(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】テクスチャー評価方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01N33/02
(21)【出願番号】P 2021045513
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彩子
(72)【発明者】
【氏名】園木 浩文
(72)【発明者】
【氏名】川上 智美
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062897(JP,A)
【文献】特開2018-134361(JP,A)
【文献】特開平10-267912(JP,A)
【文献】特開2018-124106(JP,A)
【文献】特開2019-052901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0014303(US,A1)
【文献】早川 文代,日本語テクスチャー用語の体系化と官能評価への利用,日本食品科学工学会誌,2013年07月,60(7),pp.311-322
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/02
A23L 5/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語から選択されたテクスチャー表現用語に基づき、ゼリー状組成物のテクスチャーを評価するための
、摂食嚥下プロセスを時系列的又は動作により複数段階に分類した3つ以上の段階それぞれに対応する評価項目を生成
する評価項目生成工程、及び
前記評価項目に関する評価結果に基づき、前記ゼリー状組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程を実行することを含
み、
前記評価結果生成工程は、前記評価項目間での、評価者による評価結果の相関係数を求めることを含む、テクスチャー評価方法。
【請求項2】
前記評価項目のそれぞれは、摂食嚥下プロセスを構成する複数の段階のうちの一つの段階に対応する評価項目である、請求項1に記載のテクスチャー評価方法。
【請求項3】
前記評価項目は、選択されたテクスチャー表現用語群に基づき生成された評価項目である、請求項1又は2に記載のテクスチャー評価方法。
【請求項4】
前記評価項目に関する評価結果は、対称的にスコア化可能な評価軸又は対称的にスコアが設けられた評価軸を用いて行われたテクスチャー評価の結果である、請求項1~3のいずれか一項に記載のテクスチャー評価方法。
【請求項5】
前記評価結果生成工程は、各評価項目について、評価結果の平均値を算出することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のテクスチャー評価方法。
【請求項6】
前記評価結果生成工程は、少なくとも前記相関
係数に基づき、評価結果の出力の仕方を調整することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のテクスチャー評価方法。
【請求項7】
前記評価結果生成工程は、グラフ化された評価結果を生成することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のテクスチャー評価方法。
【請求項8】
前記グラフ化された評価結果は、前記相関係数に基づき、評価項目の配置の仕方が調整されたグラフを含む、請求項7に記載のテクスチャー評価方法。
【請求項9】
摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語のうちから選択されたテクスチャー表現用語に基づき、組成物のテクスチャーを評価するための
、摂食嚥下プロセスを時系列的又は動作により複数段階に分類した3つ以上の段階それぞれに対応する評価項目を生成
する評価項目生成工程、及び
前記評価項目に関する評価結果に基づき、前記組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程を実行することを含
み、
前記評価結果生成工程は、前記評価項目間での、評価者による評価結果の相関係数を求めることを含む、テクスチャー評価方法。
【請求項10】
摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語のうちから選択されたテクスチャー表現用語に基づき、ゼリー状組成物のテクスチャーを評価するための
、摂食嚥下プロセスを時系列的又は動作により複数段階に分類した3つ以上の段階それぞれに対応する評価項目を生成
する評価項目生成工程、及び
前記評価項目に関する評価結果に基づき、前記ゼリー状組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程を実行
し、
前記評価結果生成工程は、前記評価項目間での、評価者による評価結果の相関係数を求めることを含む、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、組成物のテクスチャー評価方法及び情報処理装置に関し、特にはゼリー状組成物のテクスチャー評価方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品組成物のテクスチャーを評価するために、飲食品組成物の物理的特性が用いられることがある。例えば飲食品組成物の物理的特性が粘度計又はテクスチャーアナライザーなどの分析装置を用いて測定され、そして、測定結果に基づき飲食品組成物のテクスチャーが評価される。
【0003】
また、飲食品組成物の物理的特性以外の指標をテクスチャー評価のために用いることも提案されている。例えば、下記特許文献1には、「飲食品の官能評価方法であって、1)複数の官能特性について、飲食品を口腔内に入れてから、時間動的にヒトの評価するバイナリーデータを収集し、2)1)の工程を1回のセッションに少なくとも2回以上実施することを特徴とする官能評価方法。」(請求項1)が開示されている。下記特許文献2には、「摂食において咀嚼を要する食品の食感を定量的に評価する食感評価方法であって、被験者による試料の全摂食時間に対する咀嚼時間の割合を取得することを特徴とする、食感評価方法」(請求項1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-124106号公報
【文献】特開2019-052901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数種の飲食品組成物のテクスチャーを分析装置によって評価した場合に、分析装置により取得された測定値には差がないが、当該複数種の飲食品組成物をヒトが摂食及び嚥下を行った場合には、テクスチャーに違いがあると認識されることがしばしばある。また、分析装置によっては測定できない物性に関するテクスチャーも存在する。このようなテクスチャーをより適確に把握することができれば、飲食品組成物の開発において有用であると考えられる。例えば、嚥下困難者用飲食品組成物の開発においては、摂食嚥下プロセスにおいて認識されるテクスチャーの改善が特に重要であり、このようなテクスチャーの適確な把握が特に重要であると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の評価方法が、組成物のテクスチャーを評価するために有用であることを見出した。
【0007】
すなわち、本技術は、摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語のうちから選択されたテクスチャー表現用語に基づき、ゼリー状組成物のテクスチャーを評価するための少なくとも一つの評価項目を生成する評価項目生成工程、及び
前記少なくとも一つの評価項目に関する評価結果に基づき、前記ゼリー状組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程
を実行することを含む、テクスチャー評価方法を提供する。
前記少なくとも一つの評価項目のそれぞれは、摂食嚥下プロセスを構成する複数の段階のうちの一つの段階に対応する評価項目であってよい。
前記少なくとも一つの評価項目は、選択されたテクスチャー表現用語群に基づき生成された評価項目であってよい。
前記少なくとも一つの評価項目に関する評価結果は、対称的にスコア化可能な評価軸又は対称的にスコアが設けられた評価軸を用いて行われたテクスチャー評価の結果であってよい。
前記評価結果生成工程は、各評価項目について、評価結果の平均値を算出することを含んでよい。
前記評価結果生成工程は、評価項目間での評価結果の相関を求めることを含んでよい。
前記評価結果生成工程は、少なくとも前記相関に基づき、評価結果の出力の仕方を調整することを含んでよい
前記評価結果生成工程は、グラフ化された評価結果を生成することを含んでよい。
前記グラフ化された評価結果は、前記相関係数に基づき、評価項目の配置の仕方が調整されたグラフを含んでよい。
また、本技術は、摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語のうちから選択されたテクスチャー表現用語に基づき、組成物のテクスチャーを評価するための少なくとも一つの評価項目を生成する評価項目生成工程、及び
前記少なくとも一つの評価項目に関する評価結果に基づき、前記組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程
を実行することを含む、テクスチャー評価方法も提供する。
また、本技術は、摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語のうちから選択されたテクスチャー表現用語に基づき、ゼリー状組成物のテクスチャーを評価するための少なくとも一つの評価項目を生成する評価項目生成工程、及び
前記少なくとも一つの評価項目に関する評価結果に基づき、前記ゼリー状組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程
を実行する情報処理装置も提供する。
【発明の効果】
【0008】
本技術により、組成物のテクスチャーを適確に評価することができる。例えば、本技術は、ゼリー状組成物のテクスチャー評価のために有用である。
なお、本技術の効果は、この段落に記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本技術に従うテクスチャー評価方法のフローの例を示す図である。
【
図3】摂食嚥下プロセスを構成する複数の段階と各段階に関連付けられたテクスチャー表現用語とを含むデータテーブルの例を示す図である。
【
図4】本技術に従うテクスチャー評価方法において用いられる評価項目に含まれる評価軸の例を示す図である。
【
図5】本技術に従うテクスチャー評価方法において用いられる評価表の例を示す図である。
【
図6】本技術に従うテクスチャー評価システムのブロック図の例を示す。
【
図8】カテゴリー化された表現用語群を含むデータテーブルの例を示す図である。
【
図9】テクスチャー評価結果に含まれるレーダーチャートの例を示す図である。
【
図10】テクスチャー評価結果に含まれるレーダーチャートの例を示す図である。
【
図11】テクスチャー評価結果に含まれるレーダーチャートの例を示す図である。
【
図12】テクスチャー評価結果に含まれるレーダーチャートの例を示す図である。
【
図13】テクスチャー評価結果に含まれる散布図の例を示す図である。
【
図14】テクスチャー評価結果に含まれる散布図の例を示す図である。
【
図15】機械的な測定結果及び本技術により得られたテクスチャー評価結果を示す図である。
【
図16】テクスチャー評価において用いられる器具の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
【0011】
1.テクスチャー評価方法
【0012】
本技術のテクスチャー評価方法は、例えば
図1に示されるとおり、提示工程S1、評価項目生成工程S2、評価結果生成工程S3、及び出力工程S4を含んでよい。以下で、これらの工程についてそれぞれ説明する。
【0013】
1-1.提示工程S1
【0014】
提示工程S1において、摂食嚥下プロセスのうちの少なくとも一つの段階におけるテクスチャーを表現するための複数のテクスチャー表現用語が提示される。当該複数のテクスチャー表現用語は、好ましくは、摂食嚥下プロセスを構成する複数の段階のうちのいずれか1つ又は2つ以上の段階へと関連付けられてよい。
【0015】
(摂食嚥下プロセスに含まれる段階)
摂食嚥下プロセスは、複数の段階に分けて捉えられることがある。本技術において、前記摂食嚥下プロセスのうちの少なくとも一つの段階の数は、例えば1つ~5つであってよく、好ましくは2つ、3つ、4つ、又は5つであってよく、より好ましくは2つ、3つ、又は4つであってよく、特に好ましくは3つであってよい。これらの段階は、摂食嚥下プロセスを時系列的に分けられた段階であってよい。なお、摂食嚥下プロセスは、時系列的に分けられていなくてもよく、例えば摂食嚥下プロセスに含まれる動作(例えば、咀嚼動作、舌で押しつぶす動作、口腔内移動動作、及び嚥下動作のうちの1つ以上など)に基づき複数の段階に分類されていてもよい。
摂食嚥下プロセスを複数の段階へ分けることで、より適切なテクスチャー評価が可能となる。例えば、組成物のテクスチャーを網羅的に評価することができる。また、後述の評価項目生成工程S2において、より適切な評価項目を生成することができる。なお、段階の数が多すぎる場合は、評価において評価者に過剰な負荷がかかる。
摂食嚥下プロセスを複数の段階へ分けることは、特にゼリー状組成物のテクスチャー評価のために適している。各段階についてテクスチャー評価を行うことによって、最適なテクスチャーを特定することができる。
ゼリー状組成物(ゼリーだけでなく、例えば後述する茶わん蒸しなどを含む)は、例えば摂食嚥下困難者又は食欲不振のヒトに喫食される場合が多い。このようなヒトにおいて、ゼリー状組成物のわずかなテクスチャーの違いが、飲み込みやすさ、嗜好、又は食事量に大きく影響することがある。本技術に従い上記のとおり複数の段階へ分けてテクスチャー評価を実行することによって、このようなわずかなテクスチャーの違いを評価することができ、これは、このようなヒトにとってより適した組成物を特定し又は開発するために非常に有効である。
【0016】
前記摂食嚥下プロセスのうちの少なくとも一つの段階は、例えば、組成物を口に入れた段階、組成物を舌(又は歯)で潰す段階、及び、組成物を飲み込む段階のうちの1つ、2つ、又は3つ全てを含んでよい。前記摂食嚥下プロセスをこれら3つの段階に分けることは、組成物のテクスチャー評価、特にはゼリー状組成物のテクスチャー評価のために適している。
【0017】
摂食嚥下プロセスは、例えば、口への取り込み段階、奥舌への送り込み段階、奥舌から咽頭への送り込み段階、咽頭への送り込み段階、及び咽頭通過段階の5つの段階へと分類されることがある。
(藤島一郎:脳卒中の摂食・嚥下障害、第2版、医歯薬出版、東京、2005;P19~29、及び、https://www.terumo.co.jp/consumer/guide/symptom/enge/about/index.html)。
本技術において、これら5つの段階へと、前記摂食嚥下プロセスは分けられてもよい。
なお、この5段階のうち、口への取り込み段階が、前記3段階のうち、組成物を口に入れた段階に対応し、前記奥舌への送り込み段階及び前記奥舌から咽頭への送り込み段階が、前記組成物を舌で潰す段階に対応し、及び、咽頭への送り込み段階及び咽頭通過段階が、前記組成物を飲み込む段階に対応しうる。
【0018】
(摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語)
摂食嚥下プロセスに関する複数のテクスチャー表現用語は、例えばリスト化されていてよい。当該複数の表現用語は、組成物の種類に応じて予め用意された表現用語であってよい。複数の表現用語の例が、
図2に示されている。同図において、複数の表現用語はリスト化されている。
図2に示されるリストは、組成物を口に入れた段階のテクスチャーを表現するための表現用語群(左列)、組成物を舌で潰す段階のテクスチャーを表現するための表現用語群(中央列)、及び、組成物を飲み込む段階のテクスチャーを表現するための表現用語群(右列)を含む。なお、
図2において、表現用語群は各段階に関連付けられた状態で示されているが、関連付けられていなくてもよい。このように、提示工程S1において用いられる複数の表現用語は、前記少なくとも一つの段階のそれぞれに関連付けられていてもよい。
【0019】
本技術において用いられる複数のテクスチャー表現用語に含まれる表現用語として、例えば日本語テクスチャー用語体系(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品研究所ホームページに公開されている)に記載された表現用語が含まれてもよい。特には、複数のテクスチャー表現用語は、当該日本語テクスチャー用語体系中に用語欄に挙げられている複数の用語(当該複数の用語は、当該体系中の全ての用語であってよく又は各組成物に特徴的な用語)を含むように構成されてよい。
【0020】
(組成物)
前記組成物は、摂食嚥下可能な組成物であってよい。前記組成物は好ましくはゼリー状である。ゼリー状組成物としては、歯で噛まずに食べられる食品であり、舌と口蓋(上あご)の間でつぶして喫食できるものが好ましい。
前記組成物として、具体的には、ゼリー、茶わん蒸し、プリン、ムース、とろみを付けた流動食、豆腐、アイスクリーム、及びヨーグルト等が挙げられる。前記組成物は、飲食品組成物又は医薬品組成物であってよい。
【0021】
前記組成物は、例えば嚥下困難者用の組成物、特には嚥下困難者用のゼリー状組成物であってよい。ゼリー状組成物は、歯で噛んで喫食するものと比べて、食品と、舌又は口腔内粘膜との接触面積が大きいため、テクスチャーの印象を強く感じる。そのため、ゼリー状組成物の僅かなテクスチャーの違いは、飲み込みやすさ、食事の嗜好、又は食事の摂取可能量に大きく影響する場合がある。したがって、嚥下困難者用の飲食品組成物の開発においては、摂食嚥下プロセスにおいて認識されるテクスチャーの改善が特に重要である。本技術は、テクスチャー評価を適確に行うことに貢献するので、当該開発のために特に有用である。
【0022】
(提示された複数の表現用語を用いた用語選択処理)
提示工程S1において、ヒトに対して前記複数のテクスチャー表現用語が提示される。当該ヒトは、組成物のテクスチャー評価を行う評価者であってよい。当該リストを提示されたヒトは、組成物を摂食嚥下し、そして、当該組成物の、前記少なくとも一つの段階のそれぞれにおけるテクスチャーを表現するためのテクスチャー表現用語を、前記複数のテクスチャー表現用語のうちから選択しうる。当該ヒトは、テクスチャー評価に関する訓練を受けたヒトであってもよく、又は、そのような訓練を受けていないヒトであってもよい。本技術では、前記訓練を受けていないヒトが、表現用語の選択及び/又は以下1-3.における組成物の評価を実行しても、適切なテクスチャー評価結果を得ることができる。そのため、本技術の一つの好ましい実施態様において、当該ヒトは、当該訓練を受けていないヒトであってよい。訓練を受けたヒトの数は限られているところ、この実施態様では、評価者の訓練及び選択に要するコストを削減することができる。
【0023】
前記複数のテクスチャー表現用語に含まれていないテクスチャー表現用語が選択されてもよい。例えば、前記複数のテクスチャー表現用語が提示されたヒトが、前記少なくとも一つの段階のそれぞれにおけるテクスチャーを表現するために適切であると考えられるが前記複数のテクスチャー表現用語に含まれていないテクスチャー表現用語を選択してもよい。
【0024】
(摂食用器具)
前記評価者は、好ましくは、所定の器具を用いて、前記摂食嚥下を実行する。前記所定の器具は、例えば当該組成物を定量するために用いられるものであってよい。これにより、テクスチャー評価の条件を統一することができ、テクスチャー評価の精度を高めることができる。例えば、当該器具によって、一口の組成物の温度又は量のばらつきを抑えることができ、テクスチャー評価の精度が高まる。前記器具は、例えば組成物を口腔内へ入れるための食器であってよい。例えば前記組成物がゼリー状組成物である場合、前記器具はスプーン又はスプーン様器具であってよい。前記器具は、フォーク、はし、又はコップであってもよい。なお、本明細書内において、評価対象となる組成物を口腔内へ入れるために用いられる器具を「摂食用器具」ともいう。
【0025】
本技術の好ましい実施態様において、前記摂食用器具はスプーン又はスプーン様器具(例えばスパチュラなど)である。この実施態様における摂食用器具について、
図16を参照しながら説明する。同図は、当該摂食用器具の例であるスプーン又はスプーン様器具の例の模式図である。同図に示されるスプーン13は、皿部131及び柄部132を有する。皿部131に評価対象となる組成物が載せられて、評価者に摂食される。
【0026】
皿部131の幅L1は、例えば10mm~35mm、特には20mm~30mm、より特には24mm~28mmであってよい。
皿部131の長さL2は、例えば20mm~60mm、特には30mm~55mm、より特には40mm~50mmであってよい。
柄部132の長さL3は、例えば100mm~200mm、特には110mm~180mm、より特には120mm~160mmであってよい。
スプーン13の全長(L2+L3)は、例えば100mm~250mm、特には120mm~240mm、より特には150mm~230mm、さらにより特には170mm~220mmであってよい。
【0027】
皿部131が上記の寸法を有することによって、評価者の口に入れる組成物の量が適度に制限される。すなわち、当該摂食用器具は、単回摂取量として、組成物(特にはゼリー状組成物)を、3~30g定量するものであることが好ましく、5~17g定量するものであることがより好ましく、6~8g定量できるものであることがさらに好ましい。このような量は、本技術に従うテクスチャー評価のために適している。すなわち、当該摂取用器具は、このような量の組成物をすくうように構成されていることにより、特にテクスチャー評価に適したものとなる。
また、柄部132の長さ又は前記全長によって、スプーン13を保持する手の熱が、皿部131の載っている評価対象組成物に伝導しにくく、より適切な評価が可能となる。前記器具の材料は、好ましくはプラスチックであり、これにより、柄部132を保持する手の熱が前記評価対象組成物に伝わりにくい。
皿部131の先端T側の形状は、同図に示されるように丸まっていてよく、又は、平らであってもよい。
【0028】
(調整器具)
前記組成物は、所定のサイズ及び/又は形状を有するように調整された状態で、評価者に提供されてよい。これは、より適切な評価結果が得ることに貢献する。前記状態で評価者に前記組成物を提供するために、例えば、組成物のサイズ及び/又は形状を調整する調整器具が用いられてよい。当該調整器具は、例えば抜型であってよい。
前記組成物がゼリー状組成物である場合において、当該ゼリー状組成物は、例えばゼリー用カップ(又はプリン用カップ)に入れられた状態で評価者に提供されてよい。当該カップに入れられた状態のゼリー状組成物を、評価者が前記器具(例えばスプーン)を用いて喫食してよい。この場合、当該カップ1つにつき、例えば30g~100g、特には40g~80gのゼリー状組成物を含んでよい。
また、当該ゼリー状組成物は、ブリックタイプの形状を有していてもよい。この場合、評価者へ、例えば30g~100g、特には40g~80g、より特には40g~60gのゼリー状組成物が、提供される。例えば、当該ゼリー状組成物は、例えば所定の形状へとカットされて、評価者に提供されうる。当該ゼリー状組成物は、例えば2cm~6cm四方、特には3cm~5cm四方の形状へとカットされて、評価者に提供されてよい。
【0029】
(容器)
前記組成物は、所定の容器に入れられた状態で、評価者に提供されてよい。当該容器は、例えば上記で述べたカップであってよい。当該カップの開口部のサイズ(開口が円形の場合は直径、開口が矩形の場合は長辺の長さ)は、例えば40mm~100mm、特には50mm~80mmである。当該カップの底部(底部が円形の場合は直径、開口が矩形の場合は長辺の長さ)は、例えば20mm~80mm、特には30mm~60mmである。また、当該カップの高さは、例えば30mm~100mm、特には30mm~70mmである。当該カップの容量は、例えば50mL~180mL、特には60mL~140mLである。
【0030】
(温度調節設備)
摂食嚥下される当該組成物は、好ましくは、温度を調節する温度調節設備において温度調節されていることが好ましい。当該設備は、例えば加熱設備、恒温設備、又は冷蔵設備であってよい。当該組成物は、所定の温度で評価者に摂食されてよい。代替的には、当該組成物は、前記設備から出した後に、例えば室温で所定時間経過した後に、評価者に摂食されてもよい。これら温度及び時間は、適宜選択されうる。
【0031】
(選択された表現用語の処理)
選択されたテクスチャー表現用語は、前記少なくとも一つの段階のいずれかと関連付けられた状態で、例えば、記録用媒体へと入力される。例えば、選択されたテクスチャー表現用語群は、前記少なくとも一つの段階と、各段階に関連付けられたテクスチャー表現用語群と、を含むデータテーブルとして、記録用媒体に入力されてよい。
図3に、当該入力によって生成されるデータテーブルの例を示す。当該データテーブルは、「口に入れた段階」列と、「舌で潰す段階」列と、「飲み込む段階」列とを含み、各列に、選択された表現用語群が列挙されている。なお、データテーブルの形式は、これに限られない。
当該記録用媒体は、用語を記入可能な記入用媒体であってよい。前記記入用媒体は、例えば紙、紙状シート、又はプラスチックシートなどであってよい。代替的には、当該記録用媒体は、例えば情報処理装置であってよく、特には情報処理装置に備えられた記憶媒体又は記録媒体であってもよい。前記記憶媒体は、例えばメモリであってよい。前記記録媒体は、例えば光学記録媒体又は磁気記録媒体であってよい。
このように、本技術に従うテクスチャー評価方法は、摂食嚥下プロセスに含まれる少なくとも一つの段階と、各段階に関連付けられたテクスチャー表現用語群と、を含むデータテーブルを生成するデータテーブル生成工程を含む。当該データテーブルによって、後述の評価項目の生成の実行がより効率的に行われる。
当該データテーブルは、例えば評価の目的に応じて構築可能である。そのため、このようなデータテーブル生成工程を実行することによって、テクスチャー評価の精度をあげることができる。
また、前記表現用語の選択は、例えば専門家(医療従事者又は製品開発者など)によって行われてよい。これにより、特定の技術分野で使われる専門用語を用いたデータテーブルを構築することも可能である。
【0032】
上記のとおり、選択されたテクスチャー表現用語群は、情報処理装置に入力される。すなわち、本技術に従うテクスチャー評価方法は、摂食嚥下プロセスに含まれる少なくとも一つの段階のそれぞれと関連付けられたテクスチャー表現用語の入力を受け付ける入力受付工程を含んでよい。情報処理装置が、当該入力受付工程を実行してよい。例えば、本技術に従うテクスチャー評価方法は、当該入力受付工程と、入力されたテクスチャー表現用語に基づき生成された評価項目に関する評価結果に基づき、組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程を含んでよい。
【0033】
複数の種類の組成物のそれぞれについて、当該選択が行われてよい。例えば、テクスチャーの違いを把握することが求められる2種類以上の組成物それぞれに対して、当該選択が行われてよい。代替的には、1種類の組成物について、当該選択が行われてもよい。
【0034】
(提示工程を行う実体)
提示工程S1において、前記複数のテクスチャー表現用語が表示された媒体又は前記リストを提示する提示装置が、前記提示を行ってよい。前記媒体は、例えば、前記リストが記載された紙、紙状シート、又はプラスチックシートなどの印刷媒体であってよい。前記提示装置は、前記リストを視認可能又は聴取可能に出力することができる装置であってよく、例えば表示装置又は投影装置などであってよい。
また、前記複数のテクスチャー表現用語の提示は、情報処理装置が実行してもよい。例えば、情報処理装置が、当該装置内に記憶されている前記複数のテクスチャー表現用語を前記提示装置に提示させてもよい。当該情報処理装置の構成例は、以下の2.において説明する。
【0035】
(変形例)
本技術において、複数のテクスチャー表現用語の提示は行われなくてもよい。例えば、ヒトが組成物を摂食嚥下した場合の前記少なくとも一つの段階のそれぞれに関するテクスチャーを表す表現用語として思いついたものが、テクスチャー表現用語として選択されてもよい。例えば、評価対象とする組成物をヒトに摂食嚥下させ、そして、前記少なくとも一つの段階それぞれに関するテクスチャーを表現する表現用語を当該ヒトに選択させてもよい。選択された表現用語の処理は、上記で説明したとおりに実行されてよい。
【0036】
1-2.評価項目生成工程S2
【0037】
評価項目生成工程S2において、組成物について選択されたテクスチャー表現用語に基づき、組成物のテクスチャーを評価するための少なくとも一つの評価項目が生成される。当該評価項目は、上記1-1.において述べた、前記摂食嚥下プロセスのうちの少なくとも一つの段階のそれぞれについて生成されてよい。
【0038】
(評価項目の例)
生成される前記評価項目のそれぞれは、摂食嚥下プロセスを構成する複数の段階のうちの一つの段階に対応する評価項目であってよい。当該複数の段階のそれぞれは、上記1-1.において説明した前記少なくとも一つの段階のいずれかに対応する。評価項目生成工程S2において、上記1-1.において言及した前記少なくとも一つの段階のそれぞれについて、組成物のテクスチャーを評価するための1又は複数(例えば2~10、特には2~5)の評価項目が生成されてよい。
【0039】
前記少なくとも一つの評価項目は、選択されたテクスチャー表現用語群に基づき生成されてよい。選択されたテクスチャー表現用語群に基づき評価項目を生成することによって、例えば、当該評価項目は、組成物のテクスチャーを評価するための尺度として、より適切なものとなりうる。
【0040】
本技術に従い生成される評価項目は、「機械により測定できる物性値に対応する評価項目」及び/又は「機械により測定できる物性値に対応しない評価項目」を含んでよい。
「機械により測定できる物性値に対応する評価項目」は、機械による測定によって定量化された物性値との相関がある評価項目を意味してよい。
「機械により測定できる物性値に対応しない評価項目」として、機械による測定によって定量化された物性値と相関しない評価項目を意味してよい。例えば、ゼリーのかたさに関して、後述の実施例において説明するとおり、機械による測定結果とテクスチャー評価結果とが対応しない場合がある。このようなテクスチャー評価結果をもたらす評価項目が、「機械により測定できる物性値に対応しない評価項目」に該当する。本技術は、機械により測定できる物性値に対応しない評価項目に関するテクスチャー評価を実行することを可能とするので、組成物の適確なテクスチャー把握のために特に有用である。
【0041】
例えば、評価項目生成工程S2において、提示工程S1を行った結果選択された表現用語のうちの意味が同じ又は似ている表現用語群に基づき、各評価項目が生成されてよい。各評価項目の生成において、意味が同じ又は似ている表現用語群と、当該表現用語群と反対の意味を有する表現用語群とに基づき、各評価項目が生成されてもよい。
【0042】
前記少なくとも一つの評価項目は、好ましくは、1対の対称的な表現用語の組合せに関する評価項目である。本明細書内において、「1対の対称的な表現用語の組合せ」とは、「或るテクスチャー表現用語とその反対の意味を有するテクスチャー表現用語との組合せ」、又は、「或るテクスチャー表現用語とその否定の意味を有するテクスチャー表現用語との組合せ」であってよい。1対の対称的な表現用語の組合せに関する評価項目によって、後述のスコア化が行いやすくなる。また、1対の対称的な表現用語の組合せに関する評価項目によって、後述の平均値の算出や出力の仕方の調整が実行しやすくなる。
【0043】
「或るテクスチャー表現用語とその反対の意味を有するテクスチャー表現用語との組合せ」と当該組合せに関する評価項目の例は以下のとおりである。以下のうちの1つ又は2つ以上が、後述の評価表に含まれていてよい。
<組合せの例;組合せに関する評価項目の例>
「なめらか」と「ざらつく」との組合せ;表面のなめらかさ
「つるつる」と「べたべた」との組合せ;表面の付着性
「かたい」と「やわらかい」との組合せ;かたさ
「ぐしゃっとつぶれる」と「なめらかにつぶれる」との組合せ;つぶれ方
「口内でばらける」と「口内でまとまる」との組合せ;食塊のまとまり
【0044】
「或るテクスチャー表現用語とその否定の意味を有するテクスチャー表現用語との組合せ」と当該組合せに関する評価項目の例は以下のとおりである。以下のうちの1つ又は2つ以上が、後述の評価表に含まれていてよい。
<組合せの例;組合せに関する評価項目の例>
「弾力がある」と「弾力がない」との組合せ;弾力
「飲み込みやすい」と「飲み込みにくい」との組合せ;飲み込みやすさ
「口内の残留が少ない」と「口内の残留が多い」との組合せ;残留感
「口どけがよい」と「口どけが悪い」との組合せ;口どけ
「口内に付く」と「口内に付かない」との組合せ;付着性
「口あたりがよい」と「口あたりが悪い」との組合せ;口あたり
【0045】
本技術において、評価項目は、組成物のテクスチャーを評価するための評価項目であり、特には体性感覚に関する評価項目であってよい。ヒトの感覚は、解剖生理学的な観点から、特殊感覚(例えば味覚、嗅覚、聴覚、視覚、及び平衡覚)、体性感覚(例えば触覚)、及び内臓感覚に大別される。本技術において、評価項目は、特殊感覚に関する評価項目及び内臓感覚に関する評価項目を含まなくてよく、体性感覚に関する評価項目のみであってよい。
【0046】
(評価項目に含まれる評価軸)
各評価項目は、例えば、対称的にスコア化可能な評価軸又は対称的にスコアが設けられた評価軸を有してよい。当該評価軸によって、後述の平均値の算出や出力の仕方の調整が実行しやすくなる。
【0047】
「対称的にスコア化可能な評価軸」は、例えば副詞、特には程度の副詞など、の修飾表現を用いて生成されてよい。当該修飾表現の例として、「非常に」、「かなり」、及び「やや」などを挙げることができる。また、当該修飾表現の例として、「最も」、「とても」、「かなり」、「まあまあ」、「いくぶん」、及び「わずかに」なども挙げられる。例えば、前記1対の対称的な表現用語の組合せを構成する2つの表現用語のそれぞれに、同じ修飾表現(副詞)を追加した表現用語群によって、前記評価軸は構成されてよい。例えば評価項目「かたさ」について、
図4Aに示されるとおり、「非常にやわらかい」、「かなりやわらかい」、「やややわらかい」、「ややかたい」、「かなりかたい」、及び「非常にかたい」という表現用語群を、前記評価軸は含んでよい。これら表現用語群は、同図に示されるとおり、評価軸上に対称的に配置されてよい。また、前記評価軸は、これら表現用語群に加えて、評価軸の中央に位置する表現用語を含んでよく、例えば「どちらでもない」などの表現用語を含んでもよい。このような評価軸によって、対称的にスコア化が可能となる。
例えば、「非常にやわらかい」、「かなりやわらかい」、「やややわらかい」、「どちらでもない」、「ややかたい」、「かなりかたい」、及び「非常にかたい」の表現用語群が評価軸上に配置されている評価項目を想定する。これら表現用語群のそれぞれが、本工程又は次の評価結果生成工程S3において、対称的なスコアへとスコア化される。上記7つの表現用語群が、例えば「-3」、「-2」、「-1」、「0」、「1」、「2」、及び「3」へとスコア化されうるが、スコア化後のスコアはこれらの値に限定されない。
【0048】
「対称的にスコア化可能な評価軸」は、例えば前記1対の対称的な表現用語の組合せを構成する2つの表現用語のそれぞれの程度を表す記号を含んでよい。例えば、当該評価軸は、
図4Bに示されるとおり、かたさの程度として「---」、「--」、及び「-」などの記号を含み、且つ、かたさの程度として例えば「+」、「++」、及び「+++」などの記号を含んでよい。これら記号は、評価軸上に対象に配置されてよい。また、前記評価軸は、これら程度を表す記号に加えて、評価軸の中央に位置する記号を含んでよく、例えば「±」などの記号を含んでもよい。このような評価軸によって、対称的にスコア化が可能となる。例えば、「---」、「--」、「-」、「±」、「+」、「++」、及び「+++」がそれぞれ、「-3」、「-2」、「-1」、「0」、「1」、「2」、及び「3」へとスコア化されうる。
【0049】
「対称的にスコアが設けられた評価軸」は、例えば前記1対の対称的な表現用語の組合せを構成する2つの表現用語のそれぞれの程度を表す数値を含んでよい。例えば、
図4Cに示されるとおり、当該評価軸は、やわらかさの程度として、例えば「-3」、「-2」、及び「-1」などの数値を含み、且つ、かたさの程度として、例えば「+1」、「+2」、及び「+3」などの数値を含んでよい。これら数値は、評価軸上に対象に配置されてよい。また、前記評価軸は、これら程度を表す数値に加えて、評価軸の中央に位置する数値を含んでよく、例えば「0」などの数値を含んでもよい。評価軸は、このように対称的にスコアが設けられていてよい。
【0050】
(評価項目を含む評価表)
評価項目生成工程S2において、テクスチャー評価において用いられる評価表が生成されてもよい。当該評価表は、前記少なくとも一つの段階それぞれにおけるテクスチャー評価のための1又は複数の評価項目を含んでよい。そして、当該評価項目のそれぞれが、上記で述べた評価軸を含んでよい。
評価表の例を
図5に示す。
図5に示される評価表は、「口に入れた段階」について、「表面のなめらかさ」及び「表面の付着性」という2つの評価項目を有する。評価項目「表面のなめらかさ」の評価軸は、「非常になめらか」、「かなりなめらか」、「ややなめらか」、「どちらでもない」、「ややざらつく」、「かなりざらつく」、及び「非常にざらつく」という7段階の評価段階を有する。これらの評価段階にはそれぞれ「-3」、「-2」、「-1」、「0」、「1」、「2」、及び「3」のスコアが予め割り当てられていてよい。他の評価項目の評価軸中の評価段階についても、同様にスコアが割り当てられていてよい。
【0051】
このような評価表又は評価項目は、組成物のテクスチャー特性を体系的かつ精緻に把握することに役立つ。加えて、このような評価表又は評価項目は、目的に応じた評価を的確に行えるように自由自在にアレンジされることもできる。
例えば、製品改良前後での差の検証や、特定の摂食嚥下障害(送り込み障害、唾液減少など)へのアプローチなどでは、以下の工夫によって様々な課題の解決に繋げられると期待できる。
まず、上記で述べた、予め用意したデータテーブルを用いることによって、評価項目の内容及び数を、より適切に又はより専門的に設定することができる。
次に、摂食嚥下プロセスの段階毎に評価項目が設定される。特定の段階に特化した評価項目によって、評価者が当該段階における評価に集中しやすくなる。これにより、回答の精度があがり、さらにはバラつきの抑制又は再現性の向上も可能となる。また、上記のとおり段階毎の評価項目の設定によって、官能評価の訓練を受けていない人や、官能評価の訓練ができない人(患者など)によっても、一定のクオリティーを有するデータを得ることができる。また、上記のとおり段階毎の評価項目の設定によって、評価者の人数も少なくすることができる。例えば10人以下でも一定のクオリティーを有するデータを得ることができる。さらに、このような評価方法は、製品開発においてルーチン的に行われる製品評価に利用することもでき、データを蓄積しやすくなる。
【0052】
(生成された評価項目の処理)
上記のとおりに生成された評価項目(又は評価項目を含む評価表)は、記録用媒体へと入力される。例えば、生成された評価項目は、前記少なくとも一つの段階と、各段階に関連付けられた評価項目と、を含む評価表の形式で、記録用媒体に入力されてよい。
当該記録用媒体は、記入可能な記入用媒体であってよい。前記記入用媒体は、例えば紙、紙状シート、又はプラスチックシートなどであってよい。
代替的には、当該記録用媒体は、例えば、情報処理装置に備えられた記憶媒体又は記録媒体であってもよい。前記記憶媒体は、例えばメモリであってよい。前記記録媒体は、例えば光学記録媒体又は磁気記録媒体であってよい。
【0053】
すなわち、本技術に従うテクスチャー評価方法は、摂食嚥下プロセスに含まれる少なくとも一つの段階のそれぞれと関連付けられたテクスチャー評価項目の入力を受け付ける入力受付工程を含んでよい。例えば、本技術に従うテクスチャー評価方法は、当該入力受付工程と、当該評価項目に関する評価結果に基づき、組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程を含んでよい。
【0054】
(評価項目生成工程を実行する実体)
前記評価項目の生成は、例えば情報処理装置により実行されてよい。例えば、上記1-1.で述べた用語の選択によって選択された表現用語群を、情報処理装置が取得し、そして、当該情報処理装置が、取得した表現用語群に基づき、前記評価項目を生成しうる。
【0055】
1-3.評価結果生成工程S3
【0056】
評価結果生成工程S3において、評価項目生成工程S2において生成された前記評価項目に関する評価結果に基づき、前記ゼリー状組成物のテクスチャー評価結果が生成される。
【0057】
(評価項目の提示)
本技術に従うテクスチャー評価方法は、評価項目(又は評価項目を含む評価表)を評価者に提示する評価項目提示工程を含んでよい。
当該提示は、当該評価項目(又は当該評価表)が表示された媒体又は当該評価項目(又は当該評価表)を提示する提示装置が行ってよい。前記媒体は、例えば、当該評価項目が記載された紙、紙状シート、又はプラスチックシートなどの印刷媒体であってよい。前記提示装置は、前記評価表を視認可能又は聴取可能に出力することができる装置であってよく、例えば表示装置又は投影装置などであってよい。
また、前記提示は、情報処理装置が実行してもよい。例えば、情報処理装置が、当該装置内に記憶されている当該評価項目(又は当該評価表)を前記提示装置に提示させてもよい。
このように、本技術は、前記評価表提示工程を実行することを含む組成物のテクスチャー評価方法も提供する。例えば、本技術は、前記評価表提示工程と、当該評価表を用いた組成物のテクスチャー評価の結果を生成するテクスチャー評価結果生成工程と、を含むテクスチャー評価方法も提供する。
【0058】
(組成物の評価)
評価結果を生成するために、評価項目生成工程S2において生成された評価項目についての、組成物のテクスチャー評価が行われてよい。当該テクスチャー評価を行うために、例えば、前記複数の段階それぞれにおけるテクスチャー評価のための1又は複数の評価項目を含む評価表が用いられてよい。当該評価表は、例えば紙又はプラスチックなどの印刷媒体として構成されてよく、又は、例えばディスプレイなどの表示装置により表示されてもよい。
【0059】
組成物のテクスチャー評価者は、当該組成物を摂食嚥下し、そして、当該摂食嚥下の際の各評価項目に関するテクスチャー評価の結果を、前記評価表に記入又は入力する。
当該テクスチャー評価者は、好ましくは、所定の摂食用器具を用いて、前記摂食嚥下を実行する。当該所定の摂食用器具について、上記1-1.において説明した摂食用器具に関する説明が当てはまる。
好ましくは、当該所定の器具は、上記提示工程S1において用いられた器具と同じである。これにより、評価精度さらに高めることができる。
また、この評価においても、上記1-1.において説明したように、前記組成物は、所定のサイズ及び/又は形状を有するように調整された状態で評価者に提供されてよく、また、前記組成物は、所定の容器に入れられた状態で、評価者に提供されてよい。
摂食嚥下される当該組成物は、好ましくは、温度を調節する設備において温度調節されていることが好ましい。これにより、テクスチャー評価の条件を統一することができ、テクスチャー評価の精度を高めることができる。当該設備は、例えば加熱設備、恒温設備、又は冷蔵設備であってよい。当該組成物は、所定の温度で評価者に摂食されてよい。代替的には、当該組成物は、前記設備から出した後に、例えば室温で所定時間経過した後に、評価者に摂食されてもよい。これら温度及び時間は、適宜選択されうる。
前記評価表は、評価項目生成工程S2に関して述べたとおりであってよい。例えば、前記評価表に含まれる評価項目は、対称的にスコア化可能な評価軸又は対称的にスコアが設けられた評価軸を有する。この評価項目に関して評価が行われることによって、対称的にスコア化可能な評価軸又は対称的にスコアが設けられた評価軸を用いて行われたテクスチャー評価の結果が得られる。当該結果が、組成物のテクスチャー評価結果を生成するために用いられてよい。
【0060】
前記評価項目は、組成物の摂食嚥下プロセスを通じて連続的に又は経時的に評価されるものでなくてよい。例えば、前記評価項目は、組成物を1口摂取した場合の1回の摂食嚥下プロセス全体を通じて連続的に評価されるものでなくてよい。すなわち、本技術における組成物の評価は、摂食嚥下プロセスにおける感覚の変化を連続的な時間の中で追う評価でなくてよい。本技術では、組成物の評価において、上記のとおりの評価項目中のいずれかのスコアが選択されてよい。このような選択は、上記のとおりの連続的又は経時的な評価と比べて、評価者の負担が少ない。
また、前記評価項目は、例えば筋電位測定装置などの分析装置によって評価されるものでなくてよい。本技術では、分析装置によって捉えられるテクスチャーだけでなく、分析装置によって捉えられないテクスチャーも評価することができる。
【0061】
(評価結果の処理)
評価結果生成工程S3において、情報処理装置は、各評価項目についての評価結果の入力を受け付ける。当該入力は、例えば、情報処理装置に備えられた入力装置(例えばキーボード又はマウス)によって行われてよい。このようにして、情報処理装置は、各評価項目についての評価結果を取得しうる。代替的には、情報処理装置は、各評価項目についての評価結果を、ネットワークを介して取得してよい。
【0062】
評価結果生成工程S3は、好ましくは、各評価項目について、評価結果の平均値を算出することを含む。平均値の算出のために、組成物のテクスチャー評価者の数は複数であってよく、例えば3人以上、4人以上、又は5人以上であってよい。組成物のテクスチャー評価者の数は、例えば100人以下、50人以下、又は30人以下であってもよい。
【0063】
評価結果生成工程S3において前記平均値を算出するために、上記で述べた評価軸上のスコアが用いられてよく、又は、評価軸上の表現用語又は記号をスコア化して生成されたスコアが用いられてもよい。同じ組成物について複数の評価者が評価して得られた評価結果の平均値が算出されてよい。当該平均値は、評価項目ごとに算出されてよい。当該平均値は、評価項目の評価結果として利用されうる。
【0064】
評価結果生成工程S3は、評価項目間での評価結果の相関を求める工程を実行することを含んでよい。当該相関は、より具体的には相関係数である。前記評価項目間での評価結果の相関は、一つの評価項目の平均値と他の評価項目の平均値との間の相関係数であってよい。評価結果の相関は、例えば、全ての評価項目から選択可能な2つの評価項目の組合せの全て又は一部について算出されてよい。評価結果の相関によって、評価結果の出力の仕方を、より理解しやすくなるように又はより見やすくなるように調整することができる。例えば評価結果に基づきレーダーチャート、散布図、棒グラフなどのグラフを作成する場合に、前記相関に基づき評価項目の配置の仕方を調整することによって、評価結果をより理解しやすくなるように又はより見やすくすることができる。
【0065】
前記レーダーチャートは、例えば各評価項目を軸とし、且つ、各評価項目の平均値が当該軸上にプロットされたレーダーチャートであってよい。前記レーダーチャートに含まれる軸の数は、例えば3以上、4以上、又は5以上であってよい。当該軸の数の上限は、例えば20以下、18以下、又は15以下であってよい。前記レーダーチャートには、生成された評価項目のうち全てが軸として採用されてよく、又は、一部が軸として採用されてもよい。
前記レーダーチャートには、互いに異なる複数種の組成物のテクスチャー評価結果がプロットされてよく、又は、互いに異なる2以上の時点又は互いに異なる2以上の条件下における1つの組成物についてのテクスチャー評価結果がプロットされてもよい。
【0066】
前記散布図は、例えば生成された評価項目のうちの一つ又は二つを軸とし、且つ、これら評価項目の平均値がプロットされた散布図であってよい。当該散布図には、互いに異なる複数種の組成物のテクスチャー評価結果がプロットされてよく、又は、互いに異なる2以上の時点又は互いに異なる2以上の条件下における1つの組成物についてのテクスチャー評価結果がプロットされてもよい。
前記散布図が、生成された評価項目のうちの一つを軸とするものである場合、例えばもう一つの軸として、時間が採用されてよい。これにより、例えば、一つの組成物について異なる2以上の時点においてテクスチャー評価を実施した場合におけるテクスチャーの変化を示すことができる。
【0067】
前記棒グラフは、各評価項目の平均値が各棒として表示された棒グラフであってよい。前記棒グラフには、生成された評価項目のうち全てが軸として採用されてよく、又は、一部が軸として採用されてもよい。前記棒グラフは、例えば1つ又は2つの象限を有してよい。2つの象限を有する場合、一部の棒が1つの象限に表示され、残りの棒がもう一つの象限に表示されてよい。
【0068】
評価結果生成工程S3は、少なくとも前記相関に基づき、評価結果の出力の仕方を調整することを含んでよい。例えば、評価結果生成工程S3は、前記相関と、評価項目が関連付けられた段階とに基づき、評価結果の出力の仕方を調整することを含んでよい。
前記評価項目が関連付けられた段階に基づく調整は、摂食嚥下プロセスに含まれる1つの段階に関連付けられた複数の評価項目が集合して表示されるように行われてよい。言い換えると、摂食嚥下プロセスに含まれる1つの段階に関連付けられた或る評価項目に関する評価結果が、他の段階に関連付けられた複数の評価項目に関する評価結果の間に配置されないように、前記調整が行われてよい。例えば、口に入れた段階に関する評価項目の評価結果が、飲み込む段階に関する2つの評価項目の評価結果の間に配置されないように、出力の仕方の調整が行われる。そして、当該集合が維持されるように、後述の、相関に基づく配置調整が行われてよい。
【0069】
例えば、当該評価結果の出力の仕方の調整は、評価項目の配置の仕方の調整であってよい。評価項目の配置の仕方は、グラフ中の評価項目の配置の仕方であってよく、又は、表中の評価項目の配置の仕方であってもよい。
前記相関に基づく評価項目の配置の仕方の調整は、例えば、相関のより強い2つの評価項目をより近くに配置することであってよく、特には相関係数のより大きい2つの評価項目をより近くに配置することであってよい。
【0070】
また、当該評価結果の出力の仕方の調整は、記入済み又は入力済み評価表から取得されたスコアの調整処理を含んでもよい。当該スコアの調整処理は、例えば、記入済み又は入力済み評価表から取得されたスコアの正負記号の反転処理、又は、スコア群から算出された平均値の正負記号の反転処理であってもよい。
評価結果がレーダーチャートを含む場合、これらの反転処理は、例えば、レーダーチャートがより円形に近くなるように又はレーダーチャートの凹みの部分がより少なくなるように実行されてよい。
評価結果が棒グラフ又は散布図を含む場合、これらの反転処理は、棒グラフや散布図を構成するより多くの棒又は点が、1つの象限内に収まるように実行されてもよい。
【0071】
評価結果生成工程S3は、グラフ化された評価結果を生成することを含んでよい。当該グラフ化された評価結果は、例えばレーダーチャート、棒グラフ、又は散布図などのグラフであってよいが、これらに限定されない。前記グラフ化された評価結果は、前記相関係数に基づき、評価項目の配置の仕方が調整されたグラフを含んでよい。
【0072】
(テクスチャー評価結果生成工程を実行する実体)
評価結果生成工程S3は、例えば情報処理装置により実行されてよい。当該情報処理装置は、評価項目生成工程S2を実行する情報処理装置であってよいが、別の情報処理装置であってもよい。
【0073】
1-4.出力工程S4
【0074】
本技術に従うテクスチャー評価方法は、評価結果生成工程S3において生成された評価結果を出力する出力工程S4を含んでもよい。出力工程S4において、当該評価結果が、紙又はプラスチックシートなどの印刷媒体に出力されてよく、又は、表示装置などの表示媒体に出力されてもよい。例えば、評価結果生成工程S3を実行した情報処理装置が、出力工程S4を実行してよい。
【0075】
2.テクスチャー評価システム
【0076】
本技術は、テクスチャー評価システムも提供する。当該テクスチャー評価システムは、上記1.において述べた工程S1~S4のうちの1つ、2つ、3つ、又は4つを実行するように構成されていてよい。
【0077】
本技術のテクスチャー評価システムの例を
図6に示す。同図に示されるとおり、テクスチャー評価システム1は、例えば情報処理装置10、複数のテクスチャー表現用語が記載された媒体(特には表現用語リスト)11、及び評価表12のうちの1つ、2つ、又は3つ全てを含んでよい。さらに、テクスチャー評価システム1は、テクスチャー評価の対象となる組成物を定量するために(又は評価者が摂食するために)用いられる器具(図示されていない)、当該組成物の温度を調節する設備、又は当該器具及び当該設備の両方を含んでもよい。
また、本技術は、評価表12を含むテクスチャー評価システムも提供する。当該テクスチャー評価システムは、評価表12に加えて、前記器具及び/又は前記設備を含んでもよい。当該テクスチャー評価システムは、さらに、情報処理装置10及び/又は媒体11を含んでもよい。評価表12によって又は評価表12と前記器具及び/又は前記設備との組合せによって、組成物(特にはゼリー状組成物)のテクスチャー評価を適切に実施することができる。
これらの構成要素について、以下で説明する。
【0078】
情報処理装置10は、例えば工程S3を実行するように構成されてよく、又は、工程S2及びS3を実行するように構成されてもよい。具体的には、当該情報処理装置は、摂食嚥下プロセスに関するテクスチャー表現用語リストのうちから選択されたテクスチャー表現用語に基づき、組成物のテクスチャーを評価するための評価項目を生成する評価項目生成工程、及び前記評価項目に関する評価結果に基づき、前記組成物のテクスチャー評価結果を生成する評価結果生成工程を実行するように構成されていてよい。情報処理装置10はさらに、提示工程S1及び/又は出力工程S4を実行するように構成されていてもよい。
【0079】
前記情報処理装置の構成例を
図7に示す。
図7に示される情報処理装置10は、処理部101、記憶部102、入力部103、出力部104、及び通信部105を備えている。情報処理装置10は、例えば汎用のコンピュータにより構成されてよい。
【0080】
処理部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びRAMを含みうる。CPU及びRAMは、例えばバスを介して相互に接続されていてよい。バスには、さらに入出力インタフェースが接続されていてよい。バスには、当該入出力インタフェースを介して、入力部103、出力部104、及び通信部105が接続されていてよい。
【0081】
処理部101は、さらに、記憶部102からデータを取得し又は記憶部102にデータを記録できるように構成されていてよい。記憶部102は、各種データを記憶する。記憶部102は、例えば、以下のデータのうちのいずれか1つ又は複数を記憶できるように構成されていてよい:
提示工程S1において提示される表現用語リストに関するデータ、
提示工程S1において選択された表現用語群に関するデータ(例えば前記少なくとも一つの段階と、各段階に関連付けられたテクスチャー表現用語群と、を含むデータテーブルなど)、
評価項目生成工程S2において生成された評価項目に関するデータ、
評価項目生成工程S2において生成された評価項目を生成するために用いられるデータ、
評価項目生成工程S2において生成された評価項目を含む評価表に関するデータ、及び
評価結果生成工程S3において生成されたテクスチャー評価結果データ、
及び前記判定工程における判定結果に関するデータなどを記憶できるように構成されていてよい。
【0082】
また、記憶部102には、オペレーティング・システム(例えば、WINDOWS(登録商標)、UNIX(登録商標)、又はLINUX(登録商標)など)、本技術に従うテクスチャー評価方法(特には当該方法に含まれる少なくとも一つの工程)を情報処理装置10(特には処理部)に実行させるためのプログラム、及び他の種々のプログラムが格納されうる。なお、これらのプログラムは、記憶部102に限らず、記録媒体に記録されていてもよい。
【0083】
入力部103は、各種データの入力を受け付けることができるように構成されているインタフェースを含みうる。入力部103は、そのような操作を受けつける装置として、例えばマウス、キーボード、及びタッチパネルなどを含みうる。
【0084】
出力部104は、各種データの出力を行うことができるように構成されているインタフェースを含みうる。例えば、出力部104は、前記出力工程において、テクスチャー評価結果を出力しうる。出力部104は、当該出力を行う装置として例えば表示装置及び/又は印刷装置などを含みうる。
【0085】
通信部105は、情報処理装置10をネットワークに有線又は無線で接続するように構成されうる。通信部105によって、情報処理装置10は、ネットワークを介して各種データを取得することができる。取得したデータは、例えば記憶部102に格納されうる。通信部105の構成は当業者により適宜選択されてよい。
【0086】
情報処理装置10は、例えばドライブ(図示されていない)などを備えていてもよい。ドライブは、記録媒体に記録されているデータ(例えば上記で挙げた各種データ)又はプログラムを読み出して、RAMに出力することができる。記録媒体は、例えば、microSDメモリカード、SDメモリカード、又はフラッシュメモリであるが、これらに限定されない。
【0087】
表現用語リスト11は、複数のテクスチャー表現用語を含み、組成物のテクスチャー評価のための評価項目を生成するための表現用語の選択において参照される。当該表現用語リストは、上記1.において説明したとおりであってよい。
【0088】
評価表12は、組成物を摂食嚥下した際のテクスチャー評価結果が記入される。当該評価表は、上記1.において説明したとおりであってよく、例えば摂食嚥下プロセスに含まれる複数の段階のそれぞれにおけるテクスチャー評価のための評価項目、及び、当該評価項目に対応する評価軸を含んでよい。当該評価項目及び当該評価軸も、上記1.において説明したとおりであってよい。評価表12は、印刷媒体に印刷された状態で(すなわち評価シートとして)によって評価者に提示されてよく、又は、表示装置に表示された状態で評価者に提示されてもよい。
【0089】
前記器具は、テクスチャー評価の対象となる組成物を定量するために用いられてよく及び/又は当該組成物を評価者が摂食するために用いられる。前記器具は、当該定量及び/又は当該摂食を可能とするように構成されうる。前記定量によって、テクスチャー評価の条件を統一することができ、テクスチャー評価の精度を高めることができる。前記器具は、所定の容量を有することが好ましく、例えば、組成物がテクスチャー評価のために摂食されるべき量を収容できるように構成されうる。前記器具の形状は、テクスチャー評価の対象となる組成物の種類に応じて適宜選択されてよい。前記器具は、例えば組成物を口腔内へ入れるための食器であってよい。例えば前記組成物がゼリー状組成物である場合、前記器具はスプーン又はスプーン様食器であってよい。前記器具は、フォーク、はし、又はコップであってもよい。
前記設備は、当該組成物の温度を調節するように構成された設備であり、例えば加熱設備、恒温設備、又は冷蔵設備であってよい。例えば前記組成物がゼリー状組成物である場合、前記設備は冷蔵設備であってよい。当該設備によって、テクスチャー評価の条件を統一することができ、テクスチャー評価の精度を高めることができる。
【0090】
以下で実施例を参照して本技術をより詳しく説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
3.実施例
【0092】
本技術に従うテクスチャー評価方法は、例えば以下のとおりに行われてよい。
【0093】
3-1.表現用語の選択
医療介護向けゼリー食品の食感を表す表現用語を以下のとおりに選択する。
(1)ゼリーを複数種類用意し、複数の評価者が、当該複数種のゼリーを、所定の器具を用いて喫食する。当該ゼリーは、温度調節設備(例えば冷蔵庫)に保管されていてよく、喫食時に当該設備から取り出されうる。
(2)各評価者は、ゼリーを口に入れてから飲み込むまでを、「口にいれた時(例えば口に入れた瞬間)」、「舌で潰した時」、及び「飲み込む時」の3段階に分け、各段階で感じる食感について、思いついた用語を用紙に書き出す。この手順が、複数種のゼリーそれぞれについて行われる。
【0094】
3-2.表現用語の集計
上記3段階のそれぞれについて、例えば以下のとおり、前記複数の評価者が選択した表現用語を情報処理装置に入力し、カテゴリー化する。
(1)上記3-1.において選択された評価用語を、各段階に関連付けられた状態で情報処理装置に入力する。当該表現用語の入力を受け付けた情報処理装置は、各段階と関連付けられた表現用語群を含むデータテーブルを生成する。当該データテーブルの例は、上記で説明した
図3に示されている。
(2)当該情報処理装置は、各段階について、或る表現用語と、当該或る表現用語に似ている表現用語と、当該或る表現用語と反対の意味を有する表現用語と、当該反対の意味を有する表現用語に似ている表現用語とが、1つのカテゴリーとしてまとめられたデータテーブルを生成する。例えば評価を実施するヒトによって、表現用語のカテゴリーが変更されてよく、又は、表現用語の削除が行われてもよい。当該データテーブルの例が
図8に示されている。当該データテーブルは、各段階について1以上のカテゴリーを含む。各カテゴリーに、1以上の表現用語が関連付けられている。
【0095】
3-3.テクスチャー評価シートの生成
上記のとおりにカテゴリー化された表現用語に基づき、例えば以下のとおりに評価項目を生成する。
(1)各カテゴリーに含まれる表現用語群に基づき、評価項目の名称が選択される。各評価項目の名称は、例えば、各カテゴリーに含まれる表現用語群中に存在する文字に基づき設定されてよい。評価項目の名称は、例えば情報処理装置が、各カテゴリーに含まれる表現用語群に基づき自動的に付してよい。代替的には、情報処理装置は、各カテゴリーに含まれる表現用語群に基づきヒトが選択した評価項目の名称の入力を受け付けてもよい。また、生成された全てのカテゴリーについて評価項目の名称が選択されてよく、生成された全てのカテゴリーのうち一部のカテゴリーについてだけ評価項目の名称が選択されてよい。例えば、カテゴリーに含まれる表現用語の数が多いカテゴリーについてだけ評価項目の名称が選択されてよく、例えば表現用語数の多さが上位1位~10位、例えば1位~5位であるカテゴリーについてだけ評価項目の名称が選択されてよく、選択された名称が、評価項目として採用されてよい。このようにして採用された評価項目は、組成物のテクスチャー評価のためにより適している。
(2)各評価項目について評価軸が設定される。例えば、評価項目「かたさ」についての評価軸は、「非常にかたい」、「かなりかたい」、「ややかたい」、「どちらともいえない」、「やややわらかい」、「かなりやわらかい」、及び「非常にやわらかい」という、対称的に構成された7つの評価段階を含む。これらの評価段階のそれぞれについて、「+3」、「+2」、「+1」、「0」、「-1」、「-2」、及び「-3」の対称的なスコアが割り当てられる。
各評価項目の評価軸は、当該情報処理装置が、当該評価項目の名称及び/又は当該評価項目の名称が付されたカテゴリーに含まれる表現用語と、所定の評価軸設定情報と、に基づき生成してよい。当該評価軸設定情報は、例えば、評価段階の数に関する情報、修飾表現の種類に関する情報、及び、各評価段階に割り当てられるスコアに関する情報を含んでよい。
代替的には、当該情報処理装置は、各カテゴリーに含まれる表現用語群に基づきヒトが選択した評価項目の名称の入力を受け付けてもよい。
(3)他のカテゴリーについても、上記(2)と同様に評価項目の名称を付し、評価軸を設定する。評価軸上の評価段階の数は、各段階に含まれる評価項目について同じであってよく、さらには、全ての評価項目について同じであってもよい。また、割り当てられるスコアも、各段階に含まれる評価項目について同じであってよく、さらには、全ての評価項目について同じであってもよい。
(4)当該情報処理装置は、以上のとおりに設定された評価項目と各評価項目の評価軸とを含む評価表を生成する。当該評価表の例は、上記で
図5を参照して説明したとおりである。当該情報処理装置が、当該評価表を印刷装置に出力させて評価シートが得られてよい。代替的には、当該情報処理装置は、当該評価表を表示装置に出力させてよく、当該出力された評価表が評価シートとして用いられてよい。
【0096】
3-4.評価対象となる組成物の準備及び評価
複数の評価者が、評価対象となる複数種のゼリーを、所定の器具を用いて摂食嚥下し、そして、当該摂食嚥下の際のテクスチャーの評価結果を、前記評価シートに記入する。例えば、前記評価シート中の各評価項目の評価軸上のうちの複数の評価段階のうちから、該当する評価段階を選択する。
当該ゼリーは、温度調節設備(例えば冷蔵庫)に保管されていてよく、当該摂食嚥下を行う前に、当該設備から取り出されうる。
【0097】
3-5.評価結果の入力及びグラフ化
上記3-4.において行われた評価結果が、情報処理装置に入力される。当該情報処理装置は、各評価項目について、全ての評価者の点数から平均値を算出する。そして、当該情報処理装置は、これら平均値を用いて、テクスチャー評価結果を生成する。テクスチャー評価結果は、例えば、前記平均値を含む表及び/又は前記平均値に基づき生成されたグラフを含んでよい。当該グラフは、例えばレーダーチャート、散布図、又は棒グラフであるが、これらに限定されない。
【0098】
前記グラフ化において、当該情報処理装置は前記平均値の正負反転処理を実行してよい。当該正負反転処理は、例えば、レーダーチャートがより円形に近くなるように実行されてよく、又は、散布図中のより多くの点若しくは棒グラフ中のより多くの棒が1つの象限に含まれるように実行されてもよい。
【0099】
前記グラフ化において、当該情報処理装置は、前記平均値間の相関係数を算出する処理を実行してもよい。そして、当該情報処理装置は、算出された相関係数に基づき、グラフ中の評価項目の配置を調整する配置調整処理を実行しうる。当該配置調整処理は、例えば、レーダーチャートがより円形に近くなるように実行されてよく、又は、散布図中のより多くの点若しくは棒グラフ中のより多くの棒が1つの象限に含まれるように実行されてもよい。当該配置調整処理は、或る段階に関連付けられた評価項目が、他の段階に関連付けられた2つの評価項目の間に配置されないように、実行されてよい。
【0100】
当該情報処理装置は、前記正負反転処理及び前記配置調整処理のうちの一方を実行してよく、又は、両方を実行してもよい。
【0101】
3-6.テクスチャー評価結果の例1(レーダーチャート)
【0102】
上記3-1.~3-5.に記載されたとおりに、3種類のゼリー状組成物(試料1~3という)についてテクスチャー評価を行い、各評価項目についての平均値を算出した。
図9及び10に、当該算出された平均値を用いて生成されたレーダーチャートを示す。
図9に示されるレーダーチャートに含まれる各試料のプロットを結んだ線は、中心に向かって凹んでいる部分を含み、また、3種の試料の評価結果も対比しにくい。
そこで、
図9のレーダーチャートを生成するために用いられた各評価項目の平均値の一部について前記正負反転処理を行った。加えて、各評価項目間の平均値に基づき、前記配置調整処理を行った。これらの処理を行って得られたレーダーチャートが
図10に示されている。前記配置調整処理において、2つの評価項目の全ての組合せについて、平均値の相関係数が算出された。そして、各段階に含まれる評価項目群の集合状態が維持されるように、且つ、相関係数のより高い組合せがより近くに配置されるように、評価項目の配置が調整された。
図10に示されるレーダーチャートは、
図9に示されるレーダーチャートに比べて、3種の試料のテクスチャー評価結果を対比しやすい。このように、前記正負反転処理及び/又は前記配置調整処理によって、テクスチャー変化をより適確に把握することができる。
【0103】
次に、3種類のゼリー状組成物(試料4~6)について、テクスチャー評価シートを用いてテクスチャー評価を行った。当該テクスチャー評価シートは、試料1~3の評価において用いられたシート(評価項目の数は6)よりも多い、10の評価項目を有するものであった。各評価項目についての平均値を算出した。
図11及び12に、当該算出された平均値を用いて生成されたレーダーチャートを示す。
図11及び12に示される結果のうち、評価項目1-1及び1-2が、「口にいれた時」に関する評価項目である。評価項目2-1~2-4が、「舌で潰した時」に関する評価項目である。評価項目3-1~3-4が、「飲み込む時」に関する評価項目である。
図11に示されるレーダーチャートに含まれる各試料のプロットを結んだ線は、中心に向かって凹んでいる部分を含み、また、3種の試料の評価結果も対比しにくい。
そこで、
図11のレーダーチャートを生成するために用いられた各評価項目の平均値の一部について前記正負反転処理を行った。加えて、各評価項目間の平均値に基づき、前記配置調整処理を行った。これらの処理を行って得られたレーダーチャートが
図12に示されている。
図12に示されるレーダーチャートは、
図11に示されるレーダーチャートに比べて、3種の試料のテクスチャー評価結果を対比しやすい。このように、前記正負反転処理及び/又は前記配置調整処理によって、テクスチャー変化をより適確に把握することができる。
【0104】
また、レーダーチャートは、例えば評価項目数が10である
図11に示されるように、評価項目の数が多い場合において特に、試料間の評価結果を比較しづらくなる場合がある。そこで、本技術に従い、前記正負反転処理及び/又は前記配置調整処理を実行することによって、
図12に示されるように、試料間の評価結果を比較しやすくなる。そのため、本技術は、評価項目の数が多い場合、例えば評価項目の数が6以上、7以上、8以上、9以上、又は10以上である場合に、特に顕著な効果が発揮される。
すなわち、レーダーチャートに示される評価項目の数は6以上、7以上、8以上、9以上、又は10以上であってよい。レーダーチャートに示される評価項目の数は、例えば20以下、15以下であってよい。
【0105】
3-7.テクスチャー評価結果の例2(散布図)
【0106】
上記3-1.~3-5.に記載されたとおりに、4種類のゼリー状組成物(試料7~10という)についてテクスチャー評価を行い、各評価項目についての平均値を算出した。当該テクスチャー評価は、これらゼリー状組成物を冷蔵庫(約2℃~5℃)から常温環境(15℃~25℃)に出した直後(室温放置0分後)及び室温環境に出し40分経過後(室温放置40分後)に行われた。
図13及び14に、かたさ(口に入れた時)及び付着性(飲み込む時)の平均値の散布図を示す。
【0107】
図13及び14から、室温放置0分後と室温放置40分後との間で、テクスチャーが変化していることが分かる。
同じ組成物であっても、その温度によってテクスチャーが変化するが、そのテクスチャー変化は把握しにくく、さらに、定量化しにくい。上記のグラフより、本技術に従うテクスチャー評価方法によって、このようなテクスチャー変化を適確に把握することができることが分かる。
このように、本技術に従う評価方法は、組成物の温度の変化に伴うテクスチャー変化を評価するために用いられてよく、又は、組成物の時間経過に伴うテクスチャー変化を評価するために用いられてもよい。
【0108】
3-8.テクスチャー評価結果の例3(棒グラフ)
【0109】
上記3-1.~3-5.に記載されたとおりに、1種類のゼリー状組成物(試料11という)についてテクスチャー評価を行い、各評価項目についての平均値を算出した。当該テクスチャー評価は、当該試料の保管開始時、3週間保管後、6週間保管後、及び12週間保管後に行われた。さらに、これら4つの時点で、かたさを分析機械(クリープメータ、株式会社山電)によって測定した。
図15に、試料11に関する分析機械によるかたさ測定結果及び評価項目「かたさ」についての平均値を示す。
【0110】
図15に示される結果より、試料11の分析機械により測定されるかたさは12週間の保管後にわたって変化はほぼ無いものの、本技術に従うテクスチャー評価方法によって、テクスチャーが変化していること、特には徐々にやわらかくなっていることが分かる。
以上の結果より、本技術に従うテクスチャー評価方法によって、分析装置によって定量化される物性値では把握できないテクスチャー及びその変化を、適確に把握することができることが分かる。