(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】遮蔽装置
(51)【国際特許分類】
H01J 35/16 20060101AFI20241114BHJP
H01J 35/14 20060101ALI20241114BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20241114BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01J35/16
H01J35/14
H01J37/06 Z
H01J37/09
(21)【出願番号】P 2021077457
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 銀治
(72)【発明者】
【氏名】小塩 成基
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-264795(JP,A)
【文献】特開2010-027993(JP,A)
【文献】特開2003-037047(JP,A)
【文献】米国特許第07046768(US,B1)
【文献】特開2006-344526(JP,A)
【文献】特開2001-244167(JP,A)
【文献】特開2003-178688(JP,A)
【文献】特開2001-126651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
H01J 35/00
G21K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射軸線に沿って出射される荷電粒子線又は前記荷電粒子線に起因する放射線の出射と遮蔽とを相互に切り替える遮蔽装置であって、
磁場を発生させて前記磁場に起因する力を出力する駆動部と、前記磁場の強度を抑制する磁場強度抑制部と、を有する駆動機構と、
前記駆動部に取り付けられて、前記荷電粒子線又は前記放射線の前記出射軸線に重複する遮蔽態様と前記出射軸線に重複しない出射態様とが前記駆動部の動作によって相互に切り替わる遮蔽部材と、を備え、
前記磁場強度抑制部は、前記駆動部に対して並置されると共に、前記駆動部の前記磁場と干渉して第1合成磁場を形成する磁場発生部を有し、
前記駆動部のN極からS極へ向かう磁極方向は、前記磁場発生部のN極からS極へ向かう磁極方向に対して逆である、遮蔽装置。
【請求項2】
前記駆動機構である第1駆動機構に対して前記出射軸線と交差する方向に沿って離間して配置された第2駆動機構をさらに備え、
前記第1駆動機構は、前記駆動部である第1駆動部と、前記磁場強度抑制部である第1磁場強度抑制部と、を有し、
前記第2駆動機構は、磁場を発生させて前記磁場に起因する力を出力する第2駆動部と、前記磁場の強度を抑制する第2磁場強度抑制部と、を有し、
前記出射軸線は、前記第1駆動機構と前記第2駆動機構との間に配置されている、請求項
1に記載の遮蔽装置。
【請求項3】
前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構の間には、前記第1駆動機構の磁場及び前記第2駆動機構の磁場の干渉によって第2合成磁場が発生し、
前記第2合成磁場の分布を、前記磁極方向に偏らせる磁場偏向部をさらに備える、請求項
2に記載の遮蔽装置。
【請求項4】
前記磁場偏向部は、前記第1駆動機構から前記第2駆動機構まで延びる磁性材料により形成された磁性部材である、請求項
3に記載の遮蔽装置。
【請求項5】
前記磁場強度抑制部は、磁性材料によって形成されて、前記駆動部を収容する筐体を含む、請求項1~
4の何れか一項に記載の遮蔽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線発生装置に用いられる遮蔽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子は、電荷を帯びた粒子である。荷電粒子線発生装置は、例えば、荷電粒子線である電子線を発生させる。荷電粒子線発生装置は、電子線の発生源として用いられることもある。また、荷電粒子線発生装置は、タングステンなどの金属からなるターゲットと共にX線源を構成することもある。
【0003】
特許文献1は、放射線ビームを遮断する放射線シャッタを開示する。放射線シャッタは、放射線の遮断と照射とを相互に切り替える。放射線シャッタは、放射線ビームを遮断するための遮蔽板と、放射線ビームの光路に対して遮蔽板を進退させるソレノイド機構と、を有する。ソレノイド機構によって、放射線の遮断と照射とを相互に切り替えることができる。ソレノイド機構は、コイルの磁場に起因して鉄心に発生する磁力によって駆動力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
荷電粒子線発生装置は、特許文献1のようにコイルの磁場を利用した遮蔽装置を有することがある。荷電粒子線は、電荷を帯びているから磁場の影響を受ける。荷電粒子線は、出射軸線に沿って出射させる。しかし、遮蔽装置の動作によって、出射軸線を含む領域に磁場が発生すると、荷電粒子線は磁場の影響を受ける。その結果、荷電粒子線は出射軸線からそれてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、荷電粒子線への影響を抑制できる遮蔽装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、出射軸線に沿って出射される荷電粒子線又は荷電粒子線に起因する放射線の出射と遮蔽とを相互に切り替える遮蔽装置である。遮蔽装置は、磁場を発生させて磁場に起因する力を出力する駆動部と、磁場の強度を抑制する磁場強度抑制部と、を有する駆動機構と、駆動部に取り付けられて、荷電粒子線又は放射線の出射軸線に重複する遮蔽態様と出射軸線に重複しない出射態様とが駆動部の動作によって相互に切り替わる遮蔽部材と、を備える。
【0008】
この遮蔽装置は、遮蔽部材を駆動する駆動機構を備えている。駆動機構は、遮蔽部材の態様を切り替える力を、磁場を発生させることによって出力する。そして、駆動機構は、磁場強度抑制部によって駆動部が発する磁場の強度を抑制する。その結果、駆動機構の動作時に発生する磁場が荷電粒子線に与える影響を抑制できる。
【0009】
一形態の遮蔽装置における磁場強度抑制部は、磁場強度抑制部は、駆動部に対して並置されると共に、駆動部の磁場と干渉して第1合成磁場を形成する磁場発生部を有してもよい。駆動部のN極からS極へ向かう磁極方向は、磁場発生部のN極からS極へ向かう磁極方向に対して逆であってもよい。この構成によれば、駆動部が発生する磁力線が磁場発生部を通過するような磁力線によって示す磁場が形成される。その結果、駆動機構から漏れる磁場の強度を抑制することができる。
【0010】
一形態の遮蔽装置は、駆動機構である第1駆動機構に対して出射軸線と交差する方向に沿って離間して配置された第2駆動機構をさらに備えてもよい。第1駆動機構は、駆動部である第1駆動部と、磁場強度抑制部である第1磁場強度抑制部と、を有してもよい。第2駆動機構は、磁場を発生させて磁場に起因する力を出力する第2駆動部と、磁場の強度を抑制する第2磁場強度抑制部と、を有してもよい。出射軸線は、第1駆動機構と第2駆動機構との間に配置されていてもよい。この構成によれば、第1駆動機構と第2駆動機構との間に磁束密度が相対的に低い領域が形成される。その結果、磁束密度が相対的に低い領域に出射軸線が重複すると、荷電粒子線源から出射される荷電粒子線が第1駆動部の磁場及び第2駆動部の磁場から受ける影響が抑制される。従って、所望の位置に荷電粒子線を照射することができる。
【0011】
一形態の遮蔽装置における第1駆動機構及び第2駆動機構の間には、第1駆動機構の磁場及び第2駆動機構の磁場の干渉によって第2合成磁場が発生してもよい。遮蔽装置は、第2合成磁場の分布を、磁極方向に偏らせる磁場偏向部をさらに備えてもよい。この磁場偏向部によれば、第1駆動部の磁場及び第2駆動部の磁場が互いに干渉して形成される合成磁場が偏る。磁束密度が相対的に低い領域は、合成磁場に応じる。その結果、磁束密度が相対的に低い領域が形成される位置は、合成磁場の偏りに応じて変化する。従って、磁束密度が相対的に低い領域を所望の位置に形成することが可能になる。
【0012】
一形態の遮蔽装置における磁場偏向部は、第1駆動機構から第2駆動機構まで延びる磁性材料により形成された磁性部材であってもよい。この構成によれば、磁場偏向部が透磁率の高い領域を形成する。その結果、第1駆動部及び第2駆動部の間における磁場の分布は偏る。従って、磁束密度が相対的に低い領域を所望の位置に形成することが可能になる。
【0013】
一形態の遮蔽装置における磁場強度抑制部は、磁性材料によって形成されて、駆動部を収容する筐体を含んでもよい。この構成によれば、駆動部が発する磁力線の一部が筐体を通るようになる。その結果、駆動機構の外部に漏れる磁力線の数が減るので、駆動機構の外部に漏れる磁場の強度を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷電粒子線への影響が抑制できる遮蔽装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、X線管を備えたX線モジュールの外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のX線シャッタを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のX線シャッタが備えるソレノイドの構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のX線シャッタの周囲に形成される磁場を磁力線によって示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の磁力線によって示された磁場における磁束密度の分布を示すコンター図である。
【
図7】
図7(a)は、肉厚が薄い磁気シールドの効果を説明するための図である。
図7(b)は、肉厚が厚い磁気シールドの効果を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)は、一対のアクチュエータが形成する磁場を磁力線によって示す図である
図8(b)は、
図8(a)の磁力線によって示された磁場における磁束密度の分布を示すコンター図である。
【
図9】
図9は、参考例のX線シャッタの周囲に形成される磁場を磁力線によって示す図である。
【
図10】
図10は、
図9の磁力線によって示された磁場における磁束密度の分布を示すコンター図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態のX線シャッタを示す斜視図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態のX線シャッタの周囲に形成される磁場を磁力線によって示す図である。
【
図14】
図14は、
図13の磁力線によって示された磁場における磁束密度の分布を示すコンター図である。
【
図16】
図16は、第3実施形態のX線シャッタを示す斜視図である。
【
図17】
図17(a)は、第1変形例のX線シャッタを示す図である。
図17(b)は、第2変形例のX線シャッタを示す図である。
図17(c)は、第3変形例のX線シャッタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示すX線モジュール100(荷電粒子線発生装置)は、いわゆる微小焦点X線源である。X線モジュール100は、例えば被写体の内部構造を観察するX線非破壊検査に用いられる。X線モジュール100は、X線管110と、ハウジング120と、電源(図示せず)と、を有する。X線管110は、ハウジング120の内部に収容されている。ハウジング120の内部は、絶縁油によって満たされている。電源は、ハウジング120の下方に配置されている。電源は、給電部141(
図2参照)を介して、X線管110に電力を供給する。X線管110は、出射窓112からX線を出射する。
【0018】
X線モジュール100は、X線の出射と停止との切り替えを、物理的な遮蔽物によって実現する。X線モジュール100は、後述するX線シャッタ10(遮蔽装置)によって、出射窓112を覆ってX線の出射を妨げる態様と、出射窓112を開放してX線を出射する態様と、を相互に切り替える。その結果、X線モジュール100は、いわゆるパルス動作が可能になる。例えば、X線モジュール100は、X線画像を撮像するときだけX線を出射させる動作と、被写体を搬送するときなどのX線画像を撮像しないときにX線を出射させない動作と、を短時間で切り替えることができる。このような構成によると、X線管110からのX線の出射と停止とを、電源からの電流供給の制御によらずに実現することができる。その結果、電流制御のための高度な電気回路設計も不要である。
【0019】
図2に示すX線管110は、絶縁バルブ2および金属筐体3を備えた真空筐体1の内部空間(真空空間SV)に収容された、ターゲット111と、電子銃4(荷電粒子線源)と、を備える。電子銃4は、荷電粒子線である電子線EBをターゲット111に照射する。電子線EBを受けたターゲット111は、X線を発生する。発生したX線は、電子線EBの入射方向に沿った方向に、出射窓112を透過してX線管110の外部に取り出される。つまり、X線管110は、透過型である。
【0020】
出射窓112は、金属筐体3の開口部を封止するように取り付けられている。出射窓112は、X線の透過性の良い材料、例えばベリリウムやダイアモンド等からなる基板である。ターゲット111は、出射窓112の真空空間SV側の面上に配置されており、電子線EBの出射軸線AEと交差する。ターゲット111は、例えば、出射窓112の真空側面上に形成されたタングステン製の薄膜である。
【0021】
電子銃4は、電源から電力の供給を受けて電子線EBを発生させる。電子銃4は、ヒータ4aと、カソード4bと、グリッド電極4c、4dと、を有する。ヒータ4aは、電力の供給を受けて発熱する。カソード4bは、ヒータ4aによって加熱される。加熱されたカソード4bは、電子を放出する。グリッド電極4c、4dは、放出された電子の量や軌道を調整する。ターゲット111の電位は、接地電位(GND)である。
【0022】
X線モジュール100はさらに、
図3に示すX線シャッタ10を有する。X線シャッタ10は、X線管110が発したX線を遮蔽することができる。また、X線シャッタ10は、X線管110が発したX線を遮蔽しないこともできる。X線の出射と遮蔽とを相互に切り替える動作を、パルス動作と称する。X線シャッタ10によって、X線モジュール100のパルス動作が可能になる。X線シャッタ10は、シャッタフレーム20と、アクチュエータ30A、30B(第1駆動機構、第2駆動機構)と、磁気バイパス40と、を有する。
【0023】
シャッタフレーム20は、出射窓112を被写体に向けて露出させることにより、被写体にX線を照射させる。また、シャッタフレーム20は、出射窓112と被写体との間に配置されて、被写体へのX線の照射を停止する。このシャッタフレーム20の位置の切り替えは、アクチュエータ30A、30Bによって行われる。シャッタフレーム20は、遮蔽板21(遮蔽部材)と、遮蔽梁22と、を有する。遮蔽板21は、X線を遮蔽する。遮蔽板21は、矩形又は円形の平板である。遮蔽梁22は、遮蔽板21を、アクチュエータ30A、30Bに連結する。遮蔽梁22は、接続部22aと、連結部22bとを含む。接続部22aの一端は、アクチュエータ30A、30Bに固定されている。接続部22aの他端は、連結部22bにつながっている。連結部22bの両端には、それぞれ接続部22aがつながっている。連結部22bは、出射窓112およびハウジング120の上面からわずかに離間する。連結部22bの中央部分には、遮蔽板21が取り付けられている。なお、連結部22bが出射窓112を覆える程度の幅を有する場合には、連結部22bが遮蔽板21の機能を兼ねることができる。従って、この場合には、遮蔽板21を省略してよい。
【0024】
アクチュエータ30A、30Bは、シャッタフレーム20の位置を切り替える駆動力を発生させる。X線シャッタ10は、2個のアクチュエータ30A、30Bを有する。アクチュエータ30A、30Bは、ハウジング120の直径方向に沿って、X線管110を挟むように配置されている。アクチュエータ30Aは、磁気シールド31Aと、メインソレノイド50A(第1駆動部)と、サブソレノイド60A(第1磁場強度抑制部、磁場発生部)と、を有する。アクチュエータ30Bも、磁気シールド31Bと、メインソレノイド50B(第2駆動部)と、サブソレノイド60B(第2磁場強度抑制部、磁場発生部)と、を有する。
【0025】
磁気シールド31A、31Bは、メインソレノイド50A、50B及びサブソレノイド60A、60Bを収容する筐体である。
図3では、直方体状の磁気シールド31A、31Bを図示しているが、磁気シールド31A、31Bの形状には特に制限はない。例えば、1個の磁気シールド31Aは、1個のメインソレノイド50Aと、1個のサブソレノイド60Aを収容する。磁気シールド31A、31Bは、メインソレノイド50A、50B及びサブソレノイド60A、60を物理的に保護する。
【0026】
図4に示すメインソレノイド50Aは、駆動力を発生させる。駆動力の方向(駆動軸線AD)は、出射軸線AEに対して垂直方向に延びる。この方向によれば、出射軸線AEに遮蔽板21が重複する位置と、出射軸線AEに遮蔽板21が重複しない位置と、を相互に切り替えることができる。メインソレノイド50Aは、コイル51と、固定磁極52と、可動磁極53と、バネ54と、ハウジング55と、を有する。なお、メインソレノイド50Aとサブソレノイド60Aとは、単体としては同じ構成を有する。以下、メインソレノイド50Aについて詳細に説明し、サブソレノイド60Aの詳細な説明は省略する。
【0027】
固定磁極52は、円筒状のハウジング55の内部に配置されている。なお、固定磁極52は、磁場を発生させない磁性部材であってもよい。固定磁極52は、ハウジング55の一方の開口端を閉鎖している。固定磁極52は、ハウジング55に対して固定されている。従って、固定磁極52は、ハウジング55に対して相対的に移動しない。
【0028】
コイル51は、ハウジング55の内部に配置されている。コイル51は、固定磁極52からハウジング55の他方の開口端に亘って設けられている。つまり、コイル51は、狭義の意味のソレノイドである。コイル51は、固定磁極52と同様に、ハウジング55に対して固定されている。従って、コイル51もハウジング55に対して相対的に移動しない。
【0029】
コイル51は、所定の方向に向くコイル軸線ACを有する。コイル軸線ACは、円筒状のコイル51の中心軸線としてもよい。コイル軸線ACを用いることにより、コイル51の配置を規定することができる。コイル軸線ACは、出射軸線AEに対して垂直方向に延びる。メインソレノイド50Aのコイル軸線ACは、サブソレノイド60Aのコイル軸線ACに対して平行である。さらに、出射軸線AEに対して直交する仮想平面を仮定する。メインソレノイド50Aのコイル軸線ACとサブソレノイド60Aのコイル軸線ACとは、当該仮想平面に含まれる。また、メインソレノイド50Aのコイル軸線ACの方向は、後述する可動磁極53が往復移動する駆動軸線ADとも一致する。従って、上述のいくつかの説明において、コイル軸線ACを可動磁極53の駆動軸線ADと読み変えてもよい。
【0030】
可動磁極53は、コイル51の内部に配置された差し込み部分と、コイル51の外側に配置された露出部分と、有する。つまり、可動磁極53の一方の端部は、コイル51に差し込まれている。可動磁極53の他方の端部は、コイル51から突出している。可動磁極53には、フランジ56が固定されている。フランジ56とハウジング55との間には、バネ54が配置されている。バネ54は、圧縮バネである。可動磁極53がハウジング55から最も突出した状態において、ハウジング55からフランジ56までの長さは、バネ54の自然長よりも短い。つまり、バネ54は、圧縮されている。可動磁極53の露出部分の端部には、接続部22aが固定されている。
【0031】
可動磁極53は、コイル51に対して固定されていない。従って、可動磁極53は、コイル51に対して相対的に移動できる。同様に、可動磁極53は、固定磁極52に対しても相対的に移動できる。コイル51に電流が供給されると、コイル51は磁場を発生させる。可動磁極53は、コイル51に挿入されているので、コイル51が発生させた磁場によって磁化する。その結果、可動磁極53と固定磁極52との間に、互いに引き合う力が発生する。この力によって、可動磁極53は移動する。例えば、可動磁極53は、固定磁極52に近づく方向に移動できる。逆に、コイル51に電流が供給されない場合には、コイル51は磁場を発生することがなく、可動磁極53は、バネ54によって固定磁極52から遠ざかる方向に移動する。つまり、可動磁極53は、駆動軸線ADに沿って直線状に往復移動する。
【0032】
メインソレノイド50Aは、コイル51に電流が供給されない状態であるとき、可動磁極53の突出長さは最長になる。コイル51に電流が供給されない場合には、可動磁極53にはバネ54から受ける付勢力が作用する。圧縮されているバネ54は、ハウジング55とフランジ56との間隔を広げようとする。従って、可動磁極53は、最も突出した状態となる。一方、コイル51に電流が供給されると、コイル51は磁場を発生させる。この磁場に応じて、可動磁極53が磁化する。その結果、磁化した可動磁極53は固定磁極52に引っ張られる。この引っ張り力は、バネ54の力よりも強いので、バネ54の力に抗して可動磁極53の突出長さは最短になる。
【0033】
動作の一例として、X線シャッタ10は、突出長さが最長の場合に遮蔽状態であり、突出長さが最短の場合に照射状態であるとする。この場合には、コイル51に電流を供給しない場合に、遮蔽状態となり、コイル51に電流を供給した場合に照射状態となる。そうすると、遮蔽状態であるときは、コイル51が磁場を発生させないが、照射状態であるときはコイル51が磁場を発生させる。従って、照射状態であるときに電子線EBは磁場の影響を受ける可能性がある。
【0034】
動作の別の例として、X線シャッタ10は、突出長さが最長の場合に照射状態であり、突出長さが最短の場合に遮蔽状態であるとする。この場合には、コイル51に電流を供給しない場合に、照射状態となり、コイル51に電流を供給した場合に遮蔽状態となる。そうすると、照射状態であるときは、コイル51が磁場を発生させないが、遮蔽状態であるときはコイル51が磁場を発生させる。
【0035】
コイル51が発生させる磁場は、電子線EBに影響を与える可能性がある。そこで、X線シャッタ10は、一対のアクチュエータ30A、30Bのそれぞれから外部に漏れる磁場の強度を低減する構成を備える。以下、外部に漏れる磁場の強度を低減する構成について詳細に説明する。
【0036】
図5に示すように、磁場強度抑制部は、前述したサブソレノイド60A、60Bを含む。サブソレノイド60A、60Bは、メインソレノイド50A、50Bからアクチュエータ30A、30Bの外部に漏れる磁場の強度を抑制する。アクチュエータ30A、30Bの外部とは、例えば、磁気シールド31A、31Bの外側と考えてよい。サブソレノイド60A、60Bは、構成要素としてコイル51を含む。このコイル51に電流を提供すると、コイル51は新たな磁場を発生する。ここで、発明者らは、メインソレノイド50A、50Bの磁場とサブソレノイド60A、60Bの磁場とを互いに干渉させることによって、アクチュエータ30A、30Bの外部に漏れる磁場の強度が抑制できることに想到した。
【0037】
具体的には、メインソレノイド50A、50Bの磁場の向きとサブソレノイド60A、60Bの磁場の向きとを互いに逆向きにする。この構成において発生する第1合成磁場FM1は、メインソレノイド50Aとサブソレノイド60Aとの両方を通る磁力線によって示す部分を含む。メインソレノイド50A、50Bが発する磁場の強さが変化しない限り、磁力線の数は増減しない。従って、メインソレノイド50A、50Bから発する磁力線の一部は、サブソレノイド60A、60Bに至る。その結果、磁気シールド31A、31Bの外側に漏れる磁力線の数が少なくなる。その結果、
図6のコンター図に示すように、アクチュエータ30A、30Bの外部に漏れる磁場の強度が低減される。
図6のコンター図において、ハッチングの間隔が広い領域S2は、磁束密度が高い領域である。
図6のコンター図において、ハッチングの間隔が狭い領域S3は、磁束密度が低い領域である。
【0038】
再び
図5を参照する。メインソレノイド50A、50Bの磁場の方向とサブソレノイド60A、60Bの磁場の方向とが逆向きである状態は、メインソレノイド50A、50Bに供給する電流の向きとサブソレノイド60A、60Bに供給する電流の向きとを互いに逆にすることにより実現できる。また、電流の向きを同じとして、それぞれのコイル51の巻き線方向を互いに逆としてもよい。
【0039】
一方のアクチュエータ30Aが有するメインソレノイド50A及びサブソレノイド60Aを例に説明する。第2の電流が与えられたメインソレノイド50Aを磁石としてみたとき、メインソレノイド50Aの端部50A1はS極であり、逆側の端部50A2はN極である。第2の電流とは逆向きの第1の電流が与えられたサブソレノイド60Aを磁石としてみたとき、サブソレノイド60Aの端部60A1はN極であり、逆側の端部60A2はS極である。この場合、メインソレノイド50Aの固定磁極52とサブソレノイド60Aの固定磁極52も、極性が互いに逆である。例えば、コイル51、可動磁極53及び固定磁極52をひとつの仮想的な磁石としてみなした場合にも、メインソレノイド50Aにおける極性は、サブソレノイド60Aの極性と逆であるといえる。
【0040】
メインソレノイド50AにおけるN極からS極へ向かう磁極方向SA1(第1磁極方向)は、サブソレノイド60AにおけるN極からS極へ向かう磁極方向SA2(第2磁極方向)と一致しない。具体的には、メインソレノイド50Aの磁極方向SA1は、サブソレノイド60Aの磁極方向SA2に対して逆向きである。
【0041】
さらに、磁場強度抑制部は、サブソレノイド60Aに加えて、磁気シールド31Aを含んでもよい。磁気シールド31Aは、メインソレノイド50Aおよびサブソレノイド60Aが発する磁場の漏洩を抑制する。磁場の漏洩を抑制する効果は、磁気シールド31Aの厚みによって決まる。例えば、
図7(a)に示すように、磁気シールド31Aの厚みが薄い場合には、磁場の漏洩を抑制する効果は小さい。
図7(b)に示すように、磁気シールド31Aの厚みが厚い場合には、磁場の漏洩を抑制する効果は大きい。磁気シールド31Aの厚みが厚いほうが磁場の漏洩の観点からすると望ましい。しかし、その他の要因から磁気シールド31Aの厚みが制限される場合がある。第1実施形態のように、磁場抑制部としてサブソレノイド60Aを有する場合には、磁気シールド31Aは、サブソレノイド60Aによって低減された漏洩磁場の強度をさらに抑制する補助的なものとして扱ってよい。例えば、サブソレノイド60Aによって十分な磁場の強度を低減する効果が得られる場合には、アクチュエータ30Aは、磁気シールド31Aを省略してもよい。
【0042】
上述の磁場強度抑制部であるサブソレノイド60A、60B及び磁気シールド31A、31Bによっても、アクチュエータ30A、30Bの外部に漏れる磁場は存在する。そこで、一対のアクチュエータ30A、30Bの間にも、アクチュエータ30Aとアクチュエータ30Bとの両方を通る磁力線によって示す第2合成磁場FM2を形成させる。例えば、
図8(a)は、一方のアクチュエータ30Aを1個の磁石としてみなすと共に、他方のアクチュエータ30Bも1個の磁石としてみなした場合に形成される第2合成磁場FM2を磁力線によって示す。このような閉じた磁力線によって示す第2合成磁場FM2が存在するとき、
図8(b)に示すように、アクチュエータ30A、30Bに挟まれた領域S1には、磁束密度の低い領域が形成される。この磁束密度の低い領域を、「低磁束密度領域SL」と称する。
【0043】
より詳細には、
図5を参照すると、一方のアクチュエータ30Aのメインソレノイド50Aの磁場の向き(磁極方向SA1参照)と、他方のアクチュエータ30Bのメインソレノイド50Bの磁場の向き(磁極方向SB1参照)と、を互いに逆向きにする。そうすると、メインソレノイド50Aとメインソレノイド50Bとの間に、磁力線CM1によって示す磁場が形成される。同様に、サブソレノイド60Aの磁場の向き(磁極方向SA2参照)と、サブソレノイド60Bの磁場の向き(磁極方向SB2参照)と、を互いに逆向きにする。そうすると、サブソレノイド60Aとサブソレノイド60Bとの間に、磁力線CM2によって示す磁場が形成される。
【0044】
つまり、ここまでに説明したアクチュエータ30A、30Bがそれぞれ有するメインソレノイド50A、50B及びサブソレノイド60A、60Bの磁場の方向を整理すると、以下のとおりである。
・状態1:メインソレノイド50Aの磁場の方向(磁極方向SA1)とサブソレノイド60Aの磁場の方向(磁極方向SA2)とは、互いに逆である。
・状態2:メインソレノイド50Bの磁場の方向(磁極方向SB1)とサブソレノイド60Bの磁場の方向(磁極方向SB2)とは、互いに逆である。
・状態3:メインソレノイド50A(磁極方向SA1)の磁場の方向とメインソレノイド50Bの磁場の方向(磁極方向SB1)とは、互いに逆である。
・状態4:サブソレノイド60Aの磁場の方向(磁極方向SA2)とサブソレノイド60Bの磁場の方向(磁極方向SB2)とは、互いに逆である。
【0045】
例えば、上記の4個の条件のうち、状態3及び状態4を満たすが、状態1及び状態2を満たさない場合を検討した。
図9は、状態3及び状態4を満たすが、状態1及び状態2を満たさない構成が発生する磁場を磁力線によって示す。
図9に示すように、状態3及び状態4を満たすので、メインソレノイド50Aと、メインソレノイド50Bとの間で、閉じた磁力線CM1によって示す磁場が生じている。同様に、サブソレノイド60Aとサブソレノイド60Bとの間でも、閉じた磁力線CM2によって示す磁場が生じている。しかし、状態1を満たしていないので、アクチュエータ30Aから漏れる磁場の強さは大きい。同様に、状態2を満たしていないので、アクチュエータ30Bから漏れる磁場の強さは大きい。その結果、
図10に示すコンター図によれば、状態3及び状態4を満たすことによって、低磁束密度領域SLが形成されていることがわかる。しかし、それぞれのアクチュエータ30A、30Bから漏れる磁場の強度が大きいので、アクチュエータ30A、30Bの周囲には、磁束密度の高い領域S2が形成されていることがわかる。このような構成においては、出射軸線AEを低磁束密度領域SLに精度よく重複させる必要がある。出射軸線AEと低磁束密度領域SLとの相対的な位置関係がなんらかの理由でずれると、出射軸線AEが磁束密度の高い領域に重複してしまう。
【0046】
一方、状態1~4をすべて満たす場合には、
図6のコンター図に示すように、磁束密度の低い領域S3が広くなる。このような構成によれば、アクチュエータ30A、30Bと電子銃4との組み立て工程などで生じる位置ずれを許容しやすくなる。
【0047】
低磁束密度領域SLは、原理的には、一対のアクチュエータ30A、30Bのそれぞれが発する磁場によって形成される位置が決まる。理想的には、低磁束密度領域SLに出射軸線AEが重複することが望ましいが、出射軸線AEの位置は、電子銃4の配置や構成などによって決まってしまう。従って、低磁束密度領域SLの位置を任意の位置に配置する構成として、X線シャッタ10は、磁気バイパス40(磁性部材)を有している。
【0048】
磁気バイパス40は、合成磁場FMを偏らせる。磁気バイパス40は、鉄などの透磁率の高い材料によって形成されている。例えば、磁気バイパス40は、円弧状の板部材である。磁気バイパス40の幅は、アクチュエータ30A、30Bの幅とおおむね同じである。磁気バイパス40の円弧の中心は、出射軸線AEと重複してもよい。磁気バイパス40によれば、メインソレノイド50A、50Bの間に、空気よりも透磁率の高い領域を形成することができる。一方のメインソレノイド50Aから他方のメインソレノイド50Bに向かう磁力線の多くが、透磁率の高い磁気バイパス40を通る。磁気バイパス40を配置することによって、第2合成磁場FM2に偏りが生じる。第2合成磁場FM2の偏りに応じて、低磁束密度領域SLの位置も偏る。磁気バイパス40によれば、低磁束密度領域SLを所望の位置に形成することができるので、メインソレノイド50A、50Bの位置及び電子銃4との位置は、互いに独立して決めることが可能になる。その結果、
図11に示すように、低磁束密度領域SLに出射軸線AEが重複するので、電子銃4から出射された電子は、磁場の影響を受けにくくなる。つまり、電子の進行経路の偏向が抑制される。
【0049】
要するに、第1実施形態のX線シャッタ10は、出射軸線AEに沿って出射される電子線EBに起因するX線の出射と遮蔽とを相互に切り替える。X線シャッタ10は、磁場を発生させて磁場に起因する力を出力するメインソレノイド50A、50Bと、磁場の強度を抑制する磁場強度抑制部であるサブソレノイド60A、60Bと、を有するアクチュエータ30A、30Bと、メインソレノイド50A、50Bに取り付けられて、X線の出射軸線AEに重複する遮蔽態様と出射軸線AEに重複しない出射態様とがメインソレノイド50A、50Bの動作によって相互に切り替わる遮蔽板21と、を備える。
【0050】
X線シャッタ10は、遮蔽板21を駆動するアクチュエータ30A、30Bを備えている。アクチュエータ30A、30Bは、遮蔽板21の態様を切り替える力を、磁場を発生させることによって出力する。そして、アクチュエータ30A、30Bは、磁場強度抑制部であるサブソレノイド60A、60Bによって出射軸線AEを含む領域に形成される磁場の強度を抑制する。その結果、アクチュエータ30A、30Bの動作時に発生する磁場が電子線EBに与える影響を抑制できる。
【0051】
サブソレノイド60A、60Bは、メインソレノイド50A、50Bに対して並置されると共に、メインソレノイド50A、50Bの磁場と干渉して第1合成磁場FM1を形成する。メインソレノイド50A、50BのN極からS極へ向かう磁極方向SA1は、サブソレノイド60A、60BのN極からS極へ向かう磁極方向SA2に対して逆である。出射軸線AEは、メインソレノイド50A、50Bとサブソレノイド60A、60Bとに挟まれない外部領域S4に配置されている。この構成によれば、メインソレノイド50A、50Bが発生する磁力線がサブソレノイド60A、60Bを通過するような磁力線によって示す第1合成磁場FM1が形成される。その結果、アクチュエータ30A、30Bから漏れる磁場の強度を抑制することができる。
【0052】
X線シャッタ10は、一方のアクチュエータ30Aに対して出射軸線AEと交差する方向に沿って離間して配置された他方のアクチュエータ30Bを備える。一方のアクチュエータ30Aは、メインソレノイド50A、50Bと、サブソレノイド60A、60Bと、を有する。他方のアクチュエータ30Bは、メインソレノイド50A、50Bと、サブソレノイド60A、60Bと、を有する。出射軸線AEは、一方のアクチュエータ30Aと他方のアクチュエータ30Bとの間に配置されている。この構成によれば、アクチュエータ30A、30Bの間に低磁束密度領域SLが形成される。その結果、低磁束密度領域SLに出射軸線AEを重複させると、電子銃4から出射される電子線EBがメインソレノイド50A、50Bの磁場から受ける影響が抑制される。従って、所望の位置に電子線EBを照射することができる。
【0053】
X線シャッタ10におけるアクチュエータ30A、30Bの間には、一方のアクチュエータ30Aの磁場及び他方のアクチュエータ30Bの磁場の干渉によって生じると共に磁力線CM1、CM2によって示す第2合成磁場FM2が発生する。X線シャッタ10は、第2合成磁場FM2の分布を偏らせる磁気バイパス40を備える。磁気バイパス40によれば、メインソレノイド50A、50Bによって形成されると共に磁力線CM1によって示す磁場が偏る。同様に、磁気バイパス40によれば、サブソレノイド60A、60Bによって形成されると共に磁力線CM2によって示す磁場も偏る。これらの磁場の偏りによって、全体として第2合成磁場FM2の偏りが生じる。低磁束密度領域SLは、第2合成磁場FM2に応じる。その結果、低磁束密度領域SLが形成される位置は、第2合成磁場FM2の偏りに応じて変化する。従って、低磁束密度領域SLを所望の位置に形成することが可能になる。
【0054】
磁場偏向部である磁気バイパス40は、一方のアクチュエータ30Aから他方のアクチュエータ30Bまで延びる板状の磁性材料により形成された平板部材である。この構成によれば、磁気バイパス40が透磁率の高い領域を形成する。その結果、アクチュエータ30A、30Bの間に形成された第2合成磁場FM2分布は偏る。従って、低磁束密度領域SLを所望の位置に形成することが可能になる。
【0055】
<第2実施形態>
第1実施形態では、磁場を積極的に偏らせる構成を採用した。
図12に示すように、第2実施形態のX線シャッタ10Aは、メインソレノイド50A、50B、サブソレノイド60A、60B及び電子銃4の配置によって、低磁束密度領域SLに出射軸線AEを重複させる構成を採用する。つまり、第2実施形態のX線シャッタ10Aは、磁気バイパス40を備えない。
【0056】
第2実施形態のX線シャッタ10Aは、シャッタフレーム20Aと、アクチュエータ30A、30Bと、を有する。
図13に示すように、アクチュエータ30A、30Bが動作するとき、メインソレノイド50A、50Bは、磁力線CM1によって示す磁場を発生する。同様に、サブソレノイド60A、60Bも、磁力線CM2によって示す磁場を発生する。
図13の磁力線CM1、CM2によって示す第2合成磁場FM2が発生したとき、
図14に示すような磁束密度の分布が生じる。
図14に示すように、低磁束密度領域SLは、メインソレノイド50A、50Bに挟まれた領域S1に形成される。X線シャッタ10Aは、合成磁場FMを偏らせる磁気バイパス40を備えないから、低磁束密度領域SLの位置は、メインソレノイド50A、50B及びサブソレノイド60A、60Bによって決まる。
【0057】
第2実施形態のシャッタフレーム20Aは、第1実施形態のシャッタフレーム20に対して、連結部22bの形状が異なっている。そして、電子銃4も出射軸線AEの方向から見て、メインソレノイド50A、50Bに挟まれた領域S1に形成される。従って、連結部22bも、メインソレノイド50A、50Bに挟まれた領域S1に配置される部分を含む。
【0058】
第2実施形態のX線シャッタ10Aは、磁気バイパス40を有することなくメインソレノイド50A、50B、サブソレノイド60A、60B及び電子銃4の配置によって、低磁束密度領域SLに出射軸線AEを重複させる。従って、
図15に示すように、電子銃4から出射される電子線EBは、出射軸線AEに沿って飛行することができる。さらに、X線シャッタ10Aは、磁力線偏向部としての磁気バイパス40を備えない。従って、構成を簡易にできる。
【0059】
<第3実施形態>
第1実施形態及び第2実施形態では、メインソレノイド50A、50B及びサブソレノイド60A、60Bは、上述した状態1~4を満たしていた。しかし、X線シャッタ10が有する磁場強度抑制部は、本質的にはメインソレノイド50A、50Bが発生する磁場が電子線EBに与える影響を抑制するものである。従って、必ずしも磁場強度抑制部であるサブソレノイド60A、60Bを備えなくてもよい。例えば、磁気シールド31A、31Bによって、所望の低減効果が得られるならば、磁場強度抑制部として磁気シールド31A、31Bのみを備える構成もあり得る。
【0060】
図16に示すように、第3実施形態のX線シャッタ10Bは、シャッタフレーム20と、一対のアクチュエータ30Cとを有する。シャッタフレーム20は、第1実施形態と同様である。アクチュエータ30Cは、メインソレノイド50A、50Bと磁気シールド31A、31Bとを有する。第3実施形態では、磁気シールド31A、31Bによって、所望の低減効果が実現できる。例えば、磁気シールド31A、31Bは、純鉄といった透磁率の高い磁性材料を用いて形成してもよい。また、磁気シールド31A、31Bは、所望の磁場強度の低減効果が得られる比較的厚い板厚を有してもよい。
【0061】
従って、第3実施形態のX線シャッタ10Bに限っては、メインソレノイド50A、50Bの磁場の向きについて、特に制限はない。一方のメインソレノイド50Aの磁場の向きは、他方のメインソレノイド50Bの磁場の向きと同じでもよい。一方のメインソレノイド50Aの磁場の向きは、他方のメインソレノイド50Bの磁場の向きと逆であってもよい。
【0062】
要するに、X線シャッタ10Bにおける磁場強度抑制部は、磁性材料によって形成されて、メインソレノイド50A、50Bを収容する磁気シールド31A、31Bであってもよい。この構成によれば、メインソレノイド50A、50Bが発する磁力線の一部が磁気シールド31A、31Bを通るようになる。その結果、アクチュエータ30Cの外部に漏れる磁力線の数が減るので、アクチュエータ30Cの外部に漏れる磁場の強度を抑制することができる。
【0063】
本発明は、上記の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に限定されない。
【0064】
<第1変形例>
図17(a)に示すように、第1変形例のX線シャッタ10Cは、1個のアクチュエータ30Aと、シャッタフレーム20と、を有する。第1変形例では、アクチュエータ30Aの駆動軸線AD1の方向とシャッタフレーム20の長手方向との関係が、第1実施形態のアクチュエータ30Aと異なる。第1実施形態では、駆動軸線AD1の方向は、シャッタフレーム20の長手方向に対して対して垂直方向に延びていた。第1変形例では、駆動軸線AD1の方向は、シャッタフレーム20の長手方向に対して平行である。このような構成によれば、シャッタフレーム20は、長手方向に往復移動をすることができる。そして、第1変形例のアクチュエータ30Aの構成は、第1実施形態の一方のアクチュエータ30Aの構成と同じである。つまり、第1変形例のアクチュエータ30Aも、メインソレノイド50Aとサブソレノイド60Aとを有している。そして、メインソレノイド50Aの磁場の向きとサブソレノイド60Aの磁場の向きとは逆である。第1変形例のX線シャッタ10Cも、磁場強度抑制部であるサブソレノイド60Aを有するので、アクチュエータ30Aの外部に漏れる磁場の強度が抑制される。従って、第1変形例のX線シャッタ10は、電子線EBに与える影響を抑制した動作が可能である。
【0065】
<第2変形例>
図17(b)に示すように、第2変形例のX線シャッタ10Dは、2個のアクチュエータ30A、30Bと、シャッタフレーム20と、を有する。第2変形例のX線シャッタ10も、第1変形例と同様に、アクチュエータ30A、30Bの駆動軸線AD1、AD2は、シャッタフレーム20の長手方向に対して平行である。一方、第2変形例では、一対のアクチュエータ30A、30Bは、シャッタフレーム20の両端にそれぞれ連結されている。一対のアクチュエータ30A、30Bは、第1実施形態のアクチュエータ30Aの構成と同じである。つまり、第2変形例のアクチュエータ30A、30Bも、メインソレノイド50A、50Bとサブソレノイド60A、60Bとを有している。第2変形例のX線シャッタ10Dによっても、磁場強度抑制部であるサブソレノイド60A、60Bを有するので、アクチュエータ30A、30Bの外部に漏れる磁場の強度が抑制される。従って、第2変形例のX線シャッタ10Dは、電子線EBに与える影響を抑制した動作が可能である。
【0066】
<第3変形例>
図17(c)に示すように、第3変形例のX線シャッタ10Eは、4個のアクチュエータ30A、30B、30C、30Dを有する。追加される一対のアクチュエータ30C、30Dの駆動軸線AD3、AD4は、一対のアクチュエータ30A、30Bの駆動軸線AD1、AD2とそれぞれ重複する。そして、アクチュエータ30Aと追加されるアクチュエータ30Cとの間に、シャッタフレーム20の一方の端部が挟まれている。同様に、アクチュエータ30Bと追加されるアクチュエータ30Dとの間に、シャッタフレーム20の他方の端部が挟まれている。追加されるアクチュエータ30C、30Dの構成も、アクチュエータ30A、30Bの構成と同じである。つまり、第3変形例のアクチュエータ30A、30B、30C、30Dも、メインソレノイド50A、50Bとサブソレノイド60A、60Bとをそれぞれ有している。第3変形例のX線シャッタ10Eによっても、磁場強度抑制部であるサブソレノイド60A、60Bを有するので、アクチュエータ30A、30B、30C、30Dの外部に漏れる磁場の強度が抑制される。従って、第3変形例のX線シャッタ10Eは、電子線EBに与える影響を抑制した動作が可能である。
【0067】
<その他の変形例>
第1実施形態では、メインソレノイド50A及びサブソレノイド60A、60Bが発生する磁場、及び、メインソレノイド50A、50Bとサブソレノイド60A、60Bが形成する磁場を、磁気バイパス40によって偏らせた。磁場の偏向は、磁気バイパス40とは異なる構成によっても実現できる。例えば、磁気バイパス40を、電磁石に置き換えてもよい。この場合、電磁石は、コイル軸線がメインソレノイド50A、50Bのコイル軸線に対して垂直方向に延びるように配置される。また、電磁石は、電磁石とアクチュエータ30A、30Bとによって囲まれた領域に出射軸線AEが存在するように、配置される。例えば、一方のメインソレノイド50Aから他方のメインソレノイド50Bに向かう磁力線のうち、電磁石を通る磁力線の数は、電磁石のコイルに電流を与えたときと与えないときとで相違する。電磁石のコイルに電流を与えると、電磁石を通る磁力線の数が増える。磁力線の数は保存されるから、電磁石を通る磁力線の数が増えることによって、磁場に偏りが生じる。
【0068】
上記の第1実施形態、第2実施形態及び第1~第3変形例では、メインソレノイド50A、50Bに並置する磁場強度抑制部として、サブソレノイド60A、60Bを例示した。しかし、磁場強度抑制部は、本質的には、メインソレノイド50A、50Bと閉じた磁力線によって示す合成磁場が形成できればよい。従って、例えば、サブソレノイド60A、60Bを、電流が提供可能なコイルのみを有する電磁石に置き換えてもよい。また、上記の実施形態及び変形例では、X線モジュール100を例示したが、X線管110に変えて電子線EBをそのまま取り出す電子線源を用いた電子線モジュールに用いてよい。
【符号の説明】
【0069】
1…真空筐体、2…絶縁バルブ、3…金属筐体、4…電子銃、10…X線シャッタ(遮蔽装置)、20…シャッタフレーム、21…遮蔽板、22…遮蔽梁、30A,30B…アクチュエータ、31A,31B…磁気シールド、40…磁気バイパス(磁性部材)、50A,50B…メインソレノイド(第1駆動部)、51…コイル、52…固定磁極、53…可動磁極、60A,60B…サブソレノイド(第2駆動部)、100…X線モジュール(荷電粒子線発生装置)、AC…コイル軸線、AE…出射軸線、EB…電子線、FM1…第1合成磁場、FM2…第2合成磁場、SL…低磁束密度領域。