(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】巻取部材
(51)【国際特許分類】
A61G 3/08 20060101AFI20241114BHJP
B66D 1/54 20060101ALI20241114BHJP
A61G 3/06 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
A61G3/08
B66D1/54 H
A61G3/06 711
(21)【出願番号】P 2021208414
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021001561
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 研一朗
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070185(JP,A)
【文献】特開2019-202837(JP,A)
【文献】特開2012-095810(JP,A)
【文献】特開2006-125607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/08
B66D 1/54
A61G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺部材を巻き取りおよび繰り出す巻取部と、フランジ部とを備えた、所定の軸周りに回転可能な巻取部材であって、
前記巻取部材において、少なくとも前記フランジ部が樹脂材料によって構成され、
前記フランジ部は、前記フランジ部の一方の端面に設けられ、前記巻取部材の軸を中心とした環状の凹部として設けられた磁石収容部を有し、
前記磁石収容部は、前記磁石収容部の径方向で内側において環状に延びる第1内壁と、前記磁石収容部の径方向で外側において環状に延びる第2内壁とを有し、
前記巻取部材がさらに、前記磁石収容部に収容された環状の支持体と、前記支持体に沿って設けられた磁石とを備え、
前記磁石は、前記第1内壁および前記第2内壁に対して、前記磁石収容部の径方向で離間して前記支持体上に配置され、
前記第1内壁または第2内壁には、前記支持体の径方向のエッジと、前記磁石収容部の径方向で接触するように前記第1内壁または前記第2内壁から径方向に突出する複数の突部が設けられている、巻取部材。
【請求項2】
前記フランジ部が、前記支持体の一部と前記巻取部材の軸方向に係合して、前記支持体が前記磁石収容部から離脱することを規制する規制部を有している、請求項1に記載の巻取部材。
【請求項3】
前記支持体が、前記磁石収容部に配置される環状の磁石支持部と、前記磁石支持部に対して前記磁石支持部の径方向に突出し、前記規制部と前記巻取部材の軸方向に係合する係合部とを有している、請求項2に記載の巻取部材。
【請求項4】
前記支持体が、前記磁石支持部に対して前記磁石支持部の径方向に突出した第2係合部を有し、
前記フランジ部が、前記第2係合部と前記巻取部材の軸まわり方向に係合する被係合部を有している、請求項3に記載の巻取部材。
【請求項5】
前記支持体は、前記フランジ部を構成する樹脂材料よりも線膨張係数が小さい金属材料によって構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の巻取部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻取部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車椅子を車内へと乗り入れる際に、ウインチ装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。具体的には、ウインチ装置に設けられたベルト等の長尺部材が車椅子に引っ掛けられ、ウインチ装置が駆動されて長尺部材が巻き取られることによって、車椅子が車両に設けられたスロープを通って車両内へと移動する。
【0003】
特許文献1のウインチ装置は、モータと、モータに連結されるとともにドラムに接続された平歯車減速部と、ベルト等の長尺部材が巻き付けられたドラムとを備えている。また、特許文献1のウインチ装置は、ベルト等の長尺部材の引き出し量を算出するために、ドラムの回転数をモニタするための回転センサを備えている。具体的には、回転センサは、平歯車減速部に設けられたマグネットと、マグネットに対向するホールICとから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、回転センサを構成するマグネットが平歯車減速部に設けられており、マグネットを設けるために平歯車減速部の構造が複雑となるうえ、大型化してしまう。また、通常、特許文献1のようなウインチ装置に用いられるドラム等の巻取部材は金属材料によって構成されており、軽量化が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、巻取部材が組み込まれる装置を小型・軽量化することが可能な巻取部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の巻取部材は、長尺部材を巻き取りおよび繰り出す巻取部と、フランジ部とを備えた、所定の軸周りに回転可能な巻取部材であって、前記巻取部材において、少なくとも前記フランジ部が樹脂材料によって構成され、前記フランジ部は、前記フランジ部の一方の端面に設けられ、前記巻取部材の軸を中心とした環状の凹部として設けられた磁石収容部を有し、前記磁石収容部は、前記磁石収容部の径方向で内側において環状に延びる第1内壁と、前記磁石収容部の径方向で外側において環状に延びる第2内壁とを有し、前記巻取部材がさらに、前記磁石収容部に収容された環状の支持体と、前記支持体に沿って設けられた磁石とを備え、前記磁石は、前記第1内壁および前記第2内壁に対して、前記磁石収容部の径方向で離間して前記支持体上に配置され、前記第1内壁または第2内壁には、前記支持体の径方向のエッジと、前記磁石収容部の径方向で接触するように前記第1内壁または前記第2内壁から径方向に突出する複数の突部が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の巻取部材によれば、巻取部材が組み込まれる装置を小型・軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の巻取部材が設けられた駆動装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態の巻取部材が設けられた駆動装置を示す上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の巻取部材が設けられた駆動装置において、巻取部材から繰り出された長尺部材によって車椅子が固定された状態を示す概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態の巻取部材の斜視図である。
【
図8】
図4に示される巻取部材の支持体および磁石を示す正面図である。
【
図9】
図4に示される巻取部材において、規制部と係合部とが係合した状態を示す斜視図である。
【
図11】
図10に示される状態から、フランジ部が熱膨張した状態を示す図である。
【
図13】
図12に示される変形例の巻取部材において、第2係合部と被係合部との間の係合箇所を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の巻取部材を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明の巻取部材は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
なお、本明細書において、「Aに対して垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直(限定されないが、例えば±10°の範囲)であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行(限定されないが、例えば±10°の範囲)であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状/C状」およびこれに類する表現は、完全なC形状/C状のみを指すのではなく、C形状/C状を含む部分を有し、見た目にC形状に近い形状(略C形状)を含んで指すものとする。
【0012】
図1および
図2は、本実施形態の巻取部材1が設けられた駆動装置Dを示している。本実施形態では、駆動装置Dは、
図1および
図2に示されるように、巻取部材1と、巻取部材1に巻き取られる長尺部材Lと、巻取部材1を駆動する駆動部DRと、巻取部材1が回転可能に支持される巻取部材支持体Sとを備えている。また、駆動装置Dはさらに、巻取部材1を巻き取る方向に付勢する付勢部材(図示せず)を備えている。
【0013】
駆動装置Dは、駆動部DRを駆動することによって、巻取部材1を所定の軸X(
図1および
図2参照)周りに回転させて、長尺部材Lを操作する。より具体的には、駆動装置Dは、駆動部DRを駆動することによって、長尺部材Lを巻き取る方向に巻取部材1を回転させて、長尺部材Lが接続された操作対象(例えば
図3における車椅子WCなど)に引き操作を加えるように構成されている。
【0014】
本実施形態では、駆動装置Dは、長尺部材Lの一端を操作対象(車椅子WC)に係合して、長尺部材Lを巻き取ることにより操作対象に所定の操作を加えるように構成されている。より具体的には、駆動装置Dは、
図3に示されるように、車椅子WCを車両において固定するために、長尺部材Lが操作される車椅子固定装置に適用されている。
図3に示される車椅子固定装置では、車両などの取付対象に複数の駆動装置Dが設けられ、操作対象である車椅子WCのフレームにそれぞれの駆動装置Dから繰り出された長尺部材Lが取り付けられ、長尺部材Lが引き操作されることで、車椅子WCが固定されるように構成されている。より具体的には、車椅子固定装置は、車両の車室内に複数設けられた駆動装置Dを駆動することによって、長尺部材Lが巻取部材1に巻き取られ、複数の方向から車椅子WCを牽引することで、車椅子WCを車両内で安定して保持する。なお、駆動装置Dが適用される用途は、駆動部DRによって巻取部材1を回転させて操作対象を操作することができれば、特に限定されない。例えば、駆動装置Dは、車椅子WCをスロープを介して地面から車室内に引き上げたり、車室から地面へと引き下げたりするウインチ装置であってもよい。また、駆動装置Dの操作対象は車椅子WC以外のものであっても構わない。
【0015】
長尺部材Lは、巻取部材1に巻き取られ、巻取部材1から繰り出される長尺の部材である。本実施形態では、長尺部材Lは、操作対象に取り付けられ、駆動装置Dによって操作されて操作対象を操作する。長尺部材Lは、巻取部材1に巻き取られ、巻取部材1から繰り出される長尺の部材であれば、特に限定されない。長尺部材Lは、例えば、ベルトやワイヤ等とすることができる。本実施形態では、長尺部材Lは、
図1~
図3に示されるように、巻取部材1に巻き取られるベルトL1と、ベルトL1の先端に設けられたフックL2とを有している。しかし、長尺部材LのベルトL1に代えて、ワイヤなど他の長尺の部材が用いられていてもよい。また、長尺部材Lの先端に設けられたフックL2に代えて、ワイヤの先端がループ状に形成されたものなど、他の係止部や固定部が設けられていてもよい。
【0016】
駆動部DRは、巻取部材1を回転させる駆動力を発生させる。駆動部DRが駆動して巻取部材1が回転することによって、巻取部材1に巻き取られた長尺部材Lが操作される。駆動部DRは、
図1および
図2に示されるように、モータDR1と、モータDR1と巻取部材1との間に設けられ、モータDR1の駆動力を巻取部材1へと伝達する伝動部材(図示せず)とを備えている。駆動部DRは、巻取部材1を軸X周り方向の一方向のみに回転させるように構成されていてもよいし、巻取部材1を軸X周り方向の一方向および他方向の両方に回転させるように構成されていてもよい。本実施形態では、駆動部DRは、巻取部材1との接続状態をクラッチ機構などによって接続または非接続状態に切替可能に構成されていてもよい。例えば、操作対象に牽引力を加えるために長尺部材Lを巻き取るときには、駆動部DRが巻取部材1と接続されるようにし、長尺部材Lを手動で操作対象に接続させるために長尺部材Lを巻取部材1から繰り出すときや、操作対象から長尺部材Lを外して長尺部材Lを付勢部材の付勢力によって巻取部材1に巻き取るときに、駆動部DRと巻取部材1とを非接続状態としてもよい。
【0017】
巻取部材支持体Sは、巻取部材1を軸X周りに回転可能に支持する支持体である。巻取部材支持体Sの形状および構造は、巻取部材1を軸X周りに回転可能に支持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、
図1および
図2に示されるように、巻取部材支持体Sに対して、軸X方向の一方側に駆動部DRが設けられ、軸X方向の他方側に付勢部材が収容された付勢部材収容部Hが設けられている。また、本実施形態では、巻取部材支持体Sには、
図1および
図2に示されるように、後述する回転センサSSの磁力検出部(ホール素子)MDが、巻取部材1に設けられた磁石Mに対向する位置に設けられている(
図4参照)。本実施形態では、磁力検出部MDは、
図1および
図2に示されるように、巻取部材支持体Sの、巻取部材1の一方の端面3aに対向する部分Saに、軸X方向で磁石Mに対向するように設けられている。
【0018】
付勢部材収容部Hは、巻取部材1を巻き取る方向に付勢する付勢部材(図示せず)を収容している。付勢部材は、例えば、巻取部材1が駆動部DRによって駆動されていないときなどに、巻取部材1に対して長尺部材Lが自動的に巻き取られるようにするために、巻取部材1を付勢する。付勢部材は、例えばゼンマイばねなどによって構成することができる。
【0019】
本実施形態では、駆動装置Dは、
図4に示されるように、巻取部材1に巻き取られた長尺部材Lの引き出し量および巻き取り量を算出可能な回転センサSSを有している。回転センサSSは、磁石Mと、磁石Mに対向するように設けられた磁力検出部MDとによって構成されている。磁石Mは、後述するように巻取部材1に設けられており、磁力検出部MDは巻取部材支持体S側に設けられている。磁石Mは、軸X周り方向にS極・N極が交互に存在するように、軸X周り方向に沿って着磁されている(
図8参照。なお、
図8においてハッチングが付された部分がS極であり、磁石Mの周方向でハッチングが付された部分の間に位置するのがN極である)。磁力検出部MDは、例えばホール素子(ホールIC)とすることができる。巻取部材1が軸X周りに回転することで、磁石Mも回転し、磁石Mの磁力を磁力検出部MDが検出して、磁力検出部MDからの信号(パルス)が図示しない制御部によってカウントされる。この磁力検出部MDからの信号(パルス)がカウントされることで、長尺部材Lの引き出し量、巻き取り量が算出される。回転センサSSから得られる長尺部材Lの引き出し量、巻き取り量は、例えば、複数設けられた駆動装置Dにおいて、複数の長尺部材Lの引き出し量、巻き取り量を互いに等しくするための調整などに用いることができる。なお、磁石Mの着磁方向や、磁力検出部MDの配置位置は、巻取部材1に巻き取られた長尺部材Lの引き出し量および巻き取り量を算出可能であれば特に限定されない。
【0020】
巻取部材1は、
図2および
図4に示されるように、長尺部材Lを巻き取りおよび繰り出す巻取部2と、フランジ部3とを備えている。巻取部材1はさらに、
図4~
図9に示されるように、後述する磁石収容部31に収容された環状の支持体4と、支持体4に沿って設けられた磁石Mとを備えている。
【0021】
巻取部材1は、軸X周りに回転可能である。本実施形態では、巻取部材1は、巻取部材支持体Sに回転可能に支持されている。巻取部材1が軸X周りの一方向に回転したときに、長尺部材Lを巻取部2に巻き取り、巻取部材1が軸X周りの他方向に回転したときに、長尺部材Lを巻取部2から繰り出す。
【0022】
本実施形態では、巻取部材1は、駆動部DRに接続され、駆動部DRによって所定の方向に回転するように構成されている。また、巻取部材1は、本実施形態では、巻取部材1を巻き取る方向に付勢する付勢部材に接続されて、長尺部材Lを自動的に巻き取ることができるように構成されている。上述したように、巻取部材1は磁石Mを備えており、磁石Mおよび磁力検出部MDによって、巻取部材1に巻き取られた長尺部材Lの引き出し量および巻き取り量を算出可能となっている。
【0023】
本実施形態では、巻取部材1において、少なくともフランジ部3が樹脂材料によって構成されている。少なくともフランジ部3が樹脂材料によって構成されている場合、巻取部材1が軽量化し、巻取部材1が設けられた装置(例えば駆動装置D)を軽量化することができる。本実施形態では、巻取部2およびフランジ部3は、樹脂材料によって一体的に構成されているが、少なくともフランジ部3が樹脂材料によって構成されて、巻取部2が樹脂材料以外、例えば金属材料などによって構成されていてもよい。なお、「フランジ部3が樹脂材料によって構成され」という用語は、フランジ部3の大部分(特に後述する磁石収容部31を含む部分)が樹脂材料によって構成されていればよいことを意味する。したがって、「フランジ部3が樹脂材料によって構成され」には、フランジ部3において局所的に金属材料が用いられているものも含まれる。
【0024】
巻取部2は、
図1および
図2に示されるように、長尺部材Lが巻き取られる部位である。巻取部2は、
図2および
図4に示されるように、軸X方向に延びる筒状に形成されており、長尺部材Lを軸X周りに巻き取ることができるように構成されている。巻取部2は中空に形成されており、駆動部DRと巻取部2とを接続する軸部材Ax(
図2参照)が挿通されている。軸部材Axは、巻取部2と軸X周り方向で係合して、駆動部DRの駆動力によって回転する軸部材Axの回転力が巻取部2に伝達されるように構成されている。また、軸部材Axは、付勢部材収容部Hに設けられた付勢部材にも係合しており、付勢部材の付勢力によって軸部材Axが回転した際に、軸部材Axの回転力が巻取部2に伝達されるように構成されている。
【0025】
フランジ部3は、軸X方向で巻取部2の少なくとも一方の端部に設けられたフランジ状の部分である。
図4~
図7に示されるように、フランジ部3は、フランジ部3の一方の端面3aに設けられ、巻取部材1の軸Xを中心とした環状の凹部として設けられた磁石収容部31を有している。フランジ部3の形状および構造は、磁石収容部31を設けることができれば、特に限定されない。本実施形態では、フランジ部3は、
図4に示されるように、巻取部2の外周に対して巻取部2の径方向外側に張り出す円盤状の部分である。
【0026】
磁石収容部31は、支持体4および磁石Mが収容される環状の凹部である。本実施形態では、磁石収容部31は、
図4、
図5および
図7に示されるように、フランジ部3の径方向に所定の幅を有する、軸Xを中心とした環状の凹溝として形成されている。磁石収容部31は、フランジ部3の端面3aに対して軸X方向に所定の深さを有している。本実施形態では、磁石Mは、
図7および
図10においては磁石収容部31に完全に収容された状態として示されているが、磁石Mは磁石収容部31に少なくとも部分的に収容されていればよく、磁石Mの一部がフランジ部3の端面3aに対して軸X方向で突出していてもよい。なお、
図7および
図10において、左側が径方向内側であり、右側が径方向外側である。
【0027】
図10に示されるように、磁石収容部31は、第1内壁31aと第2内壁31bとを有している。本実施形態では、磁石収容部31は、第1内壁31aと第2内壁31bとをフランジ部3の径方向につなぐ底部31cを有している。
【0028】
第1内壁31aは、磁石収容部31の径方向で内側において環状に延びる、磁石収容部31の壁部である。第1内壁31aは、本実施形態では、フランジ部3の端面3aに対して略垂直に延びる壁部である。
【0029】
第2内壁31bは、磁石収容部31の径方向で外側において環状に延びる、磁石収容部31の壁部である。第2内壁31bは、本実施形態では、フランジ部3の端面3aに対して略垂直に延びる壁部である。第2内壁31bは、第1内壁31aに対して、フランジ部3の径方向に所定の距離で離間して延びている。
【0030】
底部31cは、第1内壁31aおよび第2内壁31bを繋ぎ、環状に延びている。本実施形態では、底部31cは、
図7および
図10に示されるように、磁石収容部31に収容された支持体4を支持する。本実施形態では、底部31cは、後述する支持体4の折曲部42が収容されるように、支持体4の後述する磁石支持部41と対向する底部31cの対向部分に対して一段深くなった折曲部収容溝Gを有している。折曲部収容溝Gは、本実施形態では、底部31cのうち、フランジ部3の径方向内側において、第1内壁31aに沿って延びている。なお、折曲部収容溝は、例えば支持体4の折曲部が径方向外側に設けられる場合には、底部31cの径方向外側において、第2内壁31bに沿って延びていてもよい。
【0031】
磁石収容部31に収容される磁石Mは、磁石Mに対向して配置される磁力検出部MDと相互作用することで、長尺部材Lの引き出し量および巻き取り量の算出を可能にする。磁石Mの形状は、磁力検出部MDと相互作用することで、長尺部材Lの引き出し量および巻き取り量の算出を可能であれば、特に限定されない。上述したように、本実施形態では、磁石Mは、
図8に示されるように、軸X周り方向にS極・N極が交互に存在するように、軸X周り方向に沿って着磁された、1つの円環状の磁石である。しかし、磁石は、例えば、支持体4上で、軸X周り方向(周方向)に環状に配列された複数の磁石によって構成されていてもよい。この場合、複数の磁石は、軸X周り方向で分離していてもよいし、接触していてもよい。
【0032】
磁石Mは、
図4、
図5および
図8に示されるように、支持体4に沿って設けられている。磁石Mは、支持体4に対して、接着剤等、公知の固定手段によって固定される。磁石Mの断面形状は特に限定されないが、本実施形態では、磁石Mは、磁石Mの延在方向(軸X周り方向)に垂直な断面が、四角形状となっている(
図7および
図10参照)。
【0033】
支持体4は磁石Mを支持する。支持体4は、磁石Mが固定された状態で、磁石収容部31に収容される。
図7および
図10に示されるように、支持体4および磁石Mが一体となった状態で磁石収容部31に収容されたとき、支持体4が底部31c側に配置され、磁石Mはフランジ部3の端面3a側に配置される。
【0034】
支持体4は、
図4、
図5および
図8に示されるように、環状に形成されており、環状の凹部として形成された磁石収容部31に収容される。支持体4は、本実施形態では、
図7および
図10に示されるように、径方向で磁石Mよりも幅広であり、径方向で第1内壁31aおよび第2内壁31bとの間の間隔よりも小さくなるように形成されている。
【0035】
本実施形態では、支持体4は、
図7および
図10に示されるように、磁石収容部31に配置される環状の磁石支持部41を有している。磁石支持部41の形状は、磁石Mを支持することができれば、特に限定されない。本実施形態では、磁石支持部41は、磁石Mを支持する環状の板状体として形成されている。
【0036】
また、本実施形態では、支持体4は、
図7および
図10に示されるように、磁石支持部41に対して折れ曲がった折曲部42を有している。折曲部42は、本実施形態では、磁石支持部41に対して折れ曲がって、軸X方向でフランジ部3の端面3aから離れる方向に延びている。折曲部42は、磁石収容部31の折曲部収容溝Gに収容されている。折曲部42は、支持体4自体の強度を向上させることに加えて、後述するようにフランジ部3が熱膨張して、支持体4に接触したときに、支持体4に加わる力を分散して、支持体4およびフランジ部3の破損を抑制することができる。
【0037】
支持体4の材料は、磁石Mを支持することができ、所定の強度を有していれば特に限定されない。本実施形態では、支持体4は、フランジ部3を構成する樹脂材料よりも線膨張係数が小さい材料、特に金属材料によって構成されている。支持体4が線膨張係数が小さい材料によって構成されている場合、後述するように、支持体4の膨張量が磁石収容部31の膨張量よりも小さくなり、支持体4と磁石収容部31との間での熱膨張による干渉を小さくすることができる。特に、支持体4が、フランジ部3を構成する樹脂材料よりも線膨張係数が小さい金属材料によって構成されている場合、フランジ部3の熱膨張によって、支持体4がフランジ部3から圧力を受けたときに、破損しにくい。なお、支持体4に用いられる材料は、特に限定されないが、磁石Mの線膨張係数(例えば7~10×10-6/℃)を考慮して、例えば線膨張係数が6~15×10-6/℃の範囲の材料とすることができる。支持体4の材料の線膨張係数がこの範囲内である場合、支持体4と磁石Mとの間での膨張量の差が小さくなり、支持体4と磁石Mとの間の接着剤の剥がれなどによる分離が抑制される。なお、フランジ部3を構成する樹脂材料も、所定の強度を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、線膨張係数が5~15×10-5/℃の範囲の材料を用いることができる。
【0038】
次に、支持体4および磁石Mの、フランジ部3の磁石収容部31への取り付けについて説明する。
【0039】
図5および
図6に示されるように、第2内壁31bには、支持体4の径方向外側のエッジE1と、磁石収容部31の径方向で接触するように第2内壁31bから径方向内側に突出する複数の突部Pが設けられている。突部Pは、支持体4を磁石収容部31に対して軸X方向に移動させたときに、支持体4の径方向外側のエッジE1と接触して、支持体4を径方向外側から保持する。これにより、
図5に示されるように、支持体4が複数の突部Pによって支持されて、支持体4が径方向でより正確に位置決めされる。したがって、支持体4に支持された磁石Mが軸Xを中心として径方向に正確に位置決めされる。これにより、巻取部材1(および磁石M)が軸X周りに回転したときに、磁力検出部MDに対する磁石Mの位置が軸X周り方向で安定する。したがって、長尺部材Lの引き出し量、巻き取り量を精度良く算出することが可能となる。
【0040】
突部Pの数は特に限定されないが、安定して環状の支持体4を支持するために、3つ以上、好ましくは4つ以上(本実施形態では6つ)の突部Pが所定の間隔をおいて設けられていることが好ましい。また、突部Pの頂部から軸Xまでの長さは、支持体4を磁石収容部31に取り付けたときに、突部Pと支持体4のエッジE1とが接触する長さであれば、特に限定されない。本実施形態では、突部Pの頂部から軸Xまでの設計上の長さは、支持体4の中心(
図5では、軸Xに一致する)からエッジE1(支持体4の外周)までの長さよりも短くなっている。この場合、支持体4を磁石収容部31に取り付けたときに、突部Pがわずかに変形しながら、安定して支持体4が保持される。また、この場合、支持体4またはフランジ部3に寸法誤差が生じた場合であっても、支持体4を容易に安定して保持することができる。また、突部Pは、支持体4の全周と接触するのではなく、支持体4に局所的に接触するだけであるので、後述するように、支持体4の取り付け時に、支持体4を軸X周りに回転させる際に、容易に回転させることができる。
【0041】
また、支持体4の径方向内側のエッジE2は、
図6、
図7および
図10に示されるように、第1内壁31aとの間に径方向に空間が空くように構成されていることが好ましい。この場合、支持体4を磁石収容部31に入れる際に、第1内壁31aと支持体4の径方向内側のエッジE2とが干渉しにくく、支持体4またはフランジ部3に寸法誤差が生じた場合であっても、支持体4を磁石収容部31に取り付けやすい。
【0042】
なお、本実施形態では、突部Pは、第2内壁31bに設けられているが、突部Pは、第1内壁31aに設けられていてもよいし、第1内壁31aおよび第2内壁31bの両方に設けられていてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、フランジ部3は、
図4、
図5および
図9に示されるように、支持体4の一部と巻取部材1の軸X方向に係合して、支持体4が磁石収容部31から離脱することを規制する規制部32を有している。規制部32は、支持体4が磁石収容部31に収容された状態で、支持体4の一部に対して、軸X方向で支持体4が離脱する方向に位置して、支持体4の一部と軸X方向で係合する。これにより、支持体4が磁石収容部31から離脱することを規制することができる。本実施形態では、支持体4は、
図4、
図5および
図9に示されるように、規制部32と巻取部材1の軸X方向に係合する係合部43を有し、規制部32と係合部43とが軸X方向に係合することで、支持体4が磁石収容部31から離脱することが規制される。規制部32の構造は、支持体4の一部と軸X方向で係合して、支持体4が磁石収容部31から離脱することを規制することができれば、特に限定されない。本実施形態では、規制部32は、磁石収容部31の径方向外側において、後述する支持体4の係合部43と係合可能な位置において、軸X周り方向に延びる舌片状に形成されている。舌片状に延びる規制部32は、規制部32の軸X方向でフランジ部3の端面3aとの間に係合部43を収容可能なスペースを有しており、
図5において係合部43が二点鎖線で示される状態から実線で示す状態へと移動するように、支持体4を回転させることによって、規制部32に係合部43を軸X方向で係合させることができる。なお、本実施形態では、規制部32は複数(
図5では4つ)設けられているが、規制部32の数は特に限定されない。
【0044】
上述したように、本実施形態では、支持体4は係合部43を有し、規制部32と軸X方向で係合することにより、支持体4が磁石収容部31から離脱することを抑制する。係合部43の構造は、規制部32と係合することができれば、特に限定されないが、本実施形態では、係合部43は、
図4、
図5および
図8に示されるように、磁石支持部41に対して磁石支持部41の径方向に突出している。具体的には、係合部43は、磁石支持部41の径方向外側のエッジE1から径方向外側に突出する係合片として構成されている。本実施形態では、規制部32および係合部43は、軸X周り方向で複数設けられている。複数の規制部32は、基端から先端までの延び方向が、いずれも軸X周り方向で同じ方向となるように設けられている。これにより、支持体4を軸X周りで一方向に回転させることにより、複数の係合部43が複数の規制部32に対して係合する。なお、規制部が磁石収容部31に対して径方向内側に設けられ、係合部が径方向内側に突出していてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、規制部32は、
図9に示されるように、軸X周り方向で係合部43と係合する係合段部32aを有している。係合段部32aは、
図5に示されるように、支持体4が軸X周り方向に回転させることによって、係合部43と規制部32とが軸X方向に係合する場合に、支持体4が、軸X周り方向で係合部43と規制部32との間の係合が解除される方向に回転することを抑制する。なお、係合部43が規制部32と軸X周り方向で規制部32に係合する係合段部を有していてもよく、その場合も同様の効果が得られる。
【0046】
また、上述したように駆動装置Dは、フランジ部3の端面3aに対向する位置に巻取部材支持体Sを有しており、本実施形態では、巻取部材支持体Sは磁性体(磁性金属等)によって構成されている。この場合、磁性体によって構成された巻取部材支持体Sに、支持体4に設けられた磁石Mが引き寄せられ、磁石Mおよび支持体4が軸X方向で巻取部材支持体S側に移動しようとする。これにより、支持体4に設けられた係合部43と係合段部32aとが確実に係合する。したがって、車両の振動等によっても、係合部43と係合段部32aとの係合が解除されにくくなり、支持体4および磁石Mがフランジ部3の磁石収容部31から外れることが抑制される。
【0047】
また、
図12および
図13に示される変形例に示されるように、規制部32および係合部43に加えて、支持体4が軸Xまわり方向に回転することを抑制する、第2係合部44および被係合部33を設けてもよい。これにより、さらに支持体4の磁石収容部31からの離脱を抑制することができる。具体的には、
図12および
図13に示されるように、変形例の巻取部材1は、支持体4が、磁石支持部41に対して磁石支持部41の径方向に突出した第2係合部44を有し、フランジ部3が、第2係合部44と巻取部材1の軸Xまわり方向に係合する被係合部33を有している。
【0048】
図12および
図13に示される変形例では、規制部32および係合部43が、軸X方向で係合するとともに、第2係合部44が被係合部33と軸Xまわり方向で係合する。したがって、駆動装置Dなど、巻取部材1の取付対象に振動や衝撃などが加わり、支持体4に対して、支持体4がフランジ部3に対して軸Xまわり方向に回転する力が加わったとしても、第2係合部44と被係合部33との間の軸Xまわり方向での係合によって、支持体4の軸Xまわり方向の回転が規制される。したがって、規制部32および係合部43の軸X方向での係合が維持され、支持体4が磁石収容部31から離脱することがさらに抑制される。規制部32に係合段部32a(
図9参照)が設けられている場合、支持体4の軸Xまわり方向の回転はある程度抑制されるが、例えば、巻取部材1の取付対象に繰り返しの振動が生じる場合や、巻取部材1が回転した後、急停止する場合など、係合段部32aと係合部43との間の係合が解除される方向に力が加わる場合がある。第2係合部44および被係合部33が設けられることにより、巻取部材1の取付対象に繰り返しの振動が生じたり、巻取部材1が回転した後、急停止した場合であっても、より確実に支持体4が磁石収容部31から離脱することを抑制することができる。
【0049】
第2係合部44は、被係合部33と軸Xまわり方向に係合する部分である。本実施形態では、第2係合部44は、係合部43と同様の構成とされているが、第2係合部は、係合部43と異なる構成を有していてもよい。本実施形態では、第2係合部44は、
図12および
図13に示されるように、磁石支持部41に対して磁石支持部41の径方向に突出している。具体的には、第2係合部44は、磁石支持部41の径方向外側のエッジE1から径方向外側に突出する係合片として構成されている。なお、被係合部が磁石収容部31に対して径方向内側に設けられ、第2係合部が径方向内側に突出していてもよい。
【0050】
被係合部33は、第2係合部44と軸Xまわり方向で係合して、支持体4がフランジ部3に対して軸Xまわり方向に回転することを規制する。被係合部33の形状および構造は、第2係合部44と軸Xまわり方向で係合して、支持体4がフランジ部3に対して軸Xまわり方向に回転することを規制することができれば、特に限定されない。本実施形態では、被係合部33は、
図13に示されるように、フランジ部3の端面から軸X方向に突出した凸部によって形成されている。より具体的には、被係合部33は、第2係合部44と軸Xまわり方向で対向して、第2係合部44と係合する係合面33aを有している。本実施形態では、係合面33aは、フランジ部3の端面に対して垂直な方向に延びている。また、係合部43を規制部32に軸X方向で対向する位置まで移動させるために、支持体4をフランジ部3に対して回転させる際に、第2係合部44が被係合部33を乗り越えることができるように、被係合部33は傾斜面33bを有している。第2係合部44が被係合部33を乗り越えるように支持体4をフランジ部3に対して回転させると、係合部43は規制部32の下に潜り込んで軸X方向に係合可能となり、第2係合部44は、被係合部33と軸Xまわり方向に係合可能な状態となる。これにより、支持体4の軸Xまわり方向の回転が規制され、規制部32および係合部43の軸X方向での係合が維持され、支持体4が磁石収容部31から離脱することがさらに抑制される。
【0051】
なお、本実施形態では、支持体4に3つの係合部43が設けられ、3つの係合部43が3つの規制部32にそれぞれ軸X方向に係合し、1つの第2係合部44が1つの被係合部33に軸Xまわり方向で係合している。しかし、係合部および規制部の間の係合箇所の数、第2係合部と被係合部との間の係合箇所の数は、図示する例に限定されない。例えば、係合部および規制部の間の係合箇所が軸Xまわり方向に2箇所設けられ、第2係合部および被係合部の間の係合箇所が2箇所設けられていてもよい。また、第2係合部44と被係合部33は、第2係合部44が軸Xまわり方向に、支持体4が磁石収容部31から離脱しない程度に一定量移動したときに係合してもよいし、常に係合していてもよい。なお、係合部および規制部の間の係合箇所の軸Xまわり方向での位置や、第2係合部および被係合部の間の係合箇所の位置は特に限定されない。また、第2係合部44と被係合部33とが軸Xまわり方向に係合する場合、規制部32に係合段部32aは設けられていなくてもよいが、より支持体4のフランジ部3に対する回転を抑制するために、規制部32に係合段部32aが設けられていてもよい。
【0052】
本実施形態では、磁石Mは、
図6および
図10に示されるように、第1内壁31aおよび第2内壁31bに対して、磁石収容部31の径方向で離間して支持体4上に配置されている。これにより、樹脂材料によって構成されたフランジ部3が熱により膨張した場合であっても、膨張したフランジ部3によって磁石Mが押圧されて破損することが抑制される。以下、この点について詳細に説明する。
【0053】
上述したように、磁石Mおよび支持体4が磁石収容部31に配置された際、
図10に示されるように、磁石Mは、第1内壁31aおよび第2内壁31bに対して径方向で離間して、支持体4上に配置されている。より具体的には、磁石Mは、磁石Mの径方向外側のエッジME1および径方向内側のエッジME2が、支持体4の径方向外側のエッジE1および径方向内側のエッジE2から径方向にはみ出さないように、支持体4に支持されている。本実施形態では、磁石Mの径方向外側のエッジME1は、径方向で支持体4のエッジE1よりも径方向で内側に位置し、磁石Mの径方向内側のエッジME2は、支持体4のエッジE2よりも径方向で外側に位置している。なお、
図10においては、支持体4は径方向の外側および内側の両方で、第1内壁31aおよび第2内壁31bのそれぞれから離間して示されているが、突部Pを有する場所では、支持体4の径方向外側のエッジE1が突部Pに当接している(
図7参照)。
【0054】
磁石Mおよび支持体4が磁石収容部31に配置された状態で、巻取部材1が高温環境下で使用された場合など、環境の温度変化によって、樹脂材料によって構成されたフランジ部3が熱膨張する場合がある。フランジ部3が熱膨張すると、第1内壁31aおよび第2内壁31bを含む磁石収容部31の各部位は、
図11に示されるように、径方向外側に広がるように膨張する(
図11における二点鎖線は膨張前の状態を示している)。これにより、
図11に示されるように、径方向内側の第1内壁31aが支持体4のエッジE2に当接する。さらにフランジ部3が熱膨張すると、支持体4のエッジE2に、第1内壁31aから力が加わるが、第1内壁31aから加わる力は支持体4が受け止めるため、磁石Mに力が加わることが抑制され、磁石Mの破損が抑制される。本実施形態では、支持体4は金属材料によって構成されているので剛性が高く、第1内壁31aから膨張による圧力が加わっても、支持体4が破損することも抑制される。
【0055】
また、本実施形態では、支持体4が折曲部42を有しており、折曲部42は第1内壁31aに対向する対向面を有している。これにより、フランジ部3の熱膨張によって第1内壁31aが径方向外側へと膨張したときに、第1内壁31aは折曲部42と面接触する。したがって、第1内壁31aと折曲部42とが面接触することにより、膨張時の圧力が分散される。したがって、高温環境と常温環境とが繰り返される状況で繰り返し支持体4が第1内壁31aによって圧力を受けた場合でも、第1内壁31aおよび折曲部42の破損が抑制される。
【0056】
上述したように、本実施形態では、磁石Mは第1内壁31aおよび第2内壁31bに対して、磁石収容部31の径方向で離間して支持体4上に配置され、第2内壁31bには、支持体4の径方向のエッジE1と、磁石収容部31の径方向で接触するように第2内壁31bから径方向に突出する複数の突部Pが設けられている。したがって、本実施形態の巻取部材1では、巻取部材1を軽量化するために、フランジ部3を樹脂材料によって構成し、そのフランジ部3に磁石Mを組み込んだとしても、上述したように熱膨張するフランジ部3によって磁石Mが破損するという樹脂材料のフランジ部3に磁石Mを組み込んだときの弊害を取り除くことができる。また、巻取部材1のフランジ部3に磁石Mを組み込む場合、磁石Mの位置決め精度が問題となるが、本実施形態の巻取部材1では、突部Pと支持体4とを係合させることで、支持体4を介して磁石Mが精度良く位置決めされる。したがって、本実施形態の巻取部材1は、磁石Mを巻取部材1に組み込んでも、高温環境下で問題なく使用でき、磁石Mの位置決め精度が高くなる。よって、磁石Mを巻取部材1とは別に設けたり、磁石Mがフランジ部3の熱膨張によって破損しないようにフランジ部3に金属等の重い材料を用いる必要がなく、磁石Mの位置決め精度のために別部材を用いる必要がない。したがって、巻取部材1を小型化し、軽量化することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 巻取部材
2 巻取部
3 フランジ部
3a フランジ部の一方の端面
31 磁石収容部
31a 第1内壁
31b 第2内壁
31c 底部
32 規制部
32a 係合段部
33 被係合部
33a 係合面
33b 傾斜面
4 支持体
41 磁石支持部
42 折曲部
43 係合部
44 第2係合部
Ax 軸部材
D 駆動装置
DR 駆動部
DR1 モータ
E1 支持体の径方向外側のエッジ
E2 支持体の径方向内側のエッジ
G 折曲部収容溝
H 付勢部材収容部
L 長尺部材
L1 ベルト
L2 フック
M 磁石
MD 磁力検出部(ホール素子)
ME1 磁石の径方向外側のエッジ
ME2 磁石の径方向内側のエッジ
P 突部
S 巻取部材支持体
Sa 巻取部材支持体の板状部分
SS 回転センサ
WC 車椅子
X 巻取部材の軸