(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】管路の一体化長さの設計支援方法及び設計支援装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20241114BHJP
G06F 113/14 20200101ALN20241114BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F113:14
(21)【出願番号】P 2021120155
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 新平
(72)【発明者】
【氏名】林 光夫
(72)【発明者】
【氏名】丸山 喜久
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-171070(JP,A)
【文献】特開2010-044707(JP,A)
【文献】特開2000-040094(JP,A)
【文献】日本ダクタイル鉄管協会,,”ダクタイル鉄管管路配管設計標準マニュアル(配 管図面作成用)JDPA T 27”,日本,一般社団法人日本ダクタイル鉄管協会,2015年06月30日,pp.8-33,<https://www.jdpa.gr.jp/down load/haikansekkei/T27haikansekkei.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
G06F 113/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図上で指定された始点から終点に到る複数の交点に所定の異形管が配置され、各交点を結ぶ距離と直管の長さとに基づいて求まる直管の本数及び必要な切管の長さに従って、各交点の間に直管及び必要な切管が配置され、各異形管の種類、呼び径及び設計水圧が設定された管路図に対して、必要となる離脱防止継手を決定するために、コンピュータを用いて実行する管路の一体化長さの設計支援方法であって、
前記管路図の始点から終点に向けて順番に一体化対象となる異形管を抽出する第1ステップと、
前記第1ステップで抽出した第1の異形管に対して第1の一体化長さを求める第2ステップと、
前記第2ステップで求めた前記第1の一体化長さを、前記第1の異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第1の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第3ステップと、
前記第3ステップで設定した前記第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在すると、前記第1の異形管と前記第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さを求める第4ステップと、
前記第4ステップで求めた前記第2の一体化長さを、前記複合異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第2の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第5ステップと、
を含み、
前記第1ステップで第1の異形管を抽出する度に、前記第2ステップから前記第5ステップを繰り返すことを特徴とする管路の一体化長さの設計支援方法。
【請求項2】
前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さは、各異形管または各複合異形管に応じて予め設定されたテーブルデータに基づいて演算導出する値である請求項1記載の管路の一体化長さの設計支援方法。
【請求項3】
前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さが前記テーブルデータに規定されていない場合には、前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さは、予め設定された数式に基づいて演算導出する値である請求項2記載の管路の一体化長さの設計支援方法。
【請求項4】
予め設定した異形管の種類ごとに前記第1ステップ以降の処理を繰り返す請求項1から3の何れかに記載の管路の一体化長さの設計支援方法。
【請求項5】
前記第3ステップで離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となる切管の長さを設定する第6ステップを備えている請求項1から4の何れかに記載の管路の一体化長さの設計支援方法。
【請求項6】
地図上で指定された始点から終点に到る複数の交点に所定の異形管が配置され、各交点を結ぶ距離と直管の長さとに基づいて求まる直管の本数及び必要な切管の長さに従って、各交点の間に直管及び必要な切管が配置され、各異形管の種類、呼び径及び設計水圧が設定された管路図に対して、必要となる離脱防止継手を決定するための管路の一体化長さの設計支援装置であって、
前記管路図の始点から終点に向けて順番に一体化対象となる異形管を抽出する第1演算部と、
前記第1演算部で抽出した第1の異形管に対して第1の一体化長さを求める第2演算部と、
前記第2演算部で求めた前記第1の一体化長さを、前記第1の異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第1の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第3演算部と、
前記第3演算部で設定した前記第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在すると、前記第1の異形管と前記第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さを求める第4演算部と、
前記第4演算部で求めた前記第2の一体化長さを、前記複合異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第2の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第5演算部と、
を備えている管路の一体化長さの設計支援装置。
【請求項7】
各異形管または各複合異形管に応じて前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さを規定するテーブルデータを備え、前記第2演算部及び前記第4演算部は前記テーブルデータに基づいて各一体化長さを算出する請求項6記載の管路の一体化長さの設計支援装置。
【請求項8】
前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さが前記テーブルデータに規定されていない場合には、前記第2演算部及び前記第4演算部は、予め設定された数式に基づいて各一体化長さを算出する請求項7記載の管路の一体化長さの設計支援装置。
【請求項9】
前記第3演算部で離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となる切管の長さを設定する第6演算部を備えている請求項6から8の何れかに記載の管路の一体化長さの設計支援装置。
【請求項10】
前記第3演算部で離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となるライナの数を導出する請求項6から8の何れかに記載の管路の一体化長さの設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の一体化長さの設計支援方法及び設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
曲管やT字管などの異形管の近傍に、K形などの一般継手やGX形やNS形などの伸縮継手、あるいは伸縮可とう管などがあると、水圧による不平均力で異形管とその前後に接続された直管などを含む異形管部が移動し、近傍の地中埋設物に影響を与える虞がある。このため、地中で管路を安定させるためには、確実な異形管防護を行うことが重要となる。
【0003】
不平均力とは、管路の屈曲部、分岐部、末端の栓やバルブなどに、水圧によって管を動かそうと作用する力をいう。なお、K形、GX形、NS形などの名称は、日本ダクタイル鉄管協会により定められたダクタイル鉄管の継手の種類を表す名称である。
【0004】
鎖構造管路では、異形管の前後に接続される管を離脱防止継手で一体化し、管と土との摩擦力や管背面の地盤反力、あるいは離脱防止継手の曲げ剛性で不平均力を保持する方法が採用されている。そのために、異形管防護は、原則として適切な一体化長さを確保することによって行なわれる。
【0005】
特許文献1には、管路内を流れる流体の圧力の影響による不平均力が発生する箇所の周辺の管継手部に対し、管継手部を構成する管同士を互いに固定して一体化するための管路の一体化設計システムが開示されている。
【0006】
当該管路の一体化設計システムは、管路における不平均力が発生する箇所を特定可能な発生箇所特定手段と、不平均力を算出し、算出結果及び不平均力が発生する箇所の形状に基づいて管路を一体化する必要がある区間を算出可能な一体化区間算出手段とを有することを特徴とする。
【0007】
特許文献1に記載されているように、一体化長さは、異形管の種類や形態に応じて定められた計算式に土被り、設計水圧などの管路の設計条件を入力することによって計算することができ、これによって、個々の異形管部ごとに条件に応じた最適な一体化長さを適用していくことが重要となる。また、一体化すべき代表的な管路形状及びその管路形状に対応する一体化長さは、一般社団法人である日本ダクタイル鉄管協会が提供する技術資料「JDPA T 57」に早見表として例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された管路の一体化設計システムでは、曲管、T字管など予め登録された個々の管形状データに基づいて不平均力が発生する異形管を配管図から自動抽出し、自動抽出した異形管に対して一体化長さを算出するように構成されている。
【0010】
しかし、実際の管路は複数の異形管部が互いに影響し合うような態様で接続される場合が多く、そのような場合には複数の異形管部を纏めて一体化する必要があるのであるが、上述した技術資料「JDPA T 57」に掲載された早見表にも異形管部の全ての組合せが網羅されているわけではないため、実際には管路の一体化設計システムを操作する設計者が個々に一体化長さを設定する異形管部を特定せざるを得なかった。そのため、設計者の熟練度により結果が異なり、設計結果にばらつきが生じていた。
【0011】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、管路形状や設計者の熟練度にかかわらず、性能品質が安定した設計が可能な管路の一体化長さの設計支援方法及び設計支援装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明による管路の一体化長さの設計支援方法の第一の特徴構成は、地図上で指定された始点から終点に到る複数の交点に所定の異形管が配置され、各交点を結ぶ距離と直管の長さとに基づいて求まる直管の本数及び必要な切管の長さに従って、各交点の間に直管及び必要な切管が配置され、各異形管の種類、呼び径及び設計水圧が設定された管路図に対して、必要となる離脱防止継手を決定するために、コンピュータを用いて実行する管路の一体化長さの設計支援方法であって、前記管路図の始点から終点に向けて順番に一体化対象となる異形管を抽出する第1ステップと、前記第1ステップで抽出した第1の異形管に対して第1の一体化長さを求める第2ステップと、前記第2ステップで求めた前記第1の一体化長さを、前記第1の異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第1の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第3ステップと、前記第3ステップで設定した前記第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在すると、前記第1の異形管と前記第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さを求める第4ステップと、前記第4ステップで求めた前記第2の一体化長さを、前記複合異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第2の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第5ステップと、を含み、前記第1ステップで第1の異形管を抽出する度に、前記第2ステップから前記第5ステップを繰り返す点にある。
【0013】
第1ステップでは、管路図の始点から終点に向けて順番に一体化対象となる異形管が自動抽出され、第1ステップで抽出した第1の異形管に対して、第2ステップでは、第1の一体化長さが求められる。第3ステップでは、第2ステップで求めた第1の一体化長さを、第1の異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、第1の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手が離脱防止継手に設定される。
【0014】
第3ステップで設定した第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在すると、第4ステップでは、第1の異形管と第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さが求められる。そして、第4ステップで求めた第2の一体化長さが、複合異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定される。第5ステップでは、第2の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手が離脱防止継手に設定される。
【0015】
第1ステップで第1の異形管を抽出する度に、第2ステップから第5ステップが繰り返されることで、管路図の始点から終点に向けて順に抽出された第1の異形管に対して第1の一体化長さを設定するか、或いは第1の異形管と第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さを設定するかが繰り返されることで、配管図に含まれる全ての異形管に対して同一の手順で一体化長さが設計される。
【0016】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さは、各異形管または各複合異形管に応じて予め設定されたテーブルデータに基づいて演算導出する値である点にある。
【0017】
各異形管または各複合異形管に応じて予め一体化長さを定めたテーブルデータを準備しておくことにより、設計者の熟練度に左右されることなく、第1の一体化長さ及び第2の一体化長さを適切に求めることができる。
【0018】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さが前記テーブルデータに規定されていない場合には、前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さは、予め設定された数式に基づいて演算導出する値である点にある。
【0019】
テーブルデータに規定されていない異形管または複合異形管がある場合には、予めそれらに対応した一体化長さを求めることができる数式を定めておくことにより、一体化長さを適切に求めることができる。
【0020】
同第三の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、予め設定した異形管の種類ごとに前記第1ステップ以降の処理を繰り返す点にある。
【0021】
異形管の種類に応じて一体化長さを求めるアルゴリズムが異なる場合であっても、異形管の種類ごとに第1ステップ以降の処理を繰り返すことで、オペレータの混乱を招くことなく適切に処理することができる。
【0022】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記第3ステップで離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となる切管の長さを設定する第6ステップを備えている点にある。
【0023】
離脱防止継手に設定された直管や切管の継手部に配されるライナにより、管路長さが変化することになる。そのような場合でも、第6ステップを実行して切管の長さを調整することにより、管路長さを設計値に維持することができる。
【0024】
本発明による管路の一体化長さの設計支援装置の第一の特徴構成は、地図上で指定された始点から終点に到る複数の交点に所定の異形管が配置され、各交点を結ぶ距離と直管の長さとに基づいて求まる直管の本数及び必要な切管の長さに従って、各交点の間に直管及び必要な切管が配置され、各異形管の種類、呼び径及び設計水圧が設定された管路図に対して、必要となる離脱防止継手を決定するための管路の一体化長さの設計支援装置であって、前記管路図の始点から終点に向けて順番に一体化対象となる異形管を抽出する第1演算部と、前記第1演算部で抽出した第1の異形管に対して第1の一体化長さを求める第2演算部と、前記第2演算部で求めた前記第1の一体化長さを、前記第1の異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第1の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第3演算部と、前記第3演算部で設定した前記第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在すると、前記第1の異形管と前記第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さを求める第4演算部と、前記第4演算部で求めた前記第2の一体化長さを、前記複合異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、前記第2の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第5演算部と、を備えている点にある。
【0025】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、各異形管または各複合異形管に応じて前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さを規定するテーブルデータを備え、前記第2演算部及び前記第4演算部は前記テーブルデータに基づいて各一体化長さを算出する点にある。
【0026】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記第1の一体化長さ及び前記第2の一体化長さが前記テーブルデータに規定されていない場合には、前記第2演算部及び前記第4演算部は、予め設定された数式に基づいて各一体化長さを算出する点にある。
【0027】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記第3演算部で離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となる切管の長さを設定する第6演算部を備えている点にある。
【0028】
同第五の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記第3演算部で離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となるライナの数を導出する点にある。
【0029】
一体化に伴って必要となる部品であるライナの数を正確に管理できるようになる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した通り、本発明によれば、設計者の熟練度にかかわらず、性能品質が安定した管路設計が可能な管路の一体化長さの設計支援方法及び設計支援装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による管路の一体化長さの設計支援装置の説明図
【
図2】(a)は指定された交点を結ぶ主管と分岐管のルート説明図、(b)は一体化長さの設計対象となる管路図の説明図、(c)は一体化長さの設計の次に行われ、直管が屈曲配置された管路図の説明図
【
図3】(a)は直管の継手部の断面構造を示す説明図、(b)は離脱防止された直管の継手部の断面構造を示す説明図、(C)は異形管の継手部の断面構造を示す説明図、(d)は曲管に対して設定された一体化長さの範囲を示す説明図
【
図4】(a)は呼び径75~300mmの曲管及びT字管の一体化処理の適用条件の説明図、(b)は呼び径及び設計水圧により規定される一体化長さの説明図
【
図5】(a)は呼び径350、400mmの曲管及びT字管の一体化処理の適用条件の説明図、(b)は呼び径及び設計水圧により規定される曲管の一体化長さの説明図、(c)は呼び径及び設計水圧により規定されるT字管の一体化長さの説明図、
【
図6】一体化処理の全体の流れを示すフローチャート
【
図7】
図6に示す異形管一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図8】
図7に示す各一体化処理の詳細手順を示すフローチャート
【
図9】一体化処理の初期に実行される曲管部の分類処理の手順を示すフローチャート
【
図10】曲管部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図11】曲管部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図12】T字管部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図13】T字管部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図14】T字管部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図15】片落管部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図16】片落管部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図17】仕切弁部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図18】仕切弁部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図19】管端部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図20】管端部の一体化処理の手順を示すフローチャート
【
図23】曲管と片落管が隣接する場合の一体化処理の説明図
【
図25】(a)は一体化処理の実行前の切管の長さの説明図、(b)は一体化処理後に調整された切管の長さの説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明による管路の一体化長さの設計支援方法及び設計支援装置を図面に基づいて説明する。
【0033】
[管路の一体化長さの設計支援装置の構成]
図1には、管路の一体化長さの設計支援装置10(以下、「設計支援装置10」と記す。)の機能ブロック構成が示されている。設計支援装置10は、計算機本体10Aと、計算機本体10Aに接続された入力機器10B、表示機器10C及び記憶装置10Dなどを備えている。
【0034】
計算機本体10Aとして汎用のパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータなど、入力機器10Bとしてマウスなどのポインティングデバイスやキーボードなど、表示機器10Cとしてタッチパネル式の液晶ディスプレイやプリンタなど、記憶装置10Dとしてハードディスクなどが好適に用いられる。なお、記憶装置10Dは遠隔地のデータベースサーバに構築され、インターネットなどの通信媒体を介して計算機本体10Aと接続される態様であってもよい。
【0035】
記憶装置10Dには、管路が敷設される地域の地図、当該地域に布設される管路図、管路図を構成する直管、異形管などの管種類と、呼び径及び管長、本数などを含む部品情報が格納されるとともに、様々な異形管または複合異形管に対して必要となる一体化長さを規定したテーブルデータ(以下、「早見表」とも記す。)や、一体化長さを求めるために必要となる計算式が格納されている。
【0036】
図2(a)~(c)には、一体化処理の対象となる管路図の作成プロセスが例示されている。
図2(a)に示すように、表示機器10Cの画面に表示された地図上でポインティングデバイスを介して始点から終点に到る複数の交点IPが指定され、各交点IPの間に選択的に通過指示点CPが指定される。管路図生成プログラムを実行するコンピュータ上で、各交点IPと通過指示点CPを通る管路の布設経路(当該管路を計画線という。)に対して、
図2(b)に示すように、各交点IPに配置する異形管、各交点IPを結ぶように配置される直管または切管が指定入力されることにより管路図が設計される。このような管路図作成装置は、本発明の設計支援装置10と一体に構成されてもよいし、別装置で構成されてもよい。
【0037】
例えば、各交点IP1~IP3を直線状に接続した主管路1から所定の交点IP2で分岐する分岐管路2を構成する場合、分岐点IP2に二受T字管が配され、分岐点IP2と分岐先の交点IP4とが直管などで接続される。さらに、
図2(c)に示すように、通過指示点CPを通るように継手部で屈曲させた直管のレイアウトが決定される。
【0038】
通過指示点CPを通るように直管のレイアウトを決定する前に、当該設計支援装置10を用いることにより、管路図に含まれる異形管部の一体化処理が実行される。すなわち、設計者であるオペレータが表示機器10Cに表示された管路図に基づいて入力機器10Bを操作することにより、設定対象となる管路図で示される管路の一体化長さの設計処理が進行する。
【0039】
計算機本体10Aは、CPUが搭載されたマザーボード及びメモリボードなどが搭載され、メモリボード上のメモリに管路の一体化処理の設計を支援するためのアプリケーションプログラムがインストールされている。CPUによって当該アプリケーションプログラムが実行されることにより、後述する種々の機能ブロックが具現化される。
【0040】
即ち、設計支援装置10は、地図上で指定された始点から終点に到る複数の交点に所定の異形管が配置され、各交点を結ぶ距離と直管の長さとに基づいて求まる直管の本数及び必要な切管の長さに従って、各交点の間に直管及び必要な切管が配置され、各異形管の種類、呼び径及び設計水圧が設定された管路図に対して、必要となる離脱防止継手を決定するための設計支援装置である。
【0041】
計算機本体10Aは、第1演算部11、第2演算部12、第3演算部13、第4演算部14、第5演算部15、第6演算部16の各演算部を備えている。
【0042】
第1演算部11は、管路図の始点から終点に向けて順番に一体化対象となる異形管を抽出する機能ブロックである。第2演算部12は、第1演算部11で抽出した第1の異形管に対して第1の一体化長さを求める機能ブロックである。
【0043】
第3演算部13は、第2演算12部で求めた第1の一体化長さを、第1の異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、第1の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定するとともに、必要となる部品であるライナの数などを管理する機能ブロックである。
【0044】
第4演算部14は、第3演算部13で設定した第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在すると、第1の異形管と第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さを求める機能ブロックである。
【0045】
第5演算部15は、第4演算部14で求めた第2の一体化長さを、複合異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、第2の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する機能ブロックである。
【0046】
第6演算部16は、第3演算部13で離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となる切管の長さを設定する機能ブロックである。
【0047】
第1演算部11から第6演算部16で処理されることにより得られた離脱防止継手の特定、一体化長さなどを含む管路の一体化情報は、表示機器10Cに表示されてオペレータに目視確認され、記憶装置10Dに記憶される。
【0048】
[離脱防止継手]
離脱防止継手とは、異形管の前後に接続される管の継手で、所定の一体化長さ内に存在する管の継手をいう。
図3(a)には、プッシュオンタイプのGX形直管の接合部の断面構造が示されている。一方の管の端部に形成された受口P1の内部に他方の管の端部に形成された挿口P2が挿入され、受口P1の内周面と挿口P2の外周面との間でシール部材S1が圧縮されるように介装され、ロックリングL1と挿口P2に形成された突部P3が係合して抜止めされる。図中、符号L2はロックリングホルダである。
図3(a)の右方には、管路図に表記される当該継手部の材料シンボルが示されている。
【0049】
図3(b)には、
図3(a)に示す継手を離脱防止継手とする場合の接合部の断面構造が示されている。受口P1の内部に、挿口P2の先端と当接するライナL3が挿入され、受口P1に対する挿し口P2の軸心方向への進退移動が規制されている。図中、符号L4はライナボードである。ライナ幅AのライナL3の挿入により、ライナL3を挿入しない場合の標準胴付寸法Yに対して、管長がA-Y伸びることになる。そこで、一体化長さが画定した後に、第6演算部16によって、この伸びを吸収すべく対応する切管の長さが調整される。
図3(b)の右方には、管路図に表記される当該継手部の材料シンボルが示されている。ライナL3が挿入された離脱防止継手となっていることが、黒い塗り潰しパターンで示されている。
【0050】
図3(c)には、異形管(この例では曲管)の管継手構造が示されている。一方の管の受口P1に他方の管の挿し口P2を挿入した後に、押輪W1を用いて挿し口P2と受口P1の隙間にシール部材S2を挿入するように構成されている。
【0051】
受口P1側のフランジ部P4に形成された締付孔と環状の押輪W1の周方向複数個所に形成された締付孔とを、締付用部材であるT頭ボルトB1とナットN1を介して締め付けることにより押輪W1がフランジ部P4側に引き込まれ、押輪W1の先端突部W2でシール部材S2が押込み挿入される。
図3(c)の右方には、管路図に表記される当該曲管の継手部の材料シンボルが示されている。異形管は全て離脱防止継手となるため、
図3(b)と異なり、黒い塗り潰しパターンは付されていない。
【0052】
[一体化対象管路]
設計支援装置10による一体化処理の対象管路は、日本ダクタイル鉄管協会が提供する技術資料「JDPA T 57」に示される早見表を適用可能な管路である。
図4(a)及び
図5(a)に適用管路の条件が示され、
図4(b)及び
図5(b),(c)には、曲管部及びT字管に対して、呼び径と設計水圧により定まる一体化長さを示すテーブルデータが示されている。例えば、呼び径100mm、屈曲角度90°の曲管部に対して、設計水圧が0.75MPaであれば一体化長さを1m確保する必要があり、設計水圧が1.3MPaであれば一体化長さを5m確保する必要があると求まる。
【0053】
そして、当該技術資料「JDPA T 57」には、単独曲管部、単独曲管の組合せ(Sベンド、伏せ越し)、複合曲管部、T字管部、T字管+仕切弁、T字管+片落管、T字管+曲管、T字管+曲管+片落管、角度の異なる隣接曲管などの基本管路形状に対する検討手順が示されており、その検討に必要となる一体化長さを設定したテーブルデータが上述した記憶装置10Dに格納されている。
【0054】
図3(d)には、テーブルデータ(早見表)に含まれる単独曲管部に対する一体化長さが例示されている。
図4(b)の「注」書きに示したように、単独曲管部では曲管の上流と下流の両側に一体化長さが確保される。
【0055】
[管路の一体化長さの設計支援方法]
以下、設計支援装置10を用いた管路の一体化長さの設計支援方法について説明する。
本発明による管路の一体化長さの設計支援方法は、地図上で指定された始点から終点に到る複数の交点に所定の異形管が配置され、各交点を結ぶ距離と直管の長さとに基づいて求まる直管の本数及び必要な切管の長さに従って、各交点の間に直管及び必要な切管が配置され、各異形管の種類、呼び径及び設計水圧が設定された管路図に対して、必要となる離脱防止継手を決定するために、コンピュータを用いて実行するように構成されている。
【0056】
図6に示すように、一体化支援処理では、記憶装置10Dに格納された一体化処理の対象となる管路図及び管路の構成部品を列記した材料表などを内部メモリに読み込むとともに、表示機器10Cに管路図を表示し(SA1)、管路図の始点から終点に向けて順番に一体化処理の対象となる異形管を抽出する異形管抽出ステップを実行し(SA2)、異形管抽出ステップで抽出した異形管に対して一体化処理を行なう一体化処理ステップを実行する(SA3)。全ての異形管に対して一体化処理ステップが完了するまで、ステップSA2,SA3を繰返す(SA4,N)。各演算部は、各ステップに応じて処理の進捗や結果を目視確認できるように、表示機器10Cに管路図を表示し、一体化処理の対象となる異形管や直管などを例えば色を異ならせて強調表示し、或いは拡大表示するとともに、一体化長さなどの寸法を表示する。
【0057】
一体化処理ステップでは、各異形管に対して管路の始点側に位置する他の異形管を考慮した一体化処理と、終点側に位置する他の異形管を考慮した一体化処理の双方を行なう。個別の異形管ごとに単独で一体化処理する場合に、複数の異形管を関連させる必要がある一体化処理が困難となるが、上述の一体化処理では、複数の異形管を関連させる必要がある一体化処理が確実に行なえるようになる。
【0058】
管路図の始点から終点に向けて抽出した全ての異形管に対して一体化処理ステップが完了すると(SA4,Y)、オペレータが確認できるように、一体化処理が施された管路図、つまり離脱防止継手となる管路の特定情報、一体化長さ、一体化処理により調整された切管の長さなどの情報を含む管路図、及び、一体化処理により導出したライナの数などを付加した材料表が表示機器10Cに表示し、必要に応じてプリンタで出力し、さらにそれらの情報を記憶装置10Dに格納する(SA5)。
【0059】
図7には、
図6に示したステップSA3の異形管一体化処理の詳細が示されている。先ず、管路図の始点から終点(または終点から始点)に向けて順番に一体化対象となるフランジ付T字管を抽出して(SB1)、各フランジ付T字管に対する一体化処理(SB2)が終了するまでステップSB1,SB2を繰り返してステップSB3に進む。フランジ付T字管が存在しない場合には、そのままステップSB3に進む。
【0060】
このような処理を、曲管部、T字管部、片落管部、仕切弁部に対して其々繰返し(SB3~SB10)、最後に既設管との接続部に対する一体化処理(SB11)を実行して処理を終了する。
【0061】
図8には、上述した其々の一体化処理(SB2,SB4,SB6,SB8,SB10)の詳細が示されている。先ず、管路図の始点から終点(または終点から始点)に向けて順番に一体化対象となる特定の異形管(其々の一体化処理で対象となる種類の異形管であり、第1の異形管である。)を抽出する第1ステップと(SC1)、最初に抽出した第1の異形管に対する第1の一体化長さを求める第2ステップと(SC2)、第2ステップで求めた第1の一体化長さを、第1の異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、第1の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第3ステップ(SC3)を実行する。
【0062】
第3ステップで設定した第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在する場合には(SC4,Y)、第1の異形管と第2の異形管を含む複合異形管に対して第2の一体化長さを求める第4ステップと(SC5)、第4ステップで求めた第2の一体化長さを、複合異形管の種類に応じて予め設定された始点側領域及び/または終点側領域に設定し、第2の一体化長さの範囲内に存在する直管または切管の継手を離脱防止継手に設定する第5ステップ(SC6)を実行する。
【0063】
ここで、設定した第2の一体化長さの範囲内に次の異形管が存在する場合には、次の異形管を含めて第4ステップ(SC5)及び第5ステップ(SC6)を繰り返し(SC7,Y)、第2の一体化長さの範囲内に次の異形管が存在しない場合に(SC7,N)、ステップSC8に移行する。なお、第2の異形管は特定異形管と同一種類の異形管に限るものではなく、また複数の異形管で構成される場合もある。
【0064】
第3ステップで設定した第1の一体化長さの範囲に単一または複数の第2の異形管が存在する場合(SC4,N)、または第5ステップを実行した後に(SC6)、第3ステップまたは第5ステップで離脱防止継手に設定した直管及び切管の継手の数に応じて必要となる切管の長さを設定する第6ステップが実行される(SC8)。全異形管の抽出が完了するまで(SC9,N)、つまり第1ステップで第1の異形管を抽出する度に、第2ステップから第6ステップを繰り返す。
【0065】
第1ステップが第1演算部11で実行され、第2ステップが第2演算部12で実行され、第3ステップが第3演算部13で実行される。さらに、第4ステップが第4演算部14で実行され、第5ステップが第5演算部15で実行され、第6ステップが第6演算部16で実行される。
【0066】
上述した第1の一体化長さ及び第2の一体化長さは、各異形管または各複合異形管に応じて予め設定されたテーブルデータ(早見表)に基づいて演算導出される値であり、テーブルデータ(早見表)に第1の一体化長さ及び第2の一体化長さが規定されていない場合には、予め設定された数式に基づいて演算導出するように構成されている。
【0067】
予め設定された数式とは、上述した技術資料「JDPA T 57」に規定される数式で、記憶装置10Dに格納されている。
例えば、管端部及び仕切弁部に対する一体化長さLpは、次式で規定される。
Lp≧SfpP/μWfπD2
但し、Lpは必要一体化長さ(m)、Sfpは設定安全率、Pは管端部および仕切弁部に作用する不平均力(kN)、μは管と土との摩擦係数、D2は管外径である。
一体化長さLpは管端部からの長さ、仕切弁の場合には、仕切弁を挟んだ長さまたは仕切弁の上流側か下流側の何れかに設定する長さとなる。
【0068】
例えば、片落管部に対する一体化長さLpは、次式で規定される。
Lp≧SfpP/μWfπD2
但し、Lpは必要一体化長さ(m)、Sfpは設定安全率、Pは:片落管部に作用する不平均力(kN)、μは管と土との摩擦係数、D2は大口径管側の管外径である。
このようにして求めた一体化長さは、大口径管側に設定される。
【0069】
このような手順で管路図に含まれる異形管が所定の順序で一体化処理され、或いは複合異形管として一体化処理されるので、設計者であるオペレータの熟練度に左右されることなく、第1の一体化長さ及び第2の一体化長さを適切に求めることができる。
【0070】
図7,8を参照して説明したように、予め設定した異形管の種類ごとに第1ステップ以降の処理を繰り返すように構成しているため、異形管の種類に応じて一体化長さを求めるアルゴリズムが異なる場合であっても、異形管の種類ごとに第1ステップ以降の処理を繰り返すことで、オペレータの混乱を招くことなく適切に処理することができる。
【0071】
さらに詳述する。
図6に示した異形管抽出処理(SA2)では、最初に管路図に含まれる曲管部の分類処理が実行される。
図9に示すように、管路図の始点から終点に向かって曲管が順に抽出される(SD1)。ある曲管(A)と同一ライン上に他の曲管(B)があり(SD4)、双方の曲管(A),(B)の角度が同一方向にあり(SD5)、直結されていると曲管(A),(B)を複合曲管(A+B)´と判定する(SD6,Y~SD8)。
【0072】
双方の曲管(A),(B)の間に存在する管材料の有効長(
図3(b)参照。)の合計が所定値未満である場合も(SD9,Y)、複合曲管(A+B)´と判定する(SD7,SD8)。所定値は特に限定するものではなく、適宜設定される値である。双方の曲管(A),(B)の角度が異なる方向にある場合や(SD5,N)、双方の曲管(A),(B)の間に存在する管材料の有効長の合計が所定値以上である場合には(SD9,N)、曲管(A)が単独曲管であると判定し(SD10、続いて曲管(B)についても曲管(A)に対する処理と同様の処理が実行され(SD11)、このような処理が全ての曲管について繰返し実行される。
【0073】
図10及び
図11には、複合曲管を含む曲管部の一体化処理が示されている。管路図の始点から終点に向かって曲管部をサーチし(SE1,SE2)、最初に抽出した曲管部Bend(A)に対して早見表から一体化長さを求め(SE4)、値0.0に初期設定された一体化長さ設定変数と早見表から求めた一体化長さを比較する(SE7)。
【0074】
一体化長さ設定変数が早見表から求めた一体化長さより小さい場合に(SE7,NG)、曲管部Bend(A)に接続された管材料(A+n)(nの初期値は1)を一体化し(SE8)、管材料(A+n)が直管または切管であれば、管材料(A+n)の長さを一体化長さ設定変数に加算し(SE10)、次の管材料に対して同様の処理を行なう(SE7~SE11)。
【0075】
一体化長さ設定変数が早見表から求めた一体化長さ以上になると(SE7,OK)、始点からの検討(異形管から見て終点側の検討)を終了し、同様の手順で終点からの検討(異形管から見て始点側の検討)を行なう。「始点からの検討を終了する」とは、後に同様の手順で終点からの検討を行なうことを意味する。
【0076】
管材料(A+n)が直管または切管でなく(SE9,N)、呼び径350以上で、かつ、角度が45°以上の曲管であれば(SE13,SE18,Y)、「またぐ」処理を実行して、最初の処理に戻る。管材料(A+n)が直管または切管でなく(SE9,N)、呼び径350以上で、かつ、角度が45°以上の曲管でなければ(SE13,SE18,N)、「またぐ」処理を実行することなく、始点からの検討を終了し、次の曲管部に対して同様の処理を行なう。
【0077】
管材料(A+n)が直管または切管でなく(SE9,N)、曲管でもなく(SE13,N)、片落管である場合には(SE14,Y)、早見表から縮径または拡径後の呼び径に対応する曲管の一体化長さを求め(SE15)、一体化長さ設定変数を0.0に初期化して(SE16)、片落管に対する処理を終了する(SE17)。
【0078】
図11に示す「またぐ」処理とは、一体化長さの範囲内に他の異形管があった場合に、その異形管を飛び越えてその異形管の反対側にも続けて一体化長さを確保する処理を実行することを意味し、「またがない」と表記しているのは、異形管を飛び越えず、その異形管より先には一体化長さを確保しないことを意味する。詳述しないが、
図12から
図20の手順も基本的に
図10、
図11と同様の手順で処理される。
【0079】
【0080】
図21には、呼び径150mm、土被りH=0.8m、設計水圧1.3MPaの設計条件に対して、起点側の呼び径150mmから終点側の呼び径100mmに縮径する単独の片落管部の一体化処理の手順と設計結果が示されている。
【0081】
先ず、数式に基づき一体化長さ8.5mを算出する。次に、片落管に対して、原則として大管側に8.5mの一体化長さを確保する。小管側継手は離脱防止継手とするが一体化長さには見込まない。なお、大管側に既設接続点があり、一体化長さが確保できない場合には、小管側に残りの一体化長さを確保する。このような手順で設計される。
【0082】
図22(a),(b)には、呼び径150mm、土被りH=0.8m、設計水圧1.3MPaの設計条件に対して、仕切弁部の一体化処理の設計結果が示されている。
【0083】
先ず、数式に基づき一体化長さ16.5mを算出する。次に、呼び径150mmの仕切弁に対して、設計の起点とは反対側で一体化長さに見込める長さ(離脱防止継手を介した管の有効長)を計上する。次に、残りの一体化長さを設計の起点側に確保する。このような手順で設計される。
図22(b)は、設計の起点とは反対側の直管に単独の曲管が接続される例で、曲管を挟んだ両側の直管に対して一体化長さに見込める長さを計上している。
【0084】
図23には、呼び径150mm、土被りH=0.8m、設計水圧1.3MPaの設計条件に対して、曲管と片落管が隣接する場合の一体化処理の設計結果が示されている。曲管は呼び径150mm、角度90°であり、片落管は起点側の呼び径150mmから終点側の呼び径100mmに縮径する間である。
【0085】
図21で説明したように、片落管に対して、原則として大管側に8.5mの一体化長さを確保することになる。また、原則として、呼び径150mmで角度90°の曲管に対して早見表より両側に6mの一体化長さを確保することになる。
【0086】
しかし、このような場合には、曲管に対する一体化長さを、片落管により変更された呼び径100mmを採用して、呼び径100mm、角度90°の曲管として取り扱い、早見表より得られる5mの一体化長さを片落管の縮径側に確保する。さらに、起点側には片落管の一体化長さ8.5mと曲管に対する一体化長さ6mのうちで長い方の値を一体化長さに設定する。このような手順で設計される。
【0087】
図24には、土被りH=0.8m、設計水圧1.3MPaの設計条件に対して、複合片落管の一体化処理の設計結果が示されている。片落管の一体化長さの範囲内に他の片落管があり、それらの片落管の縮径または拡径が同じ場合には、複合片落管として一体化長さを設定する。
【0088】
図24の例では、起点側の呼び径200mmから終点側の呼び径150mmに縮径する片落管と、起点側の呼び径150mmから終点側の呼び径100mmに縮径する片落管が切管を介して接続されている。このような場合には、個々の片落管の一体化長さを求めるのではなく、起点側の呼び径200mmから終点側の呼び径100mmに縮径する複合片落管として一体化長さを求める。なお、複合片落管となる場合でも、片落管の間に曲管が有る場合には、複合片落管としては取り扱わない。
【0089】
なお、異形管部または複合異形管部の何れの側に一体化長さを設定するのかは、異形管部または複合異形管部に応じて予め設定されており、日本ダクタイル鉄管協会が提供する技術資料「JDPA T 57」に従い、技術資料「JDPA T 57」に記載さていない場合には、本明細書の記載に従う。
【0090】
図25(a),(b)には、第6演算部16によって実行される切管の長さ調節の例が示されている。一体化長さを確保するために、離脱防止継手に設定された直管に装着されるライナに起因する長さ変動に伴い、切管の長さを調整する処理である。
図25(a)に示す一体化処理の前の管路図では、呼び径150mm、長さ5000mmの直管が、呼び径150mm、長さ1200mmの切管を介して曲管に接続されている。
図3(b)で説明したように、このような場合に、直管の継手部にライナを装着することにより、直管の長さがA-Yだけ伸びることになる。呼び径150mmの直管では、A-Y=39mmとなる。
【0091】
そこで、
図25(b)に示すように、切管の長さを39mm短くなるように調整することで、管路長の変化を吸収するのである。
【0092】
一体化処理が終了すると、管路図には、各一体化長さの寸法及び寸法線が描画され、一体化処理された直管の伸び量が表記される。さらに、一体化に必要なライナなどの部品が管路を構成する部品を列記した材料表に付加される。このようにして、離脱防止継手となる管路の特定情報、一体化長さ、一体化処理により調整された切管の長さなどの情報を含む管路図が記憶装置10Dに格納される。
【0093】
上述した実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、該記載に基づいて本願発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
10:管路の一体化長さの設計支援装置
10A:計算機本体
10B:入力機器
10C:表示機器
10D:記憶装置
11:第1演算部
12:第2演算部
13:第3演算部
14:第4演算部
15:第5演算部
16:第6演算部