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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】往復動切断工具
(51)【国際特許分類】
   B23D 49/16 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B23D49/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021053894
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151021
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇太
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 智大
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03269197(US,A)
【文献】特開2019-209455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D45/00-65/04
B27G 1/00-23/00
B27B 1/00-23/00
B25F 1/00- 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
棒状のスライダと、
前記スライダの延在方向を前後方向とし、前記モータの回転を前後方向の往復動に変換して前記スライダに伝達する往復動変換機構と、
被加工材に作用する作用部を有する先端工具を、前記作用部が下側及び上側の少なくとも一方となる状態で装着可能であり、前記スライダの前端部に配置されている先端工具保持部と、
前記スライダの前記往復動に伴い、前記先端工具保持部を上下方向へオービタル運動させるオービタル機構と、
前記オービタル機構による前記オービタル運動の有無及び程度の少なくとも何れかに係るオービタル状態の切替を行うオービタル切替機構と、
を備えており、
前記オービタル切替機構は、左右方向に延在する軸状部分を含んでおり、
前記軸状部分は、前記スライダを直接的に又は間接的に支持可能な支持面を有しており、
前記支持面は、前記軸状部分における左右方向の仮想的な中心軸より前側の部分である第1部分と、前記中心軸より後側の部分である第2部分と、を有しており、
前記オービタル機構は、前記スライダの下部又は上部に対する直接的な又は間接的な接触が可能なカム部を含み、
前記カム部の前記スライダに対する前記接触により、前記先端工具保持部の前記オービタル運動が行われ、
前記オービタル切替機構は、
前記カム部が前記スライダへの前記接触を行わず、又は前記カム部の一部が前記スライダへの前記接触を行う状態である第1オービタル状態と、
前記第1オービタル状態において前記スライダへの前記接触を行う前記カム部の前記一部より大きい前記カム部の部分、又は前記カム部の全体が前記スライダへの前記接触を行う状態である第2オービタル状態と、
の切替を行う
ことを特徴とする往復動切断工具。
【請求項2】
前記支持面は、前記軸状部分の前記中心軸の周りの回転により、前記スライダを支持する状態及び前記スライダを支持しない状態の何れか一方に切り替えられる
ことを特徴とする請求項1に記載の往復動切断工具。
【請求項3】
前記第1部分及び前記第2部分は、共通する平面である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の往復動切断工具。
【請求項4】
前記軸状部分は、前記支持面を、複数有している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の往復動切断工具。
【請求項5】
前記オービタル機構は、前記スライダを往復動可能に受け入れるスライダサポートを備えており、
前記支持面は、前記スライダサポートを介して前記スライダを支持する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の往復動切断工具。
【請求項6】
前記オービタル機構は、前記スライダを往復動可能に受け入れる筒状のスライダサポートと、前記スライダサポートの外面に取り付けられたベアリングと、を備えており、
前記往復動変換機構は、前記スライダに接続される上下方向の偏心ピンを備えた、前後左右に広がる円盤状のクランクであり、
前記カム部は、前記クランクの上面又は下面において、上方又は下方から見てリング状又は弧状に設けられていて、前記ベアリングに接触可能であり、
前記支持面は、前記スライダサポートを介して前記スライダを支持する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の往復動切断工具。
【請求項7】
前記軸状部分の少なくとも一部は、円柱状である
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の往復動切断工具。
【請求項8】
前記オービタル運動が無く又は前記オービタル運動が第1範囲において行われる第1オービタル状態と、前記オービタル運動が前記第1範囲より広い第2範囲において行われる第2オービタル状態とが、前記軸状部分の前記中心軸の周りでの回転により切り替えられ、
前記第1オービタル状態における前記支持面は、前記第1部分と、前記第2部分と、を有している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載の往復動切断工具。
【請求項9】
前記軸状部分は、前記第2オービタル状態において前記スライダを支持し又は直接的にも間接的にも支持しないようにするための第2オービタル状態用面を有しており、
前記支持面は、前記第2オービタル状態用面の前方に配置されている
ことを特徴とする請求項8に記載の往復動切断工具。
【請求項10】
ステータ、及び前記ステータに対して回転可能なロータを有するモータと、
スライダと、
前記ロータの回転を前記スライダの往復動に変換可能な往復動変換機構と、
前記スライダの前端に配置される先端工具保持部と、
前記スライダの前記往復動に伴う前記先端工具保持部の上下方向への運動であるオービタル運動に係る、前記オービタル運動が第1範囲において行われる第1オービタル状態と、前記オービタル運動が前記第1範囲より広い第2範囲において行われる第2オービタル状態とを切り替えるオービタル切替部材と、
少なくとも上下方向に延びるグリップ部と、
前記往復動変換機構を保持する変換機構ハウジングと、
前記スライダを前記往復動が可能である状態で受け入れており、前記変換機構ハウジングに揺動可能に保持されているスライダサポートと、
を備えており、
前記オービタル切替部材は、前記スライダを前記第1オービタル状態において直接的に又は間接的に支持する支持面を有していると共に、左右方向に延びる仮想的な回転軸を中心として回転可能であり、
前記第1オービタル状態において、前記支持面は、前記スライダサポートの下部を支持可能であり、前記回転軸の真上に位置している
ことを特徴とする往復動切断工具。
【請求項11】
前記オービタル切替部材は、前記第2オービタル状態において前記スライダを支持し又は直接的にも間接的にも支持しないようにするための第2オービタル状態用面を有している
ことを特徴とする請求項10に記載の往復動切断工具。
【請求項12】
更に、前記モータに電力を供給するバッテリを備えている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項11の何れかに記載の往復動切断工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式レシプロソー等の往復動切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4554982号公報(特許文献1)の[0020]には、ブレードを装着するスライダが往復動の際にオービタル運動するレシプロソーが開示されている。
特許第4554982号公報の[0016]には、冷却用空気がスライダに沿って前方に排出されるレシプロソーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4554982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
往復動切断工具において、オービタル運動の有無及び程度の少なくとも何れかが、安定性を有する状態で切り替えられる技術が期待されている。
又、往復動切断工具において、粉塵(切粉)の舞い上がりが抑制される技術が期待されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、第1の開示例に係る往復動工具を開示する。この往復動工具は、モータと、棒状のスライダと、前記スライダの延在方向を前後方向とし、前記モータの回転を前後方向の往復動に変換して前記スライダに伝達する往復動変換機構と、被加工材に作用する作用部を有する先端工具を、前記作用部が下側及び上側の少なくとも一方となる状態で装着可能であり、前記スライダの前端部に配置されている先端工具保持部と、前記スライダの前記往復動に伴い、前記先端工具保持部を上下方向へオービタル運動させるオービタル機構と、前記オービタル機構による前記オービタル運動の有無及び程度の少なくとも何れかに係るオービタル状態の切替を行うオービタル切替機構と、を備えていても良い。前記オービタル切替機構は、左右方向に延在する軸状部分を含んでいても良い。前記軸状部分は、前記スライダを直接的に又は間接的に支持可能な支持面を有していても良い。前記支持面は、前記軸状部分における左右方向の仮想的な中心軸より前側の部分である第1部分を有していても良い。又、前記支持面は、前記中心軸より後側の部分である第2部分を有していても良い。
【0006】
又、本明細書は、第2の開示例に係る往復動工具を開示する。この往復動工具は、ステータ及びロータを有するモータと、前記モータにより駆動される往復動変換機構と、前記往復動変換機構に接続され、往復動する棒状のスライダと、前記スライダの前端に保持されており先端工具を保持する先端工具保持部と、を有していても良い。前記往復動変換機構が収容され、前記スライダが前端より突出する動力伝達ハウジングを有していても良い。前記動力伝達ハウジングの外方に配置されるカバーを有していても良い。前記ロータと一体で回転可能なファンを有していても良い。前記動力伝達ハウジングと前記カバーとの間に、前記ファンの冷却風の第1通路が設けられても良い。前記第1通路は、前記先端工具保持部側に指向する第2通路と、前記先端工具保持部側に指向しない第3通路と、に分岐しても良い。
【発明の効果】
【0007】
主に第1の開示例に係る往復動工具によれば、オービタル運動の有無及び程度の少なくとも何れかが、安定性を有する状態で切り替えられる。
又、主に第2の開示例に係る上記の往復動工具によれば、粉塵の舞い上がりが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1形態に係るレシプロソーの左上前方からみた斜視図である。
図2図1の中央縦断面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5図2における往復動変換機構の一部及びその周辺の部材に係る上方側からみた一部分解斜視図である。
図6図2における往復動変換機構の一部及びその周辺の部材に係る下方側からみた一部分解斜視図である。
図7図2における往復動変換機構の一部及びその周辺の部材に係る中央縦断面図である。
図8図7の状態からオービタル切替レバーのツマミ部を前方へ倒した場合における中央縦断面図である。
図9図1のレシプロソーの前部における右上前方からみた斜視図である。
図10図2の前部の一部拡大図である。
図11図10のB-B線断面図である。
図12図10のC-C線断面図である。
図13図1のレシプロソーの前上部の一部分解斜視図である。
図14図1のレシプロソーの上動力伝達ハウジングに係る前部の下方からみた斜視図である。
図15図15Aは、本発明の第2形態に係るレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-1オービタル状態におけるカム面の最高点が最後方位置となったときの図である。図15Bは、図15Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-1オービタル状態におけるカム面の最低点が最後方位置となったときの図である。
図16図16Aは、図15Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-2オービタル状態におけるカム面の最高点が最後方位置となったときの図である。図16Bは、図16Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-2オービタル状態におけるカム面の最低点が最後方位置となったときの図である。
図17図17Aは、図15Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第2オービタル状態におけるカム面の最高点が最後方位置となったときの図である。図17Bは、図17Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第2オービタル状態におけるカム面の最低点が最後方位置となったときの図である。
図18】本発明の第3形態に係る図11同様図である。
図19】本発明の第3形態に係る図14同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係るレシプロソーは、モータと、棒状のスライダと、スライダの延在方向を前後方向とし、モータの回転を前後方向の往復動に変換してスライダに伝達する往復動変換機構と、被加工材に作用する刃を有するブレードを、刃が下側及び上側の少なくとも一方となる状態で装着可能であり、スライダの前端部に配置されているブレード保持部と、を備えても良い。スライダの往復動に伴い、ブレード保持部を上下方向へオービタル運動させるオービタル機構を備えても良い。オービタル機構によるオービタル運動の有無及び程度の少なくとも何れかに係るオービタル状態の切替を行うオービタル切替機構を備えていても良い。オービタル切替機構は、左右方向に延在するレバー本体を含んでいても良い。レバー本体は、スライダを間接的に支持可能な第1平面を有していても良い。第1平面は、レバー本体における左右方向の仮想的な中心軸より前側の部分である第1部分と、中心軸より後側の部分である第2部分と、を有していても良い。
この場合、スライダが、第1平面の第1部分と第2部分とにより支持される。従って、その支持中における、レバー本体の、ツマミ部の操作によらない中心軸の周りでの回転が抑制される。よって、オービタル運動の有無及び程度の少なくとも何れかが、第1平面を有するレバー本体により、安定性を有する状態で切り替えられる。
【0010】
又、第1平面は、レバー本体の中心軸の周りの回転により、スライダを支持する状態(第1オービタル状態でのスライダサポート下部の支持)及びスライダを支持しない状態(第2オービタル状態でのスライダサポートを支持しない前側配置)の何れか一方に切り替えられても良い。この場合、オービタル運動の切り替えのための構成がよりシンプルになる。
更に、第1部分及び第2部分は、共通する平面としての第1平面であっても良い。この場合、第1平面が前後方向において中心軸をまたぎ、スライダの安定した支持のための構成がよりシンプルになる。
又、レバー本体は、支持面を、第1平面及び第2平面として複数有していても良い。この場合、スライダが、第1平面の第1部分と第2部分とにより支持され、又第2平面の第1部分と第2部分とにより支持される。従って、それらの支持中における、レバー本体の、操作によらない中心軸の周りでの回転が、それぞれ抑制される。よって、オービタル運動の有無及び程度の少なくとも何れかが、第1平面及び第2平面を有するレバー本体により、安定性を有する状態で切り替えられる。又、複数のオービタル状態を切り替えるための複数のスライダへの支持面が、シンプルな構成において設けられる。
【0011】
又更に、オービタル機構は、スライダを往復動可能に受け入れるスライダサポートを備えていても良い。第1平面は、スライダサポートを介してスライダを支持しても良い。この場合、オービタル機構が、よりシンプルに構成される。
加えて、オービタル機構は、スライダの下部に対する間接的な接触が可能なカム部を含んでいても良い。カム部のスライダに対する間接的な接触により、ブレード保持部のオービタル運動が行われても良い。オービタル切替機構は、カム部がスライダへの間接的な接触を行わず、又はカム部の一部がスライダへの間接的な接触を行う状態である第1オービタル状態と、第1オービタル状態においてスライダへの間接的な接触を行うカム部の一部より大きいカム部の部分、又はカム部の全体がスライダへの間接的な接触を行う状態である第2オービタル状態と、の切替を行っても良い。この場合、オービタル機構及びオービタル切替機構が、よりシンプルに構成される。
【0012】
又、オービタル機構は、スライダ6を往復動可能に受け入れる筒状のスライダサポートと、スライダサポートの外面に取り付けられたベアリングと、を備えていても良い。往復動変換機構は、スライダに接続される上下方向の偏心ピンを備えた、前後左右に広がる円盤状のクランクカムであっても良い。カム部は、クランクカムの上面において、上方から見てリング状に設けられていて、ベアリングに接触可能であっても良く、第1平面は、スライダサポートを介してスライダを支持しても良い。この場合、オービタル機構及びオービタル切替機構が、よりシンプルに構成される。
更に、レバー本体の少なくとも一部は、円柱状であっても良い。この場合、オービタル切替機構が、よりシンプルに構成される。
【0013】
又、オービタル運動が無く又はオービタル運動が第1範囲において行われる第1オービタル状態と、オービタル運動が第1範囲より広い第2範囲において行われる第2オービタル状態とが、レバー本体の中心軸の周りでの回転により切り替えられても良い。第1オービタル状態における第1平面は、第1部分と、第2部分と、を有していても良い。この場合、第1オービタル状態において、第1平面はスライダをより安定的に支持する。従って、第1オービタル状態の安定性が向上する。
更に、レバー本体は、第2オービタル状態においてスライダを直接的にも間接的にも支持しないようにするための第2平面を有していても良い。第1平面は、第2平面の前方に配置されていても良い。この場合、オービタル切替機構が、よりシンプルに構成される。
【0014】
加えて、レシプロソーは、ステータ、及びステータに対して回転可能なロータを有するモータと、スライダと、ロータの回転をスライダの往復動に変換可能な往復動変換機構と、スライダの前端に配置されるブレード保持部とを備えても良い。スライダの往復動に伴うブレード保持部の上下方向への運動であるオービタル運動に係る、オービタル運動が第1範囲において行われる第1オービタル状態と、オービタル運動が第1範囲より広い第2範囲において行われる第2オービタル状態とを切り替えるオービタル切替レバーと、を備えていても良い。オービタル切替レバーは、スライダを第1オービタル状態において間接的に支持する第1平面を有していても良い。
この場合、オービタル運動が第1範囲において行われる第1オービタル状態において、スライダが、第1平面により、一層安定して支持される。
【0015】
又、少なくとも上下方向に延びる第1グリップ部を備えても良い。往復動変換機構を保持する動力伝達ハウジングを備えても良い。スライダを往復動が可能である状態で受け入れており、動力伝達ハウジングに揺動可能に保持されているスライダサポートを備えていても良い。オービタル切替レバーは、左右方向に延びる仮想的な回転軸(中心軸)を中心として回転可能であっても良い。オービタル運動が第1範囲において行われる第1オービタル状態において、第1平面は、スライダサポートの下部を支持可能であっても良い。第1平面は、回転軸(中心軸)の真上に位置していても良い。この場合、オービタル切替レバーによるスライダサポートの支持の安定性が向上する。又、オービタル切替レバーの操作によらない回転が抑制され、ユーザの操作によらないオービタル状態の切替が抑制される。
更に、オービタル切替レバーは、オービタル運動が第1範囲より広い第2範囲において行われる第2オービタル状態において、スライダを支持し又は直接的にも間接的にも支持しないようにするための第2平面を有していても良い。この場合、オービタル切替機構が、よりシンプルに構成される。
【0016】
又、本開示に係るレシプロソーは、ステータ及びロータを有するモータと、モータにより駆動される往復動変換機構と、往復動変換機構に接続され、往復動する棒状のスライダと、スライダの前端に保持されておりブレードを保持するブレード保持部と、を有していても良い。往復動変換機構が収容され、スライダが前端より突出する動力伝達ハウジングを有していても良い。動力伝達ハウジングの外方に配置されるカバーを有していても良い。ロータと一体で回転可能なファンを有していても良い。動力伝達ハウジングとカバーとの間に、ファンの冷却風の第1通路(隙間)が設けられても良い。第1通路は、先端工具保持部側に指向する第2通路と、先端工具保持部側に指向しない第3通路と、に分岐しても良い。
この場合、先端工具保持部側に指向する風量が減少し、粉塵(切粉)の舞い上がりが抑制される。
【0017】
本開示に係るレシプロソーは、ステータ及びロータを有するモータと、モータにより駆動される往復動変換機構と、往復動変換機構に接続され、往復動する棒状のスライダと、スライダの前端に保持されておりブレードを保持するブレード保持部と、を有していても良い。往復動変換機構が収容され、スライダが前端より突出する動力伝達ハウジングを有していても良い。動力伝達ハウジングの外方に配置されるカバーを有していても良い。ロータと一体で回転可能なファンを有していても良い。動力伝達ハウジングとカバーとの間に、ファンの冷却風の第1通路が設けられても良い。第1通路は、ブレード保持部側に指向せずに外部に至る通路につながっていても良い。
この場合、先端工具保持部側に指向する風が抑制され、粉塵の舞い上がりが抑制される。
【0018】
第3通路は、動力伝達ハウジングに開けられた孔を含んでも良い。この場合、第3通路がよりシンプルに形成される。
第3通路は、動力伝達ハウジングに設けられた壁部を含んでも良い。この場合、第3通路がよりシンプルに形成される。
壁部は、円弧帯状であっても良い。この場合、スライダを取り巻く第3通路がよりシンプルに形成される。
【0019】
ブレードの作用方向を上下方向とし、第1通路は、動力伝達ハウジングの上部とカバーの上部との間に設けられていても良い。この場合、第1通路が往復動変換機構等を避けた状態でよりシンプルに形成される。
第3通路は、動力伝達ハウジングの上部に設けられた孔を含んでも良い。この場合、第3通路がよりシンプルに形成される。
第3通路は、動力伝達ハウジングの下部に設けられた下排気孔を含んでも良い。この場合、第3通路がよりシンプルに形成される。又、第3通路の風が、ブレード保持部に指向し難くなる。
【0020】
スライダの延在方向を前後方向とし、ブレード保持部の前方を照らすライトを備えていても良い。第1通路は、ライトのリード線を収容し前後方向に延びる突条部により、2つに分かれていても良い。この場合、第1通路及びライトがよりシンプルに形成される。
第3通路は、動力伝達ハウジングに開けられた孔を含んでも良い。孔は、2つ、突条部の両側に設けられていても良い。この場合、第1通路及び第3通路並びにライトがよりシンプルに形成される。
【0021】
ブレードの作用方向を上下方向とし、動力伝達ハウジングは、上動力伝達ハウジングと、その下側の下動力伝達ハウジングと、を有していても良い。この場合、動力伝達ハウジングが、内部機構を配置し易い状態で、よりシンプルに形成される。
第3通路は、上動力伝達ハウジングに形成された壁部を含んでも良い。この場合、上動力伝達ハウジング及び第3通路がよりシンプルに形成される。
第3通路は、下動力伝達ハウジングに形成された下壁部を含んでも良い。この場合、下動力伝達ハウジング及び第3通路がよりシンプルに形成される。
第3通路は、上動力伝達ハウジングに形成された壁部を含んでも良い。壁部の下端部は、下壁部の上端部と一連状に合わせられても良い。この場合、上動力伝達ハウジング及び下動力伝達ハウジング並びに第3通路がよりシンプルに形成される。
ブレード保持部に保持されたブレードをリリースするための筒状のリリースドラムを有していても良い。第2通路は、リリースドラムの径方向内方に配置されていても良い。この場合、リリースドラム及び第2通路がよりシンプルに形成される。
【0022】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
当該形態は、電動工具,往復動工具の一例としての往復動切断工具に係るものであり、より具体的には、レシプロソーに係るものである。
当該形態及び変更例における前後上下左右は、説明の便宜上定めたものであり、作業の状況及び移動する部材の状態の少なくとも一方等により変化することがある。
尚、本発明は、当該形態及び変更例に限定されない。
【0023】
[第1形態]
図1は、本発明の第1形態に係るレシプロソー1の左上前方からみた斜視図である。図2は、図1の中央縦断面図である。図3は、図2の一部拡大図である。図4は、図3のA-A線断面図である
図2及び図3において、図の右がレシプロソー1の前方であり、図の上がレシプロソー1の上方である。
【0024】
レシプロソー1は、本体ハウジング2と、モータ3と、ファン4と、往復動変換機構5と、出力部としてのスライダ6と、ガイドシュー8と、カウンタウェイト機構9と、オービタル機構12と、オービタル切替機構14と、リリース機構201と、を有する。
【0025】
本体ハウジング2は、各種の部材を直接的に又は間接的に保持する支持枠である。
本体ハウジング2は、モータハウジング18と、動力伝達ハウジング20と、カバー22と、を含む。
【0026】
モータハウジング18の前部は、筒状である。モータハウジング18の後部は、ループ状に形成されている。モータハウジング18は、プラスチック製である。
モータハウジング18は、モータ3を、前上部内において保持している。モータ3は、モータケース3aを有している。モータケース3aは、モータ3の外郭である。モータケース3aは、筒状である。モータケース3aの前部は、開口している。モータハウジング18は、モータケース3aを介して、動力伝達ハウジング20と連結されている。
モータハウジング18は、半割であり、左モータハウジング18aと、右モータハウジング18bとを有している。
左モータハウジング18aは、複数のネジボス24を有している。右モータハウジング18bは、複数のネジ孔(図示略)を有している。ネジ孔の配置は、ネジボス24の配置と対応している。右モータハウジング18bは、複数のネジ28のそれぞれが、ネジボス24及びネジ孔に、左右方向に延びるように入れられることにより、左モータハウジング18aに対して固定されている。
モータハウジング18における、上下方向に延びたループの後部は、第1グリップ部30である。第1グリップ部30は、ユーザにより把持される。
モータハウジング18の後部のループ状部における第1グリップ部30の前面に対向する部分には、複数の吸気孔31が開けられている。各吸気孔31は、左右方向に延びており、上下方向で並べられている。各吸気孔31の前側に、モータ3が配置される。
【0027】
第1グリップ部30の上部には、メインスイッチ32が保持されている。
メインスイッチ32は、トリガ33と、メインスイッチ本体部34とを有する。
トリガ33は、第1グリップ部30の上部の前側において露出している。ユーザは、トリガ33に対して、指先で引く(後方へと移動させる)操作を行える。トリガ33は、メインスイッチ本体部34の前方に配置されている。トリガ33は、メインスイッチ本体部34と接続されている。
メインスイッチ本体部34は、第1グリップ部30の上部内に配置されている。メインスイッチ本体部34は、トリガ33の操作によりオンオフが切り替わる。メインスイッチ本体部34は、トリガ33の引き込み量が所定量以上となるとオンとなる。又、メインスイッチ本体部34は、当該所定量以上の引き込み量に応じて変化する信号(例えば抵抗値)を発信する。
トリガ33は、メインスイッチ本体部34を介して、モータ3のオンオフを切り替える。トリガ33は、モータ3のオンオフを操作するスイッチ操作部である。
【0028】
トリガ33の上側には、ロックオフボタン35が設けられている。ロックオフボタン35は、左右方向に延びる板状である。
ロックオフボタン35の左部及び右部は、モータハウジング18から露出している。ロックオフボタン35は、その左部が押されることで、右方にスライド可能である。又、ロックオフボタン35は、その右部が押されることで、左方にスライド可能である。
ロックオフボタン35は、右方にスライドして右側に位置していると、トリガ33の引き操作を食い止める。このため、モータ3をオンにすることができない。ロックオフボタン35は、左方にスライドして左側に位置していると、トリガ33の引き操作を許容する。このため、モータ3をオンにすることができる。
【0029】
ロックオフボタン35の前方には、速度切替ダイヤル36が設けられている。速度切替ダイヤル36は、上下左右に広がる円盤状であり、回転操作可能である。速度切替ダイヤル36の上部は、モータハウジング18から露出している。
速度切替ダイヤル36は、回転位置(角度)に応じた信号を発信する。
【0030】
モータハウジング18は、モータ3の下側において、コントローラ40を保持している。コントローラ40は、制御回路基板42と、コントローラケース44とを有する。
制御回路基板42は、モータ3を制御する。制御回路基板42には、少なくともマイコン及び複数(6個又は12個)のスイッチング素子が搭載されている。
コントローラケース44は、金属(アルミニウム)製であり、蓋なしの箱状である。コントローラケース44内に、制御回路基板42が入れられている。コントローラケース44内へのモールドの注入により、制御回路基板42を覆うモールド層46が形成されている。
【0031】
コントローラ40は、モータ3の下方に配置されている。コントローラ40は、斜めの姿勢をとっており、より詳しくは前上がりの姿勢をとっている。
コントローラケース44の前面は、モータハウジング18の前下部18Fの前壁18Wに沿っている。モータハウジング18は、コントローラ40を保持する。
モータハウジング18の前下部18Fには、複数の後下排気孔48が開けられている。各後下排気孔48は、左右方向に延びており、前後左右に並べられている。
各後下排気孔48は、モータハウジング18におけるコントローラ40を保持する部分より下方の部分に配置されている。即ち、各後下排気孔48は、モータハウジング18における、コントローラ40に対してファン4と反対側の部分に配置されている。
コントローラケース44の前面と前壁18Wとの間は、ファン4からの冷却用の排気風WDが通る排気路となっている。排気風WDは、各後下排気孔48から外部に出る。
【0032】
モータハウジング18の後下部18Eは、モータハウジング18の前下部18Fに対して上方に凹んでいる。
モータハウジング18の後下部18Eには、バッテリ装着部50が設けられている。
モータハウジング18の後下部18Eには、開口部が形成されている。
バッテリ装着部50は、端子台52を保持している。端子台52の前部は箱状であり、端子台52の後部は板状である。端子台52は、モータハウジング18の後下部18Eの開口部を塞ぎ、その開口部から露出している。端子台52は、複数の端子板(図示略)を保持する。
バッテリ装着部50には、バッテリ54が、後側から前方へスライドすることにより装着される。装着されたバッテリ54は、端子台52(端子板)と電気的に接続される。バッテリ54は、モータ3に電力を供給する。
【0033】
動力伝達ハウジング20は、往復動変換機構5、スライダ6、カウンタウェイト機構9、オービタル機構12、及びオービタル切替機構14の各部を直接的にあるいは間接的に支持する。動力伝達ハウジング20は、金属製である。動力伝達ハウジング20は、モータハウジング18の前側に接続される。
動力伝達ハウジング20は、半割であり、前後に開口部を有する筒状である。動力伝達ハウジング20は、往復動変換機構5が配置されることから、変換機構ハウジングとして捉えることができる。
動力伝達ハウジング20は、上動力伝達ハウジング20aと、下動力伝達ハウジング20bと、ベアリングリテーナ114と、を備えている。
上動力伝達ハウジング20aは、下動力伝達ハウジング20bに対し、複数の上下方向のネジ55(図4)によって固定されている。
下動力伝達ハウジング20bの後端部は、モータケース3aから前方に延びる複数の前後方向のネジ(図示略)によって、モータハウジング18の前端部に取り付けられる。
【0034】
カバー22は、筒状である。カバー22は、動力伝達ハウジング20に外装される。カバー22は、動力伝達ハウジング20の外方に配置される。カバー22は、弾性体(ゴム)製であり、熱的又は電気的な絶縁カバーとして、動力伝達ハウジング20の外側に設けられている。尚、カバー22は、本体ハウジング2の構成要素に含められなくても良い。又、カバー22は、プラスチックで形成されても良い。
カバー22の後端部は、モータハウジング18の前端部を覆う。カバー22は、モータハウジング18と外表面で連続する。
カバー22の中央部の左右には、複数の本体部排気孔56が設けられている(図1図9)。左の各本体部排気孔56は、前後方向に延び、上下方向に並べられている。同様に、右の各本体部排気孔56(図9)は、前後方向に延び、上下方向に並べられている。各本体部排気孔56は、ファン4より前方に配置されている。
更に、カバー22の後左部には、オービタル切替レバー用孔58が開けられている(図1)。オービタル切替レバー用孔58は、上下前後に広がっている。
他方、カバー22の下部、即ち本体ハウジング2の前部は、第2グリップ部60となっている。第2グリップ部60は、ユーザにより把持される。
尚、本体ハウジング2の区分の数、本体ハウジング2の区分毎の大きさ、及び本体ハウジング2の各区分の形状の少なくとも何れかは、様々に変更可能である。例えば、モータハウジング18の後部は、モータハウジング18と別体のハンドルハウジングとされても良い。又、バッテリ装着部50は、モータハウジング18と別体とされても良い。
【0035】
更に、動力伝達ハウジング20の前上部とカバー22の前上部との間には、ライト62が配置されている。ライト62は、LED基板を有する。LED基板は、LEDを搭載している。
ライト62は、発光して前方に投光する。ライト62は、スライダ6の前方の切断位置付近を照射可能である。
【0036】
モータ3、メインスイッチ本体部34、速度切替ダイヤル36、端子台52(端子板)、及びライト62は、それぞれ、図示されない複数のリード線によって、制御回路基板42に電気的に接続されている。
モータハウジング18のうちモータ3を保持する部分(モータ3の外側の部分)と、動力伝達ハウジング20と、これらに保持される各種部材と、カバー22とにより、レシプロソー1の本体部69が形成される。
【0037】
モータ3は、電動である。モータ3は、ブラシレスモータである。モータ3は、DC駆動される。
モータ3は、モータケース3aと、ステータ71と、ロータ72とを備えている。
【0038】
モータケース3aは、モータハウジング18に保持されている。
ステータ71は、複数(6個)のコイル73を有する。ステータ71は、円筒状である。
ステータ71には、センサ基板75が固定されている。センサ基板75の後面には、複数(3個)の磁気センサが固定されている。各磁気センサは、ロータ72の回転位置を示す回転検出信号を得て、ロータ72の回転状態を取得する。又、センサ基板75と制御回路基板42とが、図示されない複数(6本)のリード線(信号線)により、電気的に接続されている。信号線は、モータハウジング18の前下部18F内を通過する。
更に、ステータ71には、各コイル73を所定の態様で電気的に接続する接点としてのコイル接続部77が設けられている。コイル接続部77には、図示されない複数(3本)のリード線(電源線)の第1端部が接続されている。3本の電源線は、三相に係る。各電源線は、モータハウジング18の前下部18F内を通過する。各電源線の第2端部は、制御回路基板42に接続されている。
【0039】
ロータ72は、ステータ71の内側に配置される。モータ3は、インナーロータ型である。
ロータ72は、モータ軸80と、ロータコア82と、複数(4個)の永久磁石84と、スリーブ86と、を有する。
モータ軸80は、円柱状であり、前後に延びている。モータ軸80は、金属製である。モータ軸80は、自身の軸の周りで回転する。モータ軸80の前端部は、動力伝達ハウジング20の後端部内に達している。モータ軸80の前端部には、ピニオンギヤ部80aが形成されている。ピニオンギヤ部80aは、複数の歯を有する。
ロータコア82は、円筒状である。ロータコア82の軸方向は、前後方向である。ロータコア82は、前後方向に積層された、上下左右に広がる複数の鋼板により形成されている。ロータコア82は、モータ軸80の外側に固定されている。
各永久磁石84は、板状である。4個の永久磁石84は、ロータコア82内において、周方向に極性を交互に変えた状態で並べられる。4個の永久磁石84は、互いに接触していない。
スリーブ86は、金属(真鍮)製で、リング状である。スリーブ86は、ロータコア82及び各永久磁石84の前側において、ロータコア82及び各永久磁石84並びにモータ軸80に対し固定されている。スリーブ86は、永久磁石84を固定することで、永久磁石84のモータ軸80からの脱落防止を図っている。
【0040】
又、スリーブ86の前方に、モータ前軸受88が設けられている。モータ前軸受88は、モータ軸80の前部の周りに配置されている。モータ前軸受88は、モータ軸80を、軸回りで回転可能に支持する。
モータ前軸受88は、下動力伝達ハウジング20bの後部に保持されている。
モータ軸80の後端部の周りには、モータ後軸受92が設けられている。モータ後軸受92は、モータ軸80を、軸回りで回転可能に支持する。モータ後軸受92は、モータケース3aに保持されている。
【0041】
モータ軸80の中央部周辺であって、モータ前軸受88の後側であり、スリーブ86の前側には、ファン4が配置されている。ファン4は、複数枚の羽根を有する遠心ファンである。ファン4は、回転により、空気を径方向外方に押し出す。ファン4は、モータ軸80に一体に固定されており、モータ軸80と一体で回転可能である。ファン4は、モータ軸80に設けられる。ファン4は、ロータ72及び下動力伝達ハウジング20bを介して、モータハウジング18に保持されている。
ファン4の前側には、下動力伝達ハウジング20bが配置されている。
ファン4の下方には、コントローラケース44の前面とモータハウジング18の前下部18Fの前壁18Wとの間の風路(下風路)の上端部が配置されている。
尚、ファン4は、モータ3の構成要素とすることも可能である。
【0042】
図5図6は、往復動変換機構5の一部及びその周辺の部材に係る上方側,下方側からみた一部分解斜視図である。図7は、往復動変換機構5の一部及びその周辺の部材に係る中央縦断面図である。図8は、図7の状態からオービタル切替レバー170のツマミ部174を前方へ倒した場合(図1の二点鎖線参照)における中央縦断面図である。
往復動変換機構5は、スライダ6に対しモータ3の動力を伝達する動力伝達機構である。往復動変換機構5は、モータ3のモータ軸80の回転運動を、スライダ6に伝達する。往復動変換機構5は、動力伝達ハウジング20に保持される。往復動変換機構5は、モータ3とスライダ6との間に介在している。
往復動変換機構5は、傘歯ギヤ100と、トルクリミット機構102と、中間軸104と、クランクベース106と、クランクカム108と、を備えている。
【0043】
傘歯ギヤ100は、前後左右に延びる円盤状であり、上面の周縁に傘歯(図示略)を有する。傘歯ギヤ100は、ピニオンギヤ部80aと噛み合っている。
傘歯ギヤ100は、前後左右の中心を通る、上下方向の仮想的な回転軸の周りで回転する。
【0044】
トルクリミット機構102は、傘歯ギヤ100と中間軸104との間に介装される。
トルクリミット機構102は、傘歯ギヤ100から中間軸104への動力伝達を行う。トルクリミット機構102は、弾性体の付勢により密着された上下の水平板が、中間軸104側からの過大な負荷により付勢力に抗して互いに離れることで、当該負荷から傘歯ギヤ100及びモータ3を保護する。
【0045】
中間軸104は、上下に延びる円筒状の部材である。
中間軸104は、上中間軸受110と、下中間軸受112とにより、傘歯ギヤ100と同じ仮想的な回転軸の周りで回転可能に支持されている(図2図3)。
上中間軸受110は、下動力伝達ハウジング20bに保持されている。
下中間軸受112は、ニードルベアリングである。下中間軸受112は、皿状のベアリングリテーナ114(図2図3)に保持されている。ベアリングリテーナ114は、下動力伝達ハウジング20bに対し、上下方向の複数のネジ116(1つのみ図2図3に図示)により固定されている。
【0046】
クランクベース106は、クランク状の部材である。
クランクベース106の下部は、円柱状の円柱状部106Aとなっており、中間軸104の上部に対しネジ止めされている。
クランクベース106の中央部は、前後左右に延びる板状の板状部106Bとなっている。
クランクベース106の上部は、その中心がクランクベース106の下部の仮想的な中心軸とずれた、前後左右に延びる偏心円盤部106Cとして形成されている。
【0047】
クランクカム108は、クランクカム本体120と、偏心ピン122と、樽形ローラ124と、軸受126と、を有する。
クランクカム本体120は、前後左右に延びる円盤状である。クランクカム本体120における上下方向の仮想的な中心軸は、傘歯ギヤ100と同じ仮想的な回転軸と合致している。クランクカム本体120の下部には、他の部分に対して下方に円筒状に突出する結合部127が形成されている。結合部127には、クランクベース106の偏心円盤部106Cが、ネジ128により結合されている。又、クランクカム本体120の上面の周縁には、カム部130が形成されている。カム部130は、隣接部分に対して上方に突出している。カム部130は、上方から見てリング状である。カム部130の上下方向の高さは、周方向に沿って徐々に変化している(図7図8等参照)。即ち、カム部130の上面は、カム面130aとなっている。カム面130aの高さは、最も低い最低点130a1から、最も高い最高点130a2にかけて、徐々に変化している。
偏心ピン122は、上下方向に延びる円柱状である。偏心ピン122の下部は、クランクカム本体120に設けられた上下方向の孔に入っている。その孔は、クランクカム本体120の仮想的な中心軸から、径方向においてずれている。
樽形ローラ124は、円筒状の部材である。樽形ローラ124の外面は、上下方向の中央へ行くほど大径となるように膨らんでいる。
樽形ローラ124は、軸受126を介して、偏心ピン122の上部に設けられている。樽形ローラ124は、上下方向の仮想的な回転軸の周りで回転可能に支持されている。軸受126は、ニードルベアリングである。
【0048】
スライダ6は、スライダ本体136と、先端工具保持部としてのブレード保持部138と、を有する。スライダ6の前端部は、動力伝達ハウジング20の前端から突出する。
スライダ本体136は、前後に延びる円筒状である。スライダ本体136の後部には、樽形ローラ受け部140が設けられている。樽形ローラ受け部140は、左右に延びる有底の長円筒状である。樽形ローラ受け部140は、下方に開放されている。樽形ローラ受け部140は、樽形ローラ124を受け入れる。
クランクカム108が回転すると、樽形ローラ124が偏心回転により回転する。樽形ローラ124の移動のうちの前後成分により、樽形ローラ受け部140を介してスライダ本体136が前後方向に往復動する。樽形ローラ124の移動のうちの左右成分は、樽形ローラ受け部140内での樽形ローラ124の相対的な移動となり、スライダ本体136には伝達されない。
ブレード保持部138は、先端工具としてのブレード(図示略)を保持する。ブレード保持部138は、ブレードの後端部を差し込むだけで、ブレードを自動的に保持する(ワンタッチ装着)。
ブレード保持部138は、スライダ本体136に対して、上下左右に膨らんでいる。スライダ6は、出力部である。ブレードは、先端工具である。ブレードは、長板状であり、装着時に前後に伸びている。ブレードは、1つの長辺において、刃を有している。刃は、鋸歯である。ブレードは、刃を下方に向けた状態で装着されている。尚、ブレードは、刃を上方に向けた状態で装着されても良い。又、ブレードは、2つの長辺において刃を有していても良い。先端工具は、ブレード以外のものとされても良い。
【0049】
ガイドシュー8は、ブレード保持部138に装着されたブレードの隣接部に配置される。
【0050】
カウンタウェイト機構9は、往復動変換機構5と組み合わせられる。
カウンタウェイト機構9は、金属製のバランサ144と、リング145と、を有している。
バランサ144は、前後左右に延びる板状であり、中央部に、左右方向に延びる長孔146を有している。バランサ144における長孔146より前方の部分は、長孔146より後方の部分に比べて重くなっている。
バランサ144の長孔146内には、リング145を介して、クランクカム108の結合部127が入っている。
バランサ144における長孔146より前方の部分には、前後に延びるスリット147が設けられている。スリット147内には、ピン148が通っている。ピン148は、上下に延びている。ピン148の下部は、下動力伝達ハウジング20bに保持される。
バランサ144における長孔146より後方の部分の下部には、その周囲の部分に対して上方に窪む窪み部149が設けられている。窪み部149は、下動力伝達ハウジング20bの後上部を避ける(図3参照)。
バランサ144は、クランクカム108の回転により、前後方向に往復動する。結合部127は、樽形ローラ124と、クランクカム本体120の中心を挟んで反対側に配置されている。より詳しくは、結合部127と樽形ローラ124とは、クランクカム本体120の前後左右の中心に対し175°程度の角度を有している。よって、バランサ144における長孔146より前方の部分は、前後方向において、基本的にスライダ6と逆方向に移動する。従って、スライダ6の往復動により発生する振動は、バランサ144により抑制される。即ち、バランサ144は、スライダ6の前後動と逆に動作されることで、カウンタウェイトの役割を担っている。尚、結合部127の移動のうち左右方向の成分は、長孔146内での結合部127の相対的な移動となり、バランサ144には伝達されない。又、結合部127と樽形ローラ124との角度は、180°であっても良いし、その他の角度であっても良い。
【0051】
オービタル機構12は、スライダサポート本体150と、スライダ支持体としての複数(2個)のオイルレスベアリング151と、複数(2個)のプレート152と、スライダサポート軸153と、弾性体としての複数のスプリング154と、ベアリング156と、複数のネジ160と、を有する。
スライダサポート本体150、各オイルレスベアリング151、各プレート152、ベアリング156及び各ネジ160により、筒状のスライダサポート161が構成される。尚、スライダサポート161の構成要素から、ベアリング156等が外されても良い。又、スライダサポート161の構成要素に、スライダサポート軸153及び各スプリング154の少なくとも何れかが含められても良い。
【0052】
スライダサポート本体150は、金属製であり、前後方向に延びる箱状である。
スライダサポート本体150内の前後には、オイルレスベアリング151が保持されている。オイルレスベアリング151の断面の外形は、正方形状である。
各オイルレスベアリング151には、スライダ6が、往復動可能に貫通されている。
スライダサポート本体150の下部の中央部であって、樽形ローラ124及び樽形ローラ受け部140が位置し得る部分を含む部分には、開口部が設けられている。各オイルレスベアリング151は、その開口部の前後に配置されている。
スライダサポート本体150の下部の後であって、後のオイルレスベアリング151の下側には、後のプレート152が、上下方向の複数(左右2個)のネジ160により固定されている。後のプレート152は、金属製であり、前後左右に延びる。スライダサポート本体150は、後のオイルレスベアリング151を上側から保持する。後のプレート152は、後のオイルレスベアリング151を下側から保持する。
スライダサポート本体150の下部の前であって、前のオイルレスベアリング151の下側には、前のプレート152が、上下方向の複数(左右2個)のネジ160により固定されている。前のプレート152は、金属製であり、前後左右に延びる。スライダサポート本体150は、前のオイルレスベアリング151を上側から保持する。前のプレート152は、前のオイルレスベアリング151を下側から保持する。
尚、プレート152及びネジ160は、省略されても良い。
【0053】
スライダサポート本体150の前下部の左右には、左右方向に延びる軸孔162が設けられている。軸孔162の周囲部は、上動力伝達ハウジング20aに固定されている。
スライダサポート軸153は、左右の軸孔162を通る。スライダサポート161は、スライダサポート軸153の周りにおいて揺動可能である。
各スプリング154は、スライダサポート本体150の後上部の左右に設けられる。各スプリング154は、上下方向に延びている。各スプリング154の上端は、上動力伝達ハウジング20aの後部の内面に保持されている。
【0054】
ベアリング156は、スライダサポート本体150における下部の開口部の後方であって、プレート152の前方に設けられる。ベアリング156は、ボールベアリングである。
ベアリング156の内輪は、オイルレスベアリング151の外面に保持される。ベアリング156の外輪は、クランクカム108のカム部130に接触可能である。
【0055】
オービタル切替機構14は、オービタル切替部材としてのオービタル切替レバー170を有している。
オービタル切替レバー170は、軸状部分としてのレバー本体172と、ツマミ部174と、を有する。
【0056】
レバー本体172は、左右に延びる棒状であり、軸状である。
オービタル切替レバー170は、レバー本体172の仮想的な中心軸C(図7図8参照)の周りにおいて回転可能な状態で、上動力伝達ハウジング20aに保持されている。レバー本体172の仮想的な中心軸Cは、接触するプレート152と平行である。
レバー本体172は、左右に延びる支持面としての第1平面176と、左右に延びる第2オービタル状態用面としての第2平面178と、を有する。第1平面176と第2平面178とは、所定の角度(ここでは約100°)をなしている。中心軸Cから第1平面176までの距離は、中心軸Cから第2平面178までの距離より大きい。
オービタルが第1の状態である図7の場合(第1オービタル状態)、オービタル切替レバー170は、第1平面176がスライダサポート161の後下部(後のプレート152)に接触し得る状態となっている。オービタル切替レバー170がプレート152に接触する場合、第1平面176は、中心軸Cを含み第1平面176に垂直である仮想的な垂直面V(鉛直面,図7参照)に対し、前後方向で両側にわたっている。即ち、第1平面176は、垂直面Vをまたいでいる。換言すれば、第1平面176は、中心軸C(垂直面V)より前方側の第1部分176aと、中心軸C(垂直面V)より後方側の第2部分176bと、を有している。尚、図4は、垂直面Vを断面とする図である。
他方、オービタルが第2の状態である図8の場合(第2オービタル状態)、オービタル切替レバー170は、第2平面178がスライダサポート161の後下部と間隔を置いて対向する状態となっている。この場合、オービタル機構12のベアリング156は、カム部130のカム面130aの全周に対して接触する。
【0057】
第2オービタル状態である場合、各スプリング154の下方への付勢力により、ベアリング156がカム部130におけるカム面130aの最低点130a1にも接触する(図8参照)。レバー本体172の第2平面178は、このときであってもスライダサポート161の後下部から離れている。すると、スライダサポート161並びにスライダ6及びブレードが上向き(前上がり)となる。又、ベアリング156がカム面130aにおける最高点130a2にも接触する。すると、ベアリング156が、カム面130aにより、各スプリング154の付勢力に抗して上方に押され、スライダサポート161並びにスライダ6及びブレードが下向き(前下がり)となる。カム面130aにおける、最低点130a1と最高点130a2との周方向での間の部分の高さは、徐々に変化する。よって、クランクカム108の回転によりカム面130aを相対的に辿るベアリング156は上下動する。従って、スライダサポート161並びにスライダ6及びブレードは、前上がり状態、前後方向に沿う状態、前下がり状態及び前後方向に沿う状態を繰り返し、ブレード保持部138は、楕円状にオービタル運動する。
オービタル運動は、クランクカム108におけるカム面130aの高さの周方向での分布に応じ、スライダ6の往復動と関連付けられる。ここでは、スライダ6の前方への移動時に、スライダ6が前上がり状態となり、スライダ6の前方から後方への移動方向の切り替わり時(若しくはその切り替わり点の近傍通過時)に、スライダ6が前後方向に沿う状態となり、スライダ6の後方への移動時に、スライダ6が前下がり状態となり、スライダ6の後方から前方への移動方向の切り替わり時(若しくはその切り替わり点の近傍通過時)に、スライダ6が前後方向に沿う状態となるように、カム面130aの高さの分布が調整されている。
スライダサポート161及びスライダ6が上向きあるいは下向きに姿勢変化しても、樽形ローラ124により、スライダ6は十分に往復動される。
【0058】
他方、第1オービタル状態である場合、スライダサポート161の後部がレバー本体172の第1平面176により持ち上げられているため、ベアリング156がカム面130aにおける最低点130a1及びその隣接部に接触しない。よって、第2オービタル状態である場合に比べ、スライダ6の前上がりが抑制される。これに対し、ベアリング156は、カム面130aにおける最高点130a2及びその隣接部に接触する。
そして、ベアリング156は、カム部130の約半分の部分において接触し、残りの部分においてレバー本体172の第1平面176により接触しない。よって、スライダ6の後方への移動時における、前後方向に沿う状態から前下がり状態を経て前後方向に沿う状態に戻る遷移(スライダ6後方移動時におけるブレード保持部138の半楕円弧状のオービタル運動)は、第2オービタル状態と同様に行われるものの、スライダ6の前方への移動時においては、スライダ6の概ね前後方向に沿う状態が維持される。従って、第1オービタル状態である場合、ブレード保持部138は、半楕円状にオービタル運動する。
【0059】
第1オービタル状態では、ブレード保持部138は、約半周の範囲(第1範囲)においてオービタル運動する。これに対し、第2オービタル状態では、ブレード保持部138は、約半周の範囲(第1範囲)より広い全周の範囲(第2範囲)においてオービタル運動する。
尚、第1オービタル状態において、全範囲でオービタル運動がなされなくても良いし、例えば4分の1のみ楕円弧状にオービタル運動がなされて残りの4分の3の部分はオービタル運動がなされないようにする等、オービタル運動の範囲(有無の割合)が変えられても良い。同様に、第2オービタル状態である場合に、一部の範囲においてオービタル運動がなされなくても良い。即ち、第2オービタル状態の場合におけるオービタル運動の範囲(第2範囲)より、第1オービタル状態におけるオービタル運動の範囲(第1範囲)が小さければ、オービタル運動がなされる範囲は、様々に変更可能である。
【0060】
ツマミ部174は、レバー本体172と交わり、ここでは直交する。
ツマミ部174は、動力伝達ハウジング20及びカバー22の左方に配置されており、外部に露出している。ツマミ部174は、カバー22のオービタル切替レバー用孔58内に配置されている。
ユーザは、ツマミ部174を操作して、オービタル切替レバー170を中心軸C周りで回転させ、オービタルの状態を切り替えることができる。
【0061】
図9は、レシプロソー1の前部に係る右上前方からみた斜視図である。図10は、図2の前部の一部拡大図である。図11は、図10のB-B線断面図である。図12は、図10のC-C線断面図である。図13は、レシプロソー1の前上部の上方からみた一部分解斜視図である。図14は、上動力伝達ハウジング20aの前部の下方からみた斜視図である。尚、図9において、ガイドシュー8の前板は、省略されている。
動力伝達ハウジング20の左部とカバー22の左部との間には、隙間が空けられており、その隙間を、ファン4からの冷却用の排気風WLが通る。排気風WLは、左の各本体部排気孔56から外部に出る(図1)。
同様に、動力伝達ハウジング20の右部とカバー22の右部との間には、隙間が空けられており、その隙間を、ファン4からの冷却用の排気風WRが通る。排気風WRは、右の各本体部排気孔56から外部に出る(図9)。
【0062】
又、上動力伝達ハウジング20aの上部には、前後方向に延びる一対の突条を含む突条部180が形成されている。突条部180は、隣接する部分に対して上方に突出する一対の壁を含む。突条部180の前端部には、ライト62の収容部180aが形成されている。ライト62と制御回路基板42とをつなぐリード線は、突条部180を通る。突条部180は、ライト62のリード線を収容する。
突条部180の上端部は、カバー22の上部内面と接触している。上動力伝達ハウジング20aの上部とカバー22の上部との間であって、突条部180の左右の各側には、第1通路としての隙間181L,181Rが空けられている。隙間181L,181Rにおいて、ファン4からの排気風W1が通る。図2図3図10では、便宜上、排気風W1が突条部180内に重なるように描かれているところ、実際には、排気風W1の殆どは、隙間181L,181Rを通る。
尚、排気のための第1通路は、左右に分かれていなくても良いし、3つ以上に分かれていても良い。
【0063】
上動力伝達ハウジング20aの前部には、上下左右に延びる前壁184が設けられている。前壁184は、スライダサポート161の前側に配置されている。前壁184は、スライダ本体136を通すための孔を有している。
上動力伝達ハウジング20aは、前壁184の前方において、壁部186を有している。壁部186は、上動力伝達ハウジング20aの上部内面から、隣接する部分に対して下方に突出している。壁部186は、後方からみて半円弧帯状であり、スライダ6を取り囲んでいる。
上動力伝達ハウジング20aは、前壁184と壁部186との間において、左孔188L及び右孔188Rを有している。左孔188Lは、突条部180の左側に配置されている。右孔188Rは、突条部180の右側に配置されている。
隙間181Lを通った排気風W1は、上方から左孔188Lに入るところ、左孔188Lの手前までにおいて前方へ指向して流れているため、壁部186がない場合には、左孔188Lに入った後、ブレード保持部138側に指向する(排気風W2参照)。同様に、隙間181Rを通った排気風W1は、上方から右孔188Rに入るところ、右孔188Rの手前までにおいて前方へ指向して流れているため、壁部186がない場合には、右孔188Rに入った後、ブレード保持部138側に指向する。
レシプロソー1では、壁部186により、排気風W1は、ブレード保持部138側に指向する排気風W2と、ブレード保持部138側に指向しない排気風W3と、に分岐する。即ち、前壁184と壁部186との間において、第1通路としての隙間181L,181Rは、ブレード保持部138側に指向する壁部186とスライダ6との間の部分以前の第2通路192と、前壁184と壁部186との間以下の第3通路193とに分岐する。
尚、左孔188L及び右孔188Rは、左右に分かれていなくても良いし、3つ以上に分かれていても良い。
【0064】
下動力伝達ハウジング20bは、壁部186に対して上下対称状となる下壁部196を有している。下壁部196は、下動力伝達ハウジング20bの下部内面から上方に、円弧帯状に突出している。下壁部196の上端部は、壁部186の下端部と一連状に接触している。
下動力伝達ハウジング20bの下部であって、下壁部196の後方には、下排気孔としての前下排気孔198が開けられている(図13)。前下排気孔198の後方に、上動力伝達ハウジング20aの前壁184の下部が配置される。
下壁部196とスライダ6との間は、壁部186とスライダ6との間と共に、第2通路192を構成する。
下壁部196の後側は、前壁184と壁部186との間と共に、第3通路193を構成する。第3通路193は、前下排気孔198まで延びる。排気風W3は、前下排気孔198から、ガイドシュー8の隙間を通過してカバー22の下部内面に当たり、前方へ向いて、ブレード保持部138の下方(ガイドシュー8の根元周辺)から外部に出る。
【0065】
動力伝達ハウジング20の内部であって、壁部186及び下壁部196の前側には、リリース機構201が配置されている。
リリース機構201は、ブレード保持部138に作用し、ブレードを取り外すための機構である。
【0066】
スライダ6のブレード保持部138は、プッシュピン210と、プッシュピン用圧縮バネ211と、ガイドスリーブ212と、保持ピン213と、保持ピン用圧縮バネ214と、補助ピン215と、カムスリーブ216と、止め輪217と、補助スリーブ218と、捩りバネ219と、を有している。
【0067】
スライダ本体136の前端部には、スリット220と、第1保持ピン孔222と、第1補助ピン孔223と、段部224が形成されている。
スリット220は、前後上下に広がっている。スリット220は、ブレードの厚さより僅かに大きな幅(左右方向の大きさ)を有している。
第1保持ピン孔222は、スリット220の左側に配置されており、スリット220に通じている。第1保持ピン孔222は、左右に延びている。
第1補助ピン孔223は、スリット220の右側に配置されており、スリット220に通じている。第1補助ピン孔223は、左右に延びている。第1補助ピン孔223は、第1保持ピン孔222と向かい合っている。第1補助ピン孔223の中央左側には、他の部分に対して径方向内方に突出するリブが形成されている。
スライダ本体136の前端部の外径は、後側の部分の外径より小さくなっており、スライダ本体136の外径が変化する部分において、段部224が形成されている。
【0068】
プッシュピン210は、スリット220内であって、スリット220の上下方向における中央部内に設けられている。プッシュピン210は、前後に延びている。プッシュピン210の断面は、“D”字形状である。
プッシュピン用圧縮バネ211は、スリット220内であって、スリット220の上下方向における中央部内に設けられている。プッシュピン用圧縮バネ211は、弾性体であり、コイルバネである。プッシュピン用圧縮バネ211は、プッシュピン210の後側に配置されている。プッシュピン用圧縮バネ211の後端は、捩りバネ219に接している。プッシュピン用圧縮バネ211の前端は、プッシュピン210に接している。プッシュピン用圧縮バネ211は、プッシュピン210とスライダ本体136との間に介装される。プッシュピン用圧縮バネ211は、プッシュピン210を、前方に付勢する。
【0069】
ガイドスリーブ212は、円筒状である。ガイドスリーブ212は、スライダ本体136の前端部の外側に配置されている。ガイドスリーブ212の軸方向は、前後方向である。
又、ガイドスリーブ212は、中央部において、第2保持ピン孔226と、第2補助ピン孔228と、を有している。
第2保持ピン孔226は、ガイドスリーブ212の左側に配置されている。第2保持ピン孔226は、左右に延びている。第2保持ピン孔226は、第1保持ピン孔222と重なっている。第2保持ピン孔226の直径の大きさは、第1保持ピン孔222の直径の大きさ以上となっている。
第2補助ピン孔228は、ガイドスリーブ212の右側に配置されている。第2補助ピン孔228は、左右に延びている。第2補助ピン孔228は、第2保持ピン孔226と向かい合っている。第2補助ピン孔228の直径の大きさは、第1補助ピン孔223のリブより左側の直径の大きさと同様である。
【0070】
保持ピン213は、第1保持ピン孔222及び第2保持ピン孔226の内部に配置されている。保持ピン213は、円柱状であり、左右に延びている。保持ピン213の中央部の直径の大きさは、第1保持ピン孔222の左部の大きさと同様である。保持ピン213の左端部の直径の大きさは、他の部分の直径の大きさに対して小さくなっている。よって、保持ピン213の左端部には、段が形成されている(段付きピン)。保持ピン213の左端部は、左方に行くに従いより細くなる先細形状を呈している。又、保持ピン213の右端部の直径の大きさは、他の部分の直径の大きさに対して大きくなっており、保持ピン213の右端部は、他の部分より拡径された頭部となっている。保持ピン213の右面は、右方へ膨らむ曲面となっている。
保持ピン用圧縮バネ214は、弾性体であり、コイルバネである。保持ピン用圧縮バネ214の左端は、第1保持ピン孔222の拡径部に接している。保持ピン用圧縮バネ214の右端は、保持ピン213の頭部の左面に接している。保持ピン用圧縮バネ214は、保持ピン213とスライダ本体136との間に介装される。保持ピン用圧縮バネ214は、保持ピン213を、左方に付勢する。
補助ピン215は、第1補助ピン孔223及び第2補助ピン孔228の内部に配置されている。補助ピン215は、円柱状であり、左右に延びている。補助ピン215の右端は、第1補助ピン孔223のリブに接触可能である。補助ピン215の直径は、第1補助ピン孔223の右部の直径及び第2補助ピン孔228の直径と同様である。補助ピン215は、スライダ本体136とガイドスリーブ212とをつなぐ。
【0071】
カムスリーブ216は、円筒状である。カムスリーブ216の軸方向は、前後方向である。カムスリーブ216は、ガイドスリーブ212並びに保持ピン213及び補助ピン215の外側に配置されている。カムスリーブ216は、スライダ本体136及びガイドスリーブ212の周りで回転可能である。カムスリーブ216の上部から左部にかけて、張出部が形成されている。張出部は、カムスリーブ216の他の部分に対して、径方向外方に張り出している。張出部の内面には、カム面216Cが形成されている。カム面216Cの径は、前から見て、上部から反時計回りに進むに従い、次第に大きくなる。カム面216Cには、保持ピン213の頭部の曲面が接触している。ブレード保持部138がブレードを受け入れていない場合、保持ピン213の頭部は、カム面216Cの最大径部分に近い側に接している。ブレード保持部138がブレードを受け入れている場合、保持ピン213の頭部は、カム面216Cの最小径部分に近い側に接している。又、カムスリーブ216は、径方向外方に突出する突起234を有している。突起234は、カムスリーブ216の右部に配置されている。
止め輪217は、リング状である。止め輪217は、ガイドスリーブ212の外側に固定されている。止め輪217は、カムスリーブ216の前側に配置されており、カムスリーブ216の前方への移動を阻止する。
【0072】
補助スリーブ218は、円筒状である。補助スリーブ218の軸方向は、前後方向である。補助スリーブ218は、スライダ本体136の外側に配置されており、スライダ本体136の周りで回転可能である。補助スリーブ218は、段部224の前側に配置されている。段部224は、補助スリーブ218の後方への移動を阻止する。補助スリーブ218の前端部は、カムスリーブ216の後端部の開口部の内側に入っており、カムスリーブ216の後端部と連結している。補助スリーブ218は、カムスリーブ216と共に回転する。
捩りバネ219は、リング状であり、弾性体である。捩りバネ219の後端部は、左右方向の中央において上下に延びており、スリット220に入っている。捩りバネ219の後端部は、スリット220の後端の底とプッシュピン用圧縮バネ211の後端との間に配置されている。捩りバネ219の後端部は、スライダ本体136に固定されている。捩りバネ219の後端部以外の部分は、スライダ本体136の前端部の周りであって、補助スリーブ218の後側に配置されている。捩りバネ219の前端は、補助スリーブ218における前後方向の孔に差し込まれており、補助スリーブ218に固定されている。捩りバネ219は、補助スリーブ218を、周方向であって、前から見て反時計回りの方向に付勢する。
【0073】
ブレードは、後端部において、保持孔を有している。保持孔の直径は、保持ピン213の右端部の直径より僅かに大きい。又、ブレードの後端部における刃と逆側の角部は、切り欠かれている。ブレードの後端部における刃と同じ側の部分は、後方に突出して、突出片となっている。ブレードにおける突出片の上方の後辺部は、肩部となっている。更に、ブレードは、後端部において、凸部を有している。
スリット220にブレードの後端部が入れられていない場合、プッシュピン210の前端部は、保持ピン213の左側に入り込んでいる。保持ピン213は、右方に移動して退避状態となっている。
そして、スリット220にブレードの後端部が入れられると、プッシュピン210は、ブレードの肩部により、プッシュピン用圧縮バネ211の付勢力に抗して、後方へ押される。
更にブレードの後端部が後方に進入して、保持ピン213の左側にブレードの保持孔が位置すると、カムスリーブ216のカム面216Cは、保持ピン213を、保持ピン用圧縮バネ214の付勢力に抗して左方に押す。即ち、カムスリーブ216は、補助スリーブ218を介して、捩りバネ219により付勢されている。捩りバネ219による付勢の方向は、前から見て反時計回りである。そして、保持ピン213の左側にブレードの保持孔が位置して、保持ピン213が左方に移動可能となると、カムスリーブ216は、前から見て反時計回りに回転する。すると、保持ピン213の曲面は、カム面216Cにおける内方に一層せり出している部分(径が一層小さくなっている部分)に接触する。よって、保持ピン213は、カム面216Cにより、左方に押される。
左方に押された保持ピン213における段より左方の部分は、ブレードの保持孔内に進入して、ブレードを保持する。
従って、ブレードは、スリット220に差し込むだけで、自動的に保持される(ワンタッチ装着)。
【0074】
ガイドスリーブ212は、保持ピン213とは別の補助ピン215により、スライダ本体136に対し、前後方向の移動が防止され、且つ回転が防止された状態で固定されている。又、保持ピン213は、右部が拡径された第1保持ピン孔222内に配置されている。
【0075】
リリース機構201は、リリースドラム240と、テンションスプリング242とを有している。
【0076】
リリースドラム240は、円筒状であり、動力伝達ハウジング20に収容されている。壁部186は、リリースドラム240の後方への移動を抑制する。リリースドラム240は、ブレード保持部138に隣接している。リリースドラム240は、カムスリーブ216の周囲に配置されている。リリースドラム240は、ユーザによって操作され、ブレード保持部138からのブレードの取り外し(リリース)を操作する操作ドラムである。
リリースドラム240は、内方隆起部248と、操作片250とを有する。
内方隆起部248は、リリースドラム240の内面に配置されており、リリースドラム240の内面における他の部分より径方向内方に隆起している。内方隆起部248は、リリースドラム240の右部に配置されている。
操作片250は、リリースドラム240の右部に配置されている。操作片250は、他の外面に対して径方向外方に突出している。操作片250は、実線で図示される状態において、左上から右下に延びており、前後に広がっている。操作片250は、リリースドラム240における他の部分(円筒形のリリースドラム本体部)と一体に形成されている。操作片250は、動力伝達ハウジング20に設けられた第1操作片用孔252及びカバー22の第2操作片用孔254から右方に出ている。
【0077】
テンションスプリング242は、コイルバネである。テンションスプリング242は、リリースドラム240の周方向外側に配置されており、リリースドラム240の周方向に延びている。テンションスプリング242は、動力伝達ハウジング20内に配置されている。
テンションスプリング242の第1の端部は、フック形状を有しており、リリースドラム240に係止されている。テンションスプリング242の第2の端部は、フック形状を有しており、下動力伝達ハウジング20bに固定されている。
【0078】
テンションスプリング242が自然長から少し伸びた状態である場合、リリースドラム240の内方隆起部248(図12の実線)は、ブレード保持状態のカムスリーブ216の突起234(図12の一点鎖線)に接触していない。このとき、リリースドラム240の操作片250は、第1操作片用孔252及び第2操作片用孔254の下端に接触している。尚、このときのテンションスプリング242は、自然長状態等の他の状態であっても良い。
ユーザは、下方に位置している操作片250を上方へ操作して、リリースドラム240を、テンションスプリング242の付勢力に抗して、リリースドラム240の前後方向の軸周りで回転させることができる。この場合、リリースドラム240の回転により、内方隆起部248(図12の一点鎖線)は、カムスリーブ216の対応する突起234に接触し、カムスリーブ216を前から見て時計回りに回転させる。このカムスリーブ216の回転により、保持ピン213の頭部は、カム面216Cにおける径の大きい部分の内側に配置され、保持ピン213は、保持ピン用圧縮バネ214の付勢力により、左方に退避して、ブレードの保持孔から出る(保持の解除)。すると、プッシュピン210は、プッシュピン用圧縮バネ211の付勢力により、前方へ移動して、保持を解除されたブレードを前方に押し、保持ピン213の左側に入り込む。
従って、リリース機構201のリリースドラム240は、内方のブレード保持部138と連動し、操作片250の上方への操作により、ブレードがブレード保持部138から脱してリリースされる。
プッシュピン210が保持ピン213の右側に入り込むと、保持ピン213の右方への移動は、阻止される。従って、保持ピン213は、捩りバネ219の前から見て反時計回りの付勢力に抗し、カムスリーブ216の前から見て反時計回りの回転を阻止する。
尚、操作ドラムは、ブレードのリリース操作に代えて、あるいはブレードのリリース操作と共に、ブレードの装着操作を行うものとされても良い。
【0079】
ブレード保持部138側に指向する排気風W2は、リリースドラム240とスライダ6との間を通過して、外部前方へ出る。
【0080】
このようなレシプロソー1の動作例が説明される。
ユーザは、停止状態のスライダ6のブレード保持部138に対して、ブレードをセットする。典型的には、被加工材に対してブレードを上から作用させるため、ブレードは、刃(作用部)が下となるようにセットされる。又、例えば被加工材に対してブレードを下から作用させる場合等において、ブレードが上となるようにセットされることがある。
ユーザは、適宜ガイドシュー8の長さを調節し、被加工材に対して、ガイドシュー8の前面を当てる。更に、ユーザは、充電されたバッテリ54を、バッテリ装着部50に装着する。加えて、ユーザは、速度を選択するため、速度切替ダイヤル36を操作する。
そして、ユーザにより、第1グリップ部30(及び第2グリップ部60)が把持され、トリガ33が所定量引き込まれると、メインスイッチ本体部34がオンとなり、モータ3への給電がなされて、モータ軸80が回転する。モータ3への給電は、コントローラ40で整流された直流電源による。尚、トリガ33が特定量以上引き込まれると、ライト62が点灯する。この特定量は、モータ3への給電がなされる所定量より小さい。
コントローラ40のマイコンは、センサ基板75から、ロータ72の回転状態を取得する。又、コントローラ40のマイコンは、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のオンオフを制御して、ステータ71の各コイル73に対して順番に電流を流すことで、ロータ72を回転させる。一般に、ブラシレスモータであるモータ3のコントローラ40は、マイコンの駆動等により、発熱する可能性があるものとなっている。又、熱がコントローラ40に蓄積した場合、熱がコントローラ40の動作に影響を及ぼすことがある。
モータ軸80は、オンとなったメインスイッチ本体部34の信号(トリガ33の引き込み量)に応じた回転速度で回転する。モータ軸80の回転速度は、トリガ33の引き込み量が多いほど高速となる。又、モータ軸80の最高回転速度は、コントローラ40により、速度切替ダイヤル36の回転状態に応じたものに制御される。
モータ軸80が回転すると、傘歯ギヤ100、トルクリミット機構102、中間軸104、及びクランクベース106を介してクランクカム108が回転し、スライダ6が前後動する。又、バランサ144が前後方向においてスライダ6と反対に移動し、スライダ6は、振動が抑制された状態で前後動する。
【0081】
スライダ6は、前後のオイルレスベアリング151によって、スライダサポート本体150の方向以外の方向を向くことが抑制された状態で案内される。
ユーザがオービタル切替レバー170のツマミ部174を前方へ動かすと(図1の二点鎖線参照)、レバー本体172の第2平面178が前後左右に延びる状態となり(図8参照)、後のプレート152から離れる。オービタル機構12のベアリング156は、クランクカム108のカム面130aの全周を相対的に辿り、スライダ6の往復動に合わせてスライダサポート本体150を揺動する。よって、オービタル運動が、スライダ6の往復動全体でなされる(第2オービタル状態)。
又、ユーザがオービタル切替レバー170のツマミ部174を後方へ倒すと(図1の実線参照)、レバー本体172の第1平面176が前後左右に延びる状態となり(図7参照)、後のプレート152を持ち上げ得る状態となる。オービタル機構12のベアリング156は、クランクカム108のカム面130aの約半周のみを相対的に辿り、約半周のみスライダ6の往復動に合わせてスライダサポート本体150を揺動し、残りの約半周においてカム部130に接触せず、スライダサポート本体150の姿勢を維持する。よって、オービタル運動が、スライダ6の往復動の約半分においてなされる(第1オービタル状態)。
【0082】
スライダ6ないしブレードの作動状態で、ユーザがブレードを被加工材に向けて下ろしていくと、前後動するブレードの刃が被加工材に当たり、被加工材が切断されていく。
第2オービタル状態は、例えば被加工材が木材である場合に適している。又、第1オービタル状態は、例えば被加工材が金属である場合に適している。
【0083】
又、モータ軸80の回転に伴うファン4の回転により、ファン4の周囲の空気が、ファン4の径方向外方に押し出される。よって、空気の流れ(風)が、各吸気孔31から、モータハウジング18内を経て、ファン4に至り、更に本体部排気孔56及び各下排気孔48にそれぞれ達するように発生する。即ち、排気風WD,WL,WR,W1~W3等が発生する。
かような風により、本体ハウジング2内の各種の部材が冷却される。
特に、各吸気孔31からファン4までの吸気風により、モータ3が冷却される。吸気風は、ステータ71及びロータ72の間を通過し、ステータ71及びロータ72を冷却する。又、吸気風は、ステータ71の内部を通過し、ステータ71を冷却する。
又、ファン4から各本体部排気孔56までの排気風WL,WRは、動力伝達ハウジング20の外側を通過する。よって、排気風WL,WRにより、動力伝達ハウジング20及びその内部の部材が冷却される。
更に、ファン4から各下排気孔48までの排気風WDにより、コントローラ40が冷却される。排気風WDは、制御回路基板42を覆うコントローラケース44側を通過する。よって、排気風WDは、制御回路基板42を十分に冷却する。
又、排気風W1は、動力伝達ハウジング20の上方を通過し、排気風W2は、リリースドラム240の径方向内方を通過し、排気風W3は、動力伝達ハウジング20の前方を通過する。よって、排気風W1~W3により、動力伝達ハウジング20及びその内部の部材、並びにその前方の部材が冷却される。更に、排気風W1が排気風W2,W3に分岐するため、ブレード保持部138側へ指向する排気風W2の風量が、分岐しない場合に比べて抑制される。従って、被加工材において発生した粉塵が舞う事態の発生が抑制される。排気風W3は、最終的には前方に向かうものの、ブレード保持部138ではなくその下方のガイドシュー8周辺において前方に向かい、ブレード保持部138側に指向しないため、被加工材において発生した粉塵が舞う事態の発生が抑制される。
【0084】
ユーザがトリガ33の操作によりメインスイッチ本体部34をオフにすると、モータ3のモータ軸80が停止して、各種の前後動及び吸排気が停止する。又、所定時間経過後、ライト62が消灯する。
【0085】
尚、本発明の形態及び変更例は、上述のものに限定されない。例えば、本発明の形態及び変更例に対し、次のような変更が更に適宜施される。
ブレード保持部138等のオービタル運動(軌跡運動)は、楕円状及び半楕円状に限られない。例えば、オービタル運動は、仮想的な半楕円弧を往復するもの(スウィング状)であっても良い。
第1平面176は、第1部分176a及び第2部分176bを含む一連の平面でなくても良い。例えば、第1平面176は、平面である第1部分176aと、第1部分176aから離れた平面である第2部分176bとを有して、それら第1部分176aと第2部分176bとでスライダ6を直接的に又は間接的に支持しても良い。第1部分176a及び第2部分176bの少なくとも一方は、周囲の部分に対して突出する突起であっても良い。
【0086】
カム部130は、上方から見て弧状であっても良いし、直線状あるいは曲線状であっても良い。カム部130は、クランクカム108の下面に設けられても良い。カム部130は、クランクカム108と別体であっても良い。
往復動変換機構5の一部又は全部、及びオービタル切替機構14(オービタル切替レバー170)のうちの少なくとも何れかは、スライダサポート161の上方に配置されても良い。
往復動変換機構5は、前後左右に延びるクランクカム108を用いるもの(横クランクタイプ)に代えて、クランク及びコンロッドを用いるもの(コンロッドタイプ)とされても良いし、傾斜円筒面を有する回転体及び当該傾斜円筒面に設けられたスワッシュベアリングを用いるもの(スワッシュタイプ)とされても良い。
【0087】
本体部排気孔56は、カバー22における往復動変換機構5より前方の部分に配置されても良い。本体部排気孔56は、動力伝達ハウジング20に配置されても良い。下排気孔48は、コントローラ40の外側に配置されても良い。
カバー22は、カバー左部とカバー右部を有する半割のものであっても良い。
ボールベアリングに代えてニードルベアリングが用いられるようにしたり、ニードルベアリングに代えてボールベアリングが用いられるようにしたり、トルクリミット機構102及び中間軸104の少なくとも一方が省略されたり、吸気孔31並びに本体部排気孔56及び下排気孔48の少なくとも何れかの大きさ,配置,数を変えたり、バッテリ54の着脱方向を前後方向から変えたり、装着可能なバッテリ54の数を複数に変えたりする等、各種部材の設置の有無、設置数、材質、形状、形式、配置等は様々に変更されて良い。
先端工具は、ブレード以外のものとされても良い。
バッテリ54による給電に代えて、コードによる給電がなされても良い。コードは、商用電源に接続されても良い。
本発明の形態及びその変更例は、レシプロソー1以外の往復動切断工具(例えばジグソー)に適用することができるし、往復動切断工具以外の往復動工具,電動工具,園芸工具,電動作業機に適用することもできる。
【0088】
[第2形態]
図15Aは、本発明の第2形態に係るレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-1オービタル状態におけるカム面130aの最高点130a2が最後方位置となったときの図である。図15Bは、図15Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-1オービタル状態におけるカム面130aの最低点130a1が最後方位置となったときの図である。
図16Aは、図15Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-2オービタル状態におけるカム面130aの最高点130a2が最後方位置となったときの図である。図16Bは、図16Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第1-2オービタル状態におけるカム面130aの最低点130a1が最後方位置となったときの図である。
図17Aは、図15Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第2オービタル状態におけるカム面130aの最高点130a2が最後方位置となったときの図である。図17Bは、図17Aのレシプロソーの要部の中央縦断面図であって、第2オービタル状態におけるカム面130aの最低点130a1が最後方位置となったときの図である。
第2形態のレシプロソーは、オービタル切替レバーのレバー本体(及びカム面130aとの上下方向における位置関係)を除き、第1形態のレシプロソー1と同様に成る。第1形態のレシプロソー1と同様に成る部材及び部分等については、同じ符号が付されて、適宜説明が省略される。
【0089】
第2形態のオービタル切替レバー270のレバー本体272は、左右に延びる第1の支持面としての第1平面276と、左右に延びる第2の支持面としての第2平面277と、左右に延びる第2オービタル状態用面としての第3面278と、を有する。
第1平面276と第2平面277とは、所定の角度(ここでは約100°)をなしている。第2平面277と第3面278とは、特定の角度(ここでは約100°)をなしている。
中心軸Cから第1平面276までの距離は、中心軸Cから第2平面277までの距離より大きい。中心軸Cから第2平面277までの距離は、中心軸Cから第3面278までの距離より大きい。
【0090】
第1-1オービタル状態である図15A図15Bの場合、オービタル切替レバー270は、第1平面276がスライダサポート161の後下部(後のプレート152)に常に接触する状態となっている。
即ち、図15Aのように、カム面130aにおける最高点130a2が最後方となる場合に、第1平面276がスライダサポート161の後下部を支持し、カム面130aは、スライダサポート161(ベアリング156)に接触しない。又、図15Bのように、カム面130aにおける最低点130a1が最後方となる場合に、第1平面276がスライダサポート161の後下部を支持し、カム面130aは、スライダサポート161に接触しない。よって、第1-1オービタル状態では、ブレード保持部138のオービタル運動は往復動の全範囲においてなされず、ブレード保持部138は前後に直線的に往復動する。
この場合、第1平面276は、中心軸Cを含み第1平面176に垂直である仮想的な垂直面Vに対し、前後方向で両側にわたっている。即ち、第1平面276は、垂直面Vをまたいでいる。換言すれば、第1平面276は、中心軸C(垂直面V)より前方側の第1部分276aと、中心軸C(垂直面V)より後方側の第2部分276bと、を有している。
【0091】
第1-2オービタル状態である図16A図16Bの場合、オービタル切替レバー270は、第2平面277がスライダサポート161の後下部に接触可能な状態となっている。
即ち、図16Aのように、カム面130aにおける最高点130a2が最後方となる場合に、カム面130aは、スライダサポート161(ベアリング156)に接触し、第2平面277がスライダサポート161の後下部から離れる。又、図16Bのように、カム面130aにおける最低点130a1が最後方となる場合に、第2平面277がスライダサポート161の後下部を支持し、カム面130aは、スライダサポート161に接触しない。そして、第1-2オービタル状態では、第1形態における第1オービタル状態の場合と同様に、ブレード保持部138のオービタル運動は往復動の約半分の範囲においてなされず、ブレード保持部138は半楕円状の軌跡で往復動する。
この場合、第2平面277は、中心軸Cを含み第2平面277に垂直である仮想的な垂直面Vに対し、前後方向で両側にわたっている。即ち、第2平面277は、垂直面Vをまたいでいる。換言すれば、第2平面277は、中心軸C(垂直面V)より前方側の第1部分277aと、中心軸C(垂直面V)より後方側の第2部分277bと、を有している。
【0092】
他方、第2オービタル状態である図17A図17Bの場合、オービタル切替レバー270は、第3面278がスライダサポート161の後下部と間隔を置いて対向する状態となっている。
即ち、図17Aのように、カム面130aにおける最高点130a2が最後方となる場合、カム面130aは、スライダサポート161(ベアリング156)に接触し、第3面278は、スライダサポート161の後下部から離れている。又、図17Bのように、カム面130aにおける最低点130a1が最後方となる場合、カム面130aは、スライダサポート161に接触し、第3面278は、スライダサポート161の後下部から離れている。即ち、スライダサポート161のベアリング156は、カム面130aの全周に対して接触する。よって、第2オービタル状態では、ブレード保持部138のオービタル運動は往復動の全範囲においてなされ、ブレード保持部138は楕円状の軌跡で往復動する。
尚、オービタル切替レバー170の径は、第3面278におけるネジ160と向かい合う部分において、隣接する部分の径に対して小さくなっており、オービタル切替レバー170とネジ160との干渉が回避されるようになっている。第3面278におけるネジ160と向かい合う部分は、ネジ160を避けるように凹んでいる。
【0093】
第2形態に係るレシプロソーは、第1形態のレシプロソー1と同様の変更例を適宜有する。
更に、第2形態に係るレシプロソーにおけるレバー本体272は、3つ以上の支持面を有していても良い。
【0094】
[第3形態]
図18は、本発明の第3形態に係るレシプロソーの図11同様図である。図19は、本発明の第3形態に係るレシプロソーの図14同様図である。
本発明の第3形態に係るレシプロソーは、動力伝達ハウジングにおける壁部及び下壁部並びにそれらの周辺の構成、及び第2通路192(排気風W2)の有無を除き、第1形態のレシプロソー1と同様に成る。第1形態のレシプロソー1と同様に成る部材及び部分等については、同じ符号が付されて、適宜説明が省略される。
【0095】
第3形態に係るレシプロソーにおける上動力伝達ハウジング320aの壁部386の突出高さは、第1形態の壁部186の突出高さより高い。同様に、第3形態に係るレシプロソーにおける下動力伝達ハウジング320bの下壁部396の突出高さは、第1形態の下壁部196の突出高さより高い。尚、壁部386及び下壁部396の少なくとも一方の突出高さは、前述のものに限られない。
更に、壁部386及び下壁部396の間には、弾性体(ゴム)製のリング397が介装されている。リング397は、上下左右に延びる。リング397の周囲には、溝397aが形成されている。溝397aは、その前側及び後側に対して、径方向内方に凹んでいる。溝397aの上部には、壁部386が入っている。溝397aの下部には、下壁部396が入っている。リング397は、壁部386及び下壁部396により保持されている。リング397の中央には、孔397bが空いている。
壁部386及び下壁部396並びにリング397により、左孔188L及び右孔188Rの前側から前下排気孔198の前側までが、スライダ6の往復動を許容する状態で塞がれている。スライダ本体136は、孔397bに接触する状態で入っている。よって、前方(ブレード保持部138側)に指向する第2通路192(排気風W2)は、第3形態では略存在しない。又、壁部386及び下壁部396並びにリング397と、その後側における上動力伝達ハウジング20aの前壁184とにより、第3形態における第3通路393が形成される。第3通路393は、ブレード保持部138側に指向せずに、レシプロソーの外部に至る通路である。隙間181L,181R(第1通路)は、第3通路393のみにつながっている。第3通路393内において、左孔188L及び右孔188Rからの排気風W1は、分岐せず、ブレード保持部138側に指向しない排気風W3となる。
【0096】
第3形態において、排気風W1は、動力伝達ハウジング20の上方を通過し、リリースドラム240の径方向内方を通過する排気風W2は殆ど存在せず、第3通路393を通る排気風W3は、動力伝達ハウジング20の前部を上下方向に通過する。よって、排気風W1,W3により、動力伝達ハウジング20及びその内部の部材が冷却される。更に、排気風W1が、ブレード保持部138側に指向しない排気風W3となるため、ブレード保持部138側へ指向する排気風W2の風量が、分岐しない場合に比べて抑制される。従って、被加工材において発生した粉塵が舞う事態の発生が抑制される。排気風W3は、最終的には前方に向かうものの、ブレード保持部138ではなくその下方のガイドシュー8周辺において前方に向かい、ブレード保持部138側に指向しないため、被加工材において発生した粉塵が舞う事態の発生が抑制される。
【0097】
第3形態に係るレシプロソーは、第1形態及び第2形態の少なくとも何れかと同様の変更例を適宜有する。
【符号の説明】
【0098】
1・・レシプロソー(往復動切断工具)、3・・モータ、4・・ファン、5・・往復動変換機構、6・・スライダ、12・・オービタル機構、14・・オービタル切替機構、20・・動力伝達ハウジング、20a・・上動力伝達ハウジング、20・・下動力伝達ハウジング、22・・カバー、30・・第1グリップ部(グリップ部)、62・・ライト、71・・ステータ、72・・ロータ、108・・クランクカム(クランク)、122・・偏心ピン、130・・カム部、138・・ブレード保持部(先端工具保持部)、156・・ベアリング、161・・スライダサポート、170,270・・オービタル切替レバー、172,272・・レバー本体(軸状部分)、176,276・・第1平面(支持面)、176a,276a,277a・・第1部分、176b,276b,277b・・第2部分、178・・第2平面(第2オービタル状態用面)、180・・突条部、181L,181R・・隙間(第1通路)、186・・壁部、188L,188R・・孔、192・・第2通路、193・・第3通路、198・・前下排気孔(下排気孔)、240・・リリースドラム、277・・第2平面(支持面)、278・・第3面(第2オービタル状態用面)、C・・(レバー本体の仮想的な)中心軸(回転軸)、W1・・(第1通路の)排気風、W2・・(第2通路の)排気風、W3・・(第3通路の)排気風。
図1
図2
図3
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図5
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