(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】パレット横行機構
(51)【国際特許分類】
E04H 6/06 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
E04H6/06 W
(21)【出願番号】P 2021026351
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】712005920
【氏名又は名称】新明和パークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 淳
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-060884(JP,A)
【文献】特開平07-309236(JP,A)
【文献】特開2009-127402(JP,A)
【文献】特開2001-115674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支柱で囲まれた空間を移動する複数のパレットを備えた立体駐車装置において、車両の出庫方向を前方とする前後方向及び横方向を基準として、前記支柱に取り付けられて前記横方向に延在する前側レール及び後側レールに沿って移動し、各パレットを横行動作させるパレット横行機構であって、
前記前側レール上を走行するための、前記横方向に互いに離れた樹脂製の2つの前輪と、
前記後側レール上を走行するための、前記横方向に互いに離れた樹脂製の2つの後輪と、
該2つの後輪の間において前記後側レールに接触しながら移動されるガイド部材と、を含み、
前記2つの後輪が、前記前後方向の一方側につばを有する片つば車輪であると共に、前記ガイド部材が、前記後側レールの、前記前後方向の前記一方側と反対の他方側に接触ないし近接して、前記後側レールの上端よりも下方へ突出する突出部を有することを特徴とするパレット横行機構。
【請求項2】
前記ガイド部材は、前記他方側につばを有して前記後側レール上を走行する、樹脂製の片つば車輪であることを特徴とする請求項1記載のパレット横行機構。
【請求項3】
前記ガイド部材は、少なくとも前記他方側から前記後側レールに摺接するシューであることを特徴とする請求項1記載のパレット横行機構。
【請求項4】
前記2つの前輪は、つば無しの車輪であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のパレット横行機構。
【請求項5】
前記ガイド部材の周囲の少なくとも一部を覆うと共に、前記後側レールの前記他方側の近接位置で前記後側レールの上端よりも下方へ突出する突出部分を有する防護部材を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のパレット横行機構。
【請求項6】
前記複数のパレットのうち、横行動作及び昇降の双方を行うパレット毎に、請求項1から5のいずれか1項記載のパレット横行機構を備えたことを特徴とする立体駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパレットを備えた立体駐車装置において各パレットを横行動作させるパレット横行機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両を格納する複数のパレットを備える立体駐車装置は、限られたスペースに多くの車両を駐車するために利用され、その発明も多岐にわたっている(例えば、特許文献1参照)。又、立体駐車装置が備える複数のパレットには、上下方向のみに移動するパレット、横方向のみに移動するパレット、上下方向及び横方向の双方に移動するパレットなど、立体駐車装置の構成に合わせた様々なパレットが含まれている。これらのパレットのうち、地上段よりも上方において横方向に移動するパレットは、立体駐車装置の支柱に取り付けられた前後2本のレールに沿って移動する横行機構を介して横方向に移動される。そのような横行機構は、2本のレール上を走行するための複数の車輪を有しており、錆が発生して削れるなどの問題を回避するために、金属製の車輪よりも樹脂製の車輪が用いられる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、金属製の車輪を使用していた従来の横行機構は、後側のレール上を走行する後輪が両つば車輪であることで、後輪側でのみ一元的に前後位置を規制し、2本のレール間距離の寸法公差の緩和を図っていた。しかしながら、その両つばの後輪を樹脂製のものにすると、制動時の挙動や車輪及びレールの向きの誤差などに起因して、後側のレールによって後輪の両つばが内側から押し拡げられるような負荷が作用し、後輪の異常摩耗が発生して動作に支障を来す虞がある。これを回避するために、前側のレール上を走行する前輪と上記の後輪とを、互いに反対側につばを有する片つば車輪にすることを検討すると、2本のレール間距離の精度出しに手間がかかり、コストが増大してしまうことが懸念される。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、横行機構の2本のレール間距離の寸法公差を緩和しながら、樹脂製の車輪の異常摩耗を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。そのため、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)複数の支柱で囲まれた空間を移動する複数のパレットを備えた立体駐車装置において、車両の出庫方向を前方とする前後方向及び横方向を基準として、前記支柱に取り付けられて前記横方向に延在する前側レール及び後側レールに沿って移動し、各パレットを横行動作させるパレット横行機構であって、前記前側レール上を走行するための、前記横方向に互いに離れた樹脂製の2つの前輪と、前記後側レール上を走行するための、前記横方向に互いに離れた樹脂製の2つの後輪と、該2つの後輪の間において前記後側レールに接触しながら移動されるガイド部材と、を含み、前記2つの後輪が、前記前後方向の一方側につばを有する片つば車輪であると共に、前記ガイド部材が、前記後側レールの、前記前後方向の前記一方側と反対の他方側に接触ないし近接して、前記後側レールの上端よりも下方へ突出する突出部を有するパレット横行機構(請求項1)。
【0008】
本項に記載のパレット横行機構は、車両の出庫方向を前方とした前後方向及び横方向を有する立体駐車装置において、立体駐車装置の支柱に取り付けられて横方向に延在した前側レール及び後側レールに沿って移動して、各パレットを横行動作させるものであり、2つの前輪、2つの後輪、及びガイド部材を含んでいる。2つの前輪は、前側レール上を走行するための樹脂製のものであり、横方向に互いに離れて設けられている。同様に、2つの後輪は、後側レール上を走行するための樹脂製のものであり、横方向に互いに離れて設けられている。ガイド部材は、横方向について2つの後輪の間に設けられ、パレット横行機構の移動の際に後側レールに接触しながら移動される。又、2つの後輪は、前後方向の一方側につばを有する片つば車輪であり、ガイド部材は、前後方向について後輪のつばが設けられた一方側と反対の他方側に突出部を有している。より詳しくは、ガイド部材の突出部は、後側レールの上記の他方側に接触ないし近接するように、後側レールの上端よりも下方へ突出している。
【0009】
上記のような構成により、2つの後輪のつばとガイド部材の突出部とによって、後側レールが前後方向の両側から挟み込まれるような態様となるため、後輪やガイド部材が設けられた後方側でのみパレット横行機構の前後位置が規制されるものとなる。これにより、前側レールと後側レールとの間の距離の寸法公差が緩和されることとなり、レールが取り付けられた支柱に曲がりや反りが発生した場合の、レール間距離の調整の手間が軽減されるものである。しかも、後輪は両つばではなく片つばの車輪であるため、車輪やレールの向きに誤差があったとしても、後側レールによって両つばが内側から押し拡げられるような負荷が作用することはなく、後輪の摩耗が軽減される。これにより、前輪や後輪が、錆が発生することのない樹脂製の車輪であるにも関わらず、異常摩耗が防止されるものとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記ガイド部材は、前記他方側につばを有して前記後側レール上を走行する、樹脂製の片つば車輪であるパレット横行機構(請求項2)。
本項に記載のパレット横行機構は、ガイド部材が、前後方向について後輪のつばが設けられた一方側と反対の他方側につばを有する樹脂製の片つば車輪になっており、後輪と同じく後側レール上を走行するものである。すなわち、ガイド部材の車輪のつばが突出部に相当し、2つの後輪のつばとガイド部材をなす片つば車輪のつばとによって、後側レールが前後方向の両側から挟み込まれるものである。このため、後輪と同様に、ガイド部材をなす車輪の摩耗が抑制されながら、後方側でのみパレット横行機構の前後位置が規制されるものとなる。しかも、ガイド部材をなす片つば車輪が後側レール上を走行するため、パレット横行機構の重心位置などが考慮されて、2つの後輪の間におけるガイド部材の設置位置が調整されることで、重量などにより2つの後輪に作用する反力が概ね均等化され、これによっても摩耗が抑制されるものである。
【0011】
(3)上記(1)項において、前記ガイド部材は、少なくとも前記他方側から前記後側レールに摺接するシューであるパレット横行機構(請求項3)。
本項に記載のパレット横行機構は、ガイド部材が、少なくとも後輪のつばが設けられた前後方向の一方側と反対の他方側から、後側レールに対して摺接するシューになっており、その摺接する部位がガイド部材の突出部をなすものである。これにより、後方側によってのみパレット横行機構の前後位置が規制されながら、ガイド部材が車輪などで構成される場合と比較してコストが低減されるものである。更に、ガイド部材を構成するシューが、上方からも後側レールに対して摺接するような形状であることで、重量などにより2つの後輪に作用する反力が軽減され、2つの後輪の摩耗が抑制されるものとなる。しかも、ガイド部材を構成するシューの、後側レールに摺接する面積の大きさが調整されることで、2つの後輪及びシューに作用する負荷配分が調整されるものとなる。
【0012】
(4)上記(1)から(3)項において、前記2つの前輪は、つば無しの車輪であるパレット横行機構(請求項4)。
本項に記載のパレット横行機構は、前側レール上を走行するための樹脂製の2つの前輪が、つば無しの車輪であることで、両つばや片つばの車輪と比較して、材料費の低減が図られるものである。更に、前輪がつば無しの車輪であっても、パレット横行機構の前後位置の規制は、後輪及びガイド部材が設けられた後方側でのみ実現されるため問題はない。むしろ、前輪がつば無しの車輪であることで、前側レール及び後側レールのレール間距離に誤差があっても、前輪のつばが前側レールに引っかかるなどの問題が発生せず、柔軟に対応するものとなる。
【0013】
(5)上記(1)から(4)項において、前記ガイド部材の周囲の少なくとも一部を覆うと共に、前記後側レールの前記他方側の近接位置で前記後側レールの上端よりも下方へ突出する突出部分を有する防護部材を含むパレット横行機構(請求項5)。
本項に記載のパレット横行機構は、ガイド部材の周囲の少なくとも一部を覆う防護部材を含み、この防護部材が、ガイド部材の突出部に類似した、後側レールの、前後方向の他方側の近接位置で、後側レールの上端よりも下方へ突出する突出部分を有するものである。これにより、ガイド部材が防護されると共に、万が一ガイド部材の突出部が破損したとしても、その突出部と同様の役割が防護部材の突出部分によって果たされ、パレット横行機構の前後位置の規制が、機能が損なわれることなく引き続き行われるものである。
【0014】
(6)前記複数のパレットのうち、横行動作及び昇降の双方を行うパレット毎に、上記(1)から(5)のいずれか1項記載のパレット横行機構を備えた立体駐車装置(請求項6)。
本項に記載の立体駐車装置は、複数の支柱で囲まれた空間を移動する複数のパレットのうち、横行動作及び昇降の双方を行うパレット毎に、上記(1)から(5)項のいずれか1項記載のパレット横行機構を備えたものである。これにより、上記(1)から(5)項のパレット横行機構と同様の作用を奏するものとなり、特に、車輪が樹脂製であることで錆の発生を防止しながらも、横行動作及び昇降の双方を行うパレットの設置段毎に設けられる、前側レール及び後側レールのレール間距離の調整の手間が軽減されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明はこのように構成したので、横行機構の2本のレール間距離の寸法公差を緩和しながら、樹脂製の車輪の異常摩耗を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態にパレット横行機構の平面図及び側面図である。
【
図2】
図1のパレット横行機構の後輪側を拡大して示す平面図及び後面図である。
【
図3】
図1のパレット横行機構のガイド部材の近傍を側方から示す一部断面図である。
【
図4】ガイド部材に取り付けられている防護部材の三面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るパレット横行機構を備えた、本発明の実施の形態に係る立体駐車装置を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。又、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、例えば
図5に示すような、複数の支柱82と複数の梁84とによって構成された略矩形の構造体に、複数のパレット72が移動可能に支持された立体駐車装置70において、パレット72を横行動作させるものである。具体的に、パレット横行機構10は、
図1に示すように、横行枠16、2つの前輪18、2つの後輪20、ガイド部材26、及び防護部材32などを含んでいる。なお、
図1~
図3及び
図5では、立体駐車装置70における車両の出庫方向を前方とした方向を基準に、前後方向を符号X、横方向を符号Y、高さ方向を符号Zによって示している。
【0018】
横行枠16は、パレット横行機構10の本体部分を担うものであり、本実施形態では前後方向X及び横方向Yに延在する平面視略矩形の枠状をなし、上述した2つの前輪18、2つの後輪20、ガイド部材26の他、パレット72を昇降させるためのパレット昇降機構50が取り付けられている。ここでの詳しい説明は控えるが、パレット昇降機構50は、横行枠16からパレット72の前方側を吊り下げるための前吊ワイヤロープ52、横行枠16からパレット72の後方側を吊り下げるための後吊ワイヤロープ54、前吊ワイヤロープ52や後吊ワイヤロープ54の繰り出しや巻き取りを行うためのドラム56、ドラム56を回転させるためのモータ58などを含み、必要に応じてパレット72を昇降させるようになっている。
【0019】
2つの前輪18と2つの後輪20とは、前後方向X及び横方向Yに互いに離れて、横行枠16の4つの隅近傍に回転可能に設置されている。本実施形態の2つの前輪18は、例えばナイロンなどの樹脂製のつば無し車輪であり、立体駐車装置70の前部支柱82A間を接続するように取り付けられた梁84A上の、前側レール12上を走行するように設置されている。又、本実施形態の2つの後輪20は、例えばナイロンなどの樹脂製の片つば車輪であり、立体駐車装置70の後部支柱82B間を接続するように取り付けられた梁84B上の、後側レール14上を走行するように設置されている。本実施形態では、後輪20のつば22が、前後方向Xについての前側(
図1における左側)に設けられており、後側レール14の前側において、後側レール14の上端よりも下方へ突出している。
【0020】
又、
図1(a)における上側の2つの隅に設置された前輪18と後輪20とは、車軸38で接続され、
図1(a)における下側の2つの隅に設置された前輪18と後輪20とは、車軸40で接続されている。そして、それらの車軸38、40のうちの一方、本実施形態では車軸38が、図示しないモータ、スプロケット、チェーンなどを介して駆動されることで、車軸38に接続された前輪18及び後輪20が回転される。このようにして、前側レール12及び後側レール14に沿って、横方向Yに横行枠16が移動され、横行枠16に取り付けられたパレット昇降機構50や、横行枠16から吊り下げられたパレット72が、横行枠16と共に横移動されるようになっている。
【0021】
一方、ガイド部材26は、
図1(a)及び
図2に示されるように、2つの後輪20の横方向Yについての間において、後側レール14に接触しながら移動するように、横行枠16に取り付けられている。更に、ガイド部材26は、後側レール14の、後輪20のつば22が設けられた前側とは反対の後側(
図1における右側、
図2(a)における下側)に接触ないし近接して、後側レール14の上端よりも下方へ突出する突出部28を有している。具体的に、本実施形態のガイド部材26は、後側レール14上を走行する樹脂製の片つば車輪で構成されており、その片つば車輪のつばが、ガイド部材26の突出部28を形成している。すなわち、ガイド部材26を構成する片つば車輪のつば28は、前後方向Xについての後側に設けられ、
図3で確認できるように、後側レール14の後側(
図3における右側)において、後側レール14の上端よりも下方へ突出している。
【0022】
他方、防護部材32は、
図4に示されているように、2つの側壁36を有しており、それらの各側壁36には、下方へ突出した突出部分34が設けられている。このような防護部材32は、
図1~
図3に示されているように、2つの側壁36が、ガイド部材26の横方向Yについての両側方を覆う態様で、ガイド部材26の近傍に取り付けられている。本実施形態では、防護部材32を介して、ガイド部材26が横行枠16に取り付けられている。そして、
図3で確認できるように、防護部材32の突出部分34が、ガイド部材26の突出部(つば)28と同様に、後側レール14の後側(
図3における右側)において、後側レール14の上端よりも下方へ突出している。
なお、
図2(b)では、パレット昇降機構50のモータ58の図示を省略しており、符号42で示されているのは、パレット横行機構10やパレット昇降機構50に電力を供給するための電線ポールである。
【0023】
ここで、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、
図1~
図4に示された構成に限定されるものではない。例えば、ガイド部材26が、片つばの車輪ではなく、前後方向Xについて後輪20のつば22が設けられた方向とは反対の方向から、後側レール14に対して摺接する部位(突出部28に相当)を有するシューであってもよい。この場合、シユーが後側レール14の上側からも摺接する形状であることが好ましく、シューの材料には、ガイド部材26の機能を満たし得る適切な材料が使用される。又、片つば車輪である後輪20のつば22が前後方向Xの後方側に設けられると共に、ガイド部材26の突出部28が前後方向Xの前方側に設けられてもよい。更に、後側レール14の上端よりも下方へ突出する突出部分34を有していれば、防護部材32が
図4で示された形状と別の形状であってもよい。
【0024】
続いて、
図5には、上述した本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10を備えた、本発明の実施の形態に係る立体駐車装置70の構成の一例を示している。図示のように、立体駐車装置70は、前方側に立設された複数の前部支柱82A、後方側に立設された複数の後部支柱82B、それらの支柱82A、82Bの間を接続するように設けられた複数の梁84、複数のパレット72、及び開閉ゲート76(76a~76c)を含んでいる。
図5の実施形態において、立体駐車装置70は、地上4段3連基(高さ方向Zに4段、横方向Yに3列)の構造であり、複数のパレット72として9基のパレット72a~72iを備えている。
【0025】
複数のパレット72a~72iのうち、2基のパレット72b、72cは、車両を入出庫する高さ位置で横方向Yに横行移動のみ行い、4基のパレット72d~72gは、立体駐車装置70の利用者による呼び出し操作に応じて、入出庫位置(
図5においてパレット72a~72cがある位置)まで、高さ方向Z及び横方向Yに移動可能なものである。一方、残り3基のパレット72a、72h、72iは、高さ方向Zに昇降のみ行うものである。又、開閉ゲート76a~76cの各々は、その後面側の入出庫位置に所望のパレット72が呼び出された後に開かれ、車両の入出庫が終わった後に、利用者の操作により閉じられるものである。
【0026】
そして、上述した複数のパレット72a~72iのうち、高さ方向Z及び横方向Yに移動可能な4基のパレット72d~72g毎に、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10が具備されている。すなわち、複数の梁84のうち、4本の前部支柱82A間を接続するように設けられた2本の梁84Aの各々に、前側レール12が設置され、4本の後部支柱82B間を接続するように設けられた2本の梁84Bの各々に、後側レール14が設置されている。そして、下側の梁84A上の前側レール12と、下側の梁84B上の後側レール14とに沿って、パレット72d、72eを横行動作させるパレット横行機構10の横行枠16の各々が、パレット72d、72eを昇降させるパレット昇降機構50と共に移動するようになっている。同様に、上側の梁84A上の前側レール12と、上側の梁84B上の後側レール14とに沿って、パレット72f、72gを横行動作させるパレット横行機構10の横行枠16の各々が、パレット72f、72gを昇降させるパレット昇降機構50と共に移動するようになっている。
【0027】
又、立体駐車装置70は、詳しい説明は控えるが、上述した複数のパレット72a~72i、開閉ゲート76a~76c、及び、パレット横行機構10の他にも、多くの構成要素を含んでいる。それらの構成要素には、例えば、利用者により立体駐車装置70の各操作を行うための入力が行われる操作盤、立体駐車装置70全体の制御を担う制御部、制御部による制御に応じてパレット72の移動や開閉ゲート76の開閉動作を行うための動力を発生して伝達する駆動部、入出庫位置にある各パレット72の周辺の物体を検知する複数の光電センサ、及び、立体駐車装置70の内部や周辺についての無人確認入力が行わる無人確認入力器などが含まれる。
【0028】
なお、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10が適用される立体駐車装置70は、
図5に示したような構造に限定されるものではない。すなわち、立体駐車装置70は、高さ方向Zや横方向Yにより多くの(又はより少ない)パレット72を備えた構成であってもよく、地上だけではなく地下にパレット72を備えた構成であってもよい。又、高さ方向Zや横方向Yだけではなく、前後方向Xに複数列のパレット72を備えた構成であってもよい。何れの構造であっても、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、支柱82に取り付けられた前側レール12及び後側レール14に沿って移動されるパレット72に対して適用される。
【0029】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、
図5に示すような、車両の出庫方向を前方とした前後方向X及び横方向Yを有する立体駐車装置70において、立体駐車装置70の支柱82に取り付けられて横方向Yに延在した前側レール12及び後側レール14に沿って移動して、各パレット72を横行動作させるものであり、
図1に示すように、横行枠16、2つの前輪18、2つの後輪20、及びガイド部材26を含んでいる。2つの前輪18は、前側レール12上を走行するための樹脂製のものであり、横方向Yに互いに離れて設けられている。同様に、2つの後輪20は、後側レール14上を走行するための樹脂製のものであり、横方向Yに互いに離れて設けられている。
【0030】
ガイド部材26は、横方向Yについて2つの後輪20の間に設けられ、横行枠16の移動の際に後側レール14に接触しながら移動される。又、2つの後輪20は、前後方向Xの前方側につば22を有する片つば車輪であり、ガイド部材26は、
図2に示すように、前後方向Xについて後輪20のつば22が設けられた前方側と反対の後方側に突出部28を有している。より詳しくは、ガイド部材26の突出部28は、
図3で確認できるように、後側レール14の後方側に接触ないし近接するように、後側レール14の上端よりも下方へ突出している。
【0031】
上記のような構成により、2つの後輪20のつば22とガイド部材26の突出部28とによって、後側レール14が前後方向Xの両側から挟み込まれるような態様となるため、後輪20やガイド部材26が設けられた後方側でのみ、パレット横行機構10(横行枠16)の前後位置を規制することができる。これにより、前側レール12と後側レール14との間の距離の寸法公差を緩和することができ、延いては、レール12、14や車軸38、40の要求精度の緩和も図ることができる。このため、レール12、14が取り付けられた支柱82に曲がりや反りが発生した場合でも、レール間距離の調整の手間を軽減することが可能となる。しかも、後輪20は両つばではなく片つばの車輪であるため、車輪やレール14の向きに誤差があったとしても、後側レール14によって両つばが内側から押し拡げられるような負荷が作用することはなく、後輪20の摩耗を軽減することができる。これにより、前輪18や後輪20が、錆が発生することのない樹脂製の車輪であるにも関わらず、異常摩耗を防止することが可能となる。
【0032】
又、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、
図1に示すように、前側レール12上を走行するための樹脂製の2つの前輪18が、つば無しの車輪であることで、両つばや片つばの車輪と比較して、材料費の低減を図ることができる。更に、前輪18がつば無しの車輪であっても、パレット横行機構10の前後位置の規制は、後輪20及びガイド部材26が設けられた後方側でのみ実現することができるため問題はない。むしろ、前輪18がつば無しの車輪であることで、前側レール12及び後側レール14のレール間距離に誤差があっても、前輪18のつばが前側レール12に引っかかるなどの問題が発生せず、柔軟に対応することができる。
【0033】
更に、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、
図2及び
図3に示すように、ガイド部材26が、前後方向Xについて後輪20のつば22が設けられた前方側と反対の後方側につば28を有する樹脂製の片つば車輪になっており、後輪20と同じく後側レール14上を走行するものである。すなわち、ガイド部材26の車輪のつば28が突出部28に相当し、2つの後輪20のつば22とガイド部材26をなす片つば車輪のつば28とによって、後側レール14が前後方向Xの両側から挟み込まれるものである。このため、後輪20と同様に、ガイド部材26をなす車輪の摩耗を抑制しながら、後方側でのみパレット横行機構10の前後位置を規制することが可能となる。しかも、ガイド部材26をなす片つば車輪が後側レール14上を走行するため、パレット横行機構10の重心位置などを考慮して、2つの後輪20の間におけるガイド部材26の設置位置を調整することで、重量などにより2つの後輪20に作用する反力を概ね均等化することができ、これによっても摩耗を抑制することができる。
【0034】
又、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、
図2~
図4に示すように、ガイド部材26の周囲の少なくとも一部を覆う防護部材32を含み、この防護部材32が、ガイド部材26の突出部28に類似した、後側レール14の、前後方向Xの後方側の近接位置で、後側レール14の上端よりも下方へ突出する突出部分34を有するものである。これにより、ガイド部材26を防護することができると共に、万が一ガイド部材26の突出部28が破損したとしても、その突出部28と同様の役割を防護部材32の突出部分34によって果たすことができ、パレット横行機構10の前後位置の規制を、機能を損なうことなく引き続き行うことが可能となる。
【0035】
一方、本発明の実施の形態に係るパレット横行機構10は、ガイド部材26が、少なくとも後輪20のつば22が設けられた前方側と反対の後方側から、後側レール14に対して摺接するシューであってもよく、この場合はその摺接する部位がガイド部材26の突出部28をなすものである。これにより、後方側によってのみパレット横行機構10の前後位置を規制しながら、ガイド部材26が車輪などで構成される場合と比較してコストを低減することができる。更に、ガイド部材26を構成するシューが、上方からも後側レール14に対して摺接するような形状であることで、重量などにより2つの後輪20に作用する反力を軽減することができ、2つの後輪20の摩耗を抑制することができる。しかも、ガイド部材26を構成するシューの、後側レール14に摺接する面積の大きさを調整することで、2つの後輪20及びシューに作用する負荷配分を調整することもできる。
【0036】
他方、本発明の実施の形態に係る立体駐車装置70は、
図5に示すように、複数の支柱82や梁84で囲まれた空間を移動する複数のパレット72のうち、横行動作及び昇降の双方を行うパレット72d~72g毎に、上述したパレット横行機構10を備えたものである。これにより、パレット横行機構10と同様の作用効果を奏することができ、特に、車輪18、20が樹脂製であることで錆の発生を防止しながらも、横行動作及び昇降の双方を行うパレット72d~72gの設置段毎に設けられる、前側レール12及び後側レール14のレール間距離の調整の手間を軽減することができる。
【符号の説明】
【0037】
10:パレット横行機構、12:前側レール、14:後側レール、16:横行枠、18:2つの前輪、20:2つの後輪、22:つば、26:ガイド部材、28:突出部(つば)、32:防護部材、34:突出部分、70:立体駐車装置、72(72a~72i):複数のパレット、82(82A、82B):支柱、X:前後方向、Y:横方向