取付金及び前記上部取付金は、前記板材の裏面に取り付けられていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載の昇降階段通路の組み立て構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床の高さが出入台と異なる客室を有する鉄道車両に用いられる昇降階段通路の組み立て構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床の高さが出入台と異なる客室を有する、例えば2階建ての鉄道車両には、プラットホームと同じ高さに設けられる出入台と階上室や階下室との間の移動のために、昇降階段通路が設けられている(例えば特許文献1参照)。このような昇降階段通路には、踏板を含む階段部分は勿論のこと、他にも様々な部品が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5827608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、鉄道車両の製作時に、昇降階段通路を形成するための部品は、現物の車両において施工されるものが多い。このため、各部品の位置出しなどに手間がかかる上に、作業空間が狭く、それらが要因で昇降階段通路の組み立て時間が増大してしまっていた。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、昇降階段通路の組み立て時間を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)床の高さが出入台と異なる客室を有する鉄道車両において、前記出入台と前記客室との間を接続する昇降階段通路の組み立て構造であって、車両構体に設けられる骨組と、踏板と蹴上とが交互に設けられた階段部と、前記昇降階段通路の向かい合う内壁をなす2つのパネルと、前記階段部の最下段を前記骨組に対して取り付けるための下部ボルト止め構造、及び、前記階段部の最上段を前記骨組に対して取り付けるための上部ボルト止め構造と、前記2つのパネルの各々の下方部を前記階段部に接続するための下部取付金、及び、前記2つのパネルの各々の上方部を前記骨組に取り付けるための上部取付金と、を含む昇降階段通路の組み立て構造。
【0007】
本項に記載の鉄道車両用の昇降階段通路の組み立て構造は、出入台と、床の高さが出入台と異なる客室との間を接続する昇降階段通路に適用されるものであり、骨組、階段部、2つのパネル、下部ボルト止め構造と上部ボルト止め構造、及び、下部取付金と上部取付金を含んでいる。骨組は、車両構体に設けられるものであり、昇降階段通路の基礎となる部分である。階段部は、踏板と蹴上とが交互に設けられ、その名の通り実質的な階段をなす部分であり、2つのパネルは、昇降階段通路の向かい合う内壁をなす部分であり、組み立て時には階段部の両側に立設される。
【0008】
又、下部ボルト止め構造及び上部ボルト止め構造は、階段部の最下段及び最上段を骨組に対して取り付けるためのものである。このため、これらのボルト止め構造を介して骨組に取り付けられる階段部は、後付け可能な1つの部品として取り扱われるものとなる。更に、下部取付金は、2つのパネルの各々の下方部を階段部に接続するためのものであり、上部取付金は、2つのパネルの各々の上方部を骨組に取り付けるためのものである。このため、これらの取付金を介して階段部及び骨組に取り付けられる2つのパネルの各々も、階段部よりも後に後付け可能な1つの部品として取り扱われるものとなる。
【0009】
従って、鉄道車両の製作時に、階段部及び2つのパネルの各々は、それらを構成する複数の部品が先組みされて必要な加工がなされた状態で、現物の車両に搬入されて取り付けられるものとなる。これにより、階段部や2つのパネルを構成する各部品の、現物の車両における位置出しなどの必要がなくなる上に、階段部や2つのパネルを構成する各部品の組み付けや加工が、現物の車両ではなく工場などで効率的に行われるものとなるため、昇降階段通路の組み立て時間が大幅に低減されるものとなる。更に、階段部や2つのパネルを構成する各部品の先組みや、ボルト止め構造及び取付金を利用した階段部や2つのパネルの取り付けにより、現物の車両での溶接作業が減るため、昇降階段通路の品質が向上されるものとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記昇降階段通路は、平面視で曲がりながら前記出入台と前記客室との間を接続するものであり、前記骨組は、平面視で前記曲がりの中心近傍に立設される仕切柱を含み、該仕切柱は、前記階段部が設置される高さ範囲の少なくとも一部にわたる中途部分が、前記仕切柱の上端側及び下端側から分割部を介して分割可能な3分割構造を有し、前記分割部がボルトによって接続される昇降階段通路の組み立て構造(請求項1)。
本項に記載の昇降階段通路の組み立て構造は、適用先の昇降階段通路が、平面視で曲がりながら(曲線状及び多角形状を含む)出入台と客室との間を接続するものであり、車両構体に設けられる骨組に、平面視で曲がる態様の昇降階段通路の、その曲がりの中心近傍に立設される仕切柱が含まれている。このような仕切柱は、強度の確保のために必要であるが、その設置位置の関係上、先組みされた階段部が現物の車両に搬入される際に、階段部の設置位置までの移動や方向転換の妨げになる虞がある。
【0011】
しかしながら、本項に記載の昇降階段通路の組み立て構造の仕切柱は、現物の車両で階段部が設置される高さ範囲の少なくとも一部にわたる中途部分が、仕切柱の上端側及び下端側から分割可能な3分割構造を有している。これにより、階段部の搬入時に仕切柱の中途部分が取り外されていることで、仕切柱が階段部に干渉することが防止されるため、仕切柱の設置位置の変更などで強度に影響を与えることなく、階段部が設置位置まで搬入されるものとなる。しかも、仕切柱の上端及び下端は、作業性などの観点から階段部の搬入前に車両構体に溶接などで接続されていることが望ましいが、上述したような3分割構造によって、仕切柱の上端側及び下端側のみの車両構体に対する接続が実現される。更に、3分割構造の分割部である、仕切柱の上端側と中途部分との間、及び、中途部分と下端側との間は、ボルトを介して接続されるようになっている。このため、仕切柱の取り付けの作業性が低下されることなく、階段部の搬入作業が問題なく行われるものとなる。
【0012】
(3)上記(2)項において、前記階段部は、前記踏板及び前記蹴上を覆う床材と、該床材の上から前記踏板の端部に取り付けられた滑り止めステップと、前記踏板及び前記蹴上の側方に取り付けられた側壁と、を含み、前記下部取付金により、前記2つのパネルの各々の下方部が前記側壁に対して接続される昇降階段通路の組み立て構造(請求項2)。
本項に記載の昇降階段通路の組み立て構造は、階段部が床材と滑り止めステップと側壁とを含み、それらが階段部に先組みされるものである。すなわち、床材は踏板及び蹴上を覆うように取り付けられ、滑り止めステップは床材の上から踏板の端部にネジなどで取り付けられ、側壁は踏板及び蹴上の側方に溶接など取り付けられ、更に必要に応じて塗装などの加工が施される。ここまで先組みされた階段部が現物の車両に取り付けられるため、昇降階段通路の組み立て時間がより低減されるものとなる。
【0013】
又、鉄道車両の製作時に、現物の車両に搬入される2つのパネルの各々の下方部は、下部取付金を介して階段部の側壁に接続され、その接続箇所は、階段部の踏板や蹴上の側方端部ではなく、そこに接続された側壁に応じた高さに位置することとなる。このため、接続状態を見据えた各部材の位置関係の工夫などによって、昇降階段通路を通る乗客から接続箇所が視認され難くなり、パネルと側壁との間に押面を設ける必要がなくなる。これにより、位置出しなどの押面の取り付けのための各種の作業が不要となるため、現物の車両での作業が低減されるものである。
【0014】
(4)上記(3)項において、前記上部ボルト止め構造のボルト穴は、前記骨組に対して前記最上段が取り付けられた状態で、前記客室又は前記出入台の床材及び前記最上段の前記滑り止めステップによって覆われる昇降階段通路の組み立て構造(請求項3)。
本項に記載の昇降階段通路の組み立て構造は、上部ボルト止め構造を介して階段部の最上段が骨組に対して取り付けられた状態で、上部ボルト止め構造のボルト穴が、客室又は出入台の床材と、階段部の最上段の滑り止めステップとによって覆われるものである。すなわち、上部ボルト止め構造においてボルト止めされた後に、そのボルト穴の上に客室や出入台の床材が敷設され、更にその上から最上段の滑り止めステップが取り付けられるものである。これにより、上部ボルト止め構造のボルト穴が隠され、乗客から視認されなくなるため、昇降階段通路の美観が損なわれることが防止されるものである。
【0015】
(5)上記(2)から(4)項において、前記下部ボルト止め構造のボルト穴は、前記骨組に対して前記最下段が取り付けられた状態で、前記出入台又は前記客室の床材によって覆われる昇降階段通路の組み立て構造(請求項4)。
本項に記載の昇降階段通路の組み立て構造は、下部ボルト止め構造を介して階段部の最下段が骨組に対して取り付けられた状態で、下部ボルト止め構造のボルト穴が、出入台又は客室の床材によって覆われるものである。すなわち、下部ボルト止め構造においてボルト止めされた後に、そのボルト穴の上から出入台や客室の床材が敷設されるものである。これにより、下部ボルト止め構造のボルト穴が隠され、乗客から視認されなくなるため、昇降階段通路の美観が損なわれることが防止されるものである。
【0016】
(6)上記()から(5)項において、前記2つのパネルの各々は、板材の表面に化粧シートが貼り付けられて構成され、前記下部取付金及び前記上部取付金は、前記板材の裏面に取り付けられている昇降階段通路の組み立て構造(請求項)。
本項に記載の昇降階段通路の組み立て構造は、2つのパネルの各々が、板材の表面に化粧シートが貼り付けられて構成され、その板材の裏面に下部取付金及び上部取付金が溶接などで取り付けられたものである。そして、そのような状態まで先組みされた2つのパネルが現物の車両に取り付けられるため、昇降階段通路の組み立て時間がより低減されるものとなる。更に、パネルが現物の車両に設置された状態で、板材の裏面に取り付けられた下部取付金及び上部取付金は、昇降階段通路の内側に向けられ化粧シートが貼り付けられた板材の表面側から視認されなくなるため、昇降階段通路の美観が損なわれることなく、下部取付金及び上部取付金を介して2つのパネルが取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記のような構成であるため、昇降階段通路の組み立て時間を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造が適用された鉄道車両の昇降階段通路周辺の構造を概略的に示す正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造の構成の一例を示す、鉄道車両の一部の正面図である。
図3図2のA-A線での断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造の階段部を示す斜視図である。
図5図4の階段部を示しており、(a)が平面図、(b)が(a)におけるB-B線での断面図である。
図6図5(b)における符号D部の詳細を示しており、(a)が(b)における左側方からの側面図、(b)が符号D部の拡大断面図である。
図7図5(b)における符号E部の拡大断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造の一方のパネルを示しており、(a)が平面図、(b)が側面図、(c)が正面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造の他方のパネルを示しており、(a)が平面図、(b)が側面図、(c)が正面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造の取付金を示しており、(a)が図8(c)のF-F線及び図9(c)のG-G線での断面図で示される上部取付金、(b)がパネルと階段部とを接続した状態の側方視の下部取付金である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1には、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10が適用された鉄道車両80の、出入台84側から昇降階段通路86を視た正面図の一例を示している。この鉄道車両80は、客室として図示しない階上室及び階下室を有する2階建て構造のものであり、駅のプラットホームと同じ高さの床面を有する出入台84から、昇降階段通路86を介して、床面の高さが出入台84よりも高い階上室、或いは床面の高さが出入台84よりも低い階下室へ移動可能になっている。図1の実施形態の昇降階段通路86は、平面視で約90°曲がりながら、出入台84から階上室又は階下室へ至っている。各昇降階段通路86には、手すり88などの様々な部品が使用されており、2つの昇降階段通路86の入口の間には、仕切パネル90が介在している。
【0020】
以降では、図1に示された2つの昇降階段通路86のうち、図1の左側に示された、出入台84から階上室へと至る昇降階段通路86に対して、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10が適用されている場合を例にして説明する。
まず、図2及び図3を参照して、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、仕切柱14などを有する骨組12、実質的な階段部分を構成する階段部24、平面視で曲がっている昇降階段通路86の外側の内壁をなす外側パネル40、及び、昇降階段通路86の内側の内壁をなす内側パネル42などを含んでいる。
【0021】
骨組12は、鉄道車両80の車両構体に設けられ、昇降階段通路の組み立て構造10の他の構成要素を支える複数の骨部材が組み合わされて構成される。そのような骨組12には、仕切柱14の他にも、受骨18(図4及び図6参照)、踊り場板20、及び床受22などが含まれるが、それらについては後述する。仕切柱14は、図3で確認できるように、約90°曲がっている昇降階段通路86の曲がりの中心近傍に立設されており、車両構体の上端から下端近傍まで縦断している。仕切柱14の上端及び図示しない下端は、車両構体の他の部材と溶接されている。又、仕切柱14は、ボルトによって接続された2箇所の分割部16を介して、3分割されるようになっている。このため、仕切柱14は、分割部16のボルトの着脱により、車両構体の他の部材と溶接された上端側14a及び下端側14cに対して、それらの間の中途部分14bが取り付け又は取り外しされる。本実施形態の仕切柱14の中途部分14bは、図2で確認できるように、階段部24が設置される高さ範囲の全体にわたっている。骨組12を構成する骨部材は、各々に必要とされる強度などに応じた適切な材料で形成される。
【0022】
図4及び図5を参照して、階段部24は、昇降階段通路86の形状に対応して平面視で約90°曲がりながら、その最下段24aから最上段24bまで、踏板26と蹴上28とが交互に設けられている。本実施形態では、最下段24aと最上段24bとの間に、4つの踏板26と5つの蹴上28とが設けられており、それらの踏板26及び蹴上28の両側方には、必要に応じて塗装が施された側壁34が溶接などで接続されている。踏板26、蹴上28、及び側壁34は、例えばアルミニウム合金などで形成される。又、踏板26及び蹴上28には、それらを覆うように床材(床敷物)30が敷設されており、更に各踏板26の先端(図5(b)における右側)には、一方の側壁34と他方の側壁34との間で延在する滑り止めステップ32が、床材30の上からビス止めなどで取り付けられている。より詳しくは、図10(b)に示すように、踏板26(蹴上28も同様)の上に側壁34の近傍まで床材30が敷設され、床材30と側壁34との間がシール36されている。そして、床材30の更に上から、滑り止めステップ32が取り付けられている。
【0023】
図5(a)及び図6を参照して、階段部24の最上段24bには、4つのボルト穴62が設けられており、それらのボルト穴62の位置に合わせて、図6(a)視でコの字状の4つの階段受64が、そのコの字状の開口側を上方にして、最上段24bの下側に溶接などで取り付けられている。そして、そのような階段部24の最上段24bは、上述した骨組12を構成する受骨18に載置され、ライナーなどを介して階段受64と受骨18とがボルト66で接続される。受骨18は、図6(b)視でコの字状をなし、階上室へと続く図3に示したような踊り場板20の、図中左側の端縁の下方(図中紙面奥側)に設けられ、図4にも図示されている。上記のボルト穴62、階段受64、及びボルト66は、階段部24の最上段24bを受骨18に取り付けるための上部ボルト止め構造60を構成している。又、図6に示すように、上記のようにボルト止めされた状態で、ボルト穴62の上から階上室(踊り場)の床材(床敷物)76が敷設され、更にその上から最上段24bの滑り止めステップ32が取り付けられている。
【0024】
一方、図5(a)及び図7を参照すると、階段部24の最下段24aには、4つのボルト穴54が設けられており、そのような最下段24aが、上述した骨組12を構成する床受22に載置される。そして、ボルト穴54に挿通されたボルト56によって、ライナーなどを介して最下段24aと床受22とが接続される。上記のボルト穴54、及びボルト56は、階段部24の最下段24aを床受22に取り付けるための下部ボルト止め構造52を構成している。又、上記のようにボルト止めされた状態で、ボルト穴54及びボルト56の上から出入台84の床材78(床詰物78a及び床敷物78b)が敷設されている。なお、本実施形態では、蹴上28を覆う床材30と出入台84の床材78との境界に、押面58が設けられている。
【0025】
続いて、図8を参照して、外側パネル40は、図8(a)のような平面視で、昇降階段通路86の曲がりに対応して反った略円弧状をなし、板材44、化粧シート46、及び複数の補強材48で概ね構成されている。より詳しくは、板材44の、昇降階段通路86において内側パネル42へ向けられる表面44aに、化粧シート46が貼り付けられ、それとは反対の板材44の裏面44bに、必要に応じて複数の補強材48が溶接などで取り付けられている。板材44は、例えばアルミニウム合金などで形成される。更に、板材44の裏面44bには、外側パネル40の下方部を階段部24の側壁34に接続するための複数の下部取付金70と、外側パネル40の上方部を骨組12に取り付けるための上部取付金74とが、溶接などで取り付けられている。
【0026】
本実施形態では、外側パネル40の下端に沿って、複数の下部取付金70として5つの下部取付金70が取り付けられており、それらの各々が図10(b)で確認できるような形状を有している。すなわち、本実施形態の下部取付金70は、外側パネル40に取り付けられた第1部位70aと、その裏側から更に下方へと延びた第2部位70bとで構成されている。そして、下部取付金70の各々の第2部位70bが、ビス72によって階段部24の側壁34に固定されることで、複数の下部取付金70を介して、外側パネル40の下方部と階段部24の側壁34とが接続される。又、本実施形態の上部取付金74は、図8に示すように、外側パネル40の上端に沿って取り付けられ、その延在方向の断面形状が、図10(a)に示すようにクランク状になっており、外側パネル40の上端よりも突出している。そして、外側パネル40よりも上方に位置する上部取付金74の部位が、適切な方法で骨組12に固定されることで、上部取付金74を介して、外側パネル40の上方部と骨組12とが接続される。
【0027】
図9を参照すると、内側パネル42は、図9(a)のような平面視で、昇降階段通路86の曲がりに対応して反った略円弧状をなし、外側パネル40と同様に、板材44、化粧シート46、及び複数の補強材48で概ね構成されている。より詳しくは、板材44の、昇降階段通路86において外側パネル40へ向けられる表面44aに、化粧シート46が貼り付けられ、それとは反対の板材44の裏面44bに、必要に応じて複数の補強材48が溶接などで取り付けられている。更に、この点も外側パネル40と同様に、板材44の裏面44bには、内側パネル42の下方部を階段部24の側壁34に接続するための複数の下部取付金70と、内側パネル42の上方部を骨組12に取り付けるための上部取付金74とが、溶接などで取り付けられている。本実施形態では、内側パネル42の下端に沿って、複数の下部取付金70として5つの下部取付金70が取り付けられており、それらの形状などは、図10(b)に示したものと同様であるため、詳しい説明を省略する。又、内側パネル42の上端に沿って取り付けられた上部取付金74についても、図10(a)に示したものと同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0028】
ここで、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、図1図10に示したような構成に限定されるものではない。例えば、階段部24の踏板26及び蹴上28の数量、階段部24の全体形状、外側パネル40及び内側パネル42の形状は、適用先の昇降階段通路86の形状などに応じた適切な数量や形状が採用される。適用先の昇降階段通路86の形状も、平面視で90°曲がったものに限定されず、90°以外の角度で曲がったものや直線状であってもよい。又、下部ボルト止め構造52、上部ボルト止め構造60、下部取付金70、及び上部取付金74の構成部材や形状は、それらの機能を満たし得る範囲で任意の構成部材や形状であってよいものである。加えて、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、図1に示された2つの昇降階段通路86のうち、図1の右側に示された、出入台84から図示しない階下室へと至る昇降階段通路86に対して、可能な範囲で適用されてもよいものである。更に、2階建ての鉄道車両80の昇降階段通路86に限定されず、例えばハイデッカー車の昇降階段通路86などの、床の高さが出入台84と異なる客室を有する任意の鉄道車両の昇降階段通路86に適用されてよい。
【0029】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、図1に示すような、出入台84と、床の高さが出入台84と異なる客室(階上室や階下室)との間を接続する昇降階段通路86に適用されるものであり、図2及び図3に示すように、骨組12、階段部24、2つのパネル40、42、下部ボルト止め構造52と上部ボルト止め構造60(図6及び図7参照)、及び、下部取付金70と上部取付金74(図8図10参照)を含んでいる。骨組12は、鉄道車両80の車両構体に設けられるものであり、昇降階段通路86の基礎となる部分である。階段部24は、図4及び図5に示すように、踏板26と蹴上28とが交互に設けられ、その名の通り実質的な階段をなす部分であり、2つのパネル40、42は、図2及び図3に示すように、昇降階段通路86の向かい合う内壁をなす部分であり、組み立て時には階段部24の両側に立設される。
【0030】
又、下部ボルト止め構造52及び上部ボルト止め構造60は、図6及び図7に示すように、階段部24の最下段24a及び最上段24bを骨組12に対して取り付けるためのものである。このため、これらのボルト止め構造52、60を介して骨組12に取り付けられる階段部24を、後付け可能な1つの部品として取り扱うことができる。更に、下部取付金70は、図10(b)に示すように、2つのパネル40、42の各々の下方部を階段部24に接続するためのものであり、上部取付金74は、2つのパネル40、42の各々の上方部を骨組12に取り付けるためのものである。このため、これらの取付金70、74を介して階段部24及び骨組12に取り付けられる2つのパネル40、42の各々も、階段部24よりも後に後付け可能な1つの部品として取り扱うことができる。
【0031】
従って、鉄道車両80の製作時に、階段部24及び2つのパネル40、42の各々を、それらを構成する複数の部品を先組みして必要な加工を施した状態で、現物の車両に搬入して取り付けることができる。これにより、階段部24や2つのパネル40、42を構成する各部品の、現物の車両における位置出しなどの必要をなくすことができる上に、階段部24や2つのパネル40、42を構成する各部品の組み付けや加工を、現物の車両ではなく工場などで効率的に行うことができる。このため、昇降階段通路86の組み立て時間を大幅に低減することが可能となる。更に、階段部24や2つのパネル40、42を構成する各部品の先組みや、ボルト止め構造52、60及び取付金70、74を利用した階段部24や2つのパネル40、42の取り付けにより、現物の車両での溶接作業を減らすことができるため、昇降階段通路86の品質を向上させることも可能となる。
【0032】
又、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、適用先の昇降階段通路86が、平面視で曲がりながら出入台84と客室との間を接続するものであり、図2及び図3に示すように、車両構体に設けられる骨組12に、平面視で曲がる態様の昇降階段通路86の、その曲がりの中心近傍に立設される仕切柱14が含まれている。このような仕切柱14は、強度の確保のために必要であるが、その設置位置の関係上、先組みされた階段部24が現物の車両に搬入される際に、階段部24の設置位置までの移動や方向転換の妨げになる虞がある。しかしながら、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10の仕切柱14は、現物の車両で階段部24が設置される高さ範囲の少なくとも一部にわたる中途部分14bが、仕切柱14の上端側14a及び下端側14cから分割可能な3分割構造を有している。これにより、階段部24の搬入時に仕切柱14の中途部分14bを取り外していることで、仕切柱14が階段部24に干渉することを防止することができるため、仕切柱14の設置位置の変更などで強度に影響を与えることなく、階段部24を設置位置まで搬入することができる。
【0033】
しかも、仕切柱14の上端及び下端は、作業性などの観点から階段部24の搬入前に車両構体に溶接などで接続されていることが望ましいが、上述したような3分割構造によって、仕切柱14の上端側14a及び下端側14cのみの車両構体に対する接続を実現することができる。更に、3分割構造の分割部16である、仕切柱14の上端側14aと中途部分14bとの間、及び、中途部分14bと下端側14cとの間は、ボルトを介して接続されるようになっている。このため、仕切柱14の取り付けの作業性を低下させることなく、階段部24の搬入作業を問題なく行うことが可能となる。なお、仕切柱14の分割部16の位置は、鉄道車両80内で階段部24の向きを変えられること、階上室側と階下室側との作業性共通化、及び強度に影響を及ぼさないことを考慮して決定すればよい。
【0034】
更に、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、図4及び図5に示すように、階段部24が床材30と滑り止めステップ32と側壁34とを含み、それらが階段部24に先組みされるものである。すなわち、床材30は踏板26及び蹴上28を覆うように取り付けられ、滑り止めステップ32は床材30の上から踏板26の端部にネジなどで取り付けられ、側壁34は踏板26及び蹴上28の側方に溶接など取り付けられ、更に必要に応じて塗装などの加工が施される。ここまで先組みした階段部24を現物の車両に取り付けることができるため、昇降階段通路86の組み立て時間をより低減することができる。
【0035】
又、鉄道車両80の製作時に、現物の車両に搬入される2つのパネル40、42の各々の下方部は、図10(b)に示すように、下部取付金70を介して階段部24の側壁34に接続され、その接続箇所は、階段部24の踏板26や蹴上28の側方端部ではなく、そこに接続された側壁34に応じた高さに位置することになる。このため、接続状態を見据えた各部材の位置関係の工夫などによって、昇降階段通路86を通る乗客から接続箇所を視認され難くすることができ、パネル40、42と側壁34との間に押面を設ける必要がなくなる。これにより、位置出しなどの押面の取り付けのための各種の作業を不要にすることができるため、現物の車両での作業を低減することができる。
【0036】
加えて、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、図6に示すように、上部ボルト止め構造60を介して階段部24の最上段24bが骨組12に対して取り付けられた状態で、上部ボルト止め構造60のボルト穴62が、階上室の床材76と、階段部24の最上段24bの滑り止めステップ32とによって覆われるものである。すなわち、上部ボルト止め構造60においてボルト止めした後に、そのボルト穴62の上に階上室の床材76を敷設し、更にその上から最上段24bの滑り止めステップ32を取り付ければよい。これにより、上部ボルト止め構造60のボルト穴62を隠すことができ、乗客から視認されなくなるため、昇降階段通路86の美観が損なわれることを防止することができる。
【0037】
又、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、図7に示すように、下部ボルト止め構造52を介して階段部24の最下段24aが骨組12に対して取り付けられた状態で、下部ボルト止め構造52のボルト穴54が、出入台84の床材78によって覆われるものである。すなわち、下部ボルト止め構造52においてボルト止めした後に、そのボルト穴54の上から出入台84の床材78を敷設すればよい。これにより、下部ボルト止め構造52のボルト穴54も隠すことができ、乗客から視認されなくなるため、これによっても昇降階段通路86の美観が損なわれることを防止することができる。
【0038】
更に、本発明の実施の形態に係る昇降階段通路の組み立て構造10は、図8及び図9に示すように、2つのパネル40、42の各々が、板材44の表面44aに化粧シート46が貼り付けられて構成され、その板材44の裏面44bに下部取付金70及び上部取付金74が溶接などで取り付けられたものである。そして、そのような状態まで先組みした2つのパネル40、42を現物の車両に取り付けることができるため、昇降階段通路86の組み立て時間をより低減することができる。更に、パネル40、42を現物の車両に設置した状態で、板材44の裏面44bに取り付けられた下部取付金70及び上部取付金74は、昇降階段通路86の内側に向けられ化粧シート46が貼り付けられた板材44の表面44a側から視認されなくなる。このため、昇降階段通路86の美観を損うことなく、下部取付金70及び上部取付金74を介して2つのパネル40、42を取り付けることが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
10:昇降階段通路の組み立て構造、12:骨組、14:仕切柱、14a:上端側、14b:中途部分、14c:下端側、16:分割部、24:階段部、24a:最下段、24b:最上段、26:踏板、28:蹴上、30:床材、32:滑り止めステップ、34:側壁、40:外側パネル、42:内側パネル、44:板材、44a:表面、44b:裏面、46:化粧シート、52:下部ボルト止め構造、54:ボルト穴、60:上部ボルト止め構造、62:ボルト穴、70:下部取付金、74:上部取付金、76:階上室の床材、78(78a、78b):出入台の床材、80:鉄道車両、84:出入台、86:昇降階段通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10