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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】統合ストレス応答経路のモジュレーター
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/04 20060101AFI20241114BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07D413/04 CSP
C07D413/14
A61K31/4245
A61K31/4439
A61K31/497
A61K31/506
A61K45/00
A61P1/16
A61P3/00
A61P9/00
A61P9/06
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P11/00
A61P13/12
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/04
A61P25/18
A61P25/28
A61P27/02
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021562991
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020061148
(87)【国際公開番号】W WO2020216764
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】19170502.9
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510048853
【氏名又は名称】エヴォテック・インターナショナル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evotec International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジョン・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】イレナ・ドリー・レブレ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーク・ルダード
(72)【発明者】
【氏名】モハマド・サバ
(72)【発明者】
【氏名】ダリル・シモン・ウォルター
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/046779(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/193063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体
(式中、
1は、C5シクロアルキレン、C5シクロアルケニレン、または窒素環原子含有5員ヘテロシクレンであり、ここで、A1は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR4で場合により置換されており;
各R4は独立して、ハロゲン、CN、OR5、環が少なくとも部分的に飽和されているオキソ(=O)、またはC1~6アルキルであり、ここで、C1~6アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
5は、HまたはC1~6アルキルであり、ここで、C1~6アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
2は、フェニルまたは5員から6員の芳香族ヘテロシクリルであり、ここで、A2は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR6で場合により置換されており;
各R6は独立して、OH、O(C1~6アルキル)、ハロゲン、CN、シクロプロピル、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、ここで、シクロプロピル、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;または
2つのR6は、接続されて、それらが付着されている原子と一緒に環A2aを形成し;
2aは、フェニル、C3~7シクロアルキル、または3員から7員のヘテロシクリルであり、ここで、A2aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR7で場合により置換されており;
各R7は独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
1は、HまたはC1~4アルキルであり、ここで、C1~4アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
2は、HまたはC1~4アルキルであり、ここで、C1~4アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
3は、A3であるか;または
2およびR3は、接続されて、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR8で場合により置換されている3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン環を形成し;
3は、フェニルまたは5員から6員の芳香族ヘテロシクリルであり、ここで、A3は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR8で場合により置換されており;
各R8は独立して、ハロゲン、CN、C(O)OR9、OR9、C(O)R9、C(O)N(R99a)、S(O)2N(R99a)、S(O)N(R99a)、S(O)29、S(O)R9、N(R9)S(O)2N(R9a9b)、SR9、N(R99a)、NO2、OC(O)R9、N(R9)C(O)R9a、N(R9)S(O)29a、N(R9)S(O)R9a、N(R9)C(O)OR9a、N(R9)C(O)N(R9a9b)、OC(O)N(R99a、C 1~6アルキル、C2~6アルケニル、またはC2~6アルキニルであり、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR10で場合により置換されており;
9、R9a、R9bは、H、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルからなる群から独立して選択され、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
各R10は独立して、ハロゲン、CN、C(O)OR11、OR11、C(O)R11、C(O)N(R1111a)、S(O)2N(R1111a)、S(O)N(R1111a)、S(O)211、S(O)R11、N(R11)S(O)2N(R11a11b)、SR11、N(R1111a)、NO2、OC(O)R11、N(R11)C(O)R11a、N(R11)SO211a、N(R11)S(O)R11a、N(R11)C(O)N(R11a11b)、N(R11)C(O)OR11a、またはOC(O)N(R1111a)であり;
11、R11a、R11bは、H、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルからなる群から独立して選択され、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されている)。
【請求項2】
1 はHである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体
【請求項3】
1は、窒素環原子含有5員ヘテロシクレンであり、A1は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR4で場合により置換されている、請求項1もしくは2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項4】
1は、オキサジアゾール、イミダゾール、イミダゾリジン、ピラゾールおよびトリアゾールからなる二価の複素環の群から選択される窒素環原子含有5員ヘテロシクレンであり、A1は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR4で場合により置換されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項5】
1 はオキサジアゾールである、請求項4に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体
【請求項6】
1は、非置換であるか、または同じまたは異なる1つまたは2つのR4で置換されている、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項7】
1 は非置換である、請求項6に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体
【請求項8】
4は、環が少なくとも部分的に飽和されているオキソである、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項9】
1は、
【化2】
である、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項10】
2は、フェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリルまたは1,2,4-オキサジアゾリルであり、A2は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR6で場合により置換されている、請求項1からのいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項11】
2は、フェニル、ピリジル、ピラジニルまたはピリダジニルであり、A2は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR6で場合により置換されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項12】
2は、同じまたは異なる1つまたは2つのR6で置換されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項13】
各R6は独立して、F、Cl、CF3、OCH3、CH3、CH2CH3、またはシクロプロピルである、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項14】
2はHである、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項15】
3はA3である、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項16】
3は、フェニル、ピリジルまたはピラジニルであり、A3は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR8で場合により置換されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項17】
3は、同じまたは異なる1つまたは2つのR8で置換されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項18】
2およびR3は、接続されて、ジヒドロベンゾピラン環を形成し、ここで、該環は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR8で場合により置換されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項19】
2 およびR 3 は、接続されて、ジヒドロベンゾピラン環を形成し、ここで、該環は、同じまたは異なる1つまたは2つのR 8 で置換されている、請求項18に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体
【請求項20】
8は独立して、F、Cl、CF3、CH=O、CH2OHまたはCH3である、請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項21】
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-{5-[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル}オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3S,6R)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(6-シクロプロピルピリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(6-エチルピリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-[(6-クロロ-5-フルオロピリジン-3-イル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-{[2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル]オキシ}アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(6-クロロピリジン-3-イル)オキシ]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(5-フルオロ-6-メチルピリジン-3-イル)オキシ]アセトアミド、
2-[(6-クロロ-5-フルオロピリジン-3-イル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(6-クロロピリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(6-メチルピリジン-3-イル)オキシ]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(5-クロロピラジン-2-イル)オキシ]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(2-クロロピリミジン-5-イル)オキシ]アセトアミド、
2-[(5-クロロ-6-メチルピリジン-3-イル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-{5-[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル}オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-{5-[2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル}オキサン-3-イル]アセトアミド、
N-[3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]-2-[[6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジル]オキシ]アセトアミド、または
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-{[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]オキシ}アセトアミド
である、請求項1から20のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体を、薬学的に許容される担体と一緒に、場合により1種またはそれ以上の他の生物活性化合物または薬学的組成物との組合せで含む医薬組成物。
【請求項23】
医薬の製造のための、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体の使用。
【請求項24】
統合ストレス応答と関連する1つまたはそれ以上の疾患または障害の処置または防止のための医薬の製造のための、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体の使用。
【請求項25】
白質ジストロフィー、知的能力障害症候群、神経変性疾患および障害、新生物疾患、感染性疾患、炎症性疾患、筋骨格疾患、代謝性疾患、眼球疾患からなる群から選択される1つまたはそれ以上の疾患または障害、同様に、臓器線維症、肝臓の慢性および急性疾患、肺の慢性および急性疾患、腎臓の慢性および急性疾患、心筋梗塞、心血管疾患、不整脈、アテローム動脈硬化症、脊髄損傷、虚血性脳卒中、ならびに神経障害性疼痛からなる群から選択される1つまたはそれ以上の疾患を処置または防止のための医薬の製造のための、請求項1から21のいずれか1項に記載の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】
の化合物、または薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体(式中、RからR、AおよびAは、本記載および請求項に示されている通りの意味を有する)に関する。本発明は、前記化合物を含む医薬組成物、医薬としてのそれらの使用ならびに統合ストレス応答と関連する1つまたはそれ以上の疾患または障害を処置および防止するための方法におけるそれらの使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
統合ストレス応答(ISR)は、全ての真核生物に共通の細胞ストレス応答である(1)。ISRシグナル伝達の調節不全は、とりわけ炎症、ウイルス感染症、糖尿病、がんおよび神経変性疾患に繋がる重要な病理結果を有する。
【0003】
ISRは、正常なタンパク質合成の抑制およびストレス応答遺伝子の発現に至るセリン51上の真核生物翻訳開始因子2のアルファサブユニット(eIF2アルファ)のリン酸化をもたらす細胞ストレスの異なる型の共通因子である(2)。哺乳動物細胞において、該リン酸化は、各々が別個の環境的および生理学的ストレスに応答する4つのeIF2アルファキナーゼ、すなわち:PKR様ERキナーゼ(PERK)、二本鎖RNA依存性タンパク質キナーゼ(PKR)、ヘム調節eIF2アルファキナーゼ(HRI)、および一般制御非抑制解除性(general control non-derepressible)2(GCN2)のファミリーによって実施される(3)。
【0004】
eIF2アルファは、eIF2ベータおよびeIF2ガンマと一緒に、正常なmRNA翻訳の開始の鍵となるプレーヤーであるeIF2複合体を形成する(4)。eIF2複合体は、GTPおよびMet-tRNAを結合して、翻訳開始のためにリボソームによって動員される三元複合体(eIF2-GTP-Met-tRNA)を形成する(5、6)。
【0005】
eIF2Bは、デュプリケートでGEF活性10量体を形成する5つのサブユニット(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン)からなるヘテロ10量体複合体である(7)。
【0006】
ISR活性化への応答において、リン酸化eIF2アルファは、GTPとのGDPのeIF2B媒介交換を阻害して、三元複合体形成の低減、およびそれゆえに、5’AUG開始コドンに結合するリボソームを特徴とする正常なmRNAの翻訳の阻害をもたらす(8)。低減された三元複合体存在量のこれらの条件下で、転写因子ATF4をコードするmRNAを含めた、いくつかの特定のmRNAの翻訳は、上流ORF(uORF)の翻訳の変更を伴う機序を介して活性化される(7、9、10)。これらのmRNAは典型的に、リボソームの流れを主なコードORFに限定するように非ストレス細胞において正常に機能する1つまたはそれ以上のuORFを含有する。例えば、正常状態中で、ATFの5’UTRにおけるuORFは、リボソームを占有し、ATF4のコード配列の翻訳を防止する。しかしながら、ストレス状態中で、即ち、低減された三元複合体形成の条件下で、リボソームは、これらの上流ORFを通過してスキャンし、ATF4コードORFで翻訳を開始する確率は、増加される。この方法で発現されるATF4および他のストレス応答因子は、引き続いて、さらなるストレス応答遺伝子のアレイの発現を支配する。急性期は、ホメオスタシスを回復させることを狙うタンパク質の発現にあり、他方、慢性期は、プロアポトーシス因子の発現に至る(1、11、12、13)。
【0007】
ISRシグナル伝達のマーカーの上方調節は、これらのがんおよび神経変性疾患の中で、様々な条件において実証されている。がんにおいて、ERストレス調節翻訳は、低酸素条件に対する耐性を増加させ、腫瘍成長を促進し(14、15、16)、遺伝子標的化によるPERKの欠失は、形質転換されたPERK-/-マウス胚性線維芽細胞から誘導される腫瘍の成長を遅らせることが示された(14、17)。さらに、近年の報告は、患者由来の異種移植片モデル化をマウスにおいて使用して、eIF2Bの活性化剤が侵襲性転移性前立腺がんの形態を処置することに有効であるという概念の証明を提供した(28)。総合すると、細胞保護的ISRシグナル伝達の防止は、少なくとも一部の形態のがんの処置のための有効な抗増殖戦略を表し得る。
【0008】
さらに、ISRシグナル伝達のモジュレーションは、シナプス機能を保存することにおよびニューロンの減退を低減することに、その上、誤って折り畳まれたタンパク質および非折り畳みタンパク質応答(UPR)の活性化を特徴とする神経変性疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)およびヤコブクロイツフェルト(プリオン)疾患に有効であると証明できた(18、19、20)。プリオン病に関して、ISRシグナル伝達の薬理学的阻害、同様に遺伝子的阻害は、タンパク質翻訳レベルを正常化し、シナプス機能救出し、ニューロン損失を防止することができることが示された神経変性疾患の例が存在する(21)。具体的には、リン酸化eIF2アルファレベルを制御するホスファターゼの過剰発現によるリン酸化eIF2アルファのレベルの低減は、プリオン感染マウスの生存時間を増加したが、維持されたeIF2アルファリン酸化は、生存時間を減少した(22)。
【0009】
さらに、適正な脳機能のためのタンパク質発現レベルの制御の重要性についての直接的エビデンスが、eIF2およびeIF2Bの機能に影響する希な遺伝子疾患の形態において存在する。eIF2の複合体統合性を破壊し、それゆえ、正常なタンパク質発現レベルの低減をもたらすeIF2ガンマの突然変異は、知的能力障害症候群(ID)に繋がる(23)。eIF2Bのサブユニットにおける機能突然変異の部分的損失は、希な白質ジストロフィー消失性白質疾患(VWMD)の原因であることが示された(24、25)。具体的には、ISRIBに関連した小分子によるVWMDマウスモデルにおける機能のeIF2B部分的損失の安定化は、ISRマーカーを低減し、機能的エンドポイント、同様に病理学的エンドポイントを改善することが示された(26、27)。
【0010】
eIF2アルファ経路のモジュレーターは、特許文献1に記載されている。特許文献2、特許文献3、特許文献4および特許文献5は、統合ストレス経路のモジュレーターを記載している。特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9および特許文献10は、ATF4経路の阻害剤を記載している。特許文献11および特許文献12は、真核生物開始因子2Bモジュレーターに関する。
【0011】
統合ストレス経路のモジュレーターを記載しているさらなる文献は、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21である。真核生物開始因子のモジュレーターは、特許文献22に記載されている。特許文献23は、統合ストレス応答経路の阻害剤を記載している。ATF4阻害剤としてのヘテロアリール誘導体は、特許文献24に記載されている。ATF4阻害剤としての二環式芳香族環誘導体は、特許文献25に記載されている。
【0012】
しかしながら、良好な薬物動態学的特性を有する統合ストレス応答経路のモジュレーターとして有用な新たな化合物が引き続き必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】WO2014/144952A2
【文献】WO2017/193030A1
【文献】WO2017/193034A1
【文献】WO2017/193041A1
【文献】WO2017/193063A1
【文献】WO2017/212423A1
【文献】WO2017/212425A1
【文献】WO2018/225093A1
【文献】WO2019/008506A1
【文献】WO2019/008507A1
【文献】WO2019/032743A1
【文献】WO2019/046779A1
【文献】WO2019/090069A1
【文献】WO2019/090074A1
【文献】WO2019/090076A1
【文献】WO2019/090078A1
【文献】WO2019/090081A1
【文献】WO2019/090082A1
【文献】WO2019/090085A1
【文献】WO2019/090088A1
【文献】WO2019/090090A1
【文献】WO2019/183589A1
【文献】WO2019/118785A2
【文献】WO2019/193540A1
【文献】WO2019/193541A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、統合ストレス応答経路関連疾患の処置において有効であり得るとともに活性、選択性、ADMET特性および/または副作用の低減を含めて、薬学的に関連の特性を改善し得る、統合ストレス応答経路のモジュレーターとしての新たなクラスの化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、式(I)
【化2】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体もしくは立体異性体を(式中、
は、Cシクロアルキレン、Cシクロアルケニレン、または窒素環原子含有5員ヘテロシクレンであり、ここで、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されており;
各Rは独立して、ハロゲン、CN、OR、環が少なくとも部分的に飽和されているオキソ(=O)、またはC1~6アルキルであり、ここで、C1~6アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
は、HまたはC1~6アルキルであり、ここで、C1~6アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
は、フェニルまたは5員から6員の芳香族ヘテロシクリル、好ましくはフェニルまたは6員の芳香族ヘテロシクリルであり、ここで、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されており;
各Rは独立して、OH、O(C1~6アルキル)、ハロゲン、CN、シクロプロピル、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、ここで、シクロプロピル、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されているか;または
2つのRは、接続されて、それらが付着されている原子と一緒に、環A2aを形成し;
2aは、フェニル;C3~7シクロアルキル;または3員から7員のヘテロシクリルであり、ここで、A2aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されており;
各Rは独立して、C1~6アルキル、C2~6アルケニルまたはC2~6アルキニルであり、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
は、HまたはC1~4アルキル、好ましくはHであり、ここで、C1~4アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
は、HまたはC1~4アルキルであり、ここで、C1~4アルキルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
は、Aであるか;または
およびRは、接続されて、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されている3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン環を形成し;
は、フェニルまたは5員から6員の芳香族ヘテロシクリル、好ましくは、フェニルまたは6員の芳香族ヘテロシクリルであり、ここで、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されており;
各Rは独立して、ハロゲン、CN、C(O)OR、OR、C(O)R、C(O)N(R9a)、S(O)N(R9a)、S(O)N(R9a)、S(O)、S(O)R、N(R)S(O)N(R9a9b)、SR、N(R9a)、NO、OC(O)R、N(R)C(O)R9a、N(R)S(O)9a、N(R)S(O)R9a、N(R)C(O)OR9a、N(R)C(O)N(R9a9b)、OC(O)N(R9a)、環が少なくとも部分的に飽和されているオキソ(=O)、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、またはC2~6アルキニルであり、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のR10で場合により置換されており;
、R9a、R9bは、H、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルからなる群から独立して選択され、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されており;
各R10は独立して、ハロゲン、CN、C(O)OR11、OR11、C(O)R11、C(O)N(R1111a)、S(O)N(R1111a)、S(O)N(R1111a)、S(O)11、S(O)R11、N(R11)S(O)N(R11a11b)、SR11、N(R1111a)、NO、OC(O)R11、N(R11)C(O)R11a、N(R11)SO11a、N(R11)S(O)R11a、N(R11)C(O)N(R11a11b)、N(R11)C(O)OR11a、またはOC(O)N(R1111a)であり;
11、R11a、R11bは、H、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルからなる群から独立して選択され、ここで、C1~6アルキル、C2~6アルケニルおよびC2~6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のハロゲンで場合により置換されている)を提供する。
【0016】
可変物または置換基が、異なる変異形の群から選択することができ、こうした可変物または置換基が1回を超えて出現する場合において、それぞれの変異形は、同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
本発明の意味内で、用語は以下の通りに使用される:
【0018】
「場合により置換されている」という用語は、非置換であるまたは置換されていることを意味する。一般に、以下に限定されないが、「1個またはそれ以上の置換基」は、1個、2個または3個、好ましくは1個または2個の置換基、より好ましくは1個の置換基を意味する。一般に、これらの置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0019】
「アルキル」は、直鎖または分岐の炭化水素鎖を意味する。アルキル炭素の各水素は、さらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。
【0020】
「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有する直鎖または分岐の炭化水素鎖を意味する。アルケニル炭素の各水素は、さらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。
【0021】
「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を含有する直鎖または分岐の炭化水素鎖を意味する。アルキニル炭素の各水素は、さらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。
【0022】
「C1~4アルキル」は、例えば存在するならば分子の端部に1~4個の炭素原子を有するアルキル鎖:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、または分子の2つの部分がアルキル基によって連結されている場合には例えば-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-CH-CH-CH-、-CH(C)-、-C(CH-を意味する。C1~4アルキル炭素の各水素は、さらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。
【0023】
「C1~6アルキル」は、例えば存在するならば分子の端部に1~6個の炭素原子を有するアルキル鎖:C1~4アルキル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、または分子の2つの部分がアルキル基によって連結されている場合には例えば-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-CH-CH-CH-、-CH(C)-、-C(CH-を意味する。C1~6アルキル炭素の各水素は、さらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。
【0024】
「C2~6アルケニル」は、例えば存在するならば分子の端部に2個から6個の炭素原子を有するアルケニル鎖:-CH=CH、-CH=CH-CH、-CH-CH=CH、-CH=CH-CH-CH、-CH=CH-CH=CH、または分子の2つの部分がアルケニル基によって連結されている場合には例えば-CH=CH-を意味する。C2~6アルケニル炭素の各水素は、さらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。
【0025】
「C2~6アルキニル」は、例えば存在するならば分子の端部に2個から6個の炭素原子を有するアルキニル鎖:-C≡CH、-CH-C≡CH、CH-CH-C≡CH、CH-C≡C-CH、または分子の2つの部分がアルキニル基によって連結されている場合には例えば-C≡C-を意味する。C2~6アルキニル炭素の各水素は、さらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。
【0026】
「C3~7シクロアルキル」または「C3~7シクロアルキル環」は、3~7個の炭素原子を有する環式アルキル鎖、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルを意味する。好ましくは、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを指す。シクロアルキル炭素の各水素は、本明細書においてさらに特定されている通りの置換基によって置き換えることができる。「C3~5シクロアルキル」または「C3~5シクロアルキル環」という用語は、適宜定義されている。
【0027】
「Cシクロアルキレン」は、5個の炭素原子を有する二価のシクロアルキル、即ち二価のシクロペンチル環を指す。
【0028】
「Cシクロアルケニレン」は、二価のシクロアルケニレン、即ち二価のシクロペンテンまたはシクロペンタジエンを指す。
【0029】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。ハロゲンは、フルオロまたはクロロであるのが一般に好ましい。
【0030】
「3員から7員のヘテロシクリル」または「3員から7員の複素環」は、最大数までの二重結合(完全、部分的または不飽和である芳香族環または非芳香族環)を含有することができる3個、4個、5個、6個または7個の環原子を有する環を意味し、ここで、少なくとも1個の環原子から最大4個までの環原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)-を含める)、酸素および窒素(=N(O)-を含める)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられており、該環は、炭素または窒素原子を介して分子の残りに連結されている。3員から7員の複素環についての例は、アジリジン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、ジアゼパン、アゼピンまたはホモピペラジンである。「5員から6員のヘテロシクリル」または「5員から6員の複素環」という用語は、適宜定義される。「5員ヘテロシクリル」または「5員複素環」という用語は、適宜定義されており、5員の芳香族ヘテロシクリルまたは複素環を含む。
【0031】
「窒素環原子含有5員ヘテロシクレン」という用語は、5個の環原子の少なくとも1個が窒素原子であるとともに環が炭素または窒素原子を介して分子の残りに連結されている二価の5員の複素環を指す。
【0032】
「飽和された4員から7員のヘテロシクリル」または「飽和された4員から7員の複素環」は、完全に飽和された「4員から7員のヘテロシクリル」または「4員から7員の複素環」を意味する。
【0033】
「4員から7員の少なくとも部分的に飽和されたヘテロシクリル」または「4員から7員の少なくとも部分的に飽和された複素環」は、少なくとも部分的に飽和された「4員から7員のヘテロシクリル」または「4員から7員の複素環」を意味する。
【0034】
「5員から6員の芳香族ヘテロシクリル」または「5員から6員の芳香族複素環」は、シクロペンタジエニルまたはベンゼンから誘導される複素環を意味し、ここで、少なくとも1個の炭素原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)-を含める)、酸素および窒素(=N(O)-を含める)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられている。こうした複素環についての例は、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジンである。
【0035】
「5員芳香族ヘテロシクリル」または「5員芳香族複素環」は、シクロペンタジエニルから誘導される複素環を意味し、ここで、少なくとも1個の炭素原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)-を含める)、酸素および窒素(=N(O)-を含める)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられている。こうした複素環についての例は、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾールである。
【0036】
「7員から12員のヘテロビシクリル」または「7員から12員のヘテロ二環」は、7個から12個の環原子を有する2つの環の複素環式系を意味し、ここで、少なくとも1個の環原子は、両方の環によって共有されているとともに該系は最大数までの二重結合を含有することができ(完全、部分的または不飽和である芳香族環または非芳香族環)、少なくとも1個の環原子最大6個までの環原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)-を含める)、酸素および窒素(=N(O)-を含める)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられており、該環は、炭素または窒素原子を介して分子の残りに連結されている。7員から12員のヘテロ二環についての例は、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、キノリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、デカヒドロキノリン、イソキノリン、デカヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンズアゼピン、プリンまたはプテリジンである。7員から12員のヘテロ二環という用語は、6-オキサ-2-アザスピロ[3,4]オクタン、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン-6-イルもしくは2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-6-イルのような2つの環のスピロ構造、または8-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクタンもしくは2,5-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イルもしくは3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタンのような架橋複素環も含む。
【0037】
「飽和された7員から12員のヘテロビシクリル」または「飽和された7員から12員のヘテロ二環」は、完全に飽和された7員から12員のヘテロビシクリルまたは7員から12員のヘテロ二環を意味する。
【0038】
「7員から12員の少なくとも部分的に飽和されたヘテロビシクリル」または「7員から12員の少なくとも部分的に飽和されたヘテロ二環」は、少なくとも部分的に飽和された「7員から12員のヘテロビシクリル」または「7員から12員のヘテロ二環」を意味する。
【0039】
「9員から11員の芳香族ヘテロビシクリル」または「9員から11員の芳香族ヘテロ二環」は、2つの環の複素環式系を意味し、ここで、少なくとも1個の環は芳香族であり、複素環式環系は9個から11個の環原子を有し、ここで、2個の環原子は両方の環によって共有されているとともに該系は最大数までの二重結合(完全または部分的に芳香族)を含有することができ、少なくとも1個の環原子最大6個までの環原子は、硫黄(-S(O)-、-S(O)-を含める)、酸素および窒素(=N(O)-を含める)からなる群から選択されるヘテロ原子によって置き換えられており、該環は、炭素または窒素原子を介して分子の残りに連結されている。9員から11員の芳香族ヘテロ二環についての例は、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンズアゼピン、プリンまたはプテリジンである。「9員から10員の芳香族ヘテロビシクリル」または「9員から10員の芳香族ヘテロ二環」という用語は、適宜定義されている。
【0040】
式(I)の好ましい化合物は、そこに含有されている残基の1個またはそれ以上が、下記に与えられている意味を有するような化合物であり、好ましい置換基定義の全ての組合せは、本発明の対象である。式(I)の全ての好ましい化合物に関して、本発明は、全ての互変異性および立体異性形態、および全ての比におけるその混合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩も含む。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、下に記述されている置換基は独立して、以下の意味を有する。それゆえ、これらの置換基の1個またはそれ以上は、下記に与えられている好ましいまたはより好ましい意味を有することができる。
【0042】
好ましくは、Aは、窒素環原子含有5員ヘテロシクレンであり、ここで、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されている。
【0043】
より好ましくは、Aは、オキサジアゾール、イミダゾール、イミダゾリジン、ピラゾールおよびトリアゾール、好ましくはオキサジアゾールからなる二価の複素環の群から選択される窒素環原子含有5員ヘテロシクレンであり、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されている。
【0044】
好ましくは、Aは、非置換であるか、または同じもしくは異なる1つもしくは2つのRで置換されており、好ましくは、Aは非置換である。
【0045】
好ましくは、Rは、環が少なくとも部分的に飽和されているオキソである。
【0046】
好ましくは、Aは、
【化3】
であり、より好ましくは、Aは、
【化4】
である。
【0047】
好ましくは、Aは、フェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラゾリルまたは1,2,4-オキサジアゾリルであり、ここで、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されている。
【0048】
好ましくは、Aは、フェニル、ピリジル、ピラジニル、またはピリダジニルであり、ここで、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されている。
【0049】
好ましくは、Aは、同じまたは異なる1つまたは2つのRで置換されている。
【0050】
好ましくは、各Rは独立して、F、Cl、CF、OCH、CH、CHCH、またはシクロプロピルである。
【0051】
好ましくは、RはHである。
【0052】
好ましくは、RはAである。
【0053】
好ましくは、Aは、フェニル、ピリジル、ピラジニルまたはピリミダジル(pyrimidazyl)であり、ここで、Aは、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されている。
【0054】
好ましくは、Aは、同じまたは異なる1つまたは2つのRで置換されている。
【0055】
好ましくは、RおよびRは、接続されて、ジヒドロベンゾピラン環を形成し、ここで、該環は、同じまたは異なる1つまたはそれ以上のRで場合により置換されており、好ましくは、該環は、1つまたは2つのRで置換されている。したがって、好ましい式(I)は、式(Ia)
【化5】
である。
【0056】
しかしながら別の好ましい実施形態において、RはAである。
【0057】
好ましくは、Rは独立して、F、Cl、CF、CH=O、CHOHまたはCHである。
【0058】
上述されている基の一部または全てが、好ましいまたはより好ましい意味を有する式(I)の化合物も、本発明の対象である。
【0059】
本発明の好ましい特定の化合物は、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-{5-[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル}オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3S,6R)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(6-シクロプロピルピリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(6-エチルピリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-[(6-クロロ-5-フルオロピリジン-3-イル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-{[2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル]オキシ}アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(6-クロロピリジン-3-イル)オキシ]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(5-フルオロ-6-メチルピリジン-3-イル)オキシ]アセトアミド、
2-[(6-クロロ-5-フルオロピリジン-3-イル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(6-クロロピリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(6-メチルピリジン-3-イル)オキシ]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(5-クロロピラジン-2-イル)オキシ]アセトアミド、
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-[(2-クロロピリミジン-5-イル)オキシ]アセトアミド、
2-[(5-クロロ-6-メチルピリジン-3-イル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-{5-[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル}オキサン-3-イル]アセトアミド、
2-(4-クロロ-3-フルオロフェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-{5-[2-(トリフルオロメチル)ピリジン-4-イル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル}オキサン-3-イル]アセトアミド、
N-[3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]-2-[[6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジル]オキシ]アセトアミド、または
N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]オキサン-3-イル]-2-{[5-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]オキシ}アセトアミド
からなる群から選択される。
【0060】
式(I)の化合物の例えばケト-エノール互変異性のような互変異性が出現し得る場合、例えばケトおよびエノール形態のような個々の形態は、別々に、および任意の比における混合物として一緒に含まれる。同じことが、例えばエナンチオマー、シス/トランス異性体、配座異性体などのような立体異性体に当てはまる。
【0061】
殊に、エナンチオマーまたはジアステレオマー形態が、式(I)に従った化合物において示されている場合、各純粋な形態は別々に、および任意の比における純粋な形態の少なくとも2つの任意の混合物は、式(I)によって含まれ、本発明の対象である。
【0062】
好ましい式(I)は、式(Ib)
【化6】
である。
【0063】
式(I)の同位体標識化化合物も、本発明の範疇内である。同位体標識化するための方法は、当技術分野において知られている。好ましい同位体は、元素H、C、N、OおよびSのものである。式(I)の化合物の溶媒和物および水和物も、本発明の範疇内である。
【0064】
所望であれば、異性体は、当技術分野においてよく知られている方法によって、例えば、液体クロマトグラフィーによって分離することができる。同じことが、例えばキラル固定相を使用することによって、エナンチオマーについて当てはまる。追加として、エナンチオマーは、それらをジアステレオマーに変換すること、即ち、エナンチオマー的に純粋な補助化合物とのカップリング、結果として得られたジアステレオマーの後続の分離および補助残基の切断によって単離することができる。代替として、式(I)の化合物の任意のエナンチオマーは、光学的に純粋な出発材料、試薬および/または触媒を使用する立体選択的合成から得ることができる。
【0065】
式(I)に従った化合物が、1個またはそれ以上の酸性基または塩基性基を含有する場合において、本発明は、それらの対応する薬学的にまたは毒物学的に許容される塩、特にそれらの薬学的に利用可能な塩も含む。したがって、酸性基を含有する式(I)の化合物は、本発明に従って、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩としてまたはアンモニウム塩として使用することができる。こうした塩のより正確な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、またはアンモニアもしくは有機アミン例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンもしくはアミノ酸などとの塩が挙げられる。1個またはそれ以上の塩基性基、即ち、プロトン化することができる基を含有する式(I)の化合物は存在することができ、無機または有機酸とのそれらの付加塩の形態で本発明に従って使用することができる。適当な酸についての例としては、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ビバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、および当業者に知られている他の酸が挙げられる。式(I)の化合物が、分子中に酸性および塩基性基を同時に含有するならば、本発明は、記述されている塩形態に加えて、内塩またはベタイン(両性イオン)も含む。式(I)に従ったそれぞれの塩は、例えば、これらを有機もしくは無機の酸もしくは塩基と、溶媒もしくは分散剤中で接触させることによって、または他の塩とのアニオン交換もしくはカチオン交換によってのように、当業者に知られている通例の方法によって得ることができる。本発明は、低い生理的適合性のために、医薬品における使用に直接的に適当でないが、例えば、化学反応のためのまたは薬学的に許容される塩の製造のための中間体として使用することができる式(I)の化合物の全ての塩も含む。
【0066】
下記に示されている通り、本発明の化合物は、統合ストレス応答経路をモジュレートするのに適当であると考えられる。
【0067】
統合ストレス応答(ISR)は、全ての真核生物に共通の細胞ストレス応答である(1)。ISRシグナル伝達の調節不全は、とりわけ炎症、ウイルス感染症、糖尿病、がんおよび神経変性疾患に繋がる重要な病理結果を有する。
【0068】
ISRは、正常なタンパク質合成の抑制およびストレス応答遺伝子の発現に至るセリン51上の真核生物翻訳開始因子2のアルファサブユニット(eIF2アルファ)のリン酸化をもたらす細胞ストレスの異なる型の共通因子である(2)。哺乳動物細胞において、該リン酸化は、各々が別個の環境的および生理学的ストレスに応答する4つのeIF2アルファキナーゼ、すなわち:PKR様ERキナーゼ(PERK)、二本鎖RNA依存性タンパク質キナーゼ(PKR)、ヘム調節eIF2アルファキナーゼ(HRI)、および一般制御非抑制解除性2(GCN2)のファミリーによって実施される(3)。
【0069】
eIF2アルファは、eIF2ベータおよびeIF2ガンマと一緒に、正常なmRNA翻訳の開始の鍵となるプレーヤーであるeIF2複合体を形成する(4)。eIF2複合体は、GTPおよびMet-tRNAを結合して、翻訳開始のためにリボソームによって動員される三元複合体(eIF2-GTP-Met-tRNA)を形成する(5、6)。
【0070】
eIF2Bは、デュプリケートでGEF活性10量体を形成する5つのサブユニット(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン)からなるヘテロ10量体複合体である(7)。
【0071】
ISR活性化への応答において、リン酸化eIF2アルファは、GTPとのGDPのeIF2B媒介交換を阻害して、三元複合体形成の低減、およびそれゆえ、5’AUG開始コドンに結合するリボソームを特徴とする正常なmRNAの翻訳の阻害をもたらす(8)。低減された三元複合体存在量のこれらの条件下で、転写因子ATF4をコードするmRNAを含めた、いくつかの特定のmRNAの翻訳は、上流ORF(uORF)の翻訳の変更を伴う機序を介して活性化される(7、9、10)。低減された三元複合体存在量のこれらの条件下で、転写因子ATF4をコードするmRNAを含めた、いくつかの特定のmRNAの翻訳は、上流ORF(uORF)の翻訳の変更を伴う機序を介して活性化される(7、9、10)。これらのmRNAsは、典型的に、リボソームの流れを主なコードORFに限定するように非ストレス細胞において正常に機能する1つまたはそれ以上のuORFを含有する。例えば、正常状態中で、ATFの5’UTRにおけるuORFは、リボソームを占有し、ATF4のコード配列の翻訳を防止する。しかしながら、ストレス状態中で、即ち、低減された三元複合体形成の条件下で、リボソームが、これらの上流ORFを通過してスキャンし、ATF4コードORFで翻訳を開始する確率は、増加される。この方法で発現されるATF4および他のストレス応答因子は、引き続いて、さらなるストレス応答遺伝子のアレイの発現を支配する。急性期は、ホメオスタシスを回復させることを狙うタンパク質の発現にあり、他方、慢性期は、プロアポトーシス因子の発現に至る(1、11、12、13)。
【0072】
ISRシグナル伝達のマーカーの上方調節は、これらのがんおよび神経変性疾患の中で、様々な条件において実証されている。がんにおいて、ERストレス調節翻訳は、低酸素条件に対する耐性を増加させ、腫瘍成長を促進し(14、15、16)、遺伝子標的化によるPERKの欠失は、形質転換されたPERK-/-マウス胚性線維芽細胞から誘導される腫瘍の成長を遅らせることが示された(14、17)。さらに、近年の報告は、患者由来の異種移植片モデル化をマウスにおいて使用して、eIF2Bの活性化剤が侵襲性転移性前立腺がんの形態を処置することに有効であるという概念の証明を提供した(28)。総合すると、細胞保護的ISRシグナル伝達の防止は、少なくとも一部の形態のがんの処置のための有効な抗増殖戦略を表し得る。
【0073】
さらに、ISRシグナル伝達のモジュレーションは、シナプス機能を保存することにおよびニューロンの減退を低減することに、その上、誤って折り畳まれたタンパク質および非折り畳みタンパク質応答(UPR)の活性化を特徴とする神経変性疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)およびヤコブクロイツフェルト(プリオン)疾患に有効であると証明できた(18、19、20)。プリオン病に関して、ISRシグナル伝達の薬理学的阻害、同様に遺伝子的阻害は、タンパク質翻訳レベルを正常化し、シナプス機能救出し、ニューロン損失を防止することができることが示された神経変性疾患の例が存在する(21)。具体的には、リン酸化eIF2アルファレベルを制御するホスファターゼの過剰発現によるリン酸化eIF2アルファのレベルの低減は、プリオン感染マウスの生存時間を増加したが、維持されたeIF2アルファリン酸化は、生存時間を減少した(22)。
【0074】
さらに、適正な脳機能のためのタンパク質発現レベルの制御の重要性についての直接的エビデンスが、eIF2およびeIF2Bの機能に影響する希な遺伝子疾患の形態において存在する。eIF2の複合体統合性を破壊し、それゆえ、正常なタンパク質発現レベルの低減をもたらすeIF2ガンマの突然変異は、知的能力障害症候群(ID)に繋がる(23)。eIF2Bのサブユニットにおける機能突然変異の部分的損失は、希な白質ジストロフィー消失性白質疾患(VWMD)の原因であることが示された(24、25)。具体的には、ISRIBに関連した小分子によるVWMDマウスモデルにおける機能のeIF2B部分的損失の安定化は、ISRマーカーを低減し、機能的エンドポイント、同様に病理学的エンドポイントを改善することが示された(26、27)。
【0075】
本発明は、本明細書に記述されている疾患または障害の処置において使用されるために、遊離形態もしくは薬学的に許容される塩形態で、本発明の化合物を提供する。
【0076】
したがって、本発明のさらなる態様は、医薬としての使用のための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0077】
記載されている治療方法は、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、モンキーおよびヒトなどの哺乳動物に適用することができる。好ましくは、哺乳動物の患者は、ヒト患者である。
【0078】
したがって、本発明は、統合ストレス応答と関連する1つまたはそれ以上の疾患または障害の処置または防止において使用されるための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0079】
本発明のさらなる態様は、統合ストレス応答と関連する1つまたはそれ以上の障害または疾患を処置または防止する方法における使用のための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0080】
本発明のさらなる態様は、統合ストレス応答と関連する1つまたはそれ以上の障害または疾患の処置または予防のための医薬の製造のための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用である。
【0081】
本発明のなお別の態様は、統合ストレス応答と関連する1つまたはそれ以上の疾患または障害の処置を必要とする哺乳動物の患者において、処置、制御、遅延または防止するための方法であり、ここで、該方法は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量を前記患者に投与することを含む。
【0082】
本発明は、下に記述されている1つまたはそれ以上の疾患または障害の処置または防止において使用されるための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0083】
本発明のさらなる態様は、下に記述されている1つまたはそれ以上の障害または疾患を処置または防止する方法における使用のための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0084】
本発明のさらなる態様は、下に記述されている1つまたはそれ以上の障害または疾患の処置または予防のための医薬の製造のための、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用である。
【0085】
本発明のなお別の態様は、下に記述されている1つまたはそれ以上の疾患または障害の処置を必要とする哺乳動物の患者において処置、制御、遅延または防止するための方法であり、ここで、該方法は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の治療有効量を前記患者に投与することを含む。
【0086】
疾患または障害としては、以下に限定されないが、白質ジストロフィー、知的能力障害症候群、神経変性疾患および障害、新生物疾患、感染性疾患、炎症性疾患、筋骨格疾患、代謝性疾患、眼球疾患、同様に、臓器線維症、肝臓の慢性および急性疾患、肺の慢性および急性疾患、腎臓の慢性および急性疾患、心筋梗塞、心血管疾患、不整脈、アテローム動脈硬化症、脊髄損傷、虚血性脳卒中、ならびに神経障害性疼痛からなる群から選択される疾患が挙げられる。
【0087】
白質ジストロフィー
白質ジストロフィーの例としては、以下に限定されないが、CNS低ミエリン化を有する消失性白質疾患(VWMD)および小児期運動失調(例えば、eIF2またはeIF2を含めたシグナル伝達もしくはシグナル伝達経路における構成成分の機能の欠損と関連する)が挙げられる。
【0088】
知的能力障害症候群
知的能力障害は特に、人間が、伝達すること、自分自身を世話することのような知的機能にある特定の限界を有するおよび/または社会的技能の欠損を有する状態を指す。知的能力障害症候群としては、以下に限定されないが、eIF2またはeIF2を含めたシグナル伝達もしくはシグナル伝達経路における構成成分の機能の欠損と関連する知的能力障害状態が挙げられる。
【0089】
神経変性疾患/障害
神経変性疾患および障害の例としては、以下に限定されないが、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、運動失調毛細血管拡張症、バッテン病(シュピールマイアー・フォークト・シェーグレン・バッテン病としても知られている)、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルトヤコブ病、前頭側頭型認知症、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディー病、クラッベ病、クールー、レビー小体認知症、マシャド・ジョセフ病(脊髄小脳変性症3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホッフ病、シルダー病、悪性貧血続発性の脊髄の亜急性連合変性症、統合失調症、脊髄小脳変性症(変動する特徴を有する複数の型)、脊髄性筋萎縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄ろう、およびタウオパチーが挙げられる。
【0090】
特に、神経変性疾患またはおよび障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症からなる群から選択される。
【0091】
新生物疾患
新生物疾患は、最も広い意味において、細胞成長の誤制御に起因する任意の組織として理解することができる。多くの場合、新生物は、場合により血管によって神経支配される少なくとも嵩高い組織腫瘤に至る。それは、1つまたはそれ以上の転移(単数)/転移(複数)の形成を含むことがあるまたは含むことがない。本発明の新生物疾患は、疾病および関連保健問題の国際統計分類第10改訂(ICD-10)分類C00-D48によって分類される通りの任意の新生物であり得る。
【0092】
例として、本発明による新生物疾患は、1種もしくはそれ以上の悪性新生物(単数または複数)(腫瘍)(ICD-10分類C00-C97)の存在であり得る、1種もしくはそれ以上のインサイチュ新生物(in situ neoplasm)(単数または複数)(ICD-10分類D00-D09)の存在であり得るか、1種もしくはそれ以上の良性新生物(単数または複数)(ICD-10分類D10-D36)の存在であり得るか、または不確定もしくは不明の挙動(ICD-10分類D37-D48)の1種もしくはそれ以上の新生物(単数または複数)の存在であり得る。好ましくは、本発明による新生物疾患は、1種またはそれ以上の悪性新生物(単数または複数)の存在を指し、即ち、悪性新生物(ICD-10分類C00-C97)である。
【0093】
より好ましい実施形態において、新生物疾患はがんである。
【0094】
がんは、最も広い意味において、患者における任意の悪性新生物疾患、即ち、1種またはそれ以上の悪性新生物(単数または複数)の存在として理解することができる。がんは、固体または血液悪性腫瘍であり得る。本明細書において企図されるのは、限定せずに、白血病、リンパ腫、癌腫および肉腫である。
【0095】
特に、上方調節ISRマーカーを特徴とするがんなどの新生物疾患が、本明細書において含まれる。
【0096】
例証的がんとしては、以下に限定されないが、甲状腺がん、内分泌系のがん、膵臓がん、脳がん(例えば、多形神経膠芽腫、神経膠腫)、乳がん(例えば、ER陽性、ER陰性、化学療法抵抗性、ハーセプチン抵抗性、HER2陽性、ドキソルビシン抵抗性、タモキシフェン抵抗性、腺管癌腫、小葉癌腫、原発性、転移性)、頸部がん、卵巣がん、子宮がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌腫)、腎臓がん、肺がん(例えば、非小細胞肺癌腫、扁平細胞肺癌腫、腺癌腫、大細胞肺癌腫、小細胞肺癌腫、カルチノイド、肉腫)、結腸がん、食道がん、胃がん、膀胱がん、骨がん、胃がん、前立腺がんおよび皮膚がん(例えば、黒色腫)が挙げられる。
【0097】
さらなる例としては、以下に限定されないが、骨髄腫、白血病、中皮腫および肉腫が挙げられる。
【0098】
追加例としては、以下に限定されないが、髄芽腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、多形神経膠芽腫、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、悪性膵インスリノーマ、悪性カルチノイド、尿膀胱がん、前悪性皮膚病変、精巣がん、リンパ腫、泌尿生殖器がん、悪性高カルシウム血症、子宮内膜がん、副腎皮質がん、内分泌または外分泌膵臓の新生物、延髄甲状腺がん、延髄甲状腺癌腫、黒色腫、結腸直腸がん、乳頭状甲状腺がん、肝細胞癌腫、乳首のパジェット病、葉状腫瘍、小葉癌腫、腺管癌腫、膵星細胞のがん、および肝星細胞のがんが挙げられる。
【0099】
例証的な白血病としては、以下に限定されないが、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、無白血病性白血病、非白血球細胞性(leukocythemic)白血病、好塩基球性白血病、芽球細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄球性白血病、皮膚白血病、胚性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリー細胞白血病、血芽細胞性白血病、血球芽細胞性白血病、組織球性白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ向性白血病、リンパ性白血病、リンパ肉腫細胞白血病、肥満細胞白血病、巨核球白血病、ミクロ骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球白血病、骨髄球性白血病、骨髄性顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病、および未分化細胞白血病が挙げられる。
【0100】
例証的な肉腫としては、以下に限定されないが、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アベメシー肉腫、脂肪肉腫、脂質肉腫、肺胞軟部肉腫、エナメル芽細胞肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛癌腫、胚性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞性肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、ジェンセン肉腫、カポジ肉腫、クッパー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉腫肉腫、傍骨性肉腫、網状赤血球性肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢腫性肉腫、滑膜肉腫、および末梢血管拡張性肉腫が挙げられる。
【0101】
例証的な黒色腫としては、以下に限定されないが、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91メラノーマ、ハーディング-パッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫、および表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0102】
例証的な癌腫としては、以下に限定されないが、延髄甲状腺癌腫、家族性延髄甲状腺癌腫、腺房癌腫、腺房癌腫、腺様嚢胞癌腫、腺様嚢胞癌腫、腺腫性癌腫、副腎皮質の癌腫、肺胞癌腫、肺胞細胞癌腫、基底細胞癌腫、基底細胞癌腫、類基底癌腫、基底扁平細胞癌腫、気管支肺胞上皮癌腫、細気管支癌腫、気管支原性肺癌腫、大脳様癌腫、胆管細胞性癌腫、絨毛膜癌腫、コロイド癌腫、面皰癌腫、コーパス癌腫、篩状癌腫、鎧状癌腫、皮膚癌腫、円筒状癌腫、円筒細胞癌腫、腺管癌腫、腺管癌腫、緻密癌腫(carcinoma durum)、胚性癌腫、脳様癌腫、類表皮癌腫、上皮アデノイド癌腫、外方増殖性癌腫、前潰瘍癌腫(carcinoma ex ulcere)、線維質癌腫、ゼラチン様癌癌腫、ゼラチン状癌腫、巨細胞癌腫、巨大細胞癌腫、腺性癌腫、顆粒膜細胞癌腫、毛母癌腫、血様癌腫、肝細胞癌腫、ハースル細胞癌腫、ヒアリン癌腫、高腎臓形癌腫、幼児胎児性癌腫、上皮内癌腫(carcinoma in situ)、表皮内癌腫、上皮内癌腫(intaepithelial carcinoma)、Krompecher癌腫、Kulchitzky細胞癌腫、大細胞癌腫、レンズ状癌腫、レンズ状癌腫、脂肪腫性癌腫、小葉癌腫、リンパ上皮癌腫、髄様癌腫、髄様癌腫、黒色性癌腫、軟性癌腫、粘液性癌腫、粘液腺癌腫(carcinoma muciparum)、粘膜細胞癌腫(carcinoma mucocellulare)、粘膜表皮癌腫、粘液癌腫、粘液性癌腫、粘液腫様癌腫(carcinoma myxomatodes)、上咽頭癌腫、燕麦細胞癌腫、骨化性癌腫、類骨癌腫、乳頭状癌腫、門脈周囲癌腫、前浸潤性癌腫、有棘細胞癌腫、糊状癌腫、腎臓の腎細胞癌腫、予備細胞癌腫、肉腫様癌腫、シュナイダー癌腫、スキルス癌腫、陰嚢癌腫、印環細胞癌腫、単純性癌腫、小細胞癌腫、ソレノイド癌腫、球体細胞癌腫、紡錘細胞癌腫、海綿様癌腫、扁平癌腫、扁平細胞癌腫、線状癌腫、血管拡張性癌腫、毛細血管拡張性癌腫、移行細胞癌腫、結節型癌腫、管状癌腫、結節性癌腫、疣状癌腫、および絨毛性癌腫が挙げられる。
【0103】
感染性疾患
例としては、以下に限定されないが、ウイルスによって引き起こされる感染症(HIV-1:ヒト免疫不全ウイルス1型;IAV:A型インフルエンザウイルス;HCV:C型肝炎ウイルス;DENV:デングウイルス;ASFV:アフリカのブタ熱ウイルス;EBV:エプスタイン・バーウイルス;HSV1:単純ヘルペスウイルス1;CHIKV:チクングニアウイルス;HCMV:ヒトサイトメガロウイルス;SARS-CoV:重症急性呼吸症候群コロナウイルス;SARS-CoV-2:重症急性呼吸症候群コロナウイルス2による感染症など)、および細菌によって引き起こされる感染症(レジオネラ、ブルセラ、シムカニア(Simkania)、クラミジア、ヘリコバクターおよびカンピロバクターによる感染症など)が挙げられる。
【0104】
炎症性疾患
炎症性疾患の例としては、以下に限定されないが、術後の認知機能不全(外科手術後の認知機能における減退)、外傷性脳損傷、関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、多発性硬化症、全身性ループスエリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、若年発症糖尿病、1型真性糖尿病、ギラン-バレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎、乾癬、シェーグレン症候群、血管炎、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、魚鱗癬、グレーブス眼症、炎症性腸疾患、アジソン病、尋常性白斑、喘息、アレルギー性喘息、尋常性ざ瘡、セリアック病、慢性前立腺炎、炎症性腸疾患、骨盤炎症性疾患、再灌流損傷、サルコイドーシス、移植拒絶反応、間質性膀胱炎、アテローム動脈硬化症、およびアトピー性皮膚炎が挙げられる。
【0105】
筋骨格疾患
筋骨格疾患の例としては、以下に限定されないが、筋ジストロフィー、多発性硬化症、フリードリヒ運動失調、筋消耗障害(例えば、筋萎縮、サルコペニア、悪液質)、封入体ミオパチー、進行性筋萎縮症、運動ニューロン疾患、手根管症候群、上顆炎、腱炎、背痛、筋痛(muscle pain)、筋痛(muscle soreness)、反復性緊張障害、および麻痺症が挙げられる。
【0106】
代謝性疾患
代謝性疾患の例としては、以下に限定されないが、糖尿病(特に、糖尿病II型)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、ニーマン-ピック病、肝臓線維症、肥満症、心疾患、アテローム動脈硬化症、関節炎、シスチン症、フェニルケトン尿症、増殖性網膜症、およびカーンズ-セイヤー病が挙げられる。
【0107】
眼球疾患
眼球疾患の例としては、以下に限定されないが、任意の閉塞性または炎症性網膜血管障害に関する浮腫または血管新生、例えば、虹彩血管新生、血管新生緑内障、翼状片、緑内障フィルタリング小疱の血管新生化、結膜乳頭腫;脈絡膜血管新生、例えば、血管新生年齢関連黄斑変性(AMD)、近視、ぶどう膜炎前、外傷、または特発性;黄斑浮腫、例えば、外科手術後黄斑浮腫、網膜および/または脈絡膜炎症を含めてぶどう膜炎続発性の黄斑浮腫、糖尿病続発性の黄斑浮腫、および網膜血管閉塞性疾患続発性の黄斑浮腫(即ち、網膜分枝および網膜中心静脈閉塞症);糖尿病による網膜新生血管、例えば、網膜静脈閉塞、ぶどう膜炎、頸動脈疾患由来の眼球虚血症候群、眼または網膜動脈閉塞、鎌状赤血球網膜症、他の虚血性または閉塞性血管新生網膜症、未熟児網膜症、またはイールズ病;ならびに遺伝子障害、例えば、フォンヒッペル-リンダウ症候群が挙げられる。
【0108】
さらなる疾患
さらなる疾患としては、以下に限定されないが、臓器線維症(肝臓線維症、肺線維症、または腎臓線維症など)、肝臓の慢性および急性疾患(脂肪性肝臓疾患、または肝臓脂肪症など)、肺の慢性および急性疾患、腎臓の慢性および急性疾患、心筋梗塞、心血管疾患、不整脈、アテローム動脈硬化症、脊髄損傷、虚血性脳卒中、ならびに神経障害性疼痛が挙げられる。
【0109】
本発明のなお別の態様は、本発明の少なくとも1種の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体と一緒に、場合により1種またはそれ以上の他の生物活性化合物または医薬組成物との組合せで含む医薬組成物である。
【0110】
好ましくは、1種またはそれ以上の生物活性化合物は、式(I)の化合物以外の統合ストレス応答経路のモジュレーターである。
【0111】
「薬学的組成物」は、1種またはそれ以上の活性成分、および担体を構成する1種またはそれ以上の不活性成分、同様に、成分の任意の2種以上の組合せ、複合体化もしくは凝集に、または成分の1種もしくはそれ以上の解離に、または成分の1つもしくはそれ以上の反応の他の型もしくは相互作用に直接的または間接的に起因する任意の生成物を意味する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を添加混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0112】
本発明の薬学的組成物は、組成物中の式(I)の化合物の混合物または統合ストレス応答経路の他のモジュレーターのような活性成分として1種またはそれ以上の追加の化合物を含むことができる。
【0113】
活性成分は、1種またはそれ以上の異なる薬学的組成物(薬学的組成物の組合せ)に含むことができる。
【0114】
「薬学的に許容される塩」という用語は、無機の塩基または酸および有機の塩基または酸を含めて、薬学的に許容される非毒性の塩基または酸から製造される塩を指す。
【0115】
組成物としては、経口、直腸、局所的、非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含める)、眼球(眼科)、肺(経鼻または頬側吸入)または経鼻の投与に適当な組成物が挙げられるが、任意の所与の場合における最も適当な経路は、処置されている状態の性質および重症度ならびに活性成分の性質に依存する。それらは、好都合にも、単位剤形で存在し、薬学の技術分野においてよく知られている方法のいずれかによって製造することができる。
【0116】
実際の使用において、式(I)の化合物は、従来の薬学的化合技法に従って、薬学的担体との密接な添加混合物中の活性成分として組み合わせることができる。担体は、投与に所望される製造物の形態、例えば、経口または非経口(静脈内を含める)に依存して、多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物を製造する際、通常の薬学的媒体のいずれか、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存料、着色剤などが、例えば、懸濁液、エリキシルおよび溶液などの経口液体製造物の場合において;または担体、例えば、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、バインダー、崩壊剤などが、粉末、硬および軟カプセル、ならびに錠剤などの経口固体製造物の場合において用いることができ、固体経口製造物が、液体製造物よりも好ましい。
【0117】
投与のそれらの簡便さにより、錠剤およびカプセルは、最も有利な経口投与量単位形態を表し、この場合において、固体薬学的担体が明らかに用いられる。所望であれば、錠剤は、標準的な水性または非水性技法によってコーティングすることができる。こうした組成物および製造物は、少なくとも0.1パーセントの活性化合物を含有するべきである。これらの組成物における活性化合物の百分率は当然、変動することができ、好都合には、単位の重量の約2パーセントから約60パーセントの間であってよい。こうした治療的に有用な組成物における活性化合物の量は、有効投与量が得られるような量である。活性化合物は、鼻腔内に、例えば、液体滴またはスプレーとして投与することもできる。
【0118】
錠剤、丸剤、カプセルなどは、バインダー、例えば、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン;賦形剤、例えば、第二リン酸カルシウム;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム;および甘味剤、例えば、スクロース、ラクトースまたはサッカリンを含有することもできる。投与単位形態がカプセルである場合、それは、上記の型の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有することができる。
【0119】
様々な他の材料は、コーティングとしてまたは投与単位の物理的形態を修飾するために存在することができる。例えば、錠剤は、セラック、糖または両方でコーティングすることができる。シロップまたはエリキシルは、活性成分に加えて、スクロースを甘味剤として、メチルおよびプロピルパラベンを保存料として、サクランボまたはオレンジ香味などの染料および香味料を含有することができる。
【0120】
式(I)の化合物は、非経口的に投与することもできる。これらの活性化合物の溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピル-セルロースなどの界面活性剤と適当に混合された水中で製造することができる。分散体は、グリセリン、液体ポリエチレングリコール、および油中のその混合物中で製造することもできる。貯蔵および使用の通常の条件下で、これらの製造は、微生物体の成長を防止するための保存料を含有する。
【0121】
注射可能な使用に適当な医薬形態としては、滅菌注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は、滅菌であるべきであり、簡便なシリンジ注入可能性が存在する程度の流体であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物体の汚染作用に対して保護されているべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、適当なその混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。
【0122】
任意の適当な投与経路は、哺乳動物、殊にヒトに、本発明の化合物の有効用量を提供するために用いることができる。例えば、経口、直腸、局所的、非経口、眼球、肺、経鼻などが用いられる。剤形としては、錠剤、トローチ、分散体、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどが挙げられる。好ましくは、式(I)の化合物は、経口的に投与される。
【0123】
用いられる活性成分の有効投与量は、用いられる特別な化合物、投与のモード、処置されている状態および処置されている状態の重症度に依存して変動することができる。こうした投与量は、当業者によって容易に確かめることができる。
【0124】
本発明の好ましい実施形態の合成のための出発材料は、Array、Sigma Aldrich、Acros、Fisher、Fluka、ABCRなどの市販で利用可能な供給源から購入することができるか、当業者によって公知の方法を使用して合成することができる。
【0125】
一般に、いくつかの方法が、本発明の化合物を製造するのに適用可能である。一部の場合において、様々な戦略が組み合わせられる。逐次または収束経路が使用される。例証的な合成経路が、下に記載されている。
【実施例
【0126】
I 化学合成
実験手順:
以下の略語および頭字語が使用される:
aq 水性
ブライン 水中のNaClの飽和溶液
CV カラム体積
δ 百万分の一における化学シフト
d ダブレット
DCM ジクロロメタン
dd ダブレットのダブレット
ddd ダブレットのダブレットのダブレット
DMSO ジメチルスルホキシド
DMSO-d 重水素化ジメチルスルホキシド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
ESI 正イオン化モード
ESI 負イオン化モード
EtOAc 酢酸エチル
EtO ジエチルエーテル
HCl 塩酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
h 時間(単数または複数)
J NMRカップリング定数
MgSO 硫酸マグネシウム
m マルチプレット
mL ミリリットル(単数または複数)
min 分
窒素雰囲気
NaSO 硫酸ナトリウム
NaHCO 重炭酸ナトリウム
NaOH 水酸化ナトリウム
NMR 核磁気共鳴
q クインツプレット
r.t. 室温
RT 保持時間
s シングレット
t トリプレット
TBME tert-ブチル-メチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチリデン]-1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-1-イウム-3-オキシドヘキサフルオロホスフェート
【0127】
分析用LCMS条件は、以下の通りである:
【0128】
系1(S1):酸性のIPC方法(MS17):
Shimadzu LCMS-2010EVシステム上で、逆相Kinetex CoreシェルC18カラム(2.1mm×50mm、5μm;温度:40℃)、および1.2分かけて5~100%のB(A=水中0.1%のギ酸;B=アセトニトリル中0.1%のギ酸)次いで0.1分間100%のBの勾配を使用して、3μLの注入体積にて1.2mL/minの流量で、分析用METCR1410 HPLC-MSを行った。SPD-M20A光ダイオードアレイ検出器を使用して、UVスペクトルを215nmで記録した。150から850のm/z範囲にわたって、1秒当たり2走査のサンプリング速度で、LCMS2010EVを使用して、質量スペクトルを得た。Shimadzu LCMS-SolutionsおよびPsiPortソフトウェアを使用して、データを統合および報告した。
【0129】
系2(S2):酸性最終方法(MSQ1およびMSQ2):
系2A:Waters PDAおよびELS検出器を用いるWaters Acquity uPLCシステム上で、Phenomenex Kinetex-XB C18カラム(2.1mm×100mm、1.7μM;温度:40℃)、および5.3分かけて5~100%のB(A=水中0.1%のギ酸;B=アセトニトリル中0.1%のギ酸)次いで0.5分間100%のBの勾配を使用して、3μLの注入溶液を用いて0.6mL/minの流量で、分析用MET-uHPLC-AB-101 HPLC-MSを行った。Waters Acquity光ダイオードアレイ検出器を使用して、UVスペクトルを215nmで記録した。150から850のm/z範囲にわたって、1秒当たり5走査のサンプリング速度で、Waters SQDを使用して、質量スペクトルを得た。Waters MassLynxおよびOpenLynxソフトウェアを使用して、データを統合および報告した。
【0130】
系2B:Waters PDAおよびELS検出器を有するWaters Acquity uPLCシステム上で、Waters uPLC CSH C18カラム(2.1mm×100mm、1.7μM;温度:40℃)、および5.3分かけて5~100%(A=2mM重炭酸アンモニウム、水酸化アンモニア溶液でpH10に緩衝されている;B=アセトニトリル)次いで0.5分間100%のBの勾配を使用して、0.6mL/minの流量にて、分析用MET-uHPLC-AB-102 HPLC-MSを行った。Waters Acquity光ダイオードアレイ検出器を使用して、UVスペクトルを215nmで記録した。150から850のm/z範囲にわたって、1秒当たり5走査のサンプリング速度で、Waters Quatro Premier XEを使用して、質量スペクトルを得た。Waters MassLynxおよびOpenLynxソフトウェアを使用して、データを統合および報告した。
【0131】
系3(S3):酸性最終方法(Shimadzu):1分間5%の溶媒Bおよび次いで直線勾配5.5分で5~100%の溶媒B+2.5分の100%の溶媒B、流量1.0ml/分で。カラムATLANTIS dC18(50×3.0mm)。溶媒A=水中0.1%のギ酸、溶媒B=アセトニトリル中0.1%のギ酸
【0132】
系4(S4):塩基性最終方法(MS16)
Waters 2996 PDA検出器およびWaters 2420 ELS検出器を有するAgilent G1312Aシステム上で、Phenomenex Gemini-NX C18カラム(2.0×100mm、3mmカラム;温度:40℃)、および5.5分かけて5~100%(A=2mM重炭酸アンモニウム、pH10に緩衝されている;B=アセトニトリル)次いで0.4分間100%のBの勾配を使用して、3μLの注入体積にておよび0.6mL/minの流量で、分析用METCR1603 HPLC-MSを行った。Waters Acquity光ダイオードアレイ検出器を使用して、UVスペクトルを215nmで記録した。150から850のm/z範囲にわたって、1秒当たり5走査のサンプリング速度で、Waters ZQ質量検出器を使用して、質量スペクトルを得た。Waters MassLynxおよびOpenLynxソフトウェアを使用して、データを統合および報告した。
【0133】
分取HPLC条件は、以下の通りである:
【0134】
方法1:酸性pHを使用する逆相クロマトグラフィー、標準的溶出方法
Biotage Isoleraシステム上で、適切なSNAP C18カートリッジ、ならびに1.7CVを超えて10%のB(A=水中0.1%のギ酸;B=アセトニトリル中0.1%のギ酸)次いで19.5CVを超えて10~100%のBおよび2CVについて100%のBの勾配を使用して、逆相シリカ上のFCCによる精製(酸性pH、標準的溶出方法)を行った。
【0135】
経路1のためのスキーム:
【化7】
【0136】
中間体1:[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アンモニウムクロリド
【化8】
DCM(1.35mL)中のtert-ブチルN-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート(90%、227mg、0.539mmol)の溶液に、ジオキサン(1.4mL、5.40mmol)中4MのHClの溶液を室温で添加し、反応物をこの温度で1時間の間撹拌した。溶媒を減圧下で除去することで、[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アンモニウムクロリドが(199mg、0.522mmol、97%の収率)オフホワイトの粉末として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.17 (s, 3H), 8.08 - 7.96 (m, 2H), 7.75 - 7.64 (m, 2H), 4.90 (dd, J = 10.2, 2.5 Hz, 1H), 4.09 (dd, J = 10.8, 3.5 Hz, 1H), 3.59 - 3.54 (m, 1H), 3.29 - 3.26 (m, 1H), 2.27 - 2.17 (m, 2H), 2.09 - 1.97 (m, 1H), 1.83 - 1.70 (m, 1H). M/Z: 280, 282 [M+H], ESI+, RT = 2.46 min (S4).
【0137】
ステップ1.1:tert-ブチルN-[(3R,6S)-6-[[(4-クロロベンゾイル)アミノ]カルバモイル]テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート
【化9】
HATU(651mg、1.71mmol)を、乾燥DMF(4mL)中の4-クロロベンゾヒドラジド(243mg、1.43mmol)およびDIPEA(0.75mL、4.28mmol)の溶液に室温で添加し、10分間撹拌した。(2S,5R)-5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)テトラヒドロピラン-2-カルボン酸(350mg、1.43mmol)を次いで添加し、反応混合物を室温で2時間の間撹拌した。反応混合物を水(30mL)およびEtO(30mL)で希釈し、褐色の固体が沈殿するのを引き起こした。固体を濾過し、EtOで洗浄し、残留の溶媒を真空中で除去することで、tert-ブチルN-[(3R,6S)-6-[[(4-クロロベンゾイル)アミノ]カルバモイル]テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメートが(522mg、1.25mmol、87%の収率)褐色の固体として得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.38 (s, 1H), 9.76 (s, 1H), 7.88 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.57 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 3.91 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 3.87 - 3.74 (m, 1H), 3.38 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 3.06 (t, J = 10.6 Hz, 1H), 1.94 (t, J = 13.2 Hz, 2H), 1.62 - 1.43 (m, 2H), 1.39 (s, 9H). M/Z: 342, 344 [M-tBu+H], ESI+, RT = 1.21 min (S1).
【0138】
ステップ1.2:tert-ブチルN-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート
【化10】
乾燥THF(4mL)中のtert-ブチルN-[(3R,6S)-6-[[(4-クロロベンゾイル)アミノ]カルバモイル]テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート(372mg、0.673mmol)およびメトキシカルボニル-(トリエチルアンモニオ)スルホニル-アザニド(642mg、2.69mmol)の懸濁液を120℃で10分間マイクロ波照射下にて(正常吸収)撹拌した。結果として生じた溶液を水(25mL)とEtOAc(25mL)との間で分配し、有機層をブライン(25mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空中で濃縮した。1:0から0:1のヘプタン-EtOAcで溶出するシリカ上のフラッシュクロマトグラフィーを使用して、残留の材料を精製することで、tert-ブチルN-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメートが(227mg、0.539mmol、80%の収率)オフホワイトの粉末として得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.04 - 7.97 (m, 2H), 7.52 - 7.45 (m, 2H), 4.72 (dd, J= 9.6, 3.0 Hz, 1H), 4.48 (s, 1H), 4.23 - 4.14 (m, 1H), 3.82 - 3.72 (m, 1H), 3.30 (t, J= 10.2 Hz, 1H), 2.32 - 2.10 (m, 2H), 1.58 (d, J= 18.1 Hz, 2H), 1.46 (s, 9H). M/Z: 324, 326 [M-tBu+H], ESI+, RT = 1.21 min (S1).
【0139】
経路2のためのスキーム
【化11】
【0140】
中間体2:2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]酢酸
【化12】
2MのNaOH(12mL、24.7mmol)の水溶液を、メタノール(15mL)中のエチル2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]アセテート(96%、6.01g、24.7mmol)の溶液に室温で添加し、2時間の間撹拌した。反応混合物を濃縮し、次いで、1NのHCl溶液でpH4に酸性化した。沈殿固体を濾過することで、2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]酢酸が(1.00g、4.67mmol、19%の収率)ベージュ色の固体として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.06 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.73 (dd, J = 10.4, 2.6 Hz, 1H), 4.82 (s, 2H). M/Z: 206, 208, ESI+, RT = 0.85 min (S1).
【0141】
ステップ2.1:エチル2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]アセテート
【化13】
エチル2-ブロモアセテート(3.4mL、30.2mmol)を、DMF(12mL)中の6-クロロ-5-フルオロピリジン-3-オール(4.25g、28.8mmol)および炭酸カリウム(11.94g、86.4mmol)の懸濁液に添加し、65℃で1時間の間撹拌し、室温に冷却させておき、終夜室温で静置した。反応混合物をEtOAc(20mL)中に懸濁させ、濾過した。濾液を水(50mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発することで、エチル2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]アセテートが(6.01g、24.7mmol、86%の収率)緑色の固体として得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.92 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.08 (dd, J = 9.1, 2.6 Hz, 1H), 4.65 (s, 2H), 4.26 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.29 (t, J = 7.1 Hz, 3H). M/Z: 234, 236 [M+1], ESI+, RT = 1.09 min (S1).
【0142】
経路3のためのスキーム
【化14】
【0143】
中間体3:tert-ブチルN-[3R,6S)-6-(ヒドラジンカルボニル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート
【化15】
エタノール(25mL)およびEtOAc(15mL)中のtert-ブチルN-[(3R,6S)-6-(ベンジルオキシカルボニルアミノカルバモイル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート(950mg、2.41mmol)の脱ガス溶液に室温で、木炭上のパラジウム(10%、95mg、0.089mmol)を添加し、反応混合物を水素の雰囲気下で3時間の間撹拌した。該雰囲気からNに切り換えることによって、反応を停止させた。反応混合物を還流付近に加温し、セライト(登録商標)のパッドを介して熱濾過し、エタノールで十分に洗浄した。濾液を濃縮乾固することで、tert-ブチルN-[(3R,6S)-6-(ヒドラジンカルボニル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメートが(678mg、2.46mmol、100%の収率)オフホワイトの粉末として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.86 (s, 1H), 6.80 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 4.20 (s, 2H), 3.91 - 3.80 (m, 1H), 3.68 - 3.62 (m, 1H), 3.02 - 2.94 (m, 1H), 1.93 - 1.82 (m, 2H), 1.46 - 1.31 (m, 12H).
【0144】
ステップ3.1:tert-ブチルN-[(3R,6S)-6-(ベンジルオキシカルボニルアミノカルバモイル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート
【化16】
乾燥DMF(7mL)中の(2S,5R)-5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)テトラヒドロピラン-2-カルボン酸(710mg、2.89mmol)およびDIPEA(1.0mL、5.79mmol)の溶液に、HATU(1.21g、3.18mmol)を添加した。溶液を10分間撹拌した。ベンジルN-アミノカルバメート
529mg、3.18mmol)を次いで少しずつ添加し、反応混合物を室温で1時間の間撹拌した。反応物を水(20mL)でクエンチし、激しく10分間撹拌した。混合物を濾過することで、オフホワイトの沈殿物を回収し、これを高真空オーブンの中でさらに乾燥させることで、tert-ブチルN-[(3R,6S)-6-(ベンジルオキシカルボニルアミノカルバモイル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメートが(950mg、2.20mmol、76%の収率)オフホワイトの粉末として得られた。1NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 9.60 (s, 1H), 9.12 (s, 1H), 7.35 (d, J = 15.1 Hz, 5H), 6.82 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 3.88 (d, J = 6.1 Hz, 1H), 3.74 (d, J = 9.7 Hz, 1H), 3.08 - 2.95 (m, 1H), 1.99 - 1.78 (m, 2H), 1.57 - 1.29 (m, 12H). M/Z: 416 [M+Na], ESI+, RT = 1.09 min (S1).
【0145】
経路4のためのスキーム:
【化17】
【0146】
中間体4:2-(5-クロロピラジン-2-イル)オキシ酢酸
【化18】
1,4-ジオキサン中4Mの塩化水素(10mL、40.0mmol)を、tert-ブチル2-(5-クロロピラジン-2-イル)オキシアセテート(269mg、1.09mmol)に室温で添加し、72時間の間撹拌した。混合物を蒸発乾固させた。水(+0.1%ギ酸)中のMeCN(+0.1%ギ酸)(10%から100%)の溶液で溶出するC18-12g KP-Ultra SNAPカートリッジを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって、残留物を精製することで、2-(5-クロロピラジン-2-イル)オキシ酢酸が(120mg、0.630mmol、58%の収率)白色の固体として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.36 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 4.89 (s, 2H). M/Z: 187, 189 [M-H], ESI-, RT = 0.76 min (S1).
【0147】
ステップ4.1:tert-ブチル2-(5-クロロピラジン-2-イル)オキシアセテート
【化19】
乾燥DMF(5mL)中のtert-ブチル2-ヒドロキシアセテート(0.049mL、3.69mmol)の溶液に室温で、水素化ナトリウム(89mg、3.69mmol)を少しずつ5分かけて添加した。追加のDMF(5mL)を懸濁液に添加し、30分間撹拌した。2,5-ジクロロピラジン(500mg、3.36mmol)を次いで滴下により添加し、反応混合物を室温で3時間の間撹拌した。反応混合物を水(50mL)でゆっくり希釈し、EtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。方法1を使用して、残留物を精製することで、tert-ブチル2-(5-クロロピラジン-2-イル)オキシアセテートが(269mg、1.09mmol、32%の収率)白色の固体として得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.12 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 8.05 (d, J = 1.0 Hz, 1H), 4.78 (s, 2H), 1.47 (s, 9H). M/Z: 245, 247 [M+H], ESI+, RT = 1.18 min (S1).
【0148】
経路5のためのスキーム:
【化20】
【0149】
中間体5:2-クロロ-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アセトアミド
【化21】
DMF(3mL)中の[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アンモニウムクロリド(250mg、0.791mmol)およびDIPEA(0.28mL、1.58mmol)の溶液を5分間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却した後に、DMF(3mL)中の2-クロロアセチルクロリド(89mg、0.791mmol)を添加した。反応混合物を室温に加温し、1.5時間の間撹拌した。水(10mL)を添加し、反応混合物を真空下で濾過し、さらに水で濯ぐことで、2-クロロ-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アセトアミドが(146mg、0.344mmol、44%の収率)茶色の固体として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.27 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.06 - 8.01 (m, 2H), 7.71 - 7.67 (m, 2H), 4.84 (dd, J = 10.6, 2.6 Hz, 1H), 4.06 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 3.98 - 3.92 (m, 1H), 3.85 - 3.75 (m, 1H), 3.50-3.25 (m, 1H), 2.16 (dt, J = 10.5, 4.3 Hz, 1H), 2.08 - 1.96 (m, 2H), 1.72 - 1.62 (m, 1H). M/Z: 356, 358 [M+H], ESI+, RT = 1.03 min (S1).
【0150】
経路6のためのスキーム:
【化22】
【0151】
中間体6:(2R,5S)-5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)テトラヒドロピラン-2-カルボン酸
【化23】
DCM(5mL)、アセトニトリル(5mL)および水(7mL)中のtert-ブチルN-[(3S,6R)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート(657mg、2.84mmol)の溶液を、0℃に冷却しながら激しく撹拌した。過ヨウ素酸ナトリウム(1.22g、5.68mmol)および三塩化ルテニウム(3+)(0.027g、0.13mmol)を添加し、反応物をこの温度で3時間の間撹拌した。EtOAc(10mL)を添加し、混合物を濾過した。メタノールを添加し、溶液を濾過した。10%亜硫酸水素ナトリウム(10ml)の溶液を添加し、1MのHClでpHを2に調整した。水性層を分離し、EtOAcで抽出した。有機層を合わせ、MgSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物を飽和NaHCO(10mL)中に溶かし、EtOAc(2×10mL)で抽出した。水性層を1MのHClでpH2に酸性化し、EtOAc(4×10mL)で抽出し、有機層を合わせ、MgSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物を1:2のTBME/ヘプタン(100mL)で粉砕し、濾過し、真空中で乾燥させることで、(2R,5S)-5-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)テトラヒドロピラン-2-カルボン酸が(375mg、1.53mmol、54%の収率)黄色の粉末として得られた。1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 4.57 - 4.15 (m, 2H), 4.13 - 3.85 (m, 2H), 3.79 - 3.39 (m, 1H), 3.15 (t,J= 10.6 Hz, 1H), 2.27 - 2.03 (m, 2H), 1.87 - 1.62 (m, 1H), 1.44 (s, 10H).
【0152】
ステップ6.1:メチル(2R)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヨード-プロパノエート
【化24】
イミダゾール(4.27g、62.8mmol)を、DCM(200mL)中のトリフェニルホスファン(16.46g、62.8mmol)の溶液に室温で添加し、完全な溶解後、0℃にN雰囲気下で冷却した。ヨウ素分子(15.93g、62.8mmol)を少量ずつ20分かけて添加した。溶液を室温に加温し、10分間撹拌し、0℃に冷却して戻した。DCM(50mL)中のメチル(2{S})-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヒドロキシ-プロパノエート(10.59g、48.3mmol)の溶液を、1時間かけて滴下により添加した。反応物を0℃で1時間の間撹拌し、室温に加温させておき、さらに1.5時間の間撹拌した。反応混合物を1:1のエーテル:ヘプタンで溶出するシリカプラグ(75g)に通して濾過し、溶媒を蒸発させた。ヘプタン中0~30%のTBMEで溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーによって、残留物を精製することで、清澄な油状物が得られた。ヘプタンからの結晶化後、固体を濾過によって回収し、真空中で乾燥させることで、メチル(2R)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヨード-プロパノエートが(11.46g、33.1mmol、69%の収率)得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 5.34 (d, J= 5.9 Hz, 1H), 4.56 - 4.46 (m, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.63 - 3.49 (m, 2H), 1.46 (s, 9H).
【0153】
ステップ6.2:メチル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)へキサ-5-エン酸
【化25】
亜鉛(1.96g、30.0mmol)およびヨウ素分子(76mg、0.299mmol)を、温度計が装着された3つ口フラスコに添加した。フラスコを排気し、ヒートガンで10分間加熱し、次いで、Nでフラッシュし、該プロセスを2回反復した。室温に冷却した後、乾燥DMF(1mL)を添加し、スラリーを0℃に冷却した。DMF(6.5mL)中のメチル(2{R})-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-ヨード-プロパノエート(3.29g、10.0mmol)の溶液を、10分かけて滴下により添加し、反応混合物を室温で1時間の間撹拌した。
【0154】
温度計が装着されている第2の3つ口フラスコに、ブロモ銅メチルスルファニルメタン(207mg、1.00mmol)を投入し、真空下でヒートガンにて穏やかに加熱する一方で、色がオフホワイトから淡緑色に変化した。室温に冷却した後、DMF(6.5mL)および3-クロロプロパ-1-エン(0.81mL、10.0mmol)を添加した。フラスコを-15℃に冷却し、亜鉛試薬を滴下により添加した。反応混合物を室温に加温させておき、18時間の間撹拌した。EtOAc(75mL)を添加し、混合物を15分間撹拌し、さらなるEtOAc(75mL)で希釈し、5%のNa(2×25mL)、水(2×25mL)、ブライン(25mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。ヘプタン中0~50%のTBMEで溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーによって、残留物を精製することで、メチル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)へキサ-5-エン酸が(1.96g、7.67mmol、77%の収率)清澄な油状物として得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 5.79 (ddt, J= 16.9, 10.2, 6.6 Hz, 1H), 5.08 - 4.95 (m, 3H), 4.36 - 4.27 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 2.17 - 2.05 (m, 2H), 1.90 (dq, J= 13.5, 7.4 Hz, 1H), 1.71 (dq, J= 14.4, 8.0 Hz, 1H), 1.44 (s, 9H).
【0155】
ステップ6.3:tert-ブチルN-[(1S)-1-(ヒドロキシメチル)ペンタ-4-エニル]カルバメート
【化26】
THF(43mL)中の水素化ホウ素リチウム(0.17g、7.67mmol)の懸濁液に室温でN雰囲気下にて、THF(14mL)中のメチル(2S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)へキサ-5-エン酸(95%、1.96g、7.67mmol)の溶液を添加し、結果として得られた溶液を室温で18時間の間撹拌した。水を添加し、混合物をEtOAcで抽出し、有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮することで、tert-ブチルN-[(1S)-1-(ヒドロキシメチル)ペンタ-4-エニル]カルバメートが(1.85g、7.73mmol、100%の収率)無色の油状物として得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 5.86 - 5.76 (m, 1H), 5.07 - 4.95 (m, 2H), 4.63 (s, 1H), 3.66 (s, 2H), 3.56 (dd, J= 10.1, 5.0 Hz, 1H), 2.20 - 2.06 (m, J= 7.3, 6.8 Hz, 2H), 1.68 - 1.48 (m, 3H), 1.45 (s, 9H).
【0156】
ステップ6.4:tert-ブチルN-[(1S)-1-(ヒドロキシメチル)-3-(オキシラン-2-イル)プロピル]カルバメート
【化27】
DCM(30mL)中のtert-ブチルN-[(1S)-1-(ヒドロキシメチル)ペンタ-4-エニル]カルバメート(1.85g、7.73mmol)の溶液を、水(40mL)中のリン酸カリウム(4.04g、23.2mmol)の溶液に添加し、室温で激しく撹拌した。3-クロロベンゼンカルボペルオキソ酸(1.78g、7.73mmol)を添加し、撹拌が18時間の間続いた。層を分離させ、水性DCM(50mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSO上で乾燥させ、真空中で濃縮した。ヘプタン中0~100%のEtOAcで溶出するシリカゲル上のクロマトグラフィーによって、残留物を精製することで、tert-ブチルN-[(1S)-1-(ヒドロキシメチル)-3-(オキシラン-2-イル)プロピル]カルバメートが(1.32g、4.58mmol、59%の収率)清澄な油状物として得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 4.72 (d, J= 31.2 Hz, 1H), 3.72 - 3.50 (m, 3H), 2.98 - 2.90 (m, 1H), 2.57 - 2.43 (m, 1H), 2.45 - 2.20 (m, 1H), 1.80 - 1.51 (m, 4H), 1.44 (s, 10H).
【0157】
ステップ6.5:tert-ブチルN-[(3S,6R)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメート
【化28】
(7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタ-1-イル)メタンスルホン酸(262mg、1.13mmol)を、DCM(75mL)中のtert-ブチルN-[(1S)-1-(ヒドロキシメチル)-3-(オキシラン-2-イル)プロピル]カルバメート(3.48g、11.3mmol)の溶液に添加し、結果として得られた溶液を室温で18時間の間撹拌した。反応混合物をNaHCOの水溶液に注ぎ入れ、層を分離させた。有機層をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。ヘプタン中0~100%のEtOAcで溶出するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって、残留物を精製することで、オフホワイトの粉末が得られた。固体をヘプタンで粉砕することで、tert-ブチルN-[(3S,6R)-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロピラン-3-イル]カルバメートが(662mg、2.86mmol、25%の収率)オフホワイトの粉末として得られた。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 4.26 (s, 1H), 4.11 (ddd, J = 10.7, 4.7, 2.1 Hz, 1H), 3.60 (ddd, J = 11.2, 7.9, 3.1 Hz, 2H), 3.51 (ddd, J = 11.5, 7.1, 4.5 Hz, 1H), 3.36 (dtd, J = 10.3, 5.5, 2.7 Hz, 1H), 3.02 (t, J = 10.7 Hz, 1H), 2.16 - 1.96 (m, 2H), 1.51 - 1.36 (m, 10H), 1.29 (qd, J = 12.5, 4.2 Hz, 1H)
【0158】
経路7のためのスキーム
【化29】
【0159】
中間体7:リチウム2-[(5-フルオロ-6-メチル-3-ピリジル)オキシ]アセテート
【化30】
メタノール(5mL)中のエチル2-[(5-フルオロ-6-メチル-3-ピリジル)オキシ]アセテート(0.50g、2.35mmol)の溶液に室温で、2Mのヒドロキシリチウム(2.3mL、4.69mmol)を添加し、室温で終夜撹拌した後に、蒸発乾固させた。固体をアセトニトリル(10mL)中に懸濁させ、蒸発乾固させることで、リチウム2-[(5-フルオロ-6-メチル-3-ピリジル)オキシ]アセテートが(630mg、2.34mmol、100%の収率)白色の固体として得られた。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.01 - 7.84 (m, 1H), 7.08 - 7.00 (m, 1H), 4.20 - 4.11 (m, 2H), 3.20 - 3.13 (m, 1H), 2.35 - 2.29 (m, 3H). M/Z: 186 [M+H]+, RT = 0.4-0.6 min (S4).
【0160】
ステップ7.1:エチル2-[(5-フルオロ-6-メチル-3-ピリジル)オキシ]アセテート
【化31】
無水THF(30mL)中のエチル2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]アセテート(97%、2.60g、10.8mmol)の脱ガス溶液に室温で窒素雰囲気下にて、パラジウムトリフェニルホスファン(0.80g、0.692mmol)を添加し、撹拌した。THF中2Mのクロロ(メチル)亜鉛(6.5mL、13.0mmol)を次いで添加し、5分間撹拌した。反応混合物を75℃に加熱し、終夜撹拌し、室温に冷却させておいた。反応混合物を塩化アンモニウム溶液(20mL)でクエンチし、水(100mL)で希釈し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した。水(+0.1%ギ酸)中のMeCN(+0.1%ギ酸)の溶液(10%から100%)で溶出するフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Isolera、C18 120g KP-Ultra SNAPカートリッジ)による精製、続いて蒸発で、エチル2-[(5-フルオロ-6-メチル-3-ピリジル)オキシ]アセテートが(1.69g、7.69mmol、71%の収率)オフホワイトの固体として得られた。1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 8.05 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.94 (dd, J = 10.4, 2.5 Hz, 1H), 4.63 (s, 2H), 4.27 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.45 (d, J = 2.9 Hz, 3H), 1.30 (t, J = 7.1 Hz, 3H). M/Z: 214 [M+H]+, RT = 0.98 (S1).
【0161】
経路8のためのスキーム:
【化32】
【0162】
[実施例1]
2-(4-クロロ-3-フルオロ-フェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アセトアミド
DCM(1.5mL)中の[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アンモニウムクロリド(78mg、0.241mmol)の溶液に、DIPEA(0.17mL、0.964mmol)、続いて、DCM(1mL)中の2-(4-クロロ-3-フルオロ-フェノキシ)アセチルクロリド(0.11g、0.482mmol)の溶液を、滴下により室温で添加した。5分間撹拌した後、反応混合物を1Mの塩化水素水溶液およびDCMで希釈した。有機層を単離し、1MのNaOH溶液およびブラインで逐次洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、真空中で濃縮した。残留の材料をカラムクロマトグラフィー(ヘプタン-EtOAc、1:0から0:1で溶出する、シリカゲル)によって精製することで、2-(4-クロロ-3-フルオロ-フェノキシ)-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アセトアミドが(106mg、0.22mmol、92%の収率)オフホワイトの固体として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.12 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.00 - 8.06 (m, 2H), 7.67 - 7.73 (m, 2H), 7.51 (t, J = 8.9 Hz, 1H), 7.09 (dd, J = 11.4, 2.8 Hz, 1H), 6.83 - 6.91 (m, 1H), 4.82 (dd, J = 10.7, 2.6 Hz, 1H), 4.56 (s, 2H), 3.84 - 4.00 (m, 2H), 3.38 (t, J = 10.2 Hz, 1H), 2.12 - 2.22 (m, 1H), 1.95 - 2.08 (m, 2H), 1.68 - 1.80 (m, 1H). M/Z: 466[M+H], ESI+, RT = 4.20 min (S1).
【0163】
一般経路8に従って、実施例1によって例証されている通りに、対応する中間体を使用して、表1中の化合物を合成した。
【0164】
【表1】
【表2】
【表3】
【0165】
経路9のためのスキーム:
【化33】
【0166】
[実施例7]
2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アセトアミド
乾燥DMF(2mL)中の2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]酢酸(36mg、0.174mmol)、HATU(66mg、0.174mmol)およびN-エチル-N-イソプロピル-プロパン-2-アミン(0.055mL、0.316mmol)の溶液に、[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アンモニウムクロリド(50mg、0.158mmol)を添加した。混合物を室温で60分間撹拌した。反応混合物を次いで、EtOAcで希釈し、水、続いてNaHCOの飽和水溶液(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させた。固体を次いで、分取HPLC(方法1)によって精製することで、2-[(6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル)オキシ]-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アセトアミドが(37mg、0.0784mmol、50%の収率)白色の粉末として得られた。1HNMR(500MHz, DMSO-d6) δ = 8.17 (d, J =7.8, 1H), 8.08 (d, J =2.6, 1H), 8.06 - 8.01 (m, 2H), 7.71 (dd, J =10.3, 2.6, 1H), 7.70 - 7.66 (m, 2H), 4.87 - 4.76 (m, 1H), 4.67 (d, J =1.9, 2H), 3.97 - 3.91 (m, 1H), 3.92 - 3.84 (m, 1H), 3.40 - 3.37 (m, 1H), 2.16 (d, J =13.7, 1H), 2.10 - 1.95 (m, 2H), 1.77 - 1.67 (m, 1H). M/Z: 467, 469 [M+H], ESI+, RT = 3.35 min (S2).
【0167】
一般経路9に従って、実施例7によって例証されている通りに、対応する中間体を使用して、表2中の化合物を合成した。
【0168】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0169】
経路10のためのスキーム
【化34】
【0170】
[実施例18]
N-[3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]-2-[[6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジル]オキシ]アセトアミド:
【化35】
乾燥DMF(1mL)中の2-クロロ-N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]アセトアミド(84%、70mg、0.165mmol)、二カリウム炭酸塩(46mg、0.330mmol)、ヨウ化ナトリウム(37mg、0.248mmol)および6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-オール(27mg、0.165mmol)の溶液をN下で、40℃で4時間の間撹拌した。水を添加し、形成された沈殿物を真空下で濾過した。溶離液としてEtOAc/ヘプタン(40~100%)を使用するシリカゲルカラム上のカラムクロマトグラフィーによって、残留物を精製することで、N-[(3R,6S)-6-[5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]テトラヒドロピラン-3-イル]-2-[[6-(トリフルオロメチル)-3-ピリジル]オキシ]アセトアミドが(41mg、0.082mmol、50%の収率)白色の固体として得られた。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 8.48 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 8.23 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 8.06 - 8.01 (m, 2H), 7.88 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.71 - 7.66 (m, 2H), 7.58 (dd, J = 8.7, 2.8 Hz, 1H), 4.83 (dd, J = 10.7, 2.5 Hz, 1H), 4.74 (d, J = 1.8 Hz, 2H), 3.98 - 3.93 (m, 1H), 3.93 - 3.85 (m, 1H), 3.40 (s, 1H), 2.17 (dt, J = 10.2, 2.5 Hz, 1H), 2.08 - 1.97 (m, 2H), 1.78 - 1.69 (m, 1H). M/Z: 483, 485 [M+H]+, RT = 3.37 (S2).
【0171】
一般経路10に従って、実施例18によって例証されている通りに、対応する中間体を使用して、表3中の化合物を合成した。
【0172】
【表8】
【0173】
II 生物学的アッセイ
HEK-ATF4高含有量画像化アッセイ
実施例化合物をHEK-ATF4高含有量画像化アッセイにおいて試験して、ツニカマイシン誘発ISRを防止するためのそれらの薬理学的効力を判定した。野生型HEK293細胞を、384ウェル画像化アッセイプレートにおいて、1ウェル当たり12,000細胞の密度で成長培地(DMEM/F12、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン-100μg/mLのストレプトマイシンを含有する)中に平板培養し、37℃、5%のCOでインキュベートした。24時間後に、培地を1ウェル当たり50μlのアッセイ培地(DMEM/F12、0.3%のFBS、2mMのL-グルタミン、100U/mLのペニシリン-100μg/mLのストレプトマイシン)に変えた。実施例化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)中に系列希釈し、中間プレート中にスポットし、3.3μMのツニカマイシンを含有するアッセイ培地で前希釈することで、11倍過剰の最終アッセイ濃度を得た。実施例化合物試験エリアに加えて、プレートは、アッセイ正常化目的で複数の対照ウェル、ツニカマイシンを含有するが例化合物を含有しないウェル(高対照)、同様に、実施例化合物もツニカマイシンも含有しないウェル(低対照)も含有していた。5μlを中間プレートからアッセイプレート中に移すこと、続いて、6時間の間37℃、5%のCOでのインキュベーションによって、アッセイを開始した。引き続いて、細胞を固定し(PBS中4%のPFA、20分室温で)、間接ATF4免疫蛍光染色(一次抗体ウサギ抗ATF4、クローンD4B8、Cell Signaling Technologies;二次抗体Alexa Fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(H+L)、Thermofisher Scientific)に供した。ヘキスト染料(Thermofisher Scientific)を使用して核を染色し、405nmおよび488nmの励起が備えられているOpera Phenix High Content画像化プラットフォーム上でプレートを画像化した。最終的に、スクリプトベースのアルゴリズムを使用して画像を分析した。主読み出しHEK-ATF4で、核と細胞質との間のATF4シグナル比をモニタリングした。ツニカマイシンは、全体的ATF4比シグナルの増加を誘発し、これはISRモジュレート実施例化合物によって防止された。加えて、HEK-CellCount読み出しを、健康な細胞に対応する染色核の数をカウントすることから誘導した。この読み出しは、内部毒性対照として働いた。本明細書における実施例化合物は、CellCountの有意な低減を生成しなかった。
【0174】
試験された実施例化合物の活性は、表T5において以下の通りに提供されている:
+++=IC50 1~500nM;++=IC50 >500~2000nM;+=IC50 >2000~15000nM。
【0175】
【表9】
【0176】
参照
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