(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】浴槽洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
(21)【出願番号】P 2021115343
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 永馬
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-100174(JP,A)
【文献】特開平11-206603(JP,A)
【文献】特開2009-162460(JP,A)
【文献】特開2014-152980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が完了した浴槽に対して浴槽底面に設けられた洗浄ノズルから湯水又は洗浄水を噴射して洗浄する浴槽洗浄運転を実行させる制御装置を備えた浴槽洗浄装置であって、
洗浄ノズルから噴射される湯水の流量を検出する流量検出部と、
浴槽内に貯留された浴槽水の排水が完了した排水完了を判定する排水完了判定部とを備え、
排水完了判定部は、浴槽洗浄運転開始前に、洗浄ノズルから湯水を噴射して流量検出部により検出される湯水の検出流量に基づいて排水完了を判定する浴槽洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浴槽洗浄装置において、
流量検出部が検出した湯水の流量を記憶する記憶部を備え、
排水完了判定部は、浴槽洗浄運転開始前に、最初に洗浄ノズルから湯水を第1の噴射時間噴射して流量検出部が検出した湯水の流量を初期流量として記憶部に記憶させ、その後、所定の噴射待機時間経過ごとに、洗浄ノズルから湯水を第2の噴射時間噴射して流量検出部が検出した湯水の検出流量と、記憶部に記憶させた初期流量とに基づいて排水完了を判定する浴槽洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の浴槽洗浄装置において、
排水完了判定部は、前記検出流量が、前記初期流量に基づいて算出される所定の判定流量以上の場合に排水完了と判定する浴槽洗浄装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の浴槽洗浄装置において、
浴槽の排水栓を自動で開閉させる自動排水栓を備え、
排水完了判定部は、前記初期流量を検出する動作を自動排水栓が閉状態のときに実行し、その後は自動排水栓を開状態とさせて前記検出流量を検出する動作を実行する構成とする浴槽洗浄装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の浴槽洗浄装置において、
排水完了判定部は、前記検出流量の変化に基づく排水完了判定の無い状態で所定の最大排水時間を経過した場合は、排水完了と判定する浴槽洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水を噴射して浴槽を洗浄する浴槽洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽洗浄装置において、浴槽洗浄運転を開始する際は、自動排水栓を開弁して所定の排水待機時間が経過してから洗浄ノズルから湯水を噴射する浴槽洗浄運転を開始するようにし、また、前記排水待機時間を使用者が任意に設定できるようにしたものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の浴槽洗浄装置では、排水待機時間は、使用者が任意の時間を設定するが、浴槽に残留している浴槽水の量に応じて都度最適な排水待機時間、すなわち排水完了に要する排水時間を設定するには、使用者は、浴槽洗浄運転の都度、浴槽内の浴槽水の量を目視で確認し排水時間の判断及び設定を行う必要があり、使用者には手間な作業であり負担が大きいものであった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、使用者に過度な負担が生じず、且つ、適切な排水時間の経過で浴槽洗浄運転を開始することを可能とする浴槽洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る浴槽洗浄装置は、
排水が完了した浴槽に対して浴槽底面に設けられた洗浄ノズルから湯水又は洗浄水を噴射して洗浄する浴槽洗浄運転を実行させる制御装置を備えた浴槽洗浄装置であって、
洗浄ノズルから噴射される湯水の流量を検出する流量検出部と、
浴槽内に貯留された浴槽水の排水が完了した排水完了を判定する排水完了判定部とを備え、
排水完了判定部は、浴槽洗浄運転開始前に、洗浄ノズルから湯水を噴射して流量検出部により検出される湯水の検出流量に基づいて排水完了を判定するものである。
【0007】
浴槽内に浴槽水がある場合には、浴槽底面に設けられた洗浄ノズルから湯水を噴射させたとき、浴槽内の浴槽水が洗浄ノズルから噴射する湯水の抵抗となるため、浴槽内に浴槽水がある状態と排水されて浴槽水がない状態とでは、洗浄ノズルから噴射される湯水の流量に違いが生じる。すなわち、洗浄ノズルから噴射する湯水の流量は、浴槽内に浴槽水がある状態では少なくなり、浴槽内に浴槽水がない状態では多くなる。
【0008】
前記構成によれば、排水完了判定部は、浴槽洗浄運転開始前に、例えば、洗浄ノズルから噴射する湯水の検出流量が所定の閾値以上であった場合は、浴槽内に浴槽水がない状態であると想定でき、浴槽水が排水された排水完了と判定できる。従って、排水完了判定部により浴槽水の排水完了と判定された場合に、自動的に浴槽洗浄運転を開始させることができるため、使用者が排水に要する排水時間を判断する必要がない。よって、使用者には負担が生じず、且つ、適切な排水時間の経過により浴槽洗浄運転を開始させることができる。
【0009】
前記浴槽洗浄装置の形態として、
流量検出部が検出した湯水の流量を記憶する記憶部を備え、
排水完了判定部は、浴槽洗浄運転開始前に、最初に洗浄ノズルから湯水を第1の噴射時間噴射して流量検出部が検出した湯水の流量を初期流量として記憶部に記憶させ、その後、所定の噴射待機時間経過ごとに、洗浄ノズルから湯水を第2の噴射時間噴射して流量検出部が検出した湯水の検出流量と、記憶部に記憶させた初期流量とに基づいて排水完了を判定するものとすることができる。
【0010】
前記構成によれば、記憶部に記憶させた初期流量は、浴槽内に浴槽水がある状態で洗浄ノズルから湯水を噴射したときの湯水の流量となる。従って、初期流量を記憶させた後、所定の噴射待機時間経過ごとに洗浄ノズルから湯水を噴射させ、そのときの検出流量と前記初期流量とを比較することで、浴槽内に浴槽水がある状態と浴槽水が排水されてなくなった状態とを判別して排水完了の判定が可能となる。例えば、検出流量と初期流量との差が所定の閾値を超えた場合、検出流量が初期流量を所定割合増加した流量を超えた場合などは、浴槽内に浴槽水がない状態となったと判断して排水完了と判定できる。よって、使用者には負担が生じず、且つ、適切な排水時間が経過してから浴槽洗浄運転を開始させることができる。
【0011】
前記形態の浴槽洗浄装置において、
排水完了判定部は、前記検出流量が、前記初期流量に基づいて算出される所定の判定流量以上の場合に排水完了と判定するようにしてもよい。ここで、前記判定流量は、例えば、初期流量に一定流量を加算した流量値、又は、初期流量を所定割合増加した流量値などを含む。
【0012】
前記構成より、前記検出流量が判定流量以上の場合、浴槽内の浴槽水が全て排水されたことで洗浄ノズルからの噴射時における抵抗がなくなり、その結果、検出流量が判定流量以上となったと想定できるため、適切な排水完了判定が可能となる。
【0013】
前記各形態の浴槽洗浄装置において、
浴槽の排水栓を自動で開閉させる自動排水栓を備える場合、
排水完了判定部は、前記初期流量を検出する動作を自動排水栓が閉状態のときに実行し、その後は自動排水栓を開状態とさせて前記検出流量を検出する動作を実行する構成とすることができる。
【0014】
前記構成によれば、自動排水栓が閉状態で初期流量の検出動作を実行するため、浴槽内に浴槽水が残留している可能性が高い状態で初期流量の検出を行うことができる。従って、この初期流量と、自動排水栓が開状態とさせたときの検出流量とを比較することで、より正確に排水完了の判定を行うことができる。
【0015】
前記各々の浴槽洗浄装置において、
排水完了判定部は、前記検出流量の変化に基づく排水完了判定の無い状態で所定の最大排水時間を経過した場合は、排水完了と判定するようにしてもよい。
【0016】
例えば、浴槽内に浴槽水が残留していない状態にて排水完了判定動作を開始した場合、洗浄ノズルから噴射する湯水の検出流量は何時まで経っても変化しないため、検出流量の変化に基づいて排水完了判定を行う場合は排水完了判定がなされない状態となる。すなわち、浴槽内に浴槽水がない状態では、例えば、自動排水栓を有さない浴槽の構成であれば排水完了判定動作開始時から何時まで経っても検出流量が変化せず、また、自動排水栓を有する浴槽の構成であれば自動排水栓を開状態としてから何時まで経っても検出流量が変化せず、その結果、検出流量の変化に基づいては排水完了判定の無い状態となる。
【0017】
前記構成によれば、前記検出流量に基づいた排水完了判定として、前記検出流量の変化に基づく排水完了判定の無い状態で最大排水時間が経過すると、排水完了と判定されるため、使用者に負担をかけずに排水完了を判定できる。よって、使用者に負担をかけることなく浴槽洗浄運転を開始させることができる。前記最大排水時間は、例えば、排水栓を開状態にしてから浴槽が満水又は満水に近い状態から空の状態になるまでに要する排水時間などとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1による浴槽洗浄装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】浴槽洗浄運転の工程を説明するためのフローチャートである。
【
図3】実施形態1による浴槽洗浄装置における排水完了判定処理の制御動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態2による浴槽洗浄装置における排水完了判定処理の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1の浴槽洗浄装置1は、主な構成として、洗浄ユニット2、制御装置3を備えている。浴槽洗浄装置1には、浴槽洗浄装置1を遠隔操作する洗浄リモコン4が接続されている。浴槽洗浄装置1には、湯水供給源として図示しない給湯器又は貯湯式温水器等の熱源機が接続されているが、水道等の水供給源に直接接続される構成でもよい。
【0020】
浴槽5の上面開放部は、浴槽洗浄運転時には使用者によって浴槽蓋51を浴槽5上に配置することで閉じられる。浴槽5の底壁には、湯水又は洗浄水を噴射する洗浄ノズル6と、浴槽5内の浴槽水を貯留又は排水させる自動開閉式の自動排水栓7とが設けられている。浴槽5の上面フランジ壁には、自動排水栓7の開閉駆動部71と、洗剤タンク8とが設置されている。なお、浴槽5には、自動排水栓7ではなく、手動開閉式の排水栓を設けたものでもよい。
【0021】
洗浄ユニット2は、浴槽5の側面のエプロン内に取り付けられており、本体ケース内に給湯配管21と洗剤配管22とが配設されている。
【0022】
給湯配管21は、上流端の給水口には熱源機から引き出された給湯導入管9が接続され、下流端の出水口には洗浄ノズル6と通じた洗浄管23が接続されている。給湯配管21には、洗浄弁27が設けられており、洗浄弁27を開弁することで給湯導入管9から導入された湯水が洗浄ノズル6から浴槽5内に噴射される。また、給湯配管21には、給湯導入管9を接続する給水口と洗浄弁27との間に流量検出部26が設けられており、この流量検出部26によって、洗浄弁27が開弁されて給湯配管21を流れて洗浄ノズル6から噴射する湯水の流量が検出される。流量検出部26としては、羽根車を内蔵し、配管内を流れる流体の流速に基づいてリアルタイムに流量を検出する流量センサ等を使用できる。
【0023】
洗剤配管22は、上流端には洗剤タンク8から引き出された洗剤管24が接続され、下流端は給湯配管21に接続されている。洗剤配管22と給湯配管21との合流部にはベンチュリ25が設けられている。洗剤配管22には、洗剤弁28が設けられており、洗剤弁28を開弁することで洗剤タンク8内の洗剤原液が給湯配管21内の湯水と混合された洗浄水となって洗浄ノズル6から浴槽5内に噴射される。なお、実施形態1における洗浄ユニット2は、湯水供給源から供給される湯水の圧力を利用して洗浄ノズル6から浴槽5内に湯水又は洗浄水を噴射する直圧式の構成であるが、湯水供給源から供給される湯水をシスターン等の貯留タンクに貯留し、貯留タンク内の湯水をポンプで圧送して洗浄ノズル6から浴槽5内に湯水又は洗浄水を噴射するポンプ式の構成としてもよい。
【0024】
制御装置3は、浴槽洗浄装置1の動作を制御するための制御回路等で構成されており、また、洗浄ユニット2、自動排水栓7の開閉駆動部71、洗浄リモコン4等の各部と通信線又は無線により通信可能に接続されている。本実施形態1では、制御装置3の主要部として、排水完了判定部31と、記憶部32とを有する。排水完了判定部31は、浴槽洗浄運転開始前に浴槽5内に貯留された浴槽水の排水が完了した排水完了を判定する構成部分である。記憶部32は、排水完了判定に際して流量検出部26が検出した湯水の流量を記憶し、また、排水完了判定に用いる閾値、設定時間等の各種の設定値等も記憶する構成部分である。また、制御装置3には、時間を計時するタイマ部、各種の値を算出する算出部等も有する。
【0025】
次に、浴槽洗浄装置1による浴槽洗浄運転の工程を説明する。
浴槽洗浄運転は、
図2に示すように、予備洗浄工程、洗浄工程、すすぎ工程の各工程がこの順に行われるが、この浴槽洗浄運転開始前には排水工程が行われる。
【0026】
使用者が洗浄リモコン4の洗浄スイッチをON操作すると、まず、排水工程が実行され(ステップS-I)、浴槽5の自動排水栓7を開状態にして浴槽5内に貯留されている浴槽水が排水される。排水完了により、自動的に浴槽洗浄運転が開始される。本実施形態1の浴槽洗浄装置1では、排水工程において浴槽水の排水完了を自動的に判定する処理を行うものであり、この排水完了判定の制御動作については後述する。
【0027】
排水工程完了後、洗浄弁27を開弁して湯水供給源から湯水を導入して給湯配管21及び洗浄管23を通して洗浄ノズル6から浴槽5の内壁に湯水を噴射する予備洗浄工程(ステップS-II)を行う。この洗浄ノズル6からの湯水の噴射を所定の予備洗浄時間行った後、洗浄弁27を閉弁して洗浄ノズル6からの湯水の噴射を停止して予備洗浄工程を完了する。
【0028】
予備洗浄工程完了後、洗浄弁27と洗剤弁28とを開弁して給湯配管21内の湯水に洗剤タンク8内の洗剤原液を混入させた洗浄水を洗浄管23を通して洗浄ノズル6から浴槽5の内壁に噴射する洗浄工程(ステップS-III)を行う。洗浄ノズル6からの洗浄水の噴射を所定の洗浄時間行った後、洗浄弁27及び洗剤弁28を閉弁して洗浄水の噴射を停止して洗浄工程を完了する。なお、洗浄工程は、洗浄水を噴射する噴射動作と、この噴射停止後に所定時間の経過を待つ待機動作とを1サイクルとして、このサイクルを複数回行うようにしてもよい。
【0029】
洗浄工程完了後、洗浄弁27を開弁して湯水供給源から湯水を導入して給湯配管21及び洗浄管23を通して洗浄ノズル6から浴槽5の内壁に湯水を噴射するすすぎ工程(ステップS-IV)を行う。この洗浄ノズル6からの湯水の噴射を所定のすすぎ時間行った後、洗浄弁27を閉弁して洗浄ノズル6からの湯水の噴射を停止してすすぎ工程を完了する。このすすぎ工程の完了により浴槽洗浄運転を終了する。
【0030】
次に、排水工程における排水完了判定の制御動作について説明する。排水完了判定のための処理は、制御装置3によって実行される処理である。
図3に示すように、排水工程が開始すると、制御装置3は、ステップS1にて、自動排水栓7を閉弁するように制御して自動排水栓7を閉弁状態とし、続けて、ステップS2にて、洗浄弁27を開弁するように制御して洗浄ノズル6から湯水を噴射させ、ステップS3にて、洗浄ノズル6から湯水を第1の噴射時間Ta(例えば、2秒間)噴射させたときの湯水の流量を流量検出部26で検出し、このとき流量検出部26が検出した湯水の流量を初期流量Aとして記憶部32に記憶させる。
【0031】
ここでステップS1にて自動排水栓7を閉弁させるのは、使用者により洗浄リモコン4での洗浄スイッチ操作の際に自動排水栓7が開弁された場合でも、排水工程開始の直前であれば浴槽5内に浴槽水が残っているため、排水工程開始時に自動排水栓7を閉弁させることで、ステップS2では、より確実に浴槽5内に浴槽水がある状態で洗浄ノズル6から湯水の噴射を行うことができる。従って、ステップS3では、浴槽5内に浴槽水がある状態で洗浄ノズル6から湯水を噴射したときの湯水の流量である初期流量Aを確実に検出できる。
【0032】
第1の噴射時間Taが経過すると、制御装置3は、ステップS4にて、洗浄弁27を閉弁させるように制御して洗浄ノズル6からの湯水の噴射を停止し、ステップS5にて、自動排水栓7を開弁させるように制御して自動排水栓7を開状態にして浴槽5内に溜まっている浴槽水の排水を開始する。
【0033】
次いで、ステップS6にて、自動排水栓7を開弁してから所定の噴射待機時間Tw(例えば、10秒間)が経過すると、制御装置3は、ステップS7にて、洗浄弁27を開弁させるように制御して洗浄ノズル6から湯水を噴射させ、ステップS8にて、洗浄ノズル6から湯水を第2の噴射時間Tb(例えば、2秒間)噴射させたときの湯水の流量を流量検出部26で検出し、このとき流量検出部26が検出した湯水の流量を検出流量Bとする。
【0034】
第2の噴射時間Tbが経過すると、ステップ9にて、排水完了判定部31は、浴槽5内に貯留されていた浴槽水の排水完了の判定を行う。この排水完了判定は、ステップS8で検出した湯水の検出流量Bと、ステップS3で記憶部32に記憶させた初期流量Aとに基づいて行う。本実施形態1では、排水完了の判定方法として、検出流量Bと初期流量Aとの差が設定閾値を超えた場合(検出流量B-初期流量A>設定閾値)、排水完了と判定する。
【0035】
検出流量Bと初期流量Aとに基づいて排水完了判定するのは、以下の理由による。浴槽5内に浴槽水がある場合には、浴槽5底面に設けられた洗浄ノズル6から湯水を噴射させたとき、浴槽5内の浴槽水が洗浄ノズル6から噴射する湯水の抵抗となるため、浴槽5内に浴槽水がある状態と排水されて浴槽水がない状態とでは、洗浄ノズル6から噴射される湯水の流量に違いが生じる。すなわち、洗浄ノズル6から噴射する湯水の流量は、浴槽5内に浴槽水がある状態では少なくなり、浴槽5内に浴槽水がない状態では多くなる。ステップS3で記憶した初期流量Aは、浴槽5内に浴槽水がある状態で洗浄ノズル6から湯水を噴射したときの湯水の流量である。ステップS8で検出した検出流量Bは、自動排水栓7の開弁によって、浴槽5内の浴槽水が排水中である状態又は浴槽水が排水されて浴槽5内に浴槽水がない状態で洗浄ノズル6から湯水を噴射したときの湯水の流量である。従って、検出流量Bと初期流量Aとを比較することで、浴槽5内に浴槽水がある状態か、あるいは浴槽水が排水されて浴槽5内に浴槽水が無い状態かを判別でき、排水完了の判定が可能となる。
【0036】
なお、排水完了の判定方法は、前記判定方法に限らず、検出流量Bが初期流量Aよりも所定流量以上多くなることで排水完了と認められる様々な判定方法を採用できる。例えば、検出流量Bが、初期流量Aに基づいて算出される所定の判定流量以上(検出流量B≧判定流量)の場合に排水完了と判定するようにしてもよい。この場合、前記判定流量として、例えば、初期流量Aに所定の閾値を加算した流量値(判定流量=初期流量A+閾値)、又は、初期流量Aを所定割合(例えば、1.1~1.2倍など)で増大した流量値(判定流量=初期流量A×所定割合)などのように、初期流量Aよりも大きい流量値を判定流量とすることができる。これによれば、検出流量Bが判定流量以上の場合、浴槽5内の浴槽水が全て排水されたことで洗浄ノズル6からの湯水の噴射時における抵抗がなくなり、その結果、検出流量Bが判定流量以上となったと想定できるため、適切な排水完了判定が可能となる。
【0037】
また、排水工程開始の際に初期流量Aを検出(ステップS3)することで、浴槽洗浄装置1の設置現場環境(地域、マンションの階、湯水の使用状況など)によって水道圧が異なるために湯水供給源から浴槽洗浄装置1に供給される湯水の供給流量が様々であっても、現場環境に応じて適切な基準となる初期流量Aを取得できる。
【0038】
ステップS9において、排水完了判定部31により、検出流量Bと初期流量Aとの差が設定閾値を超えていなかった場合は浴槽5内に浴槽水がある状態(未だ排水中)であると判定され、処理をステップS10へ移行させる。ステップS10では、制御装置3は、洗浄弁27を閉弁させるように制御して洗浄ノズル6からの湯水の噴射を停止して、処理をステップS6へ戻す。この場合、ステップS6では、ステップS10で洗浄弁27を閉弁してからの噴射待機時間Tw(例えば、10秒間)が計時され、ステップS9で排水完了が判定されるまで、排水確認の処理(ステップS6~ステップS10)を繰り返し行う。すなわち、ステップS5で自動排水栓7を開弁した後は、噴射待機時間Twが経過する度に洗浄弁27を開弁して洗浄ノズル6から湯水を第2の噴射時間Tb噴射して検出流量Bを取得し、排水完了判定を行う。なお、検出流量Bを検出するための第2の噴射時間Tb(ステップS8)と、初期流量Aを検出するための第1の噴射時間Ta(ステップS3)とは、同一の設定時間でもよいし、異なる設定時間でもよい。例えば、排水完了判定のステップS9をできるだけ早く行うため、第2の噴射時間Tbの方を短い設定時間としてもよい。
【0039】
一方、ステップS9において、排水完了判定部31により、検出流量Bと初期流量Aとの差が設定閾値を超えた場合は排水完了と判定される。この場合、ステップS11にて、制御装置3は、洗浄弁27を閉弁させるように制御して洗浄ノズル6からの湯水の噴射を停止して、排水工程を完了する。制御装置3は、排水工程完了により浴槽洗浄運転を開始させ、予備洗浄工程、洗浄工程、すすぎ工程が順次実行される。
【0040】
以上より、実施形態1の浴槽洗浄装置1によれば、排水完了判定部31により浴槽水の排水完了を自動判定でき、排水完了と判定されると自動的に浴槽洗浄運転を開始させることができるため、使用者は、浴槽洗浄運転開始時に浴槽水の排水に要する排水時間を判断する必要がない。よって、使用者には負担が生じず、且つ、適切な排水時間の経過により浴槽洗浄運転を開始させることができる。
【0041】
なお、実施形態1において、自動排水栓7を有しない構成の場合、
図3に示す排水完了判定の制御動作では、使用者よる排水栓の開弁によって排水工程が開始され、ステップS1、ステップS5の処理は無いものとする。
【0042】
(実施形態2)
実施形態2の浴槽洗浄装置1は、制御装置3において検出流量Bに基づいた排水完了判定として、検出流量Bの変化に基づく排水完了判定が無い状態で所定の最大排水時間Txを経過した場合は、排水完了と判定する制御構成を備える。すなわち、排水工程を開始して自動排水栓7を開状態としてからの経過時間が、所定の最大排水時間Txを経過した場合は、排水完了と判定する。最大排水時間Txは、例えば、自動排水栓7の開弁によって浴槽5が満水又は満水に近い状態から空の状態になるまでに要する排水時間などとすることができる。
【0043】
次に、実施形態2の浴槽洗浄装置1において、排水工程における排水完了判定の制御動作について、実施形態1の場合と対比しつつ説明する。
図4に示すように、排水工程が開始すると、実施形態1の場合(
図3のステップS1~ステップS5)と同様に、自動排水栓7を閉状態にして洗浄ノズル6から湯水を第1の噴射時間Ta噴射し、このとき検出される湯水の流量を初期流量Aとして記憶部32に記憶させ、その後、自動排水栓7を開状態にする(ステップS21~ステップS25)。このとき、実施形態2では、自動排水栓7を開状態に制御すると、ステップS-1にて、タイマにより経過時間の計時を開始する。
【0044】
次いで、実施形態1の場合(
図3のステップS6~ステップS9)と同様に、所定の噴射待機時間Twの経過ごとに、洗浄ノズル6から湯水を第2の噴射時間Tb噴射し、このとき検出される湯水の流量を検出流量Bとし、この検出流量Bと、記憶部32に記憶させた初期流量Aとに基づいて排水完了の判定を行う(ステップS26~ステップS29)。
【0045】
ステップS29の排水完了判定で、排水完了と判定されると洗浄弁27を閉弁(ステップS31)して排水工程を完了するが、ステップS29の排水完了判定で、まだ排水が完了していないと判定された場合、実施形態2では、ステップS-2にて、タイマで計時している経過時間が、所定の最大排水時間Txを経過したか否か判断される。このステップS-2で、タイマの経過時間が最大排水時間Txを経過していないと判断された場合は、実施形態1の場合(
図3のステップS10)と同様に、処理をステップS30へ移行して洗浄弁27を閉弁させて洗浄ノズル6からの湯水の噴射を停止して、排水完了が判定されるまで、排水確認の処理(ステップS26~ステップS29→ステップS-2→ステップS30)を繰り返し行う。
【0046】
一方、ステップS-2にて、タイマの経過時間が最大排水時間Txを経過したと判断された場合は、排水完了判定部31により排水完了と判定される。この場合、制御装置3は、洗浄弁27を閉弁(ステップS31)して排水工程を完了し、浴槽洗浄運転を開始させる。
【0047】
例えば、浴槽5内に浴槽水が残留していない状態にて排水完了判定動作を開始した場合、洗浄ノズル6から噴射する湯水の流量は、当初から何時まで経っても変化しないため、初期流量Aと比較した検出流量Bの変化に基づいては排水完了判定の無い状態となる。この点、実施形態2の浴槽洗浄装置1によれば、検出流量Bに基づいた排水完了判定として、検出流量Bの変化に基づく排水完了判定の無い状態で最大排水時間Txが経過すると、排水完了と判定されるため、使用者に負担をかけずに排水完了を判定できる。よって、使用者に負担をかけることなく浴槽洗浄運転を開始させることができる。
【0048】
なお、実施形態2において、自動排水栓7を有しない構成の場合、
図4に示す排水完了判定の制御動作では、使用者よる排水栓の開弁によって排水工程が開始され、ステップS21、ステップS25の処理は無いものとする。また、自動排水栓7を有しない構成の場合のタイマによる経過時間の計時開始(ステップS-1)は、排水完了判定動作開始時点(例えば、ステップS22で洗浄弁27の開弁指示時点)、又は、前記排水工程開始時点とすることができる。
上述以外の実施形態2における構成及び作用効果は、実施形態1の場合と同様である。
【0049】
(他の実施形態)
前記実施形態1、2では、排水完了判定に際し、初期流量Aを検出してこの初期流量Aと、排水栓(自動排水栓7又は手動式の排水栓)の開弁後の検出流量Bとに基づいて排水完了を判定するが、他の実施形態では、前記初期流量Aを検出することなく前記検出流量Bに基づいて排水完了を判定するものとする。
【0050】
この他の実施形態では、排水完了判定部31は、排水工程開始により排水栓が開弁すると、定期的(例えば、10秒~30秒の一定間隔)に、洗浄ノズル6から湯水を所定の噴射時間(例えば、2秒間)噴射して、このとき流量検出部26で検出する湯水の検出流量Bが、所定の閾値以上であった場合は、浴槽水が排水された排水完了と判定する。前記閾値としては、浴槽5内に浴槽水がある状態で洗浄ノズル6から湯水を噴射したときの湯水の流量以上の流量値が予め設定され、例えば、浴槽5を略満水にした状態で洗浄ノズル6から湯水を噴射したときの湯水の流量値としてもよい。これにより、前記検出流量Bが閾値以上であった場合は、浴槽5内に浴槽水がない状態であると想定できるため、浴槽5内の浴槽水が全て排水されて排水完了と判定できる。また、前記閾値を予め設定することで、排水工程開始時に浴槽5内に浴槽水がない状態であっても直ちに排水完了と判定できる。
【0051】
なお、他の実施形態の場合、前記閾値を決定するとき洗浄ユニット2の構成が直圧式かポンプ圧式かの配慮が必要となる。すなわち、浴槽洗浄装置1を設置する現場環境(地域、マンションの階など)によって水道圧が異なるため、洗浄ユニット2が直圧式の場合は、湯水供給源での供給圧によって洗浄ノズル6から噴射される湯水の流量が様々となる。従って、洗浄ユニット2が直圧式の場合、浴槽洗浄装置1を現場で設置したとき等の試運転時に浴槽5内に浴槽水を溜めた状態(例えば、満水状態)にして洗浄ノズル6から湯水を噴射させたときの湯水の流量の実測値に基づいて所定の前記閾値を設定すればよい。洗浄ユニット2がポンプ圧式の場合は、湯水を圧送するポンプ圧が一定であるため、洗浄ノズル6から噴射される湯水の流量が一定である。従って、洗浄ユニット2で設定されたポンプ圧に基づいて浴槽5内に浴槽水がある状態(例えば、満水状態)で洗浄ノズル6から湯水を噴射させたときの湯水の流量を算出又は実測等して所定の前記閾値を決定し、浴槽洗浄装置1の工場出荷時等に予め設定することができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 浴槽洗浄装置
2 洗浄ユニット
3 制御装置
4 洗浄リモコン
5 浴槽
6 洗浄ノズル
7 自動排水栓
8 洗剤タンク
9 給湯導入管
21 給湯配管
22 洗剤配管
23 洗浄管
24 洗剤管
25 ベンチュリ
26 流量検出部
27 洗浄弁
28 洗剤弁
31 排水完了判定部
32 記憶部
51 浴槽蓋
71 開閉駆動部
A 初期流量
B 検出流量
Ta 第1の噴射時間
Tb 第2の噴射時間
Tw 噴射待機時間
Tx 最大排水時間