(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】治療用デンドリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 83/00 20060101AFI20241114BHJP
C07D 305/14 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20241114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241114BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241114BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08G83/00
C07D305/14 CSP
A61K31/337
A61P35/00
A61P35/04
A61K45/00
A61K47/26
A61K47/54
A61K47/12
(21)【出願番号】P 2021501311
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 AU2019050759
(87)【国際公開番号】W WO2020014750
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521014984
【氏名又は名称】スターファーマ ピーティーワイ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン, デイヴィッド ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ケリー, ブライアン デヴリン
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-520105(JP,A)
【文献】国際公開第2018/053316(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G81/00-85/00
A61P35/00-35/04
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
前記コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、前記コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
iii)それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したカバジタキセル残基を含む複数の第1の末端基(T1)と;
iv)それぞれが1000~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG基を含む複数の第2の末端基(T2)と
をさらに含むデンドリマーであって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第2の末端基に共有結合している
デンドリマー、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記コア
ユニットが以下である、請求項1に記載のデンドリマー:
。
【請求項3】
前記ビルディングユニットがそれぞれ以下である、請求項1または2に記載のデンドリマー:
;
(式中、各ビルディングユニットのアシル基は、コアまたは前世代のビルディングユニットに結合するための共有結合点を提供し;各窒素原子は、後世代のビルディングユニット、第1の末端基または第2の末端基に共有結合するための共有結合点を提供する)。
【請求項4】
前記ビルディングユニットがそれぞれ以下である、請求項3に記載のデンドリマー:
。
【請求項5】
ビルディングユニットの5つの完全な世代を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のデンドリマー。
【請求項6】
各第1の末端基(T1)が以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のデンドリマー:
。
【請求項7】
前記第2の末端基が、それぞれPEG基に存在する炭素原子とPEG連結基(L1)に存在する酸素原子との間に形成されるエーテル結合を介してPEG連結基に共有結合したPEG基を含み、各第2の末端基が、ビルディングユニットに存在する窒素原子と前記PEG連結基に存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介してビルディングユニットに共有結合している、請求項1から6のいずれか一項に記載のデンドリマー。
【請求項8】
前記第2の末端基がそれぞれ以下である、請求項7に記載のデンドリマー
(式中、PEG基は、1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)。
【請求項9】
第1の末端基および第2の末端基に結合した外側のビルディングユニットを含む表面ユニットを含み、前記表面ユニットが、以下の構造を有する、請求項8に記載のデンドリマー:
、
(式中、PEG基は、1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)。
【請求項10】
28~32個の表面ユニットを有する、請求項9に記載のデンドリマー。
【請求項11】
前記外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;前記外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している、請求項1から10のいずれか一項に記載のデンドリマー。
【請求項12】
ビルディングユニットの5世代が完全な世代であり、ビルディングユニットの外側の世代が、第1の末端基または第2の末端に共有結合するための64個の窒素原子を提供し、26~32個の第1の末端基が前記窒素原子の1つに共有結合しており、28~32個の第2の末端基がそれぞれ前記窒素原子の1つに共有結合している、請求項1から11のいずれか一項に記載のデンドリマー。
【請求項13】
前記カバジタキセル残基が、23%w/w~28%w/wの範囲のデンドリマーのw/w%を構成する、請求項1から12のいずれか一項に記載のデンドリマー。
【請求項14】
以下である、請求項1から13のいずれか一項に記載のデンドリマー:
(式中、T1’は以下の第1の末端基を表す
またはT1’はHを表し、T1’の5つ未満はHであり;
T2’は以下の第2の末端基を表す
(式中、PEG基は、1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)、またはT2’はHを表し、T2’の5つ未満はHである)。
【請求項15】
pH7.4および37℃でのPBS中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、20~100時間の範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載のデンドリマー。
【請求項16】
pH7.4および37℃でのPBS中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、30~60時間の範囲である、請求項15に記載のデンドリマー。
【請求項17】
複数のデンドリマーまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、
前記デンドリマーが請求項1から16のいずれか一項に定義される通りであり、
組成物中のデンドリマー1個当たりの第1の末端基の平均数が24~32個の範囲であり、
組成物中のデンドリマー1個当たりの第2の末端基の平均数が24~32個の範囲である、組成物。
【請求項18】
前記カバジタキセル残基が、23%w/w~28%w/wの範囲の組成物中の前記デンドリマーのw/w%を構成する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
医薬組成物であり、薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
i)請求項1から16のいずれか一項に記載のデンドリマー、またはその薬学的に許容される塩と、ii)薬学的に許容される賦形剤と
を含む医薬組成物。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に記載のデンドリマー、糖および酸を含む固体組成物であり、希釈剤で再構成するためのものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記糖がトレハロースであり、前記酸がクエン酸である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
希釈剤で再構成した後、再構成された組成物が、3.5~5.5の範囲のpHを有する、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
ポリエトキシ化ヒマシ油およびポリエトキシ化ソルビタンモノオレエートを含まない、または実質的に含まない、請求項20から23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
最大30分の期間にわたる注入として投与するために製剤化される、または最大5分の期間にわたるボーラスとして投与するために製剤化される、請求項20から24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
がんの処置に使用される、請求項1から16のいずれか一項に記載のデンドリマー、または請求項20から25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
がんを処置するための医薬の製造における、請求項1から16のいずれか一項に記載のデンドリマー、または請求項20から25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項28】
前記がんが、膵臓がん、前立腺がん、乳がんおよび卵巣がんからなる群から選択される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記がんが転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記デンドリマーの治療上有効量が10~100mg/m
2体表面積の範囲である、請求項27から29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記デンドリマーの治療上有効量が20~50mg/m
2体表面積の範囲である、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記デンドリマーの治療上有効量が50~100mg/m
2体表面積の範囲である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記組成物が最大30分の期間にわたる注入として投与される、請求項27から32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記デンドリマーがさらなる治療剤と組み合わせて投与される、請求項27から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記さらなる治療剤がさらなる抗がん剤である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記デンドリマーが以下である、請求項27から35のいずれか一項に記載の使用
(式中、T1’は以下の第1の末端基を表す
またはT1’はHを表し、T1’の5つ未満はHであり;
T2’は以下の第2の末端基を表す
(式中、PEG基は、1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)、またはT2’はHを表し、T2’の5つ未満はHである)。
【請求項37】
前記デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、カバジタキセルの治療上有効な血漿濃度をより長期間提供する、請求項27から36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与によって提供される最大濃度の20%以下であるカバジタキセルの最大濃度(Cmax)を提供する、請求項27から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、より大きな総カバジタキセルのAUCを提供する、請求項27から38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、増強された臨床的有効性を提供する、請求項27から39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記デンドリマーのクールの投与が、20または25mg/m
2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して、増強された臨床的有効性を提供する、請求項27から40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少をもたらす、請求項27から41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
前記デンドリマーの投与が、20または25mg/m
2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少をもたらす、請求項27から42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
請求項1から16のいずれか一項に記載のデンドリマーを製造する方法であって、
a)以下のカバジタキセル中間体
、
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
前記コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、前記コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
デンドリマーは、5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマーは、それぞれが1000~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG基を含む複数の第2の末端基(T2)と
をさらに含む、デンドリマー中間体であって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第2の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、非置換であり、前記
カバジタキセル中間体との反応に利用可能である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ;
または
b)以下であるPEG中間体
(式中、PEG基は1000~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
前記コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、前記コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
デンドリマーは、5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマーは、それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したカバジタキセル残基を含む複数の第1の末端基(T1)
をさらに含む、デンドリマー中間体であって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は非置換である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ;
または
c)以下である表面ユニット中間体
(式中、PEG基は1000~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
前記コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、前記コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
4世代ビルディングユニットデンドリマー中間体であり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマー中間体の外側のビルディングユニットに存在する窒素原子は非置換である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップを含む、方法。
【請求項45】
以下のデンドリマー
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
を製造するための中間体。
【請求項46】
以下のデンドリマー
(式中、PEG基は1000~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
を製造するための中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、コアユニットとビルディングユニットとを含むデンドリマーを含む薬物-デンドリマーコンジュゲートであって、ビルディングユニットの最も外側の世代が、切断可能なリンカー基を介して結合した1つまたは複数の薬学的に活性な薬剤を含む、薬物-デンドリマーコンジュゲートに関する。本開示はまた、薬物-デンドリマーコンジュゲートを含む医薬組成物および処置方法、ならびに薬物-デンドリマーコンジュゲートを製造するための方法および合成中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
乏しい水溶性、毒性、低いバイオアベイラビリティ、生物学的条件下での不安定性、作用部位への標的化の欠如、および急速なインビボ分解を含む、薬学的に活性な薬剤の製剤および送達に関連するいくつかの困難が存在する。
【0003】
これらの困難のいくつかを克服するために、薬学的に活性な薬剤を、それ自体が過敏症などの副作用を引き起こす可能性があり、これらの副作用を減らすための前投薬を必要としうる可溶化剤を用いて製剤化することができる。代替アプローチには、リポソーム、ミセルもしくはポリマーマトリックスへの薬学的に活性な薬剤のカプセル化、またはリポソーム、ミセルおよびポリマーマトリックスへの薬学的に活性な薬剤の結合が含まれる。
【0004】
これらのアプローチは、薬学的に活性な薬剤の製剤および送達に関連する課題のいくつかを改善する可能性があるが、多くは依然として欠点を有する。
【0005】
腫瘍薬は製剤化が特に難しく、処置に使用することができる投与量およびレジメンを制限する可能性のある副作用を有しうる。これにより、処置の有効性の低下がもたらされうる。例えば、カバジタキセルなどのタキサン薬は、水溶性が低いが、治療濃度域も比較的狭いため、例えば、可溶化賦形剤を使用することによって薬剤の濃度を上げると、関連する毒性の課題が生じるおそれがある。
【0006】
薬学的に活性な薬剤の可溶化、ならびに場合によっては、改善されたバイオアベイラビリティおよび低減された毒性を可能にしながら、医薬品をカプセル化するまたは結合させる、担体としてのリポソーム、ミセルおよびポリマーマトリックスの使用は、薬学的に活性な薬剤の放出に関して困難を提示する。場合によっては、担体が急速に分解して、標的器官に到達する前に薬学的に活性な薬剤を放出する。他の場合、担体からの薬学的に活性な薬剤の放出が、体内または標的器官における薬物の治療用量を達成することができない程度まで遅くなる。さらに、このような組成物は、安定性および製造上の課題を提示する可能性がある。
【0007】
したがって、安定であり、製造するのに実用的であり、一般的に均質な組成を有しながら、患者についての薬物のより良いコンプライアンスおよび有効性につながりうる、副作用を軽減し、投与レジメンを改善し、治療濃度域を改善するための、薬物を送達するための代替の製剤および送達手段が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示の主題は、部分的には、カバジタキセルがデンドリマーにコンジュゲートすると、薬物の改善された有効性および/または薬物動態特性を提供するという驚くべき発見に基づく。
【0009】
したがって、第1の態様では、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
iii)それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したカバジタキセル残基を含む複数の第1の末端基(T1)と;
iv)それぞれがPEG基を含む複数の第2の末端基(T2)と
をさらに含むデンドリマーであって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第2の末端基に共有結合している
デンドリマー、またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、コアが以下である:
。
いくつかの実施形態では、ビルディングユニットがそれぞれ以下である:
;
(式中、各ビルディングユニットのアシル基は、コアまたは前世代のビルディングユニットに結合するための共有結合点を提供し;各窒素原子は、後世代のビルディングユニット、第1の末端基または第2の末端基に共有結合するための共有結合点を提供する)。
【0011】
いくつかの実施形態では、ビルディングユニットがそれぞれ以下である:
。
【0012】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、ビルディングユニットの5つの完全な世代を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、各第1の末端基(T1)が以下である:
。
【0014】
いくつかの実施形態では、第2の末端基が、1000~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG基を含む
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の末端基が、それぞれPEG基に存在する炭素原子とPEG連結基(L1)に存在する酸素原子との間に形成されるエーテル結合を介してPEG連結基に共有結合したPEG基を含み、各第2の末端基が、ビルディングユニットに存在する窒素原子とPEG連結基に存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介してビルディングユニットに共有結合している。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2の末端基がそれぞれ以下であり
PEG基が、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである。
【0017】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、第1の末端基および第2の末端基に結合した外側のビルディングユニットを含む表面ユニットを含み、表面ユニットが、以下の構造を有する:
、
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)。
【0018】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、28~32個の表面ユニット、好ましくは30~32個の表面ユニットを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。
【0020】
いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの5世代が完全な世代であり、ビルディングユニットの外側の世代が、第1の末端基または第2の末端に共有結合するための64個の窒素原子を提供し、26~32個の第1の末端基が前記窒素原子の1つに共有結合しており、28~32個の第2の末端基がそれぞれ前記窒素原子の1つに共有結合している。
【0021】
いくつかの実施形態では、カバジタキセル残基が、23%w/w~28%w/wの範囲のデンドリマーのw/w%を構成する。
【0022】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが以下である:
(式中、T1’は以下の第1の末端基を表す
またはT1’はHを表し、T1’の5つ未満はHであり;
T2’は以下の第2の末端基を表す
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)、またはT2’はHを表し、T2’の5つ未満はHである)。
【0023】
いくつかの実施形態では、pH7.4および37℃でのPBS中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、20~100時間の範囲である。
【0024】
いくつかの実施形態では、pH7.4および37℃でのPBS中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、30~60時間の範囲である。
【0025】
第2の態様では、複数のデンドリマーまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、
デンドリマーが本明細書で定義される通りであり、
組成物中のデンドリマー1個当たりの第1の末端基の平均数が24~32個の範囲であり、
組成物中のデンドリマー1個当たりの第2の末端基の平均数が24~32個の範囲である、
組成物が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、カバジタキセル残基が、23%w/w~28%w/wの範囲の組成物中のデンドリマーのw/w%を構成する。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物が医薬組成物であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0028】
第3の態様では、
i)本明細書で定義されるデンドリマー、またはその薬学的に許容される塩と、ii)薬学的に許容される賦形剤と
を含む医薬組成物が提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物が、本明細書で定義されるデンドリマー、糖および酸を含む固体組成物であり、組成物が希釈剤で再構成するためのものである。
【0030】
いくつかの実施形態では、糖がトレハロースであり、酸がクエン酸である。
【0031】
いくつかの実施形態では、希釈剤で再構成した後、再構成された組成物が、3.5~5.5の範囲のpHを有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物が、本明細書で定義されるデンドリマーを含み、糖および酸、ならびに希釈剤を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物が、ポリエトキシ化ヒマシ油およびポリエトキシ化ソルビタンモノオレエートを含まない、または実質的に含まない。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物が、最大30分の期間にわたる注入として投与するために製剤化される、または組成物が、最大5分の期間にわたるボーラスとして投与するために製剤化される。
【0035】
第4の態様では、治療に使用するための、本明細書で定義されるデンドリマーまたは医薬組成物が提供される。
【0036】
いくつかの実施形態では、デンドリマーまたは医薬組成物が、がんの処置に使用するためのものである。
【0037】
がんを処置する方法であって、治療上有効量の本明細書で定義されるデンドリマーまたは医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法も提供される。
【0038】
がんを処置するための医薬の製造における、本明細書で定義されるデンドリマーまたは組成物の使用も提供される。
【0039】
いくつかの実施形態では、がんが、膵臓がん、前立腺がん、乳がんおよび卵巣がんからなる群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、がんが転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である。
【0041】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの治療上有効量が、10~100mg/m2体表面積の範囲である。
【0042】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの治療上有効量が、20~50mg/m2体表面積の範囲である。
【0043】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの治療上有効量が、50~100mg/m2体表面積の範囲である。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物が、最大30分の期間にわたる注入として投与される、または組成物が、最大5分の期間にわたるボーラスとして投与される。
【0045】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、さらなる治療剤と組み合わせて投与される。
【0046】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、さらなる抗がん剤と組み合わせて投与される。
【0047】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが以下である
(式中、T1’は以下の第1の末端基を表す
またはT1’はHを表し、T1’の5つ未満はHであり;
T2’は以下の第2の末端基を表す
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)、またはT2’はHを表し、T2’の5つ未満はHである)。
【0048】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、カバジタキセルの治療上有効な血漿濃度をより長期間提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与によって提供される最大濃度の20%以下であるカバジタキセルの最大濃度(Cmax)を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、増強された臨床的有効性を提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少をもたらす。
【0052】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、より大きな総カバジタキセルのAUCを提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、増強された臨床的有効性を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、デンドリマーのクールの投与が、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して、増強された臨床的有効性を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少をもたらす。
【0056】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少をもたらす。
【0057】
いくつかの実施形態では、本出願の主題が、非コンジュゲート薬物と比較して、改善された治療的曝露、より低い最大濃度(Cmax)および/または増加した曲線下面積(AUC)の少なくとも1つの改善された薬物動態プロファイルを示す、デンドリマーとコンジュゲートした薬物を提供する。
【0058】
第5の態様では、本明細書で定義されるデンドリマーを製造する方法であって、
a)以下のカバジタキセル中間体
、
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
デンドリマーは、5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマーは、それぞれがPEG基を含む複数の第2の末端基(T2)
とをさらに含む、デンドリマー中間体であって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第2の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、非置換であり、第1の中間体との反応に利用可能である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ;
または
b)以下であるPEG中間体
(式中、PEG基はPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
デンドリマーは、5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマーは、それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したカバジタキセル残基を含む複数の第1の末端基(T1)
をさらに含む、デンドリマー中間体であって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は非置換である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ;
または
c)以下である表面ユニット中間体
(式中、PEG基はPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
4世代ビルディングユニットデンドリマー中間体であり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマー中間体の外側のビルディングユニットに存在する窒素原子は非置換である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ
を含む方法が提供される。
【0059】
第6の態様では、以下のデンドリマー
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
を製造するための中間体が提供される。
【0060】
第7の態様では、以下のデンドリマー
(式中、PEG基はPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
を製造するための中間体が提供される。
【0061】
さらなる態様、実施形態および例が本明細書に記載され、これらが上記の実施形態または特徴のうちの1つまたは複数を含みうることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】前立腺がんモデル研究における、経時的な平均腫瘍体積(TV)(mm
3)の変化によって表される、SCIDマウスにおける本開示の化合物(SPL9048)および比較対照化合物(comparator compound)(カバジタキセル、およびSPL9005-比較対照カバジタキセル-デンドリマー化合物)の有効性を示す図である。
【
図2】前立腺がんモデル研究における、経時的な本開示の化合物(SPL9048)および比較対照化合物(カバジタキセル、およびSPL9005-比較対照カバジタキセル-デンドリマー化合物)の投与後のSCIDマウスの平均体重変化を示す図である。
【
図3】乳がん腫瘍モデル研究における、経時的な平均腫瘍体積(TV)(mm
3)の変化によって表される、SCIDマウスにおける本開示の化合物(SPL9048)および比較対照化合物(カバジタキセル)の有効性を示す図である。
【
図4】乳がんモデル研究における、経時的な本開示の化合物(SPL9048)および比較対照化合物(カバジタキセル)の投与後のSCIDマウスの平均体重変化を示す図である。
【
図5】本開示の化合物(SPL9048)および比較対照カバジタキセル-デンドリマー化合物(SPL9005)のラットへの投与後の経時的なインビボ遊離カバジタキセル(放出)濃度レベルを示す図である。
【
図6】本開示の化合物(SPL9048)および比較対照化合物(カバジタキセルのJevtana(登録商標)ブランド)の投与後の、雄ラットと雌ラットの両方についての好中球減少症毒性試験データの結果を示す図である。
【
図7】膵臓がんモデル研究における、経時的な平均腫瘍体積(TV)(mm
3)の変化によって表される、雌NOD-scidインターロイキン2受容体ガンマ鎖ヌルマウスにおける、比較対照ゲムシタビン、アブラキサンおよびゲムシタビンとアブラキサンの組み合わせと比較した、単独でおよびゲムシタビンと組み合わせて投与した場合の本開示の化合物(SPL9048)の有効性を示す図である。
【
図8】経時的な前立腺がんを有する患者における前立腺がんバイオマーカーPSAのレベル(μg/L)を示す図である。
【
図9】経時的な卵巣がんを有する患者における卵巣がんバイオマーカーCA-125のレベル(μg/L)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
一般的な定義
特に具体的に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者(例えば、化学、生化学、医薬品化学、高分子化学など)によって一般に理解されるのと同じ意味を有すると解釈されるものとする。
【0064】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語、例えば、「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味またはいずれかの意味を明示的に支持すると解釈されるものとする。
【0065】
本明細書で使用される場合、約という用語は、反対の記載がない限り、指定された値の+/-20%、より好ましくは+/-10%を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の態様を含む。
【0067】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、明言される要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を意味するが、他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の除外は意味しないと理解される。
【0068】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、疾患または状態に感受性の任意の生物を指す。一実施形態では、疾患または状態が、がんである。例えば、対象は、哺乳動物、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、または実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)であることができる。一例では、対象が哺乳動物である。一実施形態では、対象がヒトである。
【0069】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、特定の障害または状態に関連する症状の緩和、および前記症状の排除を含む。例えば、本明細書で使用される場合、「がんを処置する」という用語は、がんに関連する症状を緩和すること、および前記症状を排除することを指す。一実施形態では、「がんを処置する」という用語が、癌性腫瘍サイズの縮小を指す。一実施形態では、「がんを処置する」という用語が、無増悪生存期間の増加を指す。本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」という用語は、患者が疾患、すなわちがんと共に生きるが、疾患の症状の再発も増加も有さない、がんの処置中および処置後の時間の長さを指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、特定の障害または状態の予防を含む。例えば、本明細書で使用される場合、「がんを予防する」という用語は、がんに関連する症状の発症または持続を予防することを指す。一例では、「がんを予防する」という用語が、がんの進行を遅延させるまたは停止させることを指す。一例では、「がんを予防する」という用語が、転移を遅延させるまたは予防することを指す。
【0071】
当業者によって理解されるように、デンドリマーは、治療上有効量で投与されるだろう。本明細書で使用される「治療上有効量」という用語は、処置されている障害または状態の症状のうちの1つまたは複数をある程度緩和または予防するのに十分な量で投与されるデンドリマーを指す。結果は、疾患または状態の徴候、症状または原因の減少および/または緩和、あるいは生物系の他の所望の変化でありうる。一実施形態では、「治療上有効量」という用語が、癌性腫瘍サイズの縮小をもたらすのに十分な量で投与されるデンドリマーを指す。一実施形態では、「治療上有効量」という用語が、無増悪生存期間の増加をもたらすのに十分な量で投与されるデンドリマーを指す。本明細書で使用される「有効量」という用語は、過度の有害な副作用なしに所望の薬理学的効果もしくは治療的改善を達成するために、または副作用プロファイルが低減された所望の薬理学的効果もしくは治療的改善を達成するために有効なデンドリマーの量を指す。単なる例として、治療上有効量は、それだけに限らないが、用量漸増臨床試験を含む日常的な実験によって決定されうる。「治療上有効量」という用語は、例えば、予防上有効量を含む。一実施形態では、予防上有効量が、転移を予防するのに十分な量である。「有効量」または「治療上有効量」が、化合物の代謝の変動、および対象の年齢、体重、全身状態のいずれか、処置される状態、処置される状態の重症度、および処方する医師の判断により、対象ごとに異なりうることが理解される。したがって、正確な「有効量」を常に指定できるとは限らない。しかしながら、個々の場合における適切な「有効量」は、日常的な実験を使用して当業者によって決定されうる。2つ以上の治療剤を組み合わせて使用する場合、各治療剤の「治療上有効量」は、単独で使用した場合に治療上有効となる治療剤の量を指すことができる、または1つもしくは複数の追加の治療剤と組み合わせることによって治療上有効である減少した量を指すことができる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、サイズが1~10個の炭素原子の範囲の直鎖(すなわち、線状)または分岐鎖炭化水素(すなわち、C1~10アルキル)を指す。したがって、アルキル部分は、より小さな基に明示的に限定されない限り、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルおよび/またはブチル、ペンチル、ヘキシル、ならびにより高級な異性体などの、サイズが、例えば、約1~約6個の炭素原子またはそれ以上に及ぶ部分を含む。一例では、アルキル部分が、1~10個の炭素原子のもの(すなわち、C1~10アルキル)である。別の例では、アルキル部分が、2~4個の炭素原子、好ましくは4個の炭素原子のものである。
【0073】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、サイズが1~10個の炭素原子の範囲の直鎖(すなわち、線状)または分岐鎖炭化水素(すなわち、C1~10アルキレン)を指す。したがって、アルキレン部分は、例えば、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-などを含む。
【0074】
デンドリマーの適切な塩には、有機または無機の酸または塩基で形成されたものが含まれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という句は、薬学的に許容される有機または無機の塩を指す。例示的な酸付加塩にはそれだけに限らないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が含まれる。例示的な塩基付加塩には、それだけに限らないが、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばカリウムおよびナトリウムの塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩、ならびに有機塩基、例えばジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルコミン、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ-、ジ-もしくはトリ-低級アルキルアミン、例えば、エチル-、tert-ブチル-、ジエチル-、ジイソプロピル-、トリエチル-、トリブチル-もしくはジメチル-プロピルアミン、またはモノ-、ジ-もしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えば、モノ-、ジ-もしくはトリエタノールアミンによる塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子の包含を含みうる。対イオンは、親化合物の電荷を安定化する任意の有機または無機部分でありうる。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造中に2つ以上の荷電原子を有しうる。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である例は、複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は、1つもしくは複数の荷電原子および/または1つもしくは複数の対イオンを有することができる。薬学的に許容されない塩もまた、薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用でありうる、または貯蔵もしくは輸送中に有用となりうるため、本開示の範囲に入ることも理解される。
【0075】
有機化学および/または医薬品化学の当業者は、多くの有機化合物が、それらが反応する、またはそれらが沈殿するもしくは結晶化される溶媒と錯体を形成できることを理解するだろう。これらの錯体は「溶媒和物」として知られている。例えば、水との錯体は「水和物」として知られている。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される溶媒和物」または「溶媒和物」という句は、1つまたは複数の溶媒分子と本開示の化合物の会合を指す。薬学的に許容される溶媒和物を形成する溶媒の例としては、それだけに限らないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが挙げられる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「デンドリマー」という用語は、コアと、コアに結合したデンドロンとを含む分子を指す。各デンドロンは、ビルディングユニットの各世代で分岐の数が増える分岐構造をもたらす分岐したビルディングユニットの世代で構成されている。薬物-デンドリマーコンジュゲートを含む「デンドリマー」は、上に定義される薬学的に許容される塩または溶媒和物を含みうる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ビルディングユニット」という用語は、1つがコアまたはビルディングユニットの前世代に結合するためのものであり、少なくとも2つの官能基がビルディングユニットの次世代に結合するためまたはデンドリマー分子の表面を形成するためのものである、3つの官能基を有する、リジン残基またはその類似体である分岐分子を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「結合した」という用語は、共有結合による化学成分間の接続を指す。本明細書で使用される「共有結合」という用語は、原子間で1つまたは複数の電子、特に電子対を共有することによって形成される化学結合を指す。「共有結合(covalent bonding)」という用語は、「共有結合(covalent attachment)」という用語と互換的に使用される。
【0079】
本明細書で使用される場合、「可溶化賦形剤」という用語は、不溶性または難溶性の薬物を水性製剤に可溶化するために使用される製剤添加剤を指す。例としては、Cremophor EL、Cremophor RH 40およびCremophor RH 60を含むポリエトキシ化ヒマシ油、D-α-トコフェロール-ポリエチレングリコール1000スクシネート、ポリソルベート20、ポリソルベート80、solutol HS 15、ソルビタンモノオレエート、ポロキサマー407、Labrasolなどの界面活性剤が挙げられる。
【0080】
Jevtana(登録商標)はSanofi(フランス)によって製造されており、デンドリマーと比較するための遊離カバジタキセルの例である。Jevtana(登録商標)の薬物動態データが公開されている(例えば、Mita AC,Denis LJ,Rowinsky EK,et al.Phase I and pharmacokinetic study of XRP6258(RPR 116258A),a novel taxane,administered as a 1-hour infusion every 3 weeks in patients with advanced solid tumors.Clin Cancer Res.2009;15(2):723-730参照)。
【0081】
Mitaでは、25mg/m2用量が535±305mcg/LのCmaxおよび642±320mcg/L/時間のAUC濃度と相関していた。薬物の低下した血漿濃度を説明するために三相モデルが使用された。血漿濃度薬物動態活性は、急速な初期消失相(平均終末相半減期[t1/2]=2.6±1.4分)、引き続いて中間消失相(平均t1/2=1.3±0.6時間)、および長期終末消失相(平均t1/2=77.3±45.5時間)を特徴としていた。用量のおよそ80%が2週間以内に排出された。定常状態での分布容積は大きく、高度に可変性であった(2,034±1,495L/m2)。
【0082】
この試験における主要な用量制限毒性は、血液学的骨髄抑制(すなわち、好中球減少症)であった。ともに25mg/m2用量で、1人の患者(4%)は長期のグレード4の好中球減少症を経験し、2人目の患者(4%)は発熱性好中球減少症を経験した。非血液学的毒性も発生した。2人の患者(8%)は、紅潮、めまいおよび胸部絞扼感を経験し、グレード1の過敏反応として特定された。その他の非血液学的毒性には、下痢(14人の患者;56%)、悪心(10人の患者;40%)、疲労(9人の患者;36%)、神経毒性(9人の患者;36%)、および嘔吐(4人の患者;16%)が含まれた。
【0083】
転移性前立腺がん患者(n=67)における第3相TROPIC試験では、平均Cmaxは226ng/mL(変動係数、CV 107%)であり、1時間の注入の終了時(Tmax)で到達した。平均AUCは991ng.時間/mL(CV:34%)であった。好中球減少症(全てのグレード)はカバジタキセル患者の94%で発生し、グレード3または4の発熱性好中球減少症はカバジタキセル患者の8%で発生した。JevtanaについてのTROPIC登録試験では、25mg/m2のカバジタキセルの1時間IV投与後(de Bono JS,Oudard S,Ozguroglu M,et al.Prednisone plus cabazitaxel or mitoxantrone for metastatic castration-resistant prostate cancer progressing after docetaxel treatment:A randomised open-label trial.Lancet.2010;376(9747):1147-1154)。
デンドリマー
【0084】
第1の態様では、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
iii)それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したカバジタキセル残基を含む複数の第1の末端基(T1)と;
iv)それぞれがPEG基を含む複数の第2の末端基(T2)と
をさらに含むデンドリマーであって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第2の末端基に共有結合している
デンドリマー、またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0085】
デンドリマーのコアユニット(C)は、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成される。したがって、コアユニットは、例えば、2つのアミノ基を含むコアユニット前駆体から形成されうる。任意の適切なジアミノ含有分子がコアユニット前駆体として使用されうる。いくつかの実施形態では、コアユニットが以下であり:
例えば、2つの反応性(アミノ)窒素を有する、以下のコアユニット前駆体から形成されうる:
【0086】
ビルディングユニット(BU)は、リジン残基またはその類似体であり、適切なビルディングユニット前駆体、例えば適切な保護基を含むリジンまたはリジン類似体から形成されうる。リジン類似体は、ビルディングユニットの後世代に結合するための2つのアミノ窒素原子、およびビルディングユニットの前世代またはコアに結合するためのアシル基を有する。適切なビルディングユニットの例としては、以下が挙げられる
、
、
、
、および
(式中、各ビルディングユニットのアシル基は、コアまたは前世代のビルディングユニットに結合するための共有結合点を提供し;各窒素原子は、後世代のビルディングユニット、第1の末端基または第2の末端基に共有結合するための共有結合点を提供する)。
いくつかの好ましい実施形態では、ビルディングユニットがそれぞれ以下である:
;
(式中、各ビルディングユニットのアシル基は、コアまたは前世代のビルディングユニットに結合するための共有結合点を提供し;各窒素原子は、後世代のビルディングユニット、第1の末端基または第2の末端基に共有結合するための共有結合点を提供する)。
【0087】
いくつかの好ましい実施形態では、ビルディングユニットがそれぞれ以下である:
;
(式中、各ビルディングユニットのアシル基は、コアまたは前世代のビルディングユニットに結合するための共有結合点を提供し;各窒素原子は、後世代のビルディングユニット、第1の末端基または第2の末端基に共有結合するための共有結合点を提供する)。
【0088】
ビルディングユニットの最も外側の世代(BUouter)は、上記のビルディングユニット(BU)の他の世代で使用されるリジンまたはリジン類似体ビルディングユニットによって形成されうる。ビルディングユニットの最も外側の世代(BUouter)は、デンドリマーのコアから最も外側にあるビルディングユニットの世代である、すなわち、ビルディングユニットの最も外側の世代(BUouter)にはビルディングユニットのさらなる世代は結合していない。
【0089】
デンドリマーのデンドロンは、例えば、適宜にビルディングユニット(BU)の結合を通して、必要な世代数まで合成されうることが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、ビルディングユニット(BU)の各世代が、同じビルディングユニットで形成されてもよく、例えば、全世代のビルディングユニットがリジンビルディングユニットでありうる。いくつかの他の実施形態では、ビルディングユニットの1つまたは複数の世代が、ビルディングユニットの他の世代とは異なるビルディングユニットで形成されうる。
【0090】
デンドリマーは5世代ビルディングユニットデンドリマーである。第5世代ビルディングユニットデンドリマーは、他のものに共有結合している5つのビルディングユニットを含む構造を有するデンドリマーであり、例えば、ビルディングユニットがリジンである場合、これは以下の下部構造を含みうる:
。
【0091】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、ビルディングユニットの5つの完全な世代を有する。2つの反応性アミン基を有するコアを有する場合、このようなデンドリマーは、62個のビルディングユニット(すなわち、コアユニット+2BU+4BU+8BU+16BU+32BU)を含むだろう。しかしながら、デンドリマーを製造する合成方法の性質のために、デンドリマーを製造するために実行される1つまたは複数の反応が完全に完了しない場合があることが理解されるだろう。したがって、いくつかの実施形態では、デンドリマーが、ビルディングユニットの不完全な世代を含みうる。例えば、デンドリマーが、デンドリマー1個当たりのビルディングユニットの数の分布を有する、デンドリマーの集団が得られうる。いくつかの実施形態では、デンドリマー1個当たりのビルディングユニットの平均数が少なくとも55個、または少なくとも56個、または少なくとも57個、または少なくとも58個、または少なくとも59個、または少なくとも60個であるデンドリマーの集団が得られる。いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が55個以上のビルディングユニットを有するデンドリマーの集団が得られる。いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が60個以上のビルディングユニットを有するデンドリマーの集団が得られる。
【0092】
コアの各反応性(アミノ)基は、ビルディングユニットの1つまたは複数の世代を含むデンドロンのコンジュゲーション部位を表す。コアは、ビルディングユニットの数世代を結合するための、2つの反応性(アミノ)基および2つのデンドロンを有する。
【0093】
いくつかの実施形態では、各デンドロン(X)内のビルディングユニットの各世代が、式[BU]2(b-1)(式中、bは世代数である)によって表されうる。ビルディングユニットの5つの完全な世代を有するデンドロン(X)は、[BU]1-[BU]2-[BU]4-[BU]8-[BU]16として表される。
【0094】
デンドリマーは、それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したカバジタキセル残基を含む複数の第1の末端基(T1)を含む。各第1の末端基(T1)は、好ましくは以下:
、
すなわち、カバジタキセル側鎖の一部として存在する酸素原子と、ジグリコリルリンカーの一部として存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるエステル結合を介して、ジグリコリルリンカーに共有結合したカバジタキセル残基である。ジグリコリルリンカーの他方のアシル基は、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子とアミド結合を形成する。このような実施形態では、カバジタキセル残基が以下である:
。
【0095】
インビボ投与時に、典型的には、デンドリマーはカバジタキセル、すなわち以下を放出する:
。
【0096】
デンドリマーは、それぞれがPEG基を含む複数の第2の末端基(T2)を含む。第2の末端基T2は薬物動態修飾剤である。薬物動態修飾剤は、デンドリマーまたはデンドリマーが送達している薬学的に活性な薬剤(すなわち、カバジタキセル)の薬物動態プロファイルを修飾または調節することができる薬剤である。薬物動態修飾剤は、薬学的に活性な薬剤のデンドリマーの吸収、分布、代謝、排出および/または毒性を調節しうる。薬物動態修飾剤(T2)は、化学(例えば、加水分解)または酵素分解経路のいずれかによってデンドリマーから活性剤が放出される速度を遅延させるまたは増加させることによって、薬学的に活性な薬剤の放出速度に影響を及ぼしうる。薬物動態修飾剤(T2)は、デンドリマーの溶解度プロファイルを変化させ、薬学的に許容される担体へのデンドリマーの溶解度を増加または減少させうる。薬物動態修飾剤(T2)は、デンドリマーが薬学的に活性な薬剤を特定の組織(例えば、腫瘍)に送達するのを助けうる。薬物動態修飾剤(T2)は、デンドリマーのクリアランスを減少させることによって、薬学的に活性な薬剤の半減期を延長しうる。
【0097】
PEG基は、ポリエチレングリコール基、すなわち、式-CH2CH2O-の繰り返し単位を含む基である。本開示のデンドリマーを製造するために使用されるPEG材料は、典型的には、分子量のいくらかの変動(すなわち、±10%)を有するPEGの混合物を含み、したがって、指定される分子量は、典型的には、PEG組成物の平均分子量の近似値である。例えば、「PEG約2100」という用語は、およそ2100ダルトン、すなわち±およそ10%の平均分子量を有するポリエチレングリコール(すなわち、PEG1900~PEG2300)を指す。MW平均を計算するために、数平均、重量平均およびz平均分子量の3つの方法が一般的に使用される。本明細書で使用される場合、「分子量」という句は、それだけに限らないが、NMR、質量分析、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)、ゲル浸透クロマトグラフィーまたはその他の液体クロマトグラフィー技術、光散乱技術、超遠心分離および粘度法を含む当技術分野で周知の技術を使用して測定することができる重量平均分子量を指すことを意図している。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2の末端基が、約200~5000ダルトンの平均分子量を有するPEG基を含む。いくつかの実施形態では、第2の末端基が、少なくとも750ダルトンの平均分子量を有するPEG基を含む。いくつかの実施形態では、第2の末端基が、1000~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG基を含む。いくつかの実施形態では、第2の末端基が、1900~2300ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG基を含む。いくつかの実施形態では、第2の末端基が、2000~2200ダルトンの範囲の平均分子量を有するPEG基を含む。いくつかの実施形態では、第2の末端基が、約2100ダルトンの平均分子量を有するPEG基を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、PEG基が、約1.00~約1.50、約1.00~約1.25、または約1.00~約1.10の間の多分散指数(PDI)を有する。いくつかの実施形態では、PEG基が、約1.05の多分散指数(PDI)を有する。「多分散指数」という用語は、所与のポリマー試料中の分子質量の分布の尺度を指す。多分散指数(PDI)は、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ったものに等しく、ポリマーのバッチ内の個々の分子質量の分布を示す。多分散指数(PDI)のは1以上の値を有するが、ポリマーが均一な変化長および平均分子量に近づくにつれて、多分散指数(PDI)が1に近くなる。
【0100】
いくつかの実施形態では、PEG基がメトキシ末端PEGである。
【0101】
PEG基は、任意の適切な手段を介して外側のビルディングユニットに結合されうる。いくつかの実施形態では、PEG連結基を使用して、PEG基を外側のビルディングユニットに結合させる。いくつかの実施形態では、第2の末端基が、それぞれPEG基に存在する炭素原子とPEG連結基(L1)に存在する酸素原子との間に形成されるエーテル結合を介してPEG連結基に共有結合したPEG基を含み、各第2の末端基が、ビルディングユニットに存在する窒素原子とPEG連結基に存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介してビルディングユニットに共有結合している。いくつかの実施形態では、第2の末端基がそれぞれ以下である
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)。
【0102】
本開示のデンドリマーでは、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1が、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。
【0103】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、制御された化学量論および/またはトポロジーを有する。例えば、デンドリマーは、典型的には、デンドリマー上に存在する第1および第2の末端基の数および配置の高度な制御を可能にする合成方法を使用して製造される。いくつかの実施形態では、各官能化された外側のビルディングユニットが、1つの第1の末端基および1つの第2の末端基を含む。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、第1の末端基および第2の末端基に結合した外側のビルディングユニットを含む表面ユニットを含み、表面ユニットが、以下の構造を有する:
、
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、28~32個の表面ユニットを有する。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、30~32個の表面ユニットを有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第1の末端基に共有結合している。いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも45%が、それぞれ第1の末端基に共有結合している。いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の約50%が、それぞれ第1の末端基に共有結合している。
【0105】
いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも45%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の約50%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。
【0106】
いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも40%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも45%が、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも45%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。いくつかの実施形態では、外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の約50%が、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の約50%が、それぞれ第2の末端基に共有結合している。
【0107】
いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの5世代が完全な世代であり、ビルディングユニットの外側の世代が、第1の末端基または第2の末端に共有結合するための64個の窒素原子を提供し、26~32個の第1の末端基が前記窒素原子の1つに共有結合しており、28~32個の第2の末端基がそれぞれ前記窒素原子の1つに共有結合している。いくつかの実施形態では、28~32個の第1の末端基が、それぞれ前記窒素原子の1つに共有結合している。いくつかの実施形態では、29~31個の第1の末端基が、それぞれ前記窒素原子の1つに共有結合している。
【0108】
いくつかの実施形態では、カバジタキセル残基が、デンドリマーの少なくとも20%w/w、デンドリマーの少なくとも22%w/w、またはデンドリマーの少なくとも24%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、カバジタキセル残基が、デンドリマーの最大30%w/w、デンドリマーの最大28%w/w、またはデンドリマーの最大26%w/wを構成する。いくつかの実施形態では、カバジタキセル残基が、20%w/w~30%w/w、または23%w/w~28%w/w、または24%w/w~26%w/wの範囲のデンドリマーのw/w%を構成する。カバジタキセル残基であるデンドリマーのw/w%は、任意の適切な手段によって決定されうる。いくつかの実施形態では、カバジタキセル残基であるデンドリマーのw/w%が、1H NMRによって決定されうる。
【0109】
いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する窒素原子の4分の1以下が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する窒素原子の5分の1以下が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する窒素原子の6分の1以下が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する窒素原子の8分の1以下が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する窒素原子の10分の1以下が非置換である。
【0110】
いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する20個以下の窒素原子が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する10個以下の窒素原子が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する5個以下の窒素原子が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する3個以下の窒素原子が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する2個以下の窒素原子が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する1個以下の窒素原子が非置換である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットの外側の世代に存在する実質的に全ての窒素原子が置換されている。
【0111】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが以下である:
(式中、T1’は以下の第1の末端基を表す
またはT1’はHを表し、T1’の5つ未満はHであり;
T2’は以下の第2の末端基を表す
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)、またはT2’はHを表し、T2’の5つ未満はHである)。
【0112】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、50~300kDaの範囲の分子量を有する。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、75~200kDaの範囲の分子量を有する。一例では、デンドリマーが、90~150kDaの範囲の分子量を有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、pH7.4および37℃でのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、20~100時間の範囲である。いくつかの実施形態では、pH7.4および37℃でのPBS中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、24~60時間の範囲である。いくつかの実施形態では、pH7.4および37℃でのPBS中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、30~60時間の範囲である。いくつかの実施形態では、pH7.4および37℃でのPBS中のデンドリマーからのカバジタキセル放出のインビトロ半減期が、30~50時間の範囲である。
組成物
【0114】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、組成物、好ましくは医薬組成物として提供される。
【0115】
デンドリマーを製造するための合成方法の性質の結果として、所与の組成物中に存在するデンドリマー間で分子組成にいくらかの変動がありうることが理解されるだろう。例えば、上記のように、デンドリマーを製造するために使用される1つまたは複数の合成ステップは、完全に完了するまで進行しない場合があり、必ずしも全てが同じ数の第1の末端基もしくは第2の末端基を含むわけではない、または不完全な世代のビルディングユニットを含むデンドリマーの存在をもたらしうる。
【0116】
したがって、複数のデンドリマーまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物であって、デンドリマーが本明細書で定義される通りであり、
組成物中のデンドリマー1個当たりの第1の末端基の平均数が24~32個の範囲であり、
組成物中のデンドリマー1個当たりの第2の末端基の平均数が24~32個の範囲である、
組成物が提供される。いくつかの実施形態では、デンドリマー1個当たりの第1の末端基の平均数が26~32個の範囲であり、デンドリマー1個当たりの第2の末端基の平均数が28~32個の範囲である。いくつかの実施形態では、デンドリマー1個当たりの第1の末端基の平均数が28~32個の範囲、または29~31個の範囲である。いくつかの実施形態では、デンドリマー1個当たりの第2の末端基の平均数が29~31個の範囲である。
【0117】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、少なくとも24個の第1の末端基を含む。いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、少なくとも26個の第1の末端基を含む。いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、少なくとも28個の第1の末端基を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、少なくとも28個の第2の末端基を含む。いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、少なくとも29個の第2の末端基を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、少なくとも24個の第1の末端基および少なくとも28個の第2の末端基を含む。いくつかの実施形態では、デンドリマーの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%が、少なくとも26個の第1の末端基および少なくとも29個の第2の末端基を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、複数のデンドリマーまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物が、組成物中に存在するデンドリマーの少なくとも20%w/w、少なくとも22%w/w、または少なくとも少なくとも24%w/wの量のカバジタキセル残基を含む。いくつかの実施形態では、複数のデンドリマーまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物が、デンドリマーの最大30%w/w、デンドリマーの最大28%w/w、またはデンドリマーの最大26%の量のカバジタキセル残基を含む。いくつかの実施形態では、複数のデンドリマーまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物が、20%w/w~30%w/w、または23%w/w~28%w/wr、または24%w/w~26%w/wの範囲の量のカバジタキセル残基を含む。カバジタキセル残基であるデンドリマーのw/w%は、任意の適切な手段によって決定されうる。いくつかの実施形態では、カバジタキセル残基であるデンドリマーのw/w%が、1H NMRによって決定されうる。
【0121】
本開示はまた、獣医用とヒト医療用の両方のための医薬組成物であって、本開示のデンドリマーまたはその薬学的に許容される塩を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、および場合により任意の他の治療成分、安定剤などと組み合わせて含む医薬組成物を提供する。担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して過度に有害でないという意味で、薬学的に許容されなければならない。いくつかの実施形態では、組成物が医薬組成物であり、組成物が薬学的に許容される賦形剤を含む。本開示の組成物はまた、高分子賦形剤/添加剤または担体、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの誘導体化セルロース、Ficoll(高分子糖)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、ならびにペクチンを含みうる。組成物はさらに、希釈剤、緩衝剤、クエン酸塩、トレハロース、結合剤、崩壊剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(抗酸化剤を含む)、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗微生物剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味剤、帯電防止剤、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質、脂肪酸および脂肪エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))、およびキレート剤(例えば、EDTA、亜鉛および他のこのような適切なカチオン)を含みうる。本開示による組成物に使用するのに適した他の医薬賦形剤および/または添加剤は、‘‘Remington:The Science&Practice of Pharmacy’’,19.sup.th ed.,Williams&Williams,(1995)および‘‘Physician’s Desk Reference’’,52.sup.nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)および‘‘Handbook of Pharmaceutical Excipients’’,Third Ed.,Ed.A.H.Kibbe,Pharmaceutical Press,2000に列挙されている。
【0122】
いくつかの実施形態では、組成物が、希釈剤で再構成するに適した固体組成物である。例えば、組成物は、粉末または顆粒の形態でありうる。このような組成物は、例えばデンドリマーの安定性を提供するのを助けて、投与前のデンドリマーの輸送および/または貯蔵に有利でありうる。
【0123】
いくつかの実施形態では、安定な組成物が、デンドリマーからのカバジタキセル放出速度が、室温、例えば25℃で4時間の期間にわたって、総カバジタキセルの1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満である組成物である。
【0124】
このような固体組成物と共に使用される賦形剤には、例えば、緩衝剤または他のpH制御剤が含まれうる。pH制御剤は、例えば、固体組成物自体、または固体組成物が希釈剤と混和される場合、その後の再構成された組成物のいずれかにおいて、デンドリマーの化学的安定性を保護および/または維持するのに有用でありうる。いくつかの実施形態では、希釈剤で再構成した後、6未満のpHを提供することができる、または5未満の範囲のpHを提供することができる、または3.5~5.5の範囲のpHを提供することができる、または4~5の範囲のpHを提供することができる、または約4.5のpHを提供することができる酸が固体組成物に使用される。いくつかの実施形態では、希釈剤で再構成した後、再構成された組成物が、5未満の範囲、3.5~5.5の範囲、4~5の範囲、または約4.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、4~5の範囲のpKaを有する酸性基を有する酸が使用される。いくつかの実施形態では、クエン酸などの酸が組成物に含まれる。
【0125】
いくつかの実施形態では、固体組成物が、増量剤、例えば、非還元糖を含む。いくつかの実施形態では、糖が二糖である。いくつかの実施形態では、糖がトレハロース、マンニトール、ソルビトールまたはラクトースである。
【0126】
いくつかの実施形態では、固体組成物が糖および酸を含み、組成物が希釈剤で再構成するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物がトレハロースおよびクエン酸を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、組成物が、1:1~1:3の範囲の重量比、または約1:2の重量比で、デンドリマーおよび糖(好ましくはトレハロース)を含む。いくつかの実施形態では、組成物が、1:0.5~1:2の範囲、または約1:1、または1:0.96の重量比で、デンドリマーおよび酸(好ましくはクエン酸)を含む。いくつかの実施形態では、デンドリマー:糖:酸の重量比が約100:200:96である。いくつかの実施形態では、組成物中のデンドリマー:糖:酸の重量比が約100:200:96であり、組成物が、デンドリマーの23%w/w~28%w/wの量のカバジタキセル残基を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、組成物が凍結乾燥によって製造される、すなわち、組成物が凍結乾燥物である。いくつかの実施形態では、組成物が、デンドリマーまたはその薬学的に許容される塩、糖および酸を含む固体凍結乾燥物である。いくつかの実施形態では、組成物が、デンドリマーまたはその薬学的に許容される塩、トレハロースおよびクエン酸を含む固体凍結乾燥物である。
【0129】
いくつかの実施形態では、組成物が液体組成物、例えば、注射または注入による投与に適した再構成された組成物である。例えば、組成物は、上に論じられる固体組成物を生理食塩水またはWFI(注射用水)などの希釈剤と混和することによって製造される再構成された組成物でありうる。
【0130】
いくつかの実施形態では、液体組成物が、再構成後、最大2時間、最大4時間、最大6時間、最大12時間、または最大24時間、または最大48時間、または最大1週間使用するのに、周囲条件(例えば、約25℃)で十分に安定である再構成された組成物である。いくつかの実施形態では、液体組成物が、再構成後、最大2時間、最大4時間、最大6時間、最大12時間、または最大24時間、または最大48時間、または最大1週間使用するのに、冷蔵(例えば、約4℃)で十分に安定である再構成された組成物である。いくつかの実施形態では、液体組成物が、再構成後、最大2時間、最大4時間、最大6時間、最大12時間、または最大24時間、または最大48時間、または最大1週間使用するのに、光から保護した場合に十分に安定である再構成された組成物である。
【0131】
再構成後、注入バッグ(生理食塩水)に移す前に、データが、本発明による再構成された溶液が、室温(25±5℃)で少なくとも4時間安定である(0.1%未満のカバジタキセル放出)ことを示すことが分かった。
【0132】
いくつかの実施形態では、液体組成物が、組成物中に存在する場合のデンドリマーからのカバジタキセル放出速度が、室温、例えば25℃で4時間の期間にわたって、総カバジタキセルの1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満である組成物である。
【0133】
いくつかの実施形態では、液体組成物が、注入バッグ中に存在する再構成された組成物である。いくつかの実施形態では、液体組成物が、注射器中に存在する再構成された組成物である。
【0134】
上記の組成物は、第1の態様で記載されたもの以外の薬物-デンドリマーコンジュゲート、例えば、薬学的に活性な薬剤がジグリコリルリンカーを介してデンドリマーにヒドロキシル基を通して連結されている他の薬物-デンドリマーコンジュゲートで利用することができることが理解されるだろう。
【0135】
したがって、a)コアユニットと、ビルディングユニットと、それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したヒドロキシル基を含む薬学的に活性な薬剤の残基を含む複数の第1の末端基(T1)と、それぞれが薬物動態修飾剤を含む複数の第2の末端基(T2)とを含むデンドリマーであって、第1の末端基および第2の末端基は外側のビルディングユニットに共有結合しているデンドリマーと;b)酸とを含む医薬組成物も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、薬学的に活性な薬剤が、腫瘍剤、例えば、ドセタキセルまたはカバジタキセルなどのタキサンである。いくつかの実施形態では、薬物動態修飾剤がPEGまたはPEOX基を含む。いくつかの実施形態では、薬物動態修飾剤がPEG基を含む。いくつかの実施形態では、コアがBHALys基である。いくつかの実施形態では、ビルディングユニットがリジン残基またはその類似体である。いくつかの実施形態では、デンドリマーが5世代ビルディングユニットデンドリマーである。いくつかの実施形態では、酸がクエン酸である。いくつかの実施形態では、組成物が、c)糖、例えば二糖、例えばトレハロースを含む。いくつかの実施形態では、組成物が固体組成物である。いくつかの実施形態では、組成物が凍結乾燥によって製造される、すなわち、組成物が固体凍結乾燥物である。いくつかの実施形態では、組成物が、希釈剤で再構成するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物が液体組成物、例えば、注射または注入による投与に適した再構成された組成物である。例えば、組成物は、上に論じられる固体組成物を生理食塩水またはWFI(注射用水)などの希釈剤と混和することによって製造される再構成された組成物でありうる。本開示のデンドリマーは、エアロゾル、または非経口(腹腔内、静脈内、皮下または筋肉内注射を含む)投与による肺への吸入に適した組成物を含む組成物で提供されうる。組成物は、単位剤形で好都合に提供され、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製されうる。全ての方法は、デンドリマーを1つまたは複数の副成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に、組成物は、デンドリマーを液体担体と会合させて溶液または懸濁液を形成する、あるいはデンドリマーを、固体、場合により粒子状生成物を形成するのに適した組成物成分と会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の送達形態に成形することによって調製される。本開示の固体組成物は、粒子状である場合、典型的には約1ナノメートル~約500ミクロンの範囲のサイズの粒子を含むだろう。一般に、静脈内投与を意図した固体組成物の場合、粒子は、典型的には直径が約1nm~約10ミクロンの範囲となる。組成物は、1000nm未満、例えば5~1000nm、特に5~500nm、さらに特に5~400nm、例えば5~50nm、特に5~20nmの粒径を有するナノ粒子である本開示のデンドリマーを含みうる。一例では、組成物が、5~20nmの平均サイズを有するデンドリマーを含む。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、1.01~1.8、特に1.01~1.5、さらに特に1.01~1.2のPDIで、組成物中に多分散している。一例では、デンドリマーは組成物中に単分散している。
【0136】
いくつかの好ましい実施形態では、組成物が非経口送達用である。例えば、一実施形態では、組成物が、注射前の水性ビヒクル中での再構成に適した無菌の凍結乾燥組成物でありうる。
【0137】
一実施形態では、非経口投与に適した組成物が、例えば、レシピエントの血液と等張になるように調製されうるデンドリマーの無菌水性調製物を好都合に含む。
【0138】
吸入によるエアロゾルとしての投与に適した医薬組成物も提供される。これらの組成物は、所望のデンドリマーまたはその塩の溶液または懸濁液を含む。所望の組成物は小さなチャンバーに入れて噴霧することができる。噴霧化を、圧縮空気または超音波エネルギーによって達成して、デンドリマーまたはその塩を含む複数の液滴または固体粒子を形成することができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、組成物が、注入として投与するために製剤化されうる。いくつかの実施形態では、組成物が、ボーラス投与として投与するために製剤化されうる。いくつかの実施形態では、組成物が、最大30分の期間にわたる注入としての投与するために製剤化される、または最大5分の期間にわたるボーラスとして投与するために製剤化される。
【0140】
以下に論じられるように、本開示のデンドリマーは、例えば、1つまたは複数の追加の薬学的に活性な薬剤と組み合わせて投与されうる。したがって、いくつかの実施形態では、組成物が、本明細書で定義されるデンドリマー、またはその薬学的に許容される塩と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体と、1つまたは複数の追加の薬学的に活性な薬剤、例えば、追加の腫瘍剤、細胞傷害性小分子、チェックポイント阻害剤、抗体療法とを含む。いくつかの実施形態では、組成物が、本明細書で定義されるデンドリマー、またはその薬学的に許容される塩と、ゲムシタビンなどの追加の腫瘍剤とを含む。本開示のデンドリマーは、他の化学療法薬と投与することができるだけでなく、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、および回復を助ける、または血液毒性、例えばサイトカインから保護する薬物などの他の薬物と組み合わせて投与することもできる。
【0141】
いくつかの実施形態では、組成物が、化学療法レジメンの一部としての非経口注入のためのものである。これらの実施形態では、組成物が、例えば、可溶化賦形剤、特にポリエトキシ化ヒマシ油(例えば、商品名Cremophor(登録商標)もしくはKolliphor(登録商標)で販売されているものなど)またはポリエトキシ化ソルビタンモノオレエート(商品名ポリソルベート80(登録商標)で販売されているものなど)などの可溶化賦形剤を実質的に含まないまたは完全に含まないことができる。可溶化賦形剤は、1つまたは複数の溶媒へのデンドリマーの溶解を助ける添加剤である。一実施形態では、組成物が、ポリエトキシ化ヒマシ油(例えば、商品名Cremophor(登録商標)またはKolliphor(登録商標)で販売されているものなど)およびポリエトキシ化ソルビタンモノオレエート(例えば、ポリソルベート80(登録商標)など)を実質的に含まない、または完全に含まない。一実施形態では、組成物が、可溶化賦形剤を実質的にまたは完全に含まない。可溶化賦形剤の使用を回避することによって、デンドリマーの組成物は、生命を脅かすアナフィラキシーおよび/または重度の体液貯留を含む急性または遅延型過敏症などの副作用を引き起こす可能性が低い、ならびに/あるいはステロイド前処置の必要性を排除する。
使用方法
【0142】
本開示のデンドリマーは、未修飾の薬学的に活性な薬剤を処置または予防に使用することができる任意の疾患、障害または症状を処置または予防するために使用されうる。したがって、治療に使用するための本明細書に記載されるデンドリマーまたは医薬組成物も提供される。
【0143】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、例えば、腫瘍の成長を抑制するために、がんを処置または予防する方法に使用される。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、がんの処置に使用するためのものである。がんを処置する方法であって、治療上有効量のデンドリマーを、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法も提供される。がんを処置するための医薬の製造における、本明細書で定義されるデンドリマーまたは本明細書で定義される組成物の使用も提供される。
【0144】
いくつかの実施形態では、がんが固形腫瘍である。がんは原発性腫瘍または転移性腫瘍でありうる。いくつかの実施形態では、がんが原発性腫瘍である。いくつかの実施形態では、がんが転移性腫瘍である。
【0145】
いくつかの実施形態では、がんが、乳がん、卵巣がん(例えば、再発性卵巣がん)、膵臓がん、精巣がん(例えば、シスプラチン耐性胚細胞がん)、前立腺がん(例えば、骨転移性前立腺がん、前立腺新生物、ホルモン抵抗性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、進行性前立腺がん)、脱分化型脂肪肉腫、膀胱の尿路上皮癌(例えば、尿路上皮移行上皮癌(TCCU))、副腎皮質癌、脳がん(例えば、再発性悪性神経膠腫)、AML(急性骨髄性白血病)およびCLL(慢性リンパ性白血病)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、がんが、前立腺がん、膵臓がん、卵巣がんまたは乳がんである。いくつかの実施形態では、がんが、前立腺がん、例えば、ホルモン抵抗性前立腺がん、または例えば、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である。いくつかの実施形態では、がんが乳がんである。いくつかの実施形態では、がんが膵臓がんである。いくつかの実施形態では、がんが卵巣がんである。いくつかの実施形態では、がんが、汗腺の腫瘍、例えば、指趾乳頭状腺癌である。
【0146】
いくつかの実施形態では、治療(例えば、がん治療)で使用されるデンドリマーが、以下のコアを有する:
。
【0147】
いくつかの実施形態では、治療(例えば、がん治療)で使用されるデンドリマーが、それぞれが以下であるビルディングユニットを有する:
;
(式中、各ビルディングユニットのアシル基は、コアまたは前世代のビルディングユニットに結合するための共有結合点を提供し;各窒素原子は、後世代のビルディングユニット、第1の末端基または第2の末端基に共有結合するための共有結合点を提供する)。
【0148】
いくつかの実施形態では、治療(例えば、がん治療)で使用されるデンドリマーが、それぞれが以下である第1の末端基(T1)を有する:
。
【0149】
いくつかの実施形態では、治療(例えば、がん治療)で使用されるデンドリマーが、それぞれが以下ある第2の末端基を有する
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の平均分子量を有するメトキシ末端PEGである)。
【0150】
いくつかの実施形態では、治療(例えば、がん治療)で使用されるデンドリマーが、26~32個の第1の末端基、および28~32個の第2の末端基を有する。
【0151】
いくつかの実施形態では、治療(例えば、がん治療)で使用されるデンドリマーが以下である
(式中、T1’は以下の第1の末端基を表す
またはT1’はHを表し、T1’の5つ未満はHであり;
T2’は以下の第2の末端基を表す
(式中、PEG基は、約1750~2500ダルトンの範囲の分子量を有するメトキシ末端PEGである)、またはT2’はHを表し、T2’の5つ未満はHである)。
【0152】
薬物は、通常、特に化学療法中に、併用療法で他の薬物と同時投与される。したがって、いくつかの実施形態では、デンドリマーが、1つまたは複数のさらなる治療的/薬学的に活性な薬剤、例えば、1つまたは複数のさらなる抗がん剤と組み合わせて投与される。デンドリマーと1つまたは複数のさらなる治療的/薬学的に活性な薬剤は、同時に、続いて、または別々に投与されうる。例えば、これらは、同じ組成物の一部として、または別個の組成物の投与によって投与されうる。1つまたは複数のさらなる薬学的に活性な薬剤は、例えば、前立腺がんもしくは乳がんの治療のための、または例えば膵臓がんもしくは卵巣がんの治療のための抗がん剤でありうる。さらなる薬学的に活性な薬剤の例としては、化学療法剤および細胞傷害剤、免疫腫瘍剤(チェックポイント阻害剤など)、および抗体療法が挙げられる。さらなる薬学的に活性な薬剤の例としては、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、クラリスロマイシン、ビンフルニン、バビツキシマブ、トコトリエノール、ゲムシタビン、カペシタビン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ニラパリブ、フォリン酸、5-フルオロウラシル、イリノテカン、タムスロシン、ADT、G-CSF、LHRHアンタゴニスト、ビカルタミド、エンズルタミド、クラリスロマイシン、ビンフルニン、バビツキシマブおよびベバシズマブが挙げられる。
【0153】
Jevtana(登録商標)(遊離カバジタキセル)の現在のラベルには、これが、Jevtana(登録商標)処置全体を通して、毎日投与される経口プレドニゾン10mgと組み合わせて、1時間の静脈内注入として投与されることが記載されている。さらに、過敏症のリスクおよび/または重症度を軽減するために、Jevtana(登録商標)の各投与の少なくとも30分前に以下の静脈内薬物での前投薬が推奨されている(i)抗ヒスタミン薬(デクスクロルフェニラミン5mg、またはジフェンヒドラミン25mg、または等価な抗ヒスタミン薬)、(ii)コルチコステロイド(デキサメタゾン8mgまたは等価なステロイド)、および(iii)H2拮抗薬(ラニチジン50mgまたは等価なH2拮抗薬)。
【0154】
いくつかの実施形態では、デンドリマーまたはデンドリマーを含む組成物が、Jevtana(登録商標)の送達に使用されるステロイドまたは他の医薬と組み合わせて投与されない。いくつかの実施形態では、デンドリマーまたはデンドリマーを含む組成物が、前投薬を必要とする体制の一部として投与されない。いくつかの実施形態では、デンドリマーまたはデンドリマーを含む組成物が、過敏症のリスクおよび/または重症度を低減する薬物と組み合わせて投与されず、過敏症のリスクおよび/または重症度を低減する薬物による前投薬を必要とする体制の一部として投与されず、過敏症のリスクおよび/または重症度を低減する薬物による進行中の処置を必要とする体制の一部として投与されない。いくつかの実施形態では、デンドリマーまたはデンドリマーを含む組成物が、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイドまたはH2拮抗薬と組み合わせて投与されず、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイドまたはH2拮抗薬による前投薬を必要とする体制の一部として投与されず、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン)、免疫抑制薬またはH2拮抗薬による進行中の処置を必要とする体制の一部として投与されない。
【0155】
治療上有効量が、処置されている障害または状態の症状のうちの1つまたは複数をある程度緩和または予防するのに十分な量で投与されるデンドリマーを指すことが理解されるだろう。デンドリマーの治療上有効量は、例えば、投与されるデンドリマーの量に基づいて言及されうる。あるいは、これは、デンドリマーが理論上送達することができる活性剤(カバジタキセル)の量に基づいて、例えばデンドリマーへのカバジタキセルの搭載量に基づいて決定されうる。
【0156】
いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、5~100mgの活性剤/m2、10~100mgの活性剤/m2、5~50mgの活性剤/m2、5~40mgの活性剤/m2、5~30mgの活性剤/m2、5~25mgの活性剤/m2、5~20mgの活性剤/m2、10~50mgの活性剤/m2、20~40mgの活性剤/m2、15~35mgの活性剤/m2、10~20mg/m2、20~30mg/m2、20~50mg/m2、25~50mg/m2、30~40mg/m2、25~35mgの活性剤/m2、50~100mgの活性剤/m2、50~75mgの活性剤/m2、または75~100mgの活性剤/m2を送達するのに十分である。カバジタキセルは20~25mg/m2での使用が示されており、以下の比較マウス研究では、同様のまたはわずかに高い用量の活性剤がデンドリマーに有効であることが実証されている。マウスにおける10mg/kgの活性剤の用量は、30mg/m2のヒト用量とほぼ同じであるはずである(FDAガイダンス2005)。(ヒトmg/kg用量をmg/m2に変換するためには、この数値に37を掛けることができる、FDAガイダンス2005)。
【0157】
いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、20~25mg/m2の遊離カバジタキセルの投与で送達されるカバジタキセルの量の0.5~3倍の範囲である量のカバジタキセルを患者に送達する。いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、20~25mg/m2の遊離カバジタキセルの投与で送達されるカバジタキセルの量の1~2倍の範囲である量のカバジタキセルを患者に送達する。いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、20~25mg/m2の遊離カバジタキセルの投与で送達されるカバジタキセルの量の0.5倍~1倍未満の範囲である量のカバジタキセルを患者に送達する。いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、20~25mg/m2の遊離カバジタキセルの投与で送達されるカバジタキセルの量の0.5~1.5倍の範囲である量のカバジタキセルを患者に送達する。いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、20~25mg/m2の遊離カバジタキセルの投与で送達されるカバジタキセルの量の0.8~1.2倍の範囲である量のカバジタキセルを患者に送達する。いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、認可された投与量の遊離カバジタキセル(例えば、Jevtana(登録商標))の投与で送達される量と実質的に等価な量のカバジタキセルを送達する。例えば、上に論じられるように、カバジタキセルの推奨投与レベルは20~25mg/m2である。いくつかの実施形態では、投与されるデンドリマーの量が、20~25mg/m2の遊離カバジタキセルの投与と実質的に等価な量のカバジタキセルを患者に送達することができる。投与されるデンドリマーの量は、例えば、デンドリマーが送達することができるカバジタキセルの量(すなわち、カバジタキセル搭載量)を参照して決定されうる。
【0158】
いくつかの実施形態では、治療上有効量のデンドリマーが、所定の頻度でそれを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、デンドリマーが1~4週間に1回投与される投薬レジメンに従って、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、デンドリマーが3~4週間に1回投与される投薬レジメンに従って、それを必要とする対象に投与される。
【0159】
いくつかの実施形態では、デンドリマーまたは医薬組成物が、急速注入またはボーラスとして投与される。いくつかの実施形態では、注入時間が、1時間未満、30分未満、または20分未満の期間にわたり、例えば、これが、約20分、15分、または10分の期間にわたって投与されうる。いくつかの実施形態では、投与が、ボーラスとしてであり、例えば、これが、ボーラス注射に適した期間、例えば最大約5分の期間、例えば5秒~5分の範囲の期間にわたって投与されうる。
【0160】
驚くべきことに、本開示のデンドリマーが、遊離薬物の直接投与と比較して増加した有効性を有することが分かった。
【0161】
遊離カバジタキセルの等価な用量は、投与されるデンドリマーの用量に含まれる(搭載された)カバジタキセルの量と等価な量の遊離カバジタキセルである。
【0162】
本明細書で使用される場合、「遊離」という用語は、前もってデンドリマーにコンジュゲートされていない薬物、すなわちカバジタキセルを指す。例えば、遊離カバジタキセルの直接投与は、デンドリマーにコンジュゲートしているものとして投与されないカバジタキセル分子の直接投与を指す。このような治療の例はJevtana(登録商標)である。本明細書で使用される場合、「非コンジュゲート」および「放出」という用語は、デンドリマーから解離または切断された薬物、すなわちカバジタキセルを指す。解離または切断は、薬物-デンドリマーコンジュゲートの投与後にインビボで起こりうる。
【0163】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、増強された臨床的有効性を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態では、デンドリマーのクールの投与が、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して、増強された臨床的有効性を提供する。
【0165】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、
患者集団の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%で、
がんに関連する症状の緩和もしくは排除、
癌性組織のサイズの縮小、
無増悪生存期間の増加、および/または
転移の遅延もしくは予防
をもたらす。
【0166】
腫瘍薬は、通常、血液毒性、神経毒性、心毒性、肝毒性、腎毒性、耳毒性および脳毒性などの標的外毒性に起因する重大な副作用を有する。例えば、カバジタキセルなどのタキサンは、以下の有害効果を引き起こしうる:感染症、好中球減少症、貧血、発熱性好中球減少症、過敏症、血小板減少症、骨髄毒性、骨髄抑制、神経障害、味覚障害、呼吸困難、便秘、食欲不振、爪障害、体液貯留、無力症、疼痛、悪心、下痢、嘔吐、疲労、非特異的神経認知障害、めまい、脳症、粘膜炎、脱毛症、皮膚反応および筋肉痛。
【0167】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、減少した毒性をもたらす。薬物の毒性とは、生物に損傷が生じる程度を指し、標的外の効果によって測定される。腫瘍学では、動物モデルにおける毒性のこのような測定の1つは、最大耐量(MTD)を決定する体重減少である。ヒトでは、毒性が、一般的に、典型的には用量制限毒性を含む特定の有害事象(AE)によって決定される。通常、腫瘍学では、治療濃度域が狭く、標的外の毒性が腫瘍細胞を殺傷するという通常の副作用と見なされることが理解されるだろう。
【0168】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、がんの処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して減少した毒性をもたらす。
【0169】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して減少した毒性をもたらす。
【0170】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、がんの処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して減少した毒性をもたらす。
【0171】
いくつかの実施形態では、デンドリマーのクールの投与が、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して減少した毒性をもたらす。
【0172】
いくつかの実施形態では、デンドリマーのクールの投与が、患者集団の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%で減少した毒性をもたらす。
【0173】
本開示のデンドリマーで行われた毒物学研究は、デンドリマーが、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、好中球減少症を誘発する可能性が低く、したがって診療所での毒性が少ないことを示している。
【0174】
したがって、いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、例えば、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少の形で、減少した骨髄毒性をもたらす。いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、減少した好中球減少症をもたらす。
【0175】
いくつかの実施形態では、デンドリマーのクールの投与が、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少をもたらす。
【0176】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、がんの処置方法に使用される場合、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、例えば、好中球減少症、リンパ球減少症、貧血および/または血小板減少症の減少の形で、減少した骨髄毒性をもたらす。いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、がんの処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して減少した好中球減少症をもたらす。いくつかの実施形態では、デンドリマーのクールの投与が、がんの処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、20または25mg/m2のカバジタキセルの週3回の投与と比較して減少した好中球減少症をもたらす。
【0177】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、等価な用量の遊離の薬学的に活性な薬剤の直接投与と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の特定のAE(例えば、感染症(膀胱炎、上気道、帯状疱疹、カンジダ症、敗血症、インフルエンザ、UTI)、発熱、好中球減少症、貧血、発熱性好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症、骨髄毒性、骨髄抑制、神経障害、過敏症、味覚異常、胃腸毒性、呼吸困難、咳、腹痛、便秘、食欲不振、爪障害、体液貯留、無力症、疼痛、悪心、下痢、嘔吐、疲労、非特異的神経認知障害、頭痛、めまい、背部痛、関節痛、脳症、粘膜炎、脱毛症、皮膚反応および筋肉痛)を有する患者の数によって測定される毒性の減少をもたらす。
一例では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、95%未満、90%未満、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満の毒性をもたらす。
【0178】
本開示のデンドリマーは、驚くべきことに、非コンジュゲートまたは放出薬物の持続的な薬物動態プロファイルを達成する。この持続的な薬物動態プロファイルは、薬物がインビボで治療上有効なレベルで長期間存在することを示している。薬物の治療効果を延長し、投与頻度を減らすことを可能にしうるので、薬物へのより長期間の曝露が望ましいことが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、カバジタキセルの治療上有効な血漿濃度をより長期間提供する。
【0179】
デンドリマーは、比較的長い治療的曝露レベルを提供する持続的なインビボ薬物動態プロファイルを有することに加えて、インビボ投与時に比較的低いCmaxレベルも達成する。
【0180】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離薬物の直接投与と比較して、非コンジュゲート/放出薬物の低い最大濃度(Cmax)を提供する。薬物の最大濃度(Cmax)は、薬物が投与された後、2回目の投与の前に、体の指定された区画または試験領域で薬物が達成する最大(またはピーク)血清濃度である。治療濃度レベルを達成するのに十分なレベルで医薬品を投与できることが重要であるが、到達される最大濃度レベルが高い場合、一定の標的外の効果、副作用および毒性に遭遇するリスクが増加することが理解される。これは、半減期が短い化合物にとって特に問題であり、なぜなら、そのような場合、治療上有効レベルの活性剤を長期間提供するために、用量を増加させ、したがってCmaxを増加させる必要があり、結果として副作用の可能性が高まるからである。したがって、同時にインビボで非常に高い最大濃度(Cmax)を達成するレベルでの投与を回避しながら、持続的な期間にわたって治療上有効レベルを提供する形態で薬学的に活性な薬剤を送達できることが非常に望ましい。
【0181】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、非コンジュゲート/放出カバジタキセルの低い最大濃度(Cmax)を有する。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、放出/非コンジュゲートカバジタキセルの低い最大濃度(Cmax)を有する。
【0182】
いくつかの実施形態では、デンドリマーが、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、非コンジュゲート/放出カバジタキセルの低い最大濃度(Cmax)を有する。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、放出/非コンジュゲートカバジタキセルの低い最大濃度(Cmax)を有する。
【0183】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与から得られるCmaxの90%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満である薬物(すなわち、放出/非コンジュゲートカバジタキセル)の最大濃度(Cmax)をもたらす。
【0184】
いくつかの実施形態では、800ng/mL未満、500ng/mL未満、200ng/mL未満、100ng/mL未満、50ng/mL未満、25ng/mL未満、または20ng/mL未満の非コンジュゲートカバジタキセルの最大濃度(Cmax)をもたらすのに十分な量のデンドリマーが投与される。いくつかの実施形態では、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約80、約95または約100ng/mLの非コンジュゲート/放出カバジタキセルの最大濃度(Cmax)をもたらす量のデンドリマーが投与される。
【0185】
AUCは、時間に対する血漿中の薬物濃度のプロットの曲線下面積である。AUCは、経時的な総薬物曝露を表す。AUCは、通常、身体に送達される薬物の総量に比例することが理解されるだろう。
【0186】
デンドリマーの投与後、およびカバジタキセルの一部がデンドリマーから放出されるにつれて、体内に未結合カバジタキセルと、デンドリマーにまだ結合しているカバジタキセルの両方が存在することが理解されるだろう。
【0187】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、より大きな総カバジタキセル(すなわち、デンドリマー結合カバジタキセルと放出カバジタキセルの両方)のAUCを提供する。
【0188】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、より大きな総カバジタキセル(すなわち、デンドリマー結合カバジタキセルと放出カバジタキセルの両方)のAUCを提供する。いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍または少なくとも5倍の総カバジタキセル(すなわち、デンドリマー結合カバジタキセルと放出カバジタキセルの両方)のAUCを提供する。
【0189】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、より大きな総カバジタキセル(すなわち、デンドリマー結合カバジタキセルと放出カバジタキセルの両方)のAUCを提供する。いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍または少なくとも5倍の総カバジタキセル(すなわち、デンドリマー結合カバジタキセルと放出カバジタキセルの両方)のAUCを提供する。
【0190】
いくつかの実施形態では、少なくとも100,000、少なくとも110,000、少なくとも120,000、少なくとも130,000、少なくとも140,000、少なくとも150,000、少なくとも160,000、少なくとも170,000、少なくとも180,000、少なくとも190,000、または少なくとも200,000ng.時間/mLの総カバジタキセル(すなわち、デンドリマー結合カバジタキセルと放出カバジタキセルの両方)のAUCを提供する量のデンドリマーが投与される。いくつかの実施形態では、約150,000、約160,000、約170,000、約180,000、約190,000、約200,000、約210,000、約220,000または約230,000ng.時間/mLの総カバジタキセル(すなわち、デンドリマー結合カバジタキセルと放出カバジタキセルの両方)のAUCを提供する量のデンドリマーが投与される。
【0191】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、等価なまたはより大きな非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0192】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍を、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、または少なくとも4倍の、非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0193】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、0.8倍~1.2倍の非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0194】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、等価なまたはより大きな非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0195】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、等価なまたはより大きな非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0196】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍を、少なくとも1.9倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、または少なくとも4倍の、非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0197】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、0.8倍~1.2倍の非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0198】
いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、処置方法、例えば、乳がん、卵巣がん、膵臓がんまたは前立腺がん、例えばホルモン抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)などのがんの処置に使用される場合、20または25mg/m2の用量のカバジタキセルの直接投与と比較して、等価なまたはより大きな非コンジュゲート/放出カバジタキセルのAUCを提供する。
【0199】
いくつかの実施形態では、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも1100、少なくとも1200、少なくとも1300、少なくとも1400、少なくとも1500、少なくとも1750、少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも3000、少なくとも3500、または少なくとも4000ng.時間/mLの放出/非コンジュゲートカバジタキセルのAUCを提供する量のデンドリマーが投与される。
【0200】
いくつかの実施形態では、約500、約600、約700、約800、約900、約1000、約1100、約1200、約1300、約1400、約1500、約1600、約1700、約1800、約2000、約2500、約3000、約3500、または約4000g.時間/mLの放出/非コンジュゲートカバジタキセルのAUCを提供する量のデンドリマーが投与される。
【0201】
遊離カバジタキセルは、初期相半減期が平均4分、引き続いて中間相半減期が2時間、および長期終末相半減期が平均95時間の三相消失プロファイルを特徴とする。いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも30時間、少なくとも40時間、少なくとも48時間、少なくとも50時間、または少なくとも75時間の非コンジュゲート/放出カバジタキセルの終末相半減期(t1/2)を提供する。
【0202】
上記の薬物動態特性のいずれか1つまたは複数が、遊離薬物の直接投与と比較して、より良い臨床的有効性を提供し得ることが理解されるだろう。いくつかの実施形態では、デンドリマーの投与が、等価な用量の遊離薬物の直接投与と比較して、より良い薬物の有効性を提供する。いくつかの実施形態では、デンドリマーが、等価な用量の遊離カバジタキセルの直接投与と比較して、無増悪生存期間、無増悪期間、奏効率(PR+CR)、全奏効率、全生存期間および奏効期間からなる群から選択される有効性特性の改善をもたらす。
デンドリマー合成
【0203】
本開示のデンドリマーは、任意の適切な方法によって、例えば、カバジタキセル含有前駆体を、PEG基を既に含むデンドリマー中間体と反応させて、薬学的に活性な薬剤を導入することによって、PEG含有前駆体を、カバジタキセル残基を既に含むデンドリマー中間体と反応させることによって、またはリジン基、カバジタキセル残基およびPEG基を含む中間体をデンドリマー中間体と反応させることによって調製されうる。したがって、第5の態様では、本明細書で定義されるデンドリマーを製造する方法であって、
a)以下のカバジタキセル中間体
、
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
デンドリマーは、5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマーは、それぞれがPEG基を含む複数の第2の末端基(T2)
とをさらに含む、デンドリマー中間体であって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第2の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、非置換であり、第1の中間体との反応に利用可能である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ;
または
b)以下であるPEG中間体
(式中、PEG基はPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
デンドリマーは、5世代ビルディングユニットデンドリマーであり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマーは、それぞれがジグリコリルリンカー基に共有結合したカバジタキセル残基を含む複数の第1の末端基(T1)
をさらに含む、デンドリマー中間体であって、
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は、それぞれ第1の末端基に共有結合しており;
外側のビルディングユニットに存在する窒素原子の少なくとも3分の1は非置換である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ;
または
c)以下である表面ユニット中間体
(式中、PEG基はPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、
i)コアユニット(C)と;
ii)各ビルディングユニット(BU)がリジン残基またはその類似体である、ビルディングユニットと
を含み、
コアユニットは、アミド結合を介して2つのビルディングユニットに共有結合しており、各アミド結合は、コアユニットに存在する窒素原子とビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成され;
4世代ビルディングユニットデンドリマー中間体であり;
異なる世代のビルディングユニットは、あるビルディングユニットに存在する窒素原子と別のビルディングユニットに存在するアシル基の炭素原子との間に形成されるアミド結合を介して互いに共有結合しており;
デンドリマー中間体の外側のビルディングユニットに存在する窒素原子は非置換である、
デンドリマー中間体、またはその塩と、
アミドカップリング条件下で反応させるステップ
を含む方法が提供される。
【0204】
方法の変形a)、b)およびc)は、-C(O)X基とデンドリマー中間体に存在するアミン基との反応によるアミド結合の形成を伴う。任意の適切なアミド形成条件を使用することができる。典型的な条件の例としては、適切な溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)、場合により適切な塩基、および適切な温度(例えば、周囲温度、例えば、15~30℃の範囲)の使用が挙げられる。Xが脱離基である場合、任意の適切な脱離基、例えば活性化エステルを使用することができる。Xが-OH基である場合、またはXが、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する場合、この基は、典型的には、デンドリマー中間体との反応前に、例えばPyBOPなどの適切なアミドカップリング試薬の使用によって、適切な脱離基に変換される。
【0205】
任意の適切な単離および/または精製技術を利用することができ、例えば、デンドリマーは、適切な溶媒(例えば、THF)への溶解および貧溶媒(例えば、MTBE)への添加による沈殿によって得ることができる。
【0206】
変形a)で使用されるカバジタキセル中間体は、それ自体、例えば、ジクロロメタンなどの適切な溶媒およびトリエチルアミンなどの適切な塩基の存在下で、カバジタキセルをジグリコール酸無水物と反応させることによって得ることができる。
【0207】
変形c)で使用される表面ユニット中間体は、それ自体、例えば、
i)以下のPEG中間体
(式中、PEG基はPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)を、以下
(式中、PG1はアミン保護基(BocまたはCbz基など)であり、PG2は酸保護基(メチルまたはベンジルエステルなど)である)
と反応させるステップ;
ii)PG1を脱保護するステップ;
iii)ステップii)の生成物を以下のカバジタキセル中間体
、
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
と反応させるステップ;および
iv)PG2を脱保護するステップ
によって得ることができる。
【0208】
変形a)で使用されるデンドリマー中間体は、それ自体、例えば、
i)アミノ基を含むコアユニット(C)と、-C(O)X基を含む、保護されたリジンまたはその類似体であるビルディングユニット(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、または-CO(X)はカルボン酸塩を形成し、リジンまたはその類似体に存在するアミノ基は保護されている)を反応させて、コアユニットとビルディングユニットとの間でアミド結合を形成するステップ;
ii)ビルディングユニットに存在する保護基を脱保護するステップ;
iii)ビルディングユニットに存在する遊離アミノ基を、-C(O)X基を含む、保護されたリジンまたはその類似体であるさらなるビルディングユニット(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、または-CO(X)はカルボン酸塩を形成し、リジンまたはその類似体に存在するアミノ基は保護されている)と反応させて、異なる世代のビルディングユニット間でアミド結合を形成するステップ;
iv)ビルディングユニットに存在する保護基を脱保護するステップ;
v)4世代ビルディングユニットが得られるまで、ステップiii)およびステップiv)を繰り返すステップ;
vi)ビルディングユニットに存在する遊離アミノ基を以下
(式中、PGは保護基であり、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
と反応させて、これらの間でアミド結合を形成するステップ;および
vii)保護基PGを脱保護するステップ
を含む逐次方法によって得ることができる。
【0209】
あるいは、変形a)で使用されるデンドリマー中間体は、例えば、上記ステップi)~v)、および
vi)ビルディングユニットに存在する遊離アミノ基を、-C(O)X基を含む、保護されたリジンまたはその類似体であるさらなるビルディングユニット(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、または-CO(X)はカルボン酸塩を形成し、リジンまたはその類似体に存在するアミノ基は直交的に保護されている)と反応させて、異なる世代のビルディングユニット間でアミド結合を形成するステップ;
vii)アミノ保護基の第1のセットを脱保護するステップ;
viii)ビルディングユニットに存在する遊離アミノ基を以下
(式中、PEG基はPEG含有基であり、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
と反応させるステップ;
vii)アミノ保護基の第2のセットを脱保護するステップ
を行うことによって得ることができる。
【0210】
変形b)で使用されるデンドリマー中間体は、それ自体、例えば、変形a)に関して上記のステップi)~v)、および
vi)ビルディングユニットに存在する遊離アミノ基を以下
(式中、PGは保護基であり、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
と反応させて、これらの間でアミド結合を形成するステップ;および
vii)保護基PGを脱保護するステップ
を行うことによって得ることができる。
【0211】
あるいは、変形b)で使用されるデンドリマー中間体は、例えば、上記ステップi)~v)、および
vi)ビルディングユニットに存在する遊離アミノ基を、-C(O)X基を含む、保護されたリジンまたはその類似体であるさらなるビルディングユニット(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、または-CO(X)はカルボン酸塩を形成し、リジンまたはその類似体に存在するアミノ基は直交的に保護されている)と反応させて、異なる世代のビルディングユニット間でアミド結合を形成するステップ;
vii)アミノ保護基の第1のセットを脱保護するステップ;
viii)ビルディングユニットに存在する遊離アミノ基を以下
、
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
と反応させるステップ;
vii)アミノ保護基の第2のセットを脱保護するステップ
を行うことによって得ることができる。
【0212】
変形c)で使用されるデンドリマー中間体は、それ自体、例えば、変形a)に関して上記のステップi)~v)を行うことによって得ることができる。
【0213】
本開示はまた、デンドリマーを製造するのに有用な合成中間体を提供する。したがって、以下のデンドリマー
(式中、Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
を製造するための中間体も提供される。このような中間体は、例えば、上記のように製造することができる。
【0214】
以下のデンドリマー
(式中、PEG基はPEG含有基であり、
Xは-OHもしくは脱離基である、またはXは、結合しているC(O)基と一緒になって、カルボン酸塩を形成する)
を製造するための中間体も提供される。このような中間体は、例えば、上記のように製造することができる。
【0215】
本開示を、ここで本開示のいくつかの特定の態様を例示する以下の実施例を参照して説明する。しかしながら、本開示の以下の説明の特殊性は、本開示の前記説明の一般性に取って代わるものではないことを理解されたい。
実施例
実施例1:BHALys[Lys]
32
[α-NH
2
TFA]
32
[ε-PEG約2100]32
‡
の合成および特性評価
【0216】
以下の例で表されるデンドリマーは、デンドリマーの最も外側の世代のコアおよびビルディングユニットへの言及を含む。表面下世代は示されない。デンドリマーBHALys[Lys]32は、式BHALys[Lys]2[Lys]4[Lys]8[Lys]16[Lys]32を有する第5世代デンドリマーを表す。
【0217】
32‡は、PEG約2100での置換に利用可能なデンドリマー上のε表面アミノ基の理論上の数に関する。BHALys[Lys]32に結合したPEG約2100基の実際の平均数は、1H NMRによって実験的に決定した(BHALys[Lys]32[α-NH2-TFA]32[ε-PEG約2100]32‡の特性評価と題された本実施例の以下の節参照)。
BHALys[Boc]2
【0218】
固体α,ε-(t-Boc)2-(L)-リジンp-ニトロフェノールエステル(2.787kg、5.96mol)を、アミノジフェニルメタン(ベンズヒドリルアミン)(0.99kg、5.4mol)の無水アセトニトリル(4.0L)、DMF(1.0L)およびトリエチルアミン(1.09kg)中溶液に15分間にわたって添加した。反応混合物を20℃で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を35℃に加温し、水酸化ナトリウム水溶液(0.5N、10L)を30分間にわたってゆっくり添加した。混合物をさらに30分間撹拌し、次いで、濾過した。固体ケークを水で洗浄し、収率100%で一定重量(2.76kg、5.4mol)まで乾燥させた。1H NMR(CD3OD)δ7.3(m,10H,Ph 計算10H);6.2(s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.08(m,α-CH,1H)、3.18(br,ε-CH2)および2.99(m,ε-CH2 2H);1.7-1.2(br,β,γ,δ-CH2)および1.43(s,tBu)β,γ,δ-CH2 およびtBuについての合計25H 計算24H。MS(ESI+ve)実測値534.2 [M+Na]+C29H41N3O5Na [M+Na]+についての計算値534.7。
BHALys[HCl]2
【0219】
濃HCl(1.5L)のメタノール(1.5L)中溶液を、過度の泡立ちを最小限に抑える速度で、BHALys[Boc]2(780.5g、1.52mol)のメタノール(1.5L)中撹拌懸濁液に3回に分けてゆっくり添加した。反応混合物をさらに30分間撹拌し、次いで、真空下、35℃で濃縮した。残渣を水(3.4L)に溶解し、真空下、35℃で2回濃縮し、次いで、真空下で一晩保管した。次いで、アセトニトリル(3.4L)を添加し、残渣を再び真空下、35℃で濃縮して、BHALys[HCl]2を白色固体(586g、1.52mol)として収率100%で得た。1H NMR(D2O)δ7.23(br m,10H,Ph 計算10H);5.99(s,1H,CH-Ph2 計算1H);3.92(t,J=6.5 Hz,α-CH,1H,計算1H);2.71(t,J=7.8 Hz,ε-CH2,2H,計算2H);1.78(m,β,γ,δ-CH2,2H),1.47(m,β,γ,δ-CH2,2H)および1.17(m,β,γ,δ-CH2,2H,合計6H 計算6H)。MS(ESI+ve)実測値312 [M+H]+C19H26N3O [M+H]+についての計算値312。
BHALys[Lys]2[Boc]4
【0220】
BHALys[HCl]2(586g、1.52mmol)の無水DMF(3.8L)中懸濁液に、トリエチルアミン(1.08kg)をゆっくり添加して、反応温度を30℃未満に維持した。固体α,ε-(t-Boc)2-(L)-リジンp-ニトロフェノールエステル(1.49kg)を3回に分けてゆっくり、添加の間に2時間攪拌しながら添加した。反応物を一晩撹拌させた。よく攪拌した混合物に水酸化ナトリウム水溶液(0.5M、17L)をゆっくり添加し、固体沈殿が自由に動くまで攪拌を維持した。沈殿を濾過によって回収し、固体ケークを水(2×4L)、次いで、アセトン/水(1:4、2×4L)でよく洗浄した。固体を再び水でスラリー化し、次いで、濾過し、真空下で一晩乾燥させて、BHALys[Lys]2[Boc]4(1.51kg)を収率100%で得た。1H NMR(CD3OD)δ 7.3(m,10H,Ph 計算10H);6.2(s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.21(m,α-CH),4.02(m,α-CH)および3.93(m,α-CH,合計3H,計算3H);3.15(m,ε-CH2)および3.00(m,ε-CH2 合計6H,計算6H);1.7-1.3(br,β,γ,δ-CH2)および1.43(s,tBu)β,γ,δ-CH2およびtBuについての合計 57H,計算54H。MS(ESI+ve)実測値868.6 [M-Boc]+;990.7 [M+Na]+C51H81N7O11Na [M+Na]+についての計算値991.1。
BHALys[Lys]2[HCl]4
【0221】
BHALys[Lys]2[Boc]4(1.41kg、1.46mol)を35℃で攪拌しながらメタノール(1.7L)に懸濁した。塩酸(1.7L)をメタノール(1.7L)と混合し、得られた溶液を4回に分けてデンドリマー懸濁液に添加し、30分間撹拌したままにした。溶媒を減圧下で除去し、2回の連続する水(3.5L)ストリップ、引き続いて2回の連続するアセトニトリル(4L)ストリップで後処理して、BHALys[Lys]2[HCl]4(1.05Kg、1.46mmol)を収率102%で得た。1H NMR(D2O)δ 7.4(br m,10H,Ph 計算10H);6.14(s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.47(t,J=7.5 Hz,α-CH,1H),4.04(t,J=6.5 Hz,α-CH,1H),3.91(t,J=6.8 Hz,α-CH,1H,合計3H,計算3H);3.21(t,J=7.4 Hz,ε-CH2,2H),3.01(t,J=7.8 Hz,ε-CH2,2H)および2.74(t,J=7.8 Hz,ε-CH2,2H,合計6H,計算6H);1.88(m,β,γ,δ-CH2),1.71(m,β,γ,δ-CH2),1.57(m,β,γ,δ-CH2)および1.35(m,β,γ,δ-CH2 合計19H,計算18H。
BHALys[Lys]4[Boc]8
【0222】
BHALys[Lys]2[HCl]4(1.05Kg、1.47mol)をDMF(5.6L)およびトリエチルアミン(2.19L)に溶解した。α,ε-(t-Boc)2-(L)-リジンp-ニトロフェノールエステル(2.35kg、5.03mol)を3回に分けて添加し、反応物を25℃で一晩撹拌した。NaOH(0.5M、22L)溶液を添加し、得られた混合物を濾過し、水(42L)で洗浄し、次いで、風乾した。固体を真空下、45℃で乾燥させて、BHALys[Lys]4[Boc]8(2.09kg、1.11mol)を収率76%で得た。1H NMR(CD3OD)δ 7.3(m,10H,Ph計算10H);6.2(s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.43(m,α-CH),4.34(m,α-CH),4.25(m,α-CH)および3.98(br,α-CH,合計7H,計算7H);3.15(br,ε-CH2)および3.02(br,ε-CH2 合計14H,計算14H);1.9-1.2(br,β,γ,δ-CH2)および1.44(br s,tBu)β,γ,δ-CH2およびtBuについての合計 122H,計算144H。
BHALys[Lys]4[TFA]8
【0223】
BHALys[Lys]4[Boc]8(4g、2.13mmol)のDCM(18mL)中撹拌懸濁液に、0℃でTFA(13mL)を添加した。固体を溶解し、溶液をアルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残留TFAをジエチルエーテル(100mL)で粉砕することによって除去した。生成物を水に再溶解し、次いで、凍結乾燥して、BHALys[Lys]4[TFA]8を灰白色固体(4.27g、2.14mmol)として収率101%で得た。1H NMR(D2O)δ 7.21(br m,10H,Ph 計算10H);5.91(s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.17(t,J=7.4 Hz,α-CH,1H),4.09(t,J=7.1 Hz,α-CH,1H),4.02(t,J=7.2 Hz,α-CH,1H,3.84(t,J=6.5 Hz,α-CH,2H),3.73(t,J=6.7 Hz,α-CH,1H),3.67(t,J=6.7 Hz,α-CH,1H,合計7H,計算7H);3.0(m,ε-CH2),2.93(m,ε-CH2)および2.79(b,ε-CH2,合計15H,計算14H);1.7(br,β,γ,δ-CH2),1.5(br,β,γ,δ-CH2),1.57(m,β,γ,δ-CH2)および1.25(br,β,γ,δ-CH2 合計45H,計算42H)。MS(ESI+ve)実測値541.4 [M+2H]2+;C55H99N15O7 [M+2H]2+についての計算値541.2。
BHALys[Lys]8[Boc]16
【0224】
α,ε-(t-Boc)2-(L)-リジンp-ニトロフェノールエステル(1.89g、4.05mmol)のDMF(25mL)中溶液を、BHALys[Lys]4[NH2TFA]8(644mg、0.32mmol)およびトリエチルアミン(0.72mL、5.2mmol)のDMF(25mL)中溶液に添加し、反応物をアルゴン雰囲気下で一晩撹拌したままにした。反応混合物を氷/水(500mL)に注ぎ、次いで、濾過し、回収した固体を真空下で一晩乾燥させた。乾燥した固体をアセトニトリルで徹底的に洗浄して、BHALys[Lys]8[Boc]16を灰白色固体(0.82g、0.22mmol)として収率68%で得た。1H NMR(CD3OD)δ 7.3(m,10H,Ph 計算10H);6.2(br s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.48(br,α-CH),4.30(br,α-CH)および4.05(br,α-CH,合計16H 計算15H);3.18(br,ε-CH2)および3.02(m,ε-CH2 合計31H,計算30H);1.9-1.4(br,β,γ,δ-CH2)および1.47(br s,tBu)β,γ,δ-CH2およびtBuについての合計240H,計算234H。MS(ESI+ve)実測値3509 [M+H-(Boc)2]+C173H306N31O43 [M+H-(Boc)2]+についての計算値3508.5;3408 [M+H-(Boc)3]+C168H298N31O41 [M+H-(Boc)3]+についての計算値3408.4。
BHALys[Lys]8[TFA]16
【0225】
TFA/DCMの溶液(1:1、19mL)を、BHALys[Lys]8[Boc]16(800mg、0.22mmol)のDCM(25mL)中撹拌懸濁液にゆっくり添加した。固体を溶解し、溶液をアルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣の凍結乾燥を繰り返すことによって残留TFAを除去して、BHALys[Lys]8[TFA]16を灰白色凍結乾燥物(848mg、0.22mmol)として収率100%で得た。1H NMR(D2O)δ 7.3(br m,10H,Ph 計算10H);6.08(s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.3(m,α-CH),4.18(m,α-CH),4.0(m,α-CH)および3.89(m,α-CH,合計16H,計算15H);3.18(br,ε-CH2)および2.94(m,ε-CH2 合計32H,計算30H);1.9(m,β,γ,δ-CH2),1.68(m,β,γ,δ-CH2)および1.4(m,β,γ,δ-CH2 合計99H,計算90H)。MS(ESI+ve)実測値2106 [M+H]+C103H194N31O15 [M+H]+についての計算値2106.9。
BHALys[Lys]16[Boc]32
【0226】
α,ε-(t-Boc)2-(L)-リジンp-ニトロフェノールエステル(1.89g、4.05mmol)のDMF(25mL)中溶液を、BHALys[Lys]8[TFA]16(644mg、0.32mmol)およびトリエチルアミン(0.72mL、5.2mmol)のDMF(25mL)中溶液に添加し、反応物をアルゴン雰囲気下で一晩撹拌したままにした。反応物を氷/水(500mL)に注ぎ、次いで、濾過し、回収した固体を真空下で一晩乾燥させた。乾燥した固体をアセトニトリルで徹底的に洗浄して、BHALys[Lys]16[Boc]32を灰白色固体(0.82g、0.22mmol)として収率68%で得た。1H NMR(CD3OD)δ 7.28(m,9H,Ph 計算10H);6.2(br s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.53(br,α-CH),4.32(br,α-CH)および4.05(br,α-CH,合計35H,計算31H);3.18(br,ε-CH2)および3.04(m,ε-CH2 合計67H,計算62H);1.9-1.5(br,β,γ,δ-CH2)および1.47(br s,tBu)β,γ,δ-CH2およびtBuについての合計474H 計算,474H。MS(ESI+ve)実測値6963 [M+H-(Boc)4]+C339H610N63O87 [M+H-(Boc)4]+についての計算値6960.9;6862[M+H-(Boc)5]+C334H604N63O85 [M+H-(Boc)5]+についての計算値6860.8。
BHALys[Lys]16[TFA]32
【0227】
TFA/DCMの溶液(1:1、19mL)を、BHALys[Lys]16[Boc]32(800mg、0.11mmol)のDCM(25mL)中撹拌懸濁液にゆっくり添加した。固体を溶解し、溶液をアルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣の凍結乾燥を繰り返すことによって残留TFAを除去して、BHALys[Lys]16[TFA]32を灰白色凍結乾燥物(847mg、0.11mmol)として収率100%で得た。1H NMR(D2O)δ 7.3(br m,11H,Ph 計算10H);6.06(s,1H,CH-Ph2 計算1H);4.3(m,α-CH),4.19(m,α-CH),4.0(m,α-CH)および3.88(m,α-CH,合計35H,計算31H);3.15(br,ε-CH2)および2.98(m,ε-CH2 合計69H,計算62H);1.88(m,β,γ,δ-CH2),1.7(m,β,γ,δ-CH2)および1.42(m,β,γ,δ-CH2 合計215H,計算186H)。MS(ESI+ve)実測値4158 [M+H]+C199H386N63O31[M+H]+についての計算値4157.6
HO-Lys(α-BOC)(ε-PEG約2100)
【0228】
DIPEA(0.37mL、2.10mmol)を、DMF(20mL)中のNHS-PEG約2100(2.29g、1.05mmol)(式中、PEG約2100は平均分子量およそ2100Daを有するメトキシ末端PEG基を表し、NHSはNHS-C(O)CH2を表す)およびN-α-t-BOC-L-リジン(0.26g、1.05mmol)の氷冷混合物に添加した。撹拌した混合物を室温に一晩加温し、次いで、残りの固体を濾過した後(0.45μm PALL acrodisc)、溶媒を真空中で除去した。残渣をACN/H2O(1:3、54mL)に溶解し、PREP HPLC(Waters XBridge C18、5μm、19×150mm、25~32%ACN(5~15分)、32~60%ACN(15~20分)、緩衝液なし、8mL/分、RT=17分)によって精製して、HO-Lys(BOC)(PEG2100)1.41g(56%)を得た。1H NMR(CD3OD)δ 3.96-4.09(m,1H),3.34-3.87(m,188H);3.32(s,3H),3.15(q,J=6.0 Hz,2H),2.40(t,J=6.2 Hz,2H),1.28-1.88(m,6H),1.41(s,9H)。
BHALys[Lys]32[α-BOC]32[ε-PEG約2100]32‡
【0229】
DMF(20mL)中のBHALys[Lys]16[TFA]32(0.19g、24μmol)の撹拌混合物に、DIPEA(0.86mL、4.86mmol)を添加した。次いで、この混合物を、室温で、DMF(20mL)中のPyBOP(0.62g、1.20mmol)およびLys(BOC)(PEG約2100)(2.94g、1.20mmol)の攪拌混合物に滴加した。反応混合物を一晩撹拌したままにし、次いで、水(200mL)で希釈した。水性混合物をcentramate濾過(5k膜、20L水)に供した。保持液を凍結乾燥して、所望のデンドリマー1.27g(73%)を得た。HPLC(C8 XBridge、3×100mm、勾配:5%ACN(0~1分)、5~80%ACN/H2O)(1~7分)、80%ACN(7~12分)、80~5%ACN(12~13分)、5%ACN(13~15分)、214nm、0.1%TFA)Rf(分)=8.52.1H NMR(300MHz、D2O)δ(ppm):1.10-2.10(m,Lys CH2(β,χ,δ)およびBOC,666H),3.02-3.36(m,Lys CH2(ε),110H),3.40(s,PEG-OMe,98H),3.40-4.20(m,PEG-OCH2,5750H+Lys CH表面,32H),4.20-4.50(m,Lys,CH内部 32H),7.20-7.54(m,BHA,8H)。1H NMRはおよそ29のPEGを示す。
BHALys[Lys]32[α-NH2TFA]32[ε-PEG約2100]32‡
【0230】
BHALys[Lys]32[α-BOC]32[ε-PEG約2100]32 1.27g(17.4μmol)をTFA/DCM(1:1、20mL)中、室温で一晩撹拌した。揮発性物質を真空中で除去し、次いで、残渣を水(30mL)に溶解した。次いで、混合物を濃縮した。このプロセスをさらに2回繰り返した後、凍結乾燥して、所望の生成物1.35g(106%)を粘稠な無色油として得た。HPLC(C8 XBridge、3×100mm、勾配:5% ACN(0~1分)、5~80% ACN/H2O)(1~7分)、80% ACN(7~12分)、80~5% ACN(12~13分),5% ACN(13~15分)、214nm、0.1% TFA)Rf(分)=8.51.1H-nmr(300MHz,D2O)δ(ppm):1.22-2.08(Lys CH2((β,χ,δ),378H),3.00-3.26(Lys CH2(ε),129H),3.40(PEG-OMe,96H),3.45-4.18(PEG-OCH2,5610H+Lys CH表面,32H),4.20-4.46(Lys,CH内部,33H),7.24-7.48(8H,BHA)。1H NMRはおよそ29のPEGを示す。
BHALys[Lys]32[α-NH2TFA]32[ε-PEG約2100]32‡の特性評価
【0231】
表1は、合成されたBHALys[Lys]
32[α-NH
2TFA]
32[ε-PEG
約2100]
32#のさまざまなバッチを示している。デンドリマー上のPEG鎖の実際の数も、
1H NMRによって計算される。
表1.BHALys[Lys]
32[α-NH
2TFA]
32[ε-PEG
約2100]
32‡のさまざまなバッチ
*PEGの数はプロトンNMRから計算される。バッチ1の場合:PEGの数=NMRのPEG領域(3.4~4.2ppm)内のプロトンの数(積分)/PEG鎖当たりのプロトンの平均(平均)数(CoA PEG/44Da×4H)
=5706H /(2200/44×4)
=28.53(およそ29 PEG単位)
**さまざまな成分のMWを追加して推定された分子量。バッチ1の場合:
総MW=デンドリマーのMw+TFAのMw+PEGのMw
=BHALys[Lys]
32+32(TFA)+29(PEG)
=8,258+3,648+63800
=約75.7kDa
表2.BHALys[Lys]
32[α-NH
2TFA]
32[ε-PEG
約2100]
32‡のさまざまなバッチについての
1H NMRデータ
実施例2:リンカーがジグリコール酸(DGA)であるリンカー-カバジタキセル[DGA-カバジタキセル]の合成
【0232】
カバジタキセル(2.00g、2.39mmol)のジクロロメタン(30mL、15体積)中溶液に、ジグリコール酸無水物(320.70mg、2.62mmol、1.1当量、純度95%)を添加した。5分間撹拌した後、トリエチルアミン(500μL、3.59mmol、1.5当量)を添加した。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。LC-MS分析(溶離液:0.1%10mMギ酸アンモニウム緩衝液を含む水中40~80%アセトニトリル)は、1%未満の出発物質の存在を示した。反応混合物をDCM30mLで希釈し、次いで、pH=3の塩化ナトリウム(5%)およびリン酸ナトリウム(1%)緩衝液(30mL)で2回洗浄した。最初の洗浄中に、pHが6.0に上昇したので、1MHCl水溶液(2.0mL)を添加して、pHを3.0に再調整した。層が分離した。DCM抽出物をMgSO4(3.2g)上で乾燥させ、ガラス焼結漏斗を通して濾過した。漏斗をDCM5mLで2回(10mL)洗浄した。濾液を蒸発させて、白色固体を得た。収率=2.03g、88.5%。
1H NMR:DMSO-d
6.δ(ppm):0.97(s,3H),0.99(s,3H),1.38(s,9H),1.46-1.60(m,5H),1.77-1.85(m,4H),2.23(s,3H),2.62-2.75(m,1H),3.22(s,3H),3.29(s,3H),3.59(d,J=6 Hz,1H),3.76(dd,J=6Hzおよび12 Hz,1H),4.02(s,2H),4.14(s,2H),4.31(d,J=18Hz,1H),4.40(d,J=15 Hz,1H),4.51(s,1H),4.71(s,1H),4.96(d,J=9 Hz,1H),5.06(t,J=9 Hz,1H),5.17(d,J=6 Hz,1H),5.38(d,J=9 Hz,1H),5.82(t,J=9 Hz,1H),7.19(t,J=9 Hz,1H),7.35-7.46(m,4H),7.64-7.77(m,3H),7.88(d,J=9 Hz,1H),7.98(d,J=6 Hz,2H)。LC-MS:C8 XBridge 3.0×100mm、120A、3.5μm。40~80%ACN/H
2O(1~7分)、80%ACN(7~9分)、80~40%ACN(9~11分)、40%ACN(11~15分)、0.1%10mMギ酸アンモニウムRf(分)=5.76。ESI(+ve)実測値[M+OH]
+=969。C
49H
61NO
18についての計算値=952.02Da。プロセス分析:25μlのアリコートをアセトニトリル1mlで希釈した。単離した材料:アセトニトリル中およそ1.0mg/ml溶液。
実施例3:BHALys[Lys]
32[α-DGA-カバジタキセル]
32†[ε-PEG
約2100]
32‡(SPL9048)の合成
【0233】
PEGは-C(O)CH2-PEG約2100(式中、PEG約2100は、およそ2100ダルトンの平均分子量(例えば、約1900~2300の範囲の平均分子量)を有するメトキシ末端PEG基を表す)を表し;
●はカバジタキセルの残基を表す。
【0234】
注:32†は、DGA-カバジタキセルでの置換に利用可能なデンドリマー上のα表面アミノ基の理論上の数に関する。BHALys[Lys]32に結合したDGA-カバジタキセル基の実際の平均数は、内部標準として3,4,5-トリクロロピリジンを使用して1H NMRによって実験的に決定した。
【0235】
DGA-カバジタキセル(2.020g、2.12mmol、1.2当量/NH2)のDMF(20mL、4.8体積)中溶液に、固体PyBOP(1.15g、2.21mmol、1.25当量/NH2)を添加した。rtで5分間撹拌した後、固体BHALys[Lys]32[α-NH2TFA]32[ε-PEG約2100]32‡(4.19g、55.25μmol)を添加した。DMF(3mL)を使用して、バイアルから残留固体をすすいだ。懸濁液をRTで撹拌したところ、混合物は15分以内に均質になった。NMM(0.97mL、8.84mmol、5当量/NH2)を添加した。淡黄色溶液が形成し、rtで24時間撹拌した。溶液をACN(24mL)で希釈し、0.45μmフィルタを通して濾過した。BHALys[Lys]32[α-DGA-カバジタキセル]32†[ε-PEG約2100]32‡を、0.1m2の10kda Pelicon 3再生セルロースメンブレンを使用したアセトニトリル中の限外濾過(15ダイアフィルトレーション容量)によって単離した。保持液を真空中で濃縮して黄色ガムを得て、これをTHF(60mL)に溶解し、0.45μmフィルタを通して濾過した。濾液を真空中で濃縮してガムを得た。黄色ガムをTHF(27.5ml、5.6gのBHALys[Lys]32[α-DGA-カバジタキセル]32†[ε-PEG約2100]32‡の理論収量に基づいて4.9体積)に溶解し、滴下漏斗を介して、1時間にわたって、激しく攪拌したMTBE(110mL、20体積)に添加し、氷浴中およびN2下で冷却した。いくらかの凝集塊およびいくらかの材料がフラスコ壁に付着して、微細な白色懸濁液が形成した。添加が完了したら、懸濁液を氷上でさらに60分間撹拌した。次いで、フラスコを氷浴から取り出し、撹拌しながらrtに加温した。フラスコ壁の固体を、スパチュラを使用してほとんど除去し、固体をP3焼結漏斗での濾過によって回収した。金属スパチュラを使用して凝集塊を破壊し、濾過した固体をMTBE(2×28mL)で洗浄した。湿潤ケークをバイアルに移し、残留MTBEを真空下、室温で除去して、微細な白色粉末;5.35g、94.9%を得た。1H NMR:CD3OD-d4.δ(ppm):1.13-2.73(m,1225H),3.23-3.30(m,57H),3.37(s,99H),3.39-3.97(m,5720H),4.04-4.50(m,114H),5.003(br s,27H),5.39-5.6.15(m,108H),7.28-8.10(m,334H)。3,4,5-トリクロロピリジンを内部標準として使用し、カバジタキセル芳香族シグナルを3,4,5-トリクロロピリジンシグナルと比較することによって搭載量を計算した。コンジュゲートの理論上の分子量:102kDa。1H NMRは29.8CTX/デンドリマーを示唆している。実際の分子量はおよそ100kDa(24.9重量%CTX)である。製造された10を超えるバッチで、カバジタキセル搭載量は24.2%~26%の範囲であった。HPLC(C8 Phenomenex Kinetex 2.1×75mm、100A、2.6μm。水(0.1%TFAを含む)中5~45~90%ACN(0.1%TFAを含む)勾配:5%(0~1分)、5~45%ACN/H2O(1~2分)、45%ACN(2~10分)、45~90%(10~14分)、90%(14~18分)、90~5%ACN(18~18.1分)、5%ACN(18.1~20分)Rf(分)=14.03。プロセス分析:5μLのアリコートをアセトニトリル1mLで希釈した。単離した材料:アセトニトリル中およそ3.0mg/ml溶液。
実施例4:SCIDマウスにおけるデンドリマー化合物の有効性
【0236】
実施例4は、SCIDマウスにおけるデンドリマー化合物の有効性を比較する。
【0237】
以下の実験および図では:
SPL9005はBHALys[Lys]32[α-TDA-カバジタキセル]32†[ε-PEG約2100]32‡であり;
SPL9048はBHALys[Lys]32[α-DGA-カバジタキセル]32†[ε-PEG約2100]32‡である。
【0238】
SPL9005は、ジグリコリル連結基の代わりにTDA(チオジグリコリル)連結基(すなわち、ジグリコリルリンカーに存在する-O-の代わりに-S-)を含むという点でSPL9048とは異なる。SPL9005は、SPL9048の調製に使用される合成方法と同様の合成方法によって調製した。
【0239】
デンドリマー化合物についての投与される量(mg/kg)への言及は、デンドリマーによって理論上放出されうるカバジタキセルの量への言及である。
DU145マウス異種移植前立腺がんモデル研究
【0240】
DU145マウス異種移植前立腺がんモデル研究を行って、比較対照化合物に対するSPL9048の抗腫瘍有効性特性を評価した。比較対照化合物は、遊離カバジタキセル(Jevtana(登録商標))およびSPL9005(BHALys[Lys]32[α-TDA-カバジタキセル]32†[ε-PEG約2100]32‡)とした。
【0241】
デンドリマー化合物をガラスバイアルで事前に秤量し、使用するまで20℃で保管し、投与直前に生理食塩水に溶解した。カバジタキセルは、投与日ごとに新たに調製した。カバジタキセル濃縮物のアリコートを無菌条件下で取り出し、13%エタノール希釈剤と混合して10mg/ml作業ストック溶液を作成した。4.5および5.5mg/mLの投与溶液を、注射の直前にこの作業ストックから調製した。
【0242】
雄SCIDマウス(7~8週齢)に、PBS:Matrigel(1:1)中3×106個DU145細胞を側腹部に皮下接種した。マウスの体重を測定し、電子ノギスを使用して、腫瘍を週に2~3回測定した。腫瘍体積(mm3)は、長さ(mm)/2×幅(mm)2として計算した。移植後24日目(1日目と呼ばれる)に、同様のサイズの腫瘍(平均腫瘍体積105mm3)を有するマウスを10匹の動物の5つの群に無作為化した。処置群は、生理食塩水、カバジタキセル(9および11mg/kg)、SPL-9048(9mg/kg)およびSPL-9005(25mg/kg)とした。試験化合物を、1、8および15日目に0.1ml/10g体重で尾静脈注射によって静脈内投与した。カバジタキセルを0.05ml/10g体重で投与した。マウスには毎日、栄養補助食品(フードダストと混合)を含む小皿を与えた。実験は126日目、または倫理的エンドポイントが満たされた場合はそれ以前に終了した。Mantel Coxログランク検定を使用して生存曲線を分析した。
【0243】
図1は、DU145腫瘍異種移植片に対する処置の抗腫瘍有効性を示している。腫瘍体積を週2~3回測定し、平均腫瘍体積(±SEM)として表す。各群は最初は10匹のマウスからなり、6匹以上の動物が群に残るまでグラフを示す。
図1に示されるように、投与された投与量では、SPL9048が完全な腫瘍退縮を誘導し、実験が終了した126日目には動物のいずれにも再成長は観察されなかった。
【0244】
図2は、雄マウスについてのDU145担腫瘍マウス体重に対する生理食塩水、カバジタキセル、SPL-9005およびSPL-9048の効果を示している。薬物を1、8および15日目にi.v.投与した(縦線で示される)。データは、各群についてのベースライン(1日目)からの平均%体重変化を表す;バーSEM。各群に残っている動物が6匹未満になるまで、各群についてグラフを示す。
【0245】
図2に示されるように、SPL9048はマウスで全体的に忍容性が良好であった(最大体重減少は20日目で-10%;40日目以降は中立的な体重減少/増加)。SPL9048はまた、雄マウスでSPL9005よりも忍容性が良好であった。SPL9005の場合、8/10匹の雄マウスは、およそ25日目の3回目の投与後に20%超の体重減少を有したが、2/10匹の雄マウスは、40日後に+5/10%開始体重に回復した。しかしながら、雌SCIDマウスでの別の研究では、25mg/kgカバジタキセル相当量で投与した場合、SPL9005は雌マウスで忍容性がより良好であり、平均体重減少は10%未満であり、この化合物の性別関連差の可能性を示唆している。
MDA-MB-231マウス異種移植乳がん腫瘍モデル研究
【0246】
MDA-MB-231(ヒト乳がん細胞株)マウス異種移植乳がんモデル研究を行って、遊離カバジタキセルに対するSPL9048の抗腫瘍有効性特性を評価した。
【0247】
SPL-9048をガラスバイアルで事前に秤量し、使用するまで20℃で保管し、投与直前に生理食塩水に溶解した。カバジタキセルは、投与日ごとに新たに調製した。カバジタキセル濃縮物のアリコートを無菌条件下で取り出し、13%エタノール希釈剤と混合して10mg/ml作業ストック溶液を作成した。1.8mg/mLの投与溶液を、注射の直前にこの作業ストックから調製した。
【0248】
雌Balb/cヌードマウス(7週齢)に、PBS:Matrigel(1:1)中3.5×106個MDA-MB-231細胞を側腹部に皮下接種した。マウスの体重を測定し、電子ノギスを使用して、腫瘍を週に2回測定した。腫瘍体積(mm3)は、長さ(mm)/2 x幅(mm)2として計算した。移植後10日目(1日目と呼ばれる)に、同様のサイズの腫瘍(平均腫瘍体積90mm3)を有するマウスを10匹の動物の4つの群に無作為化した。処置群は、生理食塩水、カバジタキセル(9mg/kg)、SPL-9048(9mg/kg)およびSPL-9048(10mg/kg)とした。0.05ml/10g体重で投与したカバジタキセルを除いて、全ての化合物を、1、8および15日目に0.1ml/10g体重で尾静脈注射によって静脈内投与した。マウスには毎日、栄養補助食品(フードダストと混合)を含む小皿を与えた。実験は113日目、または倫理的エンドポイントが満たされた場合はそれ以前に終了した。
【0249】
図3は、MDA-MB-231腫瘍異種移植片に対する処置の抗腫瘍有効性を示している。腫瘍体積を週2回測定し、平均腫瘍体積(±SEM)として表した。各群は最初は10匹のマウスからなり、7匹以上の動物が群に残るまでグラフを示す。
図3に示されるように、SPL9048は完全な腫瘍退縮を誘導した。カバジタキセル群の腫瘍再成長は43日目までに明らかであり、10個の腫瘍のうち9個が98日目までに倫理的な腫瘍体積エンドポイントに達した。SPL-9048の両用量は、カバジタキセルの生存期間を超えて有意に生存期間を延長した。
【0250】
図4は、MDA-MB-231担腫瘍マウスの体重に対する生理食塩水、カバジタキセルおよびSPL-9048の効果を示している。各群は最初は10匹のマウスからなっていた。薬物を1、8および15日目にi.v.投与した(縦線で示される)。データは、各群についてのベースライン(1日目)からの平均%体重変化を表す;バーSEM。各群に残っている動物が7匹未満になるまで、各群についてグラフを示す。
図4に示されるように、SPL9048は全体的に忍容性が良好であり、平均体重減少はどの群でも6%を超えなかった。
実施例5:毒物動態/薬物動態研究
【0251】
SPL-9048およびSPL-9005の単回投与毒物動態研究を、21日間の観察期間でラットにおける静脈内ボーラス注射によって行った。対照である0.9%塩化ナトリウムを調製し、投与日に分注した。SPL-9048およびSPL-9005を、投与レベル要件を満たすために適切な濃度で調製した。投与製剤を、各投与日に調製および分注し、調製から3時間以内に使用した。必要量の試験品を秤量し、穏やかに回旋させながら適切な体積の生理食塩水に溶解し、pHを記録した。カバジタキセル(Jevtana(登録商標))を、投与レベル要件を満たすために適切な濃度で調製した。カバジタキセル濃縮物(40mg/ml)の所望の量(1.5ml)を無菌条件下で等分し、15℃~30℃の適切な体積(4.5mL)の13%エタノール希釈液に溶解して10mg/mLストック溶液を調製した。このストック溶液を生理食塩水でさらに希釈して、30分以内に最終投与濃度を作製した。
【0252】
使用した動物は、雄および雌Sprague Dawley Crl:CD(SD)ラットであった。動物は10~14週齢で、投与開始時の体重は雄で327~565g、雌で212~316gであった。動物を、投与初日の前の少なくとも4日間、指定された飼育場に順応させた。動物を、同様の群平均体重を達成するように設計された層別無作為化スキームによって群に割り当てた。雄と雌を別々に無作為化した。健康状態が悪い、または極端な体重範囲の動物は群に割り当てなかった。PMI Nutrition International認可の齧歯動物用固形飼料番号5CR4を、指定された手順中を除いて、研究全体を通して自由に提供した。必要に応じて、ミール形態の同じ食餌も提供した。自治体の水道水を、逆浸透および紫外線照射による処理後、指定された手順中を除いて、自動給水システムを介して各動物に自由に利用可能とした。必要に応じて、給水瓶も提供した。動物を心理的/環境的豊かさのために社会的に収容し、研究手順/活動によって中断される場合を除いて、咀嚼物などのアイテムを提供した。研究の過程を通して獣医のケアが利用可能であった。
【0253】
試験品および対照品を、尾静脈への単回静脈内(スローボーラス)注射を介して、以下の表に示される量で適切な動物に投与した。デンドリマー化合物SPL-9048およびSPL-9005についての投与される量(mg/kg)への言及は、デンドリマーによって理論上放出されうるカバジタキセルの量への言及である。
【0254】
用量投与後21日間動物を観察した。各動物についての投与量は、最新の体重測定に基づいた。動物を用量投与のために一時的に拘束したが、鎮静はしなかった。用量を、針が取り付けられた注射器を使用して投与した。各群についての投与の初日を1日目として指定した。比較対照投与製剤(Jevtana(登録商標)、カバジタキセル)および試験品を、投与中15~30℃に維持した。
【0255】
Phoenix薬物動態ソフトウェアを使用して、毒物動態パラメータを推定した。静脈内投与経路と一致するノンコンパートメントアプローチをパラメータ推定に使用した。全てのパラメータを、実用的な場合はいつでも、血漿中のSPL9048、SPL9005およびJevtana(登録商標)(カバジタキセル)複合濃度から作成した。
【0256】
以下の表および
図5は、SPL9048(本開示のカバジタキセル含有デンドリマー)、または比較対照化合物、すなわちSPL9005(異なるカバジタキセル含有デンドリマー)およびJevtana(登録商標))の投与後の遊離カバジタキセルについての薬物動態パラメータに関する詳細を提供する。
【0257】
SPL9005およびSPL9048についての遊離カバジタキセル血漿プロファイルは、Jevtana(登録商標)のものとは明らかに異なっていた。結果は、2.5mg/kgでSPL9048を投与すると、Cmax値が36.89ng/mL、Tmax値が6時間、および曲線下面積(AUC)が1239,99ng.時間/mLになったことを示している。2.5mg/kgでSPL9005を投与すると、Cmaxが9.29ng/mL、Tmaxが2時間、およびAUCが548.96ng.時間/mLになった。2.5mg/kgでJevtana(登録商標)を投与すると、Cmax値が801.05ng.時間/mL、Tmaxが2分、およびAUCが679.99ng.時間/mLになった。Jevtana(登録商標)群の場合、カバジタキセルはJevtana(登録商標)投与の24時間超後でも測定不能であった。
【0258】
したがって、SPL9048の投与は、Cmaxがかなり低いため、Jevtana(登録商標)と比較して副作用または毒性のリスクを低減する。上記の表のAUC値によって示されるように、SPL9048の投与により、Jevtana(登録商標)と比較してカバジタキセルへの全体的な曝露も増加した。SPL-9048とSPL-9005の両方が、同等量のJevtana(登録商標)の投与よりも低いカバジタキセルCmaxを有している。しかしながら、AUCレベルによって実証されるように、試験の時間経過にわたってSPL9048によって送達された遊離カバジタキセルの量は、同等の用量のSPL9005(すなわち、等価な量のカバジタキセルを含む)によって送達された量よりも多かった(表および
図4参照)。SPL9048は、等価な用量での副作用の可能性の減少および有効性の増加と一致する優れた薬物動態プロファイルを実証した。
実施例6:毒物学研究
【0259】
SPL9048と遊離カバジタキセル(Jevtana(登録商標))の効果を比較する、ラットにおける毒物学研究を行った。
【0260】
SPL9048およびJevtana(登録商標)をラット、n=6(雄3匹、雌3匹)に1mg/kgで投与した。デンドリマー化合物についての投与される量(mg/kg)への言及は、デンドリマーによって理論上放出されうるカバジタキセルの量への言及である。
【0261】
図6に示されるように、結果は、Jevtana(登録商標)(すなわち、カバジタキセル)の投与で見られた値の下落、およびSPL9048の投与後に観察された値の下落が少ない/全くないことによって証明されるように、雄ラットと雌ラットの両方でこの投与量レベル(1mg/kg)で好中球減少症の分離があることを示している(特に、7日目参照)。予想されるように、7日目の後の反跳は好中球減少症の重症度に依存しているようである。1mg/kgのJevtana(登録商標)(すなわち、遊離カバジタキセル)群では、14日目に実質的な反跳があるが、1mg/kgのSPL9048群(または対照)では実質的に反跳はなく、これらの群での限られた好中球減少症と一致している。これは、SPL9048が、等価な用量の遊離カバジタキセルの投与と比較して、好中球減少症を誘発する可能性が低く、したがって診療所での毒性が少ないことを示している。
【0262】
同様の結果は、SPL9048およびJevtana(登録商標)が2.5mg/kgの活性剤で送達された研究でも見られた。SPL9048は、Jevtana(登録商標)よりも5日目で好中球減少症が少ないことが分かった。SPL9048では、Jevtana(登録商標)/カバジタキセルと比較して毒性の減少が観察された。試験品に関連する血液学変化(白血球、好中球、リンパ球、単球、好酸球、血小板および網状赤血球の減少)は、雄および雌で2日目までに2.5mg/kg SPL9048および2.5mg/kg Jevtana(登録商標)で認められ、7日目まで低いままであった。これらのパラメータの減少は、一般に2.5mg/kgのJevtana(登録商標)を投与されたラットでより大きかった。
【0263】
2.5mg/kgのSPL9048および2.5mg/kgのJevtana(登録商標)を投与された動物の胸腺、骨髄および脾臓で、処置に関連した顕微鏡的変化が観察された;骨髄および胸腺の所見の重症度は、一般的にJevtana(登録商標)処置ラットで大きかった。
実施例7:37℃およびpH7.4でのPBS中の比較によるリンカー放出速度
【0264】
37℃およびpH7.4でPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中の一定のデンドリマー化合物からのカバジタキセル放出速度を決定するための研究を行った。試験した化合物は以下であった:
i)本開示の化合物、SPL9048およびSPL9049(BHALys[Lys]32[α-DGA-カバジタキセル]32†[ε-PEG約1100]32‡。SPL9049は、低分子量PEG基を含むという点でSPL9048とは異なる;および
ii)比較対照カバジタキセル含有デンドリマー化合物、SPL9005およびSPL9006(SPL9006は、ジグリコリル連結基の代わりにMIDA(メチルイミノジアセチル)連結基(すなわち、ジグリコリルリンカーに存在する-O-の代わりに-N(Me)-)を含むという点でSPL9048とは異なる。SPL9006は、SPL9048の調製に使用される合成方法と同様の合成方法によって調製した)。
【0265】
2回の繰り返し実験で24時間で放出された%カバジタキセルを示す結果を、50%放出までの平均時間(またはデータポイントに基づいた50%放出までの推定平均時間)と共に以下の表に示す。
37℃およびpH7.4でPBS中で放出されたカバジタキセルの%:
【0266】
実験2の追加の時点でのSPL9048およびSPL9049のデータも以下に提供する:
37℃およびpH7.4でPBS中で放出されたカバジタキセルの%:
【0267】
結果は、投与後のデンドリマーからのカバジタキセルの相対的な放出速度を実証している。比較対照SPL9005は、37℃およびpH7.4でPBS中で24時間にわたって約12~15%のカバジタキセルを放出し、比較対照SPL9006(MIDAリンカー)は、37℃およびpH7.4でPBS中で同じ期間にわたって約8%のカバジタキセルを放出し、本開示の化合物SPL9048は、37℃およびpH7.4でPBS中で24時間にわたって約40%のカバジタキセルを放出し、SPL9049は、同じ条件下で、約30~50%のカバジタキセルを放出する。
【0268】
SPL9048はまた、SPL9049と比較して、(例えば、沈殿に関して)溶液中での安定性が増加していることが観察されており、これは、PEG1100基ではなくPEG2200基を含むコンジュゲートに起因しうる。SPL9048で観察された優れた有効性、毒物動態および薬物動態特性に加えて、この特性が、この薬物-デンドリマーコンジュゲートのさらなる利点である。
実施例8:クエン酸薬物-デンドリマーコンジュゲート組成物の安定性
【0269】
pH3.5~6.5の0.1Mクエン酸中での異なる医薬品を含むデンドリマー分子での薬物放出について行われた研究では、室温および摂氏4度で、pH4.5で7日間にわたって最大の安定性が確認された。最適な範囲は3.5~5.5で、RTおよび4Cでの放出がそれぞれ0.3%未満および0.1%未満であった。イヌ、マウスおよびヒト血漿中での異なる医薬品を含むデンドリマー分子で10種の異なる薬物放出阻害剤を評価するための別の研究を行った。クエン酸が、薬物放出の最も有効な阻害剤として特定された。
実施例9:SPL9048とアブラキサン(登録商標)およびゲムシタビンの比較
【0270】
CAPAN-1(ヒト膵臓腺癌細胞株)マウス異種移植膵臓がんモデル研究を行って、単独でのまたはゲムシタビンと組み合わせたアブラキサン(登録商標)(アルブミン結合パクリタキセル)と比較したSPL9048の抗腫瘍有効性特性を評価した。
【0271】
SPL9048およびカバジタキセルを上記のように調製した。ゲムシタビンおよびアブラキサン(登録商標)はPeter MacCallum Cancer Centre薬局から入手し、投与直前に生理食塩水に溶解した。
【0272】
雌NOD-SCIDインターロイキン-2受容体ガンマ鎖ヌルマウス(9週齢)に、PBS:マトリゲル(1:1)中5×106個のCAPAN-1細胞を側腹部に皮下接種した。マウスの体重を測定し、電子ノギスを使用して、腫瘍を週に2回測定した。腫瘍体積(mm3)は、長さ(mm)/2×幅(mm)2として計算した。移植後26日目に、同様のサイズの腫瘍(平均腫瘍体積100mm3)を有するマウスを9匹の動物の8つの群に無作為化した。
【0273】
1、8および15日目に0.1ml/10g体重で、アブラキサン(登録商標)およびSPL9048を、尾静脈i.v.注射を介して投与し、ゲムシタビンをi.p.注射によって投与した。実験は107日目、または倫理的エンドポイントが満たされた場合はそれ以前に終了した。注射エラーによって、1日目にアブラキサン(登録商標)を注射した直後に1匹のマウスが死亡した。他の全ての処置は、体重減少なしで忍容性が良好であった。腫瘍成長データを、ANOVAのGraphPad Prism、引き続いてダネットの事後検定によって分析した。群に以下の通り投与した:
1.生理食塩水-ビヒクル
2.ゲムシタビン(80mg/kg、i.p.)-ビヒクル(生理食塩水)
3.アブラキサン(登録商標)(40mg/kg、i.v.)-ビヒクル
4.アブラキサン(登録商標)(40mg/kg、i.v.)+ゲムシタビン(80mg/kg、i.p.)
7.SPL9048(7.5mg/kg、i.v.)-ビヒクル
8.SPL9048(7.5mg/kg、i.v.)+ゲムシタビン(80mg/kg、i.p.)
【0274】
図7は、CAPAN-1腫瘍異種移植片に対する処置の抗腫瘍有効性を示している。腫瘍体積を週2回測定し、平均腫瘍体積(±SEM)として表す。
図7に示されるように、SPL9048を単独で、またはゲムシタビンと組み合わせて投与すると、研究期間中、CAPAN-1腫瘍の完全な退縮が誘導された。このモデルでは、ゲムシタビンもアブラキサン(登録商標)も有効でなかった。SPL9048処置は、アブラキサン(登録商標)よりも有効にCAPAN-1腫瘍成長を抑制した(P=0.004、アブラキサン(登録商標)対SPL-8732;P<0.0001カプランマイヤー生存曲線のMantel Cox回帰分析)。
【0275】
単独でおよびゲムシタビンと組み合わせて投与されたアブラキサン(登録商標)は、CAPAN-1腫瘍成長を同程度に阻害した(37日目の%腫瘍成長阻害=それぞれ85%および81%;表2)。SPL9048は、ゲムシタビンまたはアブラキサン(登録商標)よりも生存期間を有意に延長した。
【0276】
分析を37日目に実施し、最終日、全てのビヒクル処置動物が研究に残った。
実施例10:第1相臨床試験-PKおよびバイオマーカー
【0277】
第1相用量漸増試験を行ってSPL9048の適切な投与量を決定した。バイオマーカー、PKおよびその他のデータを、試験に登録された患者から収集した。患者に、輸液ポンプを使用して1時間にわたって、3週間毎に投与した。患者全員が進行性転移性疾患を患っていた。患者集団は、以下の表に記載されるように、さまざまな化学療法剤で大幅に前処置された。
【0278】
図8および
図9のデータは、バイオマーカー応答が10mg/m
2という低いSPL9048の用量で起こることを示している。
図8は、10mg/m
2で複数回投与した後、前立腺がん患者で低下し、20mg/m
2のカバジタキセル当量で継続する前立腺がんマーカーであるPSAを示している。
図9は、15mg/m
2で2回投与した後に低下する卵巣がんマーカーであるCA-125を示している。これらは有効性の重要な徴候である。
【0279】
以下の表は、多くが安定な疾患の徴候を示す試験の患者を特定している。
【0280】
試験からの遊離カバジタキセルに関する薬物動態データを以下の表に示す。要約すると、SPL9048を投与した後、遊離カバジタキセルCmaxは、等価なカバジタキセル用量20mg/m
2のJevtana(登録商標)よりも約3~10倍低くなる。3人の患者の20mg/mlカバジタキセル当量でのCmaxは、53.6、15.8および17.6ng/mlと測定された。
【0281】
試験からの総カバジタキセル(すなわち、遊離カバジタキセルおよびデンドリマー結合カバジタキセル)に関する薬物動態データを以下の表に示す。要約すると、SPL9048を投与した後の総カバジタキセルAUCinfは、等価なカバジタキセル用量のJevtana(登録商標)の約2000~4000倍大きい。
【0282】
Ferron G.,et al Cancer Chemo Pharma(2013)71:681-692に記載されるモデルを使用して、Jevtana(登録商標)数を計算した。