(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】経皮的カニューレ挿入器具の超音波ガイドによる位置合わせ及び挿入
(51)【国際特許分類】
A61B 8/08 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61B8/08
(21)【出願番号】P 2021520123
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 US2019055386
(87)【国際公開番号】W WO2020076942
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306010244
【氏名又は名称】ラトガーズ、ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニュージャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ヤームッシュ,マーティン・エル.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,アルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】バルター,マックス
(72)【発明者】
【氏名】ライプハイマー,ジョシュア
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-035010(JP,A)
【文献】特開2014-239831(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017201439(DE,A1)
【文献】特開2012-090820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮下における標的血管の中心位置である標的位置に向けてカニューレを導くデバイスであって、
前記標的位置の撮像データを連続的に生成する撮像プローブと、
位置決めユニットであって、
前記位置決めユニットに取り付けられたカニューレを前記標的位置に向けて操作するように構成された複数のモータ、
対応するモータの動きに基づいて前記カニューレの位置及び向きを示すカニューレ姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのカニューレ位置センサ、及び
前記デバイスの向き及び位置を示すデバイス姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのデバイス位置センサ
を備えた位置決めユニットと、
プロセッサであって、
前記撮像プローブから撮像データを受信し、
前記少なくとも1つのカニューレ位置センサからカニューレ姿勢データを受信し、
前記少なくとも1つのデバイス位置センサからデバイス姿勢データを受信し、
初期設定中に、(i)前記標的血管の境界をセグメント化する自動セグメント化アルゴリズムと、(ii)セグメント化された前記標的血管の中心位置の計算と、を用いて、前記撮像データから前記標的位置を特定し、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記標的位置に向けて前記カニューレを操作するための軌道を決定し、
前記決定された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示し、
前記初期設定後、画像に基づく追跡アルゴリズムを用いて、前記撮像データから後続のフレームに基づいて、前記標的位置を追跡し、
前記撮像データに基づいて、前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別し、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記決定された軌道を修正された軌道へと更新し、
前記修正された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示する
ように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記デバイスは、前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサをさらに備え、
前記プロセッサは、
前記力センサから前記力データを受信し、
前記力データを、カニューレ挿入成功事象を含む複数の所定事象のうちの1つとして分類し、
前記カニューレ挿入成功事象がない場合、前記分類された事象に応じて前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示する
ように構成される、デバイス。
【請求項2】
前記撮像プローブは超音波プローブであり、前記撮像プローブによって生成された前記撮像データは、2次元撮像データ、3次元ボリューム撮像データ及び2方向撮像データのうちのいずれか1つである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記撮像データに基づいて前記患者の皮下にある標的血管の姿勢を識別及び決定するようにさらに構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスは、複数の角度から前記標的位置の撮像データを取得するように構成され、前記プロセッサは、
前記複数の角度から取得された前記撮像データから3次元撮像データを構築すること、及び、
前記複数の角度から取得された前記撮像データから、前記患者の皮下にある前記標的位置の3次元姿勢を決定すること、
のうちの少なくとも1つを行うようにさらに構成される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記撮像データは、異なる時点で取得された前記標的位置のビデオデータを含み、前記プロセッサは、前記ビデオデータの前後のフレーム間の比較に基づいて、
前記標的位置に向けて前記カニューレを操作するための前記軌道を決定するように構成される、請求項1から4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記位置決めユニットは、前記カニューレを少なくとも2つの自由度で操作するように構成される、請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記少なくとも1つのデバイス位置センサから受信したデバイス姿勢データに基づいて、前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別するように構成される、請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つのデバイスセンサは、カメラ、電磁石センサ、ジャイロスコープ及び加速度計のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサをさらに備え、前記プロセッサは、
前記力センサから前記力データを受信し、前記受信した力データに基づいて、前記カニューレ姿勢データを修正された位置及び向きへと更新し、
前記修正された位置及び向きに従って前記カニューレを操作するように前記カニューレ位置決めユニットに指示する
ように構成される、請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記カニューレへの血液の流れを示す血液フラッシュデータを生成するように構成された血液フラッシュセンサをさらに備え、前記プロセッサは、
前記血液フラッシュセンサから前記血液フラッシュデータを受信し、
前記血液フラッシュデータにさらに基づいて前記カニューレを操作するように前記カニューレ位置決めユニットに指示する
ように構成される、請求項9に記載デバイス。
【請求項11】
前記プロセッサは
、
前記力データから力プロファイルを取得し、
前記取得された力プロファイルを、
前記カニューレ挿入成功事象、血管回転事象、アンダーシュート事象及びオーバーシュート事象のうちの1つとして分類
する
ように構成される、請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つのカニューレ位置センサは複数のモータセンサを備え、複数のモータのうちの対応する1つと関連付けられた各モータセンサはカニューレ姿勢データを生成する、請求項1から11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記自動セグメント化アルゴリズムは、部分的に、血流情報に基づいて前記標的血管の境界をセグメント化する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
患者の皮下における標的血管の中心位置である標的位置に向けてカニューレを導く方法であって、前記方法は、前記標的位置の撮像データを連続的に生成するための撮像プローブと、複数のモータ、少なくとも1つのカニューレ位置センサ及び少なくとも1つのデバイス位置センサを備えた位置決めユニットと、に結合されたプロセッサによって実行され、前記複数のモータは、位置決めユニットに取り付けられたカニューレを前記標的位置に向けて操作するように構成され、前記少なくとも1つのカニューレ位置センサは、対応するモータの動きに基づいて前記カニューレの位置及び向きを示すカニューレ姿勢データを生成するように構成され、前記少なくとも1つのデバイス位置センサは、前記デバイスの向き及び位置を示すデバイス姿勢データを生成するように構成され、前記方法は、
前記撮像プローブから撮像データを受信することと、
前記少なくとも1つのカニューレ位置センサからカニューレ姿勢データを受信することと、
前記少なくとも1つのデバイス位置センサからデバイス姿勢データを受信することと、
初期設定中に、(i)前記標的血管の境界をセグメント化する自動セグメント化アルゴリズムと、(ii)セグメント化された前記標的血管の中心位置の計算と、を用いて、前記撮像データから前記標的位置を特定することと、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記標的位置に向けて前記カニューレを操作するための軌道を決定することと、
前記決定された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
前記初期設定後に、画像に基づく追跡アルゴリズムを用いて、前記撮像データから後続のフレームに基づいて、前記標的位置を追跡することと、
前記撮像データに基づいて、前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別することと、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記決定された軌道を修正された軌道へと更新することと、
前記修正された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
を含
み、
前記プロセッサは、前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成する力センサにさらに結合され、
前記方法は、
前記力データを、カニューレ挿入成功事象を含む複数の所定事象のうちの1つとして分類することと、
前記カニューレ挿入成功事象がない場合、前記分類された事象に応じて前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
をさらに含む、方法。
【請求項15】
前記方法はさらに、
前記撮像データに基づいて前記患者の皮下にある標的血管の姿勢を識別及び決定することと、
前記標的血管の前記決定された姿勢に基づいて前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プローブから撮像データを受信することは、複数の角度から取得された撮像データを受信することを含み、前記方法は、
前記複数の角度から取得された前記撮像データから3次元撮像データを構築することと、
前記複数の角度から取得された前記撮像データから、前記患者の皮下にある前記標的位置の前記姿勢を決定することと、
のうち少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することは、前記位置決めユニットの2つ以上の自由度のそれぞれを操作するための指示を与えることを含む、請求項14から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別することは、前記デバイス位置センサから受信した前記デバイス姿勢データに基づく、請求項14から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記カニューレ姿勢データを決定することは、コンピュータビジョンアルゴリズム又は電磁センサのうちの少なくとも1つを使用した前記撮像データに基づく、請求項14から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記プロセッサは、前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成する力センサにさらに結合され、前記方法は、
前記力センサから前記力データを受信することと、
前記受信した力データに基づいて、前記カニューレ位置決めデータを修正された位置及び向きへと更新することと、
前記修正された位置及び向きに従って前記カニューレを操作するように前記カニューレ位置決めユニットに指示することと、
をさらに含む、請求項14から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法は
、
前記力データから力プロファイルを取得することと、
前記取得された力プロファイルを、
前記カニューレ挿入成功事象、血管回転事象、アンダーシュート事象及びオーバーシュート事象のうちの1つとして分類することと
、
をさらに含む、請求項14から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
患者の血管に針を挿入するデバイスであって、
超音波プローブの視野内に配置された前記血管の部分を撮像するように構成された前記超音波プローブと、
前記超音波プローブに取り付けられた機械的アームであって、前記針は前記機械的アームに取り付け可能であり、前記針の位置及び向きを操作するように構成された1つ又は複数のモータを備える機械的アームと、
前記機械的アームに備えられた前記1つ又は複数のモータの動作を制御するプロセッサであって、前記血管の空間パラメータに基づいて、前記1つ又は複数のモータを制御するための参照フレームを定義するように構成されるプロセッサと、
を備え、
前記機械的アームは、前記超音波プローブの視野内に配置された前記血管の前記部分に、角度をつけて前記針を挿入可能であるように構成され、
前記1つ又は複数のモータの動作を制御するプロセッサは、前記超音波プローブからの画像データに少なくとも部分的に基づいて自動化され、
前記1つ又は複数のモータの動作の自動化には、
初期設定中に、前記血管の境界をセグメント化する自動セグメント化アルゴリズムを用いて、前記画像データから前記血管を特定することと、
セグメント化された前記血管の中心座標、及び、前記中心座標に向けた前記針の軌道を計算することと、
計算された
前記軌道に従って前記中心座標に向けて前記針を操作することと、
前記初期設定後、前記自動セグメント化アルゴリズムを用いずに、画像に基づく追跡アルゴリズムを用いて、前記画像データから後続のフレームに基づいて、前記血管を追跡することと、
追跡された前記血管に基づいて前記軌道を修正することと、
が含まれ、
前記デバイスは、手持ち式であるように構成さ
れ、
前記デバイスは、前記針に及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサをさらに備え、
前記プロセッサは、
前記力センサから前記力データを受信し、
前記力データを、前記針の挿入成功事象を含む複数の所定事象のうちの1つとして分類し、
前記針の挿入成功事象がない場合、前記分類された事象に応じて前記針を操作するように前記1つ又は複数のモータの動作を制御する
ように構成される、デバイス。
【請求項23】
前記機械的アームの前記モータは、少なくとも、前記針の挿入深さ及び前記針の挿入角度を操作するように構成される、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記プローブに通信可能に結合され、前記プローブから受信したデータに少なくとも部分的に基づいて、前記挿入深さを決定するように構成され、前記挿入角度は、前記挿入深さに基づいて決定される、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記デバイスの動き及び向きをそれぞれ示すデータを前記プロセッサに提供するように構成された加速度計及びジャイロスコープをさらに備え、前記1つ又は複数のモータの動作を制御する前記プロセッサは、さらに前記加速度計及びジャイロスコープからの前記データに部分的に基づいて自動化される、請求項22から24のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項26】
患者の皮下の標的位置に向けてカニューレを導くデバイスであって、前記デバイスは、
所定の速度で標的に向けて前記カニューレの長さ方向にカニューレを操作するように構成された少なくとも1つのモータと、
前記所定の速度で動く前記カニューレによって、前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサと、
前記カニューレへの血液の流れを示す血液フラッシュデータを生成するように構成された血液フラッシュセンサと、
プロセッサであって、
前記力センサから前記力データを受信し、
前記血液フラッシュセンサから前記血液フラッシュデータを受信し、
前記力データ及び前記血液フラッシュデータの組み合わせに基づいてカニューレ挿入成功事象の発生を判断し、
カニューレ挿入成功事象が発生すると前記標的に向けて前記カニューレを操作することをやめるように前記少なくとも1つのモータに指示する
ように構成されたプロセッサと、
を備える、デバイス。
【請求項27】
前記少なくとも1つのモータの動きに基づく前記カニューレの位置を示すカニューレ姿勢データを生成するように構成されたカニューレ位置センサをさらに備え、前記プロセッサは、前記力データ、前記血液フラッシュデータ及び前記カニューレ姿勢データの組み合わせに基づいて前記カニューレ挿入成功事象を判断するように構成される、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
超音波撮像データを取得する撮像プローブをさらに備え、前記プロセッサは、
前記力データ、前記血液フラッシュデータ、前記超音波撮像データ及び前記カニューレ姿勢データの組み合わせに基づいてカニューレ挿入失敗事象の可能性を決定し、
前記力データ、前記血液フラッシュデータ、前記超音波撮像データ及び前記カニューレ姿勢データの組み合わせに基づいて前記カニューレ挿入失敗事象の可能性を低減するように前記カニューレへの調整を決定する
ように構成される、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記プロセッサは、
前記受信した力データから力プロファイルを取得し、
前記取得された力プロファイルを、カニューレ挿入成功事象又はカニューレ挿入失敗事象のいずれかとして分類し、
カニューレ挿入失敗事象が発生すると、前記カニューレを逆方向に操作するように前記1つ又は複数のモータに指示する
ように構成される、請求項26から27のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年10月9日に出願された「経皮的カニューレ挿入器具の超音波ガイドによる位置合わせ及び挿入(Ultrasound Guided Alignment And Insertion Of Percutaneous Canulating Instrument)」と題する米国仮出願第62/743,283号の出願日の利益を主張するものであり、その開示内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦政府資金による研究開発の記載)
本発明は、米国国立衛生研究所から授与された契約番号R01EB020036、米国国立衛生研究所から授与された契約番号EB018191、米国国立衛生研究所から授与された契約番号T32 GM008339、米国国立科学財団から授与された契約番号DGE-0937373及び米国教育省から授与された契約番号P200A150131に基づく政府の支援を受けてなされたものである。したがって、米国政府は本発明において一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
例えば血液サンプルの採取や静脈内(IV)輸液の送達等でカニューレを静脈に挿入する静脈穿刺のプロセスは、医療において実施される最も一般的な臨床ルーチンの1つである。多くの場合、特に皮膚の色が濃い又はボディマス指数が高い患者においては、適切な静脈穿刺部位を見つけることが困難になり得る。標的の静脈が特定された後であっても、カニューレを血管に挿入するプロセスも困難になり得る。挿入の試みが失敗することはよくある。その失敗は、時として、針先によって静脈に加えられる圧力が静脈を変形させ、移動させ、又は、回転させる等、静脈の予想外の動きにより引き起こされることがある。他には、上記の失敗は、患者、又はカニューレ挿入器具を保持する臨床医の予想外の動きにより引き起こされることがある。針の導入がうまくいかないと、痛みの増加、内出血、血管外組織へのIV輸液の漏れ等、厄介な問題を引き起こすことがある。
【0004】
近赤外(NIR)光又は超音波(US)に基づく種々の撮像技術が、臨床医が静脈を可視化するのを支援するために導入されている。しかし、これらの撮像技術単独では、手技と比較して、初回穿刺(first-stick)成功率を大きく改善させないことが研究によって示されている。静脈穿刺の挿入精度を改善するために、NIR及びUS撮像技術と、画像データに基づいてカニューレを血管の中心にガイドする自動化ロボットシステムと、を組み合わせたデバイスが開発されている。
【0005】
図1は、例示的な従来技術に係る自動カニューレ挿入システム100の外形側面図である。自動カニューレ挿入システム100は、超音波撮像ユニット120に取り付けられた位置決めユニット110を備える。位置決めユニット110には、針等のカニューレ115の位置決めを制御するように構成されたロボットアーム112を備えることができ、カニューレ115を操作するための複数の自由度があり得る。超音波撮像ユニット120は、この超音波撮像ユニット120の端部に取り付けられるプローブ122をさらに備えることができ、それによって、超音波撮像ユニット120は、プローブ122に対向して位置決めされた患者(図示せず)の一部のUS画像を取得するように構成される。プローブ122は、曲がって患者の撮像対象部位(例えば、患者の腕)に適合するように設計された可撓性材料から作られてよい。いくつかの実施例では、プローブ122は、US画像の取得を向上させるための超音波ゲルを収めるように構成されたゲルコンパートメント125をさらに備えることができる。
【0006】
図2では、患者の腕201に針を挿入するために、従来の自動カニューレ挿入システム100が使用されている。患者の腕201は台210に位置決めされて、患者の快適性及び腕201の安定性を確保してよい。カニューレ115は、カニューレ115の先端が撮像プローブ122直下のカニューレ挿入位置225に合わせて位置決めされるように、患者の腕201の斜め上に位置決め可能である。
【0007】
図3は、4つの自由度を有する例示的な従来の位置決めユニット110の外形側面図である。位置決めユニット110は、基部302と、基部302から延びる第1の延長部材304と、第1の延長部材304に接続され、第1の延長部材304から延びる第2の延長部材306と、カニューレ115を受容するためのカニューレ挿入器具受け口308と、を有するロボットアーム112を備える。
図3の位置決めユニット110には、(1)基部302をxy平面において焦点312を中心に回転させる自由度、(2)第1の延長部材304をxz平面(厳密には、z軸と第1延長部材の特定軸とによって形成される平面)において焦点314を中心に回転させる自由度、(3)第2の延長部材306をxz平面(厳密には、z軸と第2延長部材の特定軸とによって形成される平面)において焦点316を中心に回転させる自由度、及び、(4)カニューレ115をその軸318に沿って前方又は後方に並進させる自由度の4つの自由度がある。
【0008】
例示的な自動化デバイス及び他の公知のデバイスにおける撮像技術は、患者の標的位置(例えば、患者の皮下にある静脈)の動きを含む患者の動きを追跡できる。これらのデバイスはさらに、標的位置に正確に挿入するために軌道を調整できる。しかし、このような正確な追跡及び再位置決めをデバイスが行うためには、
図2に示すように、デバイスをベンチトップ又は他の静止した台に固定しなければならない。ベンチトップは、カニューレ挿入器具が不意に動くことなく、位置決めユニットにガイドされたときにのみ動くことを確実にするために必要な安定性を提供する。
【0009】
このように静脈穿刺デバイスを使用前に所定の位置に固定する必要があることは不都合である。第一に、すべての臨床環境が、デバイスを設置できるベンチトップ又は他の台を備えているわけではない。その上、臨床医がデバイスを設置したり外したりするのにかなり時間がかかることがある。結局のところ、自動化静脈穿刺デバイスは、精度の観点などから従来の手持ち式静脈穿刺方法に勝るいくつかの利点を提供するが、臨床医によっては自動化デバイスを不便に感じ、臨床現場によっては自動化デバイスの使用に適してさえないことがある。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、手持ち式自動カニューレ挿入デバイスに関する。本デバイスは、手持ち式であることに伴う利便性及び携帯性を有すると同時に、他の自動化デバイスに関連付けられた改善された精度を提供する。自動化デバイスが手持ち式で使用されるためには、デバイス自体の外部にある固定参照フレームに依存する必要がない一方で、リアルタイムセンサデータに迅速且つ効率的に応答できる制御スキームを設計する必要があった。
【0011】
本開示の一態様は、患者の皮下の標的位置に向けてカニューレを導くデバイスに関する。デバイスは、標的位置の撮像データを連続的に生成する撮像プローブと、位置決めユニットと、プロセッサとを備えてよい。位置決めユニットは、位置決めユニットに取り付けられたカニューレを操作するように構成された複数のモータを備えてよい。位置決めユニットは、モータの動きに基づいてカニューレの位置及び向きを示すカニューレ姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのカニューレ位置センサをさらに備えてよい。位置決めユニットは、デバイスの向き及び位置を示すデバイス姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのデバイス位置センサをさらに備えてよい。
【0012】
プロセッサは、撮像プローブから撮像データを受信し、少なくとも1つのカニューレ位置センサからカニューレ姿勢データを受信し、少なくとも1つのデバイス位置センサからデバイス姿勢データを受信し、撮像データから標的位置を特定し、撮像データ、カニューレ姿勢データ及びデバイス姿勢データに基づいて、標的姿勢に向けてカニューレを操作するための軌道を決定するように構成されてよい。プロセッサは、決定された軌道に従ってカニューレを操作するように位置決めユニットに指示するようにさらに構成されてよい。さらに、プロセッサは、決定された軌道が標的位置とずれてきたことを識別し、撮像データ、カニューレ姿勢データ及びデバイス姿勢データに基づいて、決定された軌道を修正された軌道へと更新し、修正された軌道に従ってカニューレを操作するように位置決めユニットに指示するように構成されてよい。
【0013】
いくつかの実施例では、撮像プローブは超音波プローブであってよい。撮像プローブによって生成された撮像データは、2次元撮像データ、3次元ボリューム撮像データ及び2方向(bi-plane)撮像データのうちのいずれか1つであってよい。いくつかの実施例では、プロセッサは、撮像データに基づいて患者の皮下にある標的血管の姿勢を識別及び決定するようにさらに構成されてよい。いくつかの実施例では、デバイスは、複数の角度から標的位置の撮像データを取得するように構成されてよい。プロセッサは、複数の角度から取得された受信撮像データから3次元撮像データを構築するか、複数の角度から取得された撮像データから患者の皮下にある標的位置の3次元姿勢を決定するか、又はその両方を行うようにさらに構成されてよい。
【0014】
いくつかの実施例では、撮像データは、異なる時点で取得された標的位置のビデオデータを含んでよく、プロセッサは、ビデオデータの前後のフレーム間の比較に基づいて、標的姿勢に向けてカニューレを操作するための軌道を決定するように構成されてよい。
【0015】
いくつかの実施例では、位置決めユニットは、カニューレを少なくとも2つの自由度で操作するように構成されてよい。
【0016】
いくつかの実施例では、プロセッサは、カメラ、電磁センサ、ジャイロスコープ、加速度計又はこれらの任意の組み合わせなど、少なくとも1つのデバイス位置センサから受信したデバイス姿勢データに基づいて、決定された軌道が標的位置とずれてきたことを識別するように構成されてよい。
【0017】
いくつかの実施例では、デバイスは、カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサを備えてよい。プロセッサは、力センサから力データを受信し、受信した力データに基づいて、カニューレ姿勢データを修正された位置及び向きへと更新し、修正された位置及び向きに従ってカニューレを操作するようにカニューレ位置決めユニットに指示するように構成されてよい。加えて又は代替的に、プロセッサは、力センサから力データを受信し、力データから力プロファイルを取得し、取得した力を分類するように構成されてよい。力の分類の例としては、カニューレ挿入成功事象、血管回転事象、アンダーシュート事象及びオーバーシュート事象が挙げられる。プロセッサは、力データをこれらの分類の1つ又は複数に分類できてよい。さらに、いくつかの実施例では、成功したカニューレ挿入事象がない場合に、プロセッサは、分類された事象に応じてカニューレを操作するように位置決めユニットに指示するように構成されてよい。
いくつかの実施例では、デバイスは、カニューレへの血液の流れを示す血液フラッシュデータを生成するように構成された血液フラッシュセンサをさらに備えてよい。プロセッサは、血液フラッシュセンサから血液フラッシュデータを受信し、血液フラッシュデータにさらに基づいてカニューレを操作するようにカニューレ位置決めユニットに指示するように構成されてよい。
【0018】
いくつかの実施例では、各モータは、対応するモータセンサと関連付けられてよい。モータセンサは、対応するモータの動きに基づいて、カニューレの位置及び向きを示すカニューレ姿勢データを生成するように構成されてよい。
【0019】
本開示の別の態様は、カニューレを患者の皮下の標的位置に向けて導く方法に関する。本方法は、標的位置の撮像データを連続的に生成するための撮像プローブと、複数のモータを備えた位置決めユニットと、に結合されたプロセッサによって実行可能であり、複数のモータは、位置決めユニットに取り付けられたカニューレを操作するように構成され、各モータは、対応するモータの動きに基づいてカニューレの位置及び向きを示すカニューレ姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのカニューレ位置センサに関連付けられている。位置決めユニットは、デバイスの向き及び位置を示すデバイス姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのデバイス位置センサをさらに備えてよい。本方法は、撮像プローブから撮像データを受信することと、少なくとも1つのカニューレ位置センサからカニューレ姿勢データを受信することと、少なくとも1つのデバイス位置センサからデバイス姿勢データを受信することと、撮像データから標的位置を特定することと、撮像データ、カニューレ姿勢データ及びデバイス姿勢データに基づいて、標的姿勢に向けてカニューレを操作するための軌道を決定することと、決定された軌道に従ってカニューレを操作するように位置決めユニットに指示することと、決定された起動が標的位置とずれてきたことを識別することと、撮像データ、カニューレ姿勢データ及びデバイス姿勢データに基づいて、決定された軌道を修正された軌道へと更新することと、修正された軌道に従ってカニューレを操作するように位置決めユニットに指示することと、を含んでよい。
【0020】
いくつかの実施例では、本方法は、撮像データに基づいて患者の皮下にある標的血管の姿勢を識別及び決定することと、標的血管の決定された姿勢に基づいてカニューレを操作するように位置決めユニットに指示することとをさらに含んでよい。
【0021】
いくつかの実施例では、プローブから撮像データを受信することは、複数の角度から撮像データを受信することを含んでよく、本方法は、複数の角度から取得された受信撮像データから3次元撮像データを構築することをさらに含んでよい。いくつかの実施例では、本方法は、複数の角度から取得された撮像データから、患者の皮下にある標的位置の姿勢を決定することを含んでよい。
【0022】
いくつかの実施例では、カニューレを操作するように位置決めユニットに指示することは、位置決めユニットの2つ以上の自由度のそれぞれを操作するための指示を与えることを含んでよい。いくつかの実施例では、決定された軌道が標的位置とずれてきたことを識別することは、デバイス位置センサから受信したデバイス姿勢データに基づいてよい。
【0023】
いくつかの実施例では、カニューレ姿勢データを決定することは、コンピュータビジョンアルゴリズム又は電磁センサのうちの少なくとも1つを使用した撮像データに基づいてよい。
【0024】
いくつかの実施例では、プロセッサは、カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成する力センサに結合されてよい。本方法は、力センサから力データを受信することと、受信した力データに基づいて、カニューレ位置決めデータを修正された位置及び向きへと更新することと、修正された位置及び向きに従ってカニューレを操作するようにカニューレ位置決めユニットに指示することとをさらに含んでよい。加えて又は代替的に、本方法は、力データから力プロファイルを取得することと、取得された力プロファイルを分類すること(例えば、カニューレ挿入成功事象、血管回転事象、アンダーシュート事象、オーバーシュート事象)とをさらに含んでよい。さらに、場合によっては、カニューレ挿入成功事象がない場合、本方法は、分類された事象に応じてカニューレを操作するように位置決めユニットに指示することを含んでよい。
【0025】
本開示のさらに別の態様は、患者の血管に針を挿入するデバイスに関する。デバイスは、超音波プローブの視野内に配置された血管の部分を撮像するように構成された超音波プローブと、超音波プローブに取り付けられた機械的アームと、機械的アームに備えられる1つ又は複数のモータの動作を制御するプロセッサと、を備えてよい。針は、機械的アームに取り付け可能であってよい。機械的アームは、針の位置及び向きを操作するように構成された1つ又は複数のモータを備えてよい。プロセッサは、血管の空間パラメータに基づいて、1つ又は複数のモータを制御するための参照フレームを定義するように構成されてよい。機械的アームは、超音波プローブの視野内に配置された血管の部分に、角度をつけて針を挿入可能であるように構成されてよい。1つ又は複数のモータの動作を制御するプロセッサは、超音波プローブからの画像データに少なくとも部分的に基づいて自動化されてよく、デバイスは、手持ち式であるように構成されてよい。
【0026】
いくつかの実施例では、機械的アームのモータは、少なくとも、針の挿入の深さ及び針の挿入の角度を操作するように構成されてよい。プロセッサは、プローブに通信可能に結合されてよく、プローブから受信したデータに少なくとも部分的に基づいて、挿入の深さを決定するように構成されてよい。挿入の角度は、挿入の深さに基づいて決定されてよい。
【0027】
いくつかの実施例では、デバイスは、デバイスの動き及び向きをそれぞれ示すデータをプロセッサに提供するように構成された加速度計及びジャイロスコープをさらに備えてよい。プロセッサは、1つ又は複数のモータの動作を制御してよく、加速度計及びジャイロスコープからのデータに部分的に基づいて自動化されてよい。
【0028】
本開示のさらに別の態様は、患者の皮下の標的位置に向けてカニューレを導くデバイスに関する。デバイスは、標的に向けてカニューレの長さ方向にカニューレを操作するように構成された少なくとも1つのモータと、カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサと、カニューレへの血液の流れを示す血液フラッシュデータを生成するように構成された血液フラッシュセンサと、力センサから力データを受信し、血液フラッシュセンサから血液フラッシュデータを受信し、力データ及び血液フラッシュデータの組み合わせに基づいてカニューレ挿入成功事象の発生を判断し、カニューレ挿入成功事象が発生すると標的に向けてカニューレを操作することをやめるように少なくとも1つのモータに指示するように構成されたプロセッサとを備えてよい。
【0029】
いくつかの実施例では、デバイスは、少なくとも1つのモータの動きに基づいてカニューレの位置を示すカニューレ姿勢データを生成するように構成されたカニューレ位置センサをさらに備えてよい。プロセッサは、力データ、血液フラッシュデータ及びカニューレ姿勢データの組み合わせに基づいてカニューレ挿入成功事象を判断するように構成されてよい。
【0030】
いくつかの実施例では、デバイスは、超音波撮像データを取得する撮像プローブをさらに備えてよい。プロセッサは、力データ、血液フラッシュデータ、超音波撮像データ及びカニューレ姿勢データの組み合わせに基づいてカニューレ挿入が失敗する可能性を決定し、力データ、血液フラッシュデータ、超音波撮像データ及びカニューレ姿勢データの組み合わせに基づいてカニューレ挿入失敗事象の可能性を低減するカニューレへの調整を決定するように構成されてよい。
【0031】
いくつかの実施例では、プロセッサは、受信した力データから力プロファイルを取得し、取得した力プロファイルを、カニューレ挿入成功事象又はカニューレ挿入失敗事象のいずれかとして分類し、カニューレ挿入失敗事象が発生すると、カニューレを逆方向に操作するように1つ又は複数のモータに指示するように構成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】従来のカニューレ挿入デバイスの動作中の別図である。
【
図3】
図1の従来のカニューレ挿入デバイスの例示的位置決めユニットである。
【
図4】本開示の一態様によるカニューレ挿入デバイスのブロック図である。
【
図5】本開示の一態様による血管及び座標参照フレームの図である。
【
図6A】本開示の一態様による経時的な力の測定値のグラフ表示である。
【
図6B】本開示の一態様による経時的な力の測定値のグラフ表示である。
【
図6C】本開示の一態様による経時的な力の測定値のグラフ表示である。
【
図6D】本開示の一態様による経時的な力の測定値のグラフ表示である。
【
図7】本開示の一態様によるプロトコルのフローチャートである。
【
図8】本開示の一態様による電磁取り付け機構の分解斜視図である。
【
図9A】本開示の態様による追加のプロトコルのフローチャートである。
【
図9B】本開示の態様による追加のプロトコルのフローチャートである。
【
図9C】本開示の態様による追加のプロトコルのフローチャートである。
【
図10A】本開示の一態様によるカニューレ挿入デバイスの斜視図である。
【
図11A】本開示の一態様による別のカニューレ挿入デバイスの斜視図である。
【
図12】本開示の一態様によるカニューレ挿入デバイスを操作するためのワークフローのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図4は、本開示による手持ち式カニューレ挿入デバイス400の制御スキームを示すブロック図である。カニューレ挿入デバイス400は、メインプロセッサ410、マイクロコントローラ420、ディスプレイ430、及び、カニューレ挿入器具450の様々な自由軸を制御する複数のモータコントローラ440a,440bのそれぞれを備える。メインプロセッサ410は、ビデオフレームレートで画像データを受信して処理し出力するのに十分な処理能力を有する、当該技術分野で公知の任意の処理ユニットとしてよい。マイクロコントローラ420は、センサ入力信号の処理及び中継、並びに、モータ動作の制御指令等、ロボットアームを制御するのに十分な処理能力を有する、当該技術分野で公知の集積チップ又は他の処理ユニットとしてよい。
【0034】
マイクロコントローラ420は、種々のセンサからアナログ入力信号及びデジタル入力信号のいずれか1つ又はこれらを組み合わせたものを受けて、それらの入力信号を処理し、コントローラエリアネットワーク(CAN)接続を介してメインプロセッサへ入力信号を中継するように構成されてよい。場合によっては、メインプロセッサ410は、ユニバーサルシリアルバス(USB)接続などの異なる接続を含んでよく、その場合、センサデータは、CANからUSBへの接続を介して中継されてよい。逆に、メインプロセッサ410からマイクロコントローラ420を介して中継される指示は、USBからCANへの接続を介して与えられてよい。
【0035】
ディスプレイ430は、カニューレ挿入標的位置及びカニューレ挿入器具の2次元又は3次元画像を提供するように構成されてよい。標的血管に到達するためのカニューレ挿入器具の予想軌道等のカニューレ挿入軌道が、画像に重ねられてよい。画像は、リアルタイム又はビデオフレームレートで、更新又はリフレッシュがなされてよい。さらに、ディスプレイは、例えば標的位置の特定等、臨床医がそこに提示された画像内の位置を特定できるように構成されてよい。
【0036】
ディスプレイ430は、さらに、画像処理ルーチンを初期設定するように構成されてよい。例えば、血管の境界の自動セグメント化は、ディスプレイ430を介したユーザとデバイス400との間のインタラクションによって初期設定されてよい。例えば、超音波トランスデューサは、標的血管が超音波画像内の中心になるまで(ディスプレイは、画像中心を示す十字線を含んでよい)移動されてよい。中心になると、デバイス内の処理ソフトウェアを手動で開始し、画像の中心から始まるセグメント化のためのサーチを行ってよい。初期セグメント化の後は、標的を自動で追跡することができる。
【0037】
自動セグメント化アルゴリズムを初期設定する同様の方法は、プローブが長手方向に向けられるときに使用できる。この状況では、血管が長手方向の画像と平行になるように、血管を位置合わせしてよい。その後、セグメント化アルゴリズムは、長手方向の画像から血管を特定でき、特定された血管を自動で追跡できる。
【0038】
血管の中心は、超音波画像に基づいて手動又は自動で検出できる。自動検出の場合には、超音波プローブの長手配向及び横断配向の両方に対して画像セグメント化アルゴリズムを適用してよい。グレースケールのBモード超音波画像が血管の断面を示す横断配向において、アルゴリズムは、画像内の楕円状の構造を検出でき、検出された楕円状の構造に基づいて、潜在的な血管構造に対する大まかなセグメント化輪郭を初期設定してよい。これらの初期輪郭は、反復的に改良されてよい。Bモード超音波画像が血管と平行である長手配向では、アルゴリズムは、代わりに予想直径が1~5mmの範囲の細長チューブ状の構造を検出でき、検出されたチューブ状の構造に対して、輪郭の初期設定及び改良の同様のプロセスを実行することができる。
【0039】
さらに、Bモード画像セグメント化アルゴリズムは、カラードップラー撮像モードから抽出された画像情報によって補完されてよい。カラードップラーモードでは、(組織の後方散乱ではなく)速度がプローブによって検出される。周囲の組織はほとんど静止しているのに対して血液は指向性の動き及び速度を示すため、血流はカラードップラー撮像によって直接視覚化できる。カラードップラー画像データは、セグメント化アルゴリズムの精度を向上させるために、いくつかの異なる方法(マスキング、輪郭の初期設定、加重和等)でBモードの強度画像データと組み合わされてよい。
【0040】
血管の中心座標が特定されると、画像に基づく追跡アルゴリズムを用いて、フレームごとに血管を追跡することができる。これにより、デバイスは組織の動きをリアルタイムで検出し、それに応じて器具の姿勢を調整することができる。また、このように血管を追跡することによって、各フレームにおける血管のセグメント化を一から実行する必要性を低減し、したがって計算時間が短縮される。
【0041】
カニューレ挿入デバイス400は、メインプロセッサ410及びマイクロコントローラ420へ入力信号を供給する複数のセンサをさらに備える。センサは、超音波プローブ等の撮像プローブ462と、カニューレ挿入器具を駆動するときにモータに印加される力を検知する力センサ464と、デバイスのモータによる針の操作を監視するためのモータコントローラ440a用の位置エンコーダ466a及びモータコントローラ440b用の位置エンコーダ466bと、カニューレ挿入デバイス400の並進及び向きの変化を追跡するための位置センサ468と、を備えてよい。カニューレ挿入デバイスは手持ち式であるため、カニューレ挿入デバイスを慎重に又は不意に初期位置から移動させた場合には、追跡のために位置センサ468が必要となる。
【0042】
メインプロセッサ410及びマイクロコントローラ420は、本開示で概説されている操作及びプロトコルを実行するためのソフトウェア命令を用いてプログラムされている。例えば、マイクロコントローラは、力センサ、位置エンコーダ及び位置センサのそれぞれからアナログ入力信号を受信し、受信した入力信号をメインプロセッサに受け入れられるフォーマットに処理し、その後、再フォーマットされた入力信号データをさらなる処理のためにメインプロセッサに送信するようにプログラムされてよい。さらなる例として、メインプロセッサは、患者の標的位置を特定し、カニューレ挿入器具を標的位置に導く軌道を決定する等、撮像データを受信して処理するようにプログラムされてよい。メインプロセッサは、さらに、受信した入力信号に基づいて、標的位置に対するカニューレ挿入器具の相対位置を決定して連続的に追跡してよく、相対位置の変化に基づいて、決定された軌道を更新してよい。
【0043】
プロセッサは、カニューレ挿入の間、相対位置を計算し、これらをオペレータに表示してよい。例えば、プロセッサは、器具が操作/位置合わせされているときの器具の現在の姿勢に基づいて、カニューレ挿入器具の先端の最終位置(例えば、挿入時に先端がある場所)を自動で推定してよい。また、推定された先端位置と標的位置との間のオフセット距離を計算してもよい。同様に、器具の予想される軌道(例えば、器具の先端が挿入中に進む経路)は、器具の現在の姿勢から連続的に推定され、表示されてよい。超音波画像内の推定された位置は連続的に更新され、その更新された位置が表示されてよい。場合によっては、超音波画像及び推定された先端位置は、挿入が実行されている間に、連続的に計算されつつ、さらに更新されてよい。また、プロセッサは、例えば、組織、患者及び超音波プローブによる動きを補償するために、血管標的の座標を更新してもよい。血管標的の更新された位置は、器具の先端の姿勢及び軌道を調整し、器具の先端と血管標的との間のオフセット距離を最小化し、血管標的との一定の位置合わせを確実にするために、器具位置決めユニットに指示される。さらに別の実施例では、推定された先端位置が3D空間において血管又は他の標的位置と正確に位置合わせされたときに、ユーザに合図を出してよい。この合図は、カニューレ挿入が実行可能であることを示す。臨床状況に応じて、推定された先端位置及び標的位置が予め設定された誤差の許容範囲内で位置合わせされたときにのみ、カニューレ挿入の実行を想定することができる。このような機構は、誤った、不正確な、又は安全でないカニューレ挿入の試みを防止する安全機能として役立つ。
【0044】
撮像プローブ462は、患者の皮膚の表面下の標的血管又は組織を検出できる超音波(US)撮像ユニットとしてよい。US撮像ユニットは、リアルタイム又はビデオフレームレート(例えば、毎秒30又は60フレーム又はそれ以上)でUS画像を収集することが可能であるものとしてよい。一部の撮像ユニットでは、画像は2次元であってよい。他のユニットでは、画像は2方向としてよい。さらなる別のユニットでは、画像は3次元であってもよい。これらの撮像タイプの例示的用途は、以下でより詳細に説明する。好ましくは、超音波プローブの周波数は、約6MHz~約18MHzの範囲内である。しかし、より高い画像品質が得られると判断されれば他の周波数を使用してよい。例えば、深い組織構造ほど低い超音波周波数を必要とする一方、表面近くにある構造ほど高い周波数を必要(warrant)としてよい。
【0045】
いくつかの実施例では、US撮像ユニットは、カラードップラー、パワードップラー、スペクトラルドップラー、組織ドップラー、ベクトルドップラー、及び、他の超音波に基づく撮像モードのうち、いずれか1つ又はいずれかの組み合わせをさらに有してよい。これらの撮像技術は、穿刺に適した血管を選択することができるように、血管内の血流の存在及び方向を検出するために使用されてよい。加えて又は代替的に、撮像プローブ462は、可視光撮像(例えば、カメラ)、赤外(IR)又は近赤外(NIR)イメージャ、マルチスペクトルイメージャ、構造化光又は深度撮像、光トモグラフィ技術、レーザードップラー等の他の2次撮像ユニットと対になっていてよい。また、光音響(photoacoustic or optoacoustic)撮像等の他の撮像技術を採用してよい。
【0046】
力センサ464は、例えば圧電材料又は力感応型レジスタ等、印加された力に応じて変化する特性を有する材料を有してよい。その材料は、カニューレ挿入器具と接触してカニューレ挿入デバイスに埋め込まれてよい。動作の一実施例において、カニューレ挿入器具が、例えばボールベアリングスライダに沿ってスライドすることによって、線形自由度に従って移動してカニューレを前進させると、法線力及び摩擦力の両方がカニューレ挿入器具に作用して、カニューレ挿入器具に力センサ464の材料を押し付けさせることができる。力センサはアナログ信号を生成してよく、アナログ信号は次にマイクロコントローラ420等のアナログ/デジタル変換器によってデジタル化されてメインプロセッサ410へ中継される。プロセッサ410は、受信した信号データを使用して、材料に対して印加される力の量を監視することができる。
【0047】
加えて又は代替的に、力センサは、カニューレ挿入デバイスのモータの巻線を流れる電流を測定するように構成された電流センサであってよい。電流は、モータへの負荷に比例して増加し得るが、これは、電流の測定値が、例えば標的血管壁の穿刺等において、カニューレ挿入器具に及ぼされる力の増加を示すことができる、ことを意味する。ここでも、電流測定値はアナログ測定値であってよく、これはデジタル信号に変換され、さらなる処理のためにプロセッサ410へ中継される。例えば、経時的な一連の電流測定値は、プロセッサによって記録され、次に(例えば、1次ローパスデジタルフィルタによって)フィルタリングされ、これによりカニューレ挿入器具に対する力の指標を得ることができる。針の挿入力を例にとると、測定される力は、限定するものではないが、動摩擦及び粘性摩擦、軟組織の弾性変形、及び、組織の切断等、いくつかの力の合計であってよい。
【0048】
位置エンコーダ466a,466bには、各エンコーダに対応するモータによって制御される自由度のタイプに応じて、さまざまなタイプが採用されてよい。例えば、モータが位置決めユニットの回転自由度を制御する場合には、対応するエンコーダは、ロータリエンコーダ又はポテンショメータとしてよい。さらなる実施例では、モータが位置決めユニットの線形自由度を制御する場合には、対応するエンコーダは線形並進を読み取る線形エンコーダであってよい。相対エンコーダ又は絶対エンコーダのいずれを使用してもよい。
【0049】
位置センサ468は、カニューレ挿入デバイスの動き及び傾きを追跡するために、ジャイロスコープ及び加速度計の一方又は両方を有してよい。一実施例において、ジャイロスコープはデバイスの向きの追跡を担うことができるのに対し、加速度計はデバイスの全体の動きの追跡を担う。同様の結果を得るために、複数のジャイロスコープ又は複数の加速度計等、センサの他の組み合わせを利用してよい。場合によっては、慣性計測ユニットを使用して動きを追跡してよい。その他の場合、追跡を向上させるためにステレオカメラを使用してよい。加えて又は代替的に、電磁追跡デバイスを使用してデバイスの動きを監視してよい。加えて又は代替的に、画像データ(例えば、カメラ画像フレーム、超音波画像フレーム)を使用して、デバイスが並進又は傾斜するときに追跡してよい。このような場合、画像フレームの変化がデバイスの変位又は傾きを示すことができるように、画像はコンピュータビジョンプログラムを用いて処理されてよい。
【0050】
位置センサ468は、いくつかの目的のために利用することができる。モーションセンサの例示的用途は、2Dプローブ撮像データから3D画像を形成することである。カニューレ挿入デバイスが2次元超音波撮像ユニットなどの2D撮像プローブを備える場合、デバイスは、患者の標的位置の周りを掃引してよい。このようにして、標的位置の画像は複数の角度から取得できる。画像は、メインプロセッサに提供され、その後、効果的につなぎ合わされ、合成3D画像を得ることができる。標的血管を追跡するために3D画像を使用することは、2D画像と比較して、以下でさらに説明する理由から有利である。
【0051】
位置センサ468の別の例示的用途は、重力ベクトルを提供することである。重力ベクトルは、撮像結果の解釈を助けるために、プローブ撮像データと重ね合わせてよい。場合によっては、これは、患者の解剖学的構造を識別するのに役立つことができる。
【0052】
位置センサ468をカニューレ挿入デバイス400の特定の領域に位置決めすることによって、デバイスの他の領域の構成部品の動きを追跡するセンサの機能が制限されることはない。例えば、位置センサが撮像プローブに取り付けられたジャイロスコープ及び加速度計であれば、位置センサはプローブの姿勢及び加速度を直接測定するために使用できる。次に、直接監視されたデータは、メインプロセッサによって処理され、プローブに対するカニューレ挿入器具の既知の運動学的姿勢に加えて、プローブの回転姿勢及び変位の変化に基づいて、カニューレ挿入器具の姿勢及び変位の変化を間接的に計算することができる。同様に、カニューレ挿入器具に取り付けられたジャイロスコープ及び加速度計を用いて、撮像プローブの姿勢及び変位を間接的に算出してよい。
【0053】
他の実施例では、プローブ及びカニューレ挿入器具の各々は、それ自身の位置センサを備えてよい。さらに、位置センサからの測定値は、一致を確認するために、測定値にさらなる精度を与えるために、あるいは、その両方を行うために、互いに比較されてよい。
【0054】
カニューレ挿入デバイス400は、手持ち式であり、かつ、撮像プローブを備えるため、メインプロセッサで受信される画像データは、固定された位置又は角度から撮影されたものではないことは理解すべきである。したがって、画像データで識別されるオブジェクト及び位置は、絶対ワールド座標系を使用して特徴付けることができない。代わりに、画像をカニューレ挿入器具の相対位置に関連付けるために、動的参照座標系を使用しなければならない。カニューレ挿入器具及び撮像プローブは互いに接続されているため、カニューレ挿入デバイスを動かすことにより、カニューレ挿入器具及び撮像プローブはそれぞれが予測可能に連係して動く。
【0055】
手持ち式カニューレ挿入デバイスを使用することによって生じる1つの課題は、デバイス及び撮像プローブに対するカニューレ挿入器具の姿勢を定義する必要があることである。カニューレ挿入デバイスは手持ち式であり、移動されるか又は傾けられやすいため、固定座標系を使用することはできない。代わりに、カニューレ挿入器具の姿勢は、デバイスに対するカニューレ挿入器具の動きを追跡できる1つ又は複数のセンサに基づいていてよい。
【0056】
場合によっては、カニューレ挿入器具の姿勢データは、カニューレ挿入器具の動きを追跡するために電磁トラッカーから受信したデータを処理することから得られてよい。加えて又は代替的に、画像データ(例えば、カメラ画像フレーム、超音波画像フレーム)を使用して、カニューレ挿入器具が標的位置に向けて前進するときのカニューレ挿入器具の姿勢を追跡してよい。このような場合、画像はコンピュータビジョンプログラムを用いて処理されてよい。加えて又は代替的に、カニューレ挿入器具の姿勢データは、各モータの位置エンコーダから得られてよい。ロボットアームの運動連鎖(
図3に示す自由度の連鎖など)の各関節は、ロボットの起点から始まり器具の先端で終わる、個別の姿勢変換によって定義できる。
【0057】
カニューレ挿入器具の姿勢は、各自由度又は関節のエンコーダ測定値から計算され、過去の自由度又は関節に対する回転及び並進オフセットによって表すことができる。この表現は、例えば、回転を記述するベクトル及びオフセットを記述する並進ベクトルの形であり得る。或いは、オイラーベクトル表現を用いて回転を記述してよい。さもなければ、回転及び並進の表現を単一の均質な変換行列にまとめることができる。どのような表現であっても、各自由度又は関節の相対姿勢を順次組み合わせて、起点とカニューレ挿入器具の先端との間の現在の姿勢を取得できる。
【0058】
例えば、4自由度システムの場合、各自由度の位置エンコーダ測定値を含む4元ベクトル又は4×4行列を採用して、現在のカニューレ挿入器具の姿勢を表すことができる。ロボットアームのモータがカニューレ挿入器具を操作したときに、更新されたエンコーダ情報はメインプロセッサ及びマイクロコントローラの一方又は両方に提供されてよく、更新されたエンコーダ情報に基づいて変換連鎖が更新されてよい。
【0059】
上記で説明したように、モータがカニューレ挿入器具を移動させるときであっても、撮像ユニット及びロボットアームの相対座標系は互いに固定されたままである。この点に関して、デバイスから位置決めユニットのN個の関節(joint
1~joint
N)を介した変換Tの順序は、以下のように特徴付けることができる。
【0060】
このようにして、参照フレームは、デバイス、又は特にデバイスの主要部の姿勢及び向きの観点から定義されてよい。次に、この参照フレーム(デバイス)を使用してシステムの他の部分を互いに関連付けてよい。例えば、撮像プローブ及びカニューレ挿入器具は、次のようにして互いに関連付けることができる。
【0061】
エンコーダに基づく姿勢計測にはいくらか残差が生じやすいことがある。残差は、典型的には、機械的な不正確さ、モータのバックラッシュ、キャリブレーション誤差などによって生じる。したがって、これらの測定からの残差を低減するために、追加のセンサをカニューレ挿入デバイスに統合してよい。例えば、位置センサ(
図4のものなど)を用いて残差を修正してよい。例示的な配置では、位置センサは、カニューレ挿入デバイスの絶対3D姿勢を推定するためにロボットアーム又は撮像プローブのいずれかに取り付けられたジャイロスコープ、及び、カニューレ挿入器具の絶対3D姿勢を推定するためにカニューレ挿入器具の遠位関節の近くに取り付けられた絶対位置/方向センサのうち、一方又は両方を備えてよい。これらの2つの位置センサからの出力を(例えば、メインプロセッサで)組み合わせることにより、機械的誤差の影響を受けない相対器具姿勢を推定してよい。周囲環境(例えば、「ワールド」と総称される患者、患者の皮膚及び標的位置)に対するカニューレ挿入器具の3D姿勢に到達するために使用される変換は、ジャイロスコープの測定値に基づいて取得されてよく、以下のように特徴付けることができる。
【0062】
手持ち式デバイスの使用によって生じる別の課題は、固定座標系に基づいて血管の姿勢を特徴付けるのとは対照的に、カニューレ挿入デバイスの座標系を基準として標的血管の3D姿勢を特徴付ける必要があることである。そうすれば、カニューレ挿入デバイスが動いても、その動きは標的血管を基準として容易に追跡可能である。さらに、カニューレ挿入器具はカニューレ挿入デバイスを基準として追跡されるため、カニューレ挿入器具の操作も標的血管を基準として容易に追跡可能である。
【0063】
これは、撮像プローブからの画像データに完全に又は主に依存することによって達成され得る。利用可能な特定の画像データに応じて、この特徴付けを実行するいくつかの方法がある。明瞭にするために、血管姿勢の特徴付けに有用な特定の3D座標軸を示す
図5を参照する。
【0064】
第1の実施例では、横断配向で単一の2次元(2D)超音波画像を得ることができる。この画像から、血管の単一の断面平面を通じて患者の皮膚の表面からの深さを含む血管の中心を見ることができる。これらは、
図5のX
v及びZ
vに相当する。標的位置が穿刺に適していることを確認するために、2D画像から血管直径(d
v)を測定することができる。カラードップラーを使用する場合、血流速度を数値化することができる。2D画像の欠点は、血管の向きのパラメータ(
図5のθ
v及びφ
v)を確定できないことである。したがって、血管が水平である、すなわち、
図5のX軸と平行であると仮定する。この仮定に基づいて、カニューレ挿入器具の予め設定された挿入角度φ
v(例えば、25度)が提供され、器具は、予め設定された角度の線形軌道で挿入される。超音波プローブが血管中心に位置合わせされていない場合、又は、血管中心からずれてきている場合、横断方向(Y)に沿って並進させることによって再位置合わせすることができる。
【0065】
第2の実施例では、長手配向で単一の2D超音波画像を得ることができる。この場合、血管の深さ(Z
v)と血管配向パラメータφ
vとの両方が超音波画像において可視化される。血管がまっすぐであるか曲がっているかを可視化することもできる。血管標的位置X
vは、2D超音波画像の視野内のいずれも選択可能である。血管標的位置は、例えば、2D画像のコンピュータ解析に基づいて、自動化プロセスによって決定されてよい。或いは、血管標的位置は手動で選択してよい。第1の実施例と同様に、カラードップラーを使用して、血管を通る十分な血流の存在を確認できる。本実施例の欠点は、2D撮像平面が血管の中心を正確に切り取っているかどうかを確認できないことである。換言すれば、
図5のパラメータY
vは、血管の中心にあると仮定しなければならないが、これは単一の画像スライスからは確認できない。この欠点は、人間が挿入プロセスを監視することによって克服できる。
【0066】
第3の実施例では、横断配向などの一般的な配向で複数の2D画像を取得できる。これは、手持ち式撮像プローブの手動「掃引」を介して達成されてよい。長手方向の血管の向きは、プローブを横断配向にしたままX軸に沿ったプローブの「掃引」を用いて決定されてよい。掃引は、わずか約10mmなど、比較的短くてよい。掃引中に取得した各2D画像を処理して積層し、2Dスライスから3D画像を構築してよい。次いで、θv及びφvを含む血管姿勢パラメータは構築された3D画像から計算してよい。この点において、3D画像に基づいて血管カニューレ挿入のための挿入角度を変化させることができる。
【0067】
第4の実施例では、長手配向で複数の2D超音波画像を得ることができる。第3の実施例と同様に、これはプローブの「掃引」を用いて達成されてよい。掃引は、標的血管の中心(Yv)を正確に特定する2D画像スライスから3D画像を構築するために、わずか約5mm以下など、比較的短くてよい。
【0068】
第5の実施例では、2D画像に頼るのとは対照的に、「2方向」超音波画像を得ることができる。これには、横断方向の画像及び長手方向の画像の両方を同時に取得可能な2方向プローブの使用を必要とする。次いで、同時に収集した画像は、血管の中心を特定することのみならず、血管、深さ及び向きを含む標的血管の必要なパラメータを決定するために一緒に処理することができる。すると、挿入及び穿刺の間、カニューレ挿入器具の先端を血管の中心の真上に位置決めし、その軸と位置合わせさせることができる軌道を決定することができる。本実施例では、単一の2方向画像で十分であり得るが、複数の2方向画像を取得することによって、計算の全体的な精度を向上させることができる。
【0069】
第6の実施例では、3Dボリューム超音波画像を得ることができる。この場合、3D画像は、血管の中心、向き及び曲率に関する完全な情報を提供し、そこから最適な軌道を決定することができる。
【0070】
3Dボリューム画像を取得する場合、表示のために任意の向きでボリュームから1つ又は複数の2D又は2方向スライスを抽出してよい。例えば、長手配向の血管の中心を含む斜めスライスは、3Dボリュームから決定され、単一の2D画像フレームとして表示されてよい。プローブが動いたときに、斜めスライスの姿勢は、血管が撮像プローブの3D視野内のどこかにある限り、得られた2D画像に血管が常に表示されるように更新されてよい。同様に、斜めスライスは、器具のシャフトが3D撮像ボリューム内のどこかにある限り、シャフトを常に表示するように更新できる。さらに、個別の画像として複数のスライスを表示することができ、例えば、血管を含む画像スライスと器具を含む別のスライスとを別々に表示することができる。
【0071】
上記実施例に加えて、不足している情報を提供するために、2次撮像技術及び機器を組み合わせてよい。例えば、カメラに基づく撮像を用いてよい。これは、超音波撮像が必要な3D姿勢パラメータのすべてを提供できない場合(長手方向及び横断方向の両方の2D超音波の場合のように)、特に有用であり得る。
【0072】
例えば、カメラに基づく撮像は、患者の皮膚表面に対して、撮像プローブ、カニューレ挿入デバイス又はその両方の向きを決定するために使用されてよい。1つ又は複数のカメラは、カニューレ挿入デバイス(例えば、撮像プローブの側壁)に取り付けられ、デバイスが患者の皮膚上を移動するときに皮膚表面の特徴を追跡するために撮像プローブの方向に向けられてよい。カメラのキャリブレーションが適切であれば、カメラ画像を用いて、プローブに対する皮膚表面の3D座標を決定できる。しかし、標的血管は皮下にあるため、患者の皮膚表面に対する標的血管の姿勢を撮像プローブデータに基づいて決定することは依然として望ましい場合がある。
【0073】
カメラはカニューレ挿入デバイスと一緒に移動するため、患者又はデバイスの動きを適切に特徴付けるために、その座標も移動しなければならない。カメラ画像データに基づいて患者の皮膚の3D姿勢に到達するために使用される変換は、以下のように特徴付けることができる。
【0074】
加えて又は代替的に、カメラに基づく撮像を使用して、カニューレ挿入器具がカメラの視野内にあれば、カニューレ挿入器具の向きの変化を追跡してよい。カメラ画像データに基づくカニューレ挿入器具の3D姿勢は、以下のように特徴付けることができる。
【0075】
加えて又は代替的に、カメラに基づく撮像を用いて、患者の皮膚の表面近くの血管を視覚化してよい。特定の波長の光、特に近赤外波長(約700~1000nm)は、皮膚表面から4mmの深さまでの血液中のヘモグロビンを強く吸収する。これにより、(皮膚表面から見た)トップダウンビューで血管の高コントラスト画像を取得することができる。カメラの画像データに基づく標的血管の3D姿勢は、以下のように特徴付けることができる。
【0076】
さらに、カメラに基づく撮像を用いて、穿刺時にカニューレ内の血液フラッシュ(blood flash)を確認してもよい。穿刺の成功の確認は、従来、カニューレのハブ内の血液フラッシュを視覚化することによって行っていた。しかし、これはカニューレのハブが見えているときにのみ可能である。モニタでのカメラ画像の表示を伴うカメラ撮像は、当然ながらカニューレのハブがカメラの視野内であれば、カニューレのハブを視野に入れる別手段を提供する。
【0077】
カメラ由来のパラメータは、超音波プローブなどの撮像プローブを用いて得られるパラメータに冗長性を加えることができる。場合によっては、カメラ由来のパラメータを用いて、撮像プローブデータから得られない欠落した情報を埋めてよい。しかし、カメラの解像度は、超音波の解像度よりも一桁低いことが多く、したがって、超音波は、好ましくは、本技術の主要な撮像モダリティのままであるべきである。
【0078】
上記の撮像データ及び座標変換をまとめると、カニューレ挿入器具の姿勢に対する3D血管の姿勢は、最終的に以下のように特徴付けることができる。
【0079】
この血管姿勢と器具姿勢との関係は、特定の固定参照フレームに結び付いていないため、カニューレ挿入デバイスが標的位置上で動き回るか、又は標的位置がカニューレ挿入デバイスの下で動き回ったときに容易に適応できる。
【0080】
いくつかの状況では、カニューレ挿入手順の開始前に、まず適切な血管を特定するか、又は、その3D姿勢を特徴付けることが有益となり得る。例えば、最初の撮像手順は、先ずカニューレ挿入が必要かどうかを判断するために、穿刺のための大まかな位置を判断するために、又は、血管の健康状態及びカニューレ挿入の準備のうち少なくとも一方を判断するために、有用となり得る。このような場合には、例えば撮像中のデバイスの大きさ(bulk)を最小化するために、撮像デバイスにカニューレ挿入器具を固定する必要なしに撮像スキャンを行うことが有利であり得る。このように、撮像ユニット及び器具位置決めユニットは、カニューレ挿入器具を主な手持ちデバイスから着脱できるようにするための機構を備えてよい。しかし、すべてのユニットが主なデバイスに取り付けられている場合、座標変換は上記と同じままである。
【0081】
手持ち式デバイスを使用することによって生じるさらに別の課題は、固定座標系に頼らずにカニューレ挿入器具の所望の軌道を決定する必要があることである。軌道の決定は、撮像プローブと接触している患者の皮膚表面の下にある血管の深さを決定することから始めてよい(
図5のZ
v)。また、カニューレ挿入時点での血管の向き(
図5の座標[θ
v、φ
v])を決定してもよい。カニューレ挿入器具の長さは、予め設定された値として、又は手動で入力された値として既知としてよい。採血や静脈内カニューレ挿入等の動作によっては、カニューレ挿入器具は、決定された血管の深さに基づいて、血管の長手方向軸に対して所与の挿入角度(θ
n-v)に設定されてよい。例えば、皮膚表面下の深さが4mm未満の血管ではデフォルトの挿入角度を約15度としてよく、深さが4~8mmの血管ではデフォルトの挿入角度を約20度としてよく、深さが8mm超の血管ではデフォルトの挿入角度を約30度としてよい。これらの値は、臨床実践における推奨に基づいているが、カニューレ挿入器具の長さに基づいてさらに調整されてよい。
【0082】
場合によっては、カニューレ挿入器具は、垂直軸を中心に回転方向(θv)にさらに位置合わせされてよい。これは、血管が長手方向のx軸と正確に平行でない場合に有益であり得る。カニューレ挿入器具のルーティングにより、血管と位置合わせがなされるようにカニューレ挿入器具を回転させることができる。
【0083】
他の場合には、メインプロセッサは、標的血管への軌道を決定するために、追加の因子(例えば、患者の年齢、標的血管の解剖学的位置)を考慮するように構成されてよい。これらの因子は手動で入力してよい。
【0084】
カニューレ挿入デバイスの座標参照フレーム内で所望の軌道が確立されて定義されると、カニューレの挿入を開始することができる。挿入プロセスの間、標的血管及びその中心は、画像追跡アルゴリズムを使用して、撮像プローブから1フレームごとに連続的に取得された画像データに基づいて追跡されてよい。「連続」データとは、ビデオ撮影に適したフレームレートで受信されたデータを意味するものとしてよい。或いは、「連続」とは、後述するカニューレ挿入デバイスの位置決めユニットに与えられる反復指示よりも速いレートで取得されるデータを意味するものとしてよい。上記のように、この「連続」したデータ取得により、患者及びカニューレ挿入デバイスの両方の動きをリアルタイムで検出し、それに応じてカニューレ挿入器具の姿勢をリアルタイムで調整することができる。フレーム間の変化に基づいて血管を追跡することは、フレームごとに一から独自の(original)判定を行うのと比較して、メインプロセッサによる必要な計算量を低減するため好ましい。カメラ撮像データのような他の形式の画像データも動きの追跡に使用してよい。カニューレ挿入器具、カニューレ挿入デバイス、患者の皮膚及び標的血管のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせを追跡してよい。
【0085】
器具位置決めユニットは、カニューレ挿入器具が標的位置に適切に位置合わせされるまで、反復して調整されてよい。反復した調整は、アクチュエータによってカニューレ挿入器具に行われてよく、各アクチュエータは、位置決めユニットの自由度(DOF)を個別に制御する。標的位置、例えば、標的血管の中心は、画像処理ルーチンの各反復で追跡されてよい。標的位置が移動したときには、標的位置の座標は、上記座標参照フレームに従って更新されてよい。そして、カニューレ挿入器具の軌道及び姿勢は、更新された標的位置座標を考慮するように調整してよい。また、この調整は、座標更新の反復に含まれてもよい。このようにして、器具位置決めユニットは、連続した画像に基づくフィードバックに基づいて閉ループ方式で動作し、器具を標的組織に位置合わせすることができる。
【0086】
例えば、デバイスが患者の前腕に沿って手動で移動されている場合、この移動により、標的位置の深さが変化することがある。その結果、カニューレ挿入器具の端点が調整される場合がある。同様に、カニューレ挿入デバイスが挿入プロセスの途中にあり、標的血管が水平方向で回転しているか又は並進していることが検出された場合、位置決めユニットは、標的血管の新しい座標を考慮してカニューレ挿入器具の姿勢を調整することができる。
【0087】
位置決めユニットとロボットアームで利用可能なDOFに応じて、カニューレ挿入器具の軌道を調整する方法がいくつかある。明確化のために、カニューレ挿入器具の3D姿勢の変化を定義するのに有用な特定の3D座標軸を示す
図5を再び参照する。
【0088】
第1の実施例では、位置決めユニットには、挿入距離(dn)(例えば、カニューレ挿入器具の前後の移動)を制御する1つの自由度(DOF1)がある。この構成では、カニューレ挿入器具の軌道が血管の一部分を通過すると仮定すると、器具が軌道に沿った交点で血管を穿刺するまで、DOF1を反復的に調整することができる。血管の特定の部分をカニューレ挿入する場合、US画像に従って位置決めユニットの向きを変えることによって軌道を変更してよい。
【0089】
第2の実施例では、位置決めユニットには2つの自由度がある。DOF1は上記と同じである。DOF2は、挿入深さ(Zn)(例えば、カニューレ挿入器具の先端が標的位置に到達したときの皮膚の深さ)を制御する。この構成では、両方のDOFを反復的に調整できる。そのため、例えば組織又はプローブの動きによって、カニューレ挿入器具の先端の軌道が標的とずれてきた場合、位置決めユニットの高さを挿入プロセス中に調整できる。
【0090】
第3の実施例では、位置決めユニットには3つの自由度がある。DOF1及びDOF2は上記と同じである。DOF3は、カニューレ挿入器具の軸外位置(Yn)(例えば、カニューレ挿入器具の横方向の動き)を制御する。この構成では、位置決めデバイスは、カニューレ挿入器具の先端を横断方向の血管の中心(Yv,Zv)に自動的に位置合わせできる。この点において、位置決めデバイスは、穿刺中のプローブの移動、組織の動き又は血管の回転に起因して生じる可能性のある軸外(Y,Z)の動きを補償することができる。この構成例は、プローブ画像から軸外の動きを自動的に検出して反復して補正できるように、プローブを横向きにして撮影する場合に、有益となり得る。したがって、これらの横断方向又は軸外の調整は、ユーザ又は患者のいずれかによる横方向の移動を修正するのに有用であり得る。
【0091】
第4の実施例では、位置決めユニットには4つの自由度がある。DOF1、DOF2及びDOF3は上記と同じである。DOF4は、カニューレ挿入器具の挿入角度(φn)(例えば、カニューレ挿入器具が患者の皮膚表面に対して下方に傾けられる角度)を制御する。この構成では、位置決めユニットは、挿入角度を独立して制御することにより、標的血管の深さ(Zv)、方向(φv)又はその両方に基づいてカニューレ挿入器具を位置決めすることができる。この構成により、非線形の湾曲した軌道に沿って正確にカニューレ挿入を行うこともできる。例えば、デバイスは、比較的急な角度(例えば30度)で穿刺を開始した後、標的位置に到達する前に、挿入角度が比較的浅い角度(例えば10度)へ徐々に減少する挿入軌道を描くことができる。開始時の挿入角度が比較的急であることは、血管の回転リスクを低減するのに有利となり得る。終了時に挿入角度を比較的浅くすることは、標的血管の血管壁の裏側を穿刺するリスクを低減するのに有利となり得る。このような調整は、血管が細くて脆い小児患者又は高齢患者、さらには非常に深い血管を持つ高BMI患者に器具を導入するときに特に重要となり得る。
【0092】
第5の実施例では、位置決めユニットには5つの自由度がある。DOF1、DOF2、DOF3及びDOF4は上記と同じである。DOF5は、垂直軸(θn)を中心としたカニューレ挿入器具の回転位置合わせを制御する。この構成では、血管の向きθvが長手方向のx軸と平行でなくなるように標的血管が移動した場合、カニューレ挿入器具の向きθnが血管の向きθvと平行になるまでカニューレ挿入器具を回転させてよい。ここでも、プローブの動きに起因する可能性の高い回転移動を補償するために、θnへの反復的な調整を行ってよい。
【0093】
第6の実施例では、位置決めユニットには6つの自由度がある。DOF1、DOF2、DOF3、DOF4及びDOF5は上記と同じである。DOF6は、カニューレ挿入器具の長手方向の並進(Xn)(例えば、横方向の動き及び血管深さ軸に直交する軸に沿った前進及び後退)制御する。この構成では、位置決めデバイスは、血管に沿った長手方向の任意の位置に対してカニューレ挿入器具をセンタリング可能としてよい。この方向(Xv)に標的位置が選択されると、器具先端の位置(Xn)が設定され、標的位置と位置合わせされるように反復的に移動させることができる。
【0094】
各DOFと対応するUS撮像姿勢機能との間の互換性は、デバイスが使用可能であることを保証する際に重要な側面である。例えば、上記の3DOF構成を、長手方向の向きではなく横方向のUSプローブの向きと組み合わせることが有利であり得る。対照的に、YnDOFをXnDOFに置き換えた場合、横方向の向きではなく長手方向の向きを用いることが有利であり得る。同様に、深さ(Zn)及び向き(φn)のDOFを組み合わせることによって、非線形の挿入軌道が可能となり、主に長手方向のプローブに適合し得る。
【0095】
いくつかの実施例では、位置決めユニットのDOFは、撮像ユニットの撮像軸(例えば、超音波撮像ユニットでは、超音波トランスデューサの撮像軸)を中心に配置された1つ又は複数の遠隔運動中心(RCM)を含んでよい。別の言い方をすれば、RCMの軸は撮像ユニットの軸に対応できるため、RCMを中心としたカニューレ挿入器具の任意の回転操作は、標的血管への挿入時に、推定されたカニューレ挿入器具の先端位置が撮像ユニットの下方(例えば、視野内)にセンタリングされるような操作となる。RCMは、挿入深さ(z軸)のDOFに加えて、デバイスの移動を必要とせずに、撮像ユニットの単一の視野内でさまざまな深さの種々の血管を標的にできるようなものであってよい。
【0096】
(例えば、
図4に関連して説明した)力センサは、カニューレ挿入器具に及ぼされる力に関する連続的なフィードバックをさらに提供してよい。このフィードバックは、標的血管壁の穿刺を確認するのに役立ち得る。理想的事例において、力センサによって検出される穿刺は、T
vessel_to_instrument≒0となるときの動きで起こるべきであり、これは、カニューレ挿入器具の先端が標的位置の座標にちょうど到達したことを意味する。
【0097】
加えて又は代替的に、力センサからのフィードバックを用いて、血管穿刺の直前にカニューレの姿勢及び挿入軌道を制御してよい。血管穿刺の直前に、力センサのデータは、カニューレの先端から印加される圧力によって加えられる血管の回転等の血管の動きを示すものとしてよい。血管の回転及び他の形式の血管の動きによって、ミリメートル未満のオーダーの変位が起こり得る。それでも、これらの小さな変位は、穿刺の成功、血管の側壁の穿刺又は標的血管からの完全な逸脱の間における差異となり得る。
【0098】
血管の動きを修正するために、力センサのフィードバックを血管の動きの種類へと変換することが必要である。これは、力センサのデータをメインプロセッサ又はマイクロプロセッサのいずれかに提供し、その後、血管の動きを特徴付けるために、力センサデータを予め格納された力データプロファイル情報と比較することによって行うことができる。
【0099】
図6A~
図6Dは、さまざまな血管の動きに関連付けられた種々の力センサプロファイルを示す。
図6Aは、成功した穿刺のプロファイルを示す。その穿刺の特徴は、数秒間にわたるカニューレ挿入器具への力の漸増、それに続く穿刺直前の力の急激な増加、及び、それに続く穿刺直後のさらに数秒間にわたる力の微減、によって明らかにされる。穿刺が成功しているプロファイルでは、挿入及び穿刺のプロセスで血管は動かなかったと仮定することができる。
【0100】
図6Bは、標的血管の後壁を通ってオーバーシュートするカニューレのプロファイルを示す。そのプロファイルの特徴は、急激な力の増加、それに続く急激な力の減少、それに続く急激な力の再増加、及び、それに続く低速かつ緩やかな力の減少、によって明らかにされる。オーバーシュートのプロファイルを前提として、カニューレ及び血管の一方又は両方が所定の位置から外れたと判断することができる。その後、カニューレ挿入器具は、血管の中心における穿刺の成功を保証するために、再位置決めされてよい。
【0101】
図6Cは、標的血管の前壁によりかかるカニューレのプロファイルを示す。そのプロファイルの特徴は、中でもとりわけ、急激な力の増加とそれに続く力の不在とによって明らかにされる。アンダーシュートのプロファイルを前提として、カニューレ挿入器具は、血管の中心における穿刺の成功を保証するために、再位置決めされてよい。
【0102】
最後に、
図6Dは、標的血管の側壁に沿って逸れたカニューレのプロファイルを示す。血管側壁に沿って接触する一般的な理由は、カニューレと血管との間の最初の接触によって引き起こされる血管の回転である。そのプロファイルの特徴は、中でもとりわけ、力の急な増加がないことによって明らかにされ、これは、血管壁が所定の位置から移動し、まったく穿刺されていないことを示す。穿刺し損なったプロファイルを前提として、カニューレ挿入器具は、さらなる試みで血管の中心における穿刺の成功を保証するために、再位置決めされてよい。
【0103】
力センサのフィードバックに加えて、他のフィードバックセンサ情報を用いて、成功した穿刺の特徴を明らかにすることができる。例えば、流体フラッシュ検出器を用いて、カニューレ挿入器具のハブにおける流体の様子(例えば、静脈に挿入された針の血液フラッシュ)を検出してよい。目的とする穿刺の成功を判断するために、力のデータは流体フラッシュの検出と組み合わせてよい。流体フラッシュデータと力センサのフィードバックとの組み合わせであっても、限られた数の自由度を有するデバイスですら手持ち式静脈穿刺デバイスの操作者を穿刺の成功に導くのに十分となり得る。例えば、単一の自由度を有するデバイスの場合、流体フラッシュデータと力センサのフィードバックとの組み合わせは、カニューレ挿入器具の前進を停止するとき、又は、失敗した試みのために器具を後退又は引き抜く必要があるときに、デバイスに指示するのに十分であり得る。
【0104】
さらなる例として、自由度のないデバイスの場合、流体フラッシュデータと力センサのフィードバックとの組み合わせは、臨床医が手動で器具を標的血管に向けてうまく前進させ、血管をオーバーシュートしないようにする能力を向上させるために、ディスプレイを介して臨床医に提供されてよい。しかし、器具の挿入を自動化することは、複数の理由で有益であり得る。まず、自動化は、器具が挿入されているときのユーザの一部の動きが減少することを促進する。さらに、器具が挿入される速度の制御性を高めることを可能にする。挿入速度の差は、器具に及ぼされる穿刺力に影響を与え得るため、速度が大きいほど及ぼされる力は小さくなり得、速度が小さいほど力は大きくなり得る。十分にゆっくりとした挿入を保証するなど、挿入速度を制御することによって、より正確な力の測定値を収集することができる。
【0105】
図7は、カニューレ挿入デバイスの軌道を標的位置に位置合わせする自動化された方法を実行するための例示的なプロトコル700のフローチャートである。
【0106】
ブロック702では、撮像プローブを使用して、標的血管の周囲の領域を走査する。上記で説明したように、走査は、1つの方向の単一の2D画像、1つの方向の多重2D画像、複数の方向の単一の2D画像、又は、2D画像の他の組み合わせの収集を含んでよい。さらに、場合によっては、撮像プローブは手持ち式カニューレ挿入デバイスに取り付けられているため、プローブは標的位置の周囲の領域上を掃引でき、次いで、撮像データをつなぎ合わせて標的の3D画像を得ることができる。
【0107】
ブロック704では、走査された領域内の標的血管を特定する。標的血管は、手動で、又は、超音波イメージャ又はカメラなどの撮像デバイスを用いて、特定できる。
【0108】
ブロック706では、カニューレ挿入デバイスのプロセッサは、カニューレ挿入器具の先端の最終位置を決定する。最終位置は、一般に、標的血管内の中心点である。最終位置は、血管の空間座標[x,y,z]を含み、さらに血管の回転の極座標[θ,φ]を含む、血管の幾何形状の観点から定義されてよい。
【0109】
ブロック708では、プロセッサは、カニューレ挿入器具を最終位置へ案内する軌道を決定する。軌道は、カニューレ挿入器具を操作する位置決めユニットのモータに対応する位置エンコーダによって示される、カニューレ挿入器具の現在の姿勢及び位置に基づく。さらに、軌道の種々の側面は、別個のモータによって制御されてよく、各モータ自体は、カニューレ挿入器具を操作するための様々な自由度(DOF)に対応する。種々のDOF軸及びそのような軸に沿ったカニューレ挿入器具の操作の影響は上述されている。
【0110】
ブロック710では、プロセッサは、カニューレ挿入器具を最終位置に向けて操作するように、位置決めユニットに指示を与えてよい。これには、カニューレ挿入器具を標的位置に位置合わせして位置決めすること、標的位置に向けて軌道に沿ってカニューレ挿入器具を操作すること、又は、その両方を含んでよい。
【0111】
いくつかの実施例では、ブロック710での指示は反復的に与えられてよく、これは、位置決めユニットが、カニューレ挿入器具を標的位置に向けて徐々に移動させるが、必ずしも完全に標的位置まで移動させないことを意味する。反復的な位置決めにより、プロセッサは、より多くの撮像データを受信し、新たに受信撮像データを処理し、位置決めユニットがカニューレ挿入器具の操作を継続する前に、標的位置、軌道、又は、その両方に修正を加えることができる。この点で、ブロック712において、操作は、プロセッサが追加の画像又は力センサ若しくは位置センサからのフィードバックデータ等の他のセンサデータを受信することへと続いてよい。次に、ブロック714では、プロセッサは、カニューレ挿入デバイス(例えば、カニューレ挿入器具、撮像プローブ)又は患者(例えば、患者の皮膚、患者の標的血管)のいずれか又は両方が、位置決めユニットに与えられた指示と一致しない方法で移動したかどうかを判定する。移動が検出されない場合、操作は、ブロック710で位置決めユニットへの指示の次の反復へと続いてよく、あるいは、後述のブロック720へと続いてよい。
【0112】
逆に移動が検出された場合、ブロック716では、新しい標的位置、新しい軌道又はその両方が決定されてよい。決定を一から行わないために、検出された移動は、過去に収集されたデータの観点から、特に過去に収集されたデータを定義した座標の観点から特徴付けられてよい。次に、ブロック718では、プロセッサは、カニューレ挿入器具を新しい標的位置に再位置合わせすること、新しい軌道に沿ってカニューレ挿入器具を操作すること又はその両方を位置決めユニットに指示できる。場合によっては、プロセッサは、移動が発生した1つ又は複数の軸を決定し、次いで、決定された軸に沿った動きを制御する位置決めユニットの特定のモータに指示を与えるように構成されてよい。ブロック710と同様に、指示は反復的に提供されてよい。その後、操作はブロック712へと続いてよい。
【0113】
ブロック720では、プロセッサは、カニューレ挿入器具のカニューレの先端が標的位置に到達したかどうかを判断できる。標的位置に到達していなければ、操作は、標的位置に向けてさらに反復的に移動するブロック710へ続いてよい。しかしながら、標的位置に到達していれば、操作は、ブロック722において、プロセッサが位置決めユニットに、カニューレ挿入器具が移動を停止するように停止指示を行うブロック722へ任意選択で続いてよい。プロセッサは、標的及び器具の姿勢を追跡し、さらに力センサ情報を分析することによって、標的に到達した時点を判断してよい。器具の先端及び標的の中心の両方について、位置、向き又はその両方を反復的に追跡することにより、プロセッサは、追跡された2つの値が収束したときに器具が標的に到達したことを確認できる。さらに、力センサは、標的穿刺について瞬間的な二者択一の確認を提供できる。
【0114】
いくつかの実施例では、標的穿刺の成否の判定は二者択一であってよく、それにより、成功時にはカニューレ挿入器具は移動を停止し、失敗時にはカニューレ挿入の試みを再試行するために軌道を調整してよい。あるいは、成功の可能性又は失敗の可能性を判断してよく、成功の可能性の増大、及び、失敗の可能性の低減のうち、少なくとも一方がなされるように軌道を調整してよい。このようにして、挿入試行の途中であっても、挿入の成否を判定する前に、カニューレ挿入器具の軌道に調整を加えてよい。
【0115】
挿入中の判定は、標的穿刺の成否を予測するようにプログラムされた機械学習アルゴリズムを用いて行ってよい。アルゴリズムは、同じデバイス又は類似のデバイスの過去の穿刺の試みから記録されたログデータに対してトレーニングされてよい。ログデータには、試みの成否についての表示や、限定するものではないが、画像データ(例えば、血管の動きを追跡するための超音波情報)、力センサのフィードバック、カニューレの姿勢データ、デバイスの姿勢データ等の他の収集データが含まれてよい。次に、現在のセッション中に、同じ又は類似のデータをデバイスのセンサ及びプローブから収集し、成功の可能性又は失敗の可能性を予測するために使用してよい。プログラムは、カニューレ挿入器具の操作(例えば、カニューレ挿入器具を深く入れる、器具を左右に移動させる、器具のピッチを変更する等)による成功の可能性又は失敗の可能性がどの程度かを分析するようにさらに構成されてよい。プログラムは、分析された調整のいずれかが最も有利に成功の可能性を向上させる(又は失敗の可能性を最小化する)かどうかをさらに判断してよく、それに従って、プロセッサはカニューレ挿入器具の操作を制御してよい。
【0116】
場合によっては、機械学習アルゴリズムは、分類、回帰、クラスタ化等の多変量学習プロセスを用いて、トレーニングデータを類別し、次に、現在のデータが該当するクラスや分類の妥当性を決定する。他の場合には、機械学習アルゴリズムは、ニューラルネットワークを用いて、多数の生の入力を成功/失敗の単一の確率出力に処理してよい。
【0117】
機械学習に基づくルーチンを示すために、以下の例示的用途を説明する。挿入中だが血管穿刺の前に、血管が挿入経路の位置から外れて回転し始めることがある。血管の回転は、超音波撮像を含む1つ又は複数のセンサ及び力センサを使用して検出することができる。しかし、事後にならないと、完全な確実性をもって血管の回転の特徴を明らかにすることが困難な場合がある。したがって、事後に血管の回転を認識するのではなく、機械学習アルゴリズムにより、血管が軌道から回転する可能性が高いことを事前に予測することができ、血管の回転が実際に発生する可能性を最小化するために、標的血管を含むカニューレ挿入器具の軌道を直ちに調整してよい。
【0118】
上記実施例は、概略的に、カニューレ挿入器具の取り付けについて説明している。器具は、所与の時間における特定の用途に応じて、例えば、針又はカテーテルであってよい。さらに、カニューレ挿入デバイスは、いくつかの異なるタイプのカニューレ挿入器具を受容するように設計されてよい。例えば、本デバイスのロボットアームは、針又はカテーテルのいずれか一方を受容するように設計されてよい。さらに、針及びカテーテルそれぞれのマニピュレータは、一方の器具を容易に取り外し、他方の器具を取り付けることができるように、それぞれが同じロボットアームに対応するようにさらに設計されてよい。器具は、電磁石をベースとする取付構成部品を用いて脱着がなされてよい。例示のために採血針802のアタッチメントを用いて、
図8の分解図に、電磁石をベースとする取付構成部品の例を示す。採血針802は、略円筒形形状であり、比較的大きい直径を有する第1のセグメント804と比較的小さい直径を有する第2のセグメント806とを有し、第1のセグメントから第2のセグメントに向けてテーパがつけられている。アダプタ810は、第1のセグメント804及び第2のセグメント806のそれぞれで針802に留められるように構成される。具体的には、アダプタ810は、平坦な上部表面812を有する上部部材811と、下部表面に取り付けられた2つのクリップ814及び816と、を備える。クリップ814及び816はそれぞれ、針802の対応するセグメント804及び806と係合するように適合される。上部部材の中間部分825は中空になっており、スチールプレート835が中間部分825に挿入される。スチールプレートは、ロボットアーム(図示せず)に備えられる電磁石と係合するように構成される。この設計を利用して、種々のカニューレ挿入器具のアタッチメントの迅速な脱着を可能にすることができる。これにより、単一のカニューレ挿入デバイスの使用において、例えば、カテーテル挿入から針の挿入へと容易に切り替えることができる。
【0119】
取付構成部品により、手持ち式デバイスは、従来の針及びカテーテル挿入デバイスの少なくとも一方に容易に対応可能となる。例えば、0~70度の角度調整、0~15Nの注射力及び0~100mmの挿入深さは、実施される血管アクセスのタイプに応じて、すべて依然として可能であり得る。
【0120】
超音波トランスデューサが使用される上記実施例では、トランスデューサのヘッドに取り付けられ、トランスデューサが皮膚に接触しているときに音響結合源を提供するゲル取付構成部品を使用してよい。ゲル取付構成部品は、音響結合ゲルを保持するクリップで構成可能である。さらに、音響結合ゲルは、超音波エネルギーを介して放出されるように設計された麻酔薬を含有するように形成されてよく、それによって穿刺前に挿入部位を麻痺させることができる。また、ゲル取付構成部品を使用して、血管又は他の組織標的を安定させることもできる。さらに、ゲル取付構成部品は、屈曲して患者の腕の幾何形状に適合してよい。最後に、
図8の超音波ゲル取付構成部品及び器具取付構成部品は、単一の使い捨てハウジングユニット内に組み込まれてよい。このようにして、超音波及び器具取付構成部品は、1回の動作で手持ち式デバイスに取り付けられてよい。例えば、2つの構成部品は、デバイスが使い捨てハウジングユニット上に位置決めされて下降したときに、器具取付構成部品が位置決めユニットに係合し、超音波ゲル取付構成部品が超音波撮像ユニットに係合するように使い捨てハウジングユニット内の予め設定された幾何形状に固定されてよい。
【0121】
上記実施例は、カニューレ挿入器具の挿入を追跡するための面外撮像法(out-of-plane imaging approach)を使用したデバイスのプロトコルを概略的に説明している。ただし、類似の方法及びプロトコルは、標的位置に到達する前であってもカニューレ挿入器具が画像内に存在する面内撮像技術(in-plane imaging techniques)に適用可能である。
図9A~
図9Cは、撮像手法が面内であるか面外であるかに応じて、さらに、位置合わせを追跡するために利用可能な特定の入力に応じて、カニューレ挿入デバイスの軌道を標的位置に位置合わせする種々の自動化された方法を実行するための3つの例示的プロトコル900a、900b及び900cのフローチャートである。実施例はそれぞれ、画像データの1次ソースとして2次元超音波撮像に依存しているが、
図9Aの例示的プロトコル900aにおける2次元撮像は面内であるのに対し、
図9B及び
図9Cの例示的プロトコル900b及び900cにおける2次元撮像はそれぞれ面外である。さらに、プロトコル900cは、ジャイロスコープ及び2次撮像源(例えばカメラ)から受信したデータに依存するが、プロトコル900bはそうではない。
【0122】
図9Aに注目すると、プロトコル900aは、デバイスを始動すること(902)、所望のカニューレ挿入器具をデバイスに留めること(904)、デバイスにゲル取付構成部品を装着すること(906)、及び、所定の位置にデバイスを配置して標的領域(例えば、標的領域の上)を撮像すること(908)を含む、いくつかの手動の準備ステップから始まる。場合によっては、標的領域は、適切な挿入部位へと手動で走査され得る(910)。前述の撮像プロセス中に、2次元超音波画像がデバイスによって撮影されてよい(912)。上述したように、これらの画像は、撮像された標的領域における標的又はデバイスの移動に関するフィードバックを提供するために、連続的に、例えばリアルタイムで撮影されてよい。
【0123】
後続の画像における血管の追跡を確実にするために、超音波画像内の血管(例えば、静脈)をセグメント化してよい。デバイスは、撮影された画像内の血管が適切にセグメント化されているかどうかを確認し(914)、適切にセグメント化されていない場合には、標的領域の追加のスキャンが取得され処理されるのを待ってよい(910,912)。血管が適切にセグメント化されていれば、デバイスのユーザは新しい標的位置を走査する代わりにデバイスを所定位置に保持することを試みてよく(916)、操作はセグメント化された血管の中心座標の計算に続いてよい(918)。座標のデータ(934)は、後で使用するために格納されてよい。
【0124】
血管座標を使用して、器具を位置決めするモータを制御して、器具の軌道を標的位置、例えば血管の中心と適切に位置合わせしてよい。これには、器具のY軸位置合わせ(例えば、軸Ynに沿って、上述のDOF3)を制御するモータの操作(920)と、器具のZ軸又は挿入深さの位置決め(例えば、軸Znに沿って、上述のDOF2)を制御するモータの操作(924)の一方又は両方を含んでよい。モータの動作(920,924)は、対応する位置エンコーダ(922,926)によって追跡されてよい。
【0125】
器具を血管中心へと移動させるための軌道を計算してよく(928)、さらに、計算された軌道が血管中心と位置合わせされているかどうかを確認してよい(930)。位置合わせが正しくなければ、操作は、器具を位置合わせされた状態に戻すためにモータの制御(920,924)に戻り、器具を標的位置に移動させるための軌道を再計算してよい(928)。上記で説明したように、標的血管又はデバイスのいずれかが予期せず移動する場合に備えて、この追跡を連続的に行ってよい。しかし、明瞭さを目的として、軌道の位置合わせの追跡はプロトコルの中で一度だけ示されている。
【0126】
軌道が適切に位置合わせされていれば、プロセッサに含まれる運動学ソフトウェア(936)は、血管中心座標(934)に基づいて、さらに、器具の先端の位置(932)を示す超音波画像から収集された画像データに基づいて、器具をその挿入軸に沿って移動させ始めてよい(938)。器具は、例えば超音波撮像に基づいて、先端が血管中心に到達したかどうかを定期的に確認しながら反復的に移動されてよい(940)。器具の先端がまだ血管中心に到達していない場合、器具をその挿入軸に沿ってさらに前方に移動されてよい(938)。そうでなければ、器具が血管中心、より一般的には標的位置に到達したと判断された場合、操作はカニューレ挿入器具の指定された機能(例えば、血液回収)に続いてよい(948)。
【0127】
任意選択で、カニューレ挿入器具の指定された操作を開始するかどうかの判断は、力センサ(944)からの力データにさらに基づいてよい。例えば、プロセッサは、力センサデータ(944)に基づいて、カニューレ挿入器具が血管を適切に穿刺したかどうかを判断してよい(942)。例えば、力センサデータは、いくつかのプロファイル(946)に基づいて分類することができ、力データのプロファイルが、適切な穿刺を示すプロファイルと一致する場合、操作は、カニューレ挿入器具の指定された機能(例えば、血液回収)に続いてよい(948)。加えて又は代替的に、プロセッサは、流体フラッシュデータ(944)、例えば血管カニューレ挿入の場合は血液フラッシュセンサからのフィードバックに基づいて、カニューレ挿入器具が血管を適切に穿刺したかどうかを判断してよい(942)。例えば、流体フラッシュデータがカニューレ挿入器具内の流体フラッシュの存在を示す場合、これはカニューレ挿入の成功の兆候であり得、次に、操作はカニューレ挿入器具の指定された機能(例えば、血液回収)に続いてよい(948)。そうでなければ、力センサデータが、血管の回転又は血管壁のオーバーシュートなどの異なるタイプのプロファイルに分類される場合、又は流体フラッシュ若しくはフィードバックデータの任意の組み合わせが検出されない場合、操作は、器具をその挿入軸に沿って戻すことに続いてよい(938)。他の場合、カニューレ挿入の成功は、(例えば超音波イメージャからの)画像データ又はモータフィードバックデータとなり得るカニューレの姿勢情報にさらに基づいてよい。
【0128】
図9Bに注目すると、プロトコル900bは、超音波撮像(912)が面内ではなく面外で行われることを除いて、プロトコル900aと同様である。その結果、標的位置の画像は、挿入プロセスの後半までカニューレ挿入器具を特徴としない。器具の先端が最終的に画像内にあると(952)、その位置が検出され(950)、カニューレ挿入操作(例えば、血液回収)(948)を開始できるように、器具が標的位置に到着したかどうかの指標として使用してよい。
【0129】
さらに、プロトコル900bでは、血管中心座標は、プロトコル900aで記述したX軸及びZ軸とは対照的に、血管のY軸及びZ軸の観点から定義される(958)。次いで、Y軸及びZ軸座標は、カニューレ挿入器具を標的位置に向けて駆動する(938)ために使用される運動学ソフトウェア(936)の入力として記憶される(954)。
【0130】
図9Cに注目すると、プロトコル900cは、血管中心座標が血管のX軸及びZ軸の観点から定義される(918)という点でプロトコル900aに類似しており、超音波撮像が面外手法を用いて実行されるという点でプロトコル900bに類似している。プロトコル900cは、ジャイロスコープ960及び2次撮像デバイス(例えば、カメラ)(970)がそれぞれ、デバイスの向きの追跡及び血管座標の計算をそれぞれ向上させるために設けられる点で異なる。ジャイロスコープは、デバイスの絶対的な向きなどのデータを収集し、その結果、デバイスのヨー(962)、ピッチ(954)及びロール(966)を示すことができる。2次撮像デバイス(970)は、血管の追跡を向上させ、標的血管の場所に関してより正確な情報、又は1次撮像源からのデータと照合する第2の情報セットを提供するために、標的血管を含む標的位置を撮像してよい。ジャイロスコープデータの場合、収集されたデータは、デバイスの向き(974)を計算及び監視するための入力として提供され、次に、これを使用して、カニューレ挿入器具を標的位置に位置合わせし(920,924)、さらに、標的位置に向かうカニューレ挿入器具の軌道を計算及び追跡することができる(928,930)。
【0131】
他の例示的プロトコルでは、ジャイロスコープ及び2次撮像デバイスを用いたデバイスの向きの追跡は、面内撮像技術、血管座標のY軸及びZ軸の追跡、又はその両方に関連して実行されてよい。
【0132】
上記実施例は、手持ち式デバイスを使用して静脈穿刺及び他のカニューレ挿入方法を自動化する制御アルゴリズム及び設計を示す。しかし、当業者には、好ましい場合には、手持ち式デバイスを手動で使用することも可能であることも理解されるべきである。さらに、手動入力及び自動化制御の組み合わせが好ましい場合もある。例えば、臨床医は患者の好ましい静脈を選択することを任されてよいが、自動化されたプロセスは選択された静脈内の正確な標的位置を決定するために使用される。さらなる場合には、プロセス中に患者が動いた場合、臨床医は、デバイスが患者の動きを検出するのを待つ必要なくカニューレ挿入プロセスを終了することを選択してよい。さらに、臨床医は、自動化プロセスが正しく実行されていることを保証するために、デバイスのディスプレイ上で画像データを観察してよい。
【0133】
デバイスは、手動入力及び自動化制御の組み合わせをさらに備えてよい。デバイスの特定のフォームファクタは、すべての自由度が手動で制御される自由裁量での使用を可能にするように選択されてよい。他のフォームファクタは、カニューレ挿入ユニットが取り除かれた撮像のみのために、又は針の挿入をガイドするために使用される撮像のために、又は固定治具をデバイスに設けるパッシブ支持アームに取り付けるために、又は針が血管と位置合わせされるようにデバイスを自動で方向付けし、次いで手動で挿入するために、又は血管と位置合わせされるように針を手動で方向付けし、次いで手動で挿入するために、又は手動調整を可能にすると同時に針を自動で方向付けし、次いで自動若しくは手動で挿入するために選択されてよい。
【0134】
図10A~
図10Iは、高さ(z
m)及び挿入深さ(Inj
m)の2つの自由度を有するデバイスの実施例を示す。
図10Aの実施例では、高さは、Z軸の方向に沿って針1080を並進させることが可能なモータによって制御されてよい。挿入の深さは、XZ平面内で針の長さ方向に針を並進させることが可能なモータによって制御されてよい。いくつかの実施例では、XZ平面内の針のピッチθは、調整されるか、あるいは、固定されてよい。
【0135】
デバイス1000は、一方の側にマニピュレータ1010と、他方の側に超音波プローブなどのプローブ1030とを備える。プローブ1030は、取り付けフレーム1025(
図10B参照)などによって、マニピュレータ1010に取り付けられてよい。超音波プローブの場合、例えばゲルを保持するクリップ1035がプローブ1030の底部部分に取り付けられてよい。
【0136】
図10Aのデバイス1000の分解図である
図10Bに示すように、マニピュレータ1010は、高さ方向にデバイスの位置を制御するための、線形ステージDCモータなどの第1のモータ1060を内部に収容するハウジングを備えてよい。標的位置の適切な撮像を提供するために、プローブ1030の底部(例えば、クリップ1035の底部表面)が患者に又はその近くに載ることができるように、デバイスの高さは、プローブ1030に対するマニピュレータ1010の高さと考えてよい。また、マニピュレータ1010のハウジングは、マニピュレータの操作を制御するマイクロコントローラなどの1つ又は複数のプロセッサ1020を収容してもよい。針1080は、マニピュレータ1010のハウジングの下に配置された針挿入ハウジング1050に収容されてよい。さらに針挿入ハウジング1050内には、針の挿入深さを制御するスピンドル駆動モータなどの第2のモータ1040が収容されてよい。
【0137】
図10Bから見てとれるように、針挿入ハウジング1050はまた、第2のモータ1040が針を駆動するときに針1080の挿入動作をガイドするガイドレール1070を内部に収容してもよい。一対のボールベアリングキャリッジ1072は、第2のモータ1040の制御下で、針1080がガイドレール1070に摺動可能に取り付けられるようにガイドレール1070に結合されてよい。
【0138】
さらに、デバイス、針1080の位置、又はその両方、並びにカニューレ挿入の進行に関するフィードバックを提供するために、1つ又は複数のセンサが設けられてよい。例えば、力センサ1064は、挿入中に針に及ぼされる力の量を検出するために提供されてよい。さらに、デバイスの姿勢及び向きを追跡するために、ジャイロスコープ及び加速度計がマイクロコントローラ1020に備えられてよい。
【0139】
針は、クリップ1078に着脱可能に取り付けられてよく、クリップ1078は、ワッシャ1076によって電磁石1074に取り付けられてよい。電磁石は、針挿入ハウジング1050からの針クリップの容易な挿入及び取り外しを可能にすることができる。
【0140】
図10C~
図10Iは、
図10A及び
図10Bに関連して記述された構成部品の配置関係をよりはっきりと示すために、デバイス1000の一部の追加の図を提供する。例えば、
図10Cは、プローブ1030及びクリップ1035を備えたデバイス1000全体を示す。
図10Dは、プローブ及びクリップを取り外した状態のデバイスを示し、それによって、プローブ1030が着脱可能に取り付けられ得る取り付けフレーム1025をよりはっきりと示す。
図10Eは、フレーム及び第1のモータを取り外した状態のデバイスを示し、それによって、針挿入ハウジング1050をマニピュレータの残りに取り付けるために使用される取り付けフレームをよりはっきりと示す。
図10Fは、針ハウジングを取り外した状態のデバイスを示し、それによって、針の挿入深さを駆動するために使用される第2のモータ1040と、針が移動するガイドレール1070とをよりはっきりと示す。
図10Gは、第2のモータ及びガイドレールを取り外した状態のデバイスを示し、それによって、ガイドレール上で針をガイドするために使用されるベアリング1072のハウジングをよりはっきりと示す。
図10Hは、ハウジングを取り外した状態のデバイスを示し、それによって、ベアリング1072及びガイドレール1070、並びに針が取り付けられたときのガイドレールに対する電磁石の位置、及び針クリップの後部にある力センサ1064の位置をよりはっきりと示す。最後に、
図10Iは、デバイスの残りの部分が取り外されているため、力センサ、電磁石1074、針クリップ1078及び針1080のみを示す。
【0141】
図10A~
図10Iの実施例は、2つの自由度(2-DOF)を有するデバイスの構造を示す。より多くの又はより少ない自由度を有する他のデバイスは、例示的デバイス1000を基本構成として用いて設計されてよい。例えば、
図11A~
図11Gは、3つの自由度(3-DOF)を有するデバイス1100を示す。この実施例では、3つの自由度は、従来のデバイス1000と同じ2つの自由度、すなわち、針の高さ及び挿入の深さを含む。さらに、3-DOFデバイスは、Y軸の方向に沿って、横方向に針を操作する追加のモータを備える。
【0142】
図11Aに示すように、デバイス1100は、完全に同じではないが、上述した2-DOFデバイス1000と同様に構造的に設計されている。例えば、デバイス1100は依然としてプローブ側及びマニピュレータ側を備え、これらの側は同様に互いに取り付けられる。デバイス1100はさらに、針挿入ハウジングを有するが、3DOFシステムのハウジングは、追加構成部品の存在により2DOFシステムのハウジングよりもいくらか大きい。2つの構造間のいくつかの顕著な差異は、以下でより詳細に説明する。
【0143】
2-DOFデバイス1000の
図10C~
図10Iと同様に、
図11B~
図11Gは、
図11Aに関連して記述された構成部品の配置関係をよりはっきりと示すために、3-DOFデバイス1100の一部の追加の図を提供する。
図11Bは、マニピュレータ、プローブ及びクリップを備えたデバイス1100全体を示す。
図11Cは、プローブ、クリップ、及びプローブ用の取り付けフレームを取り外した状態のデバイスを示す。針挿入ハウジングをマニピュレータの残りに取り付けるために使用される取り付けフレームをよりはっきりと示すために、マイクロコントローラ、第1のモータ及びそれらのハウジングも取り外されている。
図11Dは、針ハウジングを取り外した状態のデバイスを示し、それによって、Y軸に沿って針をガイドするために使用される横方向移動機構1110をよりはっきりと示す。横方向移動機構1110は、進路1116に沿ってギア1114の回転運動を駆動するために使用される、別のスピンドル駆動DCモータなどの第3のモータ1112を備えてよい。進路は、ギア1114の回転が進路1116をY軸に沿って一方の側又は他方の側に並進させるように、Y軸に沿った長さを有していてよい。針クリップは、進路1116の並進が針を横方向にも並進させるように、進路1116に結合されてよい。
【0144】
図11Eは、第3のモータ1112が取り外された状態のデバイスを示す。進路1116は、針の横方向の位置とは無関係に挿入の深さを制御するために、第2のモータが針と一緒に横方向に並進できるように、第2のモータのハウジングにも結合されているものとして示される。
図11F及び
図11Gは、上述した2-DOFデバイス1000の
図10H及び
図10Iにほぼ同等である。
【0145】
図12は、カニューレ挿入事象の間に針及びデバイスの動作を制御する制御デバイスの例示的ワークフロー1200を示す。ワークフローは、走査動作(1210)から始まってよく、それによって、デバイスのプローブは、カニューレ挿入のために標的位置の上に位置決めされてよい。デバイスの位置決めは、カメラ又はビデオ記録デバイスからの画像フレームなどの画像データを収集することを含んでよい。
【0146】
ワークフローは、デバイスプローブを使用した標的位置の超音波撮像(1220)に続いてよい。超音波撮像は、面外撮像(1222)を含んでよく、超音波を用いて患者の皮膚の下(例えば、0~20mmの深さ)の撮像を提供してよい。
【0147】
ワークフローは、収集された画像の画像解析(1230)に続いてよい。画像を用いて、カニューレ挿入のための血管を特定し、セグメント化(1234)を通じて標的血管の壁を画定することによって血管の向きを決定することなどによって、血管の画像を強化(1232)してよい。最終的に、血管を選択(1236)し、フレームごとに追跡(1238)してよい。静脈の場合、静脈をさらに分析して、血管を通る血流を決定し、カニューレ挿入の優れた候補であることを保証してよい。
【0148】
標的血管が選択されると、ユーザ入力の指示により走査が停止(1240)されてよい。ユーザ入力は、さらに、カニューレ挿入プロセスを開始するかどうかの決定(1250)として機能してよい。特定された標的血管にユーザが満足していない場合など、カニューレ挿入を開始しないことが決定された場合(いいえ)、別の標的血管が選択できるように操作は画像解析(1230)に戻ってよい。さもなければ、挿入を開始する場合(はい)、ワークフローは、カニューレ挿入器具のロボット制御(1260)に続いてよく、これは、自由保持(free-held)デバイスが標的位置の上方に移動する場合に、自由保持デバイスの運動学を計算すること(1262)、標的血管に向かう軌道を維持するためにY軸及びZ軸に沿ってカニューレ挿入器具を位置合わせすること(1264)、及び挿入深さ軸に沿ってカニューレ挿入器具を標的血管に向けて前進させること(1266)を含んでよい。
【0149】
カニューレ挿入器具が標的位置に到達すると、ワークフローは、器具が血管に適切に挿入されたか、又は挿入されるかどうかを判断するために、穿刺検出(1270)をさらに実行してよい。挿入の成功の判断は、器具を制御するモータの位置エンコーダ(1272)によって示されるような針の位置、器具に結合された力センサによって示される力のフィードバック(1274)、挿入の視覚的な追跡を提供するための超音波撮像(1276)、器具がモータ電流のスパイク(1278)を引き起こすような予想される又は予想外の抵抗を満たすかどうかを示すためのモータ電流フィードバック、及びカニューレ挿入の試みにより血液又は流体が採取されたかを確認するための血液フラッシュ又は流体フラッシュフィードバック(1280)を含む、いくつかの因子に基づいてよい。個別に又は集合的に、このフィードバックデータは、器具の位置合わせを修正するために、ワークフローのロボット制御段階(1260)で使用されてよい。
【0150】
上記のデバイス及び方法は、ヒトの患者及び獣医学的用途などの他の動物対象の両方に適用可能である。より一般的には、当業者は、標的位置の移動に基づく手持ち式カニューレ挿入器具の軌道を修正する上述したデバイス及び方法が、対象の予想外の動き、デバイスの保持者の予想外の動き、又は両方があり得る任意のカニューレ挿入手順に適用可能であってよいことを容易に理解及び認識する。
【0151】
本明細書における発明は特定の実施形態に関して記述されているが、これらの実施形態は単なる本発明の原理及び用途を例示したものにすぎないことを理解されたい。したがって、多数の変更が例示的実施形態になされてよく、また他の構成が、添付の図面によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに考案されてよいと理解されたい。なお、上記実施形態から把握し得る技術的思想について、その態様を以下に示す。
[態様1]
患者の皮下の標的位置に向けてカニューレを導くデバイスであって、
前記標的位置の撮像データを連続的に生成する撮像プローブと、
位置決めユニットであって、
前記位置決めユニットに取り付けられたカニューレを操作するように構成された複数のモータ、
対応するモータの動きに基づいて前記カニューレの位置及び向きを示すカニューレ姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのカニューレ位置センサ、及び
前記デバイスの向き及び位置を示すデバイス姿勢データを生成するように構成された少なくとも1つのデバイス位置センサ
を備えた位置決めユニットと、
プロセッサであって、
前記撮像プローブから撮像データを受信し、
前記少なくとも1つのカニューレ位置センサからカニューレ姿勢データを受信し、
前記少なくとも1つのデバイス位置センサからデバイス姿勢データを受信し、
前記撮像データから前記標的位置を特定し、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記標的姿勢に向けて前記カニューレを操作するための軌道を決定し、
前記決定された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示し、
前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別し、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記決定された軌道を修正された軌道へと更新し、
前記修正された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示する
ように構成されたプロセッサと、
を備える、デバイス。
[態様2]
前記撮像プローブは超音波プローブであり、前記撮像プローブによって生成された前記撮像データは、2次元撮像データ、3次元ボリューム撮像データ及び2方向撮像データのうちのいずれか1つである、態様1に記載のデバイス。
[態様3]
前記プロセッサは、前記撮像データに基づいて前記患者の皮下にある標的血管の姿勢を識別及び決定するようにさらに構成される、態様2に記載のデバイス。
[態様4]
前記デバイスは、複数の角度から前記標的位置の撮像データを取得するように構成され、前記プロセッサは、
前記複数の角度から取得された前記受信撮像データから3次元撮像データを構築すること、及び、
前記複数の角度から取得された前記撮像データから、前記患者の皮下にある前記標的位置の3次元姿勢を決定すること、
のうちの少なくとも1つを行うようにさらに構成される、態様3に記載のデバイス。
[態様5]
前記撮像データは、異なる時点で取得された前記標的位置のビデオデータを含み、前記プロセッサは、前記ビデオデータの前後のフレーム間の比較に基づいて、前記標的姿勢に向けて前記カニューレを操作するための前記軌道を決定するように構成される、態様1から4のいずれか1項に記載のデバイス。
[態様6]
前記位置決めユニットは、前記カニューレを少なくとも2つの自由度で操作するように構成される、態様1から5のいずれか1項に記載のデバイス。
[態様7]
前記プロセッサは、前記少なくとも1つのデバイス位置センサから受信したデバイス姿勢データに基づいて、前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別するように構成される、態様1から6のいずれか1項に記載のデバイス。
[態様8]
前記少なくとも1つのデバイスセンサは、カメラ、電磁石センサ、ジャイロスコープ及び加速度計のうちの少なくとも1つを含む、態様7に記載のデバイス。
[態様9]
前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサをさらに備え、前記プロセッサは、
前記力センサから前記力データを受信し、前記受信した力データに基づいて、前記カニューレ姿勢データを修正された位置及び向きへと更新し、
前記修正された位置及び向きに従って前記カニューレを操作するように前記カニューレ位置決めユニットに指示する
ように構成される、態様1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
[態様10]
前記カニューレへの血液の流れを示す血液フラッシュデータを生成するように構成された血液フラッシュセンサをさらに備え、前記プロセッサは、
前記血液フラッシュセンサから前記血液フラッシュデータを受信し、
前記血液フラッシュデータにさらに基づいて前記カニューレを操作するように前記カニューレ位置決めユニットに指示する
ように構成される、態様9に記載デバイス。
[態様11]
前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサをさらに備え、前記プロセッサは、前記力センサから前記力データを受信し、
前記力データから力プロファイルを取得し、
前記取得された力プロファイルを、カニューレ挿入成功事象、血管回転事象、アンダーシュート事象及びオーバーシュート事象のうちの1つとして分類し、
カニューレ挿入成功事象がない場合、前記分類された事象に応じて前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示する
ように構成される、態様1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
[態様12]
前記少なくとも1つのカニューレ位置センサは複数のモータセンサを備え、複数のモータのうちの対応する1つと関連付けられた各モータセンサはカニューレ姿勢データを生成する、態様1から11のいずれか1項に記載のデバイス。
[態様13]
患者の皮下の標的位置に向けてカニューレを導く方法であって、前記方法は、前記標的位置の撮像データを連続的に生成するための撮像プローブと、複数のモータ、少なくとも1つのカニューレ位置センサ及び少なくとも1つのデバイス位置センサを備えた位置決めユニットと、に結合されたプロセッサによって実行され、前記複数のモータは、位置決めユニットに取り付けられたカニューレを操作するように構成され、前記少なくとも1つのカニューレ位置センサは、対応するモータの動きに基づいて前記カニューレの位置及び向きを示すカニューレ姿勢データを生成するように構成され、前記少なくとも1つのデバイス位置センサは、前記デバイスの向き及び位置を示すデバイス姿勢データを生成するように構成され、前記方法は、
前記撮像プローブから撮像データを受信することと、
前記少なくとも1つのカニューレ位置センサからカニューレ姿勢データを受信することと、
前記少なくとも1つのデバイス位置センサからデバイス姿勢データを受信することと、
前記撮像データから前記標的位置を特定することと、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記標的姿勢に向けて前記カニューレを操作するための軌道を決定することと、
前記決定された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別することと、
前記撮像データ、前記カニューレ姿勢データ及び前記デバイス姿勢データに基づいて、前記決定された軌道を修正された軌道へと更新することと、
前記修正された軌道に従って前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
を含む、方法。
[態様14]
前記方法はさらに、
前記撮像データに基づいて前記患者の皮下にある標的血管の姿勢を識別及び決定することと、
前記標的血管の前記決定された姿勢に基づいて前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
を含む、態様13に記載の方法。
[態様15]
前記プローブから撮像データを受信することは、複数の角度から撮像データを受信することを含み、前記方法は、
前記複数の角度から取得された前記受信撮像データから3次元撮像データを構築することと、
前記複数の角度から取得された前記撮像データから、前記患者の皮下にある前記標的位置の前記姿勢を決定することと、
のうち少なくとも1つを含む、態様13に記載の方法。
[態様16]
前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することは、前記位置決めユニットの2つ以上の自由度のそれぞれを操作するための指示を与えることを含む、態様13から15のいずれか1項に記載の方法。
[態様17]
前記決定された軌道が前記標的位置とずれてきたことを識別することは、前記デバイス位置センサから受信した前記デバイス姿勢データに基づく、態様13から16のいずれか1項に記載の方法。
[態様18]
前記カニューレ姿勢データを決定することは、コンピュータビジョンアルゴリズム又は電磁センサのうちの少なくとも1つを使用した前記撮像データに基づく、態様13から17のいずれか1項に記載の方法。
[態様19]
前記プロセッサは、前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成する力センサにさらに結合され、前記方法は、
前記力センサから前記力データを受信することと、
前記受信した力データに基づいて、前記カニューレ位置決めデータを修正された位置及び向きへと更新することと、
前記修正された位置及び向きに従って前記カニューレを操作するように前記カニューレ位置決めユニットに指示することと、
をさらに含む、態様13から18のいずれか1項に記載の方法。
[態様20]
前記プロセッサは、前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成する力センサにさらに結合され、前記方法は、
前記力データから力プロファイルを取得することと、
前記取得された力プロファイルを、カニューレ挿入成功事象、血管回転事象、アンダーシュート事象及びオーバーシュート事象のうちの1つとして分類することと、
カニューレ挿入成功事象がない場合、前記分類された事象に応じて前記カニューレを操作するように前記位置決めユニットに指示することと、
をさらに含む、態様13から18のいずれか1項に記載の方法。
[態様21]
患者の血管に針を挿入するデバイスであって、
超音波プローブの視野内に配置された前記血管の部分を撮像するように構成された前記超音波プローブと、
前記超音波プローブに取り付けられた機械的アームであって、前記針は前記機械的アームに取り付け可能であり、前記針の位置及び向きを操作するように構成された1つ又は複数のモータを備える機械的アームと、
前記機械的アームに備えられた前記1つ又は複数のモータの動作を制御するプロセッサであって、前記血管の空間パラメータに基づいて、前記1つ又は複数のモータを制御するための参照フレームを定義するように構成されるプロセッサと、
を備え、
前記機械的アームは、前記超音波プローブの視野内に配置された前記血管の前記部分に、角度をつけて前記針を挿入可能であるように構成され、
前記1つ又は複数のモータの動作を制御するプロセッサは、前記超音波プローブからの前記画像データに少なくとも部分的に基づいて自動化され、
前記デバイスは、手持ち式であるように構成される、デバイス。
[態様22]
前記機械的アームの前記モータは、少なくとも、前記針の挿入深さ及び前記針の挿入角度を操作するように構成される、態様21に記載のデバイス。
[態様23]
前記プロセッサは、前記プローブに通信可能に結合され、前記プローブから受信したデータに少なくとも部分的に基づいて、前記挿入深さを決定するように構成され、前記挿入角度は、前記挿入深さに基づいて決定される、態様22に記載のデバイス。
[態様24]
前記デバイスの動き及び向きをそれぞれ示すデータを前記プロセッサに提供するように構成された加速度計及びジャイロスコープをさらに備え、前記1つ又は複数のモータの動作を制御する前記プロセッサは、さらに前記加速度計及びジャイロスコープからの前記データに部分的に基づいて自動化される、態様21から23のいずれか1項に記載のデバイス。
[態様25]
患者の皮下の標的位置に向けてカニューレを導くデバイスであって、前記デバイスは、
標的に向けて前記カニューレの長さ方向にカニューレを操作するように構成された少なくとも1つのモータと、
前記カニューレに及ぼされる力の測定量を示す力データを生成するように構成された力センサと、
前記カニューレへの血液の流れを示す血液フラッシュデータを生成するように構成された血液フラッシュセンサと、
プロセッサであって、
前記力センサから前記力データを受信し、
前記血液フラッシュセンサから前記血液フラッシュデータを受信し、
前記力データ及び前記血液フラッシュデータの組み合わせに基づいてカニューレ挿入成功事象の発生を判断し、
カニューレ挿入成功事象が発生すると前記標的に向けて前記カニューレを操作することをやめるように前記少なくとも1つのモータに指示する
ように構成されたプロセッサと、
を備える、デバイス。
[態様26]
前記少なくとも1つのモータの動きに基づく前記カニューレの位置を示すカニューレ姿勢データを生成するように構成されたカニューレ位置センサをさらに備え、前記プロセッサは、前記力データ、前記血液フラッシュデータ及び前記カニューレ姿勢データの組み合わせに基づいて前記カニューレ挿入成功事象を判断するように構成される、態様25に記載の装置。
[態様27]
超音波撮像データを取得する撮像プローブをさらに備え、前記プロセッサは、
前記力データ、前記血液フラッシュデータ、前記超音波撮像データ及び前記カニューレ姿勢データの組み合わせに基づいてカニューレ挿入失敗事象の可能性を決定し、
前記力データ、前記血液フラッシュデータ、前記超音波撮像データ及び前記カニューレ姿勢データの組み合わせに基づいて前記カニューレ挿入失敗事象の可能性を低減するように前記カニューレへの調整を決定する
ように構成される、態様26に記載のデバイス。
[態様28]
前記プロセッサは、
前記受信した力データから力プロファイルを取得し、
前記取得された力プロファイルを、カニューレ挿入成功事象又はカニューレ挿入失敗事象のいずれかとして分類し、
カニューレ挿入失敗事象が発生すると、前記カニューレを逆方向に操作するように前記1つ又は複数のモータに指示する
ように構成される、態様25から26のいずれか1項に記載のデバイス。