(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】3次元計測装置及び3次元計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20241114BHJP
G06T 5/50 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G06T5/50
(21)【出願番号】P 2021029622
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 友美
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075899(JP,A)
【文献】特開2004-125652(JP,A)
【文献】特開2015-087244(JP,A)
【文献】特開2016-008837(JP,A)
【文献】特開2001-124534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0225321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G06T 1/00
G06T 3/00
G06T 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相が相互に異なる複数種類の正弦波状の明度分布の縞パターンが物体に投影されるように投影装置を制御する投影制御部と、
1種類の前記縞パターンの投影において取得される前記物体の基礎画像の取得回数を決定する撮像回数決定部と、
複数種類の前記縞パターンのそれぞれの投影において前記基礎画像が前記取得回数だけ取得されるように撮像装置を制御する撮像制御部と、
前記取得回数の前記基礎画像を合成して複数種類の前記縞パターンのそれぞれに対応する複数の合成画像を生成する合成画像生成部と、
複数の前記合成画像に基づいて、前記物体の3次元形状を算出する3次元形状算出部と、を備え
、
前記撮像回数決定部は、前記合成画像の画素の輝度値が予め定められている閾値以上になるように、前記取得回数を決定する、
3次元計測装置。
【請求項2】
複数種類の前記縞パターンのそれぞれの投影において取得された前記基礎画像の画素の輝度値に基づいて、前記基礎画像の画素ごとに正弦波のパラメータを算出するパラメータ算出部を備え、
前記撮像回数決定部は、前記パラメータに基づいて前記取得回数を決定する、
請求項
1に記載の3次元計測装置。
【請求項3】
前記パラメータは、前記正弦波のコントラストを含み、
前記閾値は、前記コントラストの2倍の値よりも大きい、
請求項
2に記載の3次元計測装置。
【請求項4】
前記撮像回数決定部は、前記合成画像の画素の輝度値が前記コントラストの2倍の値よりも大きい条件において前記取得回数が最小になるように、前記取得回数を決定する、
請求項
3に記載の3次元計測装置。
【請求項5】
位相が相互に異なる複数種類の正弦波状の明度分布の縞パターンを物体に投影することと、
1種類の前記縞パターンの投影において取得される前記物体の基礎画像の取得回数を決定することと、
複数種類の前記縞パターンのそれぞれの投影において前記基礎画像を前記取得回数だけ取得することと、
前記取得回数の前記基礎画像を合成して複数種類の前記縞パターンのそれぞれに対応する複数の合成画像を生成することと、
複数の前記合成画像に基づいて、前記物体の3次元形状を算出することと、を含
み、
前記合成画像の画素の輝度値が予め定められている閾値以上になるように、前記取得回数を決定する、
3次元計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元計測装置及び3次元計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の3次元計測方法として、特許文献1に開示されているような位相シフト法が知られている。位相シフト法に基づいて物体の3次元形状を計測する場合、正弦波状の明度分布の縞パターンが位相シフトしながら物体に投影される。縞パターンが投影された物体が撮像されることにより、物体の画像が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば物体の表面の光反射率が低い場合、撮像装置により取得される物体の画像が不明瞭になる可能性がある。物体の画像が不明瞭になると、3次元計測の信頼性が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、3次元計測の信頼性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、位相が相互に異なる複数種類の正弦波状の明度分布の縞パターンが物体に投影されるように投影装置を制御する投影制御部と、1種類の縞パターンの投影において取得される物体の基礎画像の取得回数を決定する撮像回数決定部と、複数種類の縞パターンのそれぞれの投影において基礎画像が取得回数だけ取得されるように撮像装置を制御する撮像制御部と、取得回数の基礎画像を合成して複数種類の縞パターンのそれぞれに対応する複数の合成画像を生成する合成画像生成部と、複数の合成画像に基づいて、物体の3次元形状を算出する3次元形状算出部と、を備える、3次元計測装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、3次元計測の信頼性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る3次元計測装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る縞パターンを示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る正弦波のパラメータを示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る3次元計測方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る3次元計測方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。所定面のX軸と平行な方向をX軸方向とし、X軸と直交する所定面のY軸と平行な方向をY軸方向とし、所定面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。また、X軸を中心とする回転又は傾斜方向をθX方向とし、Y軸を中心とする回転又は傾斜方向をθY方向とし、Z軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZ方向とする。XY平面は所定面である。
【0011】
[3次元計測装置]
図1は、実施形態に係る3次元計測装置1を模式的に示す図である。3次元計測装置1は、位相シフト法に基づいて、物体Wの3次元形状を計測する。
図1に示すように、3次元計測装置1は、ステージ2と、投影装置3と、撮像装置4と、制御装置5とを備える。
【0012】
ステージ2は、計測対象である物体Wを支持する。
【0013】
投影装置3は、ステージ2に支持されている物体Wに縞パターンを投影する。投影装置3は、正弦波状の明度分布の縞パターンを位相シフトしながら物体Wに投影する。投影装置3は、光源31と、光変調素子32と、投影光学系33とを有する。光源31は、光を発生する。光変調素子32は、光源31から射出された光を光変調して縞パターンを生成する。光変調素子32として、デジタルミラーデバイス(DMD:Digital Mirror Device)、透過型液晶パネル、及び反射型液晶パネルが例示される。投影光学系33は、光変調素子32で生成された縞パターンを物体Wに投影する。
【0014】
撮像装置4は、縞パターンが投影された物体Wを撮像する。撮像装置4は、縞パターンが投影された物体Wの画像を取得する。撮像装置4は、結像光学系41と、撮像素子42とを有する。結像光学系41は、物体Wで反射した縞パターンの像を撮像素子42に形成する。撮像素子42は、結像光学系41を介して物体Wの画像を取得する。撮像素子42として、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)又はCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)が例示される。
【0015】
制御装置5は、コンピュータシステムを含む。制御装置5は、投影装置3及び撮像装置4を制御する。制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリ及びストレージを含む記憶装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施する。
【0016】
[制御装置]
図2は、実施形態に係る制御装置5を示す機能ブロック図である。制御装置5は、投影制御部51と、撮像制御部52と、基礎画像取得部53と、パラメータ算出部54と、撮像回数決定部55と、合成画像生成部56と、3次元形状算出部57とを有する。
【0017】
投影制御部51は、投影装置3を制御する。投影制御部51は、正弦波状の明度分布の縞パターンが位相シフトしながら物体Wに投影されるように投影装置3を制御する。すなわち、投影制御部51は、位相が相互に異なる複数種類の正弦波状の明度分布の縞パターンが物体Wに投影されるように投影装置3を制御する。
【0018】
投影装置3は、正弦波状の明度分布の縞パターンを位相シフトさせながら物体Wに投影する。投影装置3は、位相が相互に異なる少なくとも3種類の縞パターンを物体Wに投影する。実施形態において、投影装置3は、位相が相互に異なる4種類の縞パターンを物体Wに投影する。投影装置3は、位相がπ/2ずつ異なる4種類の縞パターンを物体Wに投影する。
【0019】
図3は、実施形態に係る縞パターンを示す図である。
図3に示すように、実施形態において、縞パターンは、位相シフト量が0°(初期位相=0)である第1縞パターンと、位相シフト量が90°(初期位相=π/2)である第2縞パターンと、位相シフト量が180°(初期位相=π)である第3縞パターンと、位相シフト量が270°(初期位相=3π/2)である第4縞パターンとを含む。投影装置3は、第1縞パターン、第2縞パターン、第3縞パターン、及び第4縞パターンのそれぞれを物体Wに順次投影する。
【0020】
撮像制御部52は、撮像装置4を制御する。撮像制御部52は、縞パターンが投影された物体Wが撮像装置4により撮像されるように、撮像装置4を制御する。
【0021】
基礎画像取得部53は、撮像装置4により撮像された物体Wの画像を示す基礎画像を撮像装置4から取得する。基礎画像は、1種類の縞パターンの投影において撮像装置4により取得される物体Wの画像である。第1縞パターンが投影された物体Wを撮像装置4が撮像した場合、基礎画像取得部53は、第1縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第1基礎画像を取得する。第2縞パターンが投影された物体Wを撮像装置4が撮像した場合、基礎画像取得部53は、第2縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第2基礎画像を取得する。第3縞パターンが投影された物体Wを撮像装置4が撮像した場合、基礎画像取得部53は、第3縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第3基礎画像を取得する。第4縞パターンが投影された物体Wを撮像装置4が撮像した場合、基礎画像取得部53は、第4縞パターンが投影された物体Wの画像を示す第4基礎画像を取得する。
【0022】
パラメータ算出部54は、複数種類の縞パターンのそれぞれの投影において取得された基礎画像の画素の輝度値に基づいて、基礎画像の画素ごとに正弦波のパラメータを算出する。
【0023】
基礎画像における座標(x,y)の画素の輝度値In(x,y)(n=0,1,2,3)は、以下の(1)式で表される。
【0024】
【0025】
(1)式において、A(x,y)は、撮像時の正弦波の輝度値のコントラストを示す。B(x,y)は、輝度値のバイアス成分を示す。θ(x,y)は、画素における正弦波の位相値を示す。
【0026】
パラメータ算出部54は、基礎画像の各画素の輝度値In(x,y)に基づいて、基礎画像の各画素それぞれの位相値θ(x,y)を算出する。位相値θ(x,y)は、4つの基礎画像(第1基礎画像、第2基礎画像、第3基礎画像、第4基礎画像)の同一画素における輝度値In(x,y)から、以下の(2)式に基づいて算出される。
【0027】
【0028】
(2)式において、I0(x,y)、I1(x,y)、I2(x,y)、及びI3(x,y)のそれぞれは、第1基礎画像、第2基礎画画像、第3基礎画像、及び第4基礎画像のそれぞれの同一画素における輝度値を示す。
【0029】
パラメータ算出部54は、基礎画像の画素ごとに正弦波のパラメータを算出する。正弦波のパラメータは、コントラストA(x,y)、バイアス成分B(x,y)、及び位相値θ(x,y)を含む。
【0030】
図4は、実施形態に係る正弦波のパラメータを示す図である。パラメータ算出部54は、(1)式、(2)式、及び撮像装置4によって観測される輝度値I
n(I
0,I
1,I
2,I
3)に基づいて、画素ごとに、正弦波のパラメータであるコントラストA(x,y)、バイアス成分B(x,y)、及び位相値θ(x、y)を算出することができる。また、パラメータ算出部54は、正弦波のパラメータに基づいて、画素における正弦波を推定することができる。
【0031】
図4に示すように、コントラストA(x,y)は、正弦波の振幅値を意味する。バイアス成分B(x,y)は、正弦波の振幅の中心値を意味する。
【0032】
撮像回数決定部55は、1種類の縞パターンの投影において取得される物体Wの基礎画像の取得回数Nを決定する。
【0033】
撮像制御部52は、複数種類の縞パターンのそれぞれの投影において基礎画像が取得回数Nだけ取得されるように撮像装置4を制御する。取得回数Nは、複数である。取得回数Nは、2以上の自然数である。例えば、第1縞パターンが物体Wに投影された場合、撮像制御部52は、第1縞パターンが投影された物体Wが取得回数Nだけ撮像されるように、撮像装置4を制御する。撮像装置4は、第1縞パターンが投影された物体Wを取得回数Nだけ撮像する。基礎画像取得部53は、取得回数Nと同じ数の第1基礎画像を取得する。第2縞パターンが物体Wに投影された場合、撮像制御部52は、第2縞パターンが投影された物体Wが取得回数Nだけ撮像されるように、撮像装置4を制御する。撮像装置4は、第2縞パターンが投影された物体Wを取得回数Nだけ撮像する。基礎画像取得部53は、取得回数Nと同じ数の第2基礎画像を取得する。第3縞パターンが物体Wに投影された場合及び第4縞パターンが物体に投影された場合も同様である。
【0034】
合成画像生成部56は、取得回数Nと同じ数の基礎画像を合成して、複数種類の縞パターンのそれぞれに対応する複数の合成画像を生成する。例えば、合成画像生成部56は、取得回数Nと同じ数の第1基礎画像を合成して、第1縞パターンに対応する第1合成画像を生成する。合成画像生成部56は、取得回数Nと同じ数の第2基礎画像を合成して、第2縞パターンに対応する第2合成画像を生成する。合成画像生成部56は、取得回数Nと同じ数の第3基礎画像を合成して、第3縞パターンに対応する第3合成画像を生成する。合成画像生成部56は、取得回数Nと同じ数の第4基礎画像を合成して、第4縞パターンに対応する第4合成画像を生成する。
【0035】
実施形態において、複数の基礎画像を合成することは、複数の基礎画像を加算処理することを含む。複数の基礎画像の加算処理は、複数の基礎画像の同一画素の輝度値In(x,y)を加算することを含む。これにより、基礎画像において低い輝度値In(x,y)の画素が存在しても、複数の輝度値In(x,y)が加算されることにより、合成画像においては、高い輝度値Jn(x,y)の画素が得られる。
【0036】
撮像回数決定部55は、合成画像の画素の輝度値Jn(x,y)が予め定められている閾値Th以上になるように、取得回数Nを決定する。
【0037】
実施形態において、撮像回数決定部55は、上述した正弦波のパラメータに基づいて、取得回数Nを決定する。実施形態において、閾値Thは、正弦波のコントラストAの2倍の値よりも大きくなるように定められる。すなわち、閾値Thは、基礎画像の画素の輝度値In(x,y)の最大値と最小値との差よりも大きい値に定められる。撮像回数決定部55は、合成画像の画素の輝度値Jn(x,y)がコントラストAの2倍の値よりも大きい条件において取得回数Nが最小になるように、取得回数Nを決定する。
【0038】
3次元形状算出部57は、複数の合成画像(第1合成画像、第2合成画像、第3合成画像、第4合成画像)に基づいて、物体Wの3次元形状を算出する。3次元形状算出部57は、複数の合成画像の各画素の位相値θに基づいて、合成画像の各画素に対応する物体Wの複数の点のそれぞれの高さデータを算出して、物体Wの3次元形状を算出する。
【0039】
[3次元計測方法]
次に、実施形態に係る3次元計測方法について説明する。
図5は、実施形態に係る3次元計測方法を示すフローチャートである。
図6は、実施形態に係る3次元計測方法を示す模式図である。
【0040】
投影制御部51は、位相が相互に異なる複数種類の正弦波状の明度分布の縞パターンが物体Wに投影されるように、投影装置3を制御する。投影装置3は、第1縞パターン、第2縞パターン、第3縞パターン、及び第4縞パターンのそれぞれを物体Wに順次投影する。撮像制御部52は、第1縞パターン、第2縞パターン、第3縞パターン、及び第4縞パターンのそれぞれが投影された物体Wが撮像装置4により順次撮像されるように、撮像装置4を制御する(ステップS1)。
【0041】
基礎画像取得部53は、第1縞パターンが投影された物体Wの第1基礎画像、第2縞パターンが投影された物体Wの第2基礎画像、第3縞パターンが投影された物体Wの第3基礎画像、及び第4縞パターンが投影された物体Wの第4基礎画像のそれぞれを取得する(ステップS2)。
【0042】
パラメータ算出部54は、基礎画像(第1基礎画像、第2基礎画像、第3基礎画像、第4基礎画像)の画素の輝度値In(x,y)が予め定められている閾値Th以上か否かを判定する(ステップS3)。
【0043】
ステップS3において、基礎画像の画素の輝度値In(x,y)が閾値Th以上であると判定された場合(ステップS3:Yes)、3次元形状算出部57は、複数の基礎画像に基づいて、物体Wの3次元形状を算出する(ステップS4)。
【0044】
すなわち、3次元形状算出部57は、1つの第1基礎画像と、1つの第2基礎画像と、1つの第3基礎画像と、1つの第4基礎画像とに基づいて、物体Wの3次元形状を算出する。
【0045】
ステップS3において、基礎画像の画素の輝度値In(x,y)が閾値Th以上ではない判定された場合(ステップS3:No)、撮像回数決定部55は、合成画像の画素の輝度値Jn(x,y)が予め定められている閾値Th以上になるように、1種類の縞パターンの投影において取得される物体Wの基礎画像の取得回数Nを決定する(ステップS5)。
【0046】
実施形態において、撮像回数決定部55は、合成画像の画素の輝度値Jn(x,y)がコントラストAの2倍の値よりも大きい条件において取得回数Nが最小になるように、取得回数Nを決定する。
【0047】
投影制御部51は、位相が相互に異なる複数種類の正弦波状の明度分布の縞パターンが物体Wに投影されるように、投影装置3を制御する。投影装置3は、第1縞パターン、第2縞パターン、第3縞パターン、及び第4縞パターンのそれぞれを物体Wに順次投影する。撮像制御部52は、複数種類の縞パターンのそれぞれの投影において基礎画像が取得回数Nだけ取得されるように、撮像装置4を制御する(ステップS6)。
【0048】
ステップS1において、基礎画像が1回だけ取得されている。ステップS3において取得回数Nが例えば4回であると決定された場合、撮像制御部52は、ステップS6において基礎画像が3回だけ取得されるように、撮像装置4を制御する。
【0049】
基礎画像取得部53は、3つの第1基礎画像、3つの第2基礎画像、3つの第3基礎画像、及び3つの第4基礎画像のそれぞれを取得する(ステップS7)。
【0050】
ステップS2の処理とステップS7の処理とを合わせて、基礎画像取得部53は、4つの第1基礎画像、4つの第2基礎画像、4つの第3基礎画像、及び4つの第4基礎画像のそれぞれを取得したことになる。
【0051】
実施形態において、4つの第1基礎画像のそれぞれを取得するときに光源31から射出される光の光量は、同一である。同様に、4つの第2基礎画像のそれぞれを取得するときに光源31から射出される光の光量と、4つの第3基礎画像のそれぞれを取得するときに光源31から射出される光の光量と、4つの第4基礎画像のそれぞれを取得するときに光源31から射出される光の光量とは、同一である。
【0052】
合成画像生成部56は、取得回数Nと同じ数の基礎画像を合成して、複数種類の縞パターンのそれぞれに対応する複数の合成画像を生成する(ステップS8)。
【0053】
実施形態において、合成画像生成部56は、4つの第1基礎画像を合成して、第1合成画像を生成する。合成画像生成部56は、4つの第2基礎画像を合成して、第2合成画像を生成する。合成画像生成部56は、4つの第3基礎画像を合成して、第3合成画像を生成する。合成画像生成部56は、4つの第4基礎画像を合成して、第4合成画像を生成する。
【0054】
3次元形状算出部57は、複数の合成画像に基づいて、物体Wの3次元形状を算出する(ステップS9)。
【0055】
すなわち、3次元形状算出部57は、1つの第1合成画像と、1つの第2合成画像と、1つの第3合成画像と、1つの第4合成画像とに基づいて、物体Wの3次元形状を算出する。
【0056】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、例えば物体Wの表面の光反射率が低く、1回の撮像で取得された基礎画像の画素の輝度値In(x,y)が低い場合、更に複数回の撮像が実施され、基礎画像が取得回数Nだけ取得される。基礎画像が取得回数Nだけ取得された後、取得回数Nと同じ数の基礎画像が合成されて合成画像が生成される。合成画像の画素の輝度値Jn(x,y)は高い。3次元形状算出部57は、高い輝度値Jn(x,y)の画素により構成された合成画像に基づいて、物体Wの3次元形状を算出することができる。これにより、3次元計測の信頼性の低下が抑制される。
【0057】
光源31から射出される光の光量を増大させることにより、基礎画像の画素の輝度値In(x,y)を高くすることができる。しかし、光源31から射出される光の光量を増大させると、光源31の発熱量が大きくなってしまう。また、撮像装置4のシャッター速度を遅くすることにより、基礎画像の画素の輝度値In(x,y)を高くすることができる。しかし、撮像装置4のシャッター速度を遅くすると、基礎画像がぶれてしまう可能性が高くなる。実施形態においては、1つの基礎画像の画素の輝度値In(x,y)が低い場合、複数の基礎画像が合成されて合成画像が生成される。これにより、光源31の発熱量が大きくなること及び基礎画像がぶれることが抑制された状態で、物体Wの3次元形状が精度良く算出される。
【0058】
撮像回数決定部55は、合成画像の画素の輝度値Jn(x,y)が予め定められている閾値Th以上になるように、取得回数Nを決定する。これにより、高い輝度値Jn(x,y)の画素により構成された合成画像が生成される。
【0059】
パラメータ算出部54は、基礎画像の各画素における正弦波のパラメータとして、正弦波のコントラストA、バイアス成分B、及び位相値θを算出する。撮像回数決定部55は、正弦波のコントラストAに基づいて、取得回数Nを決定する。これにより、高い輝度値Jn(x,y)の画素により構成された合成画像が生成される。
【0060】
閾値Thは、コントラストAの2倍の値よりも大きい。すなわち、閾値Thは、基礎画像の画素の輝度値In(x,y)の最大値と最小値との差よりも大きい。これにより、高い輝度値Jn(x,y)の画素により構成された合成画像が生成される。
【0061】
撮像回数決定部55は、合成画像の画素の輝度値Jn(x,y)がコントラストAの2倍の値よりも大きい条件において取得回数Nが最小になるように、取得回数Nを決定する。例えば、取得回数Nが3回では[Jn(x,y)≧2×A]であり、取得回数Nが4回以上では[Jn(x,y)<2×A]である場合、取得回数Nは5回には決定されず4回に決定される。これにより、撮像装置4による基礎画像の取得回数Nが不必要に多くなることが抑制される。したがって、3次元計測装置1の計測時間の長期化が抑制される。
【0062】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、基礎画像を取得回数Nだけ取得する場合、光源31の光量が変更されてもよい。例えば、上述のステップS1において光源31が第1光量で光を射出し、ステップS3において基礎画像の画素の輝度値In(x,y)が閾値Th以上ではない判定された場合、ステップS7において取得される基礎画像の画素の輝度値In(x,y)が高くなるように、ステップS6において光源31が第1光量よりも高い第2光量で光を射出してもよい。
【0063】
なお、物体Sの表面に光反射率が低い領域と光反射率が高い領域との両方が存在する場合、光反射率が高い領域に対応する合成画像は、基礎画像を加算処理するのではなく、基礎画像を平均化処理してもよい。複数の基礎画像の平均化処理は、複数の基礎画像の同一画素の輝度値In(x,y)の平均値を算出することを含む。これにより、基礎画像において高過ぎる輝度値In(x,y)の画素が存在しても、複数の輝度値In(x,y)が平均化されることにより、合成画像においては、適正な輝度値Jn(x,y)の画素が得られる。また、平均化処理により合成画像が生成されることにより、合成画像においてランダムノイズが低減される。
【符号の説明】
【0064】
1…3次元計測装置、2…ステージ、3…投影装置、4…撮像装置、5…制御装置、31…光源、32…光変調素子、33…投影光学系、41…結像光学系、42…撮像素子、51…投影制御部、52…撮像制御部、53…基礎画像取得部、54…パラメータ算出部、55…撮像回数決定部、56…合成画像生成部、57…3次元形状算出部、W…物体。