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特許7588080抗末梢リンパ節アドレッシン抗体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】抗末梢リンパ節アドレッシン抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20241114BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241114BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241114BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
A61P37/02
A61P3/10
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 Y
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021547170
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020017879
(87)【国際公開番号】W WO2020167912
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】62/804,797
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503146324
【氏名又は名称】ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】The Brigham and Women’s Hospital, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】アブディ,レザ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】Journal of biological chemistry,2010年,Vol.285,p.40864-40878
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00
C12N 1/00
C12N 5/10
C12P 21/00
A61K 39/395
A61K 47/68
A61P 37/02
A61P 3/10
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2および配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR2および配列番号10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項2】
(i) 前記VHが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、
(ii) 前記VLが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するか、
(iii) 前記VHが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むか、
(iv) 前記VLが、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むか、または
(v) 前記VHが配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記VLが配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域(VH)および配列番号7のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域(VL)を含む、抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項4】
記抗PNAd抗体がヒト由来重鎖および軽鎖定常領域を含むものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項5】
前記抗体はアイソタイプ免疫グロブリンミュー(IgM)の重鎖定常領域を含むものである、請求項4に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項6】
診断剤にコンジュゲートされている、請求項1からのいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項7】
療剤にコンジュゲートされている、請求項1からのいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項8】
前記治療剤が、細胞傷害性薬剤、薬物または薬物含有高分子粒子である、請求項7に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項9】
前記薬物は、タクロリムス、ミコフェノール酸、モフェチル、シクロスポリン、シロリムス、フィンゴリモド、ミリオシン、シクロホスファミド、副腎皮質ステロイド、ラパマイシン、ミコフェノール酸、モフェチル、チェックポイント阻害剤、抗炎症剤、化学療法剤、抗CD3抗体、抗CD25抗体、抗IL6抗体、抗CTLA-4抗体、アダリムマブ、抗CD52抗体、代謝拮抗物質、アルキル化剤、アントラサイクリン、抗生物質もしくは有糸分裂阻害剤であるか、または免疫抑制薬、免疫調節性薬もしくは細胞傷害性薬剤である、請求項8に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項11】
プロモーターに作動可能に連結した、請求項10に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項12】
請求項10に記載のポリヌクレオチドまたは請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片を生成する方法であって、(a)請求項12に記載の宿主細胞を培養すること、および(b)前記培養から前記抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片を単離することを含む方法。
【請求項14】
請求項1からのいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項7から9のいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
ヒト対象においてリンパ球媒介性免疫応答を抑制する又はリンパ球媒介性炎症を処置するための、請求項14から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ト対象において自己免疫性障害の進行を処置または遅延するための、請求項14から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ト対象においてPNAd発現性悪性腫瘍の転移を処置または低減するための、請求項14から16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記自己免疫性障害が、1型糖尿病または関節リウマチである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記PNAd発現性悪性腫瘍が、リンパ腫、乳癌又は膵臓癌である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
ト対象において自己免疫性障害またはPNAd発現性悪性腫瘍の転移を診断する方法において使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片を含む組成物
【請求項23】
前記自己免疫性障害が、1型糖尿病または関節リウマチである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記PNAd発現性悪性腫瘍が、リンパ腫、乳癌又は膵臓癌である、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
ト対象に診断剤または治療剤を送達する方法において使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の抗PNAd抗体またはそのPNAd結合性断片を含む組成物であって、前記診断剤又は治療剤が、前記ヒト対象における1つもしくは複数のリンパ組織または慢性炎症の1つもしくは複数の部位に送達される、前記組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月13日に出願された米国仮特許出願第62/804,797号の利益を主張する。前記のものの全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体、その抗原結合性断片およびそのコンジュゲートおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)は、マウスおよびヒト両方において高内皮細静脈(HEV)で構成的に発現される組織特異的内皮細胞抗原である。PNAdは、内皮シアロムチンのグループ、つまりCD34、ポドカリキシン(podocalixin)、グリコシル化依存性細胞接着分子1(GlyCAM-1)および200kDaのシアル酸付加糖タンパク質(sgp200)であり、そのいずれも、硫酸化シアリルルイスX(sLeX)様モチーフを含む(von Andrian, U.H. & Mackay, C.R., N Engl J Med 343: 1020-1034, 2000)。PNAdは、末梢リンパ節の細静脈内皮、扁桃腺、炎症またはリンパ腫病変の部位のほとんどすべてで発現されるが、眼付属器、甲状腺、唾液腺および肺の正常組織では発現されない(Liu Y, J Clin Exp Hematopathol 44 (1): 33-37, 2004)。PNAdは、炎症性病変へのリンパ球ホーミングにおいて、およびこれらの臓器のMALTリンパ腫組織におけるリンパ腫細胞の生物学的挙動において重要な役割を果たす。
【0004】
炎症は、関節リウマチなどの古典的な免疫媒介性疾患から癌まで、極めて多数の一般的な疾患において重要な病原性プロセスである。白血球が、移植された臓器に浸潤する移植片拒絶から、リンパ球が脳に浸潤する多発性硬化症、白血球が脂質誘導性微小血管性および大血管性傷害を悪化させるアテローム斑まで、免疫または炎症反応がこれらの疾患の発生の中心である。過去10年間に、新規免疫抑制薬の開発において大きな進歩が見られた。これらの薬剤は、臓器移植の成功を確実にすることにおいて極めて重要な役割を果たしており、命を脅かす免疫媒介性疾患を有する患者のアウトカムを大きく改善してきた。しかし、免疫抑制剤の使用は、選択性の欠如および頻繁に観察される大きな薬物有害反応によって妨げられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体またはそのPNAd結合性断片およびそれを使用する方法を提供する。
【0006】
一態様では、本開示は、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2および配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)ならびに(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR2および配列番号10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体またはそのPNAd結合性断片を特徴とする。
【0007】
一部の実施形態では、VHは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むVHフレームワーク領域1(FR1)、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVH FR2、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVH FR3および配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むVH FR4を含む。
【0008】
一部の実施形態では、VLは、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むVL FR1、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVL FR2、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むVL FR3および配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むVL FR4を含む。
【0009】
一部の実施形態では、VHは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VLは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、マウス抗体である。一部の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。
【0011】
一部の実施形態では、抗体またはそのPNAd結合性断片は、ヒト由来重鎖および軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体またはそのPNAd結合性断片は、アイソタイプ免疫グロブリンミュー(IgM)の重鎖定常領域を含む。
【0012】
一部の実施形態では、PNAd結合性断片は、一本鎖Fv断片(scFv)、F(ab’)断片、F(ab)断片およびF(ab’)2断片からなる群から選択される。
【0013】
一部の実施形態では、抗体またはそのPNAd結合性断片は、薬剤にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、薬剤は、造影剤、細胞傷害性薬剤または薬物である。一部の実施形態では、薬剤は、薬物含有高分子粒子である。一部の実施形態では、薬物含有高分子粒子は、免疫抑制薬または免疫調節薬を含む。一部の実施形態では、薬剤へのコンジュゲーションは、共有結合によるコンジュゲーションである。一部の実施形態では、薬剤へのコンジュゲーションは、リンカーを介する。一部の実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコールである。
【0014】
また、前記の抗体またはそのPNAd結合性断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも本明細書において提供される。
【0015】
重鎖可変領域(VH)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが、本明細書においてさらに提供され、VHは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に示される核酸配列を含む。一部の例では、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0016】
さらに、重鎖をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが、本明細書において提供され、重鎖は、重鎖可変領域(VH)を含み、VHは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1に示される核酸配列を含む。一部の例では、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0017】
また、軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも本明細書において提供され、VLは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号6に示される核酸配列を含む。一部の例では、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0018】
また、軽鎖をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドも本明細書において提供され、軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)を含み、VLは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号6に示される核酸配列を含む。一部の例では、ポリヌクレオチドは、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0019】
また、(i)プロモーターに作動可能に連結した配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むVHまたは(ii)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むVLをコードする核酸配列を含む前記のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含むベクターも本明細書において提供される。
【0020】
また、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むVHを含む重鎖をコードする核酸配列を含む前記のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含むベクターも本明細書において提供される。
【0021】
また、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むVLを含む軽鎖をコードする核酸配列を含む前記のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含むベクターも本明細書において提供される。
【0022】
また、i)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むVHを含む重鎖をコードする核酸配列を含む前記のポリヌクレオチドに作動可能に連結した第1のプロモーター、および(ii)配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むVLを含む軽鎖をコードする核酸配列を含む前記のポリヌクレオチドに作動可能に連結した第2のプロモーターを含むベクターも本明細書において提供される。
【0023】
また、プロモーター(複数可)に作動可能に連結した前記のポリヌクレオチドのうち1つまたは複数を含む宿主細胞も、本明細書において提供される。
【0024】
また、前記のベクターのうち1つまたは複数を含む宿主細胞も、本明細書において提供される。
【0025】
また、抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体またはそのPNAd結合性断片を生成する方法であって、(a)前記の宿主細胞を培養すること、および(b)抗体を培養物から単離することを含む方法が、本明細書において提供される。
【0026】
また、前記の抗体またはそのPNAd結合性断片の治療上有効量と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が、本明細書において提供される。
【0027】
また、それを必要とする対象においてリンパ球媒介性免疫応答を抑制する方法であって、対象に前記の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法も、本明細書において提供される。
【0028】
また、それを必要とする対象において自己免疫性糖尿病を処置する、またはその進行を遅延する方法であって、対象に前記の医薬組成物の治療上有効量を投与する方法も、本明細書において提供される。
【0029】
また、それを必要とする対象においてリンパ球媒介性炎症を処置する方法であって、対象に前記の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法も、本明細書において提供される。
【0030】
また、それを必要とする対象において、末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)発現性悪性腫瘍を処置する、またはその転移を低減する方法であって、対象に前記の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法も、本明細書において提供される。一部の実施形態では、PNAd発現性悪性腫瘍は、リンパ腫である。一部の実施形態では、PNAd発現性悪性腫瘍は、癌である。一部の例では、癌は、乳癌である。
【0031】
また、薬物をそれを必要とする対象に送達する方法であって、対象に前記の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法が本明細書において提供され、対象に送達される薬物は、医薬組成物の抗体またはそのPNAd結合性断片にコンジュゲートされた薬物含有高分子粒子の薬物である。一部の実施形態では、薬物は、対象中の1つもしくは複数のリンパ組織または1つもしくは複数の慢性炎症部位へ送達される。
【0032】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明において示されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1A~Bは、マウスおよびヒトにおいてMHA112モノクローナル抗体(mAb)が高内皮細静脈(HEV)を認識する図である。(図1A)免疫蛍光染色は、MHA112 mAbによるHEV染色の低倍率像を示した。スケールバー、500μm。(図1B)免疫蛍光染色は、マウスリンパ節(LN)およびヒト扁桃腺におけるMHA112 mAbによるHEV染色の高倍率像を示した。スケールバー、100μm。
図2図2は、MHA112 mAbアイソタイピングを示す図である。MHA112 mAbアイソタイプは、アイソタイピング酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定された。吸光度は、450nmで記録された。
図3図3A~Bは、MHA112 mAbがコンジュゲートされたナノ粒子(NP)のLNへの輸送を示す図である。(図3A)蛍光像は、種々のLNにおけるMHA112 mAbがコンジュゲートされたNP(MHA112-IR800-NP)の分布を示した。NPのみ(IR800-NP)が陰性対照として使用され、MECA79-NP(MECA79_IR800-NP)が陽性対照として使用された。(図3B)腋窩LNにおけるMECA79-NPおよびMHA112-NP分布の免疫蛍光分析。HEVは、緑色で染色され、NP中のIR800色素は赤で染色された。スケールバー、50μm。
図4図4は、MHA112 mAbは、LNへのT細胞ホーミングを遮断し、MECA79 mAbはしなかったことを示す、対照(PBS、MECA79)およびMHA112 mAb処置群におけるLNへの標識されたT細胞ホーミングのフローサイトメトリープロファイリング。3匹のマウス/群(n=3)から得たデータは、標識されたT細胞のパーセンテージの変化を示し、棒グラフにまとめられた。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、t検定。n.s.:有意ではない。
図5図5は、MHA112配列を示す図である。MHA112重鎖および軽鎖可変領域(それぞれ、VHおよびVL)の配列が示されており、フレームワーク領域(FR1~FR4)およびIMGT相補性決定領域(CDR1~CDR3)が描かれている。VH=配列番号2、VH FR1~FR4=配列番号11~14、それぞれ、VH CDR1~3=配列番号3~5、それぞれ、VL=配列番号7、VL FR1~FR4=配列番号15~18、それぞれ、VL CDR1~3=配列番号3~5、それぞれ。
図6図6は、ELISAによるMECA79およびMHA112 mAbの結合親和性の決定を示す図である。CHO-PNAd細胞に対してMECA79およびMHA112の種々の濃度を試験した。Kdを算出した。MHA112は、MECA79よりも良好な結合親和性を有するとわかった。
図7図7は、乳房腫瘍成長曲線が、PBSを用いて処置した対照群(n=12)よりも、遊離タキソールおよびMHA112-タキソール(160ngの遊離タキソールに等しい、i.v.2日毎、移植後33日間)(n=12)を用いて処置したBALB/c-WTマウスにおいて、4T1マウス乳房腫瘍の有意に遅い成長を実証することを示す図である。データは、平均+/-SDとして表されている。**P<0.01、***P<0.001。x軸上の三角は、注射点を示す。MHA112-タキソール群は、遊離タキソールおよび未処置群と比較して、有意に小さい大きさの腫瘍を有していた。
図8図8は、乳房腫瘍流入領域リンパ節(DLN)の蛍光顕微鏡写真が、MHA112-タキソール群では、対照または遊離タキソール群よりもHEVおよびLYVE1+リンパ管(緑色)があまり広がらないことを示す図である。汎サイトケラチン(赤色)は、TDLNにおける4T1転移を示す。スケールバー:100μm。MHA112-タキソール群は、遊離タキソールおよび未処置群と比較して、有意に少ない腫瘍転移性ならびにリンパの広がりを示した。
図9図9は、乳房腫瘍DLNの蛍光顕微鏡写真が、MHA112-タキソール群における、対照または遊離タキソール群よりもあまり重症ではない線維症(コラーゲンI、コラーゲンIVおよびラミニンによって示されるような)を示す図である。スケールバー:100μm。MHA112-タキソール群は、遊離タキソールおよび未処置群と比較して、有意に小さいリンパ節線維症を示した。
図10図10は、対照および遊離タキソール群と比較した、MHA112-タキソールを受けた4T1乳房腫瘍肝臓門脈転移モデル(n=5)の有意に長い生存を示す生存曲線を示す図である。***P<0.001。三角は、注射日を表す。
図11図11は、膵臓におけるpanc02膵臓腫瘍の生存曲線が、MHA112-タキソール(n=5)の、対照および遊離タキソール(n=5)よりも有意に長い生存を示す図である。三角は、注射点を示す。***P<0.001
【発明を実施するための形態】
【0034】
I.定義
「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語は、その実体のうち1つまたは複数を指すということは留意されるべきであり、例えば、「1つの抗体」は1つまたは複数の抗体を表すと理解される。そのようなものとして、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において同義的に使用され得る。
【0035】
本明細書において、「ポリペプチド」という用語は、単数形の「ポリペプチド」ならびに複数形の「ポリペプチド」を包含するものとし、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を指し、特定の長さの生成物を指すわけではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2個以上のアミノ酸の鎖(単数または複数)を指すために使用される任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれを同義的に使用され得る。
【0036】
「ポリペプチド」という用語はまた、制限するものではないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化を含む、ポリペプチドの発現後修飾、タンパク質分解切断または天然に存在しないアミノ酸による修飾の生成物も指すものとする。ポリペプチドは、自然の生物学的供給源に由来する場合も、組換え技術によって生成される場合もあるが、必ずしも、指定された核酸配列から翻訳されるわけではない。化学合成によってを含む、任意の方法で作製され得る。
【0037】
本明細書において記載されるポリペプチドは、約3個もしくはそれより多く、5個もしくはそれより多く、10個もしくはそれより多く、20個もしくはそれより多く、25個もしくはそれより多く、50個もしくはそれより多く、75個もしくはそれより多く、100個もしくはそれより多く、200個もしくはそれより多く、500個もしくはそれより多く、1,000個もしくはそれより多く、または2,000個もしくはそれより多くのアミノ酸の大きさであり得る。ポリペプチドは、定義された三次元構造を有する場合があるが、それらはこのような構造を必ずしも有さない。定義された三次元構造を有するポリペプチドは、フォールディングされたと呼ばれ、定義された三次元構造を有さないが、むしろ多数の異なるコンホメーションをとることができるポリペプチドは、フォールディングされていないと呼ばれる。本明細書において、糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基、例えば、セリン残基またはアスパラギン残基の酸素含有または窒素含有側鎖を介してタンパク質に結合される少なくとも1つの炭水化物部分にカップリングされたタンパク質を指す。
【0038】
「単離」ポリペプチドまたはその断片、バリアントまたは誘導体は、その天然環境にはないポリペプチドと意図される。特定のレベルの精製が必要であるわけではない。例えば、単離ポリペプチドは、その天然または自然環境から取り出される場合がある。任意の適した技術によって、分離、分画または部分的もしくは実質的に精製されている天然または組換えポリペプチドと同様に、宿主細胞において発現された、組換え生成されたポリペプチドおよびタンパク質は、本明細書において記載される目的上、単離されているものと考えられる。
【0039】
また、前述のポリペプチドの断片、誘導体、類似体またはバリアントおよびその任意の組合せもポリペプチドとして含まれる。「断片」、「バリアント」、「誘導体」および「類似体」という用語は、本明細書におい記載される抗体または抗体ポリペプチドに言及する場合、対応する天然結合性分子、抗体またはポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持する任意のポリペプチドを含む。本明細書において記載されるポリペプチドの断片は、本明細書において別の場所で論じられる特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解断片ならびに欠失断片を含む。本明細書において記載される抗体および抗体ポリペプチドのバリアントは、上記のような断片およびまたアミノ酸置換(例えば、保存的または非保存的アミノ酸置換)、欠失または挿入によって変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。バリアントは、天然に存在する場合も、天然に存在しない場合もある。天然に存在しないバリアントは、技術分野で公知の突然変異誘発技術を使用して生成され得る。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換(例えば、保存的または非保存的アミノ酸置換)、欠失または付加を含み得る。本明細書において記載されるPNAd特異的結合性分子、例えば、抗体および抗体ポリペプチドの誘導体は、天然ポリペプチドでは見られない追加の特徴を示すように変更されているポリペプチドである。例として、融合タンパク質が挙げられる。バリアントポリペプチドはまた、「ポリペプチド類似体」と本明細書において呼ばれることがある。本明細書において、結合性分子またはその断片、抗体または抗体ポリペプチドの「誘導体」とは、1つまたは複数の、機能的側鎖の反応によって化学的に誘導体化された残基を有する対象ポリペプチドを指す。また、20種の標準アミノ酸の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するものも「誘導体」として含まれる。例えば、4-ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換され得る、5-ヒドロキシリシンは、リシンと置換され得る、3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンと置換され得る、ホモセリンは、セリンと置換され得る、およびオルニチンは、リシンと置換され得る。
【0040】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単数形の核酸ならびに複数形の核酸を包含するものとし、単離された核酸分子または構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のリン酸ジエステル結合または従来のものではない結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)において見られるものなどのアミド結合)を含み得る。「核酸」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えば、DNAまたはRNA断片を指す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドとは、その天然環境から取り出されている核酸分子、DNAまたはRNAが意図される。例えば、ベクター中に含有される抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本明細書において記載される目的上、単離されたと考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例として、異種宿主細胞中で維持された組換えポリヌクレオチドまたは溶液中の精製された(部分的にまたは実質的に)ポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたRNA分子として、本明細書において記載されるポリヌクレオチドのin vivoまたはin vitro RNA転写物が挙げられる。本明細書において記載される単離されたポリヌクレオチドまたは核酸として、合成によって生成されたこのような分子がさらに挙げられる。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどの調節エレメントであり得る、またはそれを含み得る。
【0041】
本明細書において、「コーディング領域」とは、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の部分である。「停止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)は、アミノ酸に翻訳されないが、コーディング領域の一部であると考えられる場合があるが、任意のフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどは、コーディング領域の一部ではない。本明細書において記載される2つ以上のコーディング領域が、単一ポリヌクレオチド構築物中に、例えば、単一ベクター上に、または別個のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、別個の(異なる)ベクター上に存在する場合がある。さらに、任意のベクターが、単一コーディング領域を含有する場合も、2つ以上のコーディング領域を含む場合もあり、例えば、単一ベクターは、免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別個にコードする場合がある。さらに、本明細書において記載されるベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、結合性分子、抗体またはその断片、バリアントまたは誘導体をコードする核酸に融合された、または融合されていない異種コーディング領域をコードし得る。異種コーディング領域として、制限するものではないが、特殊化されたエレメントまたはモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチドまたは異種機能性ドメインが挙げられる。
【0042】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸は、DNAである。DNAの場合には、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、普通、1つまたは複数のコーディング領域と作動可能に会合しているプロモーターおよび/または他の転写または翻訳制御エレメントを含み得る。作動可能な会合は、遺伝子産物の発現を調節配列(複数可)の影響または制御下に配置するような方法で、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドのコーディング領域が、1つまたは複数の調節配列と会合している場合である。2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコーディング領域およびそれと会合されたプロモーター)は、プロモーター機能の誘導が、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合に、および2つのDNA断片間の連結の性質が、発現調節配列の、遺伝子産物の発現を指示する能力に干渉しない、またはDNA鋳型の転写される能力に干渉しない場合に、「作動可能に会合している」または「作動可能に連結されている」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写を達成可能であった場合に、ポリペプチドをコードする核酸と作動可能に会合しているであろう。プロモーターは、所定の細胞のみにおいてDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーターに加えて他の転写制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナルを、ポリヌクレオチドと作動可能に会合させて、細胞特異的転写を指示することができる。適したプロモーターおよび他の転写制御領域は、本明細書において開示されている。
【0043】
様々な転写制御領域が当業者に公知である。これらとして、制限するものではないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、それだけには限らないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメント(最初期プロモーター、イントロンAとともの)、サルウイルス40(初期プロモーター)およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)が挙げられる。他の転写制御領域として、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来するものならびに真核細胞において遺伝子発現を制御可能である他の配列が挙げられる。追加の適した転写制御領域として、組織特異的プロモーターおよびエンハンサーならびにリンホカイン誘導プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
【0044】
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者には公知である。これらとして、それだけには限らないが、リボソーム結合部位、翻訳開始および終結コドンおよびピコルナウイルス由来するエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位またはIRES、CITE配列とも呼ばれる)が挙げられる。
【0045】
一部の実施形態では、本明細書において記載されるポリヌクレオチドは、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態のRNAである。
【0046】
本明細書において記載されるポリヌクレオチドおよび核酸コーディング領域は、本明細書において記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌またはシグナルペプチドをコードする追加のコーディング領域と会合している場合がある。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されたタンパク質は、シグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有し、これは、ひとたび、成長中のタンパク質鎖の粗面小胞体を越える排出が開始されると、成熟タンパク質から切断される。当業者ならば、脊椎動物細胞によって分泌されたポリペプチドは、一般に、ポリペプチドのN末端に融合されたシグナルペプチドを有し、これは、完全なまたは「全長」ポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの分泌されたまたは「成熟した」形態をもたらすことは承知している。一部の実施形態では、天然シグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または軽鎖シグナルペプチドまたはそれと作動可能に会合された、ポリペプチドの分泌を指示する能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能的誘導体が使用され得る。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列と置換され得る。
【0047】
別に示されない限り、「障害」および「疾患」という用語は、本発明者において同義的に使用される。
【0048】
「結合性分子」とは、本明細書で使用される場合、主に、抗体およびその断片に関するが、それだけには限らないが、ホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合複合体(MHC)分子、シャペロン、例えば、熱ショックタンパク質(HSP)ならびに細胞間接着分子、例えば、カドヘリン、インテグリン(intergrin)、C型レクチンおよび免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーを含む、PNAdに結合する他の非抗体分子を指す場合もある。したがって、以下の実施形態のほとんどは、単に明確性のために、本開示の範囲を制限することなく、治療薬および診断薬の開発のための、結合分子の特定の実施形態を表す抗体および抗体様分子に関して論じられている。
【0049】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書において同義的に使用される。抗体または免疫グロブリンは、少なくとも重鎖の可変ドメインを含み、普通、少なくとも重鎖および軽鎖の可変ドメインを含む、PNAd結合性分子である。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は、比較的十分に理解されている、例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照されたい。
【0050】
以下でより詳細に論じられるように、「免疫グロブリン」という用語は、生化学的に区別され得るポリペプチドの種々の広いクラスを含む。当業者ならば、重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)に分類され、それらの間にいくつかのサブクラスを有する(例えば、γ1~γ4)ということは理解するであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA IgGまたはIgEと決定するものは、この鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、十分に特性決定されており、機能特殊化を付与するとわかっている。これらのクラスおよびアイソタイプ各々の修飾されたバージョンは、本開示を考慮して当業者には容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスは、明確に本開示の範囲内であり、以下の議論は一般に免疫グロブリン分子のIgGクラスを対象とする。IgGに関して、標準免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2つの同一軽鎖ポリペプチドおよび分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。4つの鎖は、通常、「Y」立体配置でジスルフィド結合によってつながっており、軽鎖は「Y」の口で始まり、可変領域を通って続く重鎖を囲む。
【0051】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(κ、λ)いずれかとして分類される。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合によって結合され、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって生成される場合に、2つの重鎖の「テール」部分は、共有結合性ジスルフィド結合または非共有結合連結によって互いに結合される。重鎖では、アミノ酸配列は、Y立体配置の分岐末端のN末端から、各鎖の下部のC末端に伸びている。
【0052】
軽鎖および重鎖の両方とも、構造的および機能的相同性の領域にわけられる。「定常」および「可変」という用語は、機能的に使用される。これに関して、軽(VL)および重(VH)鎖部分の両方の可変ドメインが、抗原認識および特異性を決定するということが認められよう。逆に、軽鎖(CL)および重鎖(CH1、CH2またはCH3)の定常ドメインは、重要な生物学的特性、例えば、分泌、経胎盤性移動性、Fc受容体結合、補体結合などを付与する。慣例により、定常領域ドメインの番号付けは、それらが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにつれて増加する。N末端部分は可変領域であり、C末端部分では定常領域であり、CH3およびCLドメインは、それぞれ、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端を実際に含む。
【0053】
上記で示されるように、可変領域は、抗体が抗原上のエピトープと選択的に認識し、特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体の、VLドメインおよびVHドメインまたは相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって可変領域を形成し、これが三次元抗原結合部位を規定する。この四次抗体構造は、Yの各アームの末端に存在する抗原結合部位を形成する。より詳しくは、抗原結合部位は、VHおよびVL鎖各々の3つのCDRによって定義される。PNAdに特異的に結合する十分な構造を含有する任意の抗体または免疫グロブリン断片は、「結合性断片」または「免疫特異的断片」として本明細書において同義的に称される。
【0054】
天然に存在する抗体では、抗体は、各抗原結合性ドメイン中に存在する「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれることもある、6つの超可変領域を含み、これは、抗体が水性環境においてその三次元立体配置をとるように、抗原結合性ドメインを形成するように特異的に配置された、アミノ酸の短い、非連続配列である。「CDR」は、分子間可変性をあまり示さない4つの相対的に保存された「フレームワーク」領域または「FR」と隣接している。フレームワーク領域は、大部分は、βシートコンホメーションをとり、CDRは、ループを形成し、接続し、一部の場合にはβシート構造の一部を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間非共有結合相互作用によって正しい配向でCDRを配置するための足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成された抗原結合性ドメインが、免疫反応性抗原上のエピトープと相補的である表面を定義する。この相補性表面は、その同族エピトープへの抗体の非共有結合を促進する。それぞれ、CDRおよびフレームワーク領域を含むアミノ酸は、それらは正確に定義されているので、任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について当業者によって容易に同定され得る;その全体で参照により本明細書に組み込まれる、 “Sequences of Proteins of Immunological Interest, ” Kabat, E., et al., U.S. Department of Health and Human Services, (1983);およびChothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196 (1987), 901-917を参照されたい。
【0055】
当技術分野内で使用され、および/または受け入れられる用語の2以上の定義がある場合には、本明細書で使用される場合の用語の定義は、反対に明確に記載されない限りすべてのこのような意味を含むものとする。特定の例は、重鎖および軽鎖ポリペプチド両方の可変領域内で見られる部位を組み合わせる非連続抗原組合せ部位を説明するための「相補性決定領域」(「CDR」)という用語の使用である。この特定の領域は、参照により本明細書に組み込まれる、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequences of Proteins of Immunological Interest” (1983)ならびにChothiaおよびLeskによる、J. Mol. Biol., 196 (1987), 901-917によって記載されており、これでは、定義は、互いに比較されると、重複するアミノ酸残基またはアミノ酸残基のサブセットを含む。それにもかかわらず、抗体またはそのバリアントのCDRを指すためのいずれかの定義の適用は、本明細書において定義され、使用されるような用語の範囲内にあるものとする。上記で引用された参考文献の各々によって定義されるようなCDRを包含する適当なアミノ酸残基は、比較として表1で以下に示されている。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列および大きさに応じて変わる。当業者ならば、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が抗体のヒトIgGサブタイプの特定の超可変領域またはCDRを含むかを日常的に決定できる。
【0056】
【表1】
【0057】
Kabat et al.はまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列の番号付けシステムを定義した。当業者の1人ならば、配列自体を超える任意の実験データに頼ることなく、「Kabat番号付け」のこのシステムを任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」とは、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, “Sequence of Proteins of Immunological Interest” (1983)によって示された番号付けシステムを指す。特に断りのない限り、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体中の特定のアミノ酸残基位置の番号付けへの言及は、Kabat番号付けシステムに従うが、これは、理論的なものであり、本明細書において記載されるどの抗体にも等しく当てはまるとは限らない。例えば、第1のCDRの位置に応じて、その後のCDRがいずれかの方向に移動される場合もある。
【0058】
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、免疫特異的断片、バリアントまたは誘導体として、それだけには限らないが、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類化(primatized)、マウス化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、エピトープ結合性断片、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーによって生成された断片および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)が挙げられる。ScFv分子は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号明細書に記載されている。本明細書において記載される免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0059】
一部の実施形態では、抗体は、五価構造を有するIgMまたはその誘導体ではない。特に、特定の適用、特に治療的使用では、IgMは、その五価構造および親和性成熟を欠くために、非特異的交差反応性および極めて低い親和性を示すことが多いので、IgMは、IgGおよび他の二価抗体または対応する結合性分子よりもあまり有用ではない。
【0060】
一部の実施形態では、抗体は、五価構造を有するIgMまたはその誘導体である。
【0061】
一部の実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体ではない、すなわち、それは、血漿免疫グロブリンサンプルから得られた混合物ではなく、1種の特定の抗体種から実質的になる。
【0062】
一本鎖抗体を含む抗体断片は、可変領域(複数可)を単独で、または以下:ヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインのうちの全体もしくは部分と組み合わせて含み得る。また、可変領域(複数可)の、ヒンジ領域、CH1、CH2およびCH3ドメインとの任意の組合せも含むPNAd結合性断片も本明細書において提供される。本明細書において記載される抗体またはその免疫特異的断片は、鳥および哺乳動物を含む任意の動物起源のものであり得る。一部の実施形態では、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマまたはニワトリ抗体である。別の実施形態では、可変領域は、起源がコンドリクトイド(condricthoid)であり得る(例えば、サメに由来する)。
【0063】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトから単離されたヒトモノクローナル抗体である。任意選択で、ヒト抗体のフレームワーク領域は、データベース中の関連ヒト生殖系列可変領域配列に従ってアラインされ、採用される;例えば、MRCタンパク質工学センター(ケンブリッジ、英国)によって主催されるVbase(vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk)を参照されたい。例えば、真の生殖系列配列から逸脱する可能性があると考えられるアミノ酸は、クローニングプロセスの間に組み込まれたPCRプライマー配列による場合がある。ファージディスプレイされた抗体ライブラリーまたは異種マウスから得た一本鎖抗体断片(scFv)などの人工的に作製されたヒト様抗体と比較して、本明細書において記載されるヒトモノクローナル抗体は、(i)動物代用物ではなくヒト免疫応答を使用して得られること、すなわち、抗体が、ヒト身体においてその関連コンホメーションで自然のPNAdに応じて作製されていること、(ii)個体を保護していたことまたはPNAdの存在について少なくとも有意である、および(iii)抗体がヒト起源のものであるため、自己抗原に対する交差反応性のリスクが最小化されることを特徴とする。したがって、本明細書で使用される場合、「ヒトモノクローナル抗体」、「ヒトモノクローナル自己抗体」、「ヒト抗体」などの用語は、ヒト起源のものである、すなわち、ヒト細胞、例えば、B細胞またはそのハイブリドーマまたはヒト細胞、例えば、ヒト記憶B細胞のmRNAから直接的にクローニングされているcDNAから単離されているPNAd結合性分子を表すために使用される。ヒト抗体は、例えば、結合特徴を改善するために抗体中でアミノ酸置換が行われている場合でさえ依然として「ヒト」である。
【0064】
下記および例えば、Kucherlapati et al.による米国特許第5,939,598号明細書に記載されるような、ヒト免疫グロブリンライブラリーに由来する抗体または1種もしくは複数のヒト免疫グロブリンについてトランスジェニックであり、内因性免疫グロブリンを発現しない動物から得た抗体は、それらを本明細書において記載される真にヒトの抗体と区別するためにヒト様抗体と称される。
【0065】
例えば、通常、ファージディスプレイから単離されたヒト様抗体、例えば、合成および半合成抗体の重鎖および軽鎖の対合は、それが元のヒトB細胞で生じたような元の対合を必ずしも反映しない。したがって、先行技術においてよく使用されるような組換え発現ライブラリーから得られたFabおよびscFv断片は、人工であり、免疫原性および安定性に対してすべての可能性ある関連効果を有すると考えることができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「重鎖部分」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはそのバリアントまたは断片のうち少なくとも1つを含む。例えば、本明細書において記載される方法において使用するための結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも部分およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも部分およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖またはCH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも部分、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態では、本明細書において記載されるポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本明細書において記載される方法において使用するための結合性ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも部分を(例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部)を欠く場合がある。上記で示されるように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、それらが天然に存在する免疫グロブリン分子からアミノ酸配列において変わるように修飾され得るということは、当業者によって理解されるであろう。
【0067】
本明細書において開示されるある特定の抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体では、多量体の1つのポリペプチド鎖の重鎖部分は、多量体の第2のポリペプチド鎖上のものと同一である。あるいは、本明細書において記載される重鎖部分を含有するモノマーは同一ではない。例えば、各モノマーは、異なる標的結合部位を含み、例えば、二重特異性抗体またはダイアボディーを形成し得る。
【0068】
一部の実施形態では、本明細書において開示される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、単一ポリペプチド鎖、例えば、scFvから構成され、潜在的in vivo治療的および診断的適用のために細胞内で発現されるべきである(細胞内抗体)。
【0069】
本明細書において開示される診断および処置方法において使用するための結合性ポリペプチドの重鎖部分は、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドの重鎖部分は、IgG1分子に由来するCH1ドメインおよびIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例では、重鎖部分は、幾分かはIgG1分子に、および幾分かはIgG3分子由来するヒンジ領域を含み得る。別の例では、重鎖部分は、幾分かはIgG1分子に、および幾分かはIgG4分子由来するキメラヒンジを含み得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「軽鎖部分」という用語は、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、軽鎖部分は、VLまたはCLドメインのうち少なくとも一方を含む。
【0071】
抗体のペプチドまたはポリペプチドエピトープの最小の大きさは、約4~5個のアミノ酸であると考えられる。ペプチドまたはポリペプチドエピトープは、少なくとも7個、少なくとも9個または少なくとも約15個~約30個の間のアミノ酸を含有し得る。CDRは、その三次形態の抗原性ペプチドまたはポリペプチドを認識できるので、エピトープを含むアミノ酸は、連続である必要はなく、一部の場合には、同一ペプチド鎖上でさえない場合がある。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体によって認識されるペプチドまたはポリペプチドエピトープは、PNAdの少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個または約5~約30個、約10~約30個または約15~約30個の間の連続または非連続アミノ酸の配列を含有する。
【0072】
本明細書において同義的に使用される「特異的に結合する」または「特異的に認識する」とは、一般に、結合性分子、例えば、抗体が、抗原結合性ドメインを介してエピトープに結合すること、および結合は、抗原結合性ドメインとエピトープの間に幾らかの相補性を必要とすることを意味する。この定義によれば、抗体は、その抗原結合性ドメインを介して、ランダムな無関係のエピトープに結合するであろうよりもより容易にそのエピトープに結合する場合に、エピトープに「特異的に結合する」と言われる。当業者ならば、抗体は、非連続エピトープの直線部分に対応するアミノ酸残基を含む、またはそれからなる単離されたポリペプチドを特異的に結合し得る、または特異的認識し得るということを理解している。「特異性」という用語は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的親和性を限定するために本明細書において使用される。例えば、抗体「A」は、所与のエピトープに対して、抗体「B」よりも高い特異性を有すると思われる場合があり、または抗体「A」は、関連エピトープ「D」に対して有するものよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われる場合がある。
【0073】
存在する場合には、抗体の抗原との「免疫学的結合特徴」という用語または他の結合特徴は、その文法上の形態のすべてにおいて、抗体の特異性、親和性、交差反応性および他の結合特徴を指す。
【0074】
「優先的に結合する」とは、結合性分子、例えば、抗体が、関連する、同様の、相同のまたは類似のエピトープに結合するであろうよりも、より容易にエピトープに特異的に結合することを意味する。したがって、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、このような抗体が関連エピトープ交差反応し得るとしても、関連エピトープよりもそのエピトープに結合する可能性がより高いであろう。
【0075】
限定されない例として、結合性分子、例えば、抗体は、第1のエピトープに、第2のエピトープに対する抗体のKよりも小さい解離定数(K)で結合する場合に、前記第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。別の限定されない例では、抗体は、第1のエピトープに、第2のエピトープに対する抗体のKよりも少なくとも1桁小さい親和性で結合する場合に、第1の抗原に優先的に結合すると考えられ得る。別の限定されない例では、抗体は、第1のエピトープに、第2のエピトープに対する抗体のKよりも少なくとも2桁小さい親和性で結合する場合に、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。
【0076】
別の限定されない例では、結合性分子、例えば、抗体は、第1のエピトープに、第2のエピトープに対する抗体のk(off)よりも小さいオフレート(k(off))で結合する場合に、第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。別の限定されない例では、抗体は、第1のエピトープに、第2のエピトープに対する抗体のk(off)よりも少なくとも1桁小さい親和性で結合する場合に第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。別の限定されない例では、抗体は、第1のエピトープに第2のエピトープに対する抗体のk(off)よりも少なくとも2桁小さい親和性で結合する場合に第1のエピトープに優先的に結合すると考えられ得る。
【0077】
結合性分子、例えば、抗体は、参照抗体のエピトープへの結合をある程度まで遮断する程度にそのエピトープに優先的に結合する場合に、参照抗体の所与のエピトープへの結合を競合的に阻害すると言われる。競合阻害は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイによって決定され得る。抗体は、参照抗体の所与のエピトープへの結合を少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%または少なくとも50%競合的に阻害すると言われる。当業者ならば、抗体のそのエピトープへの結合は、抗体ではない結合性分子によっても競合的に阻害され得ることを理解している。
【0078】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、個々のエピトープの、結合性分子、例えば、免疫グロブリン分子のCDRとの結合の強度の尺度を指す。;例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. (1988) at pages 27-28を参照されたい。本明細書で使用される場合、「アビディティー」という用語は、免疫グロブリンの集団と抗原間の複合体の全体的な安定性、すなわち、免疫グロブリン混合物の抗原との機能的組合せ力を指す;例えば、Harlow at pages 29-34を参照されたい。アビディティーは、集団中の個々の免疫グロブリン分子の特異的エピトープとの親和性ならびにまた免疫グロブリンおよび抗原の結合価の両方と関連する。例えば、二価モノクローナル抗体および高反復性エピトープ構造、例えば、ポリマーを有する抗体の間の相互作用は、高アビディティーのものとなろう。抗体の抗原に対する親和性またはアビディティーは、任意の適した方法によって経験的に決定され得る;例えば、Berzofsky et al., “Antibody-Antigen Interactions” In Fundamental Immunology, Paul, W. E., Ed., Raven Press New York, N Y (1984)、Kuby, Janis Immunology, W. H. Freeman and Company New York, N Y (1992)および本明細書において記載される方法を参照されたい。抗体の抗原に対する親和性を測定するための一般的な技術として、ELISA、RIAおよび表面プラズモン共鳴が挙げられる。特定の抗体抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件、例えば、塩濃度、pH下で測定される場合には変わり得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ、例えば、K、IC50の測定は、抗体および抗原の標準化された溶液および標準化されたバッファーを用いて行われることが好ましい。
【0079】
本明細書において記載される結合性分子、例えば、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体はまた、その交差反応性の点で説明され、特定され得る。本明細書で使用される場合、「交差反応性」という用語は、ある抗原に対して特異的な抗体の、第2の抗原と反応する能力;2種の異なる抗原性物質間の関連性の尺度を指す。したがって、抗体は、その形成を誘導したもの以外のエピトープに結合する場合には交差反応性である。交差反応性エピトープは、一般に、誘導エピトープと同一の相補的な構造的特徴の多くを含有し、一部の場合には、実際に、元のものよりも良好に適合する場合がある。
【0080】
例えば、ある特定の抗体は、関連するが、同一ではないエピトープ、例えば、参照エピトープに対して少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%および少なくとも50%の同一性(当技術分野で公知の、本明細書において記載される方法を使用して算出されたような)を有するエピトープに結合するという点で、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して95%未満の、90%未満の、85%未満の、80%未満の、75%未満の、70%未満の、65%未満の、60%未満の、55%未満のおよび50%未満の同一性(当技術分野で公知の、本明細書において記載される方法を使用して算出されたような)を有するエピトープと結合しない場合に、交差反応性をほとんどまたは全く有さないと言われる場合がある。抗体は、そのエピトープの任意の他の類似体、オーソログまたは相同体と結合しない場合に、ある特定のエピトープに対して「高度に特異的である」と思われる場合がある。
【0081】
本明細書において記載される結合性分子、例えば、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体はまた、PNAdへのその結合親和性の点で説明され、特定され得る。
【0082】
以前に示されたように、種々の免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。本明細書で使用される場合、「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖の第1の(最アミノ末端)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに隣接し、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端である。
【0083】
本明細書で使用される場合、「CH2ドメイン」という用語は、例えば、従来の番号付けスキームを使用して抗体の約残基244~残基360(残基244~360、Kabat番号付けシステム;および残基231~340、EU番号付けシステム;Kabat EA et al.前掲書を参照されたい)に伸びる重鎖分子の部分を含む。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合しないという点で独特である。むしろ、2つのN結合型分岐炭水化物鎖が、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入される。また、CH3ドメインは、CH2ドメインからIgG分子のC末端に伸び、およそ108個の残基を含むことも十分に文書化されている。
【0084】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに接合する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25個の残基を含み、可動性であり、したがって、2つのN末端抗原結合性領域が、独立に動くことを可能にする。ヒンジ領域は、3つの別個のドメイン:上部、中央、下部ヒンジドメインに分けることができる;Roux et al., J. Immunol. 161 (1998)、4083。
【0085】
本明細書で使用される場合、「ジスルフィド結合」という用語は、2個の硫黄原子の間に形成された共有結合を含む。アミノ酸システインは、第2のチオール基とともにジスルフィド結合または橋を形成できるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子では、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖は、Kabat番号付けシステムを使用して239および242に対応する位置(226位または229位、EU番号付けシステム)で2つのジスルフィド結合によって連結されている。
【0086】
本明細書で使用される場合、「連結される」、「融合される」または「融合」という用語は同義的に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲーションまたは組換え手段を含むいかなる手段によってであれ、2つ以上の要素または構成成分を一緒に接合することを指す。「インフレーム融合」とは、元のORFの正しい翻訳リーディングフレームを維持する方法で、2つ以上のポリヌクレオチドオープンリーディングフレーム(ORF)を接合して、連続するより長いORFを形成することを指す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一タンパク質である(これらのセグメントは普通天然でそのように接合されない)。リーディングフレームは、融合されたセグメント全体でこのように連続にされるが、セグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的にまたは空間的に分離される場合がある。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドは、インフレームで融合され得るが、「融合された」CDRが、連続ポリペプチドの一部として同時翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域または追加のCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって分離され得る。
【0087】
「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子が生化学的物質、例えば、RNAまたはポリペプチドを産生するプロセスを指す。プロセスは、制限するものではないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現および安定発現の両方を含む、細胞内の遺伝子の機能的存在の任意の顕在化を含む。制限するものではないが、遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または任意の他のRNA産物への転写およびmRNAのポリペプチド(複数可)への翻訳を含む。最終目的生成物が生化学物質である場合には、発現は、その生化学物質および任意の前駆体の作出を含む。遺伝子の発現は、「遺伝子産物」を産生する。本明細書で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNAまたは転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれかであり得る。本明細書において記載される遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化を有する核酸または翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、タンパク質分解切断などを有するポリペプチドをさらに含む。
【0088】
本明細書で使用される場合、「サンプル」という用語は、対象または患者から得た任意の生物学的材料を指す。一態様では、サンプルは、血液、血漿または尿を含み得る。他の態様では、サンプルは、全血、血漿、血液サンプルから濃縮されたB細胞および培養細胞(例えば、対象から得たB細胞)を含み得る。サンプルはまた、神経組織を含む、生検または組織サンプルを含み得る。さらに他の態様では、サンプルは、全細胞および/または細胞の溶解物を含み得る。血液サンプルは、当技術分野で公知の方法によって収集され得る。一態様では、ペレットは、200μlのバッファー(20mM Tris、pH7.5、0.5% Nonidet、1mM EDTA、1mM PMSF、0.1M NaCl、IX Sigma プロテアーゼ阻害剤およびIX Sigmaホスファターゼ阻害剤1および2)中で4℃でボルテックス処理することによって再懸濁され得る。懸濁液は、間欠的ボルテックス処理を用いて20分間氷上で維持され得る。4℃で5分間15,000×gで遠心した後、上清のアリコートは、約-70℃で保管され得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指し、目的は、本明細書において記載される望まれない生理学的変化または障害を防ぐまたは減速する(減少させる)ことである。有益なまたは所望の臨床結果として、それだけには限らないが、検出可能であれ、検出不能であれ、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化された(すなわち、悪化のない)状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の寛解または緩和および緩解(部分的であれ、完全であれ)が挙げられる。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予測された生存と比較した、生存の延長を意味する場合がある。処置を必要とするものとして、状態もしくは障害をすでに有するものならびに状態もしくは障害を有する傾向があるものまたは状態もしくは障害の顕在化が妨げられるべきであるものが挙げられる。
【0090】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」とは、診断、予後、予防または療法が望まれる、任意の対象、特に、哺乳動物の対象、例えば、ヒト患者を意味する。
【0091】
構成成分またはステップを含む本明細書において記載される組成物または方法はまた、それらの構成成分またはステップから本質的になり得る、またはそれからなり得る。
【0092】
II.抗体
抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体およびその抗原結合性断片が、提供される。また、抗PNAd抗体またはその抗原結合性断片の誘導体またはバリアントが本明細書において提供される。また、このような抗体またはそのPNAd結合性断片またはその誘導体またはバリアントを含むコンジュゲートが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはそのPNAd結合性断片は、以下の実施例の節において例示される抗体MHA112について概説されるような結合特徴および/または生物学的特性を示す。以下の実施例の節に記載されるように、抗PNAd抗体MHA112は、PNAdを発現する細胞への結合親和性の改善(実施例6)およびリンパ節へのT細胞ホーミングを遮断する能力の改善(実施例4)を示す。MHA112にコンジュゲートされた薬物の投与は、生存時間の増大(実施例8)に加えて、腫瘍成長の低減、腫瘍転移の低減および腫瘍流入領域リンパ節線維症の低減(実施例7)をもたらす。さらに、MHA112にコンジュゲートされた薬物の投与はまた、膵臓腫瘍モデルにおいて生存時間を増大した(実施例9)。
【0093】
抗体およびその抗原結合性断片は、その可変領域、例えば、結合ドメイン中に、図5に表されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを含むVHおよび/またはVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことを特徴とし得る。上記で同定された可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列は、以下の表4に示されている。VHおよび/またはVL領域の上記のアミノ酸配列のCDRの例示的セットは、図5および表2に表されている。表2のCDRの対応するフレームワーク領域は、表3に示されている。しかし、以下に論じられるように、当業者ならば、CDR2およびCDR3の場合において、さらに、または代わりに、そのアミノ酸配列が図5に示されるものと、1個、2個、3個またはさらに多くのアミノ酸だけ異なっているCDRが使用され得るという事実を十分に承知している。
【0094】
【表2】
【0095】


【0096】

【0097】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3~5および8~10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる少なくとも1つのCDRを含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3~5および8~10からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、またはそれからなる1、2、3、4、5または6つのCDRを含む(例えば、表2を参照されたい)。
【0098】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)相補性決定領域1(CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2および配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む。一部の実施形態では、抗体またはそのPNAd結合性断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2および配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含み、配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR2および配列番号10のアミノ酸配列を含むVL CDR3をさらに含む。
【0099】
一部の実施形態では、抗体またはそのPNAd結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR2および配列番号10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む。一部の実施形態では、抗体またはそのPNAd結合性断片は、配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR2および配列番号10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含み、配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2および配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3をさらに含む。
【0100】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH CDR1、(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2および(iii)配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含むVHを含み得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、(i)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR1、(ii)配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR2および(iii)配列番号10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み得る。一部の実施形態では、抗体またはそのPNAd結合性断片は、配列番号3のVH CDR1、配列番号4のVH CDR2および配列番号5のVH CDR3を含む重鎖可変領域をさらに含む場合があり、配列番号8のVL CDR1、配列番号9のVL CDR2および配列番号10のVL CDR3を含む軽鎖可変領域をさらに含む場合がある。
【0101】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3を含むか、またはそれからなるVH CDR1、配列番号4を含むか、またはそれからなるVH CDR2および配列番号5を含むか、またはそれからなるVH CDR3を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0102】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8を含むか、またはそれからなるVL CDR1、配列番号9を含むか、またはそれからなるVL CDR2および配列番号10を含むか、またはそれからなるVL CDR3を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0103】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3を含むか、またはそれからなるVH CDR1、配列番号4を含むか、またはそれからなるVH CDR2および配列番号5を含むか、またはそれからなるVH CDR3を含む重鎖可変領域を含む場合があり、配列番号8を含むか、またはそれからなるVL CDR1、配列番号9を含むか、またはそれからなるVL CDR2および配列番号10を含むか、またはそれからなるVL CDR3を含む軽鎖可変領域をさらに含む場合がある。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む重鎖フレームワーク領域1(FR1)、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む重鎖FR2、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む重鎖FR3および配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖FR4を含むVHを含む。
【0105】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖FR1、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖FR2、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖FR3および配列番号18に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖FR4を含むVLを含む。
【0106】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3を含むか、またはそれからなるVH CDR1、配列番号4を含むか、またはそれからなるVH CDR2および配列番号5を含むか、またはそれからなるVH CDR3を含むVHを含み、VHは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号3を含むか、またはそれからなるVH CDR1、配列番号4を含むか、またはそれからなるVH CDR2および配列番号5を含むか、またはそれからなるVH CDR3を含むVHを含み、VHは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)のアミノ酸置換、付加または欠失を有する。一部の例では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0107】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8を含むか、またはそれからなるVL CDR1、配列番号9を含むか、またはそれからなるVL CDR2および配列番号10を含むか、またはそれからなるVL CDR3を含むVLを含み、VLは、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号8を含むか、またはそれからなるVL CDR1、配列番号9を含むか、またはそれからなるVL CDR2および配列番号10を含むか、またはそれからなるVL CDR3を含むVLを含み、VLは、配列番号7のアミノ酸配列に対して、1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)のアミノ酸置換、付加または欠失を有する。一部の例では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。
【0108】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、(a)配列番号3を含むか、またはそれからなるVH CDR1、配列番号4を含むか、またはそれからなるVH CDR2および配列番号5を含むか、またはそれからなるVH CDR3を含むVHであって、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%の配列同一性を有するVHならびに(b)配列番号8を含むか、またはそれからなるVL CDR1、配列番号9を含むか、またはそれからなるVL CDR2および配列番号10を含むか、またはそれからなるVL CDR3を含むVLであって、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%の配列同一性を有するVLを含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、(a)配列番号3を含むか、またはそれからなるVH CDR1、配列番号4を含むか、またはそれからなるVH CDR2および配列番号5を含むか、またはそれからなるVH CDR3を含むVHであって、配列番号2のアミノ酸配列に対して、1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)のアミノ酸置換、付加または欠失を有するVHならびに(b)配列番号8を含むか、またはそれからなるVL CDR1、配列番号9を含むか、またはそれからなるVL CDR2および配列番号10を含むか、またはそれからなるVL CDR3を含むVLであって、配列番号7のアミノ酸配列に対して、1~10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)のアミノ酸置換、付加または欠失を有するVLを含む。一部の実施形態では、置換は保存的置換である。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられるものである。同様の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体のバリアント(例えば、それぞれ、配列番号2および7に示されるアミノ酸配列のVHおよび/またはVLに対して、アミノ酸置換、付加または欠失を有する抗体またはその抗原結合性断片)は、PNAdに結合する能力を保持する、および/または以下の実施例において記載される抗体MHA112の1つもしくは複数の特徴を保持する。
【0110】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖可変領域(VH)を含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる重鎖可変領域(VH)を含み、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる軽鎖可変領域(VL)をさらに含む。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号2のVHおよび配列番号7のVLを含む。
【0111】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるVHを含む重鎖を含む。一部の例では、重鎖は、IgM定常領域を含む。一部の例では、重鎖は、ヒトIgM定常領域を含む。
【0112】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるVLを含む軽鎖を含む。一部の例では、軽鎖は、カッパ定常領域を含む。一部の例では、軽鎖は、ヒトカッパ定常領域を含む。一部の例では、軽鎖は、ラムダ定常領域を含む。一部の例では、軽鎖は、ヒトラムダ定常領域を含む。
【0113】
一部の実施形態では、本明細書において記載されるその抗体は、本明細書において記載されるVHを含む重鎖および本明細書において記載されるVLを含む軽鎖を含み、重鎖は、IgM(例えば、ヒトIgM)定常領域を含み、軽鎖は、カッパ(例えば、ヒトカッパ)定常領域を含む。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるVHを含む重鎖および本明細書において記載されるVLを含む軽鎖を含み、重鎖は、IgM(例えば、ヒトIgM)定常領域を含み、軽鎖は、ラムダ(例えば、ラムダカッパ)定常領域を含む。
【0114】
あるいは、本明細書において記載される抗体は、PNAdへの結合について、それぞれ配列番号3~5に示されるVH CDR1~3を有する抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片、誘導体またはバリアントである。あるいは、本明細書において記載される抗体は、PNAdへの結合について、配列番号8~10に示されるVL CDR1~3を有する抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片、誘導体またはバリアントである。あるいは、本明細書において記載される抗体は、PNAdへの結合について、それぞれ配列番号3~5に示されるVH CDR1~3およびそれぞれ配列番号8~10に示されるVL CDR1~3を有する抗体と競合する、抗体または抗原結合性断片、誘導体またはバリアントである。あるいは、本明細書において記載される抗体は、PNAdへの結合について、それぞれ配列番号2および7に示されるVHおよび/またはVLを有する抗体と競合する、抗体またはその抗原結合性断片、誘導体またはバリアントである。それらの抗体は、特に、治療的適用のための、ヒト、げっ歯類(例えば、マウス)、キメラまたはヒト化であり得る。
【0115】
あるいは、本明細書において記載される抗体は、配列番号2のVHおよび配列番号7のVLを含む抗PNAd抗体と同一のエピトープに結合する、抗体またはその抗原結合性断片、誘導体またはバリアントである。
【0116】
抗体間の競合は、試験下の免疫グロブリンが、参照抗体の共通の抗原、例えば、PNAdへの特異的結合を阻害するアッセイによって決定される。多数の種類の競合結合アッセイが公知である、例えば:固相直接または間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接または間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ;Stahli et al., Methods in Enzymology 9 (1983), 242-253を参照されたい;固相直接ビオチン-アビジンEIA;Kirkland et al., J. Immunol. 137 (1986), 3614-3619およびCheung et al., Virology 176 (1990), 546-552を参照されたい;固相直接標識化アッセイ、固相直接標識化サンドイッチアッセイ;Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)を参照されたい;I125標識を使用する固相直接標識RIA;Morel et al, Molec. Immunol. 25 (1988), 7-15およびMoldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32 (1990), 77-82を参照されたい。通常、このようなアッセイは、固体表面に結合した精製されたPNAdもしくはその凝集体またはこれらのいずれかを有する細胞、未標識試験免疫グロブリンおよび標識化参照免疫グロブリン、すなわち、本明細書において記載されるヒトモノクローナル抗体の使用を含む。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定される。普通、試験免疫グロブリンは、過剰で存在する。一部の実施形態では、競合結合アッセイは、添付の実施例においてELISAアッセイに記載されるような条件下で実施される。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同一のエピトープに結合する抗体、および参照抗体が結合するエピトープに立体障害が生じるのに十分に近接して隣接するエピトープに結合する抗体が含まれる。普通、競合抗体が過剰に存在する場合には、参照抗体の共通の抗原への特異的結合を少なくとも50%または75%阻害するであろう。したがって、本発明は、抗体が、配列番号2のVHおよび配列番号7のVLを含む参照抗体がPNAdへ結合するのを競合的に阻害する場合に、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体にさらに引き付けられる。
【0117】
一部の実施形態では、重鎖可変領域のVH-CDRのうちの少なくとも1つまたは重鎖可変領域のVH-CDRのうちの少なくとも2つが、本明細書において開示される抗体に由来する参照重鎖VH-CDR1、VH-CDR2またはVH-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である(例えば、VH CDR配列については表2を参照されたい)、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチドが本明細書において提供される。あるいは、VHのVH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3領域は、本明細書において開示される抗体に由来する参照重鎖VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である(例えば、VH CDR配列については表2を参照されたい)。したがって、本明細書において記載される重鎖可変領域は、表2の配列(すなわち、配列番号3~5)に関連するVH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3ポリペプチド配列を有し得る。表2は、IMGTシステムによって定義されるVH-CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、KabatまたはChothiaシステムによって定義されるVH-CDRも本発明に含まれ、表2~4に提示される配列を使用して当業者によって容易に同定され得る。一部の実施形態では、参照VH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3であり、参照VH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4であり、参照VH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5である。
【0118】
本明細書において記載される単離されたポリペプチドは、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3領域が、表2に示されるVH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3配列(すなわち、配列番号3~5)と同一であるポリペプチド配列を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含み得る。一部の実施形態では、VH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3であり、VH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4であり、VH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5である。
【0119】
さらに、単離されたポリペプチドは、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3領域が、任意の1つのVH-CDR中の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を除いて、表2に示されるVH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3配列と同一であるポリペプチド配列を有する免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含み得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。一部の実施形態では、VH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3であり、VH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4であり、VH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5である。
【0120】
単離されたポリペプチドは、軽鎖可変領域のVL-CDRのうち少なくとも1つまたは軽鎖可変領域のVL-CDRのうち少なくとも2つが、本明細書において開示される抗体に由来する参照軽鎖VL-CDR1、VL-CDR2またはVL-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である(例えば、VL CDR配列については表2を参照されたい)、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み得る。あるいは、VLのVL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3領域は、本明細書において開示される抗体に由来する参照軽鎖VL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る(例えば、VL CDR配列については表2を参照されたい)。したがって、軽鎖可変領域は、表2の配列(すなわち、配列番号8~10)に関連するVL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3ポリペプチド配列を有し得る。表2は、IMGTシステムによって定義されるVL-CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、KabatまたはChothiaシステムによって定義されるVL-CDRも本発明に含まれる。一部の実施形態では、参照VL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号8であり、参照VL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号9であり、参照VL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号10である。
【0121】
また、VL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3領域が、表2のVL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3配列と同一であるポリペプチド配列を有する、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチドが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、VL CDR1のアミノ酸配列は配列番号8であり、VL CDR2のアミノ酸配列は配列番号9であり、VL CDR3のアミノ酸配列は配列番号10である。
【0122】
単離されたポリペプチドはまた、VL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3領域が、任意の1つのVL-CDR中の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を除いて、表2に示されるVL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3と同一であるポリペプチド配列を有する免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含み得る。一部の実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。一部の実施形態では、VL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号8であり、VL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号9であり、VL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号10である。
【0123】
免疫グロブリンまたはそのコーディングcDNAは修飾され得る。したがって、本明細書において記載される方法は、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fab断片、二重特異性抗体、融合抗体、標識化抗体またはそれらのうちのいずれか1つの類似体を生成するステップのうちいずれか1つを含み得る。対応する方法は、当業者には公知であり、例えば、Harlow and Lane “Antibodies, A Laboratory Manual”, CSH Press, Cold Spring Harbor (1988)に記載されている。前記抗体の誘導体が、ファージディスプレイ技術によって得られる場合には、本明細書において記載される抗体のうちいずれか1つのものと同一のエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大するために、BIAcoreシステムにおいて使用されるような表面プラズモン共鳴が使用され得る(Schier, Human Antibodies Hybridomas 7 (1996), 97-105; Malmborg, J. Immunol. Methods 183 (1995), 7-13)。キメラ抗体の生成は、例えば、国際出願国際公開第89/09622号パンフレットに記載されている。ヒト化抗体の生成のための方法は、例えば、欧州出願欧州特許第0239400号明細書および国際出願国際公開第90/07861号パンフレットに記載されている。本発明に従う利用されるべき抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。マウスにおける異種抗体、例えば、ヒト様抗体の生成のための一般的原理は、例えば、国際出願国際公開第91/10741号パンフレット、国際公開第94/02602号パンフレット、国際公開第96/34096号パンフレットおよび国際公開第96/33735号パンフレットに記載されている。上記で論じられるように、本明細書において記載される抗体は、競合抗体に加えて、例えば、Fv、FabおよびF(ab)2を含む様々な形態で、ならびに一本鎖で存在し得る;例えば、国際出願国際公開第88/09344号パンフレットも参照されたい。このような方法によって作製された抗体も本明細書において提供される。
【0124】
本明細書において記載される抗体またはその対応する免疫グロブリン鎖(複数可)は、当技術分野で公知の従来技術を使用して、例えば、アミノ酸欠失(複数可)、挿入(複数可)、置換(複数可)、付加(複数可)および/または組換え(複数可)および/または当技術分野で公知の任意の他の修飾(複数可)を、単独でまたは組合せで使用することによってさらに修飾され得る。免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列にこのような修飾を導入する方法は、当業者に周知である;例えば、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y. and Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)を参照されたい。本明細書において記載される抗体の修飾として、アセチル化、水酸化、メチル化、アミド化および炭水化物または脂質部分、補助因子の結合などを含む、側鎖修飾、骨格修飾ならびにNおよびC末端修飾を含む、1つまたは複数の成分アミノ酸での化学的および/または酵素的誘導体化が挙げられる。同様に、本発明は、カルボキシル末端で異種分子、例えば、免疫賦活性リガンドに融合された、アミノ末端に記載された抗体またはその幾分かの断片を含むキメラタンパク質の生成を包含する。;例えば、対応する技術の詳細については、国際出願国際公開第00/30680号パンフレットを参照されたい。
【0125】
さらに、上記のような結合性分子を含有するもの、例えば、重鎖CDR3(HCDR3)が、より大きな程度の可変性および抗原抗体相互作用において優勢な関与を有する領域であるということは頻繁に観察されているので、記載された抗体のうちいずれか1つの可変領域のCDR3領域、特に、重鎖のCDR3を含有するものを含むペプチドが、本明細書において提供される。このようなペプチドは、本明細書において記載されるような結合剤を生成する組換え手段によって容易に合成または生成され得る。このような方法は、当業者に周知である。ペプチドは、例えば、市販されている自動化ペプチドシンセサイザーを使用して合成され得る。ペプチドはまた、ペプチドを発現するDNAを発現ベクター中に組み込むこと、および細胞をペプチドを生成するように発現ベクターで形質転換することによる組換え技術によって生成され得る。
【0126】
したがって、本明細書において記載されるヒト抗PNAd抗体に結合し、記載された特性を示す、すなわち、PNAdを特異的に認識する(結合する)、結合性分子、例えば、抗体またはその結合性断片が、本明細書において記載される。このような抗体および結合性分子は、本明細書において記載されるようなELISAおよびウエスタンブロットおよび免疫組織化学によって、その結合特異性および親和性について試験され得る、例えば、実施例を参照されたい。
【0127】
不死化B細胞またはB記憶細胞の培養物から免疫グロブリンを直接的に得ることの代替法として、本明細書において記載された不死化細胞は、その後の発現および/または遺伝子操作のための再配列された重鎖および軽鎖遺伝子座の供給源として使用され得る。再配列された抗体遺伝子は、適当なmRNAから逆転写されて、cDNAを生成し得る。必要に応じて、重鎖定常領域は、異なるアイソタイプのものと交換され得る、または完全に除去され得る。可変領域を、一本鎖Fv領域をコードするように連結できる。複数のFv領域を連結して、2つ以上の標的への結合能力を付与できる、またはキメラ重鎖および軽鎖組合せを使用できる。ひとたび遺伝物質が入手可能であると、所望の標的へ結合するその能力を両方保持する上記のような類似体の設計は、容易である。抗体可変領域をクローニングする方法および組換え抗体を生成する方法は、当業者に公知であり、例えば、Gilliland et al., Tissue Antigens 47 (1996), 1-20; Doenecke et al., Leukemia 11 (1997), 1787-1792に記載されている。
【0128】
ひとたび適当な遺伝物質を得、必要に応じて、類似体をコードするように修飾すると、最小で、重鎖および軽鎖の可変領域をコードするものを含むコード配列を、ベクターに含有される発現系中に挿入することができ、これを標準組換え宿主細胞中にトランスフェクトできる。効率的なプロセシングのために様々なこのような宿主細胞が使用され得るが、哺乳動物細胞が考慮され得る。この目的のための通常の哺乳動物細胞系統として、それだけには限らないが、CHO細胞、HEK293細胞またはNSO細胞が挙げられる。
【0129】
次いで、修飾された組換え宿主を、宿主細胞の成長およびコード配列の発現にとって適当な培養条件下で培養することによって、抗体または類似体の生成が行われる。次いで、抗体が、それらを培養物から単離することによって回収される。発現系はシグナルペプチドを含むように設計され、その結果、得られた抗体は培地中に分泌されるが、細胞内産生も可能である。
【0130】
上記に従って、本発明はまた、本明細書において記載される抗体または同等の結合性分子をコードするポリヌクレオチドに関する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、上記の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードする。通常、ポリヌクレオチドによってコードされる前記可変領域は、前記抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0131】
当業者ならば、上記の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインは、所望の特異性および生物学的機能の他のポリペプチドまたは抗体の構築のために使用され得るということを容易に理解するであろう。したがって、上記の可変ドメインのうち少なくとも1つまたはそれより多くのCDR、例えば、CDRのすべてを含み、有利なことに、添付の実施例において記載される抗体と同一または同様の結合特性を実質的に有するポリペプチドおよび抗体が、本明細書において提供される。当業者ならば、CDR内またはKabatによって定義されるようなCDRと部分的に重複する超可変ループ(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196 (1987), 901-917)内でアミノ酸置換を行うことによって結合親和性が増強され得るということを承知している;例えば、Riechmann, et al, Nature 332 (1988), 323-327を参照されたい。したがって、記載されたCDRのうち1つまたは複数が、1つまたは複数の、または2つ以下のアミノ酸置換を含む抗体も、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、その免疫グロブリン鎖の一方または両方中に、表2に示されるような可変領域の2つまたは3つすべてのCDRを含む。
【0132】
当業者に公知のような結合性分子、例えば、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、定常領域を含む場合があり、これは、1つまたは複数のエフェクター機能を媒介する。例えば、補体のC1成分の抗体定常領域への結合は、補体系を活性化し得る。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体の活性化はまた、炎症反応を刺激し、また、自己免疫過敏性に関与し得る。さらに、抗体は、Fc領域を介して種々の細胞上の受容体に結合し、抗体Fc領域上のFc受容体結合部位は、細胞上のFc受容体(FcR)に結合する。抗体の異なるクラスに対して特異的であるいくつかのFc受容体があり、IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)およびIgM(ミュー受容体)が含まれる。抗体の細胞表面上のFc受容体への結合は、抗体で覆われた粒子の貪食および破壊、免疫複合体のクリアランス、キラー細胞による抗体で覆われた標的細胞の溶解(抗体依存性細胞媒介性細胞毒性またはADCCと呼ばれる)、炎症性メディエーターの放出、免疫グロブリン生成の胎盤通過および制御を含む、いくつかの重要な、多様な生物学的応答を引き起こす。
【0133】
したがって、本明細書において記載される一部の実施形態は、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体を含み、およそ同一の免疫原性の、変更されていない抗体全体と比較した場合に、所望の生化学的特徴、例えば、エフェクター機能の低減、非共有結合的に二量体化する能力、PNAdの部位に局在する能力の増大、血清半減期の低減または血清半減期の増大を提供するように、定常領域ドメインのうち1つまたは複数の少なくともほんの一部が欠失しているか、またはそうでなければ変更されている。例えば、本明細書において記載される診断方法および処置方法において使用するための一部の抗体は、免疫グロブリン重鎖と同様のポリペプチド鎖を含むが、1つまたは複数の重鎖ドメインの少なくとも一部分を欠く、ドメインが欠失した抗体である。例えば、ある特定の抗体では、修飾された抗体の定常領域の1つのドメイン全体が欠失される、例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部が欠失される。他の実施形態では、本明細書において記載される診断方法および処置方法において使用するためのある特定の抗体は、グリコシル化を排除するように変更されている、定常領域、例えば、IgM重鎖定常領域を有し、アグリコシル化または「アグリ」抗体と本明細書において別の場所で呼ばれる。このような「アグリ」抗体は、酵素的に、ならびに定常領域中のコンセンサスグリコシル化部位(複数可)を操作することによって調製され得る。理論に捉われようとは思わないが、「アグリ」抗体は、in vivoでの改善された安全性および安定性プロファイルを有し得ると考えられる。所望のエフェクター機能を有するアグリコシル化抗体を生成する方法は、例えば、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願国際公開第2005/018572号パンフレットに見出される。
【0134】
本明細書において記載されるある特定の抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体では、Fc部分が、当技術分野で公知の技術を使用してエフェクター機能を低下させるように突然変異され得る。例えば、定常領域ドメインの欠失または不活性化(点突然変異または他の手段による)は、循環する修飾された抗体のFc受容体結合を低減し、それによってPNAd局在性を増大し得る。他の場合には、本発明に一致する定常領域修飾は、補体結合を緩和し、したがって、血清半減期およびコンジュゲートされた細胞毒の非特異的会合を低減することがあり得る。抗原特異性または抗体可動性の増大による局在性の増強を可能にする、ジスルフィド結合またはオリゴ糖部分を修飾するために、定常領域のさらに他の修飾が使用され得る。得られた生理学的プロファイル、バイオアベイラビリティおよび修飾の他の生化学的効果、例えば、PNAd局在性、体内分布および血清半減期は、過度の実験を行うことなく周知の免疫学的技術を使用して容易に測定および定量され得る。
【0135】
本明細書において記載される一部の抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体では、例として、Fcγ受容体、LRPまたはThy1受容体を介した抗体の受容体媒介性エンドサイトーシスの増強によって、または抗体が、それらを損傷することなく生細胞中に送られることを可能にすると言われる「SuperAntibody Technology」(Expert Opin. Biol. Ther. (2005), 237-241)によって、抗体の細胞取り込みを増大するために、Fc部分が突然変異され得る、または代替タンパク質配列と交換され得る。例えば、抗体結合性領域および細胞表面受容体の同族タンパク質リガンドまたはPNAdに結合する特異的配列を有する二重特異性もしくは多特異性抗体ならびに細胞表面受容体の融合タンパク質の生成は、当技術分野で公知の技術を使用して操作され得る。
【0136】
本明細書において記載される一部の抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体では、その血液脳関門浸透を増大するために、Fc部分が突然変異され得る、もしくは代替タンパク質配列と交換され得る、または抗体が化学的に修飾され得る。
【0137】
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体の修飾された形態は、当技術分野で公知の技術を使用して全前駆体または親抗体から作製され得る。例示的技術は、本明細書においてより詳細に論じられている。本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、当技術分野で公知の技術を使用して製造され得る。一部の実施形態では、抗体分子またはその断片は、「組換え生成される」、すなわち、組換えDNA技術を使用して生成される。抗体分子またはその断片を作製する例示的技術は、本明細書において別の場所でより詳細に論じられている。
【0138】
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、例えば、共有結合による結合が、抗体がその同族エピトープに特異的に結合するのを妨げないような、任意の種類の分子の、抗体への共有結合による結合によって修飾されている誘導体を含む。例えば、決して制限するものではないが、抗体誘導体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって修飾されている抗体を含む。多数の化学的修飾のいずれも、それだけには限らないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む公知の技術によって実施され得る。さらに、誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0139】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、処置されるべき動物において、例えば、ヒトにおいて有害な免疫応答を誘発しないであろう。一部の実施形態では、結合性分子、例えば、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、患者、例えば、ヒト患者に由来し、その後、それらが由来する同一種、例えば、ヒトにおいて使用され、有害な免疫応答の発生を軽減または最小にする。
【0140】
抗体の免疫原性を減少させるために、脱免疫化も使用され得る。本明細書で使用される場合、「脱免疫化」という用語は、T細胞エピトープを修飾するための抗体の変更を含む;例えば、国際出願国際公開第98/52976号パンフレットおよび国際公開00/34317号パンフレットを参照されたい。例えば、出発抗体から得られたVHおよびVL配列が分析され、各V領域から得られたヒトT細胞エピトープ「マップ」は、配列内の相補性決定領域(CDR)および他の重要な残基に関連したエピトープの位置を示す。T細胞エピトープマップから得られた個々のT細胞エピトープが、最終抗体の活性を変更するリスクの低い代替アミノ酸置換を同定するために分析される。アミノ酸置換の組合せを含む様々な代替VHおよびVL配列が設計され、これらの配列は、本明細書において開示される診断方法および処置方法において使用するために、その後、様々な結合性ポリペプチド、例えば、PNAd特異的抗体またはその免疫特異的断片中に組み込まれ、次いで、機能について試験される。通常、12から24種の間のバリアント抗体が生成され、試験される。修飾されたVおよびヒトC領域を含む競合重鎖および軽鎖遺伝子は、次いで、発現ベクター中にクローニングされ、その後プラスミドが全抗体の産生のために細胞株中に導入される。次いで、抗体は、適当な生化学的および生物学的アッセイにおいて比較され、最適バリアントが同定される。
【0141】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換えおよびファージディスプレイ技術またはそれらの組合せの使用を含む、当技術分野で公知の多種多様な技術を使用して調製され得る。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知の、および例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. (1988)、Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas Elsevier, N.Y., 563-681 (1981)において教示されるものを含む、ハイブリドーマ技術を使用して生成することができ、前記参考文献は、その全体で参照により組み込まれる。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術によって生成された抗体に制限されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物、原核生物またはファージクローンを含む、単一クローンに由来する抗体を指し、それが生成される方法を指すものではない。したがって、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって生成された抗体に制限されない。
【0142】
周知のハイブリドーマプロセスでは(Kohler et al., Nature 256 (1975), 495)、相対的に短命の、または致死の、哺乳動物由来のリンパ球、例えば、本明細書において記載されるようなマウス対象由来のB細胞が、不死腫瘍細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合され、その結果、両方とも不死で、B細胞の遺伝的にコードされる抗体を産生可能である、ハイブリッド細胞または「ハイブリドーマ」が生成する。得られたハイブリッドは、選択、希釈および再成長によって単一遺伝子の株に分離され、各個々の株は、単一抗体を形成する特定の遺伝子を含む。それらは、その純粋な遺伝的起源に関して所望の抗原に対して均一であり、「モノクローナル」と呼ばれる抗体を産生する。
【0143】
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、融合していない、親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1種または複数の物質を含有する適した培養培地中に播種され、成長させられる。当業者ならば、ハイブリドーマの形成、選択および成長のための試薬、細胞株および培地は、いくつかの供給源から市販されており、標準化されたプロトコールが十分に確立されているということは理解するであろう。一般に、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生について、ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地がアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、in vitroアッセイ、例えば、本明細書において記載されるような免疫沈降、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって決定される。所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、制限希釈手順によってサブクローニングされ、標準方法によって成長され得る;例えば、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, pp 59-103 (1986)を参照されたい。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の精製手順、例えば、プロテインA、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって培養培地、腹水または血清から分離され得るということはさらに理解されるであろう。
【0144】
一部の実施形態では、リンパ球を、顕微操作によって選択し、可変遺伝子を単離できる。例えば、末梢血単核細胞を、免疫処置された、または自然免疫哺乳動物、例えば、ヒトから単離し、約7日間in vitroで培養できる。培養物を、スクリーニング基準を満たす特定の免疫グロブリンについてスクリーニングできる。陽性ウェルから細胞を単離できる。個々のIg産生B細胞は、FACSによって、または補体媒介性溶血プラークアッセイにおいてそれらを同定することによって単離できる。Ig産生B細胞は顕微操作でチューブ中に入れることができ、VHおよびVL遺伝子を、例えば、RT-PCRを使用して増幅できる。VHおよびVL遺伝子を、抗体発現ベクターにクローニングし、発現のために細胞(例えば、真核細胞または原核細胞)にトランスフェクトできる。
【0145】
あるいは、抗体産生細胞株を選択し、当業者に周知の技術を使用して培養してもよい。このような技術は、様々な実験室マニュアルおよび主な刊行物に記載されている。この点において、以下に記載されるような方法および組成物において使用するための適した技術は、付録を含むその全文が参照により本明細書に組み込まれるCurrent Protocols in Immunology, Coligan et al., Eds., Green Publishing Associates and Wiley-Interscience, John Wiley and Sons, New York (1991)に記載されている。
【0146】
特異的エピトープを認識する抗体断片は公知の技術によって生成され得る。例えば、FabおよびF(ab’)2断片は、組換えによって、または酵素、例えば、パパイン(Fab断片をもたらす)もしくはペプシン(F(ab’)2断片をもたらす)を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって生成され得る。F(ab’)2断片は、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有する。このような断片は、例えば、免疫グロブリンの免疫特異的部分を、検出試薬、例えば、放射性同位体にカップリングすることを含む免疫診断手順において使用するのに十分である。
【0147】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、抗体分子の少なくとも1つの重鎖または軽鎖CDRを含む。別の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、1つまたは複数の抗体分子に由来する少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、1つまたは複数の抗体分子に由来する少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、1つまたは複数の抗体分子に由来する少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、1つまたは複数の抗体分子に由来する少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態では、本明細書において記載される抗体は、1つまたは複数の抗体分子に由来する少なくとも6つのCDRを含む。対象抗体中に含まれ得る少なくとも1つのCDRを含む例示的抗体分子が、本明細書において記載される。
【0148】
本明細書において記載される抗体は、抗体の合成のための当技術分野で公知の任意の方法によって、特に、化学合成によって、または本明細書において記載されるような組換え発現技術によって産生され得る。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、1つまたは複数のドメインが部分的または完全に欠失されている合成定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。一部の実施形態では、適合する修飾された抗体は、全CH2ドメインが除去されているドメイン欠失構築物またはバリアントを含むであろう。他の実施形態については、可変領域の可動性および動きの自由度を提供するために、短い接続ペプチドが、欠失されたドメインと置換され得る。当業者ならば、このような構築物が、抗体の異化速度に対するCH2ドメインの調節特性のために特に好ましいことは理解するであろう。ドメイン欠失構築物は、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクターを使用して導くことができる、例えば、国際出願国際公開第02/060955号パンフレットおよび国際公開第02/096948号パンフレットを参照されたい。このベクターは、CH2ドメインを欠失し、ドメイン欠失IgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供するように操作される。
【0150】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、ミニボディーである。ミニボディーは、当技術分野で記載される方法を使用して作製できる、例えば、米国特許第5,837,821号明細書または国際出願国際公開第94/09817号パンフレットを参照されたい。
【0151】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、モノマーサブユニット間の会合を可能にし、PNAdへの結合を保持する限り、2、3個のまたは単一のアミノ酸でさえの欠失または置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択された範囲中の単一アミノ酸の突然変異は、Fc結合を実質的に低減し、それによって、PNAd局在性を増大するのに十分であり得る。同様に、モジュレートされるべきエフェクター機能(例えば、補体結合)を制御する1つまたは複数の定常領域ドメインの一部を単に欠失することが望ましい場合がある。このような定常領域の部分的欠失は、対象定常領域ドメインと関連する他の望ましい機能は無傷のままとしながら、抗体の選択された特徴(血清半減期)を改善し得る。さらに、上記で言及されたように、開示された抗体の定常領域は、得られた構築物のプロファイルを増強する1個または複数のアミノ酸の突然変異または置換によって合成され得る。この点において、修飾された抗体の立体配置および免疫原性プロファイルを実質的に維持しながら、保存された結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を破壊することが可能であり得る。さらに他の実施形態は、望ましい特徴、例えば、エフェクター機能を増強するため、またはより多くの細胞毒もしくは炭水化物結合を提供するための、定常領域への1個または複数のアミノ酸の付加を含む。このような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特定の配列を挿入または複製することが望ましい場合がある。
【0152】
本発明はまた、本明細書において記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)のバリアント(誘導体を含む)を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる抗体を提供し、抗体またはその断片は、PNAdに免疫特異的に結合する。抗体をコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入するために、それだけには限らないが、アミノ酸置換をもたらす、位置指定突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発を含む、当業者に公知の標準技術が使用され得る。一部の実施形態では、バリアント(誘導体を含む)は、参照VH領域、VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3、VL領域、VL-CDR1、VL-CDR2またはVL-CDR3に対して50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換または2未満のアミノ酸置換をコードする。あるいは、突然変異を、コード配列のすべてまたは一部に沿って無作為に、例えば、飽和突然変異誘発によって導入することができ、得られた突然変異体を、活性(例えば、PNAdに結合する能力)を保持する突然変異体を同定する生物活性についてスクリーニングできる。
【0153】
例えば、抗体分子のフレームワーク領域中にのみまたはCDR領域中にのみ突然変異を導入することが可能である。導入された突然変異は、サイレントまたは中立ミスセンス突然変異であり得る、例えば、抗原に結合する抗体の能力に対して効果を全くまたはほとんど有さない、実際、一部のこのような突然変異は、アミノ酸配列をどんなものであれ変更しない。これらの種類の突然変異は、コドン利用を最適化する、またはハイブリドーマの抗体産生を改善ために有用であり得る。本明細書において記載される抗体をコードするコドン最適化されたコーディング領域は、本明細書において別の場所で開示される。あるいは、非中立ミスセンス突然変異は、抗原に結合する抗体の能力を変更し得る。絶対条件ではないが、ほとんどのサイレントおよび中立ミスセンス突然変異の位置は、フレームワーク領域中にある可能性が高く、ほとんどの非中立ミスセンス突然変異の位置は、CDR中にある可能性が高い。当業者ならば、所望の特性を有する、例えば、抗原結合活性の変更も、結合活性の変更(例えば、抗原結合活性の改善または抗体特異性の変化)もない突然変異体分子を設計し、試験できるであろう。突然変異誘発後、コードされるタンパク質は、日常的に発現されることができ、コードされるタンパク質の機能的および/または生物学的活性(例えば、PNAdの少なくとも1つのエピトープに免疫特異的に結合する能力)は、本明細書において記載される技術を使用して、または当技術分野で公知の日常的に修飾する技術によって決定され得る。
【0154】
PNAd結合性物質、例えば、それだけには限らないが、本明細書において記載されるPNAd結合性抗体は、任意のin vivoまたはin vitroモデルを使用して特性決定され得る。当業者ならば、本明細書において記載されるPNAd結合性物質(例えば、抗体)は、本明細書において記載されるマウスモデルにおいて特性決定され得ることを容易に理解する。
【0155】
III.抗体をコードするポリヌクレオチド
また、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体をコードするポリヌクレオチドも本明細書において提供される。抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、未修飾RNAもしくはDNAまたは修飾されたRNAもしくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドから構成され得る。例えば、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNAならびに一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖または、より通常は、二本鎖または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。さらに、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性のためにまたは他の理由のために修飾された、1つまたは複数の修飾された塩基またはDNAまたはRNA骨格を含有し得る。「修飾された」塩基として、例えば、トリチル化塩基およびイノシンなどの異常な塩基が挙げられる。DNAおよびRNAに様々な修飾が行われ得る;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態を包含する。
【0156】
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリン重鎖部分または軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然バリアントをコードする単離されたポリヌクレオチドは、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加または欠失を、免疫グロブリンのヌクレオチド配列中に導入することによって作出することができ、その結果、1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失が、コードされるタンパク質中に導入される。突然変異は、標準技術、例えば、位置指定突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発によって導入され得る。一部の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、1つまたは複数の非必須アミノ酸残基で行われる。
【0157】
周知のように、RNAは、標準技術、例えば、グアニジニウムイソチオシアネート抽出および沈殿と、それに続く、遠心分離またはクロマトグラフィーによって、元のB細胞、ハイブリドーマ細胞から、または他の形質転換された細胞から単離され得る。望ましい場合には、mRNAは、標準技術、例えば、オリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーによって全RNAから単離され得る。適した技術は、当技術分野でよく知られている。一部の実施形態では、抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、周知の方法に従って、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼを使用して同時にまたは別個に作製され得る。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによって、または公開された重鎖および軽鎖DNAおよびアミノ酸配列に基づいて、より特異的なプライマーによって開始され得る。上記で論じられたように、PCRはまた、抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用され得る。この場合には、ライブラリーは、コンセンサスプライマーまたはより大きな相同プローブ、例えば、ヒト定常領域プローブによってスクリーニングされ得る。
【0158】
DNA、通常、プラスミドDNAは、当技術分野で公知の技術を使用して細胞から単離され、例えば、組換えDNA技術に関連する前述の参考文献に詳細に示される、標準の周知の技術に従って、制限マッピングされ、シーケンシングされ得る。もちろん、DNAは、単離プロセスまたはその後の分析の間の任意の点で本発明に従って合成され得る。
【0159】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供され、重鎖可変領域のCDRのうち少なくとも1つまたは重鎖可変領域のVH-CDRのうち少なくとも2つは、本明細書において開示される抗体に由来する参照重鎖VH-CDR1、VH-CDR2またはVH-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。あるいは、VHのVH-CDR1、VH-CDR2またはVH-CDR3領域は、本明細書において開示される抗体に由来する参照重鎖VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。したがって、この実施形態によれば、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片の重鎖可変領域は、図5に示されるポリペプチド配列に関連するVH-CDR1、VH-CDR2またはVH-CDR3ポリペプチド配列を有する。一部の実施形態では、参照VH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3であり、参照VH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4であり、参照VH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5である。
【0160】
一部の実施形態では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供され、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3領域は、任意の1つのVH-CDR中の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を除いて、図5に示されるVH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する。一部の実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。一部の実施形態では、VH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3であり、VH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4であり、VH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5である。
【0161】
別の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供され、軽鎖可変領域のVL-CDRのうち少なくとも1つまたは軽鎖可変領域のVL-CDRのうち少なくとも2つは、本明細書において開示される抗体に由来する参照軽鎖VL-CDR1、VL-CDR2またはVL-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。あるいは、VLのVL-CDR1、VL-CDR2またはVL-CDR3領域は、本明細書において開示される抗体に由来する参照軽鎖VL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3アミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。したがって、この実施形態によれば、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖可変領域は、図5に示されるポリペプチド配列に関連するVL-CDR1、VL-CDR2またはVL-CDR3ポリペプチド配列を有する。一部の実施形態では、参照VL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号8であり、参照VL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号9であり、参照VL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号10である。
【0162】
別の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供され、VL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3領域は、任意の1つのVL-CDR中の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸置換を除いて、図5に示されるVL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する。一部の実施形態では、アミノ酸置換は保存的である。一部の実施形態では、VL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号8であり、VL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号9であり、VL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号10である。
【0163】
別の実施形態では、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供され、VH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3領域は、図5に示されるVH-CDR1、VH-CDR2およびVH-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する。一部の実施形態では、VH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3を含み、VH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4を含み、VH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5を含む。一部の実施形態では、VH CDR1のアミノ酸配列は、配列番号3からなり、VH CDR2のアミノ酸配列は、配列番号4からなり、VH CDR3のアミノ酸配列は、配列番号5からなる。
【0164】
別の実施形態では、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供され、VL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3領域は、図5に示されるVL-CDR1、VL-CDR2およびVL-CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する。一部の実施形態では、VL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号8であり、VL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号9であり、VL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号10である。一部の実施形態では、VL CDR1のアミノ酸配列は、配列番号8からなり、VL CDR2のアミノ酸配列は、配列番号9からなり、VL CDR3のアミノ酸配列は、配列番号10からなる。
【0165】
当技術分野で公知のように、2つのポリペプチドまたは2つのポリヌクレオチド間の「配列同一性」は、あるポリペプチドまたはポリヌクレオチドのアミノ酸または核酸配列を、第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって決定される。本明細書において論じられる場合、任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドに対して少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるか否かは、当技術分野で公知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェア、例えば、それだけには限らないが、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI 53711)を使用して決定され得る。BESTFITは、Smith and Waterman、Advances in Applied Mathematics 2 (1981), 482-489のローカル相同性アルゴリズムを使用して、2つの配列間の相同性の最良セグメントを見い出す。特定の配列が、本明細書において記載される参照配列(例えば、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片)に対して、例えば、95%同一であるか否かを決定するために、BESTFITまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用する場合には、もちろん、同一性のパーセンテージが、参照ポリペプチド配列の全長にわたって算出され、参照配列中のアミノ酸の総数の最大5%の相同性のギャップが許容されるようにパラメータが設定される。
【0166】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、表4に表されるような抗PNAd抗体のVHまたはVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。この点において、当業者ならば、軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドが、両免疫グロブリン鎖または一方のみの可変ドメインをコードし得ることを容易に理解するであろう。配列番号2(例えば、配列番号1のヌクレオチド配列)および/または配列番号7(例えば、配列番号6のヌクレオチド配列)のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、またはそれからなるポリヌクレオチドが、本明細書においてさらに提供される。具体的な実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号1のヌクレオチド配列)を含む、またはそれからなるポリヌクレオチドが、本明細書において提供される。別の具体的な実施形態では、配列番号7のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(例えば、配列番号6のヌクレオチド配列)を含む、またはそれからなるポリヌクレオチドが、本明細書において提供される。
【0167】
一部の実施形態では、参照重鎖VHに対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%または95%同一である、免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、参照重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2である。
【0168】
一部の実施形態では、参照軽鎖VLに対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%または95%同一である、免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする核酸を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたポリヌクレオチドが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、参照軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号7である。
【0169】
また、別の場所で記載されるように、本明細書において記載されるポリヌクレオチドの断片も本明細書において提供される。さらに、本明細書において記載されるような融合ポリヌクレオチド、Fab断片および他の誘導体をコードするポリヌクレオチドも考慮される。
【0170】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法によって生成または製造され得る。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知である場合には、抗体をコードするポリヌクレオチドは、例えば、Kutmeier et al., BioTechniques 17 (1994), 242に記載されるように化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てることができ、これは、手短には、抗体をコードする配列の部分を含有する重複するオリゴヌクレオチドを合成すること、それらのオリゴヌクレオチドをアニーリングし、ライゲーションすること、および次いで、ライゲーションされたオリゴヌクレオチドをPCRによって増幅することを含む。
【0171】
あるいは、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体をコードするポリヌクレオチドは、適した供給源からの核酸から生成され得る。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが入手可能ではないが、抗体分子の配列は公知である場合には、抗体をコードする核酸は化学的に合成できる、または配列の3’および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、もしくは例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを同定するための、特定の遺伝子配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって、適した供給源(例えば、PNAd特異的抗体を発現する任意の組織もしくは細胞、例えば、抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞から、生成された抗体cDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸、好ましくは、polyA+ RNA)から得ることができる。PCRによって生成された増幅された核酸は、次いで、当技術分野で周知の任意の方法を使用して複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0172】
ひとたび抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列は、異なるアミノ酸配列を有する抗体を生成するために、例えば、アミノ酸置換、欠失および/または挿入を作出するために、ヌクレオチド配列のマニピュレーションのための当技術分野で周知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発、PCRなど(例えば、両方ともその全文が参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)およびAusubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1998)に記載される技術を参照されたい)を使用してマニピュレートされ得る。
【0173】
IV.抗体ポリペプチドの発現
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体を提供するための単離された遺伝物質のマニピュレーション後、抗体をコードするポリヌクレオチドは、通常、所望の量の抗体を生成するために使用され得る宿主細胞への導入のために発現ベクターに挿入される。抗体またはその断片、誘導体または類似体、例えば、標的分子に結合する抗体の重鎖または軽鎖の組換え発現は、本明細書において記載されている。ひとたび、本明細書において記載される抗体分子または抗体の重鎖または軽鎖またはその部分(好ましくは、重鎖または軽鎖可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の生成のためのベクターが、当技術分野で周知の技術を使用する組換えDNA技術によって生成され得る。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製する方法が、本明細書において記載される。当業者に周知である方法を使用して、抗体コード配列ならびに適当な転写および翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築できる。これらの方法として、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術およびin vivo遺伝子組換えが挙げられる。したがって、プロモーターに作動可能に連結した、本明細書において記載される抗体分子またはその抗原結合性断片またはその重鎖もしくは軽鎖または重鎖もしくは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターが、本明細書において提供される。このようなベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む場合があり(例えば、国際出願国際公開第86/05807号パンフレットおよび国際公開第89/01036号パンフレットおよび米国特許第5,122,464号明細書を参照されたい)、また抗体の可変ドメインが、重鎖または軽鎖全体の発現のためにこのようなベクター中にクローニングされ得る。
【0174】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、所望の遺伝子を宿主細胞に導入し、発現させるための媒体として、本明細書において記載される方法に従って使用されるベクターを意味するように本明細書において使用される。当業者に公知のように、このようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルスおよびレトロウイルスからなる群から容易に選択され得る。一般に、本明細書において記載されるベクターは、選択マーカー、所望の遺伝子のクローニングを容易にするための適当な制限部位ならびに真核細胞または原核細胞に侵入および/または複製する能力を含む。多数の発現ベクター系が使用され得る。例えば、1つのクラスのベクターは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスに由来するDNAエレメントを利用する。他のものは、内部リボソーム結合部位を有するポリシストロニック系の使用を含む。さらに、DNAがその染色体に組み込まれている細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたは複数のマーカーを導入することによって選択され得る。マーカーは、栄養要求性宿主に原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)または重金属、例えば、銅に対する抵抗性を提供し得る。選択マーカー遺伝子は、発現されるべきDNA配列に直接的に連結され得るか、または同時形質転換によって同一細胞に導入され得る。mRNAの最適合成のために追加の要素も必要とされ得る。これらの要素は、シグナル配列、スプライスシグナルならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終結シグナルを含み得る。
【0175】
特定の実施形態では、クローニングされた可変領域遺伝子は、発現ベクター中に、上記で論じられたような重鎖および軽鎖定常領域遺伝子(例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常領域遺伝子)とともに挿入される。真核細胞において発現を誘発可能である任意の発現ベクターが使用され得る。適したベクターの例として、それだけには限らないが、プラスミドpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAX1およびpZeoSV2(Invitrogen、カリフォルニア州、サンディエゴから入手可能)およびプラスミドpCI(Promega、ウィスコンシン州、マディソンから入手可能)が挙げられる。一般に、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の場合に、適切に高いレベルを発現するものについて多数の形質転換細胞をスクリーニングすることは、例えば、ロボットシステムによって実施され得る日常的な実験である。ベクター系はまた、その各々が、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,736,137号明細書および同5,658,570号明細書に教示されている。この系は、高発現レベル、例えば、>30pg/細胞/日を提供する。他の例示的ベクター系は、例えば、米国特許第6,413,777号明細書に開示されている。
【0176】
他の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、ポリシストロニック構築物、例えば、その全文が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003-0157641号明細書に記載されるものを使用して発現され得る。これらの発現系では、目的の複数の遺伝子産物、例えば、抗体の重鎖および軽鎖は、単一のポリシストロニック構築物から生成され得る。これらの系は、配列内リボソーム進入部位(IRES)を使用して、相対的に高レベルの抗体を提供することが有利である。適合するIRES配列は、同様に本明細書に組み込まれる米国特許第6,193,980号明細書に開示されている。当業者ならば、このような発現系は、本明細書において開示される抗体の全範囲を効率的に生成するために使用され得るということを理解するであろう。
【0177】
より一般的には、ひとたび抗体のモノマーサブユニットをコードするベクターまたはDNA配列が調製されると、適切な宿主細胞中に発現ベクターが導入され得る。プラスミドの宿主細胞への導入は、当業者に周知の種々の技術によって達成され得る。これらとして、それだけには限らないが、例えば、Fugene(登録商標)またはリポフェクタミンを使用するリポトランスフェクションを含むトランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープ(enveloped)DNAを用いる細胞融合、マイクロインジェクションおよび無傷のウイルスを用いる感染が挙げられる。通常、宿主へのプラスミド導入は、標準リン酸カルシウム共沈殿法によってである。発現構築物を有する宿主細胞を、軽鎖および重鎖生成に適当な条件下で成長させ、重鎖および/または軽鎖タンパク質合成についてアッセイする。例示的アッセイ技術として、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化セルソーター分析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0178】
発現ベクターを、従来技術によって宿主細胞に移し、トランスフェクトされた細胞を、次いで、従来技術によって培養して、本明細書において記載される方法において使用するための抗体を生成する。したがって、異種プロモーターに作動可能に連結した、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、またはその重鎖もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞も本明細書において提供される。特定の実施形態では、二本鎖抗体の発現のために、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターが、以下の詳述されるように、全免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞において同時発現され得る。
【0179】
宿主細胞は、本明細書において記載される2つの発現ベクター、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクターおよび軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターを用いて同時トランスフェクトされ得る。2つのベクターは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含有し得る。あるいは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一ベクターが使用される場合もある。このような状況では、過剰の毒性遊離重鎖を避けるために軽鎖が重鎖の前に有利に配置される;Proudfoot, Nature 322 (1986), 52; Kohler, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980), 2197を参照されたい。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含み得る。
【0180】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」とは、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを有する細胞を指す。組換え宿主からの抗体の単離のプロセスの説明では、「細胞」および「細胞培養物」という用語は、明確に別に指定されない限り、抗体の供給源を表すために同義的に使用される。言い換えれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心沈殿された全細胞から、または培地および懸濁細胞の両方を含有する細胞培養物からのいずれかを意味し得る。
【0181】
本明細書において記載される方法において使用するための抗体分子を発現させるために、様々な宿主発現ベクター系が利用され得る。このような宿主発現系は、目的のコード配列が生成され、その後、精製され得る媒体を表すだけでなく、適当なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合に、本明細書において記載される抗体分子をその場で発現し得る細胞も表す。これらとして、それだけには限らないが、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された微生物、例えば、細菌(例えば、大腸菌(E. coli)、枯草筋(B. subtilis));抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia));抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染した、もしくは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)、もしくは哺乳動物ウイルスのゲノムに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、NSO、BLK、293、3T3細胞)が挙げられる。一部の実施形態では、特に、全組換え抗体分子の発現のために、細菌細胞、例えば、大腸菌、より好ましくは、真核細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併用するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、抗体のための有効な発現系である;例えば、Foecking et al., Gene 45 (1986), 101;Cockett et al., Bio/Technology 8 (1990), 2を参照されたい。
【0182】
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は、哺乳動物起源のものであることが多く、当業者は、そこで発現されるべき所望の遺伝子産物にとって最良に適している特定の宿主細胞株を決定する能力を有すると考えられる。例示的宿主細胞株として、それだけには限らないが、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40 T抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293(ヒト腎臓)が挙げられる。具体的な実施形態では、宿主細胞株は、CHOまたは293細胞である。宿主細胞株は、通常、商業的サービス、American Tissue Culture Collectionから、または公開された文献から入手可能である。
【0183】
さらに、挿入された配列の発現をモジュレートする、または遺伝子産物を所望の特定の様式で修飾およびプロセシングする宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。種々の宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾のための特徴的な特異的な機序を有する。発現された外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするために、適当な細胞株または宿主系が選択され得る。この目的のために、一次転写物の適切なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核細胞宿主細胞が使用され得る。
【0184】
組換えタンパク質の長期の高収率生成のためには、安定発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株が操作され得る。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞は、適当な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNAおよび選択マーカーで形質転換され得る。外来DNAの導入後、操作された細胞は、濃縮培地で1~2日間成長することが許容される場合があり、次いで、選択培地に交換される。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択に対する抵抗性を付与し、細胞がプラスミドをその染色体中に安定に組み込み、成長して細胞増殖巣を形成することを可能にし、次いで、これをクローニングし、細胞株に拡大増殖できる。この方法は、抗体分子を安定に発現する細胞株を操作するために有利に使用できる。
【0185】
それだけには限らないが、それぞれtk-、hgprt-またはaprt-細胞において使用され得る、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11 (1977), 223)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48 (1992), 202)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22 (1980), 817)遺伝子を含むいくつかの選択系が使用され得る。また、抗代謝産物抵抗性は、以下の遺伝子:メトトレキサートに対する抵抗性を付与するdhfr(Wigler et al., Natl. Acad. Sci. USA 77 (1980), 357; O’Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78 (1981), 1527);ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与するgpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78 (1981), 2072);アミノグリコシドG-418に対する抵抗性を付与するneo Goldspiel et al., Clinical Pharmacy 12 (1993), 488-505; Wu and Wu, Biotherapy 3 (1991), 87-95; Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32 (1993), 573-596; Mulligan, Science 260 (1993), 926-932;およびMorgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62 (1993), 191-217; TIB TECH 11 (1993), 155-215;およびハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するhygro(Santerre et al., Gene 30 (1984), 147の選択の基礎として使用され得る。使用できる組換えDNA技術の技術分野で一般に知られる方法は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる、Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993); Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990)に、およびChapters 12 and 13, Dracopoli et al. (eds), Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY (1994); Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1 (1981)に記載されている。
【0186】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増大できる、概説については、Bebbington and Hentschel, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Academic Press, New York, Vol. 3. (1987)を参照されたい。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能である場合には、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤のレベルの増大は、マーカー遺伝子のコピー数を増大する。増幅される領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の生成も増大する;Crouse et al., Mol. Cell. Biol. 3 (1983), 257を参照されたい。
【0187】
in vitro生成によって、多量の所望のポリペプチドをもたらすためのスケールアップが可能となる。組織培養条件下での哺乳動物細胞培養のための技術は、当技術分野で公知であり、例えば、エアーリフトリアクター中、もしくは連続撹拌機リアクター中の均一懸濁培養または例えば、中空繊維、マイクロカプセル中に、アガロースマイクロビーズもしくはセラミックカートリッジ上に、固定化もしくは捕捉された細胞培養物が挙げられる。必要な場合および/または望まれる場合には、例えば、本明細書において記載される、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的生合成後、またはHICクロマトグラフィーステップに先立って、もしくはそれに続いて、ポリペプチドの溶液を、通例のクロマトグラフィー法、例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロース上でのクロマトグラフィーまたは(イムノ-)アフィニティークロマトグラフィーによって精製できる。
【0188】
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体をコードする遺伝子はまた、非哺乳動物細胞、例えば、細菌または昆虫または酵母または植物細胞において発現され得る。核酸を容易に取り込む細菌として、腸内細菌科(enterobacteriaceae)のメンバー、例えば、大腸菌(Escherichia coli)またはサルモネラ属(Salmonella);バチルス科(Bacillaceae)、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis); 肺炎球菌(Pneumococcus);肺炎球菌(Streptococcus)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)の株が挙げられる。細菌において発現される場合には、異種ポリペプチドは、通常、封入体の一部となるということはさらに理解されるであろう。異種ポリペプチドは、単離され、精製され、次いで、機能的分子へ組み立てられなければならない。抗体の四価形態が望まれる場合には、次いで、サブユニットは、四価抗体に自己組み立てするであろう;例えば、国際出願国際公開第02/096948号パンフレットを参照されたい。
【0189】
細菌系では、発現されている抗体分子のために意図される使用に応じて、いくつかの発現ベクターが有利に選択され得る。例えば、抗体分子の医薬組成物の作製のために多量のこのようなタンパク質が生成されるべきである場合には、容易に精製される、高レベルの融合タンパク質産物の発現を指示するベクターが望ましいものであり得る。このようなベクターとして、それだけには限らないが、融合タンパク質が産生されるように、抗体コード配列が、lacZコーディング領域とインフレームでベクターに個別にライゲーションされ得る、大腸菌(E. coli)発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO J. 2 (1983), 1791)、pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res. 13 (1985), 3101-3109; Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem. 24 (1989), 5503-5509)などが挙げられる。pGEXベクターもまた、外来ポリペプチドを、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現するために使用され得る。一般に、このような融合タンパク質は、可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズのマトリックスへの吸着および結合と、それに続く、遊離グルタチオンの存在下での溶出によって溶解した細胞から容易に精製できる。pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計され、その結果、クローニングされた標的遺伝子産物はGST部分から放出され得る。
【0190】
原核生物に加えて、真核生物微生物も使用され得る。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)または一般的なパン酵母は、真核細胞の微生物の中で最もよく使用されるが、いくつかの他の株、例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)も一般的に利用可能である。サッカロミセス属(Saccharomyces)での発現のためには、プラスミドYRp7、例えば、(Stinchcomb et al., Nature 282 (1979), 39; Kingsman et al., Gene 7 (1979), 141; Tschemper et al., Gene 10 (1980), 157)がよく使用される。このプラスミドは、トリプトファンで成長する能力を欠く酵母の突然変異体株、例えば、ATCC番号44076またはPEP4-1の選択マーカーを提供するTRP1遺伝子をすでに含有している(Jones, Genetics 85 (1977), 12)。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrpl病変の存在は、次いで、トリプトファンの不在下での成長による形質転換の検出のための有効な環境を提供する。
【0191】
昆虫系では、外来遺伝子を発現するためのベクターとして、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が通常使用される。ウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。抗体コード配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別にクローニングし、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下におくことができる。
【0192】
ひとたび本明細書において記載される抗体が組換えによって発現されると、全抗体、その二量体、個々の軽鎖および重鎖または本明細書において記載される他の免疫グロブリン形態を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に、プロテインA後の特異的抗原に対する親和性によって、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差別的溶解度、例えば、硫酸アンモニウム沈殿によって、またはタンパク質の精製のための任意の他の標準技術によってを含む、当技術分野の標準手順に従って精製できる;例えば、Scopes, “Protein Purification”, Springer Verlag, N.Y. (1982)を参照されたい。あるいは、本明細書において記載される抗体の親和性を増大するための別の方法は、米国特許出願公開第2002/0123057号明細書に開示されている。
【0193】
V.融合タンパク質およびコンジュゲート
一部の実施形態では、抗体ポリペプチドは、アミノ酸配列または普通は抗体と会合しない1つもしくは複数の部分を含む。例示的修飾は、以下により詳細に記載されている。例えば、本明細書において記載される一本鎖fv抗体断片は、可動性リンカー配列を含み得る、または機能性部分を付加するように修飾され得る(例えば、PEG、薬物、毒素または蛍光性、放射性、酵素、核磁気性、重金属などの標識など)。
【0194】
本明細書において記載される抗体ポリペプチドは、融合タンパク質を含み得る、本質的にそれからなり得る、またはそれからなり得る。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位を有する免疫グロブリンPNAd結合性ドメインおよび少なくとも1つの異種部分、すなわち、本来は自然には連結されない部分を含むキメラ分子である。アミノ酸配列は、融合ポリペプチド中に一緒にされる別個のタンパク質中に普通存在し得るか、または同一タンパク質中に普通存在し得るが、融合ポリペプチド中で新規配置で位置づけられる。融合タンパク質は、例えば、化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作出し、翻訳することによって作出され得る。
【0195】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに適用されるような「異種」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較されている実体の残りのものとは別個の実体に由来するということを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは類似体に融合されるべき「異種ポリペプチド」は、同種の非免疫グロブリンポリペプチドまたは異なる種の免疫グロブリンもしくは非免疫グロブリンポリペプチドに由来する。
【0196】
本明細書において別の場所により詳細に論じられるように、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、N末端もしくはC末端で異種ポリペプチドにさらに組換えによって融合され得る、またはポリペプチドもしくは他の組成物に化学的にコンジュゲートされ得る(共有結合的および非共有結合的コンジュゲーションを含む)。例えば、抗体は、検出アッセイにおいて標識として有用である分子およびエフェクター分子、例えば、異種ポリペプチド、薬物、放射性核種または毒素に組換えによって融合またはコンジュゲートされ得る;例えば、国際出願国際公開第92/08495号パンフレット、国際公開第91/14438号パンフレット、国際公開第89/12624号パンフレット、米国特許第5,314,995号明細書および欧州特許出願欧州特許第0396387号明細書を参照されたい。
【0197】
一部の例では、抗体またはその抗原結合性断片は薬物にコンジュゲートされる。このような薬物コンジュゲートを生成する方法は、当技術分野で公知であり、本明細書において記載されている(例えば、以下の実施例7~9を参照されたい)。一部の例では、薬物は、免疫抑制薬である(例えば、免疫抑制薬の例については、以下の節「免疫抑制薬または免疫調節性薬」を参照されたい。一部の例では、薬物は、タキソールである。一部の例では、薬物は、抗体またはその抗原結合性断片に直接的にコンジュゲートされる。一部の例では、薬物は、リンカーを介して抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされる。薬物を本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートするために使用され得るリンカーの例として、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)またはマレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンゾイルオキシカルボニル(mc-vc-PAB)が挙げられる。一部の例では、薬物は、抗体またはその抗原結合性断片に共有結合によってコンジュゲートされる。薬物の抗体またはその抗原結合性断片への共有結合的コンジュゲーションは、以下の実施例の節に記載されるように実施され得る。例えば、薬物は、例えば、グルタルアルデヒドを使用して化学的に修飾されて、カルボン酸基を生成し、次いで、これは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)/N-ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)化学を使用して活性化され、得られた薬物は、抗体またはその抗原結合性断片上の第一級アミン(例えば、リシン上のものなど)と優先的に反応する(すなわち、コンジュゲートする)。
【0198】
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合、すなわち、ペプチドアイソスターによって互いに接合されたアミノ酸から構成される場合があり、20種の遺伝子によってコードされるアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。抗体は、自然プロセス、例えば、翻訳後プロセシングによって、または当技術分野で周知である化学修飾技術によって修飾され得る。このような修飾は、基本的な教本に、およびより詳しく記載された研究書に、ならびに多量の研究文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含む抗体中のどの場所でも、または炭水化物などの部分上に生じ得る。同一種類の修飾が、所与の抗体中のいくつかの部位に同一程度または変動する程度で存在し得るということは認められよう。また、所与の抗体は、多数の種類の修飾を含有し得る。抗体は、例えば、ユビキチン化の結果として分岐する場合があり、またそれらは分岐を有するか、または有さない環状であり得る。環状、分岐および分岐環状抗体は、翻訳後の自然のプロセスに起因する場合も、合成法によって作製される場合もある。修飾として、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合による結合、ヘム部分の共有結合による結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合による結合、脂質または脂質誘導体の共有結合による結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合による結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合的架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA媒介性付加およびユビキチン化が挙げられる;例えば、Proteins - Structure And Molecular Properties, T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York 2nd Ed., (1993);Posttranslational Covalent Modification Of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, pgs. 1-12 (1983);Seifter et al., Meth. Enzymol. 182 (1990), 626-646; Rattan et al., Ann. NY Acad. Sci. 663 (1992), 48-62)を参照されたい。
【0199】
また、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体および異種ポリペプチドを含む融合タンパク質が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、融合タンパク質は、本明細書において記載される抗体のVH領域のうち任意の1つもしくは複数のアミノ酸配列または本明細書において記載される抗体のVL領域のうち任意の1つもしくは複数のアミノ酸配列またはその断片またはバリアントを有するポリペプチド、および異種ポリペプチド配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。別の実施形態では、本明細書において開示される診断方法および処置方法において使用するための融合タンパク質は、抗体のVH-CDRのうち任意の1つ、2つ、3つもしくはその断片、バリアントもしくは誘導体のアミノ酸配列または抗体のVL-CDRのうち任意の1つ、2つ、3つもしくはその断片、バリアントもしくは誘導体のアミノ酸配列を有するポリペプチド、および異種ポリペプチド配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。一部の実施形態では、融合タンパク質は、本明細書において記載される抗体のVH-CDR3のアミノ酸配列もしくはその断片、誘導体もしくはバリアントを有するポリペプチドおよび異種ポリペプチド配列を含み、融合タンパク質は、PNAdに特異的に結合する。別の実施形態では、融合タンパク質は、本明細書において記載される抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列および本明細書において記載される抗体の少なくとも1つのVL領域のアミノ酸配列またはその断片、誘導体またはバリアントを有するポリペプチド、および異種ポリペプチド配列を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質のVHおよびVL領域は、PNAdに特異的に結合する単一供給源抗体(またはscFvまたはFab断片)に対応する。さらに別の実施形態では、本明細書において開示される診断方法および処置方法において使用するための融合タンパク質は、抗体のVH CDRのうち任意の1つ、2つ、3つまたはそれより多くのアミノ酸配列および抗体のVL CDRのうち任意の1つ、2つ、3つまたはそれより多くのアミノ酸配列またはその断片またはバリアントを有するポリペプチド、および異種ポリペプチド配列を含む。一部の実施形態では、VH-CDR(複数可)またはVL-CDR(複数可)のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多くは、本明細書において記載される単一供給源抗体(またはscFvまたはFab断片)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子も、本明細書において提供される。
【0200】
文献において報告される例示的融合タンパク質として、T細胞受容体(Gascoigne et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 2936-2940;CD4(Capon et al., Nature 337 (1989), 525-531;Traunecker et al., Nature 339 (1989), 68-70;Zettmeissl et al., DNA Cell Biol. USA 9 (1990), 347-353;およびByrn et al., Nature 344 (1990), 667-670);L-セレクチン(ホーミング受容体)(Watson et al., J. Cell. Biol. 110 (1990), 2221-2229;およびWatson et al., Nature 349 (1991), 164-167);CD44(Aruffo et al., Cell 61 (1990), 1303-1313);CD28およびB7(Linsley et al., J. Exp. Med. 173 (1991),721-730);CTLA-4(Lisley et al., J. Exp. Med. 174 (1991), 561-569);CD22(Stamenkovic et al., Cell 66 (1991), 1133-1144);TNF受容体(Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991), 10535-10539;Lesslauer et al., Eur. J. Immunol. 27 (1991), 2883-2886;およびPeppel et al., J. Exp. Med. 174 (1991), 1483-1489 (1991);およびIgE受容体(Ridgway and Gorman, J. Cell. Biol. 115 (1991), Abstract No. 1448)の融合が挙げられる。
【0201】
本明細書において別の場所で論じられるように、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、当技術分野で公知の方法を使用して、ポリペプチドのin vivo半減期を増大するために、またはイムノアッセイにおいて使用するために、異種ポリペプチドに融合され得る。例えば、一部の実施形態では、PEGは、in vivoでのその半減期を増大するために本明細書において記載される抗体にコンジュゲートされ得る;例えば、Leong et al., Cytokine 16 (2001), 106-119; Adv. in Drug Deliv. Rev. 54 (2002), 531;またはWeir et al., Biochem. Soc. Transactions 30 (2002), 512を参照されたい。
【0202】
さらに、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、精製または検出を容易にするためにマーカー配列、例えば、ペプチドに融合され得る。特定の実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、ヘキサヒスチジンペプチド(HIS)、例えば、中でも、pQEベクター(QIAGEN、Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)中において提供されるタグであり、その多くは、市販されている。Gentz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989), 821-824に記載されるように、例えば、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の好都合な精製を提供する。精製にとって有用な他のペプチドタグとして、それだけには限らないが、インフルエンザ血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する「HA」タグ(Wilson et al., Cell 37 (1984), 767)および「フラッグ」タグが挙げられる。
【0203】
融合タンパク質は、当技術分野で周知の方法を使用して調製され得る;例えば、米国特許第5,116,964号明細書および同5,225,538号明細書を参照されたい。融合が行われる正確な部位は、融合タンパク質の分泌または結合特徴を最適化するように経験的に選択され得る。融合タンパク質をコードするDNAは、次いで、発現のために宿主細胞中にトランスフェクトされる。
【0204】
本明細書において記載される抗体は、非コンジュゲート型形態で使用される場合も、例えば、分子の治療特性を改善するために、標的検出を容易にするために、または患者の画像化もしくは療法のために、様々な分子のうちの少なくとも1つにコンジュゲートされる場合もある。本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、精製が実施される場合には精製前または精製後のいずれかで標識またはコンジュゲートされ得る。特に、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体は、治療薬、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物反応修飾物質、医薬品またはPEGにコンジュゲートされ得る。
【0205】
従来の抗体を含む免疫毒素であるコンジュゲートは、当技術分野で広く記載されている。毒素は、従来のカップリング技術によって抗体にカップリングされ得るか、またはタンパク質毒素部分を含有する免疫毒素は、融合タンパク質として生成され得る。本明細書において記載される抗体は、このような免疫毒素を含有するために対応する方法で使用され得る。このような免疫毒素の例示として、Byers, Seminars Cell. Biol. 2 (1991), 59-70 and by Fanger, Immunol. Today 12 (1991), 51-54によって記載されるものがある。
【0206】
当業者ならば、コンジュゲートはまた、コンジュゲートされるべき選択された薬剤に応じて様々な技術を使用してアセンブルできるということを理解するであろう。例えば、ビオチンを有するコンジュゲートは、例えば、PNAd結合性ポリペプチドを、ビオチンの活性化されたエステル、例えば、ビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させることによって調製される。同様に、蛍光マーカーを有するコンジュゲートは、カップリング剤、例えば、本明細書において列挙されるものの存在下で、またはイソチオシアネートもしくはフルオレセイン-イソチオシアネートとの反応によって調製され得る。本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体のコンジュゲートは、類似の方法で調製される。
【0207】
また、診断剤または治療剤にコンジュゲートされた、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体が、本明細書において提供される。抗体は、例えば、PNAd関連疾患の存在を実証するために、PNAd関連疾患になるリスクを示すために、PNAd関連疾患の発生もしくは進行をモニタリングするために、すなわち、例えば、所与の処置および/または予防レジメンの有効性を決定するための臨床検査手順の一部として、診断的に使用され得る。検出は、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体を検出可能な物質にカップリングすることによって促進され得る。検出可能な物質の例として、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、種々のポジトロン放出断層撮影を使用するポジトロン放出金属および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる;例えば、診断法として使用するために抗体にコンジュゲートされ得る金属イオンについては米国特許第4,741,900号明細書を参照されたい。適した酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適した補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、適した蛍光材料の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ、発光材料の例として、ルミノールが挙げられ、生物発光材料の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、適した放射性材料の例として、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。
【0208】
抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体はまた、それを化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識できる。次いで、化学反応の過程の間に生じる発光の存在を検出することによって、化学発光タグがつけられた抗体の存在を調べる。特に有用な化学発光標識化合物の例として、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびオキサレートエステルがある。
【0209】
抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体が検出可能に標識され得る方法の1つは、それを酵素に連結すること、および酵素イムノアッセイ(EIA)において連結された生成物を使用することによってである(Voller, A., “The Enzyme Linked Immunosorbent Assay (ELISA)” Microbiological Associates Quarterly Publication, Walkersville, Md., Diagnostic Horizons 2 (1978), 1-7);Voller et al., J. Clin. Pathol. 31 (1978), 507-520; Butler, Meth. Enzymol. 73 (1981), 482-523; Maggio, E. (ed.), Enzyme Immunoassay, CRC Press, Boca Raton, Fla., (1980);Ishikawa, E. et al., (eds.), Enzyme Immunoassay, Kgaku Shoin, Tokyo (1981)。抗体に結合される酵素は、例えば、分光光度的、蛍光定量的手段によって、または視覚的手段によって検出され得る化学部分を生成するような方法で、適当な基質、好ましくは、発色基質と反応する。抗体を検出可能に標識するために使用され得る酵素として、それだけには限らないが、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロリン酸、デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。したがって、検出は、酵素の発色基質を使用する比色法によって達成され得る。検出はまた、同様に調製された標準と比較した、基質の酵素反応の程度の視覚的比較によって達成される場合もある。
【0210】
検出はまた、様々な他のイムノアッセイのいずれかを使用して達成される場合もある。例えば、抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体を放射活性標識することによって、ラジオイムノアッセイ(RIA)の使用によって抗体を検出することが可能である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Weintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, (March, 1986)を参照されたい)。放射性同位元素は、それだけには限らないが、ガンマカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーを含む手段によって検出できる。
【0211】
抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体はまた、蛍光発光金属、例えば、152Euまたはランタニド系列の他のものを使用して検出可能に標識できる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriaminepentacetic acid)(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して抗体に結合できる。
【0212】
種々の部分を抗体またはその抗原結合性断片、バリアントまたは誘導体にコンジュゲートする技術は、周知である、例えば、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. (1985)中のArnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”;Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), Marcel Dekker, Inc., pp. 623-53 (1987)中のHellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”;Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985)中のThorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”;Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), Academic Press pp. 303-16 (1985)中の“Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”およびThorpe et al., “The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev. 62 (1982), 119-158を参照されたい。
【0213】
記載されたように、一部の実施形態では、結合分子、例えば、結合性ポリペプチド、例えば、抗体またはその免疫特異的断片の安定性または有効性を増強する部分を、コンジュゲートできる。例えば、一部の実施形態では、PEGを本明細書において記載される結合性分子にコンジュゲートして、in vivoでのその半減期を増大できる。Leong et al., Cytokine 16 (2001), 106; Adv. in Drug Deliv. Rev. 54 (2002), 531;またはWeir et al., Biochem. Soc. Transactions 30 (2002), 512A。
【0214】
A.薬物含有高分子粒子
また、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされたナノ粒子またはマイクロ粒子も、本明細書において提供される。本明細書において記載されるナノ粒子またはマイクロ粒子は、(i)生体適合性である、すなわち、薬学的に適切な量で使用された場合に生存動物において顕著な有害反応を引き起こさない、(ii)リンパ球ホーミング接着分子または本明細書において記載される抗体もしくはその抗原結合性断片を共有結合によって結合できる官能基を備える、(iii)他の分子への低い非特異的結合を示す、および(iv)溶液中で安定である、すなわち、粒子が沈殿しない材料で作製できる。粒子は、単分散(粒子あたり単一の材料、例えば、金属の結晶)または多分散(粒子あたり、複数、例えば、2、3または4の結晶)であり得る。
【0215】
いくつかの生体適合性粒子、例えば、有機または無機ナノ粒子またはマイクロ粒子は、当技術分野で公知である。リポソーム、デンドリマー、炭素材料および高分子ミセルは、有機粒子の例である。量子ドットも使用できる。無機粒子として、金属粒子、例えば、Au、Ni、PtおよびTiOナノ粒子またはマイクロ粒子が挙げられる。磁性粒子、例えば、デキストランまたはPEG分子によって囲まれたFe2+および/またはFe3+コアを有する10~20nmの球状ナノ結晶も使用できる。コロイド金ナノ粒子は、例えば、Qian et. al., Nat. Biotechnol. 26(1):83-90 (2008);米国特許第7060121号明細書;同7232474号明細書;および米国付与前特許出願公開第2008/0166706号明細書に記載されている。多機能ナノ粒子を構築し、使用するための適したナノ粒子および方法は、例えば、Sanvicens and Marco、Trends Biotech., 26(8): 425-433 (2008)において論じられている。
【0216】
一部の例では、粒子は、高分子粒子である。本明細書において記載される高分子粒子の生成において使用するのに適したいくつかの生体適合性ポリマーは、当技術分野で公知である、例えば、ポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリラクチドおよびポリグリコリド。具体的な実施形態では、高分子粒子は、PLGAポリマーを含む。具体的な実施形態では、高分子粒子は、ポリラクチドポリマーを含む。具体的な実施形態では、高分子粒子は、ポリグリコリドポリマーを含む。
【0217】
一部の実施形態では、血液タンパク質結合ならびに/または肝臓および脾臓取り込みを低減するために、高分子粒子を、例えば、米国特許第7291598号明細書、同5145684号明細書、同6270806号明細書、同7348030号明細書およびその他に記載されるように、ポリ(エチレングリコール)化(PEG化)できる。例えば、一部の実施形態では、高分子粒子は、PEG化PLGAポリマーを含む。別の例では、高分子粒子は、PEG化ポリラクチドポリマーを含む。さらに別の実施例では、高分子粒子は、PEG化ポリグリコリドポリマーを含む。ペグ化は、マクロファージ細胞による免疫認識を回避するステルス様構造を作り出し、したがって、オプソニン化の抑制および循環中での粒子の保持の増強を達成する。このような簡単な表面修飾、例えば、ペグ化は、粒子の循環半減期を数分から数時間または数十時間増大できる。
【0218】
一部の実施形態では、高分子粒子は、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片に結合される(連結される、例えば、共有結合によってコンジュゲートされる)。抗体またはその抗原結合性断片は、高分子ナノ粒子のポリマーの官能基を介して高分子粒子に結合され得る。例えば、抗体またはその抗原結合性断片は、高分子粒子にコンジュゲートされ得る。
【0219】
ナノ粒子またはマイクロ粒子は、官能基(複数可)を介して本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片に結合(連結)される。一部の実施形態では、ナノ粒子またはマイクロ粒子は、官能基(複数可)を含み、金属酸化物を互いに分散させて維持するのに役立つポリマーと会合している。ポリマーは、合成ポリマー、例えば、それだけには限らないが、ポリエチレングリコールまたはシラン、自然ポリマーまたは合成もしくは自然ポリマーいずれかの誘導体またはこれらの組合せのであり得る。有用なポリマーは親水性である。一部の実施形態では、ポリマー「コーティング」は、磁性金属酸化物の周りの連続フィルムではないが、金属酸化物に結合され、その周りを取り囲む、延長されたポリマー鎖の「メッシュ」または「雲」である。ポリマーは、デキストラン、プラナン(pullanan)、カルボキシデキストラン、カルボキシメチル(carboxmethyl)デキストランおよび/または還元型カルボキシメチルデキストランを含む、多糖および誘導体を含み得る。金属酸化物は、互いに接触する、またはポリマーによって個別に捕捉される、もしくは取り囲まれる1つまたは複数の結晶の集合体であり得る。
【0220】
他の実施形態では、ナノ粒子またはマイクロ粒子は、非高分子官能基組成物と会合している。ポリマーが会合していない安定化された、官能基付与されたナノ粒子またはマイクロ粒子合成する方法は公知であり、これもまた本発明の範囲内にある。このような方法は、例えばHalbreich et al., Biochimie, 80 (5-6):379-90, 1998に記載されている。
【0221】
一部の実施形態では、本明細書において記載される免疫抑制薬または免疫調節性薬は、ナノ粒子またはマイクロ粒子内に被包され得る、例えば、その中に混合され得る、またはそのコーティング下にあり得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される免疫抑制薬または免疫調節性薬は、例えば、その表面の外側でナノ粒子またはマイクロ粒子とコンジュゲートされ得る。
【0222】
i.免疫抑制薬または免疫調節性薬
3つの古典的な免疫抑制薬、シクロスポリンA、ラパマイシンおよびタクロリムスは、本明細書において記載される薬物含有粒子中に成功裏に組み込まれており、これらは、in vitroで制御された薬物放出およびT細胞活性の抑制を示した(Azzi, J., et al., FASEB J 24: 3927-3938, 2010;Tang, L., et al., J. Transplantation, 2012: 896141, 2012; Tong, R. & Cheng, J.J., Macromolecules 45: 2225-2232, 2012)。
【0223】
一部の実施形態では、タクロリムス(TAC、FK-509またはフジマイシン(fujimycin)としても知られる)が、本明細書において記載される薬物含有粒子中に組み込まれる。タクロリムスは、主に、宿主の免疫応答を低減し、臓器拒絶のリスクを低下させるために同種異系臓器移植後に使用される免疫抑制薬である。分子レベルでは、タクロリムスは、T細胞によるインターロイキン-2(IL-2)産生を低減できるマクロライドラクトンである(Liu J, Farmer J, Lane W, Friedman J, Weissman I, Schreiber S, Cell 66 (4): 807-815, 1991)。本送達系中に組み込むことができる他の適した免疫抑制薬または免疫調節性薬として、それだけには限らないが、ミコフェノール酸、モフェチル、シクロスポリン、シロリムス、フィンゴリモド、ミリオシン、シクロホスファミド、副腎皮質ステロイド(例えば、コルチゾール、コルチコステロン、コルチゾンまたはアルドステロン)、ラパマイシン、ミコフェノール酸、モフェチル、チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA-4抗体、抗PD1抗体、抗PDL1抗体)、抗炎症剤(例えば、抗TNF薬、例えば、アダリムマブなど)、化学療法剤およびモノクローナル抗体、例えば、抗CD3抗体、抗CD25抗体、抗IL6抗体、CTLA-4-Ig、アダリムマブ、抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)などが挙げられる。一部の実施形態では、タキソールが、本明細書において記載される薬物含有粒子中に組み込まれる。一部の実施形態では、免疫抑制薬または免疫調節性薬は、1つまたは複数のヒドロキシル基またはチオール基を有し、ある特定の触媒の存在下で重合開始剤として機能し得る。
【0224】
一部の実施形態では、薬物は、化学療法薬である。化学療法は、例えば、細胞に対して有害である細胞毒または細胞傷害性薬剤を使用することであり得る。例として、タキソール、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンDおよびピューロマイシンおよびそれらの類似体または相同体が挙げられる。治療薬として、それだけには限らないが、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ(thioepa)クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン,マイトマイシンCおよびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前は、ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))および有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。例えば、Johnson and Win, Oncoimmunology. 2018 Mar 13;7(4):e1408744;Chowdhury et al., J Intern Med. 2018 Feb;283(2):110-120;Tang et al., Nature Reviews Drug Discovery 17:854-855 (2018)を参照されたい。
【0225】
ii.薬物含有高分子粒子の合成
薬物含有ナノ粒子またはマイクロ粒子が調製され得る様々な方法があるが、すべての方法において、結果は、粒子を本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片に連結するために使用できる官能基を有する粒子でなくてはならない。
【0226】
一部の実施形態では、本明細書において記載される免疫抑制薬または免疫調節性薬は、ナノ粒子またはマイクロ粒子内に被包され得る、例えば、その中に混合され得る、またはそのコーティング下にあり得る。このような薬物が被包された粒子は、例えば、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Tang, L., et al., J. Transplantation, 2012: 896141, 2012に記載されたナノ沈殿法を使用して合成され得る。手短には、送達されるべき薬物およびPEG化ポリマーを、適した有機溶媒に溶解することができる。得られた溶液を、激しい撹拌下で非溶媒、例えば、水中に滴加して、PEG化された薬物が被包された高分子粒子を形成することができる。次いで、粒子懸濁液を室温で撹拌して、有機溶媒を蒸発させることができる。粒子懸濁液のアリコートを遠心分離でき、例えば、逆相HPLCによって上清を分析して、粒子への薬物の組み込み効率および担持量を決定できる。次いで、例えば、限外濾過によって粒子を精製し、収集できる。任意選択で、凍結防止剤、例えばウシ血清アルブミン(BSA)を粒子溶液に添加でき、これを凍結乾燥して-20℃で保存できる。得られた粒子のサイズと多分散度は、動的光散乱(DLS)および/または走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定できる。
【0227】
一部の実施形態では、本明細書において記載される免疫抑制薬または免疫調節性薬は、例えば、その表面の外側でナノ粒子またはマイクロ粒子とコンジュゲートされ得る。このような薬物がコンジュゲートされた粒子は、開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Azzi, J., et al., FASEB J 24: 3927-3938, 2010に、または国際出願公開国際公開第2008/109483号パンフレットに記載された方法を使用して合成できる。手短には、送達されるべき薬物を、適した溶媒中で1種または複数の環状モノマーおよび触媒と混合できる。薬物は、開環重合反応においてイニシエーターとして働き、薬物がポリマーに共有結合によって結合される薬物-ポリマーコンジュゲートを形成する。薬物は重合のイニシエーターとして使用されるので、薬物のポリマーへのコンジュゲーションの効率は、極めて高く、モノマー/イニシエーター比を調整することによって薬物担持パーセンテージを制御できる。次いで、薬物-ポリマーコンジュゲートおよびPEG化ポリマーを、激しい撹拌下で非溶媒、例えば、水中に滴加して、PEG化された薬物がコンジュゲートされた高分子粒子を形成することができる。次いで、粒子懸濁液を室温で撹拌して、有機溶媒を蒸発させることができる。例えば、限外濾過によって粒子を精製し、収集できる。任意選択で、凍結防止剤、例えばウシ血清アルブミン(BSA)を粒子溶液に添加でき、これを凍結乾燥して-20℃で保存できる。得られた粒子のサイズと多分散度は、動的光散乱(DLS)および/または走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定できる。
【0228】
開環重合のための適したモノマーとして、種々の環状開環モノマー、例えば、環状エステル、環状カーボネート、環状シロキサン、環状ホスフェート、環状ペプチドまたはアミノ酸誘導体または環状ホスファザンが挙げられる。例示された環状モノマーには、ラクチドまたはグリコリドが含まれる。
【0229】
本明細書において記載される高分子粒子を使用して、開環重合反応を開始可能である少なくとも1つの官能基、例えば、ヒドロキシル基またはチオール基を含有する任意の小分子薬を送達できる。薬物は、複数のこのような重合開始基、例えば、複数のヒドロキシル基またはチオール基を含有し得る。一部の実施形態では、薬物は、1つのみのこのような重合基を含有する。ヒドロキシル基は、第一級、第二級または第三級ヒドロキシル基であり得る。同様に、チオール基は、第一級、第二級または第三級チオール基であり得る。ヒドロキシル基はまた、フェノール性ヒドロキシル基であり得る。一部の実施形態では、薬物は、1つまたは複数の非フェノール性ヒドロキシル基を含有する。一部の実施形態では、薬物は、第一級または第二級ヒドロキシル基である1つまたは複数の非フェノール性ヒドロキシル基を含有する。一部の実施形態では、薬物は、単一の非フェノール性ヒドロキシル基を含有する。一部の実施形態では、薬物は、単一の第一級または第二級ヒドロキシル基を含有する。一部の実施形態では、1つまたは複数のヒドロキシル基またはチオール基を有する免疫抑制薬または免疫調節性薬は、ある特定の触媒の存在下で重合開始剤として機能する。
【0230】
薬物含有高分子粒子の形成を促進するために、いくつかの触媒を使用できる。例示的触媒として、環状モノマーの制御されたリビング重合のために開発された多数の金属酸化物(M-OR)およびアルコール-金属酸化物(RO-M)が挙げられる(O. Dechy-Cabaret, B. Martin-Vaca, & D. Bourissou, Chemical Reviews 104: 6147-6176, 2004)。金属酸化物は、ヒドロキシル含有化合物を、活性金属錯体、例えば、金属アミド化合物と混合することによってその場で調製できる(B. M. Chamberlain, M. Cheng, D. R. Moore, T. M. Ovitt, E. B. Lobkovsky, G. W. Coates, J. Am. Chem. Soc. 123: 3229, 2001)。例えば、(BDI)MgN(TMS)2、ラクチドの重合のための極めて活性の触媒を使用できる(Chamberlain、2001)。ある特定のZn触媒、例えば、(BDI)ZnN(TMS)2は、迅速な開始および比較的遅い鎖伝播を促進し、重合の触媒として使用できる。Zn媒介性ラクチド重合は、多分散性の狭いポリマーをもたらし得る。他の有用な触媒として、CaおよびFe触媒が挙げられる。Mg、Zn、CaおよびFeはヒト身体において見られる元素であるので、これらの元素を含有する触媒は、AlおよびSnを含有する他の活性触媒よりも良好な安全性プロファイルを有する。例示的Zn、Mg、CaおよびFe触媒として、有機触媒が挙げられ、国際公開第2008/109483号パンフレットに記載されている。一部の実施形態では、Zn触媒、例えば、(BDI)ZnN(TMS)2を、薬物含有高分子粒子を開始するために使用される。
【0231】
本明細書において記載される粒子は、高い薬物担持量(約50%)および担持効率(98~100%)、バースト放出効果を伴わない十分に制御された薬物放出動態およびサイズ分布が極めて狭い極めて制御された粒径を示した(Tong, R. & Cheng, J., Angew. Chem., Int. Ed. 47: 4830-4834, 2008; Tong, R. & Cheng, J., J. Am. Chem. Soc. 131: 4744-4754, 2009)。
【0232】
粒径は、反応条件を調整することによって、例えば、米国特許第5,262,176号明細書に記載されるように温度を変更することによって制御できる。均一粒径材料はまた、例えば、米国特許第5,492,814号明細書に記載されたように、遠心分離、限外濾過またはゲル濾過を使用して粒子を分画することによっても作製できる。
【0233】
本明細書において記載される薬物含有高分子粒子のサイズは、約2nm~約500μmの範囲であり得る。一部の実施形態では、薬物含有ポリマー粒子は、約0.01μm~約10μm、例えば、約0.05μm~約5μm、約0.1μm~約3μm、約1μm~約2.5μmの範囲の全体的なサイズを有する。一部の実施形態では、薬物含有高分子粒子は、約500nm~約5μmの範囲の全体的なサイズを有する。一部の実施形態では、薬物含有高分子粒子は、約1μm~約2.5μmの範囲の全体的なサイズを有する。一部の実施形態では、薬物含有高分子粒子は、約200nm~約800nmの範囲の全体的なサイズを有する。一部の実施形態では、薬物含有高分子粒子は、2~20nmの範囲の全体的なサイズを有し、細胞に送達するのに特に有用である。
【0234】
一部の実施形態では、本明細書において開示される薬物含有高分子粒子を、粒子を本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片に連結するために使用できる官能基を提供するように、表面修飾できる。例えば、Albrecht et al., Biochimie, 80(5-6): 379-90, 1998の方法のバージョンに従って粒子に官能基付与できる。ジメルカプト-コハク酸を粒子にカップリングし、カルボキシル官能基を提供できる。官能基付与されるとは、所望の部分を粒子に結合するために使用できる、アミノまたはカルボキシルまたは他の反応性基の存在を意味する。
【0235】
例えば、Gormanの方法(国際公開第00/61191号パンフレットを参照されたい)に従って、カルボキシル官能基付与されたナノ粒子またはマイクロ粒子を作製できる。カルボキシル官能基付与された粒子はまた、カルボキシル基を結合するための強塩基中でのブロモまたはクロロ酢酸との反応によって多糖コーティングされた粒子から作製できる。さらに、カルボキシル官能基付与された粒子は、アミノ官能基付与された粒子から、無水コハク酸または無水マレイン酸などの試薬の使用によってアミノをカルボキシル基に変換することによって作製できる。
【0236】
粒子をまた、過ヨウ素酸を用いて処置して、アルデヒド基を形成できる。次いで、アルデヒド含有粒子を、ジアミン(例えば、エチレンジアミンまたはヘキサンジアミン)と反応させることができ、これはシッフ塩基を形成し、それに続いて、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化シアノホウ素ナトリウムを用いて還元する。
【0237】
また、デキストランでコーティングされた粒子を作製し、例えば、エピクロロヒドリンと架橋できる。アンモニアの添加は、エポキシ基と反応してアミン基を生成する、Hogemann et al., Bioconjug. Chem. 2000. 11(6):941-6, and Josephson et al., Bioconjug. Chem., 1999, 10(2):186-91を参照されたい。
【0238】
カルボキシル官能基付与された粒子を、水溶性カルボジイミドおよびジアミン、例えば、エチレンジアミンまたはヘキサンジアミンの使用によって、アミノ官能基付与された磁性粒子に変換できる。
【0239】
ビオチン化結合性部分、例えば、オリゴヌクレオチドまたはポリペプチドを用いる使用のために、アビジンまたはストレプトアビジンを粒子に結合できる。例えば、Shen et al., Bioconjug. Chem., 1996, 7(3):311-6を参照されたい。同様に、アビジン標識された結合性部分を用いる使用のために、ビオチンを粒子に結合できる。
【0240】
一部の実施形態では、血液タンパク質結合ならびに/または肝臓および脾臓取り込みを低減するために、薬物含有高分子粒子を、例えば、米国特許第7291598号明細書、同5145684号明細書、同6270806号明細書、同7348030号明細書およびその他に記載されるようにペグ化できる。ペグ化は、マクロファージ細胞による免疫認識を回避するステルス様構造を作り出し、したがって、オプソニン化の抑制および循環中での粒子の保持の増強を達成する。このような簡単な表面修飾、例えば、ペグ化は、粒子の循環半減期を数分から数時間または数十時間増大できる。
【0241】
iii.コンジュゲーションの方法
本明細書において記載される薬物含有高分子粒子は、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片とコンジュゲートされる。
【0242】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、共有結合による結合によって、例えば、分子上の官能基と、薬物含有高分子粒子上の官能基の間の化学結合によって薬物含有高分子粒子に連結できる。官能基は、所望の部分、例えば、抗体またはその抗原結合性断片を粒子に結合するために使用できる、アミノまたはカルボキシルまたは他の反応性基であり得る。
【0243】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片は、リンカーまたは結合剤を介して薬物含有高分子粒子に結合できる。リンカーまたは結合剤は、末端アミノ、カルボキシ、スルフヒドリルまたはリン酸基を有し得る。有用なリンカーまたは結合剤の例示的例として、有機ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体、タンパク質および小分子が挙げられる。
【0244】
VI.使用方法
上記のように、本開示は、PNAdを発現する細胞に対する結合親和性が改善された(実施例6)およびリンパ節へのT細胞ホーミングを遮断する能力が改善された(実施例4)抗PNAd抗体の開発に少なくとも幾分かは基づいている。本明細書において記載される抗PNAd抗体にコンジュゲートされた薬物の投与は、生存時間の増大(実施例8)に加えて、腫瘍成長の低減、腫瘍転移の低減および腫瘍流入領域リンパ節線維症(実施例7)の低減をもたらした。さらに、本明細書において記載される抗PNAd抗体にコンジュゲートされた薬物の投与はまた、心臓移植後の生存時間を増大した(実施例9)。したがって、本明細書においておよび以下の実施例において記載される抗体-薬物コンジュゲートは、リンパ節および遠隔転移において原発腫瘍および局所転移を処置するために使用され得る;転移病巣がHEVを発現することは知られていなかったので、抗体のこの使用は予測されなかった。したがって、本開示は、リンパ球媒介性免疫応答をそれを必要とする対象において抑制する、自己免疫性糖尿病をそれを必要とする対象において処置するまたはその進行を遅延する、リンパ球媒介性炎症をそれを必要とする対象において処置する、および末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)発現性悪性腫瘍をそれを必要とする対象において処置するまたはその転移を低減するための組成物および方法を提供する。これらの方法は、処置を必要とする対象を同定すること、および対象に本明細書において記載される組成物のうち1つまたは複数を投与することを含み得る。処置を必要とする対象は、例えば、医師によって同定され得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))は、リンパ球媒介性免疫応答をそれを必要とする対象において抑制する方法であって、対象に、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))の治療上有効量を投与することを含む方法において使用され得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))は、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))の対象に治療上有効量を投与する、自己免疫性糖尿病をそれを必要とする対象において処置するまたはその進行を遅延する方法において使用され得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))は、リンパ球媒介性炎症をそれを必要とする対象において処置する方法であって、対象に、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))の治療上有効量を投与することを含む方法において使用され得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))は、PNAd発現性悪性腫瘍をそれを必要とする対象において処置するまたはその転移を低減する方法であって、対象に本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片(または抗体もしくはその抗原結合性断片を含む組成物もしくは粒子(例えば、薬物含有粒子))の治療上有効量を投与することを含む方法において使用され得る。一部の実施形態では、PNAd発現性悪性腫瘍は、リンパ腫である。一部の実施形態では、PNAd発現性悪性腫瘍は、癌である。一部の例では、癌は乳癌である。一部の例では、癌は原発腫瘍である。一部の例では、癌は、局所転移である。一部の例では、癌は、リンパ節における局所転移である。一部の例では、癌は、遠位転移(すなわち、原発腫瘍の位置から遠位)である。
【0245】
上記のように、本明細書において記載される抗体およびその抗原結合性断片は、in vivoでリンパ球遊走を模倣し、薬物、例えば、免疫抑制薬または免疫調節性薬を、リンパ組織ならびにT細胞活性化およびT細胞媒介性傷害が生じている慢性炎症の部位へ特異的に送達できる薬物含有高分子粒子の開発において特に有用である。したがって、本開示は、例えば、自己免疫または炎症性障害、例えば、1型糖尿病または関節リウマチのために免疫抑制を、および例えば、心臓またはその他の臓器移植において移植後免疫抑制を必要とする対象(例えば、ヒト)において疾患進行を処置または遅延するための組成物および方法を提供する。本開示はまた、癌(例えば、リンパ腫または乳癌)を有する対象(例えば、ヒト)において疾患進行を処置または遅延するための組成物および方法を提供する。本開示はまた、リンパ球ホーミングプロセスが腫瘍の播種において役割を果たす、および/または悪性腫瘍がPNAdを発現する、悪性腫瘍、例えば、癌、例えば、リンパ腫の進行を、化学療法薬をリンパ組織に送達することによって処置または遅延する方法を提供する。
【0246】
これらの方法は、処置を必要とする対象を同定すること、および対象に本明細書において記載される組成物のうち1つまたは複数を投与することを含み得る。処置を必要とする対象は、例えば、医師によって同定され得る。
【0247】
A.自己免疫性糖尿病を処置する方法
1型糖尿病(T1D)は、自己反応性T細胞による膵島のインスリン産生β細胞の自己免疫破壊を特徴とする(Hoglund, P., et al., J Exp Med 189: 331-339, 1999)。自己免疫性糖尿病の病態形成の中心は、流入領域膵臓リンパ節からT細胞への抗原提示細胞による膵島抗原の提示であり、自己反応性T細胞の活性化をもたらす(Roncarolo, M.G. & Battaglia, M., Nat Rev Immunol 7: 585-598, 2007)。いくつかの研究によって、膵臓リンパ節が、自己免疫性糖尿病の病態形成において重要な役割を果たすことが示されている(Katz, J.D., Wang, B., Haskins, K., Benoist, C. & Mathis, D. Cell 74: 1089-1100, 1993;Hoglund, P., et al., J Exp Med 189, 331-339, 1999;Turley, S., Poirot, L., Hattori, M., Benoist, C. & Mathis, D., J Exp Med 198: 1527-1537, 2003;Turley, S.J., Lee, J.W., Dutton-Swain, N., Mathis, D. & Benoist, C., Proc Natl Acad Sci U S A 102: 17729-17733, 2005)。プライミングに続いて、活性化された自己反応性T細胞は、膵臓に動員され、膵島炎を引き起こす。
【0248】
PNAd経路は、NODマウスにおいてリンパ組織へのリンパ球輸送を調節すると示されている(Hanninen, A., Salmi, M., Simell, O., Andrew, D. & Jalkanen, S., Blood 88: 934-944, 1996; Xu, B., et al., J Exp Med 197: 1255-1267, 2003;Xu, B., Cook, R.E. & Michie, S.A., J Autoimmun. 35: 124-129, 2010)。さらに、PNAdは、炎症状態および自己免疫疾患、例えば、T1Dにおいて静脈内皮で上方制御される(Michie, S.A., Streeter, P.R., Bolt, P.A., Butcher, E.C. & Picker, L.J., Am J Pathol 143: 1688-1698, 1993;Mikulowska-Mennis, A., Xu, B., Berberian, J.M. & Michie, S.A., Am J Pathol 159: 671-681, 2001;Penaranda, C. & Bluestone, J.A., Immunity 31: 534-536, 2009)。膵島炎の際の炎症性シグナルおよび内皮細胞活性化は、PNAdを発現するHEVに膵島内皮形態および特徴を与えると報告されている。したがって、膵島炎の発症は、PNAdの膵島発現と関連していると報告されている(Hanninen, A., Salmi, M., Simell, O., Andrew, D. & Jalkanen, S., Blood 88, 934-944, 1996;Faveeuw, C., Gagnerault, M.C., Kraal, G. & Lepault, F., Int Immunol 7: 1905-1913, 1995;Yang, X.D., et al., Proc Natl Acad Sci U S A 91: 12604-12608, 1994;Yang, X.D., et al., J Autoimmun 7: 859-864, 1994;Faveeuw, C., Gagnerault, M.C. & Lepault, F., J Immunol 152: 5969-5978, 1994;Hanninen, A., Salmi, M., Simell, O. & Jalkanen, S., Diabetes 45: 1173-1180, 1996;Dong, H., Burke, S.D. & Croy, B.A., Placenta 29: 201-209, 2008)。接着分子を介した白血球の内皮細胞との相互作用は、白血球の輸送を標的とする阻害剤または抗体の開発など、種々の戦略を設計する大きな機会を提供する(Mackay, C.R., Nat Immunol 9: 988-998, 2008)。
【0249】
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片またはそのコンジュゲートは、免疫抑制剤を膵臓リンパ節および膵臓に選択的に送達して、自己反応性T細胞を効率的に抑制する、および自己免疫性糖尿病、例えば、1型糖尿病(T1D)の進行を処置または遅延するために使用できる。いくつかの膵臓β細胞機能を有する対象が、本処置方法から恩恵を受ける可能性がより高い。このような対象は、例えば、対象のCペプチドレベルが閾値を超えていると決定することによって同定され得る。
【0250】
B.移植後免疫抑制
組織または臓器移植後、免疫細胞は同種移植片上に存在する外因性抗原に対して活性化される。活性化された免疫細胞は、移植された組織または臓器へと移動し、そこで損傷を引き起こす可能性がある。少量の免疫抑制薬を、免疫細胞が活性化される部位へ直接送達することは、その活性化を低減し、同種移植臓器の生着率を高めることができる。免疫抑制薬のこのような標的化送達はまた、多量の免疫抑制医薬の全身投与において見られる毒性を低減する。本明細書において記載される組成物は、免疫抑制剤を臓器移植の部位に直接送達し、同種移植臓器の生着率を高めるための有用なビヒクルである。
【0251】
C.リンパ腫を処置する方法
本明細書において記載される組成物はまた、リンパ腫、例えば、PNAd発現性リンパ腫を処置するために使用できる。リンパ球ホーミングプロセスは、いくつかの腫瘍の播種において役割を果たすことがわかっている。例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)の播種は、リンパ球ホーミングプログラムによって媒介される(Pals S.T., de Gorter D.J.J., and Spaargaren M, Blood 110(9): 3102-3111, 2007)。本明細書において開示される組成物によって処置できる他の例示的リンパ腫として、小リンパ性リンパ腫(SLL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、バーキットリンパ腫(BL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、皮膚リンパ腫、例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、腸リンパ腫、例えば、腸T細胞リンパ腫(ITL)、結節性T細胞リンパ腫、腸関連リンパ組織または皮膚において生じる節外性リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)および粘膜関連リンパ組織(MALT)のB細胞リンパ腫、原発性濾胞性リンパ腫(FL)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)およびヘアリー細胞白血病(HCL)が挙げられる。
【0252】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片コンジュゲートは、PNAd発現性リンパ腫の進行を処置または遅延するために使用できる。
【0253】
VII.医薬組成物
本明細書において記載される抗体またはその抗原結合性断片またはそのコンジュゲートのうち1つまたは複数の治療上有効量を、対象、例えば、ヒトへの投与に適した医薬組成物中に組み込むことができる。このような組成物は、通常、抗体またはその抗原結合断片またはそのコンジュゲート、および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において、「薬学的に許容される担体」という言語は、医薬品投与と適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むように意図される。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、公知である。任意の従来媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、このような媒体は本明細書において記載される組成物において使用できる。補足的活性化合物、例えば、リガンドの分解の阻害剤も組成物中に組み込むことができる。
【0254】
医薬組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように製剤化できる。非経口、皮内または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の構成成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射水、生理食塩水溶液、硬化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;酢酸、クエン酸またはリン酸などのバッファーおよび塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張力の調整のための薬剤。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調整できる。非経口調製物は、アンプル、ディスポーザーシリンジまたはガラスもしくはプラスチック製の複数回用量バイアル中に封入できる。
【0255】
注射用使用に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または滅菌注射用溶液もしくは分散物の即時調製のための分散物および滅菌散剤を含む。静脈内投与のためには、適した担体として、生理食塩水、静菌性水、CREMOPHOR EL(商標)(ポリエトキシル化ヒマシ油;BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は、無菌でなくてはならず、易注射性が存在する程度に流動性であるべきである。製造および保存の条件下で安定でなくてはならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用を防止しなくてはならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適した混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散物の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持できる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成できる。多数の場合、組成物中に、等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことは、好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0256】
滅菌注射用溶液は、組成物(例えば、本明細書において記載される薬剤)を必要な量で、上記で列挙された成分のうち1種または組合せを有する適当な溶媒中に組み込むこと、必要に応じて、続いて、濾過滅菌することによって調製できる。一般に、分散物は、活性化合物を、基礎分散媒および上記で列挙されたものから必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌散剤の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、以前に滅菌濾過されたその溶液から有効成分の散剤および任意の追加の所望の成分が得られる。
【0257】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセル中に封入され得るか、または錠剤に打錠され得る。経口治療的投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物はまた、マウスウォッシュとして使用するために流体担体体を使用して調製でき、流体担体中の化合物は、経口的に適用され、スウィッシュされ(swished)、吐き出されるか、または飲み込まれる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または同様の性質の化合物を含有し得る:結合剤、例えば、微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、PRIMOGEL(商標)(ナトリウムカルボキシメチルデンプン)またはコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSTEROTES(商標);流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリン;またはフレーバー剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー。
【0258】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段により得る。経粘膜または経皮投与のために、透過されるべき障壁に対して適当な浸透剤が、製剤において使用される。このような浸透剤は、一般に公知であり、例えば、経粘膜投与のために、清浄剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤の使用によって達成され得る。経皮投与のために、活性化合物は、当技術分野で一般に公知であるように、軟膏(ointments)、軟膏(salves)、ゲルまたはクリームに製剤化される。
【0259】
一部の実施形態では、活性化合物(例えば、抗体またはその抗原結合性断片またはそのコンジュゲート)は、化合物を身体からの迅速な排出から保護する担体を用いて調製される、例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。このような製剤を調製する方法は、当業者には明らかであろう。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals、Inc.から商業的に得ることができる。リポソーム懸濁液も、薬学的に許容される担体として使用できる。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば、米国特許第4,522,811号明細書に記載されるように調製できる。
【0260】
医薬組成物は、容器、パックまたはディスペンサー中に、投与のための使用説明書と一緒に含めることができる。一態様では、医薬組成物は、キットの一部として含めることができる。
【0261】
一般に、医薬組成物を投与するために使用される投与量は、望ましくない副作用、例えば、毒性、刺激作用またはアレルギー反応を伴わない予防および/または処置のための意図される目的を容易にする。個々の必要性は変わり得るが、製剤の有効量の最適範囲の決定は、当業者の範囲内である。ヒト用量は、動物研究から容易に外挿できる(Katocs et al., Chapter 27 In: “Remington's Pharmaceutical Sciences”, 18th Ed., Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)。一般に、当業者によって調整できる、有効量の製剤を提供するために必要な投与量は、年齢、健康、身体状態、体重、レシピエントの疾患または障害の種類および程度、処置の頻度、併用療法の性質、必要に応じて、所望の効果(複数可)の性質および範囲を含むいくつかの因子に応じて変わる(Nies et al., Chapter 3, In: Goodman & Gilman's “The Pharmacological Basis of Therapeutics”, 9th Ed., Hardman et al., eds., McGraw-Hill, New York, N.Y., 1996)。
【0262】
VIII.投与
本明細書において記載される組成物のうち1つまたは複数の治療上有効量は、標準方法によって、例えば、1つまたは複数の投与経路によって、例えば、米国食品医薬品局(FDA;例えば、ワールドワイドウェブアドレスfda.gov/cder/dsm/DRG/drg00301.htmを参照されたい)によって現在承認されている1つまたは複数の投与経路によって、例えば、経口的に、局所的に、粘膜的にまたは非経口的に、例えば、静脈内にまたは筋肉内に投与され得る。
【0263】
IX.キット
本発明はまた、本明細書において記載される方法において使用するためのキットを含む。一部の実施形態では、キットは、本明細書において記載される組成物の1回または複数回用量を含む。誘導レジメンおよび維持レジメンのための投与形の組成、形状および種類は、対象の必要条件に応じて変わり得る。例えば、投与形は、非経口投与形、経口投与形、遅延または制御放出投与形、局所および粘膜投与形であってもよく、その任意の組合せを含む。
【0264】
特定の実施形態では、キットは、包装または容器中に以下のうち1つまたは複数を含有する:(1)本明細書において記載される組成物の1または複数の用量、(2)1種または複数の薬学的に許容されるアジュバントまたは賦形剤(例えば、薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体または包接体)、(3)用量の投与のための1種または複数のビヒクル、(5)投与のための使用説明書。構成成分(1)~(5)のうち、すべてを含む2つ以上が、同一容器中に見られる実施形態も使用できる。
【0265】
キットが供給される場合には、含まれる組成物の異なる構成成分を、別個の容器中に包装し、使用直前に混合する場合もある。このように構成成分を別個に包装することで、活性構成成分の機能を失うことなく長期保存を可能にできる。1種より多い生理活性剤(例えば、抗体またはその抗原結合性断片またはそのコンジュゲート)が特定のキット中に含まれる場合には、生理活性剤は、(1)別個に包装され、適当な(異なるが、適合性の同様のもの)アジュバントまたは賦形剤と、使用の直前に別個に混合され得る、(2)一緒に包装され、使用の直前に一緒に混合され得る、または(3)別個に包装され、使用の直前に一緒に混合され得る。選択された化合物(例えば、抗体またはその抗原結合性断片またはそのコンジュゲート)が混合後に安定のままである場合には、化合物は、例えば、数分、数時間、数日、数カ月、数年および製造時を含む、使用直前以外の使用前の時間で混合され得る。
【0266】
本発明の特定のキット中に含まれる組成物は、異なる構成成分の寿命が最適に保存され、容器の材料によって吸着または変更されないような任意の種類の容器中で供給され得る。これらの容器に適した材料には、例えば、ガラス、有機ポリマー(例えば、ポリカーボネートおよびポリスチレン)、セラミック、金属(例えば、アルミニウム)、合金または同様の試薬を保持するために通常使用される任意の他の材料が含まれ得る。例示的容器として、制限するものではないが、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジなどを挙げることができる。
【0267】
上記のように、キットはまた、使用説明書材料とともに供給され得る。これらの使用説明書は、印刷されている場合も、および/または制限するものではないが、電子的に読み取り可能な媒体、例えば、フロッピーディスク、CD-ROM、DVD、Zipディスク、ビデオカセット、オーディオテープおよびフラッシュメモリーデバイスとして供給される場合もある。あるいは、使用説明書は、インターネットウェブサイトで公開される場合もある、または電子メールとしてユーザーに配布される場合もある。
【実施例
【0268】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載されるが、これは、特許請求の範囲において記載される本発明の範囲を制限しない。
[実施例1]
MHA112モノクローナル抗体(mAb)は、マウスおよびヒトにおいてHEVを認識する
末梢リンパ節血管アドレッシン(PNAd)を欠く、GlcNAc6ST1/2/4トリプルノックアウト(KO)マウスの2個体を、シアリルルイス(sLeX)型グリカンで装飾されたCD34を発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を用いて免疫処置した。MHA112単一ハイブリドーマクローンを、HEV免疫蛍光染色によって同定した。MHA112ハイブリドーマ培養物の上清を収集し、マウスリンパ節(LN)およびヒト扁桃腺切片を染色するために使用した。図1Aは、マウスLNの高内皮細静脈(HEV)構造の低倍率像を示し、これは、MHA112ハイブリドーマ上清によって認識された。高倍率像(図1B)は、MHA112がマウスおよびヒトHEV構造を染色することを実証した。
[実施例2]
MHA112 mAbアイソタイピング
次いで、アイソタイピング酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を実施して、MHA112 mAbの免疫グロブリン(Ig)形態を同定した。図2Aに示されるように、MHA112上清は、抗IgMコーティングされたウェルにおいて陽性であった。これらのデータは、MHA112アイソタイプがマウスIgMであることを示した。
[実施例3]
【0269】
MHA112 mAbがコンジュゲートされたNPのLNへの輸送
MECA79は、内皮細静脈上のすべての既知L-セレクチンリガンド、つまりCD34、GlyCAM-1およびMAdCAM-1のサブセットを含むPNAdを認識するモノクローナル抗体である(Hemmerich, S., Butcher, E.C. & Rosen, S.D., J Exp Med 180, 2219-2226, 1994)。MECA79は、コラゲナーゼ分散腸間膜および末梢リンパ節間質要素を免疫原として使用することによって生成され、末梢リンパ節HEVの選択的染色に基づいて選択された(Streeter et al., J. Cell. Biol. 107:1853-1862, 1988)。
【0270】
MHA112がコンジュゲートされた、MECA79がコンジュゲートされたおよびコンジュゲートされていない粒子(IR800色素が担持された)をマウスに静脈内注射した。注射の24時間後分析は、コンジュゲートされていないIR800-NPを用いて注射したマウスと比較して、MHA112-NPのLNおよび陽性対照MECA79-NP群において高シグナルを示した(図3A)。次いで、腋窩LNの切片を染色して、注射後24時間でのNPのLN内分布を評価した。DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フィリンドール(phylindole))を用いて細胞核を青色に染色した。MECA79 mAbを使用してPNAdを緑色に染色し、NPを赤色で可視化した。24時間でMECA79-NPおよびMHA112-NPは、HEVの周りに局在化していた。標的化されていないNPを注射されたマウスのLNにおいて有意に少ないNPが検出された(図3B)。MHA112-NPのLNへの輸送は、MECA79-NPと匹敵し、NPのLNへの効率的な輸送においてMHA112 mAbの特異性を強調した。
[実施例4]
【0271】
MHA112 mAbは、LNへのT細胞ホーミングを遮断した
MHA112 mAbが、in vivoでLNへのT細胞ホーミングを遮断できるか否かを試験するために、T細胞をフルオレセインイソチオシアネート(FITC)蛍光色素を用いて標識し、ナイーブマウスに移植し、19時間後にその分布を評価した。MHA112(抗HEV)は、腋窩(Axi)、鼠径(Ing)および上腕(Bra)LNに入った移植されたT細胞の数を25%を超えて低減した(図4)。さらに、MHA112の存在下で腸間膜LNに入ったT細胞の数もPBS対照のおよそ12%低減した(図4)。対照的に、MECA79は、腋窩、鼠径、上腕または腸間膜LNに入った移植されたT細胞の数を低減しなかった(図4)。脾臓に入った標識されたT細胞は、3群で変化しなかった(図4)。これらのデータは、MHA112 mAbは、HEVにおいて結合部位をT細胞と共有する可能性があり、in vivoでT細胞ホーミングを遮断したということを示した。MHA112 mAbは、T細胞ホーミングの遮断で、MECA79抗体と比較して有意により良好であった。
[実施例5]
【0272】
MHA112 mAb配列
MHA112重鎖および軽鎖可変領域(それぞれ、VHおよびVL)の配列は、図5に示されており、フレームワーク領域(FR1~FR4)およびIMGT相補性決定領域(CDR1~CDR3)が描かれている。
【0273】
実施例1~5において使用された材料および方法
免疫処置および抗体単離
PNAdを欠く、GlcNAc6ST1/2/4トリプルKOマウスの2個体を、sLeX-typeグリカンで装飾されたCD34を発現するCHO細胞株を用いて免疫処置した。3回目の免疫処置後、ハイブリドーマのためにマウスを屠殺した。HEV染色によっておよそ500の単一クローンをスクリーニングした。マウスおよびヒトHEVに対するモノクローナル抗体MHA112を同定した。
【0274】
免疫組織化学
新鮮なLNを組織凍結培地中に包埋した。蛍光共焦点顕微鏡による画像化のためにクリオスタット切片(8μm厚)を作製した。MHA112を組織染色のために一次抗体として使用した。Alexa Fluor 488がコンジュゲートされた抗マウスIgMを二次抗体として使用した。DAPIを使用して細胞核を染色した。
【0275】
ELISA
96ウェルELISAプレートを、ヤギ抗マウスIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3(5μg/mL)を用いてコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。次いで、ウェルをダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中5%のBSAを用いてブロッキングし、DPBS+0.05% Tween-20(PBST)を用いて3回洗浄した。次いで、37℃で1時間のインキュベーション期間の間、ウェルにMHA112ハイブリドーマ上清(1:500)を添加した。PBSTを用いてウェルを再度洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)がコンジュゲートされたヤギ抗マウス免疫グロブリン(Ig)(Invitrogen)とともに37℃で1時間インキュベートした。PBSTを用いて3回洗浄した後、次いで、サンプルを3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンを用いて処理し、VersaMaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corp.)を使用して450nmで吸光度を記録した。
【0276】
リンパ節輸送
チオール-マレイミド化学反応を使用してナノ粒子(NP)の機能的表面にMECA79およびMHA112 mAbをコンジュゲートした。穏やかな還元剤(トリス(2-カルボキシエチル(carboxythyl))ホスフィン(TCEP)、室温で15分間)を用いてMECA79およびMHA112 mAbを事前処理してチオール基を切断し、直ちに、NP懸濁液と混合した。NP上のマレイミド基は、MECA79およびMHA112抗体の切断されたチオールに共有結合的にコンジュゲートした。使用の前にMECA79-NPおよびMHA112-NPを4℃で保存した。体内分布研究のために、8~10週齢のC57BL/6J(JAX番号000664)マウスを使用した。サンプルを後眼窩注射によって静脈内投与した。750~780nmの励起フィルターおよび800nmロングパス発光フィルターを備えたUVP iBOX Explorer画像化顕微鏡(UVP)を使用して、蛍光MECA79-IR-NPおよびMHA112-IR-NPの輸送を研究した。腋窩、上腕、鼠径、腎臓および腸間膜を含むいくつかのLNを回収し、iBOXを使用して画像化した。
【0277】
T細胞遮断
3個体のC57BL/6マウスから脾臓を回収した。単細胞懸濁液を調製し、細胞をMACS試薬およびカラム(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、Germany)を製造業者の使用説明書に従って用いてT細胞について陽性濃縮した。注射のために、T細胞をCellTracker Green(Thermo Fisher)を用いて標識し、滅菌生理食塩水に再懸濁し、500万個のT細胞を100μlで各マウスに注射した。T細胞注射の2時間前に、遮断抗体MHA112およびMECA79をマウスあたり200μl中の200μgで腹膜内に(i.p.)投与した。移植の19時間後、マウスを安楽死させ、LNをフローサイトメトリーのために処理した。
[実施例6]
【0278】
MHA112結合親和性
MHA112の親和性をMECA79と比較するために、細胞ベースのELISAを実施した。PNAdを発現するCHO細胞(CHO-PNAd)(2×10個)を96ウェルプレート上にコーティングし、37℃で一晩インキュベートした。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて5回洗浄した後、プレートを1%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて固定し、3%ウシ血清アルブミン(BSA)を用いてブロッキングした。MECA79およびMHA112を1ng/mlから300μg/mlへ段階希釈した。PBST中で5回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)がコンジュゲートされたヤギ抗マウスおよび抗ラット二次抗体を1:10,000希釈で添加し、室温で1時間インキュベートした。TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質を添加して結合を検出し、TMB停止溶液(N600、Thermo Scientific)を添加することによって反応を停止した。吸光度シグナルを450nmで読み取った。図6に示されるように、MECA79およびMHA112の結合親和性のフィッティング曲線を構築し、Kd値はそれぞれ1.41nMおよび0.97nMであった。このデータは、MHA112の結合親和性はMECA79よりも高い(30%)ということを示した(図6)。
[実施例7]
【0279】
MHA112-薬物コンジュゲーションは、腫瘍成長、線維症および転移を低減する
マウスにイソフランを用いて麻酔し、4T1乳房腫瘍細胞を用いて乳腺中に皮下注射を行った(マウスあたり1×10個細胞)。移植後9日で開始し、遊離タキソールまたはMHA112-タキソールを1日おきに腹膜内に24日間投与した。腫瘍成長を、デジタルノギスによって週に2回モニタリングした。MHA112-タキソール群の腫瘍サイズは、移植後5週間でそれぞれ、対照群(リン酸緩衝生理食塩水処理)および遊離タキソール群の約3分の1および約2分の1だった(p=0.0001)(図7)。これらの結果は、乳房腫瘍のマウスモデルの処置におけるMHA112-タキソールの優位性を示した。LNにおける薬物送達の動態は、ほとんど知られていない。流入領域リンパ節は、転移の主要な部位である。リンパ節中のこれらの転移性位置は、化学療法薬の高用量の全身投与でさえ処置することが極めて困難であり、患者側に顕著な毒性および不耐性をもたらすことが多い。
【0280】
MHA112は、LN中の隠れた転移性ニッチを標的とする独特の前提を保持する。したがって、LN中の腫瘍集団におけるMHA112のLN送達の効果を調査した。MHA112の、LNの構造全体を回復させる能力の程度も調査した。腫瘍は、線維性環境を作出することがわかっている。4T1腫瘍流入領域リンパ節(TDLN)を凍結切片法によって切り、抗HEV(sc-19602、SCBT)、抗LYVE1(ab14917、Abcam)、抗汎サイトケラチン(C2931、Sigma)、抗コラーゲンI(ab34710、Abcam)、抗コラーゲンIV(ab6586、Abcam)および抗ラミニン(ab11575、Abcam)で染色した。DAPI(VECTASHIELD、Vector Laboratories)を使用して、細胞核を対比染色した。染色された組織切片を、EVOSTM FL Auto 2画像化システムを使用して可視化した。図8における画像は、対照群および遊離タキソール群のTDLNは、HEVおよびリンパ(LYVE1)領域が広がっていたことを示す。MHA112-タキソールTDLNにおけるHEVおよびリンパの広がりは、他の群よりも少なかった。さらに、汎サイトケラチンは、MHA112-タキソール群のTDLNにおける原発腫瘍転移も、他の群を比較して有意に減少したことを示した。TDLNの構造変化も調べた。図9に示されるように、MHA112-タキソールにおいて、コラーゲンI、IVおよびラミニン発現レベルは低かった。このデータは、MHA112-タキソールのTDLN線維症が改善されたことを示した。
[実施例8]
【0281】
MHA112-薬物コンジュゲーションは、in vivo転移性癌モデルにおいて生存を増大した
腫瘍転移に対するMHA112-タキソールの効果を調査するために、4T1腫瘍細胞株をマウス肝臓の門脈中に穏やかに注射した(マウスあたり1×10個細胞)。移植後4時間で開始し、160ngの遊離タキソールまたはMHA112-タキソールを1日おきに腹膜内に20日間投与した。生存を毎日モニタリングした。図10の生存曲線は、対照群および遊離タキソール群の生存時間中央値(MST)は、それぞれ36日および37日であったことを示す。MHA112-タキソール群におけるMSTは、有意に長かった(p<0.0001)、MST=58。
[実施例9]
【0282】
MHA112-薬物コンジュゲーションは、pan02膵臓癌モデルの生存を増大した
マウスにイソフランを用いて麻酔し、Panc02膵臓腫瘍細胞をマウスの膵臓に穏やかに注射した。Panc02腫瘍モデルのために、マウスあたり200万個の細胞(2×10個細胞)を注射した。移植後4時間で開始し、160ngの遊離タキソールまたはMHA112-タキソールを1日おきに腹膜内に20日間投与した。生存を毎日モニタリングした。図11の生存曲線は、対照群および遊離タキソール群の生存時間中央値(MST)は、それぞれ30日および32日であったことを示す。MHA112-タキソール群におけるMSTは、有意に長かった(p<0.001)、MST=45。
【0283】
実施例7~9において使用された材料および方法
抗体-薬物コンジュゲート
高真空下で24時間乾燥した4mLバイアル中で、グルタル酸無水物(100mg、Sigma-Aldrich)およびタキソール(33mg、LC laboratories)を調製し、1mLのピリジンに溶解した。溶液を、Ar雰囲気下で室温で2時間撹拌した。高真空下で2時間の溶媒の除去によって反応をクエンチした。勾配溶媒システム(40分間の0.1%ギ酸を有する15%から75%のACN/H2O)を用いる逆相HPLC(Phenomenex Luna 5μm C18 250×10.0mm、流速2mL/分、UV250nm検出)によって2’-グルタリルタキソールを精製した。DMSO(Thermo Scientific Fisher)に溶解した2’-グルタリルタキソール(0.2mg)を、MESバッファー(pH6.0、Thermo Scientific Fisher)中の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC、0.4mg、Sigma-Aldrich)およびスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミド)(1.1mg、Thermo Scientific Fisher)を用いて室温で15分間活性化した(最終溶液;10% DMSO中の約1mL)。EDCを、2-メルカプトエタノール(1.4μL、Sigma-Aldrich)によって10分間クエンチした。直ちに、溶液のpHは、NaCO(0.1M、Sigma-Aldrich)によって約8に増大した。PBS(pH7.4、Corning)に溶解したMHA112を、活性化された2’-グルタリルタキソールと室温で2時間混合した(1:20モル比のMHA112対タキソール、最終溶液;10% DMSO)。10,000rpmで15分間、2回の遠心フィルター(Amicon(登録商標)、10kD MWCO、Sigma-Aldrich)によって透析を与え、遊離タキソールを除去した。脱塩カラム(Zeba(商標)、7kD MWCO、Thermo Scientific Fisher)によって溶液をさらに精製した。
【0284】
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と併せて説明されてきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を例示することを意図し、限定するものではないことを理解されたい。その他の態様、利点および改変は、以下の特許請求の範囲内にある。

本発明は次の実施態様を含む。
[1]
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含むVH相補性決定領域1(CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含むVH CDR2および配列番号5のアミノ酸配列を含むVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号9のアミノ酸配列を含むVL CDR2および配列番号10のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体またはそのPNAd結合性断片。
[2]
前記VHが、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むVHフレームワーク領域1(FR1)、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むVH FR2、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むVH FR3および配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むVH FR4を含む、上記[1]に記載のモノクローナル抗体またはそのPNAd結合性断片。
[3]
前記VLが、配列番号15に示されるアミノ酸配列を含むVL FR1、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むVL FR2、配列番号17に示されるアミノ酸配列を含むVL FR3および配列番号18に示されるアミノ酸配列を含むVL FR4を含む、上記[1]または[2]に記載のモノクローナル抗体またはそのPNAd結合性断片。
[4]
前記VHが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、上記[1]から[3]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[5]
前記VLが、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、上記[1]から[3]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[6]
前記VHが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、上記[1]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[7]
モノクローナル抗体である、上記[1]から[6]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[8]
マウス抗体である、上記[1]から[7]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[9]
キメラ抗体である、上記[1]から[7]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[10]
ヒト化抗体である、上記[1]から[7]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[11]
抗体である、上記[1]から[10]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[12]
ヒト由来重鎖および軽鎖定常領域を含む、上記[11]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[13]
アイソタイプ免疫グロブリンミュー(IgM)の重鎖定常領域を含む、上記[11]または[12]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[14]
前記抗体のPNAd結合性断片である、上記[1]から[10]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[15]
前記PNAd結合性断片が、一本鎖Fv断片(scFv)、F(ab’)断片、F(ab)断片およびF(ab’)2断片からなる群から選択される、上記[14]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[16]
薬剤にコンジュゲートされている、上記[1]から[15]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[17]
前記薬剤が、造影剤、細胞傷害性薬剤または薬物である、上記[16]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[18]
前記薬剤が、薬物含有高分子粒子である、上記[16]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[19]
前記薬物含有高分子粒子が、免疫抑制薬または免疫調節性薬を含む、上記[18]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[20]
前記コンジュゲーションが、共有結合コンジュゲーションである、上記[16]から[19]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[21]
前記コンジュゲーションが、リンカーを介する、上記[16]から[19]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[22]
前記リンカーがポリエチレングリコールである、上記[21]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片。
[23]
上記[1]から[15]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
[24]
重鎖可変領域(VH)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、前記VHが配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
[25]
重鎖をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、前記重鎖が、重鎖可変領域(VH)を含み、前記VHが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
[26]
配列番号1に示される核酸配列を含む、上記[24]または[25]に記載のポリヌクレオチド。
[27]
軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、前記VLが、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
[28]
軽鎖をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、前記軽鎖が、軽鎖可変領域(VL)を含み、前記VLが、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
[29]
配列番号6に示される核酸配列を含む、上記[27]または[28]に記載のポリヌクレオチド。
[30]
プロモーターに作動可能に連結した、上記[24]または[27]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[31]
プロモーターに作動可能に連結した、上記[25]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[32]
プロモーターに作動可能に連結した、上記[28]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[33]
第1のプロモーターに作動可能に連結した、上記[25]に記載のポリヌクレオチドおよび第2のプロモーターに作動可能に連結した、上記[28]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[34]
ポリヌクレオチドがプロモーターに作動可能に連結されている、上記[24]または[27]に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
[35]
ポリヌクレオチドがプロモーターに作動可能に連結されている、上記[25]または[28]に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
[36]
上記[30]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[37]
上記[31]に記載のベクターおよび上記[32]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[38]
上記[33]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[39]
抗末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)抗体またはそのPNAd結合性断片を生成する方法であって、(a)上記[35]、[37]または[38]に記載の宿主細胞を培養すること、および(b)前記培養から前記抗体を単離することを含む方法。
[40]
上記[1]から[17]のいずれかに記載の抗体またはそのPNAd結合性断片の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
[41]
上記[18]または[19]に記載の抗体またはそのPNAd結合性断片の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
[42]
それを必要とする対象においてリンパ球媒介性免疫応答を抑制する方法であって、前記対象に、上記[40]または[41]に記載の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法。
[43]
それを必要とする対象において自己免疫性糖尿病の進行を処置または遅延する方法であって、前記対象に、上記[40]または[41]に記載の医薬組成物の治療上有効量を投与する、方法。
[44]
それを必要とする対象においてリンパ球媒介性炎症を処置する方法であって、前記対象に、上記[40]または[41]に記載の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法。
[45]
それを必要とする対象において末梢リンパ節アドレッシン(PNAd)発現性悪性腫瘍の転移を処置または低減する方法であって、前記対象に、上記[40]または[41]に記載の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含む方法。
[46]
前記PNAd発現性悪性腫瘍がリンパ腫である、上記[45]に記載の方法。
[47]
それを必要とする対象に薬物を送達する方法であって、前記対象に、上記[41]に記載の医薬組成物の治療上有効量を投与することを含み、前記対象に送達される前記薬物が、抗体またはそのPNAd結合性断片にコンジュゲートされた薬物含有高分子粒子の薬物である、方法。
[48]
前記薬物が、前記対象における1つもしくは複数のリンパ組織または慢性炎症の1つもしくは複数の部位に送達される、上記[47]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
【配列表】
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