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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20241114BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20241114BHJP
   B66C 13/54 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
E02F9/24 A
E02F9/16 A
B66C13/54 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021037612
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137897
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】石塚 遼
(72)【発明者】
【氏名】白石 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】西岡 直哉
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101870(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112302090(CN,A)
【文献】特開2007-210468(JP,A)
【文献】特開平07-331701(JP,A)
【文献】特開2000-300370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0103156(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00 - 9/28
B66C 13/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を走行させる下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記機体を操作する操作室が設けられるキャブと、
前記キャブを昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置によって前記キャブが降下することを制限する制限装置と、を備えた作業機械において、
前記昇降装置は、
一端が前記上部旋回体に配設され、他端が前記キャブを回動可能に支持する支持部材と、
前記上部旋回体に形成され、前記支持部材の一端を回動可能に軸支する軸支部材と、
前記支持部材の一端に形成され、該支持部材が前記軸支部材回りで回動する際の軌跡に沿って並ぶ複数の被係止部材と、を有し、
前記制限装置は、
前記被係止部材に係止可能な爪部を含む係止部材を有し、
前記爪部は、前記支持部材が回動して前記キャブが下降するときに前記被係止部材に係止し、前記支持部材が回動して前記キャブが上昇するときに前記被係止部材の移動を許容し、
前記上部旋回体は、前記昇降装置と前記制限装置との間に位置する平板部材を有し、
前記平板部材には、
少なくとも前記制限装置の前記係止部材が貫通可能な開口と、
前記開口の近傍から前記制限装置側に延び、該制限装置を固定する固定板と、が形成されており、
前記固定板には、
前記係止部材の前記爪部が前記被係止部材に係止可能な位置である第1位置に前記制限装置を固定する第1固定部と、
前記第1位置に対し、前記制限装置から離間した位置である第2位置に前記制限装置を固定する第2固定部と、が形成される、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
機体を走行させる下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記機体を操作する操作室が設けられるキャブと、
前記キャブを昇降させる昇降装置と、
前記昇降装置によって前記キャブが降下することを制限する制限装置と、を備えた作業機械において、
前記昇降装置は、
一端が前記上部旋回体に配設され、他端が前記キャブを回動可能に支持する支持部材と、
前記上部旋回体に形成され、前記支持部材の一端を回動可能に軸支する軸支部材と、
前記支持部材の一端に形成され、該支持部材が前記軸支部材回りで回動する際の軌跡に沿って並ぶ複数の被係止部材と、を有し、
前記制限装置は、
前記被係止部材に係止可能な爪部をそれぞれ一つ含む係止部材を複数有し、
記爪部は、複数有する前記係止部材に対応して複数からなり、前記支持部材が回動して前記キャブが下降するときに前記被係止部材に係止し、前記支持部材が回動して前記キャブが上昇するときに前記被係止部材の移動を許容することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
前記制限装置は、
前記係止部材を支持するピンと、
前記上部旋回体に固定され、前記ピンを回動可能に支持する支持体と、
前記係止部材の前記爪部を前記被係止部材に向かって押圧する押圧部材と、を有し、
前記係止部材は、
前記ピンが固定されるピン結合部と、
前記ピン結合部から延びるシャフト部と、を含み、
前記爪部は、前記シャフト部の端部に形成され、前記被係止部材に向かって延びてなる、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記制限装置に螺合可能な締結部材が挿入される取付穴である、
ことを特徴とする、請求項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記爪部には、
前記キャブが降下するときに前記被係止部材を保持する保持面と、
前記キャブが上昇するときに前記被係止部材に当接し、前記保持面に対して規定角度傾斜した面を含む傾斜面と、が形成されてなる、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械に係り、特に整備性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、道路工事現場や建築現場等の作業現場では、油圧ショベルが用いられている。特に、高所から作業現場を視認しながら作業をする必要がある現場では、必要に応じて高いアイポイントを得るために、リフトシリンダを含んだ昇降機構によってキャブの昇降を可能とした作業機械が用いられている。
【0003】
このような作業機械は、キャブの下側のメンテナンスを実施する際、キャブを上昇させることにより、作業を実施するために必要な作業スペースを確保している。また、このような作業機械には、メンテナンスを実施している際に上昇させたキャブが不意に落下しないよう、落下防止の機構が設けられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-106563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献に開示された技術では、支持塔体のピン挿入穴と下リンクのピン挿入穴との正確な位置合せをしなければロックピンを挿入できないため、作業者にとっては煩わしさに堪えないものである。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、昇降可能に設けられたキャブの下側のメンテナンス作業を容易にすることができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の作業機械は、機体を走行させる下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記機体を操作する操作室が設けられるキャブと、前記キャブを昇降させる昇降装置と、前記昇降装置によって前記キャブが降下することを制限する制限装置と、を備えた作業機械において、前記昇降装置は、一端が前記上部旋回体に配設され、他端が前記キャブを回動可能に支持する支持部材と、前記上部旋回体に形成され、前記支持部材の一端を回動可能に軸支する軸支部材と、前記支持部材の一端に形成され、該支持部材が前記軸支部材回りで回動する際の軌跡に沿って並ぶ複数の被係止部材と、を有し、前記制限装置は、前記被係止部材に係止可能な爪部を含む係止部材を有し、前記爪部は、前記支持部材が回動して前記キャブが下降するときに前記被係止部材に係止し、前記支持部材が回動して前記キャブが上昇するときに前記被係止部材の移動を許容し、前記上部旋回体は、前記昇降装置と前記制限装置との間に位置する平板部材を有し、前記平板部材には、少なくとも前記制限装置の前記係止部材が貫通可能な開口と、前記開口の近傍から前記制限装置側に延び、該制限装置を固定する固定板と、が形成されており、前記固定板には、前記係止部材の前記爪部が前記被係止部材に係止可能な位置である第1位置に前記制限装置を固定する第1固定部と、前記第1位置に対し、前記制限装置から離間した位置である第2位置に前記制限装置を固定する第2固定部と、が形成される、ことを特徴とする。
【0008】
これにより、支持部材が回動してキャブが下降するときに係止部材の爪部が被係止部材に係止し、キャブが上昇するときには被係止部材の移動を許容することで、キャブが下降することを防止しつつ、キャブを上昇させる作業を許容させることが可能とされるが、制限装置に第1固定部を固定して係止部材の爪部が被係止部材に係止可能な位置である第1位置に制限装置を固定し、制限装置に第2固定部を固定して第1位置に対し制限装置から離間した位置である第2位置に制限装置を固定可能にすることで、制限装置の固定位置を第1固定部または第2固定部に切り替えて、キャブが下降することを防止または許容させることが可能とされる
【0009】
また、本発明の作業機械は、機体を走行させる下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記機体を操作する操作室が設けられるキャブと、前記キャブを昇降させる昇降装置と、前記昇降装置によって前記キャブが降下することを制限する制限装置と、を備えた作業機械において、前記昇降装置は、一端が前記上部旋回体に配設され、他端が前記キャブを回動可能に支持する支持部材と、前記上部旋回体に形成され、前記支持部材の一端を回動可能に軸支する軸支部材と、前記支持部材の一端に形成され、該支持部材が前記軸支部材回りで回動する際の軌跡に沿って並ぶ複数の被係止部材と、を有し、前記制限装置は、前記被係止部材に係止可能な爪部をそれぞれ一つ含む係止部材を複数有し、前記爪部は、複数有する前記係止部材に対応して複数からなり、前記支持部材が回動して前記キャブが下降するときに前記被係止部材に係止し、前記支持部材が回動して前記キャブが上昇するときに前記被係止部材の移動を許容することを特徴とする。
これにより、支持部材が回動してキャブが下降するときに係止部材の爪部が被係止部材に係止し、キャブが上昇するときには被係止部材の移動を許容することで、キャブが下降することを防止しつつ、キャブを上昇させる作業を許容させることが可能とされるが、爪部を複数形成することで、爪部と被係止部材との締結性を向上させることが可能とされる。
その他の態様として、前記制限装置は、前記係止部材を支持するピンと、前記上部旋回体に固定され、前記ピンを回動可能に支持する支持体と、前記係止部材の前記爪部を前記被係止部材に向かって押圧する押圧部材と、を有し、前記係止部材は、前記ピンが固定されるピン結合部と、前記ピン結合部から延びるシャフト部と、を含み、前記爪部は、前記シャフト部の端部に形成され、前記被係止部材に向かって延びてなるのが好ましい。
【0010】
これにより、支持体によってピン及び係止部材を回動可能に軸支し、押圧部材によってシャフト部の端部に被係止部材に向かって延びてなるよう形成された爪部を被係止部材に向かって押圧することで、比較的少ない部品点数で制限装置を構成させることができ、耐劣化性を向上させることが可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記制限装置に螺合可能な締結部材が挿入される取付穴であるのが好ましい。
これにより、第1固定部及び第2固定部を制限装置に螺合可能な締結部材が挿入される取付穴にすることで、制限装置の固定位置の切り替えを容易にしつつ、制限装置を好適に固定板に固定することが可能とされる。
【0015】
その他の態様として、前記爪部には、前記キャブが降下するときに前記被係止部材を保持する保持面と、前記キャブが上昇するときに前記被係止部材に当接し、前記保持面に対して規定角度傾斜した面を含む傾斜面と、が形成されてなるのが好ましい。
これにより、爪部に被係止部材を保持する保持面と、保持面に対して規定角度傾斜した面を含む傾斜面と、を形成することで、キャブが降下するときには保持面で被係止部材を保持しつつ、キャブが上昇するときには傾斜面が被係止部材に当接して被係止部材を受け流すことが可能とされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の作業機械によれば、係止部材の爪部が、支持部材が回動してキャブが下降するときに被係止部材に係止し、キャブが上昇するときには被係止部材の移動を許容したので、キャブが下降することを防止しつつ、キャブを上昇させる作業を許容させることができる。
これにより、昇降可能に設けられたキャブの下側のメンテナンス作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】機体の側面図である。
図2】下リンクの斜視図である。
図3】タワーの後方斜視図である。
図4】背板に配設されたロックユニットの拡大斜視図である。
図5】ロックユニットが第1位置に位置しているときにおけるロックユニット及びその周辺の側面図である。
図6】ロックユニットが第2位置に位置しているときにおけるロックユニット及びその周辺の側面図である。
図7】ロックユニットが第1位置に位置しているときにおけるロックユニットの作動態様を説明する説明図である。
図8】ロックユニットが第1位置に位置しているときにおけるロックユニットの作動態様を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、機体前後方向前方及び後方を単に前方または後方といい、機体左右方向左方及び右方を単に左方または右方といい、機体上下方向上方及び下方を単に上方または下方ともいう。
【0019】
図1を参照すると、機体1の側面図が示されている。機体1は、フロントアタッチメント6を稼働することで掘削作業や産業から生じた廃材などを運搬車に積込む作業(以下、作業等という)をすることが可能な油圧式ショベル型の作業機械である。この機体1は、下部走行体3、上部旋回体5、キャブ7及び昇降装置9を備えている。下部走行体3は、駆動することで機体1を走行させることが可能な走行体である。上部旋回体5は、下部走行体3に旋回可能に搭載されている。
【0020】
キャブ7は、図示しない運転室が内設されており、オペレータが搭乗可能に構成されている。昇降装置9は、キャブ7を昇降させることが可能な装置である。これにより、機体1は、下部走行体3を駆動することで自走し、上部旋回体5を旋回させることでフロントアタッチメント6やキャブ7の向きを変更し、昇降装置9によってキャブ7を昇降させることで作業現場が見渡せる位置にキャブ7を移動させ、フロントアタッチメント6によって作業等をすることができる。
【0021】
ここで、昇降装置9について詳しく説明すると、昇降装置9は、タワー11、ベッド13、リンクユニット15及びリフトシリンダ17を有している。タワー11は、上部旋回体5から立設された、左右一対の骨格部材である。このタワー11には、所定距離離間しつつ上下方向に並ぶ第1回動軸11a及び第2回動軸(軸支部材)11bが形成されている。
【0022】
ベッド13は、キャブ7の下面を支持する水平な台であり、後端にはベッド13から垂直に延びるリンク取付部14が形成されている。リンク取付部14は、キャブ7の後方であって、機体左右方向で視てタワー11に対応する位置に立設された左右一対の骨格部である。このリンク取付部14には、第1回動軸11a及び第2回動軸11bと同様に、所定距離離間しつつ上下方向に並ぶ第3回動軸14a及び第4回動軸14bが形成されている。
【0023】
リンクユニット15は、タワー11とベッド13との間に延びる上リンク21及び下リンク(支持部材)23を含んでなる。具体的には、上リンク21は、長手方向一端がタワー11の第1回動軸11aに回動可能に支持され、他端がリンク取付部14の第3回動軸14aに回動可能に支持される。また、下リンク23は、長手方向一端がタワー11の第2回動軸11bに回動可能に支持され、他端がリンク取付部14の第4回動軸14bに回動可能に支持される。これにより、上リンク21及び下リンク23は、常に互いに平行関係を保ちつつ回動するため、リンク取付部14の垂直状態を保つことができ、ひいてはベッド13の水平状態を保つことができる。
【0024】
リフトシリンダ17は、油圧によって伸縮する油圧シリンダであり、一端がタワー11の第2回動軸11bより下方に形成された第5回動軸11cに回動可能に軸支され、他端が下リンク23の第4回動軸14bの垂直方向下側に形成された第6回動軸23aに回動可能にされている。これにより、昇降装置9は、リフトシリンダ17を伸縮してリンクユニット15の上リンク21及び下リンク23を回動させることで、水平状態を保ちつつキャブ7を昇降させることができる。
【0025】
図2を参照すると、下リンク23の斜視図が示されている。以下、説明の便宜上、下リンク23のベッド13側の他端が第2回動軸11bより上方に位置するときのベッド13の位置を上昇位置Aと呼称し、下リンク23のベッド13側の他端が第2回動軸11bより下方に位置するときのベッド13の位置を下降位置Bと呼称し、下リンク23のベッド13側の他端が第2回動軸11bと同じ高さに位置するときのベッド13の位置を水平位置Cと呼称する(図1参照)。また、図2では、ベッド13の位置が水平位置Cのときにおける下リンク23の姿勢を過程して説明する。
【0026】
下リンク23は、前後方向に延びる骨格部材である。この下リンク23の機体前後方向後側、すなわちタワー11側の端部(一端)には、後方に延びる左右一対の第1支持脚31が形成されている。また、下リンク23の機体前後方向前側、すなわちベッド13側の端部(他端)には、前方に延びる左右一対の第2支持脚32が形成されている。
【0027】
第1支持脚31は、タワー11の機体左右方向内側の側部に位置するよう形成されており、後端に形成された第1軸部(一端)35が第2回動軸11bによって回動可能に軸支される。第2支持脚32は、ベッド13の機体左右方向内側の側部に位置するよう形成されており、前端に形成された第2軸部(他端)37が第4回動軸14bによって回動可能に軸支される。
【0028】
さらに、左側の第1支持脚31には、第1軸部35の後側に複数の被係止部材39が形成されている。被係止部材39は、左右方向に延びる円柱状に形成され、第1軸部35の周縁に等間隔で複数(例えば4つ)設けられている。
【0029】
図3を参照すると、タワー11の後方斜視図が示されている。左右一対のタワー11は、機体前後方向後側の端部に左右方向に延びる背板(平板部材)12が溶接されている。この背板12には、第1支持脚31の被係止部材39に対応する位置に開口12aが形成されている。また、背板12には、開口12aの左右両側(近傍)に左右一対の固定板12bが形成され、開口12aに挿入されるように位置するロックユニット41が固定板12bに固定されている。なお、固定板12bの詳細な形状については後述する。
【0030】
図4を参照すると、背板12に配設されたロックユニット41の拡大斜視図が示されている。ロックユニット(制限装置)41は、ベースプレート(支持体)43、係止部材45、付勢部材46、補強部材47、支持ピン(ピン)48及びスプリング(押圧部材)49を有している。ベースプレート43は、左右一対の固定板12bの機体左右方向内側に位置する、左右一対の平板部材である。このベースプレート43には、第1支持部43a及び第2支持部43bが形成されている。第1支持部43aは、ベースプレート43の前端に突出して形成された突部であり、中央に図示しない開孔が円形に形成されている。第2支持部43bは、ベースプレート43の上端から機体左右方向内側に向かって突出する台座であり、上面に設けられる立設部43cにスプリング49の一端が取り付けられる。
【0031】
係止部材45は、ピン結合部51、シャフト部53及び爪部55が形成された平板部材であり、左右方向に3つ並んでいる。ピン結合部51は、ベースプレート43の第1支持部43aに対応する位置に開口が形成され、該開口に支持ピン48が嵌装または溶接されている。シャフト部53は、ピン結合部51から下方に向かって延びる柱状に形成されている。爪部55は、シャフト部53の下端から前方に向かって突出するように形成された突部である。この爪部55は、下端に平面(保持面)55aが、上端に曲面(傾斜面)55bがそれぞれ形成されている。
【0032】
付勢部材46は、支持ピン48から上方に延びる平板部材であり、左右方向に3つ並ぶ係止部材45によって挟まれるよう、2つ配設されている。この付勢部材46の上端には、左右方向に開放する付勢穴46aが形成されている。補強部材47は、シャフト部53と爪部55との付け根部分に位置し、左右方向に延びる棒状の部材である。この補強部材47は、左右方向に並ぶ3つの係止部材45のシャフト部53と爪部55との付け根部分に嵌装または溶接されている。
【0033】
支持ピン48は、ベースプレート43の第1支持部43aに回動可能に挿入されるピンである。この支持ピン48は、第1支持部43aの左右方向内側に係止部材45及び付勢部材46が嵌装または溶接され、左右両端にキャップ48aが固定されている。スプリング49は、一端がベースプレート43の第2支持部43bの上面に設けられた立設部43cに取り付けられ、他端が付勢部材46の付勢穴46aに取り付けられている。
【0034】
したがって、ロックユニット41は、ベースプレート43に設けられた、支持ピン48を軸にして係止部材45を回動させることができる。また、ロックユニット41は、付勢部材46にスプリング49が設けられることで、係止部材45の爪部55を前方に付勢することができる。またさらに、ロックユニット41は、補強部材47が設けられることで3つの係止部材45を接合させて互いに強度を高めあうことができる。
【0035】
ここで、固定板12bには、第1固定穴(第1固定部)61及び第2固定穴(第2固定部)62が形成されている。第1固定穴61は、ボルト(締結部材)65をロックユニット41のベースプレート43に螺合させることでロックユニット41を固定板12bに固定することが可能な取付穴である。この第1固定穴61は、上下方向に2つ並ぶよう形成されている。第2固定穴62は、ボルト65をロックユニット41のベースプレート43に螺合させることでロックユニット41を固定板12bに固定することが可能な取付穴である。この第2固定穴62は、第1固定穴61の後方に、上下方向に2つ並ぶよう形成されている。
【0036】
図5を参照すると、ロックユニット41が第1位置に位置しているときにおけるロックユニット41及びその周辺の側面図が示されている。また、図6を参照すると、ロックユニット41が第2位置に位置しているときにおけるロックユニット41及びその周辺の側面図が示されている。またさらに、図7、8を参照すると、ロックユニット41が第1位置に位置しているときにおけるロックユニット41の作動態様を説明する説明図が示されている。以下、第1固定穴61及び第2固定穴62が形成される位置と第1位置及び第2位置との関係性並びに各位置におけるロックユニット41の作用効果について詳細に説明する。
【0037】
図5によると、ロックユニット41が第1位置に位置しているとき、係止部材45の爪部55は、第1軸部35の被係止部材39に係止可能な位置にある。換言すると、第1固定穴61は、固定板12bにおける、ロックユニット41を第1位置に固定することが可能な位置に形成されている。
【0038】
一方、図6によると、ロックユニット41が第2位置に位置しているとき、係止部材45の爪部55は、第1軸部35の被係止部材39に接触しない位置にある。換言すると、第2固定穴62は、固定板12bにおける、ロックユニット41を第2位置に固定することが可能な位置に形成されている。
【0039】
このような位置に第1固定穴61及び第2固定穴62を形成することで、ロックユニット41は、固定板12bにおける第1固定穴61に固定されることで第1軸部35の被係止部材39に係止部材45の爪部55を係止させることができ、第2固定穴62に固定されることで被係止部材39に爪部55を係止させないようにすることができる。ゆえに、固定板12bは、第1軸部35の被係止部材39に係止部材45の爪部55を係止させるか否かに関わらずロックユニット41を固定することができるので、ロックユニット41の紛失を抑制することができる。
【0040】
図7によると、ロックユニット41が第1位置に位置しているとき、係止部材45の爪部55は、第1支持脚31における被係止部材39の下側や隣り合う被係止部材39の間に位置することで係止する(係止状態)。このとき、付勢部材46は、スプリング49によって爪部55を前方に付勢することができるので、爪部55を被係止部材39の下側や隣り合う被係止部材39の間に保持することができる。
【0041】
また、爪部55の下面に形成された平面55aは、爪部55が第1支持脚31における被係止部材39の下側や隣り合う被係止部材39の間に位置するとき、被係止部材39の回動する方向に対し略垂直となるよう位置する。これにより、例えばキャブ7の荷重により下リンク23が第2支持脚32を降下させるように第1軸部35を軸にして回動するとき、爪部55は、平面55aで被係止部材39を保持するようにして被係止部材39が上方に移動することを防止することができる。
【0042】
一方、図8によると、被係止部材39によって係止部材45の爪部55が下方に押圧される場合、爪部55は、ロックユニット41が第1位置に位置しているときであっても、被係止部材39より後方に移動して被係止部材39の係止状態を解除する。ここで、被係止部材39によって係止部材45の爪部55が下方に押圧される場合とは、例えばリフトシリンダ17によってキャブ7を上昇させるような場合である。
【0043】
このような場合、下リンク23が第2支持脚32を上昇させるように第1軸部35を軸にして回動するため、被係止部材39は下方に移動する。一方、爪部55の上面に形成された曲面55bは、被係止部材39に当接するとき、被係止部材39の回動する方向と曲面55bとによって成す角度が90°未満(所定角度θ)となる。換言すると、被係止部材39と曲面55bとが当接する部分は、平面55aに対して90°から所定角度を減算した規定角度をなす。
【0044】
これにより、被係止部材39が下方に移動するとき、被係止部材39の移動方向における第1軸部35から視て放射方向の成分の力により、爪部55を後方に押圧することができる。ゆえに、被係止部材39は、支持ピン48を軸にして係止部材45を回動させて爪部55との係止状態を解除することができるので、下リンク23が第2支持脚32を上昇させるように第1軸部35を軸にして回動させることができ、ひいてはキャブ7を上昇させることを許容することができる。
【0045】
このようなことから、ロックユニット41は、第1位置に位置しているとき、キャブ7を上昇させることを許容しつつ、キャブ7が降下することを防止することができる。したがって、キャブ7の下側を整備する整備士は、ロックユニット41を第1位置に固定することで、キャブ7が降下することを防止して作業をすることができるとともに、ロックユニット41を操作することなくキャブ7を容易に上昇させることができる。
【0046】
以上説明したように、本発明に係る作業機械では、機体1を走行させる下部走行体3と、下部走行体3に旋回可能に搭載される上部旋回体5と、機体1を操作する操作室が設けられるキャブ7と、キャブ7を昇降させる昇降装置9と、昇降装置9によってキャブ7が降下することを制限するロックユニット41と、を備えた作業機械において、昇降装置9は、一端である第1軸部35が上部旋回体5のタワー11に配設され、他端である第2軸部37がキャブ7を回動可能に支持する下リンク23と、上部旋回体5のタワー11に形成され、下リンク23の第1軸部35を回動可能に支持する第2回動軸11bと、下リンク23の第1軸部35に形成され、該下リンク23が第2回動軸11b回りで回動する際の軌跡に沿って並ぶ複数の被係止部材39と、を有する。
また、ロックユニット41は、被係止部材39に係止可能な爪部55を含む係止部材45を有し、爪部55は、下リンク23が回動してキャブ7が下降するときに被係止部材39に係止し、下リンク23が回動してキャブ7が上昇するときには被係止部材39の移動を許容する。
【0047】
従って、係止部材45の爪部55が、下リンク23が回動してキャブ7が下降するときに被係止部材39に係止し、キャブ7が上昇するときには被係止部材39の移動を許容したので、キャブ7が下降することを防止しつつ、キャブ7を上昇させる作業を許容させることができる。
【0048】
そして、ロックユニット41は、係止部材45を支持する支持ピン48と、上部旋回体5のタワー11に固定され、支持ピン48を回動可能に支持するベースプレート43と、係止部材45の爪部55を被係止部材39に向かって押圧するスプリング49と、を有し、係止部材45は、支持ピン48が固定されるピン結合部51と、ピン結合部51から延びるシャフト部53と、を含み、爪部55は、シャフト部53の端部に形成され、被係止部材39に向かって延びてなるので、比較的少ない部品点数でロックユニット41を構成させることができ、耐劣化性を向上させることができる。
【0049】
そして、上部旋回体5は、昇降装置9とロックユニット41との間に位置する背板12を有し、背板12には、少なくともロックユニット41の係止部材45が貫通可能な開口12aと、開口12aの近傍からロックユニット41側に延び、該ロックユニット41を固定する固定板12bと、が形成されており、固定板12bには、係止部材45の爪部55が被係止部材39に係止可能な位置である第1位置にロックユニット41を固定する第1固定穴61と、第1位置に対し、ロックユニット41から離間した位置である第2位置にロックユニット41を固定する第2固定穴62と、が形成されたので、ロックユニット41の固定位置を第1固定穴61または第2固定穴62に切り替えて、キャブ7が下降することを防止または許容させることができる。
【0050】
また、第1固定穴61及び第2固定穴62は、ロックユニット41に螺合可能なボルト65が挿入される取付穴であるため、ロックユニット41の固定位置の切り替えを容易にしつつ、ロックユニット41を好適に固定板12bに固定することができる。
また、爪部55は、複数(3つ)形成したので、爪部55と被係止部材39との締結性を向上させることができる。
【0051】
そして、爪部55には、キャブ7が降下するときに被係止部材39を保持する平面55aと、キャブ7が上昇するときに被係止部材39に当接し、平面55aに対して規定角度傾斜した面を含む曲面55bと、が形成されたので、キャブ7が降下するときには平面55aで被係止部材39を保持しつつ、キャブ7が上昇するときには曲面55bが被係止部材39に当接して被係止部材39を受け流すことができる。換言すると、被係止部材39と曲面55bとが当接する部分は、平面55aに対して90°から所定角度を減算した規定角度をなす。
【0052】
以上で本発明に係る発明の名称の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、ロックユニット41をベースプレート43、係止部材45、付勢部材46、補強部材47、支持ピン48及びスプリング49によって構成させたが、適宜構成を変更してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、スプリング49によって付勢部材46を後方に付勢して係止部材45の爪部55を前方に押圧するようにしたが、支持ピン48をゼンマイで回動するように付勢して爪部55を前方に押圧するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、第1支持部43aの左右方向内側に係止部材45及び付勢部材46を嵌装または溶接したが、スプライン締結でもよく、キャブ7を支持可能に固定することができればよい。
【0055】
また、本実施形態では、爪部55の上端に曲面55bを形成したが、平面55aに対して所定角度傾斜する面を形成してもよく、被係止部材39に当接するときに被係止部材39の回動する方向と当接部分との成す角度が90°未満となればよい。
【符号の説明】
【0056】
1 機体
3 下部走行体
5 上部旋回体
7 キャブ
9 昇降装置
11b 第2回動軸(軸支部材)
12 背板(平板部材)
12a 開口
12b 固定板
23 下リンク(支持部材)
35 第1軸部(一端)
37 第2軸部(他端)
39 被係止部材
41 ロックユニット(制限装置)
43 ベースプレート(支持体)
45 係止部材
48 支持ピン(ピン)
49 スプリング(押圧部材)
51 ピン結合部
53 シャフト部
55 爪部
55a 平面(保持面)
55b 曲面(傾斜面)
61 第1固定穴(第1固定部)
62 第2固定穴(第2固定部)
65 ボルト(締結部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8