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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電力変換器装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241114BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 S
H02M7/48 U
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021137173
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2023031588
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 雄一
(72)【発明者】
【氏名】古川 公久
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-25710(JP,A)
【文献】特開2009-183802(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030859(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/162915(WO,A1)
【文献】特開2007-129838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の交流端子と、前記交流端子から入力または出力される電力に対して電力変換を行う電力変換回路と、を各々が備え、第1の方向および前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って配列された複数の電力変換ユニットと、
複数の前記電力変換ユニットの前記交流端子を、三相交流の相毎に、前記第2の方向に沿って直列接続する交流配線と、を備え、
前記電力変換ユニットのうち第1の相に対応するものは、第1の相線から中性線に向かって前記第2の方向に沿った第1の向きに直列接続されており、
前記電力変換ユニットのうち前記第1の相に隣接する第2の相に対応するものは、第2の相線から前記中性線に向かって前記第1の向きとは逆向きの第2の向きに直列接続されており、
前記電力変換ユニットのうち前記第2の相に隣接する第3の相に対応するものは、第3の相線から前記中性線に向かって前記第1の向きに直列接続されている
ことを特徴とする電力変換器装置。
【請求項2】
前記交流配線は、前記第2の方向に沿って、平行かつ直線状に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、下記特許文献1の要約には、「複数個の2次巻線を有する入力変圧器1と、この入力変圧器1を収納する変圧器盤10と、前記2次巻線に1対1で接続され、所望の周波数の単相交流電圧を出力する単位インバータ2を複数台直列接続した各相をY接続して構成した3相インバータと、前記3相インバータを構成する単位インバータ2を収納する変換器盤20とを備え、前記変換器盤20は、絶縁物からなる複数本の支柱22と、この複数本の支柱22の隣り合う支柱間を横方向に締結する複数個の金属製の棚板23を有し、前記棚板23上に前記単位インバータ2を夫々載置固定するように構成する。」と記載されている。
【0003】
また、下記特許文献2の要約には、「実施形態に係る電力変換装置は、直列に接続され、スイッチングによりそれぞれのコンデンサを充放電する複数の単位変換器を含むレグを含む電力変換器と、前記レグの一端と接地との間に接続された第1断路器と、前記レグの他端と接地との間に接続された第2断路器と、前記第1断路器および前記第2断路器に遮断信号を供給する遮断信号生成部と、を備える。前記単位変換器のそれぞれは、第1抵抗器と、前記第1抵抗器に直列に接続された第2抵抗器と、を含む。前記コンデンサは、前記第1抵抗器および前記第2抵抗器の直列接続体に並列に接続される。前記電力変換器が停止した後に、前記遮断信号生成部は、前記遮断信号によって前記第1断路器および前記第2断路器を導通させる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-357436号公報
【文献】特開2018-170832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した技術において、一層適切に電力変換器装置を構成したいという要望がある。
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、適切に構成できる電力変換器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の電力変換器装置は、一対の交流端子と、前記交流端子から入力または出力される電力に対して電力変換を行う電力変換回路と、を各々が備え、第1の方向および前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って配列された複数の電力変換ユニットと、複数の前記電力変換ユニットの前記交流端子を、三相交流の相毎に、前記第2の方向に沿って直列接続する交流配線と、を備え、前記電力変換ユニットのうち第1の相に対応するものは、第1の相線から中性線に向かって前記第2の方向に沿った第1の向きに直列接続されており、前記電力変換ユニットのうち前記第1の相に隣接する第2の相に対応するものは、第2の相線から前記中性線に向かって前記第1の向きとは逆向きの第2の向きに直列接続されており、前記電力変換ユニットのうち前記第2の相に隣接する第3の相に対応するものは、第3の相線から前記中性線に向かって前記第1の向きに直列接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力変換器装置を適切に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に適用される電力変換ユニットの回路構成を示す図である。
図2】電力変換ユニットを前面側から見た模式的斜視図である。
図3】電力変換ユニットを背面側から見た模式的斜視図である。
図4】第1実施形態による電力変換器装置を前面側から見た模式的斜視図である。
図5】電力変換器装置を背面側から見た模式的斜視図である。
図6】交流配線に現れる電圧を示す模式的なベクトル図である。
図7】比較例による電力変換器装置を前面側から見た模式的斜視図である。
図8】比較例において、交流配線に現れる電圧を示す模式的なベクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
上述した特許文献1,2の内容を応用すると、電力変換ユニットを直列接続することにより、三相電力と直流電力とを相互変換するマルチレベルの電力変換装置を構成できると考えられる。この種の電力変換装置に印加される三相交流電圧は、数kVから数十kV程度の高電圧になる場合が多い。そのため、特に三相交流の入出力点では線間電圧を考慮した絶縁設計が必要になり、電力変換装置が大型化するという問題が生じる。そこで、後述する実施形態は、隣接する電力変換ユニット間における電圧を低くすることにより、電力変換装置を小型化しようとするものである。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に適用される電力変換ユニット10の回路構成を示す図である。
図1において、電力変換ユニット10は、AC/DC変換回路11(電力変換回路)と、DC/DC変換回路12(電力変換回路)と、一対の交流端子14A,14Bと、一対の直流端子16P,16Nと、を備えている。なお、以下の説明において、電力変換ユニット10は単に「ユニット」と称することがある。また、AC/DC変換回路11およびDC/DC変換回路12は、単に「回路」と称することがある。また、交流端子14A,14Bおよび直流端子16P,16Nは、単に「端子」と称することがある。
【0011】
電力潮流が端子14A,14Bから端子16P,16Nに向かう場合、AC/DC変換回路11は、端子14A,14Bから供給された単相交流電力を直流電力に変換し、DC/DC変換回路12に供給する。また、DC/DC変換回路12は、AC/DC変換回路11から供給された直流電圧を降圧して直流端子16P,16Nから出力する。逆に、電力潮流が端子16P,16Nから端子14A,14Bに向かう場合、回路12は、端子16P,16Nから入力された直流電力を昇圧して回路11に供給する。また、回路11は、供給された直流電力を交流電力に変換し、端子14A,14Bから出力する。
【0012】
DC/DC変換回路12は、絶縁型の変換回路である。すなわち、図示は省略するが、DC/DC変換回路12は、絶縁トランスと、その一次側および二次側に接続されたブリッジ回路と、を備えている。これらブリッジ回路は、電力潮流の向きに応じて、インバータまたは同期整流回路として機能する。
【0013】
図2は、電力変換ユニット10を前面側から見た模式的斜視図である。
図2において、X軸(第1の方向)、Y軸(第2の方向)およびZ軸は相互に直交する軸であり、例えばX軸は左右方向、Y軸は上下方向、Z軸は奥行き方向になる。ユニット10は略直方体状に形成されており、その前面板22(第1の面)は略矩形板状に形成されている。そして、前面板22には、交流端子14A,14BがY軸方向に沿って配列されている。
【0014】
図3は、電力変換ユニット10を背面側から見た模式的斜視図である。
ユニット10の背面板24(第2の面)も略矩形板状に形成されている。そして、背面板24には、直流端子16P,16Nが、やはりY軸方向に沿って配列されている。
【0015】
図4は、第1実施形態による電力変換器装置100を前面側から見た模式的斜視図である。
電力変換器装置100は、複数のユニット10を備えている。そして、これらユニット10は、X軸方向(第1の方向)およびY軸方向(第2の方向)に沿って二次元的に配置されている。なお、図示の例では、電力変換器装置100は、X軸方向に3列、Y軸方向に4列で、合計12個のユニット10を備えている。これらユニット10の位置を「4xy」の形式で表現する。ここで、xはX軸方向の座標値(1,2または3)であり、yはY軸方向の座標値(1,2,3または4)である。
【0016】
最上端左右の位置414,434におけるユニット10の端子14Aには、それぞれ配線401(第1の相線)および配線403(第3の相線)が、接続されている。また、最下端中央の位置421におけるユニット10の端子14Bには、配線402(第2の相線)が接続されている。なお、本明細書において「配線」とは、被覆付ケーブル、被覆無ケーブル、ブスバー等を含む意味である。
【0017】
また、最下端左右の位置411,431におけるユニット10の端子14Bには、配線404(中性線)が接続されている。この配線404は、最上端中央の位置424におけるユニット10の端子14Aにも接続されている。また、配線401,403と、配線404との間には、合計9個(3×3個)の配線406が設けられている。これら配線406は、上段側の(例えば位置434の)端子14Bと、下段側の(例えば位置433の)端子14Aと、を接続する。
【0018】
これにより、位置411~414のユニット10は、前面板22に設けられた端子14A,14Bを介して、中性線である配線404と、U相の配線401との間に順次直列に接続されている。また、同様に、位置431~434のユニット10は、前面板22に設けられた端子14A,14Bを介して、配線404と、W相の配線403との間に順次直列に接続されている。
【0019】
また、位置421~424のユニット10は、前面板22に設けられた端子14A,14Bを介して、V相の配線402と、中性線である配線404との間に順次直列に接続されている。すなわち、V相に係る位置421~424のユニット10の接続順序は、U相,W相に係る位置411~414,位置431~434のユニット10の接続順序とは逆方向になっている。上述した配線401~406を、「交流配線40」と総称することがある。図示のように、交流配線40は、Y軸方向に沿って、平行かつ直線状に配置されている。
【0020】
図5は、電力変換器装置100を背面側から見た模式的斜視図である。
図5において、最下段の位置411,421,431のユニット10において、背面板24に設けられた正極側の端子16Pは配線51Pに接続され、負極側の端子16Nは配線51Nに接続されている。同様に、最下段から2番目の位置412,422,432のユニット10において、背面板24に設けられた正極側の端子16Pは配線52Pに接続され、負極側の端子16Nは配線52Nに接続されている。
【0021】
同様に、最下段から3番目の位置413,423,433のユニット10において、背面板24に設けられた正極側の端子16Pは配線53Pに接続され、負極側の端子16Nは配線53Nに接続されている。同様に、最上段の位置414,424,434のユニット10において、背面板24に設けられた正極側の端子16Pは配線54Pに接続され、負極側の端子16Nは配線54Nに接続されている。上述した配線51P~54P,51N~54Nを、「直流配線50」と総称することがある。
【0022】
図4および図5に示した例においては、U,V,Wの各相に直列に接続されるユニット10の段数を「4」としたが、ユニット10の段数は「4」に限定されるものではない。また、上述した例では、各ユニット10の前面板22に交流端子14A,14Bを配置し、背面板24に直流端子16P,16Nを配置した。しかし、端子16P,16Nを配置する面は、端子14A,14Bを配置する面とは異なる面であればよく、上述の例に限定されるわけではない。
【0023】
図6は、交流配線40に現れる電圧を示す模式的なベクトル図である。
図中に示す電圧Vm1は、X軸方向に隣接する位置424,434における2台のユニット10の各交流端子14Aの間に現れる電圧である。図示のように、電圧Vm1は、相電圧に等しい値になる。電圧Vm1以外の電圧については図示を省略するが、X軸方向に隣接する何れの交流配線40についても、隣接する一対の交流配線40に現れる電圧は、相電圧またはそれ以下の値になる。
【0024】
[比較例]
次に、上記実施形態の効果を明確にするため、比較例について説明する。なお、以下の説明において、上述した実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図7は、比較例による電力変換器装置200を前面側から見た模式的斜視図である。
電力変換器装置200は、第1実施形態による電力変換器装置100(図4参照)と同様に、合計12個のユニット10を備えている。電力変換器装置200の位置411~414におけるU相のユニット10および位置431~434におけるW相のユニット10に対する交流配線40の接続状態は、上述の電力変換器装置100のものと同様である。
【0025】
但し、位置421~424におけるV相のユニット10に対する交流配線40の接続状態は、電力変換器装置100のものとは逆になっている。すなわち、V相の配線402は、最上端中央の位置424におけるユニット10の交流端子14Aに接続されている。また、最下端中央の位置421におけるユニット10の端子14Bには、中性点の配線404が接続されている。上述した以外の電力変換器装置200の構成は、第1実施形態の電力変換器装置100のものと同様である。
【0026】
図8は、比較例において、交流配線40に現れる電圧を示す模式的なベクトル図である。
図中に示す電圧Vm2は、X軸方向に隣接する位置424,434における2台のユニット10の各交流端子14Aの間に現れる電圧である。図示のように、電圧Vm2は、相電圧の√3倍に等しい値になる。すなわち、電圧Vm2は、第1実施形態における電圧Vm1の√3倍になる。そして、比較例においては、この電圧Vm2に応じた絶縁距離を確保するように各ユニット10のX軸方向の間隔を定める必要が生じる。これにより、比較例の電力変換器装置200は、第1実施形態の電力変換器装置100と比較して大型化するという問題が生じる。
【0027】
[実施形態の効果]
以上のように、上記実施形態の電力変換器装置100によれば、電力変換ユニット10のうち第1の相(U相)に対応するものは、第1の相線(401)から中性線(404)に向かって第2の方向(Y)に沿った第1の向き(-Y)に直列接続されており、電力変換ユニット10のうち第1の相(U相)に隣接する第2の相(V相)に対応するものは、第2の相線(402)から中性線(404)に向かって第1の向き(-Y)とは逆向きの第2の向き(+Y)に直列接続されており、電力変換ユニット10のうち第2の相(V相)に隣接する第3の相(W相)に対応するものは、第3の相線(403)から中性線(404)に向かって第1の向き(-Y)に直列接続されている。
【0028】
これにより、交流配線40の相互間に生じる電圧差の最大値を抑制することができ、電力変換器装置100を小型化できる等、電力変換器装置100を適切に構成することができる。例えば、上述した比較例による電力変換器装置200と比較すると、上記実施形態では、交流配線40の相互間に生じる電圧差の最大値を「1/√3」に低減することができる。これにより、絶縁を確保するための沿面距離や空間距離を比較例よりも低減でき、電力変換器装置100を小型化することができる。
【0029】
また、交流配線40は、第2の方向(Y)に沿って、平行かつ直線状に配置されていると一層好ましい。これにより、絶縁を確保するための沿面距離や空間距離を効率的に活かすことができ、電力変換器装置100を一層小型化することができる。
【0030】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成に他の構成を追加してもよく、構成の一部について他の構成に置換をすることも可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0031】
(1)上記各実施形態において電力変換ユニット10は、交流端子14A,14Bと直流端子16P,16Nとの間で双方向の電力変換を行うものであった。しかし、電力変換ユニット10は、一方向の電力変換を行うものであってもよい。また、電力変換ユニット10は、入出力とも単相交流とし、周波数変換や電圧変換を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 電力変換ユニット
11 AC/DC変換回路(電力変換回路)
12 DC/DC変換回路(電力変換回路)
14A,14B 交流端子
40 交流配線
100 電力変換器装置
401 配線(第1の相線)
402 配線(第2の相線)
403 配線(第3の相線)
404 配線(中性線)
X 軸(第1の方向)
Y 軸(第2の方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8