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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車体フレーム用の衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B62D21/15 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021064863
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160231
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】飛田 尚寿
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/120967(WO,A1)
【文献】特表2019-507057(JP,A)
【文献】特開平08-188174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 19/24,19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に延びる閉断面部材が二本車幅方向に隣接配置され、双方の閉断面部材の側面が付き合わせられた状態で、前記閉断面部材同士が溶接されて一体化された車体フレーム用の衝撃吸収部材であって、
前記閉断面部材が、車体の前後方向に延びる一組のコ字断面材を向き合わせて車体前後方向に沿って連続溶接された溶接ビードを有する最中型閉断面部材であり、該最中型閉断面部材が二本車幅方向に隣接配置されて側面同士が付き合わせられた状態で車体前後方向に沿って連続溶接された溶接ビードによって一体化されており、
前記最中型閉断面部材同士が溶接された後には外から見えなくなる前記最中型閉断面部材の側面の突き合わせ部に、車体の前後方向から荷重を受けた際に変形の起点となる孔および凹部の少なくとも一方から成る脆弱部が形成されている、ことを特徴とする車体フレーム用の衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記最中型閉断面部材が、大型のコ字断面材とその内方に嵌るサイズの小型のコ字断面材とを向き合わせて車体前後方向に沿って連続隅肉溶接された溶接ビードを有し、
かかる最中型閉断面部材が、二本、前記小型のコ字断面材同士を接するように車幅方向に隣接配置されて車体前後方向に沿って連続溶接された溶接ビードによって一体化されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車体フレーム用の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記脆弱部が、前記閉断面部材同士の側面の突き合わせ部の夫々に、車体前後方向の同じ位置に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の車体フレーム用の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記脆弱部が、前記閉断面部材同士の側面の突き合わせ部の夫々に、車体前後方向に位置をずらして形成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の車体フレーム用の衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームの先端部に衝突時の衝撃力を吸収するために設けられる車体フレーム用の衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、トラック、バス、RV等の車両の車体フレーム1として、車幅方向に間隔を隔てて車長方向に延出された一対のサイドメンバ2と、これらサイドメンバ2の間に車長方向に間隔を隔てて架け渡された複数のクロスメンバ3とを備えたラダーフレームが知られている。サイドメンバ2の先端には、車体フレーム1用の衝撃吸収部材(図1の太線部分)4が備えられており、衝突時にバンパー5に衝撃が加わったとき、衝撃吸収部材4が軸圧壊することで衝撃力を吸収するようになっている。
【0003】
図2(a)、図2(b)に示すように、従来の衝撃吸収部材4として、車体の前後方向に延出されたコ字断面材5a、5bを一組向き合わせて最中状に溶接してなる四角筒体6が知られている。なお、7は溶接ビードである。斯様な筒状の衝撃吸収部材4は、軸方向(車体の前後方向)から荷重を受けたとき、軸方向に平行な稜線8の数が増えるほど耐荷重が上がる。しかし、四角筒体6からなる衝撃吸収部材4は、内部の稜線8の数が4本しかなく、耐荷重を増大させることが困難であった。
【0004】
耐荷重を増大できる衝撃吸収部材4として、四角筒体ではなく多角形(五角形以上)の筒体とし、内部における軸方向に平行な稜線の数を4以上としたものが知られている(特許文献1、2参照)。しかし、衝撃吸収部材4は、図1に示すように、車体フレーム1の一部を兼ねるため、様々な部品(車体ボディーやサスペンションを支持するブラケット等)を衝撃吸収部材4の外面に取り付ける場合があり、衝撃吸収部材4が多角形の筒体であると、それらの部品を衝撃吸収部材4の外面に取り付けることが困難となり得る。すなわち、衝撃吸収部材4の外面に他部品を取り付けることを考慮すると、現在、四角筒体6である衝撃吸収部材4を多角形化(五角形以上)することは、相手部品規格等の制約を受けるため、困難な場合が多い。
【0005】
別の衝撃吸収部材4として、四角筒体の内部に仕切板を挿入し、仕切板によって耐荷重を増大させるようにしたものが知られている(特許文献3参照)。しかし、四角筒体の内部に仕切板を挿入して組み付けることは困難であり、生産性に課題がある。また、仕切板が内部に収納されているため、仕切板の分の重量がアップし、車両(トラック、バス、RV等)の燃費悪化を招く。
【0006】
また、筒状に形成された衝撃吸収部材4の外面に孔や凹部等の脆弱部を形成し、軸方向(車体の前後方向)から衝撃を受けたときの変形モードを制御することも通常行われている(特許文献4参照)。しかし、衝撃吸収部材4の外面に脆弱部として孔や凹部等を設けると、衝撃吸収部材4の外面に、上述のように様々な部品(車体ボディーやサスペンションを支持するブラケット等)を取り付ける際、孔や凹部などから成る脆弱部によって部品の取り付けが妨げられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/024883号明細書
【文献】国際公開第2015/053075号明細書
【文献】国際公開第2016/060255号明細書
【文献】特開2015-105024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、車体の前後方向から衝撃を受けて軸圧壊する際の耐荷重を増大でき、外面に部品を取り付ける際の自由度を確保でき、生産性が高く、軽量で、軸圧壊するときの変形モードを制御できる車体フレーム用の衝撃吸収部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく創案された本発明によれば、車体の前後方向に延びる閉断面部材が二本車幅方向に隣接配置され、双方の閉断面部材の側面が付き合わせられた状態で、閉断面部材同士が溶接されて一体化された車体フレーム用の衝撃吸収部材であって、閉断面部材が、車体の前後方向に延びる一組のコ字断面材を向き合わせて車体前後方向に沿って連続溶接された溶接ビードを有する最中型閉断面部材であり、最中型閉断面部材が二本車幅方向に隣接配置されて側面同士が付き合わせられた状態で車体前後方向に沿って連続溶接された溶接ビードによって一体化されており、最中型閉断面部材同士が溶接された後には外から見えなくなる最中型閉断面部材の側面の突き合わせ部に、車体の前後方向から荷重を受けた際に変形の起点となる孔および凹部の少なくとも一方から成る脆弱部が形成されている、ことを特徴とする車体フレーム用の衝撃吸収部材が提供される。
【0010】
本発明に係る車体フレーム用の衝撃吸収部材においては、最中型閉断面部材が、大型のコ字断面材とその内方に嵌るサイズの小型のコ字断面材とを向き合わせて車体前後方向に沿って連続隅肉溶接された溶接ビードを有し、かかる最中型閉断面部材が、二本、小型のコ字断面材同士を接するように車幅方向に隣接配置されて車体前後方向に沿って連続溶接された溶接ビードによって一体化されていてもよい。
【0011】
本発明に係る車体フレーム用の衝撃吸収部材においては、脆弱部が、閉断面部材同士の側面の突き合わせ部の夫々に、車体前後方向の同じ位置に形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る車体フレーム用の衝撃吸収部材においては、脆弱部が、閉断面部材同士の側面の突き合わせ部の夫々に、車体前後方向に位置をずらして形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車体フレーム用の衝撃吸収部材によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)車体の前後方向に延びる衝撃吸収用の閉断面部材が二本車幅方向に隣接配置され、双方の閉断面部材の側面が付き合わせられた状態で、閉断面部材同士が溶接されて一体化されているので、内部における軸方向に平行な稜線の数が、閉断面部材が一本の場合の二倍となり、車体の前後方向から衝撃を受けて軸圧壊する際の耐荷重が増大する。
(2)閉断面部材同士が溶接された後には外から見えなくなる閉断面部材の側面の突き合わせ部に、車体の前後方向から荷重を受けた際に変形の起点となる孔および凹部の少なくとも一方から成る脆弱部が形成されているので、衝撃吸収部材の外面に部品を取り付ける際、脆弱部を構成する孔や凹部によって部品の取り付けが妨げられる事態を回避でき、部品の取り付けの自由度を確保できる。
(3)孔や凹部などの脆弱部が側面に形成された閉断面部材を、二本、側面同士を付き合わせて溶接した構造となっているので、孔や凹部などの脆弱部が外面から見えない衝撃吸収部材を容易に製造でき、生産性が高い。
(4)脆弱部を構成する孔が軽量孔となり、脆弱部を構成する凹部が肉抜き凹部となるので、軽量化を推進できる。
(5)閉断面部材同士の突き合わせ部に形成された脆弱部(孔、凹部)の車体前後方向に沿った位置や大きさを適宜変更することで、軸圧壊するときの変形モードを制御できる。
(6)以上要するに、本発明に係る車体フレーム用の衝撃吸収部材によれば、車体の前後方向から衝撃を受けて軸圧壊する際の耐荷重を増大でき、外面に部品を取り付ける際の自由度を確保でき、生産性が高く、軽量で、軸圧壊するときの変形モードを制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車体フレーム用の衝撃吸収部材を備えた車体フレームの斜視図である。
図2】従来例を示す車体フレーム用の衝撃吸収部材の説明図であり、(a)は衝撃吸収部材の斜視図、(b)はその断面図である。
図3】本発明の一実施形態を示す車体フレーム用の衝撃吸収部材の説明図であり、(a)は二本の閉断面部材が溶接される前の状態を示す斜視図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
図4】(a)は上記実施形態に係る車体フレーム用の衝撃吸収部材の斜視図、(b)は(a)のb-b線断面図、(c)は(a)のc-c線断面図である。
図5】本発明の変形実施形態を示す車体フレーム用の衝撃吸収部材の説明図であり、(a)は閉断面部材を構成する部品の斜視図、(b)はこれら部品を溶接して構成された閉断面部材の断面図である。
図6】上記変形実施形態に係る車体フレーム用の衝撃吸収部材の説明図であり、(a)は二本の閉断面部材が溶接される前の状態を示す斜視図、(b)は溶接された後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(車体フレーム1用の衝撃吸収部材9)
図3図4に示す本発明の一実施形態に係る車体フレーム1用の衝撃吸収部材9は、図1に示すように、車体フレーム1(ラダーフレーム)のサイドメンバ2の先端に取り付けられ、衝突時にバンパー5に衝撃が加わったとき、衝撃吸収部材9が軸圧壊することで衝撃力を吸収するものである。
【0017】
図3図4に示すように、本実施形態に係る衝撃吸収部材9は、車体の前後方向に延びる衝撃吸収用の閉断面部材10が二本車幅方向に隣接配置され、これら閉断面部材10の側面10aが付き合わせられた状態で、閉断面部材10同士が溶接されて一体化された構造となっている。また、この衝撃吸収部材9は、閉断面部材10同士が溶接された後には外から見えなくなる閉断面部材10の側面10aの突き合わせ部10bに、車体の前後方向(軸方向)から荷重を受けた際に変形の起点となる孔11および凹部12の少なくとも一方から成る脆弱部13が形成されている。以下、各構成要素を説明する。
【0018】
(閉断面部材10)
図3(a)、図3(b)に示すように、閉断面部材10は、本実施形態においては、車体の前後方向に延びる一組のコ字断面材14、15を向き合わせて溶接してなる最中型閉断面部材10xから構成されている。コ字断面材14、15は、大型のコ字断面材14とその内方に嵌まるサイズの小型のコ字断面台15とからなり、これらが向き合わせられて最中型に組み合わせられ、組み合わせ部が車体前後方向に沿って溶接(隅肉溶接)されて一体化されている。なお、16は車体の前後方向に沿った溶接ビードである。
【0019】
図3(a)、図3(b)に示すように、大型のコ字断面材14は、車体前後方向に延びる縦壁からなるウェブ14aと、ウェブ14aの上端から車幅方向に延出された上部フランジ14bと、ウェブ14aの下端から車幅方向に延出された下部フランジ14cとかなり、小型のコ字断面材15も、同様に、ウェブ15aと、上部フランジ15bと、下部フランジ15cとからなる。上部フランジ14bに上部フランジ15bが重ねられ、下部フランジ14cに下部フランジ15cが重ねられ、これらが溶接(溶接ビード16)されることで、大型のコ字断面材14と小型のコ字断面材15とから最中型閉断面部材10xが構成されている。
【0020】
(脆弱部13)
図3(a)、図3(b)に示すように、小型のコ字断面材15のウェブ15aには、孔11および凹部12から成る脆弱部13が形成されている。本実施形態においては、脆弱部13として、孔(貫通孔)11および凹部(窪み部)12が形成されているが、何れか一方のみであってもよい。また、孔11や凹部12等の脆弱部13は、車体前後方向に間隔を隔てて配設されることに加え、上下方向に間隔を隔てて並設されていても構わない。なお、凹部12は四角ではなく円形の窪み部でもよい。
【0021】
図3(a)、図3(b)に示す脆弱部13は、図4(a)、図4(b)、図4(c)に示すように、小型のコ字断面材15のウェブ15a同士が付き合わせられた状態で溶接(突合せ溶接)されることで、外部から見えなくなる。なお、17は車体の前後方向に沿った溶接ビードである。すなわち、小型のコ字断面材15のウェブ15aに脆弱部13が形成された一対の最中型閉断面部材10xが、そのウェブ15a同士を付き合わせて溶接(溶接ビード17)されることで衝撃吸収部材9が構成されており、これにより脆弱部13が衝撃吸収部材9の外観から見えなくなっている。
【0022】
図4(a)、図4(b)、図4(c)に示すように、脆弱部13は、本実施形態においては、閉断面部材10同士の側面10aの突き合わせ部10b(小型のコ字断面材15のウェブ15a)の夫々に、車体前後方向の同じ位置に形成されている。これにより、衝突時、軸圧壊の起点を明確に設定できる。但し、脆弱部13が、閉断面部材10同士の側面10aの突き合わせ部10bの夫々に、車体前後方向に位置をずらして形成されていてもよい。これにより、軸圧壊の起点が車体前後方向に分散される。
【0023】
図4(a)に示すように、本実施形態に係る車体フレーム1用の衝撃吸収部材9の高さH1、幅B1を、図2(a)に示す従来の車体フレーム1用の衝撃吸収部材4の高さH、幅Bと比べると、H1=H、B1=Bとなっている。よって、本実施形態に係る衝撃吸収部材9は、図1に示す車体フレーム1のサイドメンバ2の先端に、従来の衝撃吸収部材4に代えて装着された場合、周辺部品と干渉することはなく、適切に装着できる。
【0024】
(作用・効果)
本実施形態に係る車体フレーム1用の衝撃吸収部材9によれば、図4(b)に示すように、車体の前後方向に延びる衝撃吸収用の閉断面部材10が二本車幅方向に隣接配置され、これら閉断面部材10の側面10aが付き合わせられた状態で閉断面部材10同士が溶接されて一体化されているので、内部における軸方向に平行な稜線8の数(8本)が、図2(b)に示す従来例の閉断面部材(四角筒4)が一本の場合の稜線8の数(4本)の二倍となり、車体の前後方向から衝撃を受けて軸圧壊する際の耐荷重が増大する。よって、従来よりも大きな衝撃荷重を適切に吸収できる。
【0025】
また、本実施形態に係る衝撃吸収部材9においては、図4(a)に示すように、閉断面部材10に一般的な角パイプ材ではなく、一組のコ字断面材14、15を向き合わせて溶接してなる最中型閉断面部材10xを用いている。このため、図4(b)、図4(c)に示すように、車体の前後方向に沿った溶接ビード16、17の数(6本)が図2(b)に示す従来例の溶接ビード7の数(2本)の三倍になり、溶接ビード16、17が母材であるコ字断面材14、15よりも強度が高い強度部材として機能するため、車体の前後方向から衝撃を受けて軸圧壊する際の耐荷重が増大する。よって、従来よりも大きな衝撃荷重を適切に吸収できる
【0026】
図4(a)に示すように、閉断面部材10同士が溶接された後には外から見えなくなる閉断面部材10の側面10aの突き合わせ部10bに、車体の前後方向(軸方向)から荷重を受けた際に変形の起点となる孔11および凹部12から成る脆弱部13が形成されているので、衝撃吸収部材9の外面9aに部品を取り付ける際、脆弱部13を構成する孔11や凹部12によって部品の取り付けが妨げられる事態を回避でき、部品の取り付けの自由度を確保できる。
【0027】
すなわち、衝撃吸収部材9は、図1に示すように、車体フレーム1の一部を兼ねるため、様々な部品(車体ボディーやサスペンションを支持するブラケット等)を衝撃吸収部材9の外面に取り付ける場合がある。ここで、衝撃吸収部材9の外面9aに脆弱部13を成す孔11や凹部12が形成されていると、それらが部品を取り付けるときの妨げとなる。本実施形態に係る衝撃吸収部材9によれば、図4(a)に示すように、衝撃吸収部材9の外面9aに、脆弱部13を構成する孔11や凹部12等の段差が無いフラットな平面を確保できるので、そこに様々な部品を適切に取り付けることができる。
【0028】
本実施形態に係る衝撃吸収部材9は、図3(a)に示すように、側面10a(小型のコ字断面材15のウェブ15a)に孔11や凹部12などの脆弱部13が形成された二本の閉断面部材10(最中型閉断面部材10x)の側面10a同士を付き合わせて溶接した構造となっているので、孔11や凹部12などの脆弱部13が外面から見えない衝撃吸収部材9を容易に製造でき、生産性が高い。すなわち、本実施形態に係る衝撃吸収部材9は、予め脆弱部13が形成されている閉断面部材10同士を脆弱部13が隠れるように溶接して構成されているので、内部に脆弱部13を有する衝撃吸収部材9を容易に製造できる。
【0029】
図4(a)に示す閉断面部材10同士の側面10aの突き合わせ部10bに形成された脆弱部13(孔11、凹部12)の車体前後方向に沿った位置や大きさを適宜変更することで、軸圧壊するときの変形モードを制御できる。例えば、本実施形態のように、脆弱部13を双方の閉断面部材10の側面10aの突き合わせ部10bの夫々に車体前後方向の同じ位置に形成することで、その部分の強度が低下し、軸圧壊の起点を明確に設定できる。また、脆弱部13を双方の閉断面部材10の側面10aの突き合わせ部10bの夫々に車体前後方向に位置をずらして形成することで、軸圧壊の起点が車体前後方向に分散され、突き合わせ部10bの長手方向に沿って全体的に軸圧壊させることができる。
【0030】
図4(b)に示すように、軸圧壊の起点となる脆弱部13を構成する孔11が軽量孔となり、図4(c)に示すように、脆弱部13を構成する凹部12が肉抜き凹部となるので、軽量化を推進できる。よって、車両(トラック、バス、RV等)の燃費を向上できる。
【0031】
以上要するに、本実施形態に係る車体フレーム1用の衝撃吸収部材9によれば、車体の前後方向から衝撃を受けて軸圧壊する際の耐荷重を増大でき、外面に部品を取り付ける際の自由度を確保でき、生産性が高く、軽量で、軸圧壊するときの変形モードを制御できる。
【0032】
(変形実施形態)
図5図6を用いて、本発明の変形実施形態に係る車体フレーム1用の衝撃吸収部材9aを説明する。この変形実施形態に係る衝撃吸収部材9aは、閉断面部材10の構造が上述した図3図4に示す衝撃吸収部材9の閉断面部材10(最中型閉断面部材10x)と異なっており、その他は前実施形態と同様の構成となっている。よって、相違点である閉断面部材10の構造の変更について説明し、その他の同様の構成については説明を省略する。
【0033】
変形実施形態に係る閉断面部材10は、図5(a)に示すように、第1縦壁18、第1横壁19、第2縦壁20、第2横壁21、第3縦壁22が夫々直角に連なった特殊形状の形鋼23(引抜き材等)を二本、180度向きを変えて用意し、これらの形鋼23を図5(b)に示すように組み合わせて溶接することで構成され、略目の字型の閉断面部材(以下、目の字型閉断面部材10y)となっている。なお、24は車体の前後方向に沿った溶接ビードである。
【0034】
図5(b)に示す目の字型閉断面部材10yは、図5(a)に示すように、長手方向に沿った軸に対して断面が点対称(180度対称)な二本の特殊形状の形鋼23を組み合わせた構造なので、図3(b)に示す大型のコ字断面材14と小型のコ字断面材15とを組み合わせた構造である前実施形態の最中型閉断面部材10xと比べ、部品の共用化を図ることができ、低コストに製造できる。また、図5(b)に示すように、二本の特殊形状の形鋼23の第1横壁19は、目の字型閉断面部材10yの内部において上下二段の補強壁となるので、剛性向上に寄与する。
【0035】
図6(a)に示すように、目の字型閉断面部材10yの側面10aは、第2縦壁20と第3縦壁22とから構成されており、第2縦壁20には、孔11および凹部12から成る脆弱部13が形成されている。本実施形態においては、第2縦壁20には、脆弱部13として孔11(貫通孔)および凹部12(窪み部)が形成されているが、何れか一方のみであってもよい。また、脆弱部13を構成する孔11や凹部12等は、車体前後方向に間隔を隔てて配設されることに加え、上下方向に間隔を隔てて並設されていてもよく、第3縦壁22に形成されていても構わない。なお、凹部12は四角ではなく円形の窪み部でもよい。
【0036】
図6(a)に示す脆弱部13は、図6(b)に示すように、二本の目の字型閉断面部材10yの側面10aが付き合わせられた状態で、目の字型閉断面部材10y同士が溶接されて一体化されることで、外部から見えなくなる。なお、25は車体の前後方向に沿った溶接ビードである。すなわち、側面10aを構成する第2縦壁20に脆弱部13が形成された一対の目の字型閉断面部材10yが、側面10a同士を付き合わせて溶接されることで衝撃吸収部材9aが構成されており、これにより突き合せ部10bに形成された脆弱部13が衝撃吸収部材9aの外観から見えなくなっている。
【0037】
図6(a)に示すように、脆弱部13は、目の字型閉断面部材10y同士の側面10aの突き合わせ部10b(第2縦壁20)の夫々に、車体前後方向の同じ位置に形成されている。これにより、衝突時、軸圧壊の起点を明確に設定できる。但し、脆弱部13が、目の字型閉断面部材10y同士の側面10aの突き合わせ部10bの夫々に、車体前後方向に位置をずらして形成されていてもよい。これにより、軸圧壊の起点が車体前後方向に分散される。
【0038】
図6(b)に示すように、変形施形態に係る車体フレーム1用の衝撃吸収部材9aの高さH2、幅B2を、図2(a)に示す従来の車体フレーム1用の衝撃吸収部材4の高さH、幅Bと比べると、H2=H、B2=Bとなっている。よって、変形実施形態に係る衝撃吸収部材9aは、図1に示す車体フレーム1のサイドメンバ2の先端に、従来の衝撃吸収部材4に代えて装着された場合、周辺部品と干渉することはなく、適切に装着できる。
【0039】
その他、この変形実施形態に係るの車体フレーム1用の衝撃吸収部材9a基本的な作用効果は、前実施形態に係る車体フレーム1用の衝撃吸収部材9と同様であるので、説明を省略する。
【0040】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0041】
例えば、本発明に係る衝撃吸収部材9、9aが装着される車体フレーム1は、図1に示すようなラダーフレームに限られるものではなく、モノコックボディ(モノコックフレーム)であってもよい。その場合、モノコックボディの前部に本発明に係る衝撃吸収部材9、9aが装着される。また、閉断面部材10は、最中型閉断面部材10xや目の字型閉断面部材10yの他、角パイプでも構わない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車体フレーム1の先端部に衝突時の衝撃力を吸収するために設けられる車体フレーム1用の衝撃吸収部材9、9aに利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 車体フレーム
9 衝撃吸収部材
9a 衝撃吸収部材
10 閉断面部材
10x 最中型閉断面部材
10y 目の字型閉断面部材
10a 側面
10b 突き合わせ部
11 孔
12 凹部
13 脆弱部
14 コ字断面材
15 コ字断面材
16 溶接ビード
17 溶接ビード
図1
図2
図3
図4
図5
図6