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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】照明用電源装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20241114BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20241114BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20241114BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241114BHJP
【FI】
G05F1/56 310E
H01L33/00 J
F21V23/00 120
F21V23/00 140
F21Y115:10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021031749
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132976
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】山田 信吾
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-201774(JP,A)
【文献】特開昭60-095619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光器と、
前記調光器により制御された交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路の出力電圧を定電圧化するシリーズレギュレータと、
前記シリーズレギュレータから出力された電圧をもとに前記調光器に保持電流を流すブリーダー回路と、を備え、
前記シリーズレギュレータは、スイッチング素子と、ツェナダイオードと、シャントレギュレータと、を含み、
前記スイッチング素子の制御端と基準電位との間に、前記ツェナダイオードと、前記シャントレギュレータとが直列に接続され
前記スイッチング素子の電流路の出力端と、前記ブリーダー回路とが接続され、
前記ツェナダイオードの端子間電圧が前記ブリーダー回路の動作下限電圧以上の電圧となるように設定されるとともに、
前記スイッチング素子における入力電圧が時間経過とともに低下したときに、前記シャントレギュレータの端子間電圧が低下する入力電圧において、前記ツェナダイオードには、前記ツェナダイオードの端子間電圧を一定値に保つ電流値が供給されていることを特徴とする照明用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LED(Light Emitting Diode)等の照明素子を有する照明器具に用いられる電源装置は、調光器と、整流回路と、フィルターと、シリーズレギュレータと、ブリーダー回路と、駆動回路と、を含んで構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、交流電源を全波整流した電圧をシリーズレギュレータに供給し、シリーズレギュレータの出力電圧を、発光制御を行う制御回路と、調光器を安定動作させるための保持電流を確保するブリーダー回路と、の電源とすることにより、電源の安定動作を実現させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-101548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の照明器具は、天井裏の断熱材に囲まれることがあり、この場合には、かなりの高温環境下で使用されることになる。また、従来、照明用電源装置で使用されるシリーズレギュレータには、通常、スイッチング素子と、ツェナダイオードと、抵抗と、が含まれている。
【0006】
上記したシリーズレギュレータで使用される、ツェナダイオードの端子間電圧は、正の温度特性を持ち、また、スイッチング素子がMOSFETのゲート-ソース間電圧のオン電圧は負の温度特性を持っている。
そのため、高温環境下ではツェナダイオードのツェナ電圧(端子間電圧)は上昇し、MOSFETのゲート閾値電圧(ゲート-ソース間電圧)は下降し、その結果としてシリーズレギュレータの出力電圧は常温時より上昇するという現象が起きる。
【0007】
このような高温環境下で、上記の現象を改善するためには、ツェナダイオードをシャントレギュレータに変更し、シリーズレギュレータの高温環境下での出力変動を減少させることが考えられる。
【0008】
しかしながら、シャントレギュレータが定電圧を保つために必要なカソード電流値としては、ツェナダイオードが定電圧を保つために必要なカソード電流よりも多い電流値が必要となる。
このことを図7図8を用いて説明する。なお、図7は、交流電圧がトライアック型調光器により位相制御出力されて、さらに整流回路により全波整流された電圧波形を例示したものであり、図2のVrecの電圧波形に相当する。また、図8は、図7のB部、電圧が0Vへ低下していく付近を拡大したものである。
ツェナダイオードを使用した場合のシリーズレギュレータの出力端電圧が、ブリーダー回路の安定動作下限電圧以下となる時間を時間tLとし、シャントレギュレータを使用した場合にシリーズレギュレータの出力端電圧が、ブリーダー回路の安定動作下限電圧以下となる時間を時間tBとすると、図8に示されるように、時間tBは、時間tLよりも(tL-tB)だけ早くなる。そのため、シャントレギュレータを使用すると、ブリーダー回路の安定動作下限電圧を超える期間が短くなる。
【0009】
詳しくは、シリーズレギュレータの構成部品にツェナダイオードを用いた場合は、図8に示されるように、シリーズレギュレータの入力端電圧が実線で示されるように低下した時に、シリーズレギュレータの出力端電圧は一点鎖線で示される特性となる。その結果、ブリーダー回路の安定動作下限電圧を超える、時間tLまでの期間では、ブリーダー回路は安定した動作が可能となる。
その一方で、シリーズレギュレータの構成部品にシャントレギュレータを用いた場合は、シリーズレギュレータの入力端電圧が実線で示されるように低下した時に、シリーズレギュレータの出力電圧は破線で示される特性となる。その結果、ブリーダー回路の安定動作下限電圧を超える、時間tBまでの期間(この期間は時間tLに比べて短い)でしかブリーダー回路は安定した動作が出来ず、それ以降の期間ではブリーダー回路の動作が不安定となる。
そのため、シャントレギュレータを用いた場合には、調光器を安定して動作させる保持電流が不足し、調光器の出力電圧が安定せず、照明素子のちらつきが発生してしまうという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、高温環境下で安定した電源電圧を供給するとともに、入力電圧が低下した場合においても、ブリーダー回路の安定動作時間を維持する照明用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、調光器と、前記調光器により制御された交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路の出力電圧を定電圧化するシリーズレギュレータと、前記シリーズレギュレータから出力された電圧をもとに前記調光器に保持電流を流すブリーダー回路とを備え、前記シリーズレギュレータは、スイッチング素子と、ツェナダイオードと、シャントレギュレータとを含み、前記スイッチング素子の制御端と基準電位との間に、前記ツェナダイオードと、前記シャントレギュレータと、が直列に接続されていることを特徴とする照明用電源装置を提案している。
【0012】
本発明の1またはそれ以上の実施形態に係る照明用電源装置によれば、シリーズレギュレータがシャントレギュレータを備えていることにより、ツェナダイオード単独で構成にする場合に比較してシリーズレギュレータの高温環境下での出力変動を減少させることができる。したがって、高温環境下での出力変動を安定化させることが可能となる。一方で、シャントレギュレータはツェナダイオードに比較し大きなカソード電流を流さなければ定電圧を維持することができず、シリーズレギュレータをシャントレギュレータ単独で構成した場合には、ブリーダー回路による調光器に流す保持電流が不足し、調光器の動作が不安定になってしまう。
これに対し、本発明によれば、シリーズレギュレータを構成するスイッチング素子の制御端と基準電位との間に、ツェナダイオードとシャントレギュレータとが直列に接続されているので、シリーズレギュレータに供給される電流量が減少した場合でも、ツェナダイオードを備えていることから、シャントレギュレータよりも少ない電流量により定電圧を保持することができる。
そのため、高温環境下での出力変動の安定化を図りながらも、電流量の減少にかかわらず、シャントレギュレータ単独で構成した場合に比較しブリーダー回路を安定動作させることが可能となる。よって、広い使用温度範囲で調光器を安定に動作させることができる。
【0013】
形態2:本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記スイッチング素子の電流路の出力端と、前記ブリーダー回路とが接続され、前記ツェナダイオードの端子間電圧と前記シャントレギュレータの端子間電圧との和が、前記ブリーダー回路の動作下限電圧以上の電圧となるように、前記ツェナダイオードの端子間電圧と、前記シャントレギュレータの端子間電圧とが設定されていることを特徴とする照明用電源装置を提案している。
【0014】
この構成によれば、ツェナダイオードの端子間電圧とシャントレギュレータの端子間電圧との和を、ブリーダー回路の安定動作下限電圧以上とすることにより、入力電圧が低下した場合においても、安定動作期間を広く維持することが可能となる。そのため、調光器が安定して保持電流を確保できるようになり、調光器を安定動作させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高温環境で安定した電源電圧を供給するとともに、入力電圧が低下した場合においても、ブリーダー回路が安定動作する期間を広く維持することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る照明用電源装置の構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る照明用電源装置の電圧符号入り構成図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る照明用電源装置のシリーズレギュレータの入力端電圧および出力端電圧の時間推移を示す図である。
図4図3に記載のA部を拡大したシリーズレギュレータの出力端電圧の時間推移を示す図である。
図5図3に記載のA部を拡大したブリーダー回路の安定動作下限電圧とシリーズレギュレータの出力端電圧の時間推移を示す図である。
図6】本発明の照明用電源装置の変形形態を示す構成図である。
図7】従来の照明用電源装置のシリーズレギュレータの入力端電圧および出力端電圧の時間推移を示す図である。
図8】従来の照明用電源装置における図7に記載のB部を拡大したシリーズレギュレータの出力端電圧の時間推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1から図5を用いて本実施形態に係る照明用電源装置について説明する。
なお、以下に記載する構成要素は、既存の構成要素などとの置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。
このため、以下の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0018】
[実施形態]
本実施形態に係る照明用電源装置1について、図1から図5を用いて説明する。
なお、図1に示されるように、本発明の調光器は、本実施形態における調光器100に相当し、スイッチング素子は、MOSFET106に相当し、ツェナダイオードは、ツェナダイオード108に相当し、シャントレギュレータは、シャントレギュレータ110に相当する。
また、本実施形態におけるシャントレギュレータ110には、電圧出力端109と、基準電位端111と、基準電圧入力端121と、が備えられている。
さらに、調光器を安定動作させるため調光器に保持電流を流すブリーダー回路は、本実施形態におけるブリーダー回路119に相当し、基準電位113は基準電位のために用意された基準電位発生回路、あるいはグラウンド電位に接続されている。
【0019】
<照明用電源装置1の全体構成>
図1に示されるように、本実施形態に係る照明用電源装置1は、調光器100と、整流回路101と、フィルター102と、第1の抵抗器103と、MOSFET106と、ツェナダイオード108と、シャントレギュレータ110と、ダイオード114と、コンデンサ115と、駆動回路116と、制御回路118と、ブリーダー回路119と、第2の抵抗器112と、第3の抵抗器120と、を含んで構成されている。
そして、第1の抵抗器103と、MOSFET106と、ツェナダイオード108と、シャントレギュレータ110と、第2の抵抗器112と、第3の抵抗器120とは、シリーズレギュレータを構成している。シリーズレギュレータは、フィルター102から出力された出力電圧を所定の直流電圧に定電圧化する。
【0020】
調光器100は交流電源(AC)10と、整流回路101との間に接続され、照明素子117の光量を調整する。
なお、調光器100は、交流電源(AC)10の交流電圧の位相制御を行う位相制御素子を有し、位相制御素子としてトライアック(双方向サイリスタ)を用いてもよい。
また、調光器100の構成は特に限定するものではなく、既知の構成であってもよい。
【0021】
整流回路101は、位相制御された交流電圧波形を全波整流された電圧波形に変換する。
また、整流回路101は基準電位113にも接続されている。
なお、整流回路101の構成は特に限定するものではなく、既知の構成であってもよい。
【0022】
フィルター102は、整流回路101の出力端に接続され、整流回路101からの出力である全波整流された電圧に重畳される高周波成分を除去する。
なお、フィルター102の構成は、特に限定するものではなく、既知の構成であってもよい。
【0023】
フィルター102の出力端は第1の抵抗器103の一端に接続されるとともに、MOSFET106の入力端104に接続されている。
また、第1の抵抗器103の他端はMOSFET106の制御端(ゲート)105に接続されるとともに、ツェナダイオード108のカソードに接続されている。
【0024】
MOSFET106の電流路の入力端(ドレイン)104はダイオード114のアノードに接続され、ダイオード114のカソードはコンデンサ115の一端および駆動回路116に接続されており、駆動回路116に直流電圧を供給している。また、コンデンサ115の他端は基準電位113に接続されている。
ここで、ダイオード114は、逆流防止用の素子であり、コンデンサ115は、電圧を平滑化し保持するための素子である。
【0025】
MOSFET106の電流路の出力端(ソース)107は制御回路118とブリーダー回路119に接続され、制御回路118に電源電圧を供給するとともにブリーダー回路119に調光器100を安定動作させるための保持電流を流す。
【0026】
また、MOSFET106の電流路の出力端107は、第2の抵抗器112の一端に接続され、第2の抵抗器112の他端は、第3の抵抗器120の一端に接続され、第3の抵抗器120の他端は、基準電位113に接続されている。
【0027】
そして、シャントレギュレータ110の基準電圧入力端121は第2の抵抗器112と、第3の抵抗器120と、の接続点に接続され、第2の抵抗器112と第3の抵抗器120との接続点の電圧(分電圧)がシャントレギュレータ110の基準電圧として入力される。
【0028】
駆動回路116の出力端は照明素子117に接続されている。駆動回路116の信号入力端には制御回路118の一方の信号出力端が接続されている。
また、ブリーダー回路119はシリーズレギュレータの出力(MOSFET106の電流路の出力端107)に接続されている。ブリーダー回路119はシリーズレギュレータから出力された直流電圧をもとに調光器100に保持電流を流す。
なお、制御回路118には、MOSFET106の出力端107に発生する過電圧、または過電流に対して保護動作を行うクランプ回路が含まれていてもよい。
【0029】
また、例えば、制御回路118と、ブリーダー回路119とは、一般に市販されているトライアック調光型LED照明用制御ICを利用して構成することも可能であり、MOSFET106の出力端107に発生する過電圧、または過電流に対して保護動作を行うクランプ回路がICに含まれていてもよい。
なお、本実施形態に係る照明用電源装置1は、上記ICに供給される電源電圧の許容電圧範囲(オン閾値上限電圧と過電圧保護下限電圧との間の電圧範囲)が比較的狭いICに対して特に効果を発揮する。
【0030】
そして、ツェナダイオード108のアノードはシャントレギュレータ110の電圧出力端(カソード)109に接続され、シャントレギュレータ110の基準電位端111は基準電位113に接続されている。
<作用・効果>
【0031】
以下、図2図5を用いて、本発明実施形態に係る照明用電源装置1の作用・効果について説明する。
なお、図1と同様の符号を付す構成要素については同様の機能を有することから、その詳細な説明については省略する。
【0032】
図2に示すように、MOSFET106の電流路の入力端104に入力電圧Vrecが供給されると、制御用電流源となる第1の抵抗器103を介してMOSFET106の制御端105に電流が供給される。
また、第1の抵抗器103を介してツェナダイオード108のカソードに電流が供給され、ツェナダイオード108の端子間、および、シャントレギュレータ110の端子間に電圧が発生する。
【0033】
このとき、ツェナダイオード108に供給される電流値が、ツェナダイオード108の端子間電圧が定電圧となるための電流値Iztに達するまでの間は、ツェナダイオード108の端子間電圧は、供給される電流値に依存して電圧値が変化する。
その後、ツェナダイオード108に供給される電流値が、電流値Iztに達すると、ツェナダイオード108の端子間電圧はVzd(降伏電圧)で一定値となる。
【0034】
シャントレギュレータ110の端子間電圧は、シャントレギュレータ110に供給される電流値が電流値Ishに達するまでの間は供給される電流値に依存して電圧値が変化する。
そして、シャントレギュレータ110に供給される電流値が電流値Ishに達すると、シャントレギュレータ110の端子間電圧はシャントレギュレータ110の基準電圧入力端121に印加された電圧に依存したシャントレギュレータ110の端子間電圧Vshで一定値となる。
【0035】
なお、シャントレギュレータ110の基準電圧入力端121に印加される電圧は、第2の抵抗器112と、第3の抵抗器120とを接続した接続点から供給される。
【0036】
ツェナダイオード108が安定した端子間電圧(ツェナ電圧)を出力できる電流値Izdと、シャントレギュレータ110が安定した端子間電圧を出力できる電流値Ishの、双方を満たす電流値以上の電流が供給されると、MOSFET106の制御端105には、基準電位113を基準として、Vzd+Vshとなる電圧が発生する。
【0037】
そして、MOSFET106の制御端105にVzd+Vshが印加されると、MOSFET106の電流路の出力端107からは、MOSFET106の制御端105と、MOSFET106の出力端107との間で、MOSFET106のゲート・ソース間電圧Vgsが発生し、基準電位113を基準とした、Vzd+Vsh-Vgsの出力電圧Voutが出力される。
【0038】
ここで、照明用電源装置1の周囲温度が、室温よりも上昇した場合、ツェナダイオード108のツェナ電圧は正の温度特性を有する一方、MOSFET106のゲート・ソース間オン閾値電圧は負の温度特性を有しているので、ツェナダイオード108の端子間電圧Vzdは上昇し、MOSFET106の制御端105と出力端107との間のMOSFET106のゲート・ソース間電圧Vgsのオン閾値電圧は低下するが、シャントレギュレータ110が第2の抵抗器112と第3の抵抗器120とで設定された、シャントレギュレータ110の基準電圧入力端121の電圧値を一定に保つように動作することにより、MOSFET106の出力端107の出力電圧Voutも一定に保たれる。
【0039】
つまり、MOSFET106の制御端105と基準電位113との間が、ツェナダイオード108のみで構成されている従来の照明用電源装置と比較し、MOSFET106の制御端105と基準電位113との間に、ツェナダイオード108とシャントレギュレータ110とが直列に構成されることにより、出力電圧Voutの周囲温度の上昇による電圧上昇を制限することができる。
【0040】
ツェナダイオード108が安定した端子間電圧を出力できる電流値Izdと、シャントレギュレータ110が安定した端子間電圧を出力できる電流値Ishの、どちらか一方の電流値を満たさないほど電流値が減少した場合には、ツェナダイオード108の端子間電圧、あるいは、シャントレギュレータ110の端子間電圧、あるいは、双方の端子間電圧が低下し、MOSFET106の制御端に発生している電圧が低下することによって、シリーズレギュレータ(MOSFET106の出力端107)の出力電圧Voutが低下する。
【0041】
なお、シャントレギュレータ110が安定した端子間電圧を出力できる電流値Ishは、ミリアンペア単位の電流が必要であるが、ツェナダイオード108が安定した端子間電圧を出力できる電流値Izdは、マイクロアンペア単位の電流で十分である。
【0042】
つまり、MOSFET106の入力端に印加されている入力電圧Vrecが低下すると、例えば、シャントレギュレータ110の端子間電圧を一定値に保つ電流量が減少したとしても、ツェナダイオード108に電流値Izdが供給されている間は、ツェナダイオード108には安定した端子間電圧を発生している期間が存在する。
【0043】
図4に示すように、シリーズレギュレータの入力電圧Vrecが所定の電圧を上回る区間(時間tAに至るまでの期間)は、ツェナダイオード108が、安定した端子間電圧を出力できる電流値Izdと、シャントレギュレータ110が、安定した端子間電圧を出力できる電流値Ishと、の双方を満たす電流値が供給されている期間であり、シリーズレギュレータ(MOSFET106の出力端107)の出力電圧Voutは一定値を保ち、シリーズレギュレータの出力電圧Voutとして、定電圧化されたツェナダイオード108の端子間電圧とシャントレギュレータ110の端子間電圧との和電圧からMOSFET106のゲート・ソース間電圧Vgsを引いた電圧(定電圧化されたゲート電位とVgsとの差)が制御回路118およびブリーダー回路119に出力される。
【0044】
入力電圧Vrecの低下が時間経過とともに進む、時間tAから時間tSの期間では、シャントレギュレータ110を流れる電流値が、シャントレギュレータ110が安定した端子間電圧を出力できる電流値Ish以下になり、シャントレギュレータ110の端子間電圧が低下し、時間tS以降は、シャントレギュレータ110の端子間電圧が最小となる。具体的には、時間tSでツェナダイオード108のツェナ電圧とシャントレギュレータ110のカソード電圧最小値の和(以下「和電圧」という)がMOSFET106のゲート(制御端)に印加される。そして、この電圧をシリーズレギュレータの入力電圧Vrecが下回るまでは(時間tS~tZ)、和電圧からMOSFET106のゲート・ソース間電圧Vgsを引いた電圧がシリーズレギュレータの出力電圧Voutとして出力される。
【0045】
時間tSから時間tZに至るまでの期間は、ツェナダイオード108には、端子間電圧を一定値に保つ電流量である電流値Izd以上の電流値が供給されているため、ツェナダイオード108の端子間電圧は一定値を保つことができる。
時間tZ以降になると、ツェナダイオード108の端子間電圧を一定値に保つ電流量である電流値Izd以下の電流量になるため、ツェナダイオード108の端子間電圧は、時間経過に伴い低下していく。
【0046】
つまり、MOSFET106の制御端105と基準電位113との間がシャントレギュレータ110のみで構成されている場合、時間tS以降の期間では、シリーズレギュレータの出力電圧Voutは、点線で示されるように電圧が低下する。これに対し、MOSFET106の制御端105と基準電位113との間に、ツェナダイオード108とシャントレギュレータ110とが直列に接続される場合、シリーズレギュレータの出力電圧Voutは、太実線で示されるような電圧値となる。
【0047】
また、ブリーダー回路119に供給される電圧は、シリーズレギュレータの出力電圧Voutであるが(図2参照)、数1に示すような関係にある場合、ブリーダー回路119は調光器100を安定動作させるだけの保持電流を流すことができる。
ここで、図5に示すように、ブリーダー回路119の安定動作下限電圧をVbminとする。
【0048】
【数1】
【0049】
MOSFET106の出力端107の出力電圧Voutは、ツェナダイオード108の端子間電圧Vzdと、シャントレギュレータ110の端子間電圧Vshと、MOSFET106の出力端107とMOSFET106の制御端105との間のMOSFET106のゲート・ソース間電圧Vgsとで決まり、数2のようになることから、数3の関係が満たされるように、ツェナダイオード108の端子間電圧Vzdと、シャントレギュレータ110の端子間電圧Vshと、を設定することにより、時間tLまでブリーダー回路119の安定動作下限電圧を下回らないようにすることができる。
【0050】
【数2】
【0051】
【数3】
【0052】
[変形形態]
図6を用いて、変形形態について説明する。
【0053】
図6に示されるように、本変形形態では、ツェナダイオード108とシャントレギュレータ110は、MOSFET106の制御端105と、基準電位113と、の間に直列に接続されるが、ツェナダイオード108と、シャントレギュレータ110と、の接続形態が、上記実施形態とは、逆になっている。
【0054】
この場合、ツェナダイオード108と、シャントレギュレータ110と、は直列接続であるため、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
以上、この発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計なども含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1;照明用電源装置
100;調光器
106;MOSFET
108;ツェナダイオード
110;シャントレギュレータ
116;駆動回路
117;照明素子
118;制御回路
119;ブリーダー回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8