(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】回路基板及びその製造方法、並びに回路基板の検査方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20241114BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20241114BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H05K3/00 X
H05K3/00 N
H05K3/00 T
H01L23/12 C
H01L23/12 D
(21)【出願番号】P 2021526883
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020024006
(87)【国際公開番号】W WO2020262198
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019122064
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 晃正
(72)【発明者】
【氏名】江嶋 善幸
(72)【発明者】
【氏名】小橋 聖治
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩二
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-014654(JP,A)
【文献】特開2012-235027(JP,A)
【文献】特開2001-358432(JP,A)
【文献】特開2011-176075(JP,A)
【文献】特開2015-158436(JP,A)
【文献】特開2005-337900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H01L 23/13
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
区画線で複数に区画された表面を有するセラミックス基板と、
前記セラミックス基板を挟んで対向するように配置された導体部と、を備え、
前記セラミックス基板は、前記区画線で画定される複数の区画部のうち、欠陥部を有する少なくとも一つの区画部のみに前記導体部に覆われる貫通孔を有し、
前記導体部は、前記区画部毎に独立して設けられる回路基板。
【請求項2】
前記表面における前記貫通孔の開口面積が1200μm
2
以上である、請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記貫通孔の少なくとも一部がテーパー状に形成されている、請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記貫通孔の少なくとも一部にろう材が充填されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項5】
前記欠陥部を有する全ての区画部に貫通孔を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項6】
セラミックスで構成される基材の表面にレーザー光を照射して前記表面を複数に区画する区画線を形成する工程と、
前記区画線で画定される複数の区画部のうち、前記セラミックスで構成される基材における欠陥部を有する少なくとも一つの区画部のみに貫通孔を設けてセラミックス基板を得る工程と、
前記セラミックス基板を挟むようにして一対の金属基板を積層して複合基板を得る工程と、
前記複合基板における前記金属基板の一部を除去して前記区画部毎に独立した導体部を形成する工程と、
前記セラミックス基板を挟む一対の前記導体部の間に電圧を印加して電流を測定する工程と、を有する、回路基板の製造方法。
【請求項7】
セラミックスで構成される基材の表面にレーザー光を照射して前記表面を複数に区画する区画線を形成する工程と、
前記区画線で画定される区画部のうち、欠陥部を有する少なくとも一つの区画部に貫通孔を設けてセラミックス基板を得る工程と、
前記セラミックス基板を挟むようにして一対の金属基板を積層して複合基板を得る工程と、
前記複合基板における前記金属基板の一部を除去して前記区画部毎に独立した導体部を形成する工程と、
前記セラミックス基板を挟む一対の前記導体部の間に電圧を印加して電流を測定する工程と、を有する、回路基板の製造方法。
【請求項8】
請求項
1~5のいずれか一項に記載の回路基板の検査方法であって、
前記セラミックス基板を挟む少なくとも一対の前記導体部の間に電圧を印加して電流を測定する工程を有する、回路基板の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミックス基板及びその製造方法、複合基板、回路基板及びその製造方法、並びに回路基板の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、電鉄、産業用機器、及び発電関係等の分野には、大電流を制御するパワーモジュールが用いられている。パワーモジュールに搭載される回路基板は、絶縁性のセラミックス基板を有する。回路基板の製造方法としては、特許文献1に記載されるような以下の技術が知られている。すなわち、表面にスクライブラインが形成されているセラミックス基板の両面に金属層を接合して複合基板を形成する。そして、複合基板の表面の金属層をエッチングにより回路パターンに加工する。その後、スクライブラインに沿って複合基板を分割し複数の回路基板を製造する。
【0003】
回路基板は、絶縁基板として耐電圧特性が要求される。耐電圧特性を検査する方法としては、例えば、大気への放電を避けるため、絶縁油等の液体中で検査する方法知られている。特許文献2では、フッ素系不活性液体中で耐電圧検査をする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-324301号公報
【文献】特開2016-183923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーモジュールの回路基板は絶縁性に優れることが求められる。ここで、回路基板において絶縁性を担うセラミックス基板に傷等の欠陥が存在すると、絶縁性が損なわれてしまうため、欠陥を極力排除する必要がある。一方で、セラミックス基板は、他の材料に比べて欠陥が発生し易いため、欠陥を完全に無くすことは困難である。このため、回路基板を形成する前の検査によって欠陥の有無を検査し、欠陥が発見されたセラミックス基板を排除する必要がある。一方で、欠陥が一つでも存在したセラミックス基板を不良品として廃棄すると、歩留まりが低下してしまう。このため、欠陥が存在するセラミックス基板を用いても、高い精度で不良部分を排除する技術があれば、回路基板の信頼性向上に大きく貢献できると考えられる。
【0006】
そこで、本開示は、高い信頼性を有する回路基板を得ることが可能なセラミックス基板及びその製造方法を提供する。また、高い信頼性を有する回路基板を得ることが可能な複合基板を提供する。また、高い信頼性を有する回路基板及びその製造方法を提供する。また、回路基板の信頼性を向上することが可能な回路基板の検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係るセラミックス基板は、区画線で複数に区画された表面を有するセラミックス基板であって、区画線で画定される少なくとも一つの区画部に、欠陥部と貫通孔とを有する。
【0008】
このようなセラミックス基板は、一つの区画部に欠陥部と貫通孔とを有することから、回路基板に加工した後であっても、欠陥部を有する区画部を高い精度で検知することができる。このため、欠陥部を有する区画部を高い精度で排除することができる。したがって、欠陥部を有するセラミックス基板を用いても、高い信頼性を有する回路基板を得ることができる。このセラミックス基板は欠陥部を有するにもかかわらず、回路基板の製造に用いることができるため、回路基板を高い歩留まりで製造することができる。すなわち、上記セラミックス基板は、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することを可能にする。
【0009】
上述のセラミックス基板の表面における貫通孔の開口面積は1200μm2以上であってよい。これによって、欠陥部を有する区画を一層高い精度で検知することができる。したがって、回路基板の製造コスト及び絶縁検査に関わる作業負担を一層低減することができる。
【0010】
上述の貫通孔の少なくとも一部はテーパー状であってよい。これによって、大きい開口を有する方の表面側からろう材が充填されやすくなる。したがって、欠陥部の検知精度を一層高めることができる。
【0011】
上述の貫通孔の少なくとも一部にろう材が充填されていてもよい。これによって、欠陥部と貫通孔を有する区画部の検知精度を一層高めることができる。なお、本開示における「貫通孔」とは、必ずしも空洞である必要はなく、セラミックス基板を構成する材料とは異なる材料が充填されていてもよい。
【0012】
本開示の一側面に係る複合基板は、互いに対向するように配置された一対の金属基板と、一対の金属基板の間に上述のいずれかに記載のセラミックス基板と、を備える。この複合基板は、上述のセラミックス基板を備えることから、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することを可能にする。
【0013】
本開示の一側面に係る回路基板は、上述のいずれかに記載のセラミックス基板と、セラミックス基板を挟んで対向するように配置された導体部と、を備え、導体部は、区画部毎に独立して設けられる。
【0014】
このような回路基板は、上述のセラミックス基板を備えることから、高い信頼性を有し、且つ高い歩留まりで製造することができる。
【0015】
本開示の一側面に係るセラミックス基板の製造方法は、セラミックスで構成される基材の表面にレーザー光を照射して表面を複数に区画する区画線を形成する工程と、区画線で画定される区画部のうち、欠陥部を有する少なくとも一つの区画部に貫通孔を設けてセラミックス基板を得る工程と、を有する。
【0016】
上記製造方法では、欠陥部を有する少なくとも一つの区画部に貫通孔を設けることから、当該区画部を高い精度で検知することができる。このため、欠陥部を有する区画部を高い精度で排除することができる。したがって、欠陥部を有するセラミックス基板を回路基板の製造に用いても、高い信頼性を有する回路基板を得ることができる。この製造方法で得られたセラミックス基板は、欠陥部を有していても回路基板の製造に用いることができるため、回路基板を高い歩留まりで製造することができる。すなわち、上述のセラミックス基板の製造方法は、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することを可能にする。
【0017】
本開示の一側面に係る回路基板の製造方法は、上述の製造方法で得られたセラミックス基板を挟むようにして一対の金属基板を積層して複合基板を得る工程と、複合基板における金属基板の一部を除去して区画部毎に独立した導体部を形成する工程と、セラミックス基板を挟む一対の導体部の間に電圧を印加して電流を測定する工程と、を有する。
【0018】
上記製造方法では、欠陥部を有する少なくとも一つの区画部に貫通孔を設けたセラミックス基板を挟む一対の導体部の間に電圧を印加して電流を測定する。このため、セラミックス基板の欠陥部と貫通孔を有する区画部を高い精度で検知することができる。このため、欠陥部を有する区画部を高い精度で排除することができる。したがって、欠陥部を有するセラミックス基板を回路基板の製造に用いても、高い信頼性を有する回路基板を製造することができる。この製造方法では、セラミックス基板が欠陥部を有していても回路基板の製造に用いることができるため、回路基板を高い歩留まりで製造することができる。すなわち、この回路基板の製造方法は、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することを可能にする。
【0019】
本開示の一側面に係る回路基板の検査方法は、上述の回路基板の検査方法であって、セラミックス基板を挟む少なくとも一対の導体部の間に電圧を印加し電流を測定する工程を有する。セラミックス基板は、欠陥部を有する少なくとも一つの区画部に貫通孔を有することから、欠陥部を有する当該区画部を高い精度で検知することができる。したがって、高い信頼性を有する回路基板を得ることができる。また、セラミックス基板が欠陥部を有していても回路基板の製造に用いることができるため、回路基板を高い歩留まりで製造することができる。すなわち、上述の回路基板の検査方法は、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することを可能にする。
【0020】
本開示の別の側面に係る回路基板の検査方法は、区画線で複数に区画された表面を有するセラミックス基板と、セラミックス基板を挟んで対向するように配置され、区画線で画定される区画部毎に独立して設けられる導体部と、備える回路基板の検査方法であって、セラミックス基板を挟む一対の導体部の間に電圧を印加し、区画部毎に電流を測定する工程を有する。
【0021】
この検査方法では、区画部毎に欠陥部の有無を簡便且つ迅速に検査することができる。このような検査を行うことによって、高い信頼性を有する回路基板を高い生産性で得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、高い信頼性を有する回路基板を得ることが可能なセラミックス基板及びその製造方法を提供することができる。また、高い信頼性を有する回路基板を得ることが可能な複合基板を提供することができる。また、高い信頼性を有する回路基板及びその製造方法を提供することができる。また、回路基板の信頼性を向上することが可能な回路基板の検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るセラミックス基板の斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る複合基板の斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る回路基板の斜視図である。
【
図6】
図6は、ろう材が塗布されたセラミックス基板の一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、表面にレジストパターンが形成された複合基板の一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、回路基板の漏れ電流を測定する検査装置の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実験例3のセラミックス基板の表面及び貫通孔を示す光学顕微鏡画像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
図1は、一実施形態に係るセラミックス基板の斜視図である。
図1のセラミックス基板100は、平板形状を有する。セラミックス基板100の表面100Aは、区画線によって複数に区画されている。表面100Aには、区画線として、第1の方向に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線L1と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線L2と、が設けられている。区画線L1と区画線L2とは互いに直交している。
【0026】
区画線L1,L2は、例えば、複数の凹みが直線状に並んで構成されていてもよいし、線状に溝が形成されていてもよい。具体的には、レーザー光で形成されるスクライブラインであってよい。レーザー源としては、例えば、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザー等が挙げられる。このようなレーザー源からレーザー光を間欠的に照射することによってスクライブラインを形成することができる。なお、区画線L1,L2は、等間隔で並んでいなくてもよく、また、直交するものに限定されない。また、直線状ではなく、曲線状であってもよいし、折れ曲がっていてもよい。
【0027】
図2は
図1のII-II線断面図であり、
図3は
図1のIII-III線断面図である。
図1、
図2及び
図3に示すように、区画部10は、区画線L1,L2で囲まれる表面100Aの領域と、当該領域に対応する裏面100Bの領域と、区画線L1,L2からセラミックス基板100の厚さ方向に平行に描かれる仮想線VL1,VL2と、で囲まれる3次元の領域で構成される。すなわち、セラミックス基板100は、区画線L1及び区画線L2によって画定される複数の区画部10を有する。複数の区画部10のうち、区画部10aは、欠陥部11と貫通孔12を有する。
【0028】
貫通孔12は、セラミックス基板100を厚さ方向に貫通しており、例えばレーザー光又はドリル等を用いて形成される。貫通孔12は円柱状にくり抜かれて形成されていてもよい。ただし、円柱形状に限定されるものではない。表面100A及び裏面100Bにおける貫通孔12の開口面積は、例えば1200μm2以上であってよく、5000μm2以上であってよく、7000μm2以上であってもよい。このように表面100A及び裏面100Bにおける開口面積が所定のサイズを有することによって、より高い精度で欠陥部11を有する区画部10aを検知することができる。貫通孔12の開口面積は、貫通孔12の形成に所要する時間を低減する観点から、0.5mm2以下であってよい。
【0029】
貫通孔12は、例えば、セラミックス基板100の厚さ方向に沿って絞られるように、一部がテーパー状に形成されていてもよい。すなわち、貫通孔12は、セラミックス基板100の厚さ方向に沿って孔径が変化するテーパー部を有していてもよい。貫通孔12の全体がテーパー状に形成されていてもよい。表面100Aと裏面100Bにおける貫通孔12の開口面積が異なる場合、貫通孔12の開口面積が大きい方からろう材を塗布すれば、ろう材の充填を円滑に行うことができる。貫通孔12にろう材が充填されていれば、より高い精度で欠陥部11を検知することができる。
【0030】
欠陥部11は、回路基板としたときに漏れ電流の要因となるものをいい、例えば、クラック、並びに、穴及び傷等の凹みが挙げられる。欠陥部11は、貫通孔12とは異なるものであり、本実施形態では表面100Aに現れている。ただし、このような形状に限定されず、例えば、表面100Aからその反対側の裏面100Bに到達するクラックであってもよい。すなわち、欠陥部は、表面100A又は裏面100Bに露出していてもよいし、露出していなくてもよい。露出していない欠陥部は、例えば非破壊検査等で検知することができる。目視等による検知の容易性の観点から、欠陥部はセラミックス基板100の表面100A、及び/又は裏面100Bに露出するものであってよい。
【0031】
図1、
図2及び
図3では、区画線L1,L2がセラミックス基板100の一方側の表面100Aのみに形成されている例を示したが、これに限定されない。すなわち、区画線L1,L2は、セラミックス基板100の表面100Aとは反対側の裏面100Bにも形成されていてもよい。また、欠陥部11と区画線L1,L2は、表面100Aに共存する必要はなく、例えば、欠陥部11は裏面100Bのみに露出していてもよいし、セラミックス基板100の内部に存在していてもよい。
【0032】
本実施形態では、複数の区画部10のうち、区画部10aのみが欠陥部11及び貫通孔12を有していたが、これに限定されない。幾つかの変形例では、セラミックス基板が、欠陥部及び貫通孔を有する区画部を2つ以上有していてもよい。また、欠陥部を有する全ての区画部に貫通孔を設ける必要はなく、例えば、表面100A及び裏面100Bにおいて目視にて検知される欠陥部を有する区画部のみに貫通孔を設けてもよい。
【0033】
セラミックス基板100は、区画部10aに欠陥部11と貫通孔12とを有することから、回路基板に加工した後であっても、欠陥部11を有する区画部10aを高い精度で検知することができる。このため、欠陥部11を有する区画部10aを高い精度で排除することができる。したがって、欠陥部11を有するセラミックス基板100を回路基板の製造に用いても、不良品の発生が抑制され、高い信頼性を有する回路基板を得ることができる。このようにセラミックス基板100は欠陥部を有するにもかかわらず、回路基板の製造に用いることができるため、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することができる。すなわち、セラミックス基板100は、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することを可能にする。
【0034】
図4は、一実施形態に係る複合基板の斜視図である。複合基板200は、互いに対向するように配置された一対の金属基板110と、一対の金属基板110の間にセラミックス基板100を備える。金属基板110としては、銅板が挙げられる。セラミックス基板100と、金属基板110の形状及びサイズは同じであってもよいし、異なっていてもよい。金属基板110とセラミックス基板100は、例えば、ろう材によって接合されていてもよい。複合基板200は、セラミックス基板100を備えることから、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで製造することを可能にする。
【0035】
複合基板200の一例としては、セラミックス基板100が窒化アルミニウムで構成され、金属基板110がアルミニウムで構成されるものが挙げられる。
【0036】
図5は、一実施形態に係る回路基板の斜視図である。回路基板300は、セラミックス基板100と、セラミックス基板100を挟んで対向配置された導体部20と、を備える。導体部20は、区画部10毎に独立して、表面100A及び裏面100B上に設けられている。すなわち、区画部10毎に、互いに対向するように配置された一対の導体部20が設けられている。セラミックス基板100の欠陥部11及び貫通孔12は、導体部20で覆われていてもよい。
【0037】
欠陥部11を有する区画部10aには、貫通孔12が設けられていることから、欠陥部11が微細なものであっても区画部10aを高い精度で検知することができる。回路基板300を区画部10毎に分割して分割基板とした後、欠陥部11を含む分割基板を排除すれば、欠陥部11を含まない分割基板を得ることができる。このように、欠陥部11を有するセラミックス基板100を回路基板の製造に用いることが可能となるうえ、高い信頼性を確保することができる。したがって、高い信頼性を有する回路基板を高い歩留まりで得ることができる。
【0038】
回路基板300の一例としては、セラミックス基板100が窒化アルミニウムで構成され、導体部20がアルミニウムで構成されるものが挙げられる。
【0039】
一実施形態に係るセラミックス基板の製造方法として、セラミックス基板100の製造方法を説明する。セラミックス基板100の製造方法は、セラミックスで構成される基材の表面にレーザー光を照射して表面を複数に区画する区画線L1,L2を形成する工程と、区画線L1,L2で画定される区画部10のうち、欠陥部11を有する区画部10aに貫通孔12を設けてセラミックス基板100を得る工程と、を有する。
【0040】
セラミックスで構成される基材としては、
図1に示すような外形を有する平板形状のセラミックス製の基板を用いる。セラミックスの種類に特に制限はなく、例えば、炭化物、酸化物及び窒化物等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0041】
基材の表面に照射するレーザー光としては、例えば、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザー等が挙げられる。このようなレーザー源からレーザー光を間欠的に照射することによって区画線L1,L2となるスクライブラインを形成する。区画線L1,L2は、後工程において、回路基板300を分割する際の切断線となる。
【0042】
次に、区画線L1,L2で画定される区画部10のうち、欠陥部11を有する区画部10aに貫通孔12を設ける。貫通孔12は、レーザー又はドリル等を用いて形成される。貫通孔12のサイズ及び形状は上述したとおりである。セラミックス基板100における欠陥部11は、目視によって検知されてもよいし、超音波探傷検査及び赤外線検査等の非破壊検査によって検知されてもよい。欠陥部11が検知されなかった場合には、貫通孔12は設けなくてよい。このようにして
図1、
図2及び
図3に示すセラミックス基板100が得られる。
【0043】
一実施形態に係る複合基板の製造方法は、上述のセラミックス基板100を用いる。すなわち、この製造方法は、セラミックス基板100を挟むようにして一対の金属基板110を積層して複合基板を得る工程を有する。金属基板110は、セラミックス基板100と同様の平板形状であってよい。一対の金属基板110は、ろう材を介して、セラミックス基板100の表面100A及び裏面100Bにそれぞれ接合される。
【0044】
具体的には、まず、セラミックス基板100の表面100A及び裏面100Bに、ロールコーター法、スクリーン印刷法、又は転写法等の方法によってペースト状のろう材を塗布する。ろう材は、例えば、銀及びチタン等の金属成分、有機溶剤、及びバインダ等を含有する。ろう材の粘度は、例えば5~20Pa・sであってよい。ろう材における有機溶剤の含有量は、例えば、5~25質量%、バインダ量の含有量は、例えば、2~15質量%であってよい。
【0045】
図6は、ろう材40が塗布されたセラミックス基板100を示す斜視図である。
図6には、表面100A側のみを示しているが、裏面100B側にも同様にろう材40が塗布されていてよい。このようにろう材40が塗布されたセラミックス基板100の表面100A及び裏面100Bに、金属基板110を貼り合わせて接合体を得る。その後、加熱炉で接合体を加熱してセラミックス基板100と金属基板110とを十分に接合させて、
図4に示す複合基板200を得る。加熱温度は例えば700~900℃であってよい。炉内の雰囲気は窒素等の不活性ガスであってよい。接合体の加熱は、大気圧未満の減圧下で行ってもよいし、真空下で行ってもよい。加熱炉は、複数の接合体を連続的に供給しながら加熱する連続式のものであってもよいし、一つ又は複数の接合体をバッチ式で加熱するものであってもよい。接合体の加熱は、接合体を積層方向に押圧しながら行ってもよい。
【0046】
一実施形態に係る回路基板の製造方法は、上述の複合基板の製造方法に引き続いて、複合基板200における金属基板110の一部を除去して区画部10毎に独立した導体部20を形成する工程を行う。この工程は、例えば、フォトリソグラフィによって行ってよい。具体的には、まず、
図7に示すように、複合基板200の表面200Aに感光性を有するレジストを印刷する。そして、露光装置を用いて、所定形状を有するレジストパターンを形成する。レジストはネガ型であってもよいしポジ型であってもよい。未硬化のレジストは、例えば洗浄によって除去する。
【0047】
図7は、表面200Aにレジストパターン30が形成された複合基板200を示す斜視図である。
図7には、表面200A側のみを示しているが、裏面200B側にも同様のレジストパターンが形成される。レジストパターン30は、表面200A及び裏面200Bにおいて、セラミックス基板100の各区画部10に対応する領域に形成される。
【0048】
レジストパターン30を形成した後、エッチングによって、金属基板110のうちレジストパターン30に覆われていない部分を除去する。これによって、当該部分にはセラミックス基板100の表面100A及び裏面100Bが露出する。その後、レジストパターン30を除去して、区画部10毎に独立した導体部20を形成する。この導体部20は、
図5に示すように、区画部10毎にセラミックス基板100を挟んで対をなすように形成される。
【0049】
以上の工程によって、
図5に示すような回路基板300が得られる。続いて、セラミックス基板100を挟む一対の導体部20の間に電圧を印加して電流を測定する工程(検査工程)を行う。具体的には、セラミックス基板100を挟む一対の導体部20の間に電圧を印加して電流を測定する。この測定は区画部10毎に行ってよい。これによって、欠陥部11及び貫通孔12を有する区画部10aが検知される。
【0050】
図8は、回路基板300の漏れ電流を測定して絶縁破壊を検査する検査装置の一例を模式的に示す図である。検査装置400は、交流電源60と、交流電源60に接続された耐電圧試験器50とを備える。耐電圧試験器50の一方の端子は、区画部10に形成された一対の導体部20の一方に接触する導電性支持部72aと電気的に接続される。耐電圧試験器50の他方の端子は、溶媒76を貯留する絶縁性溶媒槽77内に配置される電極70を介して、一対の導体部20の他方に接触する導電性支持部72bと電気的に接続される。すなわち、電流が測定される区画部10においてセラミックス基板100を挟んで対向する一対の導体部20は、それぞれ、導電性支持部72a及び導電性支持部72bと接触している。
【0051】
電極70は、絶縁性溶媒槽77の底面及び一側面に沿って配置されている。電極70は、
図8に示されるように、鉛直方向断面でみたときにL字型形状を有している。電極70には、導電性支持部72bに隣接して、2つの絶縁性支持部74が設置されている。2つの絶縁性支持部74は、導電性支持部72bと電気的に接続する導体部20に隣り合って配置される2つの導体部20とそれぞれ接し、回路基板300を溶媒76中において支持している。
【0052】
電極70及び導電性支持部72a,72bとしては、例えば無酸素銅製のものを用いることができる。溶媒76としては、例えばフッ素系不活性液体が用いることができる。耐電圧試験器50としては市販のものを用いることができる。絶縁性支持部74と導電性支持部72bの位置は、測定対象の区画部10の位置に応じて、入れ替え可能に構成される。導電性支持部72aの位置も、導電性支持部72bの位置に合わせて移動可能に構成される。このような検査装置400を用いることによって、区画部10毎に、一対の導体部20に電圧を印加して漏れ電流を測定することができる。
【0053】
検査装置400によって、セラミックス基板100を挟む一対の導体部20の間に例えば1500~6000Vの電圧を印加し、耐電圧試験器50において漏れ電流の有無を測定する。欠陥部11を有する区画部10aは貫通孔12を有することから、低い電圧でも漏れ電流が生じる。したがって、所定の電圧における漏れ電流の有無を検知する検査方法によって、区画部10aを高精度で検知することができる。
【0054】
このような検査装置400を用いて、セラミックス基板100を挟む一対の導体部20の間に電圧を印加し、区画部10毎に電流を測定する工程を有する検査方法を行うことができる。なお、検査装置は
図8の構成に限定されず、少なくとも一つの区画部において対向配置された一対の導体部の間に電圧を印加したときの当該導体部の間を流れる電流を測定可能な検査装置であれば、特に制限なく用いることができる。
【0055】
検査装置400は、貫通孔12が形成されたセラミックス基板100を備える回路基板300の検査に限られず、区画部毎に独立した導体を備える種々の回路基板の検査に用いることができる。このような検査装置400を用いた検査方法であれば、セラミックス基板に含まれる欠陥部がある区画部を高い精度で簡便に検知することができる。このため、回路基板300の信頼性と生産性を向上することができる。
【0056】
検査された回路基板300は、区画線L1,L2に沿って切断され、複数の分割基板に分割される。貫通孔を有する分割基板を排除し、貫通孔を有しない分割基板を例えばパワーモジュール等に用いる部品として製品化又は半製品化すれば、欠陥を有する分割基板を部品として用いることが回避され、部品としての信頼性を高くすることができる。分割基板における導体部20には、例えば電子部品が実装される。
【0057】
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、各区画部10に設けられる導体部20の形状は同一である必要はなく、区画部10毎に異なる形状を有していてもよい。また例えば、セラミックス基板100を挟んで対をなす導体部20への電圧の印加及び電流の測定を一対ずつ行うのではなく、複数対を同時に行ってもよい。
【0058】
回路基板300における導体部20には任意の表面処理を施してもよい。例えば、ソルダーレジスト等の保護層で導体部20の表面の一部を被覆し、導体部20の表面の他部にめっき処理を施してもよい。このような表面処理は、検査装置400を用いた検査を行う前に行ってもよいし、検査を行った後に行ってもよい。
【実施例】
【0059】
(実験例1~3)
窒化ケイ素製のセラミックス基板の表面にレーザー光を照射して区画線を形成し、縦方向及び横方向に沿ってそれぞれ3つに区画した。これよって、合計で9つの区画部を有するセラミックス基板を準備した。このセラミックス基板は9つの区画部の外側に、幅5mmの外周部を有していた。各区画部のサイズは、縦×横×厚さ=41mm×41mm×0.32mmであった。ファイバーレーザ(波長:1064nm)を用いて、セラミックス基板の中央の区画部に貫通孔を形成した。レーザー光を照射する領域を変えることによって、サイズが互いに異なる貫通孔を有する3種類のセラミックス基板を、それぞれ5枚ずつ作製した。各セラミックス基板の表面及び裏面における貫通孔の開口形状は円形であり、そのサイズ(直径)は、表1に示すとおりであった。
図9は、実験例3のセラミックス基板の表面及び貫通孔を示す光学顕微鏡画像の写真である。
【0060】
セラミックス基板の表面及び裏面に、Agを主成分として含有するろう材をスクリーン印刷法でそれぞれ塗布した。2枚の銅板(厚さ0.8mm)で、各セラミックス基板を挟むようにして、銅板とセラミックス基板を積層した。これによって、銅板、セラミックス基板及び銅板をこの順で備える接合体を作製した。
【0061】
真空接合炉の炉内に5組の接合体を積層し、積層体として配置した。この積層体の上に銅板を載せ、5g/cm2で加圧しながら、810℃の加熱温度で20分間加熱して、銅板とセラミックス基板とを十分に接合させた。このとき、炉内は1×10-3Pa以下に減圧した状態で加熱した。このようにして一対の銅板とその間にセラミックス基板を備える複合基板を作製した。
【0062】
図8に示すような検査装置を用いて、JIS C2110-1:2010に準拠して作製した各複合基板の耐電圧検査を行った(n=5)。この検査には、株式会社計測技術研究所製のAC20kV耐電圧試験器(型式:7473)を用いた。溶媒としては、パーフルオロカーボン(スリーエムジャパン株式会社製、商品名:フロリナート、型番:FC-3283)を用いた。絶縁性溶媒槽77、電極70、導電性支持部72a,72b、及び絶縁性支持部74として、大西電子株式会社製の検査治具を用いた。電極70は無酸素銅製のものを、導電性支持部72a,72bは炭素工具鋼鋼材(SK材)にロジウムめっきが施されたものを、それぞれ用いた。
【0063】
検査装置に複合基板をセットした状態で、0.12kV/秒の速さで4.2kVまで電圧を昇圧した。接触電流の閾値を9.99mAとし、この閾値以上の電流が流れた場合を絶縁破壊と判定した。絶縁破壊と判定されたときの電圧を、表1の「耐電圧検査結果」の欄に示す。
【0064】
【0065】
実験例1の貫通孔は円柱状を有していた。一方、実験例2,3の貫通孔は、セラミックス基板の内部に、セラミックス基板の厚さ方向に沿って孔径が変化するテーパー部を有していた。表1中、「<0kV」とは、電圧の印加を開始した直後に漏れ電流値が上記所定値以上になったことを示している。実験例1のNo.3では、表1に記載の電圧においてセラミックス基板が絶縁破壊した。いずれの実験例も電圧が4.2kVに到達する前に、漏れ電流値が上記所定値以上となった。この結果から、貫通孔を形成することによって、欠陥部を有する基板(区画部)を高い精度で検知できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示によれば、高い信頼性を有する回路基板を得ることが可能なセラミックス基板及びその製造方法が提供される。また、高い信頼性を有する回路基板を得ることが可能な複合基板が提供される。また、高い信頼性を有する回路基板及びその製造方法が提供される。また、回路基板の信頼性を向上することが可能な回路基板の検査方法が提供される。
【符号の説明】
【0067】
10,10a…区画部、11…欠陥部、12…貫通孔、20…導体部、30…レジストパターン、50…耐電圧試験器、60…交流電源、70…電極、72a,72b…導電性支持部、74…絶縁性支持部、76…溶媒、77…絶縁性溶媒槽、100…セラミックス基板、110…金属基板、100A…表面、100B…裏面、110…金属基板、200…複合基板、200A…表面、200B…裏面、300…回路基板、400…検査装置。