(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20241114BHJP
H04N 25/616 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
H04N25/78
H04N25/616
(21)【出願番号】P 2021103653
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 憲仁
(72)【発明者】
【氏名】森下 玄
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-033363(JP,A)
【文献】特開2021-019268(JP,A)
【文献】特開2009-225324(JP,A)
【文献】国際公開第2021/077329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30-5/33
H04N 23/11
H04N 23/20-23/30
H04N 25/00
H04N 25/20-25/61
H04N 25/615-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配置された複数の画素と、前記複数の画素に接続され、前記複数の画素からの画素信号が供給される複数の画素信号線と、を有する画素アレイと、
前記複数の画素信号線に接続された列並列AD変換回路と、
時間の経過に伴って直線的に電圧が変化するランプ波状の参照電圧を生成する参照電圧生成回路と、を含み、
前記列並列AD変換回路は、第1のAD変換器を有し、
前記第1のAD変換器は、
第1の容量素子を介して前記画素信号線に接続さ
れた第1入力端子と、
前記第1の容量素子と等しい第2の容量素子を介して前記参照電圧
が供給される第2入力端子と、
前記第1入力端子に接続され、前記第1入力端子にオフセット電圧を生成するオフセット発生回路と、
前記第2入力端子に接続されたダミー容量素子回路と、を含
み、
前記オフセット発生回路は、2つのスイッチ素子と第3の容量素子とを備えることにより、前記オフセット電圧を生成し、
前記ダミー容量素子回路は、前記第2入力端子と接地電位とに接続された第4の容量素子を含み、
前記第3の容量素子と前記第4の容量素子とが等しい、固体撮像装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1のAD変換器は、相関二重サンプリングを用いてAD変換を行う、固体撮像装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記列並列AD変換回路は、第2のAD変換器を有し、
前記第2のAD変換器は、
前記画素信号線に接続され、前記オフセット発生回路の接続されない第1入力端子と、
前記参照電圧を受ける第2入力端子と、を有する、固体撮像装置。
【請求項4】
請求
項3において、
前記列並列AD変換回路の偶数列および奇数列の内の一方は、前記第1のAD変換器により構成され、
前記列並列AD変換回路の偶数列および奇数列の内の他方は、前記第2のAD変換器により構成される、固体撮像装置。
【請求項5】
請求
項1において、
前記列並列AD変換回路は、前記第1のAD変換器を複数含み、
前記複数の第1のAD変換器内のそれぞれの前記オフセット発生回路は、それぞれ異なるオフセット電圧を生成する、固体撮像装置。
【請求項6】
請求
項5において、
前記複数の第1のAD変換器内のそれぞれの前記オフセット発生回路の前記
第3の容量素子の値は、それぞれ異なる、固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像装置に関し、例えば、アナログ/デジタル変換器(A/D変換回路とも称する。)を内蔵したCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の固体撮像装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置であるCMOSイメージセンサは、行列状に配置された複数の画素と、周辺回路で構成される。周辺回路は、行毎に画素選択信号を供給する行選択回路と、列毎に画素信号を取得するカラム読み出し回路(Column Readout Circuit)などを含む。カラム読み出し回路は、列毎に設けられた複数のA/D変換回路を有する。カラム読み出し回路として、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)方式のA/D変換回路を用いる場合がある。CMOSイメージセンサの提案として、例えば、特開2020-96300号公報、特開2020-120310号公報がある。
【0003】
監視カメラは暗い環境(低照度)では赤外光を照射して白黒画像を取得していた。近年では低照度でもカラー撮影可能な高感度なイメージセンサの開発が盛んに行われている。暗い環境で色再現性の高い画像を得るには低照度時のリニアリティ特性が非常に重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-96300号公報
【文献】特開2020-120310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタル型相関二重サンプリング(DCDS:Digital Correlated Double Sampling)を用いたA/D変換回路の変換動作では、まず初めに、真っ暗な時の出力画像(1回目アナログデジタル(AD)変換という)を取り、次に光を入れたときの出力画像(2回目AD変換という)から真っ暗な画像を減算することで、回路オフセットを除去することができる。
【0006】
1回目AD変換では画素信号がリセット状態となるため、全カラムのAD変換回路ほぼ同一の入力電圧印加状態となり、AD変換回路が遷移する際は全カラムのAD変換回路が同時に動作するため、全カラムのAD変換回路に供給されている電源電圧の電位や接地電圧の電位が大きく変動する(大きなIR-Dropが発生する。)。これにより、AD変換回路内の比較回路の出力スルーレートが大きく鈍ることになる。
【0007】
一方、2回目AD変換では、列毎の画素信号が全カラムのAD変換回路へそれぞれ入力されるため、全カラムのAD変換回路の遷移タイミングは分散するため、全カラムのAD変換回路に供給されている電源電圧の電位や接地電圧の電位の変動は小さい(小さなIR-Dropしか発生しない)。
【0008】
1回目AD変換時の鈍った出力スルーレートに起因した遅延増加分だけカウンタのラッチタイミングがずれ、AD変換結果に誤差が混入することになる。特に、低照度時にこの誤差が大きく影響し、低照度時のリニアリティが劣化する。その結果、色バランスの崩れやシェーディング校正精度が悪化する。
【0009】
本開示の課題は、低照度時のリニアリティを向上させることが可能な技術を提供することにある。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0012】
一実施の形態によれば、個体撮像装置は、
行列状に配置された複数の画素と、前記複数の画素に接続され、前記複数の画素からの画素信号が供給される複数の画素信号線と、を有する画素アレイと、
前記複数の画素信号線に接続された列並列AD変換回路と、
時間の経過に伴って直線的に電圧が変化するランプ波状の参照電圧を生成する参照電圧生成回路と、を含み、
前記列並列AD変換回路は、第1のAD変換器を有し、
前記第1のAD変換器は、
前記画素信号線に接続される第1入力端子と、
前記参照電圧を受ける第2入力端子と、
前記第1入力端子に接続され、前記第1入力端子にオフセット電圧を生成するオフセット発生回路と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上記一実施の形態の個体撮像装置によれば、低照度でのリニアリティを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るカラムA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る第1のA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る第2のA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る
図3の第1のA/D変換回路と
図4の第2のA/D変換回路の両方が用いられたカラムA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る
図4の第2のA/D変換回路のみが用いられたカラムA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、A/D変換動作の概要を説明する図である。
【
図8】
図8は、
図6の比較例に係るカラムA/D変換回路の場合におけるA/D変換動作を説明する図である。
【
図9】
図9は、
図5の実施の形態1に係るカラムA/D変換回路を有する場合のA/D変換動作(ADC7)と
図6の比較例に係るカラムA/D変換回路の場合のA/D変換動作(ADC7r)とを説明する図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係るイメージセンサの低照度時のリニアリティを説明する図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係るイメージセンサの色バランスを説明する図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係るカラムA/D変換回路7Aの構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、オフセット電圧A~Hを示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施の形態3に係るA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、ゲインエラーの改善を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0016】
(実施の形態1)
<イメージセンサの構成>
図1は、実施の形態1に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。固体撮像装置としてのイメージセンサ100は、制御回路1と、行操作回路2と、画素部(画素アレイとも言う)3と、カラムA/D変換回路7と、列操作回路8と、デコーダ回路9とを備えている。実施の形態1においては、イメージセンサ100を構成する画素部3と上記した各回路は、1つの半導体チップに周知の半導体製造技術によって形成されている。すなわち、1個の半導体装置が、上記した画素部3と上記の各回路を備えている。カラムA/D変換回路7は、列並列AD変換回路ということもある。
【0017】
画素部3は、行列状に配置された複数の感光素子10と、画素部3の各行に配置された行制御線RL_0~RL_nと、画素部3の各列に配置された列信号線CL_0~CL_mとを備えている。感光素子10は、例えばフォトダイオードPDを備え、対応する行に配置された行制御線と対応する列に配置された列信号線とに接続されている。
【0018】
行操作回路2は、画素部3の各行に配置された行制御線RL_0~RL_nに接続され、画素部3の各行の動作タイミングを制御する。行操作回路2は、例えば、画像を取得するとき、複数の行制御線RL_0~RL_nから順番に行制御線を選択し、選択した行制御線に行制御信号を供給する。これにより、画素部3に配置された複数の感光素子10から、行制御信号が供給された行制御線に接続されている複数の感光素子10が選択される。選択された感光素子10においては、フォトダイオードPDで光により電子が励起され、光に応じたアナログ信号(画素信号とも言う)が、列信号線CL_0~CL_mに出力される。列信号線CL_0~CL_mは、カラムA/D変換回路7に接続されており、列信号線CL_0~CL_mに供給された光に応じた画素信号であるアナログ信号は、カラムA/D変換回路7によって、それぞれ対応するデジタル信号に変換される。
【0019】
列操作回路8は、カラムA/D変換回路7に接続され、各カラムの動作タイミングを制御する。例えば、列操作回路8は、カラムA/D変換回路7によって変換されたデジタル信号が、順次、デコーダ回路9に供給されるように、カラムA/D変換回路7を制御する。デコーダ回路9は、カラムA/D変換回路7から供給されたデジタル信号をデコードして、カウント値として出力する。
【0020】
制御回路1は、全体の制御を行う。例えば制御回路1は、行操作回路2および列操作回路8を動作させるタイミングを制御する。また、制御回路1は、後で説明するカラムA/D変換回路7内の参照電圧生成回路4の動作を制御するとともに、カラムA/D変換回路7内のカウンタ回路5にクロック信号CLKを供給する。
【0021】
カラムA/D変換回路7は、画素部3の各列に対応した複数のA/D変換回路6と、参照電圧生成回路4と、カウンタ回路5とを備えている。A/D変換回路6のそれぞれは、対応する画素部3の列に配置されている列信号線に接続されている。参照電圧生成回路4は、時間の経過に伴って直線的に電圧が変化するランプ波状の参照電圧を生成し、各列に対応したA/D変換回路6に対して、共通の参照電圧線RVLを介して、共通の参照電圧VRAMPを供給する。カウンタ回路5は、制御回路1からのクロック信号CLKに基づいて、それぞれ複数のビットカウンタ信号を生成し、画素部3の行に沿って配置されたカウンタ信号線CTLに出力する。各列に対応したA/D変換回路6は、カウンタ信号線CTLに接続されており、カウンタ回路5によって生成されたカウンタ信号が、各列に対応したA/D変換回路6に分配される。
【0022】
各列に対応したA/D変換回路6には、共通の参照電圧VRAMPが供給されるとともに、共通のカウンタ信号が分配されるため、各列に対応したA/D変換回路6は、列信号線CL_0~CL_mを介して供給されたアナログ信号を、同時にデジタル信号に変換することが可能である。
【0023】
図1において、LTCはラッチ信号を示している。ランプ波状の参照電圧VRAMPが、所定の電圧に到達し、初期の電圧に戻るときに、その旨が、制御回路1から列操作回路8に通知され、列操作回路8がラッチ信号LTCを発生する。A/D変換回路6は、アナログ信号に対応したデジタル信号を出力線21に出力する。ランプ波状の参照電圧が初期の電圧に戻るときには、デジタル信号がデコーダ回路9に供給されているため、デコーダ回路9は、ラッチ信号LTCが供給されたタイミングで、デジタル信号をラッチし、ラッチされたデジタル信号をデコードする。なお、同図では、列操作回路8からラッチ信号LTCが出力されるように描かれているが、ラッチ信号LTCはカラムA/D変換回路7、参照電圧生成回路4あるいは制御回路1から出力されるようにしてもよい。
【0024】
図1において、線と交差するように描かれた線は、その線が複数であることを示している。例えば、カウンタ信号CTLには、交差するような線“/”が描かれているため、カウンタ信号線CTLは複数のカウンタ信号線である。これに対して、参照電圧線RVLには、交差するような線が設けられていないため、参照電圧線は1つの配線である。
【0025】
図2は、実施の形態1に係るカラムA/D変換回路の構成を示すブロック図である。カラムA/D変換回路7は、画素部3の各列に対応した複数のA/D変換回路6と、参照電圧生成回路4と、カウンタ回路5と、バイアス回路12と、複数のラッチ回路LTを備えている。バイアス回路12が発生するバイアス電圧は共通バイアス線11を介して複数のA/D変換回路6へ供給されている。画素部3の列信号線CL_0~CL_mは、
図2では、画素信号線VPIX0~VPIXmとして各A/D変換回路6に接続される。各A/D変換回路6の出力はラッチ回路LTに接続される。また、
図2に示すように、カラムA/D変換回路7を構成する各回路には、電源として、高電位の第1参照電源電位である電源電位VCCと、低電位の第2参照電位である接地電位GNDとが供給されている。
【0026】
図3は、実施の形態1に係る第1のA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
図4は、実施の形態1に係る第2のA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
図5は、実施の形態1に係る
図3の第1のA/D変換回路と
図4の第2のA/D変換回路の両方が用いられたカラムA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
図6は、比較例に係る
図4の第2のA/D変換回路のみが用いられたカラムA/D変換回路の構成を示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように、第1のA/D変換回路(第1のAD変換器)61は、1段または複数段の前置アンプと、2値化回路24と、オフセット発生回路25と、を備える。第1のA/D変換回路61はデジタル型相関二重サンプリング(DCDS:Digital Correlated Double Sampling)を用いたA/D変換回路である。
図3の例では、第1アンプ21、第2アンプ22の2段構成の前置アンプの例である。2値化回路24の比較出力COMPOUTは、
図2のラッチ回路LTに供給されるように構成されている。
【0028】
画素信号線VPIXと第1アンプ21の第1入力端子VIN1Nとの間と、参照電圧VRAMPが供給される参照電圧線RVLと
第1アンプ21の第2入力端子VIN1Pとの間とは、それぞれキャパシタC1を介して接続されている。第1アンプ21の出力端子VOUT1Nが第2アンプ22の入力端子VIN2に接続される。第2アンプ22の出力端子VOUT2が2値化回路24の入力に接続されている。また、第1アンプ21の入力端子VIN1Nと第1アンプ21の出力端子VOUT1Nとの間と、第1アンプ21の第2入力端子VIN1Pと第1アンプ21の出力端子VOUT1Pとの間とは、それぞれスイッチが設けられる。よって、第1アンプ21の入出力端子間に入れられたスイッチを閉じるオートゼロ動作により、外部の信号DCレベルに依存せず、第1アンプに最適な動作点で動作させることが可能である。第2アンプ22には、
図2の共通バイアス線11からバイアス電圧が供給される。
【0029】
オフセット発生回路25は、第1アンプ21の第1入力端子VIN1Nに接続されており、第1アンプ21の入力端子VIN1Nにオフセット電位を供給することができるように構成されている。オフセット発生回路25は、電源電位VDDと接地電位GNDとの間に直列に接続された2つのスイッチ素子(第1スイッチ素子SW1と第2スイッチ素子SW2)と、第1スイッチ素子SW1と第2スイッチW素子SW2との共通接続点と第1アンプ21の入力端子VIN1Nとの間に接続された容量素子C2から構成されている。
図3の例では、容量素子C2は可変容量素子により構成されている。また、容量素子C2の容量値は、例えば、4fFの値である。
【0030】
図4に示す第2のA/D変換回路(第2のAD変換器)62は、
図3の第1のA/D変換回路61に設けられていたオフセット発生回路25が設けられていない構成である。第2のA/D変換回路62の他の構成は、第1のA/D変換回路61と同じなので重複する説明は省略する。第2のA/D変換回路62も、第1のA/D変換回路61と同様に、デジタル型相関二重サンプリング(DCDS:Digital Correlated Double Sampling)を用いたA/D変換回路である。
【0031】
図5に示すように、実施の形態1に係るカラムA/D変換回路7は、奇数番目(奇数列)のA/D変換回路ADC1、ADC3、・・、ADCn-1は
図3の第1のA/D変換回路61により構成されている。偶数番目(偶数列)のA/D変換回路ADC2、ADC4、・・、ADCnは
図4の第2のA/D変換回路62により構成されている。
【0032】
一方、
図6に示すように、比較例に係るカラムA/D変換回路7rは、すべてのA/D変換回路ADC1~ADCnは
図4の第1のA/D変換回路62により構成されている。
【0033】
なお、
図5では、奇数番目のA/D変換回路ADC1、ADC3、・・、ADCn-1を
図3の第1のA/D変換回路61で構成し、偶数番目のA/D変換回路ADC2、ADC4、・・、ADCnを
図4の第2のA/D変換回路62で構成する例を示したが、これに限定されない。奇数番目のA/D変換回路ADC1、ADC3、・・、ADCn-1を
図4の第2のA/D変換回路62で構成し、偶数番目のA/D変換回路ADC2、ADC4、・・、ADCnを
図3の第1のA/D変換回路61で構成してもよい。連続する半分のA/D変換回路ADC1~ADCn/2を
図3の第1のA/D変換回路61と第2のA/D変換回路62の一方で構成し、残りの半分の連続するA/D変換回路n/2+1~nを第1のA/D変換回路61と第2のA/D変換回路62の他方で構成してもよい。カラムA/D変換回路7内の複数のA/D変換回路を複数に分類し、あるA/D変換回路の群は
図3の第1のA/D変換回路61で構成し、残りのA/D変換回路の群は
図4の第2のA/D変換回路62で構成してもよい。
【0034】
次に、図を用いて、イメージセンサ100のA/D変換動作を説明する。
図7は、A/D変換動作の概要を説明する図である。
図8は、
図6の比較例に係るカラムA/D変換回路の場合におけるA/D変換動作を説明する図である。
図9は、
図5の実施の形態1に係るカラムA/D変換回路を有する場合のA/D変換動作(ADC7)と
図6の比較例に係るカラムA/D変換回路の場合のA/D変換動作(ADC7r)とを説明する図である。
【0035】
図7に示すように、デジタル型相関二重サンプリングDCDSを用いたA/D変換回路の変換動作では、まず初めに、A/D変換回路に真っ暗な時(画素信号がリセット状態)の出力画像(1回目AD変換という)を取り、1回目のAD変換を行い、1回目のAD変換結果Dd[1]を得る。次に、A/D変換回路に光を入れたときの出力画像(2回目AD変換という)を取り、2回目のAD変換を行い、2回目のAD変換結果Ds[1]を得る。そして、光を入れたときの出力画像から真っ暗な出力画像を減算する(Ds[1]-Dd[1])することで、回路オフセットが除去されたAD変換結果を得ることできる。
【0036】
図8に示すように、比較例に係るカラムA/D変換回路7rにおいては、1回目AD変換では画素信号がリセット状態となるため、全カラムの第2のAD変換回路62ほぼ同一の入力電圧印加状態となり、AD変換回路の出力が遷移する際は全カラムの第2のAD変換回路62の変換出力が同時に同一方向に遷移する動作となる。そのため、全カラムの第2のAD変換回路62に供給されている電源電圧VCCの電位や接地電圧GNDの電位が大きく変動する。つまり、電源電圧VCCを供給する配線の抵抗値や接地電圧GNDを供給する配線の抵抗値によって、電源電圧VCCの大きなIR-DropやGND電位の大きな上昇が発生することになる。これにより、AD変換回路62内の2値化回路24の比較出力COMPOUTのスルーレートが大きく鈍ることになる。
【0037】
一方、2回目のAD変換では、光を入れたときの画素信号が入力されるため、全カラムのAD変換回路62の遷移タイミングは分散し、電源電圧VCCのIR-Dropが小さくなるため、比較出力COMPOUTのスルーレートは、1回目のAD変換時における比較出力COMPOUTのスルーレートと比較して、鈍らないことになる。
【0038】
そして、1回目のAD変換時の鈍ったスルーレートに起因した遅延増加分だけ、カウンタ5のラッチタイミングがずれ、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)後のAD変換結果に誤差が混入する。特に、低照度時に、この誤差が大きく影響し、低照度時のリニアリティが劣化する。この結果、色バランスの崩れやシェーディング校正精度が悪化する。
【0039】
図9において、左側には、
図5の実施の形態1に係るカラムA/D変換回路7のA/D変換動作ADC7を示しており、右側には、
図6の比較例に係るカラムA/D変換回路7rのA/D変換動作ADC7rを示している。
図9において、V1はAD変換回路61の第1アンプ21の入力端子VIN1Nの電位を示し、V2は第1アンプ21の入力端子VIN1Pの電位を示す。V3はAD変換回路62の第1アンプ21の入力端子VIN1Nの電位を示し、V4は第1アンプ21の入力端子VIN1Pの電位を示す。A/D変換動作ADC7には、電位V1,V2,V3,V4が示されており、点線は電位V1を、実線は電位V3を、薄い実線は電位V2、V4を示している。一方、A/D変換動作ADC7rには、電位V3,V4が示されており、実線は電位V3を、薄い実線は電位V4を示している。点線の電位V1と実線の電位V3との間の差電位は、オフセット発生回路25により生成されたオフセット電位OfVの電位差である。第1スイッチ素子SW1と第2スイッチ素子SW2とは、A/D変換動作ADC7に示すように、1回目AD変換時において、第1スイッチ素子SW1がオン状態からオフ状態へと遷移し、第1スイッチ素子SW1がオフ状態へ遷移した後、第2スイッチSW素子2がオフ状態からオン状態へと遷移する。2回目AD変換時においては、第1スイッチ素子SW1がオフ状態と第2スイッチSW素子2がオン状態とが維持される。2回目AD変換の終了後、第1スイッチ素子SW1はオン状態へ、第2スイッチSW素子2がオフ状態へと遷移して、次の行の画素の1回目AD変換の状態へと遷移することになる。
【0040】
A/D変換動作ADC7rに示されるように、1回目AD変換時の出力COMPOUTの立ち上がり時、電源電圧VCCのIR-Dropが大きく、出力COMPOUTのスルーレートは大きく鈍っている。
【0041】
一方、A/D変換動作ADC7では、A/D変換動作ADC7rと比較して、1回目AD変換時の出力COMPOUTの立ち上がり時、電源電圧VCCのIR-Dropが減少し、1回目AD変換時の出力COMPOUT出力のスルーレートが2回目AD変換時の出力COMPOUTの立ち上がり時のスルーレートとほぼ同等になっているのが分かる。
【0042】
図10は、実施の形態1に係るイメージセンサの低照度時のリニアリティを説明する図である。
図11は、実施の形態1に係るイメージセンサ100の色バランスを説明する図である。
【0043】
図10に示すように、実施の形態1に係るイメージセンサ100では、上側に示す低照度時のリニアリティのグラフG10から、下側に示す低照度時のリニアリティのグラフG11へと改善された。上側に示す低照度時のリニアリティのグラフG10は、比較例に係るカラムA/D変換回路7rを有するイメージセンサに対応し、下側に示す低照度時のリニアリティのグラフG11は実施の形態1に係るカラムA/D変換回路7を有するイメージセンサ100に対応する。この例では、低照度時のリニアリティが、-11.4%から-1.5%へ改善された例を示している。
【0044】
図11には、上から下に順に、カラムA/D変換回路7rを有するイメージセンサの色バランスCB10、カラムA/D変換回路7を有するイメージセンサの色バランスCB11を示しており、理想的なリニアリティの色バランスCBidを示している。一様光を入射、0EVでホワイトバランスを取った画像比較である。色バランスCB10は、色バランスの大きく崩れており、見劣りする画像である。色バランスCB11は、理想的なリニアリティの色バランスCBidに近い色バランスを実現できている。
【0045】
実施の形態1に係るイメージセンサ100によれば、偶数番目または奇数番目のAD変換回路にオフセット発生回路25を設け、AD変換時の遷移タイミングをずらすことで、電源電圧VCCの供給される配線の電位のIR-Drop量を低減させる。
【0046】
これにより、1回目AD変換時の鈍った出力スルーレートに起因した遅延増加分だけカウンタのラッチタイミングがずれることを防止できる。そのため、AD変換結果への誤差の混入を低減できる。これにより、低照度時のリニアリティが改善できる。その結果、色バランスを理想的なバランスにでき、シェーディング校正精度を向上できる。
【0047】
(実施の形態2)
図12は、実施の形態2に係るカラムA/D変換回路7Aの構成を示すブロック図である。カラムA/D変換回路7Aは、複数のA/D変換回路ADC1~ACDnを含む。複数のA/D変換回路ADC1~ACDnのおのおのは、
図3に示す第1のA/D変換回路61の回路構成を用いて構成されている。ただし、A/D変換回路ADC1~ACD9は、そのオフセット発生回路25から発生するオフセット電圧A~Hが異なるように構成されている。この例のオフセット電圧A~Hでは、互いに異なる8タイプのオフセット電圧とされている。
【0048】
図13は、オフセット電圧A~Hを示すグラフである。縦軸はオフセット電圧Vos(mV)を示し、横軸は容量素子C1と容量素子C2の比(C2/C1)を示している。オフセット電圧Vos(mV)は、下記(式1)から求めることができる。
【0049】
Vos=-(C2/(C1+C2))・(VCC-GND) (式1)
ここで、容量素子C1、C2は、
図3に示す第1のA/D変換回路61の容量素子C1、C2である。容量素子C1は一定として、容量素子C2の容量値をカラム毎に変えて、異なるオフセット電圧A~Hを生成する。異なるオフセット電圧A~Hの数は、8つに限定されない。2つや7つでも良いし、9つおよびそれ以上でも良い。
【0050】
実施の形態2でも、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
【0051】
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3に係るA/D変換回路61Aの構成を示すブロック図である。
図15は、ゲインエラーの改善を説明するグラフである。
【0052】
図14のA/D変換回路61Aが
図3のA/D変換回路61と異なる点は、
図14のA/D変換回路61Aにおいて、ゲインエラーの改善のため、第1アンプ21の入力端子VIN1Pにダミー容量素子回路26が接続されている点である。ダミー容量素子回路26は、第1アンプ21の入力端子VIN1Pと接地電位GNDとの間に接続された第2の容量素子C2により構成されている。A/D変換回路61Aの他の構成は、A/D変換回路61と同じなので重複する説明は省略する。
【0053】
図3のA/D変換回路61のゲインエラーの式(つまり、第1アンプ21の入力端子VIN1Pに容量素子C2が接続されていない)は、以下の式2で表すことができる。ゲインは以下の式3で表すことができる。
GainError=Gain-1=-(C2)/(C1+C2+Cp) (式2)
Gain=(C1+C2)/(C1+C2+Cp) (式3)
ここで、Cpは寄生容量素子である。
【0054】
図15は、縦軸をセンサ出力とし、横軸を明るさとした場合の第1アンプ21の入出力特性を示している。実線LA(w/ C2)は第1アンプ21の入力端子VIN1Pに容量素子C2が接続されている場合(
図14のA/D変換回路61Aに対応する)を示す。二点鎖線LB(w/o C2)は第1アンプ21の入力端子VIN1Pに容量素子C2が接続されていない場合(
図3のA/D変換回路61に対応する)を示す。一点鎖線LIは理想の入出力特性を示している。
図15に示されるように、ゲイン誤差は、実線LA(w/ C2)のゲイン誤差GainError(w/ C2)は、二点鎖線LB(w/o C2)のゲイン誤差GainError(w/o C2)より小さくなっていることが分かる。
【0055】
実施の形態3によれば、第1アンプ21の入力端子VIN1Pにダミー容量素子回路26が接続することにより、ゲインエラーを改善できる。
【0056】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0057】
実施の形態では、イメージセンサへ応用について説明したが、本開示は、距離センサに内蔵されるA/D変換回路へ適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1:制御回路
2:行操作回路
3:画素部
4:参照電圧生成回路
5:カウンタ回路
6、61、61A、62:A/D変換回路
7、7A:カラムA/D変換回路
25:オフセット発生回路
26:ダミー容量素子回路
100:イメージセンサ(個体撮像装置)