(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】特に熱遮蔽システムに使用するための、固体伝播音を低減するためのデカップリング要素
(51)【国際特許分類】
F01N 13/14 20100101AFI20241114BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20241114BHJP
F16F 15/06 20060101ALI20241114BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
F01N13/14
F16B5/06 B
F16F15/06 A
F01N13/08 D
(21)【出願番号】P 2021551933
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020054164
(87)【国際公開番号】W WO2020178017
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】102019105237.8
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509016830
【氏名又は名称】エルリングクリンガー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ディルンバーガー,パスカル
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123895(JP,A)
【文献】特開2017-219192(JP,A)
【文献】実開昭62-012047(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130758(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/14
F16B 5/06
F16F 15/06
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に熱遮蔽システムに使用するための、固体伝播音を低減するためのデカップリング要
素であって、固定相手部品に固定するための固定手段を差し込むための差込開口部(3)
を有するスリーブ要素(2)を備え、その際前記差込開口部(3)が前記スリーブ要素(
2)の軸方向(A)に伸び、及び前記スリーブ要素(2)が半径方向(R)に張り出して
いるカラー(6、7)を有し、該カラーが互いに軸方向(A)に間隔を空けており、その
際前記カラー(6、7)の間にダンパー要素(9)が配置され、該ダンパー要素が半径方
向外側に前記カラーを越えて伸びており且つ固定するための固定要素(10)を使用して
熱遮蔽部分(13)に備えられており、及び前記ダンパー要素(9)がメタルワイヤー構
造物として形成されているデカップリング要素において、前記ダンパー要素(9)が軸方
向(A)に弾性的にプリロードをかけて前記スリーブ要素(2)の前記カラー(6、7)
の間にある隙間(8)に配置され、
前記ダンパー要素(9)そのものの軸方向のプリロードのために、前記スリーブ(2)
の少なくとも一つの前記カラー(6、7)が少なくとも一つの凹部を備え、該凹部が前記
カラーの間の軸方向(A)の距離を局所的に狭め、
前記凹部が、リング状、点状又は線状のエンボス(14)であり、該エンボスが突出部
(15)を少なくとも一つの前記カラー(6、7)に形成し、その際前記突出部(15)
が他の前記カラー(7、6)の方向に向けて突出しており、及び前記カラー(6、7)の
間の前記間隔が縮小し、
前記エンボスの突出量が、軸方向(A)で測定した前記ダンパー要素(9)の厚みの約
1/20~1/5であることを特徴とする、デカップリング要素。
【請求項2】
前記ダンパー要素(9)の軸方向のプリロードが、前記ダンパー要素(9)そのものの弾性変形によって行われることを特徴とする、請求項1
に記載のデカップリング要素。
【請求項3】
前記少なくとも一つのエンボス(14)が前記カラー(6、7)の一つに配置され、及び前記エンボス(14)を有する前記カラー(6、7)の壁厚が別の前記カラー(6、7
)よりも薄く、当該別の前記カラー(6、7)に対して前記ダンパー要素(9)が前記
凹部によって押されることを特徴とする、請求項1
又は2のいずれか一項に記載のデカップリング要素。
【請求項4】
前記ダンパー要素(9)が半径方向内側に、前記スリーブ要素(2)に対して間隔を空
けて配置されていることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載のデカップリング要素。
【請求項5】
前記スリーブ要素(2)が、形成された第一のカラー(6)と、前記スリーブ要素(2
)の円筒形セクション(5)を変形することで得られる第二のカラー(7)とを備えた一
体構造として形成されていることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載のデカップリング要素。
【請求項6】
前記スリーブ要素(2)が、二つのハーフスリーブ(20)を差し込んで一つにするこ
とが可能(押込み可能)なツーピース構造で形成されているか、又は一つのハーフスリー
ブ要素(20)と一つの座金形状の要素を形状接合、例えばリベット接合によって製造可
能であることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載のデカップリング要素。
【請求項7】
前記突出部(15)が前記ダンパー要素(9)の弾性変形のために、前記スリーブ要素
(2)の一つのカラー(6)から前記カラー(6、7)の間の前記隙間(8)へ、方向(
軸方向(A))において別のカラー(7)を指して形成されることを特徴とする、請求項
1から
6のいずれか一項に記載のデカップリング要素。
【請求項8】
前記スリーブ要素(2)の両方のカラー(6、7)は、少なくとも一つの前記突出部(
15)を有し、前記突出部が縦断面図において軸方向(A)に互いに向かい合っているか
又は互いにオフセットされて配置されていることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載のデカップリング要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に熱遮蔽システムに使用するための、固体伝播音を低減するためのデカップリング要素に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のデカップリング要素は欧州特許第1548246号明細書により公知である。このようなカップリング要素は、スリーブ及び該スリーブを取り囲むダンパー要素を備えている。ダンパー要素は半径方向外側に固定要素によって熱遮蔽部分に固定されている。このようなデカップリング要素は、ダンパー要素とスリーブ要素との間に半径方向及び軸方向の遊びを有しているため、がたつき音を常時防止できるわけではない。それに加えて、遊びは軸方向だけでなく半径方向の遊びも、半径方向外側に固定されているダンパー要素に対するスリーブ要素の動力学的な動きによって、振動衝撃の際にスリーブが急激に破損することによるダンパー要素の変形を回避できるとは限らない。
【0003】
さらに、欧州特許出願公開第3293411号明細書により、ワイヤーメッシュとして形成され得るダンパー要素に加えて平らな渦巻きバネを備えたデカップリング要素が公知であり、該平らな渦巻きバネはダンパー要素(ワイヤーメッシュ)とスリーブとの間の半径方向の遊びを弾性により吸収する。
【0004】
この解決法の欠点は、長期稼働により、振動衝撃による入力が原因で、特にダンパー要素が二次元の渦巻きバネのワイヤー/巻線に支持されている箇所では、局所的な可塑変形の押しつぶしがダンパー要素に生じ得ることである。
【0005】
このことにより、時間の経過によって生じ得る遊びが、さらなる過程で振動負荷が持続すると拡大する傾向を示す。かかる事例では、がたつき音や同様のことが生じ得る、上述の変形例と同じ状況が生じる。
【0006】
さらに、欧州特許出願公開第3252340号明細書により、多数の個別部品から構成されて振動する構成要素と分離するための構成要素として一組の渦巻きバネを備え、該渦巻きバネが半径方向外側の熱遮蔽部分で支持されており、及び半径方向内側のスリーブのカラーで支持されている、デカップリング要素が公知である。これは、半径方向及び軸方向に遊びがない。
【0007】
この要素の欠点は、スリーブ要素と熱遮蔽部分内の開口部の切削縁部との間に、覆われていない隙間が生じ、該隙間を通って熱と場合によって音が通過し得、その結果望ましくない熱漏出及び音漏出が熱遮蔽部分及び固定点で生じる。さらに、このような要素では、該要素にゆがみがある場合に、バネ機構内で極微の摩擦だけが生じる。渦巻きバネには摩擦相手がないので、顕著な量の極微の摩擦、すなわち二つの部品相互の摩擦が生じない。このことから、当該要素の相対的にわずかな減衰しかもたらされない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第1548246号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3293411号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3252340号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、特に熱遮蔽システムに使用するための、固体伝播音を低減するためのデカップリング要素を提示することであり、該熱遮蔽システムは、熱放射の観点からだけでなく熱遮蔽部分の固定点での音漏出の観点においても最適な遮蔽を提供し、及びこの特性が長期的にも提供される。特にこのようなデカップリング要素の耐用年数が延長され、及び初期の減衰値が消音及び/又は断熱に関して可能な限り長期にわたって維持される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を備えたデカップリング要素により解決される。有利な実施形態は、従属請求項に提示される。
【0011】
発明に従い、本発明の課題は、特に熱遮蔽システムに使用するための、固体伝播音を低減するためのデカップリング要素により解決され、該デカップリング要素は、固定相手部品に固定するための固定手段を差し込むための差込開口部を有するスリーブ要素を備え、その際差込開口部がスリーブ要素の軸方向Aに広がり、及びスリーブ要素が半径方向Rに張り出しているカラーを有し、該カラーが互いに軸方向Aに間隔を空けており、その際カラーの間にダンパー要素が配置され、該ダンパー要素が半径方向外側にカラーを越えて伸びており且つ固定するための固定要素を使用して熱遮蔽部分に備えられており、及びダンパー要素がメタルワイヤー構造物として形成されており、その際ダンパー要素が軸方向Aに弾性的にプリロードをかけてスリーブ要素のカラーの間にある隙間に配置されている。
【0012】
この処置により、ダンパー要素が、振動負荷のかかる状態でデカップリング要素がより長期にわたって使用される場合も、例えばカタカタ音などの望ましくない騒音発生、又は例えば減衰のようなデカップリング性能の低下を引き起こす遊びが軸方向に生じ得ないことが確保される。
【0013】
好ましい一実施形態ではデカップリング要素が、ダンパー要素に軸方向Aに力をかける追加のバネ要素を使用してダンパー要素の軸方向のプリロードが行われることを特徴としている。
【0014】
この処置によって特に、ダンパー要素の軸方向のプリロードが長期間にわたって確保されるだけでなく、追加のバネ要素によってダンパー要素のバネ特性も軸方向に繊細に影響を受け得、それによってデカップラーのバネ特性/減衰特性が用途に合わせて調整されるよう機能する。
【0015】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、軸方向にプリロードがかけられたダンパー要素支持部が渦巻きバネを備えており、該渦巻きバネが緩んだ状態で横断面が円錐台形の空間形状を備えていることを特徴としている。
【0016】
この処置により、好ましいバネ要素の形成が提示される。渦巻きバネは、軸方向にプリロードがかけられた状態で構造高さが小さくなる(最大では渦巻きバネを形成しているワイヤーの線径)ことで、特に適している。円錐台形の空間形状であることにより、プリロード力が軸方向に調整されることで、減衰特性だけでなく、デカップリング要素の耐用年数又はダンパー要素の摩耗にも影響を及ぼす、簡単な手段が提示される。
【0017】
デカップラーの別の一実施形態では、横断面が円錐台形の渦巻きバネの代わりに、有利には波形座金、特に単層の波形座金も使用され得る。単層の波形座金はこの場合、軸方向Aに材料厚まで圧縮されるか、又はわずかな残留バネストロークを有していてよい。
【0018】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、デカップリング要素の軸方向のプリロードがダンパー要素の弾性変形そのものによって行われることを特徴としている。
【0019】
この処置により、特に部品数の少ない簡易に製造可能なデカップリング要素の実施形態が示される。デカップリング要素の本実施形態を形成するためには、単にスリーブ要素、ダンパー要素及び固定要素だけが必要である。
【0020】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、ダンパー要素の軸方向のプリロードのため
に、スリーブのカラーのうちの少なくとも一つが少なくとも一つの凹部を有し、該凹部が
カラーの間の軸方向Aの距離を低減することを特徴としている。
【0021】
スリーブの少なくとも一つのカラーの少なくとも一つの凹部を使って、スリーブのカラ
ーの間の隙間の内法の幅が局所的に低減され得、その結果固着突出部又は変形突出部が生
じ、及びダンパー要素が局所的にその初期状態に対してさらに圧縮される。ダンパー要素
がメタルワイヤー構造物、特に圧縮されたワイヤーメッシュから形成されているため、こ
の処置はダンパー要素の軸方向の弾性変形性そのものをそのプリロードに使用する。
【0022】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、凸部がリング状、点状又は線状のエンボスであり、該エンボスが突出部を少なくとも一つのカラーに形成し、その際突出部は他のカラーの方向に向けて突出しており、及びカラーの間の間隔Aは縮小することを特徴としている。
【0023】
この処置はエンボスのためにいくつかの有意義な空間形状を示し、該エンボスはカラーに施され得、及びダンパー要素の軸方向のプリロードを非常に長い稼働期間にわたって確保する。
【0024】
別の一実施形態ではデカップリング要素は、カラーの一つに少なくとも一つのエンボス
が配置されており、及びエンボスを有するカラーがその壁厚に関して他のカラーより薄く
、該他のカラーに対してダンパー要素が凹部により押されることを特徴としている。
【0025】
ワイヤー構造物から形成されているダンパー要素が申し分なく支持され得るよう、エンボス/突出部がダンパー要素を固着保持/弾性変形するために備えているカラーより、反対側のカラーが厚く形成され、それによってその箇所により堅牢な支持ベースが存在していることが推奨される。
【0026】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、エンボスの突出量が、軸方向Aで測定したダンパー要素の厚みの約1/20~1/5、特に1/20~1/10であることを特徴としている。
【0027】
突出部/エンボスの軸方向の突出の尺度として、通常の使用目的の場合、ダンパー要素の厚みの1/20~1/5、特に1/20~1/10が実証済みである。この場合、ダンパー要素は、ワイヤーセクションが弾性のない「ブロックになる」までは圧縮されない。しかしさらには、ダンパー要素が十分に堅固に固定されている一方で、十分な弾性変形が確保される。
【0028】
別の一実施形態ではデカップリング要素は、円錐形の渦巻きバネが半径方向Rにおいてカラーの間でスリーブの内側に当接し、及び半径方向Rにおいてカラーの外側へ突出していることを特徴としている。
【0029】
円錐形の渦巻きバネのこのような形成により、幾何学的な状況(レバーアーム)の観点からも、簡単な方法でダンパー要素のバネ特性及び減衰特性に対して軸方向に影響を及ぼすことが可能である。円錐形の渦巻きバネの軸方向のバネ力に応じて、及び円錐形の渦巻きバネのスリーブの外側のダンパー要素への作用点の半径に応じて、さまざまに異なった全体のバネ特性が調整され得る。
【0030】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、ダンパー要素が円錐形の渦巻きバネを構成する一本のワイヤーの少なくとも二つの螺線で支持され、それによって、特に座金形状のダンパー要素が屈曲している場合に、ダンパー要素の十分な支持が軸方向Aにカラー内で保証されることを特徴としている。
【0031】
この処置により、特に目的にかなった、ダンパー要素と渦巻きバネとの間の相互作用の構造的な形態が示される。ダンパー要素の屈曲(軸方向へのオフセット)により、ダンパー要素の支持がスリーブ内で必要であることが、この支持が渦巻きバネの少なくとも二つの螺線で実現されるという大きな利点をもたらす。なぜならこの場合は曲げモーメントのより優れた受容が、二つの隣接する巻線の間にわたった大きな支持幅で保証されるからである。
【0032】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、ダンパー要素が半径方向内側で、スリーブ要素に対して間隔を空けて配置されていることを特徴としている。
【0033】
この処置は、デカップリング要素が半径方向に特定のたわみを生じたときに初めて半径方向に弾性をもたせた支持が行われることを意図している場合、特に考え得る。
【0034】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、スリーブ要素が成形された第一のカラーと、スリーブ要素の円筒形のセクションを変形することで得られる第二のカラーとを備えた一体構造として形成されていることを特徴としている。
【0035】
この処置により、発明によるデカップリング要素の部品数をさらに減らすことができる。なぜなら、スリーブ要素はただ一つの部品から構成されており、該部品は変形により、二つのカラーを備えたスリーブ要素に変形されるからである。
【0036】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、スリーブ要素が二つのハーフスリーブを差し込んで一つにすることが可能(押込み可能)なツーピース構造で形成されているか、又は一つのハーフスリーブ要素と一つの座金形状の要素を形状接合することにより製造可能であることを特徴としている。
【0037】
この処置は、スリーブ要素の別法の実施形態を示す。
【0038】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、突出部がダンパー要素の弾性変形のために、スリーブ要素の一つのカラーから、カラーの間の隙間へ、方向(軸方向A)において別のカラーに向けて形成されることを特徴としている。
【0039】
この処置は、一つ/複数のカラーでのエンボスの配置の有利な実施形態を示す。
【0040】
別の一実施形態ではデカップリング要素が、スリーブ要素の二つのカラーが少なくとも一つの突出部を有し、該突出部が平面図において互いに向かい合っているか、又は互いにオフセットされた配置されていることを特徴としている。
【0041】
この処置は、ダンパー要素のさらなる個別適合のために、具体的な負荷事例に適した処置を提示している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
以下では、本発明が図を使って詳しく説明される。
【
図1】本発明によるデカップリング要素の第一の実施形態の横断面図である。
【
図2】
図1に従ったスリーブ要素の一部分の実施形態の横断面図である。
【
図3】
図1に従った実施形態の遠近法による等角図である。
【
図4】発明によるデカップリング要素の第二の実施形態の横断面図である。
【
図5】
図4に従った第二の実施形態に使用される円錐台形の渦巻きバネのバネが緩んだ状態の図である。
【
図6】本発明によるデカップリング要素の第三の実施形態の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明によるデカップリング要素1の第一の実施形態は、
図1に横断面図で示されている。かかるデカップリング要素は、スリーブ要素2を備え、該スリーブ要素は固定手段(図示せず)、例えばボルト、のための差込開口部3を有している。
【0044】
かかる固定手段を使用して、デカップリング要素1は固定相手部品4に固定可能である。スリーブ要素2は、半径方向R内側に設けられた少なくとも一つの円筒形セクション5及び円筒形セクション5から半径方向外側に伸びる第一のカラー6及び第二のカラー7を備えている。軸方向Aに見て、第一のカラー6及び第二のカラー7は互いに間隔を空け及びその間に隙間8が形成されている。隙間8の軸方向Aの内法の幅は、カラー6、7のエンボスのないセクションの間で測定され、tの符号がつけられている。
【0045】
隙間8内にはダンパー要素9があり、該ダンパー要素は好ましくは初期位置で半径方向の隙間がスリーブ要素2とダンパー要素9の間に形成され、その結果備えたダンパー要素9は、意図された半径方向の遊びにより、スリーブ要素2に対してスライド可能である。
【0046】
好ましくはワイヤー構造物として、特にメタルワイヤー構造物として、例えば圧縮され
たワイヤーメッシュとして形成されたダンパー要素9の観点から、ダンパー要素9は、軸
方向に可能な限り遊びがないか、又は弱くプリロードをかけてスライド可能に隙間8には
まっているように形成される。このことは、以下でさらに記述される凹部/エンボスをな
いものと考えた場合である。
【0047】
ダンパー要素9は、半径方向外側で固定要素10に囲まれ、該固定要素は平面図において軸方向Aに実質的にリング形状に形成され、
図1の横断面図によればS字形に形成されている。
【0048】
固定要素10のS字形の横断面の一つのアーチ形セクションはダンパー要素9の外縁を囲み、他方で固定要素10のS字形の第二のアーチ形セクションは、横断面図において、熱遮蔽部分13の穴の穴縁部12を取り囲み、このようにしてデカップリング要素1は熱遮蔽部分13と接続されている。このようなS字形の固定要素10と共に、ダンパー要素9は熱遮蔽部分13に対して、熱遮蔽部分13の片側にある。この場合は、ダンパー要素9が固定要素10を使用して、配置されている熱遮蔽部分13の側が、デカップリング要素1が取り付けられた状態で固定相手部品4の方を向いている側である。幾何学的な周辺条件に応じて、ダンパー要素9はS字形の固定要素10を使用して、熱遮蔽部分13の反対側に配置されることも可能である。
【0049】
ダンパー要素9の軸方向のプリロードのために、
図1による実施形態では、ダンパー要素9そのものの弾性変形が企図され、該ダンパー要素はワイヤー構造物として、例えば圧縮されたワイヤーメッシュ、ワイヤーニット、ワイヤークロス、ワイヤーネット又はタングルドワイヤーとして形成される。このような中実ではない、ワイヤーによって構成された要素は、企図された使用事例のために、十分な大きさの弾性変形可能性を備えている。本発明の趣旨において、「弾性変形可能」とは、その形状により、厚み方向への弾性特性を隙間8の範囲で有する素材/構成部品である。実用に関係しない極小弾性変形を意味するのではなく、もちろん非理想的な剛性を持った材料も適していない。むしろ、肉眼的な弾性を意味しており、同じ材料の純粋な固体弾性を越えたものである。
【0050】
ダンパー要素9の軸方向の弾性変形のために、カラーの一つに、ここでは第一のカラー6に、エンボス14が備えられている。
図1の横断面図によると刻印として示されているこのようなエンボス14は、反対側の、カラー6の隙間8の方を向いた側に突出部15を形成し、該突出部は隙間8の内法の幅tを局所的に狭めている。ダンパー要素9の厚みが上述のように選択される場合、例えば隙間8の内法の幅tを尺度として、このような形態は突出部15を形成するエンボス14がメタルワイヤー構造物を弾性変形させる結果をもたらす。この処置により、デカップリング要素が新品状態でダンパー要素9の軸方向Aの十分な弾性プリロードを確保することができ、その結果長期にわたる振動負荷の後も、デカップリング要素1の耐用年数にわたって、カラー6、7の間でダンパー要素9が定義された軸方向に遊びなしで保持されることが保証される。このように決められた、軸方向にプリロードをかけて(弾性変形により)達成された、隙間8内で長期的な遊びのないダンパー要素9の支持により、振動負荷が、少なくとも一つのコンポーネントで軸方向Aに振動負荷がある場合に、カラーの外側のワイヤーメッシュの範囲でたわみ(模式的に二重矢印100で暗示されている)によって受け止められ得ることが達成される。このようなたわみは、実質的にカラー6、7の半径方向外端とダンパー要素9の縁の間で固定要素10によって生じる。このたわみの結果として生じる曲げモーメントは、以下にさらに記述されるが、適切な処置によって隙間8内で支えられ得る。
図1に従った実施形態では、これは、ダンパー要素9がカラー6、7及び/又は突出部15に当たることで生じる。
【0051】
エンボス14は任意の種類の凹部であってよい。こうして例えばエンボス14は平面図
において軸方向にカラー6又は7上で、点状、線状又はその他の別の性質を持って形成さ
れてよい。基本的に、当該エンボスは、カラーの隙間8の方を向いた側、エンボスが設け
られているカラーに突出部15が生じ、該突出部はダンパー要素9の軸方向Aへの弾性変
形をもたらし、及びそれによって恒久的に遊びのない支持部を同様に保証する。
【0052】
特に好ましくは、エンボス14を備えたカラー(ここでは第一のカラー6)が、その壁厚に関して、他のカラー(ここでは第二のカラー7)よりも薄い。これにより、一方のカラー(ここでは第一のカラー6)による弾性をもたせた軸方向のプリロードが、中実の、プリロードを吸収する第二のカラー7の反対側にあるという結果となる。
【0053】
エンボス14及びそこから結果として生じる突出部15は、一方のカラー6にあっても他方のカラー7にあっても、又は両方のカラー6、7にあってもよく、その際特にエンボス14が、平面図において互いにずれるように配置される。ダンパー要素9の軸方向Aの弾性に応じて、エンボス14及びそこから結果として生じる突出部15が両方のカラー6及び7に備えられ、及び互いに向かい合っており、横断面図において両方のカラーの隙間8の内法の幅tが互いに向かい合って狭くなっていると有意義であり得る。
【0054】
図2は、
図1に従った実施形態のスリーブ要素2のハーフスリーブ20の、拡大横断面図である。カラー6は横断面図で見てくぼみ形状のエンボス14を有し、該エンボスは、エンボス14の隙間8に向いた向かい側に突出部15が形成されるまで押して変形される。
【0055】
本発明では、突出部15の軸方向の高さhの尺度として、ダンパー要素9の厚みの1/20~1/5、特に1/20~1/10が実証済みであり、その際この尺度は実質的にダンパー要素9が軸方向Aに弾性変形されるまで影響する。
【0056】
スリーブ要素2に関して、複数の実施形態が考え得る。
図1の実施形態に従ったスリーブ要素2は、二つのハーフスリーブ20から構成されたツーピース構造であり、該ハーフスリーブは互いに差し込み可能である。しかし、ハーフスリーブ20と、ハーフスリーブの自由端と形状接合される座金状要素があり、その結果座金状要素がカラー6、7のうちの一つを形成し、前記別のハーフスリーブが円筒形セクション5及びカラー6、7の別の方を形成する解決法も考えられる。
【0057】
それ以外に、スリーブ要素2が一体構造で形成されることも可能であり、その際スリーブ要素半加工品(図示せず)がカラー6、7のいずれかを有し、及び延長された(変形されていない)円筒形セクション5を有している。円筒形セクション5を適切に変形することにより、該円筒形セクションは半径方向外側に曲げられ、半径方向外側で戻し曲げられ、及び半径方向内側で終わるように変形され得、その結果前記第二のカラーは、スリーブ要素半加工品の円筒形セクション5の折り曲げた範囲から形成されている。
【0058】
図3は、記述されたように、本発明によるデカップリング要素の第一の実施形態の
図1及び
図2に関連した斜視図である。上述の構成要素には、上述の符号が付けられている。
【0059】
図4に従った別の一実施形態では、デカップリング要素1がダンパー要素9の軸方向のテンションを作り出すために追加の構成部品、すなわち円錐台形の渦巻きバネ21を有しており、該渦巻きバネは軸方向Aに緩んだ状態(
図5参照)で高さh
1である。渦巻きバネ21は複数の螺線22を有し、該巻線は半径方向Rに螺線形状で(好ましくは半径方向に非接触で)配置されている。軸方向Aに見て、渦巻きバネ21は緩んだ初期位置において
図5に従い高さh
1から高さh
2(
図4参照)に弾性的に押し縮められ得る。高さh
2は、ここでは特に及び特に好ましくは渦巻きバネ21を形成している巻線の線径に相当する。結果として、渦巻きバネ21は、組み立てた状態においてダンパー要素9と共にカラー6及び7の間の隙間8内で平らであり、且つ軸方向の広がりは線径の量しかない。
【0060】
この種のプリロードにより、ダンパー要素9は、バネ要素21(渦巻きバネ21)のどちらの側であるかに応じて、隙間8内でカラー6又は7に対して軸方向にプリロードがかけられる。当然ながら、ダンパー要素9の両側にそれぞれ一つのバネ要素21が、特に渦巻きバネ21として、存在することも企図され得る。
【0061】
特に好ましくは、ダンパー要素9がカラー6及び7の間の隙間8内で、少なくとも二つの螺線22(接触点23)と接触している。このような形状により、代表的にトルク矢印Mで示されたトルクは、有利な方法で隙間8内でカラー6及び接触点23のいずれか一つで渦巻きバネ21により支持される。
【0062】
円錐台形の渦巻きバネ要素21は、デカップリング要素1の耐用年数にわたって軸方向Aに遊びがないよう機能する。
【0063】
本発明によるカップリング要素の第三の実施形態は、
図6に示されている。
【0064】
図6に従ったデカップリング要素は、実質的に
図1に従った第一の実施形態と一致するが、以下の点で異なる。スリーブ要素2の第一のカラー6は、横断面図で皿バネ状の空間形状をしており、その半径方向にRへの主たる広がりは、円筒形セクション5から離れて外側へ向いている。第一のカラー6の皿バネ状の形状は、ここでは隙間8が内法の幅tから半径方向に最も内側の位置で、半径方向外側へ減少するよう作られる。なぜなら第一のカラー6は、ダンパー要素9を一段階押して弾性をもたせてプリロードをかけられるように、水平(
図6の水平線)に対して斜めにされるからである。隙間8はこれによって半径方向R外側へ向かって細くなるように形成される。斜めにされた第一のカラー6は、ダンパー要素9の対応する弾性のあるプリロードを与え、該プリロードは耐用年数にわたってダンパー要素9を隙間8内で遊びなく保持するよう保証する。
【0065】
すべての実施形態で共通して、デカップリング要素がダンパー要素9の軸方向のプリロードが理由で隙間8内で減衰効果乃至がたつきフリー性及び消音性の向上が耐用年数にわたって備えられる。ここでは、長く保たれるデカップリング要素1の当たりが弾性をもたせてスリーブ要素2内で受け止められることにより、ダンパー要素9は軸方向Aに遊びなしで、しかし半径方向にはスライド可能に保持される。
【0066】
さらに有利には、本発明によるデカップリング要素の概念は、自由通路という意味での熱排出スリットは備えておらず、その結果従来技術と比べて高い消音性及び/又は断熱性が期待できる。
【0067】
要約して補足すると、本発明の課題は、耐用年数の間のどの時点でも、振動の入力のどの時点でも(特に持続的負荷時)、熱遮蔽部分13の定義された正確な案内が、固体伝播音の伝達低減を保証するデカップリング要素を提供することである。固体伝播音の伝達低減と並んで、熱の特別な遮蔽も望ましい。
【0068】
第一及び第三の実施形態は、スリーブ要素2のカラー6、7の特別な形状によりこの課題を解決する。加えて、両方のカラー6、7の間にある隙間8は、ダンパー要素9の厚みに適合され、その結果初期状態で軸方向に遊びがない。このことにより、デカップリング要素1が、熱システム(本発明において熱遮蔽部分13及び少なくとも一つのデカップリング要素1から構成される)の動揺が始まるとすぐに固体伝播音を低減するよう作用し得ることが保証される。さらに、カラーの形状は、その半径方向外端が、デカップリング要素1の組み立て時にダンパー要素9が半径方向外側の辺縁にカラー6、7が押し込まれるように、丸く突き出るか又はほかの方法で成形及び/又は変形される。ダンパー要素9が弾性を持っているために、該ダンパー要素は叙述の箇所で、すなわち突出部15の箇所で、少なくとも一つのカラー6、7の半径方向外側の辺縁でプリロードがかけられる。ワイヤーメッシュ(ダンパー要素9)のプリロードにより、デカップリング要素1が持続的に負荷をかけられる状態で、ワイヤーメッシュ構造内での移動/変形によって軸方向の遊びの発生が相殺される。この処置により、振動が起こるどの時点でも、特に持続的に負荷をかけられる状態で、熱遮蔽部分13の定義された正確な案内が保証される。
【0069】
その上、ダンパー要素9の(すなわちワイヤーメッシュ要素の)スリップ運動は、取り囲んでいるカラー6、7の間で、エンボス14の押し込み高さの変化によって影響を与え得る。一体構造のスリーブ要素の実施形態では、押し込み高さを第二のスリーブカラーのプレス工程で変化させることが可能である。従って、デカップリング要素1の軸方向及び半径方向の動的剛性は、各使用目的に合わせて押し込み高さにより修正可能である。
【0070】
例えばデカップリング要素1の機械的耐負荷能力は、押し込み高さの拡大によって高められ得る。ワイヤーメッシュパラメーター、例えばその厚み、の代わりに押し込み高さを適合することの利点は、それによってコンポーネント数が少なくて済み、及び材料コストも、個数が増えることで低減可能であることにある。
【0071】
以上により、本発明の重要な特徴は、両方のカラー6、7の間に隙間を設けることであり、該隙間は好ましくはダンパー要素9の厚みと同じであり、その結果初期状態で軸方向に遊びがないことが結論される。
【0072】
別の重要な項目は、デカップリング要素1の耐用年数を高めるための、ダンパー要素9の軸方向Aのプリロードである。軸方向プリロードは、円錐形の渦巻きバネ21を使用することで、ダンパー要素9のプリロードが達成され得る。ダンパー要素9のプリロードのために前記スリーブ要素のカラーを丸み付けする又は形成することも同様に考え得る。
【0073】
これにより、熱遮蔽部分13の正確で定義された案内は、発明に従ったデカップリング要素1により、振動が起こるどの時点でも(特に持続的に負荷をかけられる状態で)生み出される。これに関して、持続的に負荷をかけられる状態で、軸方向のA遊びの発生の減少/防止に寄与する。
【0074】
さらに別の重要な利点は、それぞれの使用目的に応じて、ワイヤーメッシュ押し込み高さの振動(隙間8の内法の幅tの押し込み低減)による、又はダンパー要素9のプリロードによる、デカップリング要素軸方向A及び半径方向Rの動的剛性の修正が可能性であることである。このことから、発明によるデカップリング要素1の高い可変性が実現されると同時に、コンポーネント数をより少なくし、個数が減ることで材料価格が低減される。
【符号の説明】
【0075】
1 デカップリング要素
2 スリーブ要素
3 差込開口部
4 固定相手部品
5 円筒形セクション
6 第一のカラー
7 第二のカラー
8 隙間
9 ダンパー要素
10 固定要素
12 穴縁部
13 熱遮蔽部分
14 エンボス
15 突出部
20 ハーフスリーブ
21 バネ要素/渦巻きバネ
22 螺線
A 軸方向
R 半径方向
M トルク矢印
t 内法の幅
h、h1、h2 高さ