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特許7588049シート加工装置、切断刃損耗判定装置、切断刃損耗判定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】シート加工装置、切断刃損耗判定装置、切断刃損耗判定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20241114BHJP
   B26D 7/22 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D7/22 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021133375
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023027975
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】599040355
【氏名又は名称】日本製図器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100174573
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 知美
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】福田 正範
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-88265(JP,A)
【文献】特開2007-075923(JP,A)
【文献】特開2013-103301(JP,A)
【文献】特開2000-246692(JP,A)
【文献】特開2019-181662(JP,A)
【文献】特開2013-085759(JP,A)
【文献】特開平7-024785(JP,A)
【文献】特開2008-238325(JP,A)
【文献】特開2013-099811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 5/00
B26D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に載置されたシートを保持するテーブルと、
前記テーブルの表面上に保持されたシートに、表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃と、
前記切断刃が前記テーブルに接触する位置と前記テーブルに載置されたシートから離隔する位置との間で、前記切断刃を前記テーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構と、
前記切断刃を前記テーブルに接触させた状態で前記テーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構と、
シートを前記テーブルに載置および前記テーブルから離隔し、シートを前記テーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構と、
前記平行移動機構および前記昇降機構を作動させ、前記テーブルに載置されたシートに前記切断刃で切断面の形成を指令する切断制御部と、
前記切断面の形成が指令された後のシートを、前記搬送機構によって前記テーブルから離隔させた状態で、前記シートの裏面を撮像する撮像装置と、
前記切断面の形成が指令された後のシートを前記テーブルから離隔させた状態で、切断面の形成が指令された部分の前記シートの裏面を前記撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を前記画像から抽出する切断跡抽出部と、
前記切断刃によって前記シートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、前記切断跡抽出部が抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定部と、
を備えるシート加工装置。
【請求項2】
前記切断制御部は、シートから切り出される加工品を形成する切断面とは別に、シートの余白に切断面の形成を指令し、
前記切断跡抽出部は、前記余白の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を前記撮像装置で撮像した画像を取得して、前記余白に形成された切断面の前記切断跡を前記画像から抽出し、
前記判定部は、前記余白に形成されたと想定される切断面の前記想定線と、前記余白に形成された切断面の前記切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する、
請求項1に記載のシート加工装置。
【請求項3】
前記テーブルの表面上に保持されたシートに、互いに独立して表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる複数の前記切断刃を備え、
前記切断制御部は、前記切断刃のそれぞれに対して、互いに異なる切断面の形成を指令し、
前記切断跡抽出部は、前記切断刃のそれぞれについて、当該切断刃によって形成された切断面の前記切断跡を前記画像から抽出し、
前記判定部は、前記切断刃のそれぞれについて、当該切断刃によって形成されたと想定される切断面の前記想定線と形成された切断面の前記切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する、
請求項1または2に記載のシート加工装置。
【請求項4】
前記切断刃をそれぞれ互いに独立して移動しうる複数の前記平行移動機構および複数の前記昇降機構を備え、
前記切断制御部は、前記判定部でいずれかの前記切断刃が損耗していると判定された場合に、次に加工するシートから、前記損耗していると判定された切断刃で形成することが予定されていた切断面を、前記複数の切断刃のいずれか損耗していると判定されなかった切断刃で代替して形成する、
請求項3に記載のシート加工装置。
【請求項5】
テーブルの表面上に載置され該テーブルで保持されるシートの表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃を、前記切断刃が前記テーブルに接触する位置と前記テーブルに載置されたシートから離隔する位置との間で、前記テーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構、および、前記切断刃を前記テーブルに接触させた状態で前記テーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構、を作動させて前記テーブルで保持されるシートに切断面の形成を指令する切断制御部と、
前記テーブルに載置されたシートを前記テーブルから離隔し、前記シートを前記テーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構によって、前記切断面の形成が指令された後のシートを前記テーブルから離隔させた状態で、前記切断面の形成が指令された部分の前記シートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を前記画像から抽出する切断跡抽出部と、
前記切断刃によって前記シートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、前記切断跡抽出部が抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定部と、
を備える切断刃損耗判定装置。
【請求項6】
切断刃損耗判定装置が行う切断刃損耗判定方法であって、
テーブルの表面上に載置され該テーブルで保持されるシートの表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃を、前記テーブルに接触する位置と前記テーブルに載置されたシートから離隔する位置との間で前記テーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構、および、前記切断刃を前記テーブルに接触させた状態で前記テーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構、を作動させて前記テーブルで保持されるシートに切断面の形成を指令する切断制御ステップと、
シートを前記テーブルに載置および前記テーブルから離隔し、シートを前記テーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構によって、前記切断面の形成が指令された後のシートを前記テーブルから離隔させた状態で、前記切断面の形成が指令された部分の前記シートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を前記画像から抽出する切断跡抽出ステップと、
前記切断刃によって前記シートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、前記切断跡抽出ステップで抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定ステップと、
を備える切断刃損耗判定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
テーブルの表面上に載置され該テーブルで保持されるシートの表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃を、前記テーブルに接触する位置と前記テーブルに載置されたシートから離隔する位置との間で前記テーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構、および、前記切断刃を前記テーブルに接触させた状態で前記テーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構を作動させて、前記テーブルで保持されるシートに切断面の形成を指令する切断制御ステップと、
シートを前記テーブルに載置および前記テーブルから離隔し、シートを前記テーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構によって、前記切断面の形成が指令された後のシートを前記テーブルから離隔させた状態で、前記切断面の形成が指令された部分の前記シートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を前記画像から抽出する切断跡抽出ステップと、
前記切断刃によって前記シートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、前記切断跡抽出ステップで抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃を備えるシート加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを切断加工及び押罫加工して、加工後のシートを組み立てて梱包箱やディスプレイとして使用することが行われている。シートを切断加工する方法として、一般に、打ち抜き型を用いる方法とカッティングプロッタを用いる方法が使用されている。例えば、特許文献1に記載されているように、フラットベッド型のプロッタにカッターを設けた、いわゆるフラットベッド型オートカッターが知られている。このようなオートカッターは、設定されたデータに従って切断刃を駆動して、カットテーブル上に載置されたシートを切断するように構成されている。
【0003】
シートを切断する切断刃は、切断を繰り返すことによって次第に摩耗する。そこで、切断した長さの累積で摩耗を推測して切断刃を交換することが行われている。例えば特許文献2の刃交換時期管理装置では、連続的に搬送される帯状のウェブWの搬送距離を検出し、この検出されたウェブの搬送距離をICタグに書き込む。コントローラにより、ICタグに記憶された限界搬送距離およびウェブの実際の累積搬送距離を比較する。ウェブの実際の累積搬送距離が限界搬送距離よりも大きい場合には、コントローラは、スリッターの停止命令または作業者への警報を発令させる命令を発信する。
【0004】
特許文献3の裁断機では、シート状物に対する裁断は、傾斜裁断刃を上方からシート状物に突刺した状態で、刃縁の一部となる作用位置で行われる。裁断機の制御部は、裁断距離などの裁断量を監視して記憶しながら管理し、使用中の作用位置における裁断量が寿命として設定される限界値を越えると、次の作用位置をとるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-24785号公報
【文献】特開2008-238325号公報
【文献】特開2013-99811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シート加工装置の切断刃は、累積切断距離が限界値に達する前に損耗する場合がある。切断刃が損耗していることに気がつかずに加工されたシートは不良品になる。限界値を小さくすれば、不良の発生率は小さくなるが、切断刃が無駄に消費されることになり、切断刃を交換する回数が増加し、稼働率が低下する。
【0007】
切断刃は先端が欠けることもあれば、刃の途中が刃こぼれすることもあり、また、刃が鈍化する場合もあり、1つのモードだけで刃の損耗を判断することは困難である。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、シート加工装置で切断刃の損耗を確実に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係るシート加工装置は、表面上に載置されたシートを保持するテーブルと、テーブルの表面上に保持されたシートに、表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃と、切断刃がテーブルに接触する位置とテーブルに載置されたシートから離隔する位置との間で、切断刃をテーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構と、切断刃をテーブルに接触させた状態でテーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構と、シートをテーブルに載置およびテーブルから離隔し、シートをテーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構と、平行移動機構および昇降機構を作動させ、テーブルに載置されたシートに切断刃で切断面の形成を指令する切断制御部と、切断面の形成が指令された後のシートを、搬送機構によってテーブルから離隔させた状態で、シートの裏面を撮像する撮像装置と、切断面の形成が指令された後のシートをテーブルから離隔させた状態で、切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を画像から抽出する切断跡抽出部と、切断刃によってシートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、切断跡抽出部が抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定部と、を備える。
【0010】
好ましくは、切断制御部は、シートから切り出される加工品を形成する切断面とは別に、シートの余白に切断面の形成を指令し、切断跡抽出部は、余白の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得して、余白に形成された切断面の切断跡を画像から抽出し、判定部は、余白に形成されたと想定される切断面の想定線と、余白に形成された切断面の切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する。
【0011】
好ましくは、テーブルの表面上に保持されたシートに、互いに独立して表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる複数の切断刃を備え、切断制御部は、切断刃のそれぞれに対して、互いに異なる切断面の形成を指令し、切断跡抽出部は、切断刃のそれぞれについて、当該切断刃によって形成された切断面の切断跡を画像から抽出し、判定部は、切断刃のそれぞれについて、当該切断刃によって形成されたと想定される切断面の想定線と形成された切断面の切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する。
【0012】
好ましくは、さらに、切断刃をそれぞれ互いに独立して移動しうる複数の平行移動機構および複数の昇降機構を備え、切断制御部は、判定部でいずれかの切断刃が損耗していると判定された場合に、次に加工するシートから、損耗していると判定された切断刃で形成することが予定されていた切断面を、複数の切断刃のいずれか損耗していると判定されなかった切断刃で代替して形成する。
【0013】
本発明の第2の観点に係る切断刃損耗判定装置は、テーブルの表面上に載置され該テーブルで保持されるシートの表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃を、切断刃がテーブルに接触する位置とテーブルに載置されたシートから離隔する位置との間で、テーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構、および、切断刃をテーブルに接触させた状態でテーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構、を作動させてテーブルで保持されるシートに切断面の形成を指令する切断制御部と、テーブルに載置されたシートをテーブルから離隔し、シートをテーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構によって、切断面の形成が指令された後のシートをテーブルから離隔させた状態で、切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を画像から抽出する切断跡抽出部と、切断刃によってシートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、切断跡抽出部が抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定部と、を備える。
【0014】
本発明の第3の観点に係る切断刃損耗判定方法は、切断刃損耗判定装置が行う切断刃損耗判定方法であって、テーブルの表面上に載置され該テーブルで保持されるシートの表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃を、テーブルに接触する位置とテーブルに載置されたシートから離隔する位置との間でテーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構、および、切断刃をテーブルに接触させた状態でテーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構、を作動させてテーブルで保持されるシートに切断面の形成を指令する切断制御ステップと、シートをテーブルに載置およびテーブルから離隔し、シートをテーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構によって、切断面の形成が指令された後のシートをテーブルから離隔させた状態で、切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を画像から抽出する切断跡抽出ステップと、切断刃によってシートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、切断跡抽出ステップで抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定ステップと、を備える。
【0015】
本発明の第4の観点に係るプログラムは、コンピュータに、テーブルの表面上に載置され該テーブルで保持されるシートの表面から裏面に貫通する切断面を形成しうる切断刃を、テーブルに接触する位置とテーブルに載置されたシートから離隔する位置との間でテーブルの表面に交わる方向に移動しうる昇降機構、および、切断刃をテーブルに接触させた状態でテーブルの表面に平行に移動しうる平行移動機構を作動させて、テーブルで保持されるシートに切断面の形成を指令する切断制御ステップと、シートをテーブルに載置およびテーブルから離隔し、シートをテーブルから離隔させた状態で移動しうる搬送機構によって、切断面の形成が指令された後のシートをテーブルから離隔させた状態で、切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像装置で撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を画像から抽出する切断跡抽出ステップと、切断刃によってシートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、切断跡抽出ステップで抽出した切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃が損耗していると判定する判定ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、切断刃で切断面を形成したシートの裏面の画像から、シート裏面と切断面の交線である切断跡を抽出し、指令した切断面がシート裏面と交わる線である想定線と抽出した切断跡とが一致しない場合に、切断刃が損耗していると判断するので、切断刃の損耗を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態1に係るシート加工装置の斜視図
図2】実施の形態1に係る切断機構の構成図
図3】実施の形態1に係る切断刃損耗判定装置の構成例を示すブロック図
図4】シートの加工例を示す図
図5】実施の形態1に係る切断刃損耗判定の動作の一例を示すフローチャート
図6】本発明の実施の形態2に係るシート加工装置の概略斜視図
図7】実施の形態2に係る切断面の例を示す図
図8】実施の形態2に係る切断刃損耗判定の動作の一例を示すフローチャート
図9】実施の形態に係る切断刃損耗判定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るシート加工装置の斜視図である。シート加工装置1は、テーブル9に載置されたシートに切断面を形成する加工ステージ2と、テーブル9にシートを載置し、加工後のシートをテーブル9から離隔して搬送する入出ステージ3から構成される。以下の説明では、加工ステージ2と入出ステージ3が並ぶ方向をX軸とし、テーブル9の表面に平行で、かつX軸に直交する方向をY軸とする。そして、X軸とY軸に直交する方向、すなわち、テーブル9の表面に直交する方向をZ軸とする。X軸方向を前後、Y軸方向を左右、Z軸方向を上下ともいう。
【0020】
シート加工装置1には、加工対象のシートが表面上に載置されるテーブル9が、XY平面に平行に保持され、テーブル9は、加工ステージ2と入出ステージ3を往復移動する。図1は、テーブル9が入出ステージ3に位置する状態を示す。テーブル9を往復移動させるには、既知の任意の機構を用いることができる。例えば、テーブル9はX軸方向に摺動可能にレールなどで支持され、ベルトとプーリ、チェーンとチェーンホイール、ラックとピニオン、エアシリンダ、あるいは、ボールねじなどを用いて往復移動される。テーブル9は、表面に微細な孔が形成され、図示しない吸引機構で孔から空気を吸引することによって、表面に載置されたシートを吸着して保持する。
【0021】
加工ステージ2には、2つの切断機構11が配置されている。切断機構11はそれぞれ、切断刃10を保持してZ軸方向に移動する昇降機構12と、昇降機構12をY軸方向に移動する左右移動機構13と、左右移動機構13をX軸方向に移動する前後移動機構14を備える。左右移動機構13と前後移動機構14は、切断刃10をテーブル9の表面に平行に移動する平行移動機構を構成する。
【0022】
昇降機構12は、切断刃10がテーブル9に接触する位置とテーブル9に載置されたシートから離隔する位置との間で、切断刃10をテーブル9の表面に交わる方向に移動しうる。左右移動機構13と前後移動機構14は、切断刃10がテーブル9に接触する位置とテーブル9に載置されたシートから離隔する位置のいずれでも、テーブル9に載置されたシートに平行に切断刃10を移動しうる。
【0023】
入出ステージ3には、搬送機構15が配置されている。搬送機構15は、シートを吸着して保持する保持部16と、保持部16をZ軸方向に移動する昇降部17と、保持部16および昇降部17をX軸方向に移動する移動部18とを備える。保持部16は、空気を吸引する複数のパイプが配列された吸着板を備え、吸着板の下面にシートを吸着して保持しうる。昇降部17は、保持部16を水平に保ってZ軸方向に移動可能に支持し、保持部16でシートを吸着保持した状態でZ軸方向に移動しうる。移動部18は、昇降部17を支持するフレーム19と、フレーム19をX軸方向に移動可能に支持するレール20を含み、保持部16でシートを吸着保持したまま、シートをテーブル9から離隔させた状態で、保持部16および昇降部17をX軸方向に移動しうる。
【0024】
入出ステージ3では、搬送機構15が保持部16に吸着保持したシートをテーブル9に載置し、保持部16の吸着を停止すると同時に、テーブル9の吸引を開始してシートをテーブル9に保持し、保持部16をシートから離隔する。シートを加工した後は、保持部16をシートに接触させ、テーブル9の吸引を停止すると同時に保持部16の吸着を開始してシートを保持部16で保持し、シートをテーブル9から離隔する。
【0025】
昇降部17の保持部16を移動する機構、および、移動部18の昇降部17を移動する機構には、既知の任意の機構を用いることができる。保持部16および昇降部17はそれぞれ、レールまたはリニアシャフトなどで移動可能に支持され、ベルトとプーリ、チェーンとチェーンホイール、ラックとピニオン、エアシリンダ、あるいは、ボールねじなどを用いて移動される。
【0026】
搬送機構15は、入出ステージ3に位置するテーブル9と、入出ステージ3のX軸方向外側、すなわち入出ステージ3の加工ステージ2とは反対側との間で、シートを移動することができる。入出ステージ3のX軸方向外側には、例えば、Y軸方向に往復移動する図示しない未加工シートの台と加工済シートの台が配置されている。搬送機構15は、未加工シートの台から1枚のシートを吸着保持して、テーブル9に載置し、加工ステージ2で加工されたシートをテーブル9から加工済シートの台に移動する。
【0027】
入出ステージ3には、テーブル9の位置で昇降する保持部16に干渉しないX軸方向の端に、支持部22でY軸方向に移動可能でかつ任意の位置に停止可能に支持された撮像装置としてのカメラ21が備えられている。カメラ21は、保持部16に保持されるシートを下から撮像する向きで支持されている。カメラ21をY軸方向の任意の位置へ移動し、保持部16をX軸方向の任意の位置へ移動することによって、シート裏面の任意の位置を撮像することができる。
【0028】
シート加工装置1は制御装置25を備え、制御装置25が加工ステージ2および入出ステージ3を制御する。制御装置25は、加工ステージ2の切断機構11、入出ステージ3の搬送機構15、およびテーブル9を協調して作動させて、シートに切断面を形成する。
【0029】
図2は、実施の形態1に係る切断機構の構成図である。図2は、切断機構11の昇降機構12および左右移動機構13をY軸方向に見た断面図である。図2には前後移動機構14が示されていない。切断機構11は、切断刃10、カッタホルダ30、カッタ軸40、スリーブ50、プーリ51、検知板52、センサ53、ハウジング55、偏心カム60、圧縮バネ65、振動モータ110、角度制御機構としての角度調整モータ120、プーリ121、タイミングベルト122、を備える。
【0030】
切断刃10は、カッタホルダ30に取り外し可能に装着されている。カッタホルダ30はカッタ軸40に固定されている。カッタ軸40は、スリーブ50内に、所定のストロークの溝の中心軸方向(Z軸方向)に移動可能に保持されている。スリーブ50はハウジング55内でカッタ軸40の中心軸を中心に回転可能に保持されている。スリーブ50にはプーリ51が同軸で固定されている。プーリ51は、角度調整モータ120の回転軸に同軸で固定されたプーリ121とタイミングベルト122で連結されている。検知板52はプーリ51に固定され、センサ53は検知板52を検知する。
【0031】
角度調整モータ120の回転により、プーリ121が回転し、プーリ121の回転により、タイミングベルト122を介して、プーリ51とプーリ51に固定されたスリーブ50とが回転する。スリーブ50が回転すると、スリーブ50内でカッタ軸40も回転し、カッタホルダ30に保持されたカッタ刃10がZ軸回りに回転する。切断刃10の回転量はセンサ53が検知板52を検知することで測定できる。
【0032】
ハウジング55の上部には振動モータ110が固定されている。振動モータ110の回転軸には偏心カム60が固定されている。偏心カム60は、カッタ軸40の上部に配置されている。カッタ軸40は、その上端部が偏心カム60に当接するように圧縮バネ65により上方に付勢されている。
【0033】
振動モータ110が回転すると、偏心カム60が回転し、偏心カム60に当接しているカッタ軸40がその軸方向に往復する。これにより、切断刃10がカッタ軸40の軸方向に振動する。
【0034】
ハウジング55はベース75に固定されている。ベース75にはスライダ150aが固定されている。スライダ150aは、Z軸方向に延在し、フレーム151に固定されたレール150bにスライド可能に保持されている。ベース75には、Z軸方向に延在するラック80が固定されている。ラック80には、ピニオン70が噛み合っている。ピニオン70は、フレーム151に固定された上下動モータ130により駆動される。
【0035】
上下動モータ130が回転すると、ピニオン70が回転し、ラック80をZ軸方向へ移動させる。ラック80の移動に伴って、ベース75もZ軸方向に移動し、ベース75に保持された切断刃10をZ軸方向へ移動させる。
【0036】
フレーム151は、Y軸方向に移動可能でかつ任意の位置に停止可能に可動梁1200に支持される。例えば、フレーム151にはスライダ160aが固定されており、可動梁1200には、Y軸方向に延在するレール160bが固定されている。スライダ160aは、スライド可能にレール160bに取りつけられている。可動梁1200にはラック100が固定されている。ラック100と噛み合うピニオン90は、フレーム151に固定された横移動モータ140の回転軸と連結される。横移動モータ140が回転すると、ピニオン90が回転し、可動梁1200に沿って、フレーム151がY軸方向に移動する。可動梁1200は、図1の前後移動機構14でX軸方向に移動可能でかつ任意の位置に停止可能に支持される。
【0037】
制御装置25は、シートに形成する切断面の始点に切断刃10を移動させ、切断面の延びる向きに平行に切断刃10を向ける。そして、切断刃10をテーブル9に接触する位置に下降してシートを貫通させ、切断面の延びる方向に切断刃10を移動させることによって、シートに切断面を形成する。切断面を形成するときに、振動モータを駆動して切断刃10をZ軸方向に振動させてもよい。
【0038】
例えば、切断刃10の刃面をX軸に平行にし、切断刃10のY軸方向の位置を固定したまま可動梁1200をX軸方向に移動して、X軸方向に延びる切断面を形成する。切断面の刃面をY軸に平行にし、切断刃10のX軸方向の位置を固定したままフレーム151をY軸方向に移動すれば、Y軸方向に延びる切断面を形成できる。また、左右移動機構13、前後移動機構14および角度制御機構を同時に協調して作動させることによって、シート面と交わる線が任意の曲線をなす切断面を形成することができる。
【0039】
シート加工装置1の制御装置25には、切断刃損耗判定装置31が組み込まれている。図3は、実施の形態1に係る切断刃損耗判定装置の構成例を示すブロック図である。切断刃損耗判定装置31は、切断面情報記憶部32、切断制御部33、切断跡抽出部34、および判定部35を備える。切断刃損耗判定装置31は、加工ステージ2の切断機構11、入出ステージ3の搬送機構15、テーブル9およびカメラ21を駆動する駆動機構36、およびカメラ21に接続している。切断面情報記憶部32は、シートに形成する切断面の位置と形状、および、切断面とそれを形成する切断刃10との対応を含む切断面の情報を記憶する。切断制御部33は、切断面情報記憶部32に記憶された切断面の情報に従って駆動機構36を制御し、シートに切断面を形成する。
【0040】
切断制御部33は、切断面の形成が指令された後のシートを、搬送機構15によってテーブル9から離隔させた状態で、切断跡を抽出する対象の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面をカメラ21で撮像させる。切断跡を抽出する対象の切断面は、切断面情報記憶部32に記憶されている。切断跡抽出部34は、対象の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像した画像を取得し、形成された切断面とシート裏面の交わる線である切断跡を画像から抽出する。切断面の位置と、画像に写っている範囲は決まっているから、切断跡抽出部34は容易に切断跡を抽出できる。
【0041】
判定部35は、切断跡を抽出する対象の切断面について、切断刃10によってシートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、切断跡抽出部34で抽出した切断跡を比較する。想定線と切断跡が一致していれば、判定部35は、その切断面の形成が指令された切断刃10は損耗していないと判定する。想定線と切断跡が一致しない場合、判定部35は、その切断面の形成が指令された切断刃10が損耗していると判定する。例えば、想定線に対して切断跡が短い、中間が途切れている、または、まったく切断跡がないような場合に、切断刃10は損耗していると判定する。あるいは、想定線は1本の線であるところ、切断跡が2重になっていたり、幅の広い部分があるような場合に、切断刃10は損耗していると判定する。
【0042】
切断跡を抽出する対象の切断面は、シート加工装置1が備える切断刃10それぞれについて設定される。図4は、シートの加工例を示す図である。図4では、切断面Cの想定線を実線で示し、シートWを折り曲げるための押罫線を破線で示す。図1では押罫機構が省略されているが、シート加工装置1は押罫機構を備えていてもよい。図4の例では、切断面Cが連続しているように描かれているが、実際には、ところどころ切断しない箇所が残されており、シートWから切り出される加工品とシートWの余白とがシート加工装置1では分離しないように、切断面Cが形成される。
【0043】
シート加工装置1が2つの切断機構11を備える場合、例えば、図4の左右方向がX軸方向であるとして、図4の右半分の切断面を入出ステージ3に近い切断機構11で形成し、左半分の切断面を入出ステージ3から遠い切断機構11で形成する。切断跡を抽出する対象の切断面は、それぞれの切断刃10で形成するものから選択して設定される。切断制御部33は、設定された対象の切断面の部分のシートの裏面をそれぞれカメラ21で撮像させる。切断跡抽出部34は、対象の切断面の部分のシートの裏面それぞれの画像を取得して、切断跡を抽出する。
【0044】
図5は、実施の形態1に係る切断刃損耗判定の動作の一例を示すフローチャートである。切断刃損耗判定は、切断刃10が損耗しているかどうか判定するタイミングで起動される。例えば、シート毎に切断刃損耗判定を起動してもよいし、加工されるシートの束毎に起動してもよい。または、定めた枚数ごとに起動してもよいし、ランダムな枚数ごとに起動してもよい。切断刃損耗判定を行わない場合は、シート裏面の撮像、切断跡の抽出および想定線と切断跡との比較は行われず、切断面の形成のみを行う。
【0045】
切断制御部33は、切断跡を抽出する対象の切断面を含む切断面の形成を指令する(ステップS10)。シートに切断面を形成した後、切断制御部33は、対象の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像させる(ステップS11)。切断跡抽出部34は、対象の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像した画像を取得し、画像から切断跡を抽出する(ステップS12)。
【0046】
判定部35は、切断刃10によってシートに形成されたと想定される切断面がシート裏面と交わる線である想定線と、切断跡抽出部34で抽出した切断跡を比較する(ステップS13)。想定線と切断跡が一致しない場合(ステップS14;N)、想定線と切断跡が一致していない切断面を形成した切断刃10が損耗していると判定し(ステップS15)、切断刃10が損耗していることを表示する。さらに、停止命令または作業者への警報を発令してもよい。想定線と切断跡が一致していれば(ステップS14;Y)、切断刃損耗と判定することなく処理を終了する。
【0047】
以上説明したように、実施の形態1のシート加工装置1によれば、切断刃10で切断面を形成したシートの裏面の画像から、シート裏面と切断面の交線である切断跡を抽出し、指令した切断面がシート裏面と交わる線である想定線と抽出した切断跡とが一致しない場合に、切断刃10が損耗していると判断するので、切断刃10の損耗を確実に検出することができる。その結果、不良品の発生を抑制しつつ、切断刃10が無駄に消費されるのを回避し、稼働率を向上することができる。
【0048】
シート加工装置1に2以上の切断刃10が備えられる場合、1枚のシートですべての切断刃10の損耗判定を行わなくてもよい。また、切断刃10ごとに異なる周期で損耗判定を行ってもよい。
【0049】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るシート加工装置の概略斜視図である。実施の形態2のシート加工装置1は、直列に配置された3つの加工ステージ4、5、6と、加工ステージの前後に配置される2つの入出ステージ7、8を備える。図6では、加工ステージの切断機構11、搬送機構15の保持部16および移動部18が省略されている。
【0050】
第3の加工ステージ6および後段の入出ステージ8は、実施の形態1の加工ステージ2および入出ステージ3と同じ構成である。実施の形態2では通常、テーブル9は後段の入出ステージ8から第3の加工ステージ6には移動しない。テーブル9は、前段の入出ステージ7から第1の加工ステージ4、第2の加工ステージ5、第3の加工ステージ6を経て、後段の入出ステージ8に順に移動する。後段の入出ステージ8では、加工後のシートがテーブル9から離隔された後、テーブル9は別の経路、例えば、各加工ステージの下を通って、前段の入出ステージ7に移送される。
【0051】
前段の入出ステージ7では、未加工のシートがテーブル9に載置され、シートを保持したテーブル9は第1の加工ステージ4に移動する。第1の加工ステージ4および第2の加工ステージ5はそれぞれ、複数の切断機構11を備え、同時に複数の切断面を形成できる。第1の加工ステージ4では、X軸方向に延びる切断面を形成し、第2の加工ステージ5ではY軸方向に延びる切断面を形成する。第3の加工ステージ6では、斜め方向および曲面の切断面を形成する。第1の加工ステージ4、第2の加工ステージ5および第3の加工ステージ6は、同時に並行してシートに切断面を形成する。
【0052】
第3の加工ステージ6で切断面を形成したのち、テーブル9は後段の入出ステージ8に移動する。後段の入出ステージ8には、実施の形態1と同様に、カメラ21が備えられている。後段の入出ステージ8では、テーブル9からシートを離隔して搬送するときに、カメラ21でシートの裏面を撮像する。実施の形態2では、第1の加工ステージ4から第3の加工ステージ6に備えられるすべての切断刃10について、切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を、後段の入出ステージ8のカメラ21で撮像する。
【0053】
切断跡抽出部34は、切断刃10のそれぞれについて、当該切断刃10によって形成された切断面の切断跡を画像から抽出する。判定部35は、切断刃10のそれぞれについて、当該切断刃10によって形成されたと想定される切断面の想定線と形成された切断面の切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃10が損耗していると判定する。
【0054】
図7は、実施の形態2に係る切断面の例を示す図である。実施の形態2では、シートWから切り出される加工品を形成する切断面Cとは別に、シートWの余白に切断面P、Q、Rを形成する。例えば、第1の加工ステージ4は8枚の切断刃10を備え、それぞれの切断刃10でシートWの余白にX軸方向に延びる切断面Pを形成する。第2の加工ステージ5は8枚の切断刃10を備え、それぞれの切断刃10でシートWの余白にY軸方向に延びる切断面Qを形成する。第3の加工ステージ6は2枚の切断刃10を備え、それぞれの切断刃10で、シートWの余白に斜めの切断面Rを形成する。
【0055】
切断跡抽出部34は、余白の切断面の形成が指令された部分のシートの裏側をカメラ21で撮像した画像を取得して、余白に形成された切断面の切断跡を画像から抽出する。図7の例では、余白に第1の加工ステージ4で形成された切断面Pがカメラ21の直上に来る位置でシートを停止させ、シートの中央から外側に向かってカメラ21を移動しつつ、シートの裏面を撮像する。次に、余白に第2の加工ステージ5および第3の加工ステージ6で形成された切断面Q、Rの位置にカメラ21を停止して、搬送機構15でシートを移動しつつ、シートの裏面を撮像する。切断跡抽出部34は、得られた複数の画像から、余白に形成された切断面P、Q、Rの切断跡を抽出する。
【0056】
撮像する画像の数は、切断刃10の数と同じにする必要はなく、1つの画像に複数の切断跡が含まれるように撮像してもよい。余白の切断面の位置と、画像に写っている範囲は分かっているから、切断跡抽出部34は容易に切断跡を抽出できる。判定部35は、余白に形成されたと想定される切断面の想定線と、余白に形成された切断面の切断跡とが一致しない場合に、当該切断面の形成が指令された切断刃10が損耗していると判定する。
【0057】
実施の形態2ではさらに、判定部35でいずれかの切断刃10が損耗していると判定された場合に、切断制御部33は、次に加工するシートから、損耗していると判定された切断刃10で形成することが予定されていた切断面を、複数の切断刃10のいずれか損耗していると判定されなかった切断刃10で代替して形成する。こうして、少なくとも前段の入出ステージ7にセットされた未加工シートの束がなくなるまで、シートの加工を続けることができる。
【0058】
例えば、第1の加工ステージ4の8枚の切断刃10のうちいずれかの切断刃10が損耗していると判定された場合、その切断刃10で形成することが予定されていた切断面を、残りの7枚の切断刃10のいずれかで代替して形成する。代替する切断刃10は1枚には限らず、複数の切断刃10に分担して代替させてもよい。代替する切断刃10は、損耗している切断刃10が属する加工ステージの切断刃10には限らない。例えば、第1の加工ステージ4の損耗している切断刃10で形成することが予定されていた切断面を、第3の加工ステージ6の切断刃10で形成してもよい。
【0059】
損耗している切断刃10を代替する切断刃10は、シートの加工時間が最小になるように決定することができる。例えば、前段の入出ステージ7でシートを投入してから、シートのすべての切断面を形成して、そのシートを後段の入出ステージ8で搬出するまでの時間が最小になるように、すなわち、シート加工装置1のスループットが最大になるように、切断刃10それぞれで形成する切断面を組み替えて代替させることができる。
【0060】
判定部35でいずれかの切断刃10が損耗していると判定された場合、判定部35または切断制御部33は、切断面情報記憶部32に記憶されている、損耗していると判定された切断刃10に関連付けられた切断面について、それらを形成する切断刃10を代替する切断刃10に書き換える。切断制御部33は、次に加工するシートから、書き換えられた切断面と切断刃10との関連付けに従って、損耗していると判定されなかった切断刃10で切断面を形成する。切断制御部33は、シートの余白に形成する損耗判定用の切断面については、損耗していると判定された切断刃10に対応する切断面を形成しない。
【0061】
実施の形態2では、いずれかの切断刃10が損耗していると判定された場合、そのロットの加工を中断することなくシートの加工を継続でき、適切なタイミングで切断刃10を交換することができる。切断刃10を交換したときには、切断面情報記憶部32に記憶されている、切断面とそれを形成する切断刃10との関連付けを、切断刃10が正常であった時の関連付けに戻す。
【0062】
図8は、実施の形態2に係る切断刃損耗判定の動作の一例を示すフローチャートである。切断制御部33は、シートから切り出される加工品を形成する切断面と、切断刃10の損耗を判定するための、シートの余白の切断面の形成を指令する(ステップS20)。シートに切断面を形成した後、切断制御部33は、余白の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面を撮像させる(ステップS21)。切断跡抽出部34は、余白の切断面の形成が指令された部分のシートの裏面をカメラ21で撮像した画像を取得し、画像から切断跡を抽出する(ステップS22)。
【0063】
判定部35は、複数の切断刃10から1つの切断刃10を選択し(ステップS23)、その切断刃10によって余白に形成されたと想定される切断面の想定線と、その切断刃10によって余白に形成された切断面の切断跡とを比較する(ステップS24)。想定線と切断跡が一致しない場合(ステップS25;N)、選択した切断刃10が損耗していると判定する(ステップS26)。想定線と切断跡が一致していれば(ステップS25;Y)、切断刃損耗と判定しない。いずれの場合も、選択していない残りの切断刃10があれば(ステップS27;Y)、ステップS23に戻って、切断刃10の選択から繰り返す。
【0064】
全ての切断刃10について想定線と切断跡との比較を終えて、選択していない切断刃10の残りがなくれば(ステップS27;N)、切断面情報記憶部32に記憶されている、損耗していると判定された切断刃10に関連付けられた切断面について、それらを形成する切断刃10を代替する切断刃10に書き換える(ステップS28)。その結果、切断制御部33は、次に加工するシートから、書き換えられた切断面と切断刃10との関連付けに従って、損耗していると判定されなかった切断刃10で切断面を形成する。損耗していると判定された切断刃10がなければ、実質的には、ステップS28は実行されない。
【0065】
以上説明したように、実施の形態2のシート加工装置1では、シートから切り出される加工品を形成する切断面とは別に、シートの余白に損耗判定のための切断面を形成するので、損耗判定のための撮像と切断跡抽出をより速く行うことができる。また、損耗していると判定された切断刃10で形成することが予定されていた切断面を、複数の切断刃10のいずれか損耗していると判定されなかった切断刃10で代替して形成するので、そのロットの加工を中断することなくシートの加工を継続でき、適切なタイミングで切断刃10を交換することができる。
【0066】
実施の形態2においても、切断刃損耗判定は、例えば、シート毎に切断刃損耗を起動してもよいし、加工されるシートの束毎に起動してもよい。または、定めた枚数ごとに起動してもよいし、ランダムな枚数ごとに起動してもよい。切断刃損耗判定を行わない場合は、シート裏面の撮像、切断跡の抽出および想定線と切断跡との比較は行われず、切断面の形成のみを行う。実施の形態2でも、1枚のシートですべての切断刃10の損耗判定を行わなくてもよい。また、切断刃10ごとに異なる周期で損耗判定を行ってもよい。
【0067】
損耗していると判定された切断刃10で形成することが予定されていた切断面を、他のいずれか損耗していると判定されなかった切断刃10で代替して形成することは、切断跡と想定線との比較で切断刃10の損耗を判定する方法に限らず、他の方法による切断刃10の損耗判定と組み合わせてもよい。例えば、切断刃10の高さを計測して先端の損耗を判定する方法、切断刃10の画像から切断刃10の刃こぼれを判定する方法、もしくは、刃先と電極との接触抵抗の変化で切断刃10の鈍化を判定する方法、またはこれらの組み合わせによる切断刃損耗判定と、損耗切断刃の代替とを組み合わせてもよい。
【0068】
実施の形態では、撮像装置として1台のカメラ21でシートの裏面を撮像することが想定されているが、シート加工装置1に複数のカメラ21を備えてもよい。また、カメラ21は一般的な縦横比の画角に限らず、横長または縦長の画角であってもよい。あるいは撮像装置として、画像読み取り装置の画像センサのように、一列の主走査方向の画素を取り込み、搬送機構15で副走査する構成でもよい。
【0069】
図9は、実施の形態に係る切断刃損耗判定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。切断刃損耗判定装置31は、制御部41、主記憶部42、外部記憶部43、操作部44、表示部45、入出力部46および送受信部47を備える。主記憶部42、外部記憶部43、操作部44、表示部45、入出力部46および送受信部47はいずれも内部バス40を介して制御部41に接続されている。
【0070】
制御部41はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部43に記憶されている制御プログラム48に従って、切断刃損耗判定装置31の切断面情報記憶部32、切断制御部33、切断跡抽出部34、および、判定部35の各処理を実行する。
【0071】
主記憶部42はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、外部記憶部43に記憶されている制御プログラム48をロードし、制御部41の作業領域として用いられる。
【0072】
外部記憶部43は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、切断刃損耗判定装置31の処理を制御部41に行わせるためのプログラムならびに切断面情報などのデータを記憶し、また、制御部41の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを制御部41に供給し、制御部41から供給されたデータを記憶する。
【0073】
操作部44はキーボードおよびマウスなどのポインティングデバイス等と、キーボードおよびポインティングデバイス等を内部バス40に接続するインタフェース装置から構成されている。操作部44を介して、切断刃損耗を判定する切断面の指定、シートの余白に形成する切断面とそれを形成する切断刃10との対応、切断刃10の交換などが入力され、制御部41に供給される。
【0074】
表示部45は、LCD(Liquid Crystal Display)または有機ELディスプレイなどから構成され、損耗している切断刃10、代替する切断刃10などを表示する。
【0075】
入出力部46は、シリアルインタフェースまたはパラレルインタフェースから構成されている。入出力部46に駆動機構36およびカメラ21が接続され、制御部41は入出力部46を介して切断面の形成と撮像を指令し、シート裏面の画像を取得する。
【0076】
送受信部47は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。送受信部47は、ネットワークを介して、シート加工データ、または、制御プログラム48のダウンロードを行う。
【0077】
図3に示す切断刃損耗判定装置31の切断面情報記憶部32、切断制御部33、切断跡抽出部34、および、判定部35の処理は、制御プログラム48が、制御部41、主記憶部42、外部記憶部43、操作部44、表示部45、入出力部46および送受信部47などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0078】
なお、各実施の形態で説明した切断刃損耗判定装置31の構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。切断刃損耗判定装置31の構成は、実施の形態で示したものがすべてではなく、これらに限定されるものではない。例えば、スマートフォンまたはタブレット端末を切断刃損耗判定装置31として用いてもよい。また、ネットワーク上に切断刃損耗判定装置31を設置して、ネットワークを介して切断刃損耗判定装置31の機能を提供してもよい。
【0079】
その他、前記のハードウェア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0080】
切断面情報記憶部32、切断制御部33、切断跡抽出部34、および、判定部35から構成される切断刃損耗判定装置31の電気錠制御処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読みとり可能な記録媒体(USBメモリ、CD-ROM、DVD-ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する切断刃損耗判定装置31を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで切断刃損耗判定装置31を構成してもよい。
【0081】
また、切断刃損耗判定装置31を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合等には、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0082】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 シート加工装置
2 加工ステージ
3 入出ステージ
4 第1の加工ステージ
5 第2の加工ステージ
6 第3の加工ステージ
7 前段の入出ステージ
8 後段の入出ステージ
9 テーブル
10 切断刃
11 切断機構
12 昇降機構
13 左右移動機構(平行移動機構)
14 前後移動機構(平行移動機構)
15 搬送機構
16 保持部
17 昇降部
18 移動部
19 フレーム(移動部)
20 レール(移動部)
21 カメラ(撮像装置)
22 支持部
25 制御装置
31 切断刃損耗判定装置
32 切断面情報記憶部
33 切断制御部
34 切断跡抽出部
35 判定部
36 駆動機構
41 制御部
42 主記憶部
43 外部記憶部
44 操作部
45 表示部
46 入出力部
47 送受信部
48 制御プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9