IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -センサ及び感知デバイス 図1
  • -センサ及び感知デバイス 図2
  • -センサ及び感知デバイス 図3
  • -センサ及び感知デバイス 図4
  • -センサ及び感知デバイス 図5
  • -センサ及び感知デバイス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】センサ及び感知デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20241114BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N27/00 H
A61F13/42 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021055627
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152745
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-068420(JP,A)
【文献】特開2014-190722(JP,A)
【文献】特開2017-072454(JP,A)
【文献】特開2020-139856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-G01N 27/10
G01N 27/14-G01N 27/24
G01M 3/00-G01M 3/40
A61F 13/15-A61F 13/84
H05K 1/18-H05K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性線状体を含む第一配線と、導電性線状体を含み、かつ前記第一配線とイオン化傾向が異なる材質からなる第二配線とを備える一対の配線を、2つ以上と、前記一対の配線を固定する配線固定材と、前記一対の配線の少なくとも1つ以上を覆う、水を通さない被覆物とを備え、
前記導電性線状体の直径が、5μm以上300μm以下であり、
前記配線固定材が、伸縮性を有し、
前記被覆物が、伸縮性を有し、
前記一対の配線のうちの1つは、前記被覆物に覆われておらず、
前記被覆物に覆われていない一対の配線以外では、前記第一配線と前記第二配線との間に電解質層が設けられており、
前記一対の配線同士は、電気的に直列に接続されている、
センサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサにおいて、
前記導電性線状体の直径が、10μm以上100μm以下である、
センサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のセンサにおいて、
前記電解質層の厚さが、2μm以上1cm以下である、
センサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンサにおいて、
前記導電性線状体が、前記センサの平面視において、波形状である、
センサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセンサにおいて、
前記配線固定材が、粘着剤層を備える粘着シートであり、前記粘着剤層が、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物から形成され、
前記被覆物が、合成樹脂フィルムである、
センサ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のセンサにおいて、
前記被覆物に覆われていない一対の配線の上には、金属塩を含む被膜が設けられている、
センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセンサにおいて、
前記第一配線及び前記第二配線の材質の組合せは、銅と亜鉛の組合せ、銅とアルミニウムの組合せ、アルミニウムと炭素の組合せ、チタンと炭素の組合せ、チタンと銅の組合せ、亜鉛と炭素の組合せ、亜鉛と銀の組合せ、並びに、亜鉛と金の組合せのいずれか1つである、
センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のセンサと、
前記配線間の電位差を感知する感知モジュールと、
無線信号を送信する無線送信モジュールと、を備える、
感知デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ及び感知デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
水分を検知する水分センサとしては、水分が1対の電極と接触した際に生じる起電力を利用するものが提案されている。例えば、特許文献1には、排泄物を受ける吸収体を有する着用物品に備えられた起電モジュールが記載されている。この起電モジュールは、イオン化傾向の異なる材料によって構成された1対の電極を有し、前記1対の電極のうちの少なくとも一方は、骨格部及び該骨格部の間に設けられた空隙部を有する骨格構造である。そして、前記1対の電極が前記吸収体に排泄された尿と接触することによって起電力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-229003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の起電モジュールにおいては、電極として、カーボン印刷シートやアルミニウムシート等のシート部材を用いている。そのため、シート部材が厚い場合には、フレキシブル性に欠け、着用者の装着感が悪いという問題があった。また、電極での起電力の点で、必ずしも十分なものではなく、無線送信モジュールの駆動に十分な電力を供給できなかった。
【0005】
本発明の目的は、フレキシブル性に優れ、かつ高電圧を発現できるセンサ、並びに感知デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、導電性線状体を含む第一配線と、導電性線状体を含み、かつ前記第一配線とイオン化傾向が異なる材質からなる第二配線とを備える一対の配線を、2つ以上と、前記一対の配線を固定する配線固定材と、前記一対の配線の少なくとも1つ以上を覆う、水を通さない被覆物とを備え、前記一対の配線のうちの1つは、前記被覆物に覆われておらず、前記被覆物に覆われていない一対の配線以外では、前記第一配線と前記第二配線との間に電解質層が設けられており、前記一対の配線同士は、電気的に直列に接続されている、センサが提供される。
【0007】
本発明の一態様に係るセンサにおいて、前記導電性線状体の直径が、2μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係るセンサにおいて、前記電解質層の厚さが、2μm以上1cm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係るセンサにおいて、前記導電性線状体が、前記センサの平面視において、波形状であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係るセンサにおいて、前記配線固定材が、伸縮性を有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係るセンサにおいて、前記被覆物に覆われていない一対の配線の上には、金属塩を含む被膜が設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るセンサにおいて、前記第一配線及び前記第二配線の材質の組合せは、銅と亜鉛の組合せ、銅とアルミニウムの組合せ、アルミニウムと炭素の組合せ、チタンと炭素の組合せ、チタンと銅の組合せ、亜鉛と炭素の組合せ、亜鉛と銀の組合せ、並びに、亜鉛と金の組合せのいずれか1つであることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記本発明の一態様に係るセンサと、前記配線間の電位差を感知する感知モジュールと、無線信号を送信する無線送信モジュールと、を備える、感知デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、フレキシブル性に優れ、かつ高電圧を発現できるセンサ、並びに感知デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るセンサを示す概略図である。
図2図1のII-II断面を示す断面図である。
図3図1のIII-III断面を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るセンサの製造方法を説明するための図である。
図5】本発明の実施形態に係るセンサを被着体に装着した状態を示す概略図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る感知デバイスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0017】
(センサ)
本実施形態に係るセンサ100は、図1図2及び図3に示すように、第一配線11と、第二配線12とを備える一対の配線を、2つ以上と、前記一対の配線を固定する配線固定材3と、水を通さない被覆物4とを備えている。第一配線11及び第二配線12は、それぞれ導電性線状体を含む。また、第二配線12は、第一配線11とイオン化傾向が異なる材質からなる。
そして、前記一対の配線のうちの1つは、被覆物4に覆われていない。被覆物4に覆われていないことから、前記一対の配線は、水と直接触れることができ、水分を検知できる。なお、以下、この部分を検知部と称する場合がある。また、被覆物4に覆われていない一対の配線以外では、図2に示すように、第一配線11と第二配線12との間に電解質層2が設けられており、電池のような構成となっている。なお、以下、この部分を電池部と称する場合がある。さらに、前記2つ以上の一対の配線のうち、隣り合う一対の配線は、図3に示すように、電解質層2のない部分において、一方の一対の配線の第一配線11と、他方の一対の配線の第二配線12とが接触しており、電気的に直列に接続されている。
【0018】
被覆物4に覆われていない一対の配線において、第一配線11と、第二配線12とは、互いに触れ合わないようになっている。そして、第一配線11及び第二配線12の間に、被検知物が接触した場合には、この被検知物をセンサ100により感知できる。
また、被覆物4に覆われている一対の配線は、第一配線11と第二配線12との間に電解質層2が設けられており、この組み合わせが一種の電池を構成し、このような電池の複数組が直列に接続されていることになる。さらに、検知部における第一配線11と第二配線12の間に、水分が接触した場合、検知部でも起電力が生じる。そして、電池部と検知部間は電気的に直列に接続されているため、検知部に被検知物が接触した場合、センサ100には高い起電力が生じる。
感知できる被検知物としては、電気を流すことができる流動体であれば、特に限定されない。具体的には、液体、及びゲル状の流動体等が挙げられる。より具体的には、水、尿、及び血液等が挙げられる。特に好ましい被検知物としては、水分を含む物質が挙げられる。そして、センサ100は、水分センサであることが好ましく、尿センサであることがより好ましい。
【0019】
(一対の配線)
本実施形態に用いる一対の配線は、導電性線状体を含む第一配線11と、導電性線状体を含む第二配線12とを備える。ここで、第二配線12の材質は、第一配線11の材質とイオン化傾向が異なることが必要である。このような構成であれば、第一配線11及び第二配線12との間に、被検知物が接触すれば、起電力が発生するので、この被検知物をセンサ100により感知できる。
【0020】
第一配線11及び第二配線12は、それぞれ表面に金属をめっき又は蒸着させてもよい。表面に金属をめっき又は蒸着させた場合、第二配線12の表面の材質は、第一配線11の表面の材質とイオン化傾向が異なることが必要である。
第一配線11及び第二配線12の表面の材質は、例えば、アルミニウム(-1.676V)、チタン(-1.63V)、亜鉛(-0.7626V)、クロム(-0.74V)、鉄(-0.44V)、ニッケル(-0.257V)、スズ(-0.1375V)、銅(0.340V)、銀(0.7991V)、金(1.52V)、及び炭素等である。なお、上記の括弧内の数値は、標準電極電位の数値である。また、本明細書では、炭素のようにイオン導電性でない導電材料は、便宜上0Vとして取り扱う。
【0021】
第一配線11及び第二配線12の表面の材質間におけるイオン化傾向の差は、センシングあるいは無線通信に必要とされる起電力の観点から、0.5V以上であることが好ましく、0.8V以上であることがより好ましく、1.1V以上であることがさらに好ましい。
第一配線11及び第二配線12の表面の材質の好ましい組合せとしては、銅と亜鉛の組合せ、銅とアルミニウムの組合せ、アルミニウムと炭素の組合せ、チタンと炭素の組合せ、チタンと銅の組合せ、亜鉛と炭素の組合せ、亜鉛と銀の組合せ、並びに、亜鉛と金の組合せ等が挙げられる。
【0022】
(導電性線状体)
第一配線11及び第二配線12に用いる導電性線状体は、導電性を有するものであれば、特に制限はないが、金属ワイヤーを含む線状体、及び導電性糸を含む線状体等が挙げられる。導電性線状体は、金属ワイヤー及び導電性糸を含む線状体(金属ワイヤーと導電性糸を撚った線状体等)であってもよい。
なお、本明細書において、線状体とは、線状の部材を意味する。線状体の長さは、例えば1cm以上である。線状体の形態は特に限定されず、1本の線状の部材であっても、複数本の線状の部材からなる集合体であってもよい。線状体の断面形状は、線状体の形態に応じて様々な形状となり得る。
【0023】
導電性線状体は、センサ100の平面視において、波形状を成していることが好ましい。波形状としては、例えば、正弦波、矩形波、三角波、及びのこぎり波等が挙げられる。導電性線状体が、このような構造であれば、導電性線状体の軸方向に、センサ100を伸張した際に、導電性線状体の断線を抑制できる。
さらに、導電性線状体が、このような構造であれば、波形状の一部分では、図2に示すように、一対の配線の第一配線11と第二配線12とが接触しないようにでき、波形状の他の部分では、図3に示すように、一方の一対の配線の第一配線11と、他方の一対の配線の第二配線12とが接触するようにできる。そのため、前記一対の配線同士を、電気的に直列に接続させることができる。
【0024】
金属ワイヤーを含む線状体、及び導電性糸を含む線状体は、共に、高い電気伝導性を有するため、導電性線状体として適用すると、第一配線11及び第二配線12の抵抗を低減することが容易となる。
【0025】
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、及び金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、及びはんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料により表面が被覆されたものであってもよい。
【0026】
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属腐食が抑制される。
【0027】
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、非晶質炭素(カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、及びカーボンファイバー等)、グラファイト、フラーレン、グラフェン、及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0028】
導電性糸を含む線状体は、1本の導電性糸からなる線状体であってもよいし、複数本の導電性糸を撚った線状体であってもよい。また、導電性糸と絶縁性の糸を撚ったものであってもよい。導電性糸を含む線状体は、金属ワイヤーを含む線状体に比べ、柔軟性が高く、断線が生じ難いという利点がある。
導電性糸としては、導電性繊維(金属繊維、炭素繊維、及びイオン導電性ポリマーの繊維等)を含む糸、導電性微粒子(カーボンナノ粒子等)を含む糸、表面に金属(銅、銀、及びニッケル等)をめっき又は蒸着した糸、及び金属酸化物を含浸させた糸等が挙げられる。
【0029】
導電性糸を含む線状体としては、特に、カーボンナノ粒子として、カーボンナノチューブを含む糸(カーボンナノチューブ糸)を含む線状体(以下「カーボンナノチューブ線状体」とも称する)が好適に挙げられる。
【0030】
カーボンナノチューブ線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、複数のカーボンナノチューブの集合が捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国公開公報US 2013/0251619(日本国特開2012-126635号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が撚られた線状体であってもよい。
【0031】
カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと金属や導電性高分子、グラフェン等のカーボンナノチューブ以外の導電性材料とを含む線状体(以下「複合線状体」とも称する)であってもよい。複合線状体は、カーボンナノチューブ線状体の上述した特徴を維持しつつ、線状体の導電性が向上しやすくなる。
【0032】
複合線状体としては、例えば、カーボンナノチューブと金属とを含む線状体を例とすると、(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、スプレーコーティング、又は湿式めっき等により担持させた複合線状体、(2)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、(3)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを撚った複合線状体等が挙げられる。なお、(2)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(1)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。また、(3)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金属単体(金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、及び亜鉛等)、及び、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、及び銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。
【0033】
これら、導電性線状体の中でも、カーボンナノチューブ糸を含む導電性線状体(特に、カーボンナノチューブ糸のみを含む導電性線状体や、カーボンナノチューブ糸と非金属系導電性材料とを含む導電性線状体)が好ましい。
例えば、表面に金属(銅、銀、及びニッケル等)をめっき又は蒸着した糸、金属酸化物を含浸させた糸は、伸縮が繰り返されると金属又は金属酸化物に割れが生じ易く、耐久性が低い。この点、カーボンナノチューブ線状体は、屈曲への耐性が強く、伸縮を繰り返しても、抵抗値が変化しにくい。また、カーボンナノチューブ線状体は、耐食性も高いという利点もある。
【0034】
ここで、導電性線状体の線抵抗(比抵抗)は、5.0×10-3Ω/cm以上1.0×10Ω/cm以下であることが好ましく、1.0×10-2Ω/cm以上5.0×10Ω/cm以下であることがより好ましい。導電性の高い金属を用いた導電性線状体であれば、導電性線状体の線抵抗を前記下限以上とできる。他方、導電性線状体の線抵抗が前記上限以下であれば、仮に配線の経路が長くなる場合でも抵抗が低く抑えることができ、配線そのものが抵抗体となって計測器に負荷をかけてしまうという問題を抑制できる。
【0035】
導電性線状体の線抵抗の測定は、次の通りである。まず、導電性線状体の両端に銀ペーストを塗布し、銀ペースト間の部分の抵抗を測定し、導電性線状体の抵抗値(単位:Ω)を求める。そして、得られた抵抗値を、銀ペースト間の距離(cm)で除して、導電性線状体の線抵抗を算出する。
【0036】
導電性線状体の断面の形状は、特に限定されず、多角形状、扁平形状、楕円形状、円形状等を取り得るが、楕円形状、円形状であることが好ましい。
導電性線状体の断面が円形状である場合には、導電性線状体の直径は、2μm以上500μm以下であることがより好ましい。また、フレキシブル性及び耐久性の観点から、導電性線状体の直径は、5μm以上300μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
導電性線状体の断面が楕円形状である場合には、長径が上記の直径と同様の範囲にあることが好ましい。また、導電性線状体の断面が多角形状である場合には、多角形の外周円の直径が上記の直径と同様の範囲にあることが好ましい。
【0037】
導電性線状体の直径は、デジタル顕微鏡を用いて、導電性線状体の断面を観察し、導電性線状体の直径を測定し、その平均値とする。
【0038】
(電解質層)
電解質層2は、図1に示すように、センサ100の平面視において、帯状に形成されている。また、電解質層2は、図2に示すように、所定の厚みを有する膜状に形成されている。そして、被覆物4に覆われている一対の配線では、図2に示すように、第一配線11と第二配線12との間に電解質層2が設けられている。
電解質層2を構成する成分としては、高分子化合物と電解質の固溶体からなる高分子固体電解質であることが好ましい。また、電解質としては金属塩が好ましい。電解質層2に含有される高分子化合物は、質量平均分子量が10万以上であることが好ましく、質量平均分子量が10万以上100万以下であることがより好ましい。
高分子化合物としては、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリメタクリル酸メチル、ポリヘキサフルオロプロピレン、及びポリエチレンオキサイド等のイオン伝導性ポリマーが挙げられる。
金属塩としては、公知のものが利用できる。金属塩としては、リチウム塩、及びナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0039】
電解質層2の厚さは、起電力を高める効果の観点から、2μm以上1cm以下であることが好ましく、5μm以上1mmであることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
(配線固定材)
配線固定材3としては、粘着剤層を備える粘着シート、及び熱可塑性樹脂からなるヒートシールが挙げられる。この配線固定材3により、第一配線11及び第二配線12を支持し、固定できる。また、配線固定材3に、第一配線11又は第二配線12を形成する際に、粘着剤層又はヒートシールにより、第一配線11又は第二配線12の配線固定材3への貼り付けが容易となる。また、配線固定材3は、伸縮性を有することが好ましい。このような場合には、センサ100の伸縮性や、フレキシブル性を確保できる。
【0041】
粘着シートを構成する粘着剤層は、加工性、配線保持性、延伸性及びハンドリング性の観点から、粘着性樹脂を含む粘着剤組成物から形成されることが好ましい。粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、溶剤型粘着剤組成物、エマルジョン型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、及び感熱型粘着剤組成物のいずれの形態であってもよい。ここで、ホットメルト型粘着剤とは、加熱することにより溶融して展延塗布可能となり、冷却することにより粘着性と凝集力とを発現する粘着剤をいう。感熱型粘着剤とは、室温(25℃)で比較的低い粘着力を有し、室温(25℃)を超える温度以上(例えば、60℃~80℃)に加熱することにより高接着力化する粘着剤をいう。
【0042】
粘着性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、及びこれらの樹脂に重合性官能基を有するエネルギー線硬化型樹脂等が挙げられる。また、粘着剤層が感熱型粘着剤組成物から形成される場合、感熱型粘着剤組成物に含まれる粘着性樹脂としては、例えば、ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びゴム系樹脂等が挙げられる。これらの粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物には、粘着性樹脂の種類又は粘着シートの用途に応じて、粘着剤用添加剤を含有してもよい。
粘着剤用添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、難燃剤、増粘剤、帯電防止剤、重合開始剤、及び硬化助剤等が挙げられる。
【0043】
例えば、粘着剤層がホットメルト型粘着剤組成物から形成される場合、ホットメルト型粘着剤組成物としては、ブロック共重合体、粘着付与剤、及び可塑剤を所定の割合で配合したものを用いることができる。
【0044】
ブロック共重合体としては、AB型ジブロック共重合体、及びABA型トリブロック共重合体等が挙げられる。AB型ジブロック共重合体としては、スチレン・イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)及びスチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)等が挙げられる。ABA型トリブロック共重合体としては、スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、及びスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)等が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
粘着付与剤及び可塑剤としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0045】
粘着剤層は、疑似接着剤層であることも好ましい。疑似接着剤層は、粘着シートと被着体とを疑似接着状態とする機能を有する。ここで、疑似接着状態とは、粘着シートと被着体とが通常の使用状態では接着しているが、粘着シートを被着体から剥離させる場合に、特に工具等を用いずとも人手で引っ張るのみで剥離し、単に重ね合わせて押圧するのみでは再接着できない状態を意味する。この「単に重ね合わせて押圧するのみでは再接着できない状態」という点において、疑似接着状態は、通常の粘着剤による粘着とは異なる。
疑似接着剤層としては、例えば、熱可塑性樹脂によるヒートシール層等が挙げられる。
【0046】
熱可塑性樹脂によるヒートシール層は、熱可塑性樹脂を主成分とする、ヒートシール性を有する層である。主成分とは、ヒートシール層中において、含有比率(質量%)が最も高い成分を意味する。
ヒートシール層の形成に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、天然ゴム系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及び紫外線硬化ニス等が挙げられる。中でも、ヒートシール層の形成に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンが好ましい。
「熱可塑性樹脂によるヒートシール層」を粘着剤層として用いた粘着シートは、例えば、以下のようにして作製することができる。
ヒートシール層形成用の熱可塑性樹脂を含む組成物を押出機により加熱溶融してフィルム状に押し出し、このフィルムの一方の面に柔軟性基材の表面を接触させる。
【0047】
粘着剤層の厚さは、用途に応じて選択されるが、1μm以上500μm以下であることが好ましく、5μm以上300μmであることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0048】
(被覆物)
被覆物4は、前記一対の配線の少なくとも1つ以上を覆う、水を通さないものである。前記一対の配線のうちの1つは、被覆物4に覆われていない。
被覆物4としては、例えば、合成樹脂フィルム及びガラスフィルム等が挙げられる。また、被覆物4は、伸縮性を有することが好ましい。被覆物4が伸縮性を有する場合、被覆物4で前記一対の配線を覆った場合でも、センサ100の伸縮性を確保できる。
伸縮性を有する被覆物4としては、合成樹脂フィルム等を用いることができる。
【0049】
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。その他、伸縮性を有する被覆物4としては、これらの架橋フィルム及び積層フィルム等が挙げられる。
【0050】
被覆物4の厚さは特に限定されない。被覆物4の厚さは、10μm以上10mm以下であることが好ましく、15μm以上3mm以下であることがより好ましく、30μm以上1mm以下であることがさらに好ましい。
【0051】
(センサの製造方法)
本実施形態に係るセンサ100の製造方法は、特に限定されない。センサ100は、例えば、次の工程により、製造できる。
まず、被覆物4の上に、配線固定材3の形成用組成物を塗布し、図4(A)に示すように、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、配線固定材3を作製する。
次に、図4(B)に示すように、配線固定材3上に、複数本の第二配線12を配列しながら配置して、さらに、1本の第一配線11を配置して、下面シートを作成する。なお、第二配線12及び第一配線11は、センサ100の平面視において、それぞれ波形状となるようにする。
ここで、上記と同様にして、配線固定材3上に、複数本の第一配線11を配列しながら配置して、上面シートを作成する。なお、第一配線11は、センサ100の平面視において、それぞれ波形状となるようにする。
次に、図4(C)に示すように、下面シートの上に、第二配線12の一部を覆うように、かつ、第二配線12の軸方向に沿った帯状の電解質層2を、複数形成する。ただし、下面シートの第一配線11と、第一配線11と隣り合う第二配線12については、センサ100の平面視において、電解質層2が接触しないようにする。
次いで、図4(D)に示すように、電解質層2の上に、上面シートを重ねて、センサ100を作製する。なお、このとき、一方の一対の配線の第一配線11と、隣り合う他方の一対の配線の第二配線12の少なくとも一部を、被覆物4が覆わないようにする。また、被覆物4に覆われている箇所では、図2に示すように、一対の第一配線11と第二配線12との間に電解質層2が設けられるようにする。さらに、図3に示すように、電解質層2のない部分において、一方の一対の配線の第一配線11と、他方の一対の配線の第二配線12とが接触しており、電気的に直列に接続されるようにする。
【0052】
(感知デバイス)
次に、本実施形態に係る感知デバイスについて説明する。
本実施形態に係る感知デバイスは、図5に示すように、センサ100と、配線間の電位差を感知する感知モジュール5と、無線信号を送信する無線送信モジュール6と、を備えている。さらに、センサ100は被検知物の接触により起電力が発生するため、センサ100を電池として活用し、無線送信モジュール6を駆動させてもよい。また、センサ100は、例えば、被着体に取り付けて使用できる。
被着体は、センサ100を取り付ける対象であり、特に限定されない。被着体は、変形するものであってもよく、凹凸又は曲面があるものであってもよい。また、被着体は、織物、及び編物等であってもよく、具体的には、おむつ、生理用ナプキン、又は失禁パッド等が挙げられる。
【0053】
感知モジュール5は、第一電極51と、第二電極52とを備えている。第一電極51は、検知部を構成する第一配線11と電気的に接続し、第二電極52は、少なくとも1つの電池部を構成する第二配線12と電気的に接続している。そして、被着体に取り付けたセンサ100における第一配線11と第二配線12との間に、被検知物が接触した場合には、起電力が発生するので、この被検知物をセンサ100により感知できる。
【0054】
無線送信モジュール6は、感知モジュール5により、被検知物の接触を感知したときに、図6に示す無線中継局7に向けて無線信号を送信する。
無線中継局7は、無線送信モジュール6から送信された無線信号を受信して、感知サーバ8に対して、無線信号が送信されたことを示す信号を送信する。感知サーバ8は、無線中継局7からの信号を受信すると、当該信号に基づいて、センサ100に被検知物が接触していることを感知し、必要に応じて情報処理端末(図示せず)に記録する。
【0055】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態においては、第一配線11及び第二配線12が導電性線状体を含むものであるため、フレキシブル性が優れるセンサ100を提供できる。
(2)本実施形態においては、第一配線11及び第二配線12の材質が異なり、これらの材質のイオン化傾向が異なる。そのため、被覆物4に覆われていない第一配線11及び第二配線12との間に、被検知物が接触した場合に、起電力が発生するので、この被検知物をセンサ100により感知できる。
(3)被覆物4に覆われている一対の配線は、第一配線11と第二配線12との間に電解質層2が設けられており、これらの一対の配線同士が、電気的に直列に接続されていることにより、電池として作用し、被覆物4に覆われていない一対の配線の第一配線11及び第二配線12の間に、被検知物が接触した場合における起電力を高め、高電圧を発現できる。
(4)導電性線状体が、センサ100の平面視において、波形状を成している。このような構造であれば、波形状の一部分では、図2に示すように、第一配線11と第二配線12とが接触しないようにでき、波形状の他の部分では、図3に示すように、第一配線11と第二配線12とが接触するようにできる。そのため、一対の配線同士を、電気的に直列に接続させることができる。
【0056】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、一対の配線(第一配線11及び第二配線12)のうちの1つは、被覆物4に覆われておらず、その上には何ら設けられていなかったが、これに限定されない。例えば、被覆物4に覆われていない第一配線11及び第二配線12の上に、電解質を含む被膜が設けられていてもよい。
電解質を含む被膜としては、金属塩等の電解質を含む水溶性高分子化合物膜等が挙げられる。金属塩としては、塩化ナトリウム、及びカリウム等が挙げられる。
【0057】
前述の実施形態では、感知デバイスは、無線信号を送信する無線送信モジュール6を備えていたが、これに限定されない。例えば、感知モジュール5により、被検知物の接触を感知したときに、有線信号モジュールを用いて信号を送ってもよい。また、この信号を、直接、情報処理端末に送り、情報処理端末で記録してもよい。
【実施例
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0059】
[実施例1]
(配線付き粘着シート(下面シート)の作製)
厚み50μmのウレタンフィルム上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製の「PK」)を厚み20μmに塗布し、100mm×75mmの長方形に裁断し、粘着シートを作製した。
第二配線として、銅線(直径150μm、トクサイ社製の「C1100-H AuP」)を準備した。次に、外周面がゴム製のドラム部材にしわのないように粘着シートを巻きつけた。円周方向における粘着シートの両端部を両面テープで固定した。ボビンに巻き付けた銅線を、ドラム部材の端部付近に位置する粘着剤層の表面に付着させた上で、銅線を繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、銅線が等間隔でらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。この際、ドラム部材は、ドラム軸方向に振動させながら回転するようにして、巻き付けられた銅線が波形状を描くようにした。このようにして、粘着シートの表面上に、銅線を11本設けて、等間隔に設置した。銅線の間隔は8mmであった。また、波形状の振幅は2mm、波長は8mmであった。
さらに、第一配線として、亜鉛線(直径150μm、ジャパンファインスチール社製の「亜鉛線」)を準備し、ボビンに巻き付けた亜鉛線を、設置した銅線の間に8mm間隔になるように粘着剤層の表面に付着させた上で、亜鉛線を繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、亜鉛線が等間隔でらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。この際、ドラム部材は、ドラム軸方向に振動させながら回転するようにして、巻き付けられた亜鉛線が波形状を描くようにした。このようにして、粘着シートの表面上に、亜鉛線を1本設置した。また、波状形状の振幅は2mm、波長は8mmであった。
その後、ドラム軸と平行に、銅線と亜鉛線が設置された粘着シートを切断した。この銅線と亜鉛線が設置された粘着シートを、銅線と亜鉛線が延在する方向を短辺方向として、75mm×100mmの長方形に裁断し、11本の銅線と1本の亜鉛線が設置された配線付き粘着シート(下面シート)を作製した。
【0060】
(帯状の電解質層と、金属塩を含む被膜の形成)
剥離フィルム(商品名:SP-382150(リンテック社製))上に、塗布部(5mm)と未塗布部分(3mm)が交互になるように下記組成物Aを塗布し、厚みが20μmの帯状電解質層を形成した。形成された帯状電解質層に剥離フィルム(リンテック社製の「SP-PET381130」)を貼付した。この際に、帯状電解質層が延在する方向を短辺方向として、75mm×83mmの長方形に裁断した。その後、波長365nmの紫外線を、照度:130mW/cm、光量:540mJ/cmの条件で照射し、組成物A付きシートを作製した。
・組成物A
モノマー水溶液(ユシロ化学工業社製の「SMU-4005」)100質量部に、光重合開始剤(ユシロ化学工業社製の「PKU-8001」)0.24質量部、乾燥防止液(ユシロ化学工業社製の「SW-9002」)138質量部、及び、塩化ナトリウム(関東化学社製)1.4質量部を配合したハイドロゲル。
次に、他の剥離フィルム(リンテック社製の「SP-382150」)上に、下記組成物Bを塗布し、厚みが20μmの金属塩含有樹脂を形成した。形成された金属塩含有樹脂に剥離フィルム(リンテック社製の「SP-PET381130」)を貼付した。この際に、75mm×10mmの長方形に裁断した。
・組成物B
ポリエチレンオキサイド(明成化学工業社製、商品名「アルコックスEP1010N」)100質量部に、硫酸銅五水和物(関東化学社製)17質量部を配合した水溶性熱可塑性樹脂。
次に、組成物A付きシートの剥離フィルム(リンテック社製、商品名「SP-PET381130」)を剥がし、下面シートに貼り合わせた。この際に、下面シートの銅線が設置されている側の末端から3mm離した位置に、組成物A付きシートを貼付した。その後、剥離フィルム(リンテック社製の「SP-PET381130」)を剥がした。
さらに、組成物B付きシートの剥離フィルム(リンテック社製、商品名「SP-PET381130」)を剥がし、下面シートの亜鉛線が設置されている側の末端に、組成物Bを貼付した。その後、剥離フィルム(リンテック社製の「SP-PET382150」)を剥がした。以上のようにして、下面シートの上に、帯状の電解質と、金属塩を含む被膜を形成した。
【0061】
(配線付き粘着シート(上面シート)の作製)
第一配線として、亜鉛線(直径150μm、ジャパンファインスチール社製の「亜鉛線」)を準備した。次に、外周面がゴム製のドラム部材にしわのないように粘着シートを巻きつけた。円周方向における粘着シートの両端部を両面テープで固定した。ボビンに巻き付けた亜鉛線を、ドラム部材の端部付近に位置する粘着剤層の表面に付着させた上で、亜鉛線を繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、亜鉛線が等間隔でらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。この際、ドラム部材は、ドラム軸方向に振動させながら回転するようにして、巻き付けられた亜鉛線が波形状を描くようにした。このようにして、粘着シートの表面上に、亜鉛線を10本設置した。また、波状形状の振幅は2mm、波長は8mmであった。
その後、ドラム軸と平行に、亜鉛線が設置された粘着シートを切断した。この亜鉛線が設置された粘着シートを、亜鉛線が延在する方向を短辺方向として、75mm×86mmの長方形に裁断し、10本の亜鉛線が設置された配線付き粘着シート(上面シート)を作製した。
【0062】
(センサの作製)
帯状の電解質層と、金属塩を含む被膜を形成された下面シートに対し、上面シートを貼り合わせた。このとき、下面シートに設置された銅線と上面シートに設置された亜鉛線が1mm間隔で隣接し、また組成物Bがむき出しになるように貼付し、センサを得た。
【0063】
[比較例1]
第一配線として、亜鉛線(直径150μm、ジャパンファインスチール社製の「鉛線」)を準備し、ボビンに巻き付けた亜鉛線を、実施例1で作製した下面シートの上の末端銅線の間に5mm間隔になるように粘着剤層の表面に付着させた。その上で、亜鉛線を繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、亜鉛線が等間隔でらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。この際、ドラム部材は、ドラム軸方向に振動させながら回転するようにして、巻き付けられた亜鉛線が波形状を描くようにした。このようにして、実施例1で作製した下面シートの表面上に、亜鉛線を10本設置した。また、波形状の振幅は2mm、波長は8mmであった。その後、ドラム軸と平行に、銅線と亜鉛線が設置された粘着シートを切断した。この銅線と亜鉛線が設置された粘着シートを、銅線と亜鉛線が延在する方向を短辺方向として、75mm×100mmの長方形に裁断し、11本ずつ銅線と亜鉛線が設置された、実施例1における組成物A(帯状電解質層)、組成物B及び被覆物が省略されたセンサを作製した。
【0064】
[比較例2]
比較例1で得られたセンサ上に、実施例1で作製した組成物B付きシートの剥離フィルム(リンテック社製、商品名「SP-PET381130」)を剥がし、センサの亜鉛線が設置されている側の末端に、組成物Bを貼付した。その後、剥離フィルム(リンテック社製の「SP-PET382150」)を剥がした。以上のようにして、実施例1における組成物A(帯状電解質層)及び被覆物が省略されたセンサの上に、金属塩を含む被膜を形成した。
【0065】
[電圧評価]
センサを生理食塩水(0.9%NaCl)で浸漬し、テスターで測定した60秒間の電圧の平均値を電圧値とした。得られた結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【符号の説明】
【0067】
11…第一配線、12…第二配線、2…電解質層、3…配線固定材、4…被覆物、5…感知モジュール、51…第一電極、52…第二電極、6…無線送信モジュール、7…無線中継局、8…感知サーバ、100…センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6