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特許7588052ノズル、多液混合樹脂注入機および多液混合樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ノズル、多液混合樹脂注入機および多液混合樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20241114BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241114BHJP
   B29B 7/76 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B29B7/76
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021138166
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032186
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591164820
【氏名又は名称】ポリマーエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山川 孝好
(72)【発明者】
【氏名】影近 和也
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特公昭42-016662(JP,B2)
【文献】特開2000-193100(JP,A)
【文献】特開平10-291229(JP,A)
【文献】特開平03-104613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B05C 11/10
B29B 7/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有し、第1内部空間と、前記第1内部空間から前記中心軸に沿って離れた第2内部空間と、を含むシリンダと、
前記シリンダ内に挿入され、前記シリンダ内を前記中心軸に沿って摺動可能であり、前記第1内部空間と前記第2内部空間を隔てるピストンと、
前記第2内部空間内に配され、前記ピストンを前記中心軸に沿う方向に押圧するバネと、を備え、
前記シリンダは、前記第1内部空間に流体を受け入れるための、前記第1内部空間に通じる第1入口と、前記第1内部空間内の前記流体を吐出するための、前記第1内部空間に通じる第1出口と、前記第2内部空間に作動気体を受け入れるための、前記第2内部空間に通じる第2入口と、を含み、
前記ピストンは、前記第1内部空間に面する第1ヘッドと、前記第1ヘッドに連結され、前記第2内部空間に面する第2ヘッドと、を含み、
前記第1ヘッドは、前記中心軸に直交する第1投影面積を有し、
前記第2ヘッドは、前記中心軸に直交する第2投影面積を有し、
前記第2投影面積は、記第1投影面積よりも9倍以上大きい、
ノズル。
【請求項2】
0.7MPa以下の圧力を有する作動気体により動作するノズルを少なくとも2つ備え、
前記ノズルは、
中心軸を有し、第1内部空間と、前記第1内部空間から前記中心軸に沿って離れた第2内部空間と、を含むシリンダと、
前記シリンダ内に挿入され、前記シリンダ内を前記中心軸に沿って摺動可能であり、前記第1内部空間と前記第2内部空間を隔てるピストンと、を備え、
前記シリンダは、前記第1内部空間に流体を受け入れるための、前記第1内部空間に通じる第1入口と、前記第1内部空間内の前記流体を吐出するための、前記第1内部空間に通じる第1出口と、前記第2内部空間に作動気体を受け入れるための、前記第2内部空間に通じる第2入口と、を含み、
前記ピストンは、前記第1内部空間に面する第1ヘッドと、前記第1ヘッドに連結され、前記第2内部空間に面する第2ヘッドと、を含み、
前記第1ヘッドは、前記中心軸に直交する第1投影面積を有し、
前記第2ヘッドは、前記中心軸に直交する第2投影面積を有し、
前記第2投影面積は、記第1投影面積よりも9倍以上大きい、
多液混合樹脂注入機。
【請求項3】
作動気体により動作するノズルを備え、
前記ノズルは、
中心軸を有し、第1内部空間と、前記第1内部空間から前記中心軸に沿って離れた第2内部空間と、を含むシリンダと、
前記シリンダ内に挿入され、前記シリンダ内を前記中心軸に沿って摺動可能であり、前記第1内部空間と前記第2内部空間を隔てるピストンと、を備え、
前記シリンダは、前記第1内部空間に流体を受け入れるための、前記第1内部空間に通じる第1入口と、前記第1内部空間内の前記流体を吐出するための、前記第1内部空間に通じる第1出口と、前記第2内部空間に作動気体を受け入れるための、前記第2内部空間に通じる第2入口と、を含み、
前記ピストンは、前記第1内部空間に面する第1ヘッドと、前記第1ヘッドに連結され、前記第2内部空間に面する第2ヘッドと、を含み、
前記第1ヘッドは、前記中心軸に直交する第1投影面積を有し、
前記第2ヘッドは、前記中心軸に直交する第2投影面積を有し、
前記第2投影面積は、記第1投影面積よりも9倍以上大きい、
多液混合樹脂注入機。
【請求項4】
作動気体により動作するノズルと、圧力調整手段と、を備え、
前記ノズルは、
中心軸を有し、第1内部空間と、前記第1内部空間から前記中心軸に沿って離れた第2内部空間と、を含むシリンダと、
前記シリンダ内に挿入され、前記シリンダ内を前記中心軸に沿って摺動可能であり、前記第1内部空間と前記第2内部空間を隔てるピストンと、を備え、
前記シリンダは、前記第1内部空間に流体を受け入れるための、前記第1内部空間に通じる第1入口と、前記第1内部空間内の前記流体を吐出するための、前記第1内部空間に通じる第1出口と、前記第2内部空間に作動気体を受け入れるための、前記第2内部空間に通じる第2入口と、を含み、
前記ピストンは、前記第1内部空間に面する第1ヘッドと、前記第1ヘッドに連結され、前記第2内部空間に面する第2ヘッドと、を含み、
前記第1ヘッドは、前記中心軸に直交する第1投影面積を有し、
前記第2ヘッドは、前記中心軸に直交する第2投影面積を有し、
前記第2投影面積は、記第1投影面積よりも9倍以上大きく、
前記圧力調整手段は、
前記流体の流量変化に対して、前記作動気体の圧力を調整することで前記ピストンの位置を調整する、
システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムを備える多液混合樹脂注入機。
【請求項6】
請求項2、3、5のいずれか1項に記載の多液混合樹脂注入機を使った多液混合樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノズル、多液混合樹脂注入機および多液混合樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、少なくとも2つの液体の混合により固体化される多液混合樹脂の1つである。ポリウレタン樹脂は、優れた断熱特性および緩衝特性を有し、例えば、自動車用シートクッション、冷蔵庫用断熱部品、建築用断熱部品のような成型部品に広く応用されている。このような成型部品は、一般に、成型直前にポリオールとイソシアネートを混合してポリウレタン樹脂を生成し、そのポリウレタン樹脂を金型に注入することにより生産される。
【0003】
特許文献1は、プラスチックフォームを形成する混合吐出装置を開示している。この混合吐出装置は、液体B(具体的にはポリオール)と液体C(具体的にはイソシアネート)を混合するミキシングチャンバを備える。ミキシングチャンバは、液体Bの供給系に接続された注入口と液体Cの供給系に接続された注入口とを有し、これらの注入口から液体Bと液体Cの供給を受ける。
【0004】
特許文献2は、2液混合型ウレタン塗料を噴出させるための衝突混合スプレーガンを開示している。このスプレーガンは、ポリオールからなる主剤と有機ポリイソシアネート化合物からなる硬化剤とを混合する混合室を備える。混合室は、主剤の供給口と硬化剤の供給口に接続され、これらの供給口から主剤および硬化剤の供給を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5226129号公報
【文献】特許第4547207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、多液混合樹脂の物理特性の微調整のため、ミキシングチャンバに供給される原料流体の流量変化に対して圧力調整可能であることが好ましい。しかしながら、特許文献1および2は、原料流体の流量変化に対して圧力調整可能なノズルを開示していない。
【0007】
本開示は、原料流体の流量変化に対して圧力調整可能なノズル、そのようなノズルを適用した多液混合樹脂注入機および多液混合樹脂の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るノズルは、シリンダと、シリンダ内に挿入されたピストンとを備える。シリンダは、中心軸を有する。シリンダは、第1内部空間と、第1内部空間から中心軸に沿って離れた第2内部空間とを含む。ピストンは、シリンダ内を中心軸に沿って摺動可能である。ピストンは、第1内部空間と第2内部空間を隔てる。シリンダは、第1内部空間に流体を受け入れるための、第1内部空間に通じる第1入口を含む。シリンダは、また、第1内部空間内の流体を吐出するための、第1内部空間に通じる第1出口を含む。シリンダは、さらに、第2内部空間に作動気体を受け入れるための、第2内部空間に通じる第2入口を含む。ピストンは、第1内部空間に面する第1ヘッドと、第1ヘッドに連結され、第2内部空間に面する第2ヘッドと、を含む。第1ヘッドは、中心軸に直交する第1投影面積を有する。第2ヘッドは、中心軸に直交する第2投影面積を有する。第2投影面積は、第1投影面積よりも9倍以上大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、原料流体の流量変化に対して圧力調整可能なノズル、そのようなノズルを適用した多液混合樹脂注入機および多液混合樹脂の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態のノズルを示す断面図。
図2図2は、図1に示されたノズルの第1投影面積および第2投影面積を示す図。
図3図3は、図1に示されたノズルを含む多液混合樹脂注入機を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、ノズル1は、流体20および作動気体21を受け入れる。ノズル1は、受け入れた流体20を吐出する。流体20は、液体または気体である。流体20は、例えば、第1の圧力を有する。第1の圧力は、例えば、10MPa~20MPaである。作動気体21は、例えば、空気、不活性ガス、水蒸気、その他の適切な気体である。作動気体21は、例えば、第1の圧力よりも小さな第2の圧力を有する。第2の圧力は、0MPa~0.7MPaであり、特に、0.5MPa~0.7MPaの圧力は、一般的な工場内で入手可能な工場エアの圧力である。第2の圧力は、外部のシステムにより調整される。
【0012】
ノズル1は、シリンダ10と、シリンダ10内に挿入されたピストン30とを備える。シリンダ10は、例えば、鉄系金属、非鉄金属、繊維強化樹脂、セラミックス、その他の適切な素材からなることとしてもよい、ピストン30は、例えば、鉄系金属、非鉄金属、繊維強化樹脂、セラミックス、その他の適切な素材からなることとしてもよい。
【0013】
シリンダ10は、中心軸2を有する。シリンダ10は、第1内部空間13と、第1内部空間13から中心軸2に沿って離れた第2内部空間14とを含む。第1内部空間13は、流体20を収容する。第2内部空間14は、作動気体21を収容する。
【0014】
シリンダ10は、具体的には、第1シリンダ11と、第1シリンダ11に連結された第2シリンダ12とを含む。第1シリンダ11は、第1の内径Di1を有する。第2シリンダ12は、第1の内径Di1よりも大きな第2の内径Di2を有する。第1の内径Di1は、例えば、5mm~10mmである。第2の内径Di2は、例えば、30mm~70mmである。図1に示すように、第2シリンダ12は、第1シリンダ11に同軸に配置されてもよい。
【0015】
ピストン30は、第1内部空間13と第2内部空間14とを隔てている。ピストン30は、シリンダ10内を中心軸2に沿って摺動可能である。
【0016】
ピストン30は、具体的には、第1ヘッド31と、第1ヘッド31に連結された第2ヘッド32とを含む。第1ヘッド31は、第1の外径Do1を有する。第2ヘッド32は、第1の外径Do1よりも大きな第2の外径Do2を有する。第1の外径Do1は、例えば、5mm~10mmである。第2の外径Do2は、例えば、30mm~70mmである。図1に示すように、第2ヘッド32は、第1ヘッド31に同軸に配置されてもよい。
【0017】
本実施形態では、第1ヘッド31は、第1シリンダ11内に収容される。第1ヘッド31は、第1外周面33を有する。第1シリンダ11は、第1外周面33に面する第1内周面23を有する。上述の通り、第1ヘッド31は、第1の外径Do1を有する。第1シリンダ11は、第1の内径Di1を有する。第1の外径Do1は、第1の内径Di1と同じ、または、それよりも小さくてもよい。図1に示すように、第1ヘッド31は、第1内周面23に接触する第1パッキン34を含んでもよい。
【0018】
本実施形態では、第2ヘッド32は、第2シリンダ12内に収容される。第2ヘッド32は、第2外周面35を有する。第2シリンダ12は、第2外周面35に面する第2内周面24を有する。上述の通り、第2ヘッド32は、第2の外径Do2を有する。第2シリンダ12は、第2の内径Di2を有する。第2の外径Do2は、第2の内径Di2と同じ、または、それよりも小さくてもよい。図1に示すように、第2ヘッド32は、第2内周面24に接触する第2パッキン36を含んでもよい。
【0019】
シリンダ10は、第1内部空間13に流体20を受け入れるための、第1内部空間13に通じる1または複数の第1入口16を含む。本実施形態では、複数の第1入口16が第1シリンダ11に形成され、中心軸2まわりの周方向3に沿って等間隔に配置されている。
【0020】
シリンダ10は、第1内部空間13内の流体20を吐出するための、第1内部空間13に通じる1または複数の第1出口17を含む。本実施形態では、1つの第1出口17が第1シリンダ11に形成され、中心軸2と同軸に配置されている。
【0021】
シリンダ10は、第2内部空間14に作動気体21を受け入れるための、第2内部空間14に通じる1または複数の第2入口18を含む。本実施形態では、2つの第2入口18が第2シリンダ12に形成され、中心軸2を挟んで互いに反対に配置されている。
【0022】
シリンダ10は、さらに、第1内部空間13と第2内部空間14との間に、第2ヘッド32を挟んで第2内部空間14とは反対に位置する第3内部空間15を含んでもよい。
【0023】
シリンダ10は、さらに、第3内部空間15内の空気22を排出および第3内部空間15内に空気22を導入するための、第3内部空間15に通じる1または複数の第3通気口19を含んでもよい。本実施形態では、複数の第3通気口19が第2シリンダ12に形成され、中心軸2まわりの周方向3に沿って等間隔に配置されている。
【0024】
ピストン30は、第1出口17に面するニードル39を有してもよい。ピストン30は、中心軸2に沿う移動により、ニードル39と第1出口17との相対距離を調整して、第1出口17から吐出される流体20の流量変化に対して圧力を調整する。例えば、ピストン30は、中心軸2に沿う後退により、流体20の流量を増加させる。逆に、ピストン30は、中心軸2に沿う前進により、流体20の流量を低減させる。第1出口17がニードル39により閉塞されると、流体20の流量はゼロになる。ピストン30の位置は、第2内部空間14内の作動気体21の圧力により調整される。
【0025】
本実施形態では、第1内部空間13は、第1シリンダ11内に形成される。第1ヘッド31は、第1内部空間13に面する。第1ヘッド31は、第1内部空間13に面する第1端面37を含む。第2内部空間14は、第2シリンダ12内に形成される。第2ヘッド32は、第2内部空間14に面する。第2ヘッド32は、第2内部空間14に面する第2端面38を含む。
【0026】
ピストン30は、第2内部空間14内の作動気体21から、中心軸2に沿ってピストン30を前進させる向きの第1の力を受ける。第1の力は、概ね、第2内部空間14内の作動気体21の圧力と、第2ヘッド32(特に第2端面38)の中心軸2に垂直な投影面積とに依存する。一方、ピストン30は、第1内部空間13内の流体20から、中心軸2に沿ってピストン30を後退させる向きの第2の力を受ける。第2の力は、概ね、第1内部空間13内の流体20の圧力と、第1ヘッド31(特に第1端面37)の中心軸2に垂直な投影面積とに依存する。ピストン30は、第1の力および第2の力がバランスするような位置に留まる。
【0027】
ノズル1は、さらに、ピストン30を中心軸2に沿う方向に押圧するバネ50と、バネ50の押圧力を調整するアジャストボルト51とを含んでもよい。本実施形態では、ピストン30は、バネ50を受け入れる凹部40を第2ヘッド32に有する。アジャストボルト51は、中心軸2に沿って移動可能に、シリンダ10に保持されている。バネ50は、ピストン30とアジャストボルト51との間に配置される。ピストン30は、バネ50から、中心軸2に沿ってピストン30を前進させる向きの第3の力を受ける。本実施形態では、ピストン30は、第1の力、第2の力および第3の力がバランスするような位置に留まる。
【0028】
上述の通り、ピストン30の位置は、第2内部空間14内の作動気体21の圧力により調整可能である。本実施形態では、流体20の第1の圧力は、10MPa~20MPaである。作動気体21の第2の圧力は、例えば、0MPa~0.7MPaであり、特に、0.5MPa~0.7MPaの圧力は、一般的な工場内で入手可能な工場エアの圧力である。ノズル1は、低圧の作動気体21により高圧の流体20の流量を調整するために、次のような特徴を有していてもよい。
【0029】
図2に示すように、第1ヘッド31(具体的には、第1端面37)は、中心軸2に直交する第1投影面積S1を有する。第2ヘッド32(具体的には、第2端面38)は、中心軸2に直交する第2投影面積S2を有する。
第2投影面積S2は、第1投影面積S1よりも9倍以上大きくてもよい。以降、第1投影面積S1に対する第2投影面積S2の比率を単に「面積比」という。例えば、第1の外径Do1が10mmであり第2の外径Do2が30mmである場合に、面積比が9倍になる。
【0030】
第2投影面積S2は、第1投影面積S1よりも14倍以上大きくてもよい。14倍以上の面積比により、0.7MPaの圧力を有する作動気体21により10MPa以上の圧力を有する流体20の流量を調整することが可能となる。
【0031】
面積比は、さらに、20倍以上でもよい。20倍以上の面積比により、0.5MPaの圧力を有する作動気体21により10MPa以上の圧力を有する流体20の流量を調整することが可能となる。
【0032】
面積比は、さらに、29倍以上でもよい。29倍以上の面積比により、0.7MPaの圧力を有する作動気体21により20MPa以上の圧力を有する流体20の流量を調整することが可能となる。
【0033】
面積比は、さらに、40倍以上でもよい。40倍以上の面積比により、0.5MPaの圧力を有する作動気体21により20MPa以上の圧力を有する流体20の流量を調整することが可能となる。
ノズル1は、上述のような面積比により、低圧の作動気体21による高圧の流体20の流量調整を可能としている。ノズル1は、一般的な工場エアを作動気体21として利用可能である。
【0034】
面積比は、100倍以下でもよい。100倍以下の面積比により、ノズル1の小型化が可能となる。
図1に戻り、第1パッキン34は、リップ有りのパッキンまたはリップ無しのパッキンである。本実施形態では、第1パッキン34は、リップ無しのパッキンであり、例えば、Oリングである。同様に、第2パッキン36は、リップ有りのパッキンまたはリップ無しのパッキンである。本実施形態では、第2パッキン36は、リップ無しのパッキンであり、例えば、Oリングである。
【0035】
上述の通り、ピストン30の位置は、第2内部空間14内の作動気体21の圧力により調整可能である。作動気体21の圧力の増加および減少のサイクルは、ピストン30の前進および後退を含む往復運動を生む。ピストン30は、前進中に、ピストン30の前進に抗う向きに第1の摩擦力F1を受ける。逆に、ピストン30は、後退中に、ピストン30の後退に抗う向きに第2の摩擦力F2を生じる。第1の摩擦力F1と第2の摩擦力F2の差は、往復運動中のピストン30の位置にヒステリシスを生む。このヒステリシスは、縦軸に作動気体21の圧力をとり、横軸にピストン30の位置(ひいては、流体20の流量)をとるグラフ内に描かれる。リップ無しのパッキンは、前進時と後退時で略同じ摩擦係数を有するので、第1の摩擦力F1と第2の摩擦力F2の差を低減する。従って、リップ無しのパッキンは、ピストン30の位置に関するヒステリシスを小さくし、ひいては、流体20の流量調整の精度を高めることができる。
【0036】
図3に示されるように、ノズル1は、多液混合樹脂注入機70に応用されてもよい。多液混合樹脂注入機70は、2種類以上の原料流体を混合して樹脂を生成し、生成された樹脂を吐出する。吐出された樹脂は、例えば、成型部品を生成するために金型に注入される。樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂である。原料流体は、例えば、ポリオールおよびイソシアネートである。
【0037】
多液混合樹脂注入機70は、少なくとも2つのノズルを備える。本実施形態では、多液混合樹脂注入機70は、第1ノズル1aと、第2ノズル1bと、第1ノズル1aおよび第2ノズル1bに接続されたミキシングヘッド71とを備える。第1ノズル1aおよび第2ノズル1bは、上述のノズル1と同じ構造を有する。ミキシングヘッド71は、第1ノズル1aの第1出口17および第2ノズル1bの第1出口17に連通するミキシングチャンバを含む。
【0038】
ミキシングヘッド71は、第1ノズル1aから第1流体(例えば、ポリオール)を受け入れる。ミキシングヘッド71は、第2ノズル1bから第2流体(例えば、イソシアネート)を受け入れる。ミキシングヘッド71は、第1流体および第2流体を混合して樹脂(例えば、ポリウレタン樹脂)を生成し、その樹脂を吐出する。
【0039】
多液混合樹脂注入機70は、第1流体を供給する第1流体供給系72aおよび第2流体を供給する第2流体供給系72bに接続されてもよい。第1流体供給系72aは、第1ノズル1aの第1入口16に連結される。第2流体供給系72bは、第2ノズル1bの第1入口16に連結される。第1流体は、例えば、10MPa~20MPaの圧力を有する。第2流体は、例えば、10MPa~20MPaの圧力を有する。
【0040】
第1流体供給系72aは、タンク73a、フィルタ74a、計量ポンプ75a、流量センサ76aを含む。同様に、第2流体供給系72bは、タンク73b、フィルタ74b、計量ポンプ75b、流量センサ76bを含む。
【0041】
多液混合樹脂注入機70は、さらに、第1流体をミキシングヘッド71からタンク73aに戻す第1循環系77aおよび第2流体をミキシングヘッド71からタンク73bに戻す第2循環系77bに接続されてもよい。第1循環系77aは、第1流体供給系72aに連結するバルブ78aを含んでもよい。第2循環系77bは、第2流体供給系72bに連結するバルブ78bを含んでもよい。
【0042】
多液混合樹脂注入機70は、第1ノズル1aに作動気体(例えば、空気)を供給する第1作動気体供給系80aおよび第2ノズル1bに作動気体(例えば、空気)を供給する第2作動気体供給系80bを備える。第1作動気体供給系80aは、第1ノズル1aの第2入口18に連結される。第2作動気体供給系80bは、第2ノズル1bの第2入口18に連結される。
【0043】
第1作動気体供給系80aは、圧力レギュレータ81aを含んでもよい。第2作動気体供給系80bは、圧力レギュレータ81bを含んでもよい。圧力レギュレータ81aは、第1ノズル1aからミキシングヘッド71に供給される第1流体の流量を調整するために、第1ノズル1aに供給される作動気体の圧力を調整する。圧力レギュレータ81bは、第2ノズル1bからミキシングヘッド71に供給される第2流体の流量を調整するために、第2ノズル1bに供給される作動気体の圧力を調整する。
【0044】
第1作動気体供給系80aおよび第2作動気体供給系80bは、圧縮機79に接続されてもよい。圧縮機79は、例えば、0.5MPa~0.7MPaの圧力を有する作動気体を生成する。0.5MPa~0.7MPaの圧力を有する作動気体は、例えば、一般的な工場内で入手可能な工場エアである。
【0045】
多液混合樹脂注入機70は、例えば、第1から第4のノズルを備えてもよい。第1から第3のノズルは、第1から第3のポリオールをそれぞれ受け入れ、このうちの1つを選択的にミキシングヘッド71に吐出してもよい。第4のノズルは、イソシアネートを吐出してもよい。このような多液混合樹脂注入機70は、物理特性の異なる3種類のポリウレタン樹脂を選択的に生成できる。
【0046】
本実施形態の多液混合樹脂注入機70は、低圧の作動気体により第1流体の流量および第2流体の流量を調整可能である(流量をゼロにするシャット機能を含む)。この多液混合樹脂注入機70は、例えば、工場エアをそのまま利用可能である。すなわち、多液混合樹脂注入機70は、工場エアの圧力を増圧する増圧機を要しない。
【0047】
本実施形態の多液混合樹脂注入機70は、工場内の製造ラインに設置されてもよい。一方、圧力レギュレータ81aおよび81bは、製造ラインから離れた遠隔制御室に設置されてもよい。このようなシステムにより、オペレータは、製造ラインに入らずに第1流体の流量および第2流体の流量を調整できる。
【符号の説明】
【0048】
1:ノズル,1a:第1ノズル,1b:第2ノズル,2:中心軸,10:シリンダ,11:第1シリンダ,12:第2シリンダ,13:第1内部空間,14:第2内部空間,15:第3内部空間,16:第1入口,17:第1出口,18:第2入口,19:第3通気口,20:流体,21:作動気体,22:空気,23:第1内周面,24:第2内周面,30:ピストン,31:第1ヘッド,32:第2ヘッド,33:第1外周面,34:第1パッキン,35:第2外周面,36:第2パッキン,37:第1端面,38:第2端面,39:ニードル,40:凹部,50:バネ,51:アジャストボルト,70:多液混合樹脂注入機,71:ミキシングヘッド
図1
図2
図3