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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】流体機械の静翼の振動減衰装置
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/04 20060101AFI20241114BHJP
   F04D 29/52 20060101ALI20241114BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20241114BHJP
   F01D 9/04 20060101ALI20241114BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F01D25/04
F04D29/52 B
F04D29/66 G
F01D9/04
F16F15/126 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021212090
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096378
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 謙
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼ 大樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 収
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 達朗
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-24697(JP,A)
【文献】特開2004-124941(JP,A)
【文献】特開2013-139768(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312800(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/04
F02C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体機械の動翼の後方に配置された静翼の振動減衰装置であって、
前記静翼の中心軸線を中心とする円筒形をなし、内周面に前記静翼を接合された環状体と、
前記環状体を外囲し、前記環状体の外周面に接触する内周面を含むエラストマ製の振動減衰部材と、
前記振動減衰部材を外囲し、前記振動減衰部材に径方向内向きの予荷重を与える予荷重付与部材とを有し、
前記振動減衰部材は周方向に断片状である振動減衰装置。
【請求項2】
前記予荷重付与部材は、前記振動減衰部材の外周に圧入された円筒体を含む請求項1に記載の振動減衰装置。
【請求項3】
前記予荷重付与部材は、前記振動減衰部材を外囲する円筒体と、前記円筒体に周方向応力を含む予荷重を付与すべく前記円筒体を外囲する薄板バンド及び前記薄板バンドを緊締する締結具とを含む請求項1に記載の振動減衰装置。
【請求項4】
前記環状体を外囲するハウジングを有し、前記予荷重付与部材の前記予荷重の反力を前記ハウジングにより支持するようにした請求項1に記載の振動減衰装置。
【請求項5】
流体機械の動翼の後方に配置された静翼の振動減衰装置であって、
前記静翼の中心軸線を中心とする円筒形をなし、内周面に前記静翼を接合された環状体と、
前記環状体を外囲し、前記環状体の外周面に接触する内周面を含むエラストマ製の振動減衰部材と、
前記振動減衰部材を外囲し、前記振動減衰部材に径方向内向きの予荷重を与える予荷重付与部材とを有し、
前記予荷重付与部材は、前記振動減衰部材の外周に圧入された円筒体を含む振動減衰装置。
【請求項6】
流体機械の動翼の後方に配置された静翼の振動減衰装置であって、
前記静翼の中心軸線を中心とする円筒形をなし、内周面に前記静翼を接合された環状体と、
前記環状体を外囲し、前記環状体の外周面に接触する内周面を含むエラストマ製の振動減衰部材と、
前記振動減衰部材を外囲し、前記振動減衰部材に径方向内向きの予荷重を与える予荷重付与部材とを有し、
前記予荷重付与部材は、前記振動減衰部材を外囲する円筒体と、前記円筒体に周方向応力を含む予荷重を付与すべく前記円筒体を外囲する薄板バンド及び前記薄板バンドを緊締する締結具とを含む振動減衰装置。
【請求項7】
流体機械の動翼の後方に配置された静翼の振動減衰装置であって、
前記静翼の中心軸線を中心とする円筒形をなし、内周面に前記静翼を接合された環状体と、
前記環状体を外囲し、前記環状体の外周面に接触する内周面を含むエラストマ製の振動減衰部材と、
前記振動減衰部材を外囲し、前記振動減衰部材に径方向内向きの予荷重を与える予荷重付与部材と
前記環状体を外囲するハウジングとを有し、
前記予荷重付与部材の前記予荷重の反力を前記ハウジングにより支持するようにした振動減衰装置。
【請求項8】
前記予荷重付与部材は、前記振動減衰部材を外囲する円筒体と、前記円筒体と前記ハウジングとの間に配置されたばね部材とを含み、前記ばね部材を介して前記反力を前記ハウジングにより支持する請求項に記載の振動減衰装置。
【請求項9】
前記振動減衰部材は円筒状である請求項5~8の何れか一項に記載の振動減衰装置。
【請求項10】
前記環状体が前記動翼の軸線方向の後方に隣接して配置されている請求項1~9の何れか一項に記載の振動減衰装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械の静翼の振動減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジン等のタービン装置は、ハウジング(支持体)を有する。ハウジングは、径方向外向きに延出する軸流式圧縮機用の複数の動翼を備えた回転軸(回転体)を所定の軸線周りに回転可能に支持している。タービン装置では、動翼の回転によって生じる気流により、動翼よりも下流側に周期的な圧力変動が生じる。この圧力変動によってハウジングが振動する。特に、ハウジングに、動翼の下流に隣接して配置されている静翼に大きい翼振動が発生する。
【0003】
特に、航空機用のターボファンエンジンでは、フロントファン(動翼)の回転によって生じる気流により、フロントファンのより下流側に周期的な圧力変動が生じる。この圧力変動によってフロントファンの下流に隣接して配置されているステータベーン(静翼)に大きい翼振動が発生する。
【0004】
静翼の振動を減衰させる振動減衰装置として、静翼のハウジングに対する取付基部とハウジングとの間に挟まれた金属ばねを有し、金属ばねの弾性変形に伴う金属ばねと取付基部及びハウジングとの摩擦によって振動を減衰するもの(例えば、特許文献1)や、粘弾性体の変形によって振動を減衰するもの(例えば、特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】EP1441108(A2)号公報
【文献】特許第5035138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来技術では、得られる減衰が不十分で、静翼に大きい応力が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、従来よりも大きい減衰が得られ、振動により静翼に大きい応力が発生することを回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、流体機械の動翼(28)の後方に配置された静翼(30)の振動減衰装置であって、前記静翼の中心軸線を中心とする円筒形をなし、内周面(82B)に前記静翼を接合された環状体(80)と、前記環状体を外囲し、前記外周面に接触する内周面(100A)を含むエラストマ製の振動減衰部材(100)と、前記振動減衰部材を外囲し、前記振動減衰部材に径方向内向きの予荷重を与える予荷重付与部材(102)とを有する。
【0009】
この態様によれば、従来よりも大きい減衰が得られ、振動により静翼に大きい応力が発生することを回避することができる。
【0010】
上記の態様において、前記振動減衰部材は円筒状或いは周方向に断片状であってよい。
【0011】
上記の態様において、前記予荷重付与部材が、前記振動減衰部材の外周に圧入された円筒体103を含んでいてもよい。
【0012】
この態様によれば、円筒体の圧入により予荷重を振動減衰部材に安定して付与することができる。
【0013】
上記の態様において、前記予荷重付与部材は、前記振動減衰部材を外囲する円筒体(103)と、前記円筒体に周方向応力を含む予荷重を付与すべく前記円筒体を外囲する薄板バンド(110)及び前記薄板バンドを緊締する締結具(112)とを含んでいてもよい。
【0014】
この態様によれば、振動減衰部材に対する予荷重の付与が容易になると共に予荷重を容易に調節することができる。
【0015】
上記の態様において、前記支持体が、前記環状体を外囲するハウジングを有し、前記予荷重付与部材の前記予荷重の反力を前記ハウジングにより支持するようにしてもよい。
【0016】
この態様によれば、振動減衰部材に対する予荷重の付与が安定して確実に行われる。
【0017】
上記の態様において、前記予荷重付与部材は、前記振動減衰部材を外囲する円筒体(103)と、前記円筒体と前記ハウジングとの間に配置されたばね部材(114)とを含み、前記ばね部材を介して前記反力を前記ハウジングにより支持するようにしてもよい。
【0018】
この態様によれば、ばね部材によって予荷重を調節できると共に、振動減衰部材に対する予荷重の付与が安定して確実に行われる。
【0019】
上記の態様において、前記環状体が前記動翼の軸線方向の後方に隣接して配置されていてもよい。
【0020】
この態様によれば、動翼の回転により生じる気流による静翼の振動が効果的に減衰される。
【発明の効果】
【0021】
以上の態様によれば、従来よりも大きい減衰が得られ、振動により静翼に大きい応力が発生することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による振動減衰装置が航空機用ガスタービンエンジンに用いられた実施形態を示す概略図
図2】本発明による振動減衰装置の実施形態1を示す要部の断面図
図3】本発明による振動減衰装置の実施形態2を示す要部の断面図
図4】実施形態2の振動減衰装置に用いられる薄板バンド及び締結具の斜視図
図5】本発明による振動減衰装置の実施形態3を示す要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明による振動減衰装置が航空機用ガスタービンエンジンに用いられた実施形態を、図を参照して説明する。
【0024】
先ず、本実施形態の振動減衰装置が用いられる航空機用ガスタービンエンジン(ターボファンエンジン)の概要を、図1を参照して説明する。
【0025】
ガスタービンエンジン10は、互いに同心に配置された略円筒状のアウタケーシング12およびインナケーシング14を有する。インナケーシング14は内部に前部第1ベアリング16および後部第1ベアリング18によって低圧系回転軸(回転体)20を回転自在に支持している。インナケーシング14及び低圧系回転軸20は前部第2ベアリング22および後部第2ベアリング24によって中空軸による高圧系回転軸26を回転自在に支持している。
【0026】
低圧系回転軸20は高圧系回転軸26の中空部をこれらの中心軸線Xの方向に相対回転可能な貫通している。つまり、低圧系回転軸20と高圧系回転軸26とは中心軸線Xを共通の中心軸線として同心に配置されている。尚、中心軸線Xをガスタービンエンジン10の中心軸線Xと云うことがある。
【0027】
低圧系回転軸20はインナケーシング14より前方に突出した略円錐形状の先端部20Aを含む。先端部20Aの外周には周方向に複数のフロントファン28が設けられている。フロントファン28の下流側には複数のステータベーン30が周方向に所定の間隔をおいて設けられている。ステータベーン30の下流側には、アウタケーシング12とインナケーシング14との間に形成された円環状断面形状のバイパスダクト32と、インナケーシング14に同心(中心軸線Xに同心)に形成された円環状断面形状の空気圧縮用ダクト34とが並列に設けられている。
【0028】
空気圧縮用ダクト34の入口部には軸流圧縮機36が設けられている。軸流圧縮機36は、低圧系回転軸20の外周からに設けられた径方向外向きに延出する複数の翼による前後2列の動翼列38と、インナケーシング14に設けられた複数の翼による前後2列の静翼列40とを軸線方向に互いに隣接して交互に有する。各静翼列40は、対応する列の動翼列38の下流側に隣接して配置されている。換言すると、各静翼列40は、対応する列の動翼列38の軸線方向の後方に隣接して配置されている。
【0029】
空気圧縮用ダクト34の出口部には遠心圧縮機42が設けられている。遠心圧縮機42は高圧系回転軸26の外周に設けられたインペラ44を有する。空気圧縮用ダクト34の出口部にはインペラ44の上流側に位置するストラット46が設けられている。遠心圧縮機42の出口部にはインナケーシング14に固定されたデフューザ50が設けられている。
【0030】
デフューザ50の下流側には燃焼器54が設けられている。燃焼器54は中心軸線Xを中心とする円環状の逆流燃焼室52を画定する。逆流燃焼室52にはデフューザ50から圧縮空気通路51を流れる圧縮空気が供給される。
【0031】
インナケーシング14には逆流燃焼室52に燃料を噴射する複数の燃料噴射ノズル(燃料噴射装置)70が中心軸線X周りの周方向に等間隔をおいて取り付けられている。各燃料噴射ノズル70は逆流燃焼室52に向けて燃料を噴射する。逆流燃焼室52は、燃料噴射ノズル70から噴射される燃料と圧縮空気通路51からの空気との混合気の燃焼によって高温の燃焼ガスを生成する。
【0032】
逆流燃焼室52の下流側には逆流燃焼室52にて生成された燃焼ガスを噴付けられる高圧タービン60および低圧タービン62が設けられている。高圧タービン60は逆流燃焼室52の出口部に固定された静翼列58及び高圧系回転軸26の外周に固定された動翼列64を含む。低圧タービン62は、高圧タービン60の下流側にあり、インナケーシング14に固定された複数の静翼列66及び低圧系回転軸20の外周に設けられた複数の動翼列68を軸線方向に交互に有する。
【0033】
ガスタービンエンジン10の始動に際しては、スタータモータ(不図示)によって高圧系回転軸26を回転駆動することが行われる。高圧系回転軸26が回転駆動されると、遠心圧縮機42によって圧縮された空気が逆流燃焼室52に供給され、逆流燃焼室29における空気と燃料との混合気の燃焼によって燃料ガスが発生する。燃料ガスは動翼列64、68に噴付けられ、高圧系回転軸26及び低圧系回転軸20を回転させる。
【0034】
これにより、低圧系回転軸20および高圧系回転軸26が回転し、フロントファン28が回転すると共に軸流圧縮機36および遠心圧縮機42が運転され、圧縮空気が逆流燃焼室52に供給される。これにより、ガスタービンエンジン10はスタータモータの停止後も運転を継続する。
【0035】
ガスタービンエンジン10の運転中に、フロントファン28が吸い込んだ空気の一部は、バイパスダクト32を通過して後方に噴出し、推力を発生する。フロントファン28が吸い込んだ空気の残部は、逆流燃焼室52に供給されて燃料との混合気として燃焼し、燃焼ガスは低圧系回転軸20および高圧系回転軸26の回転駆動に寄与した後に後方に噴出し、推力を発生する。
【0036】
次に、本発明による振動減衰装置78をステータベーン30の支持部76に適用した実施形態1を、図2を参照して説明する。
【0037】
ステータベーン30の支持部76は、環状体80と、アウタケーシング12の一部により構成され、環状体80を外囲する円筒状のハウジング90とを有する。
【0038】
環状体80は、中心軸線Xを中心とする円筒形の外周面82Aを構成する円筒部82と、円筒部82の軸線方向の両端部から各々径方向外方に延出した円盤状の径方向延出部84A、86A及び径方向延出部84A、86Aの先端より各々軸線方向外方に延出した円筒状の軸線方向延出部84B、86Bによる鉤形部84、86とを有する。各ステータベーン30は、円筒部82の内周面82Bから径方向内向きに延出している。
【0039】
鉤形部84、86の外側にはゴム製のパッキング92、94が嵌合状態で装着されている。環状体80は、パッキング92、94及び後述する振動減衰部材100及び予荷重付与部材102を円筒部82の外周に取り付けられた状態で、ハウジング90に対して図2で見て右側から左側に軸線方向に移動することにより、パッキング92、94を介してハウジング90の内周部に取り付けられる。この移動により、パッキング92がハウジング90に形成されている凹部87に嵌合する。環状体80は、ハウジング90に取り付けられた状態において、円筒部82とハウジング90との間に円環状断面の密閉構造の空間96を画定する。
【0040】
振動減衰装置78は、空間96に配置される振動減衰部材100と予荷重付与部材102とを有する。
【0041】
振動減衰部材100は、合成ゴム等によるエラストマ製で円筒状に形成され、円筒部82の外周面82Aに、接着剤等を介さずに、直接に接触する内周面100Aを含む。振動減衰部材100は、内周面100Aと円筒部82の外周面82Aとの摩擦及び自身の粘弾性(内部摩擦)により、環状体80及びステータベーン30の振動の減衰を行う。
【0042】
予荷重付与部材102は金属製のシームレス構造の円筒体103を含む。円筒体103は振動減衰部材100を外囲し、焼き嵌めを含む圧入により振動減衰部材100に径方向内向きの予荷重を与えている。振動減衰部材100に対する円筒体103の圧力は、円筒体103の内径が一方の鉤形部84の軸線方向延出部84Bの外径より大きいことにより、環状体80のハウジング90に対する取付前に、パッキング92が装着されていない状態で、鉤形部84の側から行うことができる。
【0043】
振動減衰部材100の内周面100Aは、予荷重付与部材102の円筒体103によって振動減衰部材100に与えられた径方向内向きの予荷重より、円筒部82の外周面82Aに予荷重相当の押圧力をもって密着する。
【0044】
これにより、振動減衰部材100の内周面100Aと円筒部82の外周面82Aとの摩擦抵抗が増大し、摩擦による振動減衰が、予荷重なしの場合に比して効果的に行われる。このように、振動減衰装置78は、従来よりも大きい減衰性能を示し、振動によって支持部76及びステータベーン30に大きい応力が発生することを回避する。
【0045】
振動減衰装置78は、振動減衰部材100と予荷重付与部材102とにより、ダイナミックダンパとしても作用し、振動減衰を行う。
【0046】
振動減衰部材100は、軸流圧縮機36及び遠心圧縮機42により燃焼器54から隔てられ、燃焼器54から十分離れた位置にあって、ガスタービンエンジン10の熱影響を受け難い。しかも、振動減衰部材100は、ガスタービンエンジン10において最も温度が低いフロントファン28の気流によって冷却され、熱損傷を受け難い。
【0047】
次に、本発明による振動減衰装置78をステータベーン30の支持部76に適用した実施形態2を、図3及び図4を参照して説明する。尚、図3において、図2に対応する部分は、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0048】
実施形態2では、予荷重付与部材102は、振動減衰部材100を外囲する金属製の円筒体103と、円筒体103を外囲する金属製の複数の薄板バンド110及び各薄板バンド110を緊締する締結具112(図4参照)を含む。薄板バンド110及び締結具112は円筒体103の軸線方向に離れた複数の位置に配置されている。薄板バンド110は締結具112によって緊締されることにより、円筒体103に周方向応力(フープ応力)を含む予荷重を付与する。これにより、円筒体103を介して振動減衰部材100に径方向内向きの予荷重が与えられる。
【0049】
実施形態2でも、振動減衰部材100に径方向内向きの予荷重が与えられることにより、実施形態1と同様の作用、効果が得られる。実施形態2では、予荷重の付与が圧入による場合よりも、振動減衰部材100に対する予荷重付与部材102の組付け作業性が改善されると共に、予荷重の付与が容易になると共に予荷重を容易に調節することができる。
【0050】
次に、本発明による振動減衰装置78をステータベーン30の支持部76に適用した実施形態3を、図5を参照して説明する。尚、図5において、図2に対応する部分は、図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0051】
実施形態3では、予荷重付与部材102は、振動減衰部材100を外囲する金属製の円筒体103と、円筒体103を外囲し、円筒体103とハウジング90との間に配置された円環状のばね部材114とを含む。ばね部材114は円筒体103の軸線方向に離れた複数の位置に配置される。各ばね部材114は、C形の横断面形状を有し、円筒体103とハウジング90との間で径方向に変形することにより反発力を生じる。これにより、円筒体103を介して振動減衰部材100に径方向内向きの予荷重が与えられ、当該予荷重の反力がハウジング90により支持される。
【0052】
実施形態3でも、振動減衰部材100に径方向内向きの予荷重が与えられることにより、実施形態1と同様の作用、効果が得られる。実施形態2では、予荷重の付与が圧入による場合よりも、振動減衰部材100に対する予荷重付与部材102の組付け作業性が改善されると共に、予荷重付与の調節が容易になる。しかも、予荷重の反力がハウジング90によって確実に支持され、振動減衰部材100に対する予荷重の付与が安定して確実に行われる。
【0053】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。振動減衰部材100は、円筒部82の外周面82Aに、周方向に断片状に設けられていてもよい。振動減衰部材100は、必ずしも一つの材料で構成されている必要はない。実施形態3に用いられるばね部材114は、円筒体103とハウジング90との間に挟まれる波形のものであってもよい。
【0054】
本発明による振動減衰装置は、ガスタービンエンジン10の軸流圧縮機36の静翼列40や低圧タービン62の静翼列66にも適用することができる。また、本発明による振動減衰装置は、ガスタービンエンジン10以外の種々の流体機械(回転翼機械)の静翼の振動減衰装置として用いられてよい。
【符号の説明】
【0055】
10 :ガスタービンエンジン
12 :アウタケーシング(支持体)
14 :インナケーシング
16 :前部第1ベアリング
18 :後部第1ベアリング
20 :低圧系回転軸(回転体)
20A :先端部
22 :前部第2ベアリング
24 :後部第2ベアリング
26 :高圧系回転軸
28 :フロントファン(動翼)
29 :逆流燃焼室
30 :ステータベーン(静翼)
32 :バイパスダクト
34 :空気圧縮用ダクト
36 :軸流圧縮機
38 :動翼列
40 :静翼列
42 :遠心圧縮機
44 :インペラ
46 :ストラット
50 :デフューザ
51 :圧縮空気通路
52 :逆流燃焼室
54 :燃焼器
58 :静翼列
60 :高圧タービン
62 :低圧タービン
64 :動翼列
66 :静翼列
68 :動翼列
70 :燃料噴射ノズル
76 :支持部
78 :振動減衰装置
80 :環状体
80B :内周面
82 :円筒部
82A :外周面
82B :内周面
84 :鉤形部
84A :径方向延出部
84B :軸線方向延出部
86 :鉤形部
86A :径方向延出部
86B :軸線方向延出部
87 :凹部
90 :ハウジング
92 :パッキング
94 :パッキング
96 :空間
100 :振動減衰部材
100A :内周面
102 :予荷重付与部材
103 :円筒体
110 :薄板バンド
112 :締結具
114 :ばね部材
図1
図2
図3
図4
図5