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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-13
(45)【発行日】2024-11-21
(54)【発明の名称】二次電池、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241114BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 10/0583 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20241114BHJP
   H01M 50/466 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0587
H01M10/0583
H01M10/052
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01M4/13
H01M50/449
H01M50/46
H01M50/466
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021567286
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2020046639
(87)【国際公開番号】W WO2021131877
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019236097
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】草田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】塚越 貴史
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156172(WO,A1)
【文献】特開2018-067396(JP,A)
【文献】特開2011-054502(JP,A)
【文献】特開2014-026943(JP,A)
【文献】特開2014-120456(JP,A)
【文献】国際公開第99/026306(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058-10/0587
H01M 10/04
H01M 4/13-4/62
H01M 50/449
H01M 50/46
H01M 50/466
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極芯体及び前記第1極芯体上に配置された第1極活物質を有する複数の第1極と、
第2極芯体及び前記第2極芯体上に配置された第2極活物質を有する複数の第2極と、
1以上のセパレータと、
前記セパレータにおける少なくとも厚さ方向の一方側面と、前記第1極の間に配置される接着剤と、を備え、
前記複数の第1極と前記複数の第2極は、前記セパレータを介して交互に積層され、
前記複数の第1極及び前記複数の第2極を含む積層体は、10以上の前記第1極を有し、
最外層の前記第1極と前記セパレータの接着力をA0[N/m]とし、前記積層体において積層方向の中央に位置する前記第1極と前記セパレータの接着力をA1[N/m]としたとき、A1/A0が、0.以上0.未満である、二次電池。
【請求項2】
第1極芯体及び前記第1極芯体上に配置された第1極活物質を有する帯状の第1極と、第2極芯体及び前記第2極芯体上に配置された第2極活物質を有する帯状の第2極が、帯状のセパレータを介して5巻以上巻回された巻回体を備え、
前記巻回体は、前記セパレータにおける少なくとも厚さ方向の一方側面と、前記第1極との間に配置される接着剤を有し、
最外周に位置する前記第1極と前記セパレータの接着力をA0[N/m]とし、最内周に位置する前記第1極と前記セパレータの接着力をA1[N/m]としたとき、A1/A0が、0.1以上0.9未満である、二次電池。
【請求項3】
前記第1極の長辺が10cm以上であって、前記第1極の厚さ方向の一方側面の面積が90cm以上である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記セパレータにおける厚さ方向の他方側面と、前記第2極の間に配置される第2接着剤を備え、
最外層の前記第2極と前記セパレータの接着力をA2[N/m]とし、前記積層体において積層方向の中央に位置する前記第2極と前記セパレータの接着力をA3[N/m]としたとき、A3/A2が、0.1以上0.9未満である、請求項1又は3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記巻回体が、偏平形状を有し、
前記二次電池の高さ方向における前記巻回体の長さが10cm以上であって、前記二次電池の横方向における前記巻回体の長さが9cm以上である、請求項2に記載の二次電池。
【請求項6】
前記セパレータにおける厚さ方向の他方側面と、前記第2極の間に配置される第2接着剤を備え、
最外周に位置する前記第2極と前記セパレータの接着力をA2[N/m]とし、最内周に位置する前記第2極と前記セパレータの接着力をA3[N/m]としたとき、A3/A2が、0.1以上0.9未満である、請求項2又は5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記一方側面が、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔質基材に含まれる、請求項1から6までのいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項8】
前記他方側面が、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔質基材に含まれる、請求項4又は6に記載の二次電池。
【請求項9】
前記接着剤が前記セパレータの前記一方側面に面積密度が略一定になるように塗布されており、
前記接着剤において接着している部分の面積密度が前記積層方向で変動する、請求項1、3又は4に記載の二次電池。
【請求項10】
前記接着剤が前記セパレータの前記一方側面に面積密度が略一定になるように塗布されており、
前記接着剤において接着している部分の面積密度が巻回体の層ごとに変動する、請求項2、5又は6に記載の二次電池。
【請求項11】
前記セパレータが、九十九折りで折り込まれている、請求項1、3、4、又は9に記載の二次電池。
【請求項12】
前記二次電池は、非水電解質二次電池である、請求項1から11のいずれかに記載の二次電池。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1つの二次電池を製造する二次電池の製造方法であって、熱プレス工程で、前記接着剤の少なくとも一部を溶着させる、二次電池の製造方法。
【請求項14】
複数の前記セパレータを備え、
前記複数のセパレータが、接着剤が塗布されている量が異なるセパレータを含む、請求項1、3、4、9又は11に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池はさまざまな場面において需要が高まっている。中でも非水電解質を使用したリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度が得られることから注目されている。その形態の一つとして特許文献1のような二次電池がある。この形態の二次電池には、正極板と負極板とをセパレータを介して複数層積層した偏平形状電極体を外装体に挿入する。正極板は正極活物質合剤層が正極芯体の両面に設けられており、負極板は負極活物質合剤層が負極芯体の両面に設けられている。正極活物質および負極活物質はそれぞれリチウムイオンの挿入・脱離が可能な構造をしている。セパレータは多孔性物質であり、リチウムイオンを透過させることができる一方、正極板と負極板の電気的接触による短絡を防止している。
【0003】
正極板および負極板はそれぞれ集電板と電気的に接続され、外装体に挿入される。外装体は電解液を注入後に封止される。この二次電池は、セパレータが収縮して正負極間の直接接触が発生しないよう、セパレータの表面に接着層を設け、熱圧着を行うことにより正極板/セパレータ間および負極板/セパレータ間を接着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-26943号公報
【発明の概要】
【0005】
本願発明者等は、次の新規の課題を発見した。詳しくは、電極体の取り扱いを容易にすること、積層体内の極板の位置ずれを抑制すること、特に、積層体を封口体に挿入する際の極板の積層ずれを抑制するために、電極とセパレータとの間に接着性のある材料が設けられている場合、電解液の液回り性(液浸透性)が、接着の強弱に左右される。
【0006】
すなわち、接着力が強い場合には、接着材料の密度が高くなり、かつ、電極とセパレータとの隙間が狭くなるため、電解液の液回り性が損なわれ易くなる。一方、接着力が弱いと、液回り性は良好にあるが、電極体の取り扱い性が損なわれ、電極に対するセパレータの位置ずれが発生し易い。
【0007】
より詳しく、液回り性について説明すると、電解液は、電極体の積層方向の端部から浸透するため、電極体の積層方向の端に位置する電極から積層方向に離れるほど、電極液が浸透しにくく、電解液が電極面全体に行き渡りにくくなる。つまり、電解液は、積層体の中央部に行くほど浸透しにくくなる。この問題は、特に、電極面積が大きくて、各電極間に多くの電解液が必要になる大容量の二次電池において顕著になり、大容量の二次電池においては、電極体全面に充分な電解液を行き渡らせるのに時間を要する。したがって、接着剤を用いた場合、大容量の二次電池において特に大きな生産性の低下を引き起こす虞がある。
【0008】
よって、接着剤は、液回り性を良好なものにするため、この目的を達成する最小限の接着力を有すればよいとも考えられる。しかしながら、そのような接着力の制御は、生産タクトに多大な影響を及ぼす恐れがある。具体的には、積層体内部の接着力を必要最小限に留めながら、積層群全体を均一な接着力とすることは、接着力が、少なくとも熱と圧力とに依存する接着材料を用いている場合においては、積層方向の外側のセパレータの熱による潰れを抑制するため、積層体全体の温度を比較的低温で均一化にする必要があり、熱プレス工程に多大の時間を要することになる。
【0009】
本開示の一態様に係る二次電池は、第1極芯体及び第1極芯体上に配置された第1極活物質を有する複数の第1極と、第2極芯体及び第2極芯体上に配置された第2極活物質を有する複数の第2極と、1以上のセパレータと、セパレータにおける少なくとも厚さ方向の一方側面と、第1極の間に配置される接着剤と、を備え、複数の第1極と複数の第2極は、セパレータを介して交互に積層され、複数の第1極及び複数の第2極を含む積層体は、10以上の第1極を有し、最外層の第1極とセパレータの接着力をA0[N/m]とし、積層体において積層方向の中央に位置する第1極とセパレータの接着力をA1[N/m]としたとき、A1/A0が、0.1以上0.9未満である。
【0010】
上記第1極は、正極でもよく、負極でもよい。また、積層体は、例えば、電極群や電極体で構成されるが、第1極の積層数が奇数の場合は、積層方向の中央の第1極は、1つしか存在しないが、第1極の積層数が偶数の場合は、積層方向の中央の第1極は、2つ存在する。また、最外層の第1極は、2つ存在する。上記A1/A0が、0.1以上とは、A1/A0の値が最も小さくなる、最外層の第1極と、積層方向の中央の第1極を選んだときのA1/A0の値が、0.1以上であるという意味である。また、同様に、上記A1/A0が、0.9未満とは、A1/A0の値が最も大きくなる、最外層の第1極と、積層方向の中央の第1極を選んだときのA1/A0の値が、0.9未満であるという意味である。
【0011】
また、本開示の他態様に係る二次電池は、第1極芯体及び第1極芯体上に配置された第1極活物質を有する帯状の第1極と、第2極芯体及び第2極芯体上に配置された第2極活物質を有する帯状の第2極が、帯状のセパレータを介して5巻以上巻回された巻回体を備え、巻回体は、セパレータにおける少なくとも厚さ方向の一方側面と、第1極との間に配置される接着剤を有し、最外周に位置する第1極とセパレータの接着力をA0[N/m]とし、最内周に位置する第1極とセパレータの接着力をA1[N/m]としたとき、A1/A0が、0.1以上0.9未満である。
【0012】
上記第1極は、正極でもよく、負極でもよい。また、二次電池が、巻回型の電極体を有する場合でも、電極体が偏平型である場合には、電極体を偏平にプレスするプレス板と電極が平行になる局所領域(一対のプレス板に挟まれる領域)については、正極、負極、及びセパレータが、セパレータが正極と負極の間に配置された状態で積層された構造となる。したがって、二次電池が、巻回型の電極体を有する場合でも、そのようなプレス板と電極が平行になる局所領域を積層体と考えることができ、その場合においては、最内周側に位置するセパレータを積層体の内側(中央側)のセパレータと考えることができ、最外周側に位置するセパレータを積層体の外側のセパレータと考えることができる。
【0013】
本開示に係る二次電池によれば、積層体内部で必要な接着力を確保しながら、サイクルタイムを短縮し易く、更には、積層体内部の電解液の液回り性も良好なものにし易い。また、本開示に係る二次電池によれば、そのような二次電池を製造し易い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る角形二次電池の斜視図である。
図2図2は上記角形二次電池を構成する電極体及び封口板の斜視図である。
図3図3は上記角形二次電池の電極体の分解斜視図である。
図4図4図2のA-A線断面を模式的に示す図である。
図5図5は第1の電極群の積層方向の外側の一部を角形二次電池の高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図であり、セパレータの一部と、正極の一部と、以下で説明する接着剤において接着している接着部分を含む拡大模式断面図である。
図6図6は積層型の電極体における、積層方向の位置と、電極とセパレータの接着力との関係を示す模式図である。
図7図7は第1の電極群の積層方向の内側の一部を高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図であり、図5と同様に、接着剤において接着力を発現していない部分の図示は省略している拡大模式断面図である。
図8図8は他の実施形態の巻回型の角形二次電池の平面図である。
図9図9は巻回型の角形二次電池の正面図である。
図10図10(a)は、図8のA-A線断面図であり、図10(b)は、図10(a)のB-B線断面図であり、図10(c)は、図10(a)のC-C線断面図である。
図11A図11Aは、巻回型の角形二次電池が含む正極の平面図である。
図11B図11Bは、巻回型の角形二次電池が含む負極の平面図である。
図12図12は、巻回型の角形二次電池が含む偏平状の巻回電極体の巻回終了端側を展開した斜視図である。
図13図13は、巻回型の電極体における図6に対応する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。また、本明細書で、「数値A~数値B」との記載は、「数値A以上数値B以下」を意味する。また、以下の説明では、外装缶14、140の高さ方向を二次電池10、110の「上下方向」とし、封口板15側、123側を「上」、外装缶14、140の底部側を「下」とする。また、封口板15、123の長手方向に沿う方向を二次電池10、110の「横方向」とする。
【0016】
また、第1極を、正極又は負極とするとき、二次電池が、積層型の電極体を有する場合、積層体は、例えば、電極群や電極体で構成されるが、第1極の積層数が奇数の場合は、積層方向の中央の第1極は、1つしか存在しないが、第1極の積層数が偶数の場合は、積層方向の中央の第1極は、2つ存在する。また、積層方向の最外層の第1極は、2つ存在する。上記A1/A0が、0.1以上とは、A1/A0の値が最も小さくなる、最外層の第1極と、積層方向の中央の第1極を選んだときのA1/A0の値が、0.1以上であるという意味である。また、同様に、上記A1/A0が、0.9以下とは、A1/A0の値が最も大きくなる、最外層の第1極と、積層方向の中央の第1極を選んだときのA1/A0の値が、0.9以下であるという意味である。以下、A1/A0がa以上であるという文言を用いた場合、それは、A1/A0の値が最も小さくなる、最外層の第1極と、積層方向の中央の第1極を選んだときのA1/A0の値が、a以上であるということを意味することにする。また、A1/A0が、b以下であるという文言を用いた場合、それは、A1/A0の値が最も大きくなる、最外層の第1極と、積層方向の中央の第1極を選んだときのA1/A0の値が、b以下であるということを意味することにする。また、以下で、積層体(例えば、電極群や電極体)の中央の接着力といったときは、下限を意味する場合には、中央の1つ又は2つの第1極のうちで低い方の接着力を有する第1極の当該接着力を指すことにする。また、以下で、積層体(例えば、電極群や電極体)の中央の接着力といったときは、上限を意味する場合には、中央の1つ又は2つの第1極のうちで高い方の接着力を有する第1極の当該接着力を指すことにする。
【0017】
図1は、本開示の一実施形態に係る角形二次電池10の斜視図であり、図2は角形二次電池10を構成する電極体11及び封口板15の斜視図(外装缶14を取り除いた状態を示す図)である。図1及び図2に示すように、角形二次電池(以下、単に二次電池という)10は、外装体として、外装缶14と封口板15を含む角形容器を備えるが、外装体はこれに限定されない。
【0018】
図1及び図2に示すように、二次電池10は、電極体11と、電解質と、電極体11及び電解質が収容される有底筒状の外装缶14と、正極端子12及び負極端子13が取り付けられ、外装缶14の開口部を塞ぐ封口板15とを備える。後で、図3を用いて詳述するが、電極体11は、正極20と負極30がセパレータ40を介して交互に積層された構造を有する。外装缶14は高さ方向一端が開口した扁平な略直方体形状の金属製角形容器である。外装缶14及び封口板15は、例えば、アルミニウムを主成分とする金属材料で構成される。
【0019】
電解質は、水系電解質であってもよいが、好ましくは非水電解質であり、本実施形態では非水電解液を用いるものとする。非水電解液は、例えば、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。電解質塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。
【0020】
封口板15には、上記の通り、正極端子12及び負極端子13が取り付けられている。封口板15は、細長い矩形形状を有し、長手方向一端側に正極端子12が、封口板15の長手方向他端側に負極端子13がそれぞれ配置されている。正極端子12及び負極端子13は、他の二次電池10や負荷に対して電気的に接続される外部接続端子であり、絶縁部材を介して封口板15に取り付けられる。
【0021】
後で詳述するが、正極20は正極端子12と電気的に接続される正極タブ23を含み、負極30は負極端子13と電気的に接続される負極タブ33を含む。正極端子12は正極集電板25を介して、複数の正極タブ23が積層されてなる正極タブ群24と電気的に接続され、負極端子13は負極集電板35を介して、複数の負極タブ33が積層されてなる負極タブ群34と電気的に接続される。
【0022】
封口板15には、機能部品として、電池の異常発生時に電流経路を切断するための電流遮断装置18が設けられている。機能部品は、例えば、二次電池10の安全装置又は制御装置として機能する部品である。機能部品は、封口板15の内面において正極端子12又は負極端子13に近接配置される。本実施形態では、電流遮断装置18が正極端子12に付随し、正極端子12の内側に配置されている。
【0023】
電流遮断装置18は、二次電池10に異常が発生して外装缶14の内圧が所定の圧力を超えて上昇した場合に電流経路を遮断する圧力感知式の安全装置である。電流遮断装置18は、例えば、正極端子12と正極集電板25の間に配置され、通常使用時において正極端子12及び正極集電板25と電気的に接続されている。電流遮断装置18の構造は特に限定されないが、一例としては、内圧上昇時に正極集電板25から離れる方向に反転して正極集電板25との電気的接続を切断し、正極端子12と正極集電板25の電流経路を遮断する反転板を含む装置が挙げられる。
【0024】
また、封口板15には、非水電解液を注入するための注液部16、及び電池の異常発生時に開弁してガスを排出するためのガス排出弁17が設けられる。ガス排出弁17は封口板15の長手方向中央部に、注液部16は正極端子12とガス排出弁17の間にそれぞれ配置されている。
【0025】
図2に例示するように、電極体11は、第1の電極群11Aと第2の電極群11Bに分割されている。電極群11A,11Bは、例えば、互いに同じ積層構造、寸法を有し、電極体11の厚み方向に積層配置される。各電極群の上端部には、複数の正極タブ23からなる正極タブ群24、及び複数の負極タブ33からなる負極タブ群34が形成され、封口板15の各集電板にそれぞれ接続されている。電極群11A,11Bの外周面はセパレータ40で覆われ、また電極群11A,11Bで独立した電池反応が起こるように構成されている。
【0026】
図3は、電極体11の分解斜視図である。図3に例示するように、電極体11は、複数の正極20と、複数の負極30とを含む。電極体11を構成する電極群11A,11Bには、例えば、負極30が正極20よりも1枚多く含まれ、電極群11A,11Bの厚み方向両側に負極30が配置される。図3では、正極20と負極30の間に1枚ずつ配置される複数のセパレータ40を図示しているが、電極群11A,11Bに含まれるセパレータ40はそれぞれ1枚ずつであってもよい。この場合、長尺状のセパレータ40が九十九折りされて正極20と負極30の間に配置される。後で詳細に説明するが、本実施形態では、電極群11A,11Bの夫々は、接着剤を含み、熱プレス工程を用いて作製される。より詳しくは、電極群11A,11Bの夫々は、複数の正極20と複数の負極30がセパレータ40を介して1枚ずつ交互に積層してなる積層体を、一対の熱板を用いて積層方向にプレスすることで、積層体に熱と圧力を付与し、接着剤の少なくとも一部が接着力を発現する状態にすることで作製される。
【0027】
電極体11は、そのように作製された電極群11A及び電極群11Bを備え、複数の正極20と複数の負極30がセパレータ40を介して1枚ずつ交互に積層されてなる積層型の電極体である。正極20は上方に突出した正極タブ23を含み、負極30は上方に突出した負極タブ33を含む。言い換えると、正極20及び負極30は、各タブが同じ方向を向くように積層配置される。また、正極タブ23が電極体11の横方向一端側に、負極タブ33が電極体11の横方向他端側にそれぞれ位置すると共に、複数の正極タブ23が電極体11の厚み方向に並び、複数の負極タブ33が電極体11の厚み方向に並ぶように積層配置される。
【0028】
正極20は、正極芯体と、正極芯体の表面に設けられた正極合材層とを有する。正極芯体には、アルミニウム、アルミニウム合金など正極20の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合材層は、正極活物質、導電材、及び結着材を含み、正極芯体の両面に設けられることが好ましい。正極20は、例えば正極芯体上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合材層を正極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0029】
正極20は、正極芯体の表面のうち正極タブ23を除く部分(以下、「基部」とする)の全域に正極合材で構成される正極合材層が配置された構造を有する。正極芯体の厚みは、例えば5μm~20μmであり、好ましくは8μm~15μmである。正極芯体の基部は正面視四角形状を有し、当該四角形の一辺から正極タブ23が突出している。一般的には、1枚の金属箔を加工して基部と正極タブ23が一体成形された正極芯体が得られる。
【0030】
正極活物質には、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。リチウム遷移金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。中でも、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有することが好ましい。好適な複合酸化物の一例としては、Ni、Co、Mnを含有するリチウム遷移金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
【0031】
正極合材層に含まれる導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合材層に含まれる結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0032】
負極30は、負極芯体と、負極芯体の表面に設けられて、負極合材で構成される負極合材層とを有する。負極芯体には、銅などの負極30の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質及び結着材を含み、負極芯体の両面に設けられることが好ましい。負極30は、例えば負極芯体の表面に負極活物質、及び結着材等を含む負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合材層を負極芯体の両面に形成することにより作製できる。
【0033】
負極30は、負極芯体の表面のうち負極タブ33を除く部分である基部の全域に負極合材層が形成された構造を有する。負極芯体の厚みは、例えば3μm~15μmであり、好ましくは5μm~10μmである。正極20の場合と同様に、負極芯体の基部は正面視四角形状を有し、当該四角形の一辺から負極タブ33が突出している。一般的には、1枚の金属箔を加工して基部と負極タブ33が一体成形された負極芯体が得られる。
【0034】
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素系活物質が用いられる。好適な炭素系活物質は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛(MAG)、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等の人造黒鉛などの黒鉛である。また、負極活物質には、Si及びSi含有化合物の少なくとも一方で構成されるSi系活物質が用いられてもよく、炭素系活物質とSi系活物質が併用されてもよい。
【0035】
負極合材層に含まれる結着材には、正極20の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることもできるが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を用いることが好ましい。また、負極合材層は、さらに、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)などを含むことが好ましい。中でも、SBRと、CMC又はその塩、PAA又はその塩を併用することが好適である。
【0036】
図4は、図2のA-A線断面を模式的に示す図である。以下、図2及び図4を参照しながら、電極体11の正極タブ群24及び負極タブ群34の構成について詳説する。図2及び図4に示すように、電極体11は、正極タブ23が複数積層されてなる正極タブ群24と、負極タブ33が複数積層されてなる負極タブ群34とを有する。正極タブ群24は、複数の正極タブ23を電極の積層方向に重ね合わせて、電極群11A,11B毎に1つずつ形成されている。同様に、負極タブ群34は、複数の負極タブ33を電極の積層方向に重ね合わせて、電極群11A,11B毎に1つずつ形成されている。
【0037】
正極タブ群24は、封口板15の内面(下面)に取り付けられた正極集電板25に溶接等により接合される。正極集電板25は、上記のように、電流遮断装置18を介して正極端子12と電気的に接続される板状の導電部材である。封口板15と正極集電板25の間には絶縁部材26が介在し、両部材の接触が防止されている。同様に、負極タブ群34は、絶縁部材を介して封口板15の内面に取り付けられた負極集電板35に溶接等により接合される。
【0038】
正極タブ群24及び負極タブ群34は、電極体11と各端子をつなぐ導電経路として機能する限り、その形状は特に限定されない。図2及び図4に示す例では、電極群11Aの複数の正極タブ23及び複数の負極タブ33が、二次電池10の外側から内側に向かって湾曲した状態でそれぞれ積層され、断面視略U字状の正極タブ群24及び負極タブ群34が形成されている。同様に、電極群11Bにも、断面視略U字状のタブ群が形成されている。なお、各タブ群は、二次電池10の内側から外側に向かって湾曲したU字形状を有していてもよい。そして、図4のように2つの積層された電極群のタブ群は、一方の電極群のタブ群の断面形状に対して他方の電極群のタブ群の断面形状が電極群の境界線で略対称となるように配置されてもよい。
【0039】
正極タブ群24は、正極集電板25の封口板15側に向いた上面に溶接されてもよいが、好ましくは正極集電板25の下面に溶接される。本実施形態では、正極タブ群24及び負極タブ群34のいずれも、集電板の下面に溶接されているが、例えば、正極タブ群24が正極集電板25の下面に溶接され、負極タブ群34が負極集電板35の上面に溶接されてもよい。また、本実施形態では、電極体11が、分割された第1の電極群11A及び第2の電極群11Bを含む場合について説明したが、電極体は、分割されていない一つの電極群を有してもよい。
【0040】
なお、電極体11を、封口板15に溶接した後、例えば、封口板15を、外装缶14の開口部に嵌合し、電極体11が取り付けられた封口板15と外装缶14との嵌合部をレーザ溶接する。その後、外装缶14内に注液部16を用いて非水電解液を注液し、その後、注液部16をブラインドリベットで封止することで二次電池10が形成される。
【0041】
次に、第1の電極群11Aの構造及びセパレータ40について更に詳細に説明する。なお、第2の電極群11Bは、第1の電極群11Aの構造と同一の構造を有するため、その構造の説明は、省略する。図5は、第1の電極群11A(以下、単に、電極群11Aという)の積層方向の外側の一部を高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図であり、セパレータ40の一部と、正極20の一部と、以下で説明する接着剤50において接着している接着部分(接着剤において接着力を発現している部分)50aを含む拡大模式断面図である。逆説的にいうと、図5は、接着剤50において接着に寄与していない部分の図示を省略した拡大模式断面図である。
【0042】
図5に示す例では、セパレータ40は、樹脂製の基材(例えば、ポリオレフィン基材)40aと、基材40aの厚さ方向の片側面に塗工等の既存の方法で設けられた耐熱層40bを有する。なお、耐熱層40bは、基材40aの厚さ方向の一方側面と他方側面の両方に設けられてもよく、又はセパレータ40は、耐熱層を全く有さなくてもよい。
【0043】
電極群11Aは、接着剤50を更に備える。例えば、図5に示す例では、接着剤50は、基材40aの厚さ方向の片側面の全面に耐熱層40bを設けた後、耐熱層40bが設けられていないセパレータ40の一方側面の全域及び耐熱層40bが設けられたセパレータ40の他方側面の全域に、面積密度が略一定になるように複数のドット状の接着剤(ドット状の部分)を印刷等により配置することで塗布される。ここで、複数のドット状の接着剤50において、各ドット状の接着剤50の量は、略同一である。また、ドット状の接着剤50の個数密度は、セパレータ40の一方側面の全域及び他方側面の全域の全てで略一定である。なお、接着剤50の塗工形態は、ドット状に塗る形態でなく、セパレータの全面に塗る形態でもよい。すなわち、接着剤を、セパレータの一方側面の及び他方側面の少なくとも一方に面積密度が略一定になるように塗布して、セパレータの少なくとも一方側面上に接着層を設ける構成でもよい。
【0044】
セパレータ40及び接着剤50について更に詳細に説明すると、接着剤50は、基材40aと電極(正極20及び負極30の少なくとも一方)との間に位置していれば好ましく、基材40a上に、例えば、主成分としてアルミナ粒子を含む耐熱層(スラリー塗工層)40bを設け、その上に接着剤50を塗布する構成でもよい。耐熱層40bを設けることで、例えば混入異物、釘刺し等によるセパレータ40の破断が発生し難くなり、また温度上昇時のセパレータ40の収縮を抑制できる。
【0045】
樹脂製の多孔質の基材40aは、単独でもセパレータ40として機能するものである。基材40aには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔質フィルムが用いられる。基材40aの厚みは、例えば1μm~20μmである。基材40aの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンの共重合体、エチレン、プロピレン、その他のαオレフィンとの共重合体等のオレフィン樹脂が例示できる。樹脂基材の融点は、一般的に200℃以下である。
【0046】
基材40aを構成する多孔質フィルムは、リチウムイオンを透過させるための多くの孔を有するが、その表面の凹凸は耐熱層40bの表面凹凸よりも小さく、耐熱層40bに比べると表面は平坦である。基材40aの表面に存在する孔又は凹部の大きさ(最大長さ)は、例えば0.5μm未満であり、好ましくは0.3μm未満である。
【0047】
多孔質の耐熱層40bは、基材40aを構成する樹脂よりも融点又は軟化点の高い樹脂、例えばアラミド樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等で構成されてもよいが、好ましくは無機化合物を主成分として構成される。耐熱層40bは、絶縁性の無機化合物粒子と、当該粒子同士及び当該粒子と基材40aとを結着する結着材とで構成されることが好ましい。耐熱層40bは、基材40aと同様に、イオン透過性と絶縁性を有する。耐熱層40bの厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~6μmである。
【0048】
耐熱層40bの主成分となる無機化合物粒子としては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカ、チタニア、及びジルコニアから選択される少なくとも1種を用いることができる。中でも、アルミナ、又はベーマイトを用いることが好ましい。無機化合物粒子の含有量は、耐熱層40bの質量に対して、85質量%~99.9質量%が好ましく、90質量%~99.5質量%がより好ましい。
【0049】
無機化合物粒子の形状は特に制限はなく、例えば球状、四角柱状などの粒子を用いることができる。球状粒子の平均粒径あるいは四角柱状粒子の1辺の平均長さは、0.1μm~1.5μmが好ましく、0.5μm~1.2μmがより好ましい。無機化合物粒子の粒径が当該範囲内であれば、イオン透過性が良好で耐久性に優れた耐熱層40bを形成できる。
【0050】
耐熱層40bを構成する結着材には、例えばPVdF等のフッ素系樹脂、SBRなど、正極合材層及び負極合材層に含まれる結着材と同様のものを使用できる。結着材の含有量は、耐熱層40bの質量に対して、0.1質量%~15質量%が好ましく、0.5質量%~10質量%がより好ましい。耐熱層40bは、例えば無機化合物粒子及び結着材を含有するスラリーを基材40aを構成する多孔質フィルムの一方側面に塗布し、塗膜を乾燥させることで形成される。以上のように耐熱層40bを基材40aの上に形成することにより、耐熱層40bの表面には隣接しあう無機化合物粒子との間に溝、凹部が形成される。
【0051】
接着剤50としては、例えば、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン-酢酸ビニル樹脂系接着剤、又はエポキシ樹脂系接着剤等を用いることができる。接着剤50を構成する樹脂としては、アクリル重合体、ジエン重合体、ポリウレタン、PVdF等のフッ素系樹脂が例示できる。また、上述のように、接着剤50の形状は、粒子状重合体でもよく、層状でもよい。接着剤50は、セパレータ40の片面に塗布されていても両面に塗布されていてもどちらでも良いが、両面に塗布されていることが電極群11A(電極体11)の取り扱い利便性を高め、かつ、積層体のズレを抑制できるため好ましい。
【0052】
図5を参照して、例えば、基材40aを、ポリエチレン製多孔質フィルムで構成し、基材40aの片面上に耐熱層40bを形成し、セパレータ40の一方側面を構成する基材40a上と、セパレータ40の他方側面を構成する耐熱層40b上との両方に、アクリル重合体からなる接着粒子をドット状に配列してもよい。そして、耐熱層40bと正極合材層を接着粒子によって接着し、基材40aと負極合材層を接着粒子で接着してもよい。そのような各合材層とセパレータ40との接着は、例えば、所定温度に温められたプレス板を積層体の積層方向の一方側及び他方側に接触させて圧力を印加する熱プレス工程で実行される。
【0053】
又は、積層型の電極群11Aは、セパレータ40と各電極20,30との間にそれぞれ形成されると共に、接着粒子で構成される接着層を備えてもよい。接着層の厚みは、例えば0.1μm~1μm、又は0.2μm~0.9μmであり、接着剤の量と、接着剤が粒子状の場合においては、その粒径等によって決定される。接着層は、例えば接着粒子を含有するスラリーをセパレータの表面に塗布し、乾燥させることで形成される。接着粒子のスラリーには、微小な接着粒子が水中に分散した、いわゆるエマルジョンを使用できる。この場合、両面に接着粒子からなる接着層が形成された接着層付きセパレータを形成できる。
【0054】
その場合において、接着粒子の平均粒径は、例えば0.1μm~1μmであり、好ましくは0.5μm~0.7μmである。接着粒子の平均粒径は、耐熱層を構成する無機化合物粒子の平均粒径と同様に、セパレータの表面をSEMを用いて観察することにより測定される。接着粒子平均粒径は、例えば耐熱層を構成する無機化合物粒子の平均粒径と同等、もしくは小さい。このため、接着粒子は、耐熱層の表面に存在する凹部に完全に入り込む場合がある。一方、接着粒子の平均粒径は、例えば樹脂基材の表面に存在する溝又は凹部よりも大きい。そのため、接着面が耐熱層に比べて広くなり必要最小限な接着力が得られ易い。
【0055】
負極30とセパレータ40、並びに正極0とセパレータ40を接着する方法としては、種々方法はあるが、熱プレス機を使用した接着方法を用いることができる。なお、セパレータと電極を接着する方法は、熱プレス法以外の如何なる方法が採用されてもよい。熱プレス機を使用した接着方法では、例えば、所定の温度に熱した金属板に積層体を載せた後に、積層体上方から、所定の温度に熱した金属板を一定圧力で押し当てる方法が好ましい。上下金属板の温度は同じであっても異なっていても良く、金属板の温度は、接着剤の軟化温度以上であり、積層体の中央部にまで伝熱する時間が短時間で済むように高いほうが好ましいが、あまり高すぎると、セパレータの熱収縮が顕著になるため、50℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上110℃以下がより好ましい。
【0056】
積層体のプレス圧力は、低すぎると接着剤が固着しにくくなり、高すぎるとセパレータ40の自身が厚み方向に変形し易くなり、イオン透過性を担保しにくくなる。プレス圧としては、0.5MPa以上8MPa以下が好ましく、より好ましくは1MPa以上4MPa以下が好ましい。
【0057】
積層体をプレスする時間は、生産タクトを早める上で短いほど好ましいが、あまり短すぎると、電極群(電極体)の中央部の接着力が不足しやすくなる。加えて、電極(極板)の厚みが増し積層数が増すほど、電極群内部(電極体内部)に熱が伝わりにくくなるため、電極群内部(電極体内部)を所定の温度とするのに多大な時間を要する。
【0058】
例えば、負極として、Cu芯材の両面に、黒鉛を主成分とした活物質材料を両面等しい膜厚で形成し、総厚165μmである極板を用いてもよい。また、正極として、Al芯材の両面に、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を主成分とした活物質材料を両面等しい膜厚で形成し、総厚137μmとなる極板を用いてもよい。また、負極枚数36枚、正極枚数35枚である電極体を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0059】
熱プレスした後の工程としては、例えば、電極体11を金属製の外装缶14に挿入し、封口体で覆った後に封止口から電解液を注液する。電解液は各電極20,30間の端の方から浸透し始め、各電極群11A,11Bの中央部にまで液が浸透する。各電極群11A,11Bの積層方向の一方側面(上面)及び各電極群11A,11Bの積層方向の他方側面(下面)ほど、液回りする電極端が少ないために浸透液量が豊富となり、各電極群11A,11Bの積層方向の中央部ほど浸透液量が欠如しやすくなる。つまり、各電極群11A,11Bの積層方向の中央部ほど電解液の液回り性は悪くなり、各電極群11A,11Bの全体に電解液を浸透されるには時間を要する。このことから、電解液が浸透する隙間を大きくするように、各電極群11A,11Bの積層方向の中央部の接着力は必要最小限まで弱くすることが液回り性にとっては好ましい。
【0060】
このことから、本開示の二次電池10では、電極群11A,11Bの夫々に関して、電極群11A,11Bの積層方向の中央の接着力が、積層方向の一方側面及び積層方向の他方側面の接着力のいずれに対しても0.1倍以上になっており、より好ましくは0.3倍以上になっている。また、電極群11A,11Bの夫々に関して、電極群11A,11Bの積層方向の中央の接着力は、各電極群11A,11Bの積層方向の一方側面及び積層方向の他方側面のいずれに対しても0.9倍以下になっており、より好ましくは0.5倍以下になっている。なお、各電極群11A,11Bに関し、電極群11A,11Bの積層方向の中央の接着力が、電極群11A,11Bの積層方向の一方側面及び積層方向の他方側面の接着力の少なくとも一方の接着力の0.1倍未満であると、接着後の電極体を搬送する際に、電極体の積層方向の中央部が剥がれてしまう恐れがある。一方、各電極群11A,11Bに関し、電極群11A,11Bの積層方向の中央の接着力が、電極群11A,11Bの積層方向の一方側面及び積層方向の他方側面の接着力の少なくとも一方の接着力の0.9倍よりも大きいと、積層方向の中央部の接着剤を十分に溶融させる必要があるため、熱プレスに多大の時間を要し、生産性が悪くなる。
【0061】
更に述べると、温度や圧力が強い条件で熱プレスを行うと、積層方向外側のセパレータが潰れ易くなるため、温度や圧力は所定値よりも小さくする必要があり、その結果、当該0.9倍を実現するために、熱プレスに多大の時間を要することになる。また、熱プレスした後に電解液を注入し、充分に液回りした後の接着力は、液回り前の接着力よりも低くなる傾向があるが、接着力の比率はおおむね維持される。電極活物質内に浸透した液量は、例えば、電解液注入前後の電極の質量変化により求めることができる。
【0062】
以下、非水電解質二次電池を用いた実験例により本開示をさらに詳説するが、本開示はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0063】
[正極]
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/32で表されるリチウム含有遷移金属酸化物を93質量部と、アセチレンブラック(AB)を5質量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を2質量部とを混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、厚みが15μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面にリード部を残して正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。ローラーを用いて塗膜を圧縮した後、所定の電極サイズに切断した。正極の厚さ方向の一方側面におけるタブ以外の面積は、138×75mm2であった。
【0064】
[負極]
黒鉛粉末を96質量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)を2質量部と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)を2質量部とを混合し、さらに水を適量加えて、負極合材スラリーを調製した。次に、厚みが8μmの銅箔からなる長尺状の負極集電体の両面にリード部を残して負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。ローラーを用いて塗膜を圧縮した後、所定の電極サイズに切断した。負極の厚さ方向の一方側面におけるタブ以外の面積は、140×78mm2であった。
【0065】
[セパレータ]
多孔質の樹脂基材と、樹脂基材の一方の面のみに形成された多孔質の耐熱層とを含むセパレータを準備した。樹脂基材として、厚み15μmのポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。また、耐熱層として、1辺の平均長さが0.5μmである四角柱状のベーマイト粒子を主成分とする層を用いた。この層の表面には粒径が0.5μm程度の接着粒子が大きく変形することなく入り込むことができる大きさを有する溝や凹部が多数観察された。
【0066】
[電解液]
エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を、3:3:4の体積比で混合した。当該混合溶媒に、LiPF6を1.2mol/Lの濃度で溶解させて電解液を調製した。
【0067】
[電極体]
上述のように作製したセパレータの厚さ方向の一方側面と他方側面の両方に印刷により面積密度が一定の複数のドット状の接着剤を塗布した。詳しくは、作製したセパレータ(長尺体)の両面に、アクリル重合体を主成分として構成される接着粒子の分散体(エマルジョン)を塗布し、乾燥させて接着剤付セパレータを作製した。そして、最下部層にセパレータを配置し、その上に活物質が塗布されていない電極タブ付きの負極板、その上を折り返したセパレータで覆い、さらにその上にタブ付きの正極板、その上を折り返したセパレータで覆い、・・を繰り返し、セパレータを九十九折りしながら負極板と正極板を積層した。36枚目の負極板を載せた後に、さらにその上にセパレータを載せると同時に、積層体一式をセパレータで1周半巻回した後、セパレータ端部をテープ止めした。その後、あらかじめ熱せられたプレス板上に積層体を載せ、同様に熱せられた上プレス板により積層体に圧力を加えた。下プレス板に積層体を載せた5秒後に上プレス板を下降させて、積層体に圧力を加えた。圧力を印加完了した後に、積層体をプレス機から搬送した。
【0068】
[二次電池の作製]
電極体に含まれる全ての正極から突き出て重ね合わされたタブ70枚を封口体の正極集電板に溶接し、電極体に含まれる全ての負極から突き出て重ね合わされたタブ72枚を封口体の負極集電板に溶接した。外装缶として、高さが、95mmで、横方向の長さが148mmで、奥行方向の長さが29mmで、厚さが1.5mmのAlを主成分とする角形外装缶を用いた。外装缶内に注液部16を用いて非水電解液を注液し、その後、注液部をブラインドリベットで封止することで二次電池を形成した。
【0069】
[評価の概要]
プレス工程を行う熱板の温度及びプレス持続時間を変えて複数の電極体を作製した。そして、各電極体において、接着力比を算出し、接着力比に対する極板への電解液の浸透性と生産性を評価した。接着力比の算出と、2つの評価は、次のように行った。
【0070】
<接着力比の算出>
接着力比の評価は、最外層の正極とセパレータとの接着力、および負極とセパレータとの接着力をそれぞれ測定し、いずれか高い値を示した極板とセパレータとの接着力を測定して、その値をA0とし、電極体の上下負極板、もしくは上下正極板から同極のみを数えて9枚目の接着力、ならびに上下負極板、もしくは上下正極板から同極を数えて18枚目(電極体中央層)の接着力を測定し、その接着力をそれぞれA9、A18としたときの比率A9/A0ならびにA18/A0を求めた。(以後Ai/A0)と称す。本実施の形態においては、すべての実施例と比較例で、多孔質フィルムと負極合材層との接着力が高く、Ai/A0の値は多孔質フィルムと負極合材層との接着力を使用した。また、上下極板の接着力は変わらなかったため、下側の極板の接着力をA0とした。なお、接着力の評価は、電解液を電極体に含有させる前後の両方で行った。
【0071】
セパレータと各電極との接着力は、次のように測定した。すなわち、各試験サンプル(各試験セル)について、小型卓上試験機(日本電産シンポ(株)製、FGS-TV)に、デジタルフォースゲージ(同社製、FGP-0.5)を取り付けた装置を用いて、セパレータの基材と負極の接合面(界面X)、及びセパレータの耐熱層と正極の接合面(界面Y)の接着力を測定した。電解液注入前の試験セルを、接着力を測定する接合面を残して分解し、分解した試験片を20mm幅で短冊状に切断した。そして、次に、短冊状の試験片の測定対象となる接合面と反対側の面を、両面テープを用いて平板に貼り付けた。平板は、上下方向には移動せず抵抗なく板面方向に移動するように制約した治具に設置した。続いて、試験片のセパレータの端部をデジタルフォースゲージの先端に取り付けられたクリップで摘み、電極面に対して90°の方向に引っ張り上げ、このときデジタルフォースゲージにかかる力を測定した。デジタルフォースゲージの測定値が0.2Nであった場合、測定対象の接合面の接着力は、0.2×1000/20=10N/mである。なお、接着力は電解液浸透前後の電極体を用いて、電解液を電極体に含有させる前後の両方で測定した。
【0072】
<電極への電解液の液回り性(浸透性)の評価>
電解液を封止口から注液した後、電池を常温で保管し、保持時間を8h、24hとした場合の電極活物質への含液量を調べた。一定時間保管した電池から積層体を取り出して、群を解体した。最上層の負極、および最上層から9枚目の負極、ならびに18枚目の負極を切り出して、それぞれ負極中央5cm角に切り出し、質量を測定することで電解液の含有量を算出した。切り出した電極を、別途質量測定済みの金属コートされた袋の中に入れて質量測定することで、切り出しから測定までの電解液の乾燥を抑制した。また、別途、あらかじめ5cm角に切り出した負極単板を、電解液に満ちたトレー内に3h以上浸して、充分に活物質内に電解液をしみ込ませた。電解液をしみ込ませる前後の負極単板の質量変化から、電極にしみ込んだ電解液量を算出した結果130mgであり、この含液量を充分に活物質内にしみ込んだ際の電解液量として、電池解体後の含液量を評価した。含液量が70mg以下であったものを注液性が×、70mgより多く100mg以下であったものを△、100mgよりも多いものを〇とした。
【0073】
<生産性の評価>
熱プレス工程の保持時間、すなわち積層体をプレス板に載せてから、熱プレスが完了し積層体を搬送する工程までに要する時間が60秒未満であった場合に熱プレスタクトを〇、60秒以上90秒未満であった場合を△、90秒以上であった場合を×とした。
【0074】
[試験結果]
試験結果を、次の表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、上記一試験例によれば、電解液を電極に含有させる前後のいずれにおいても、接着力比が、0.1以上0.9以下である場合に、生産性及び液回り性(液浸透性)の両方に優れる電極体を作製することができた。更には、上記一試験例によれば、電解液を電極に含有させる前後のいずれにおいても、接着力比が、0.4以下である場合に、生産性及び液回り性の両方に優れる電極体を作製することができた。なお、本願発明者が行ったプレス工程の熱板の温度条件、熱板が付与する圧力条件、熱板のプレス時間を変えた複数の試験によれば、接着力比が、0.1以上、0.9以下であれば、生産性及び液回り性の両方が良好な電極体を作製でき、接着力比が、0.3以上、0.5以下であれば、生産性及び液回り性の両方に優れる電極体を作製できることを確認できた。
【0077】
[好ましい構成と、それら各構成から導出される作用効果]
以上、本開示の二次電池10は、セパレータ40における少なくとも厚さ方向の一方側面と、負極(第1極)30の間に配置される接着剤50を備える。また、本開示の二次電池10では、最外層の負極30とセパレータ40の接着力をA0[N/m]とし、積層群(積層体)11Aにおいて積層方向の中央に位置する負極30とセパレータ40の接着力をA1[N/m]としたとき、A1/A0が、0.1以上0.9未満である。
【0078】
したがって、電解液を、短時間で積層方向の内側まで浸透させることができる。よって、電解液の保持量を積層方向の存在位置によらず均一な値にし易い二次電池10を短時間で製造できる。よって、二次電池10の発電性能を高くできるだけでなく、積層方向の存在位置で反応速度差が生じることも抑制できて、その結果、二次電池10の耐久性を向上でき、更には、二次電池の生産性も良好なものにできる。
【0079】
また、負極30の長辺が10cm以上であって、負極30の厚さ方向の一方側面の面積が90cm2以上になるようにしてもよい。
【0080】
上述のように、電解液の積層方向の中央部への液回り性(液浸透性)は、二次電池10が大容量になればなる程、低くなる。
【0081】
本構成によれば、二次電池10が、負極30の長辺が10cm以上であって、負極30の厚さ方向の一方側面の面積が90cm2以上となる大容量の電池になる。しがって、本開示の技術の主要な作用効果の1つである電解液の優れた液回り性のおかげで、接着剤を用いた従来構成の二次電池との比較において、二次電池10の発電性能や耐久性を各段に向上させることができる。
【0082】
また、セパレータ40における厚さ方向の他方側面と、正極20の間に配置される第2接着剤を備えてもよい。また、最外層の正極20とセパレータ40の接着力をA2[N/m]とし、積層体において積層方向の中央に位置する正極20とセパレータ40の接着力をA3[N/m]としたとき、A3/A2が、0.1以上0.9未満でもよい。
【0083】
本構成によれば、正極20とセパレータ40との間に関しても、電解液が電極群11Aの積層方向の中央部に浸透し易くなる。よって、二次電池10の発電性能、耐久性、量産性を更に良好なものにできる。
【0084】
また、セパレータ40において接着剤が塗布される一方側面が、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔質基材(例えば、ポリオレフィン基材)に含まれてもよい。
【0085】
本構成によれば、セパレータ40と電極(正極及び負極の少なくとも一方)との間に作用する接着力を大きくでき、電極に対するセパレータ40の位置ずれを大きく抑制できる。
【0086】
また、セパレータ40の厚さ方向の他方側面にも接着剤が塗布され、セパレータ40のその他方側面がイオン透過性及び絶縁性を有する多孔質基材(例えば、ポリオレフィン基材)に含まれてもよい。
【0087】
本構成によれば、セパレータ40と正極20との間に作用する接着力を大きくできると共に、セパレータ40と負極30との間に作用する接着力も大きくできる。
【0088】
また、接着剤がセパレータ40における少なくとも厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定になるように塗布されており、接着剤において接着している部分の面積密度が積層方向で変動してもよい。
【0089】
図6は、積層型の電極体における、積層方向(矢印Aで示す)の位置と、電極とセパレータの接着力との関係を示す模式図である。図6(c)に示すように、本開示の技術では、積層方向の位置を縦軸とし、接着力を横軸とした二次元グラフにおいて、電極とセパレータの接着力の分布は、積層方向の両側端部が大きくて積層方向の中央部に極小値を有するような線対称に近い関数fになる。
【0090】
ここで、このような関数は、積層方向の位置を縦軸とし、プレス工程で熱板から積層体に付与される熱量を横軸した二次元グラフにおいて、プレス工程で熱板から積層体に付与される熱量の分布(温度分布)を示す関数と類似の振る舞いを示す。すなわち、プレス工程で熱板から積層体に付与される熱量の分布(温度分布)も、図6(c)に示すような、積層方向の両側端部が大きくて積層方向の中央部に極小値を有するような線対称に近い関数になる。
【0091】
本変形例によれば、そのような熱量の分布(温度分布)の振る舞いを巧みに利用して、積層方向の内側(中央側)の接着力を、積層方向の外側の接着力に対して容易に小さくすることができる。すなわち、本変形例によれば、接着剤をセパレータにおける少なくとも厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定になるように塗布するが、図6(c)にfで示す関数と類似の傾向を示す熱プレス工程でも熱量の分布(温度分布)を用いて、積層方向の内側の接着剤において溶融する量を積層方向の外側の接着剤において溶融する量よりも小さくし、積層方向の内側の接着剤において接着力を発現する接着部分の量を、積層方向の外側の接着剤において接着力を発現する接着部分の量よりも小さくする。
【0092】
詳しくは、図7は、第1の電極群11Aの積層方向の内側の一部を高さ方向に略直交する平面で切断したときの拡大模式断面図であり、図5と同様に、接着剤50において接着力を発現していない部分の図示は、省略している拡大模式断面図である。ここで、塗布する接着剤50の面積密度は、積層方向の外側も内側も同一であるが、図5及び図7に示すように、図6(c)にfで示す関数と類似の傾向を示す熱量の分布(温度分布)を用いて、接着剤50において接着力を発現する接着部分50a,50bの量を、積層方向の内側の方が積層方向の外側よりも小さくすることができる。よって、積層方向の内側(中央側)の接着力を、積層方向の外側の接着力に対して容易に小さくすることができる。
【0093】
従来、セパレータに塗布した接着剤の一部を溶融しない物理条件にすると、せっかく塗布した接着剤の一部が効力を発現せず、材料費の増大につながるため、そのような物理条件でプレス工程を行うことは回避されていた。
【0094】
しかし、接着剤50をセパレータ40に面積密度が略一定になるように塗布すると、接着剤が塗布されている量が異なる複数の異なるセパレータを用いて電極体を作製した場合との比較において、量産性を格段に高くできるという上記問題点をはるかに凌駕する顕著な作用効果を獲得できる。よって、本変形例によれば、積層方向の内側(中央側)の接着力が、積層方向の外側の接着力に対して小さい電極体を格段に容易に作製でき、更には、量産性も格段に高くすることができる。
【0095】
なお、本願開示の技術は、積層体の積層方向の内側(中央側)の接着力を、積層方向の外側の接着力よりも小さくすることにあるので、接着剤が塗布されている量が異なる複数の異なるセパレータを用いて電極体を作製してもよい。
【0096】
また、セパレータが、九十九折りで折り込まれていてもよい。
【0097】
本構成によれば、積層体(電極群、電極体)の取り扱い性を向上させることができる。
【0098】
また、本開示の積層型の電極体11を有する二次電池10を製造するときに、積層型の電極体11を熱プレス工程で、接着剤50の少なくとも一部を溶着させることで製造するようにしてもよい。本構成によれば、本開示の積層型の電極体11を有する二次電池10を容易に作製することができる。
【0099】
以上、二次電池が、積層型の電極体を備える場合について説明した。次に、二次電池が、巻回型の電極体を備える場合について説明する。図8は、巻回型の角形二次電池110の平面図であり、図9は、角形二次電池110の正面図である。また、図10(a)は、図8のA-A線断面図であり、図10(b)は、図10(a)のB-B線断面図であり、図10(c)は、図10(a)のC-C線断面図である。また、図11Aは、角形二次電池110が含む正極の平面図であり、図11Bは、角形二次電池110が含む負極の平面図である。また、図12は、角形二次電池110が含む偏平状の巻回電極体の巻回終了端側を展開した斜視図である。なお、巻回型の角形二次電池110の各部材の材料としては、上述の積層型の角形二次電池10の対応部材の材料と同一の材料を用いることができる。よって、以下の説明では、各部材の材料に関し、簡単に述べるか又は説明を省略する。
【0100】
図8図10、及び図12に示すように、角形二次電池(以下、単に二次電池という)110は、外装缶(角形外装缶)125(図8図10参照)と、封口板123(図8参照)と、偏平状の巻回電極体114(図9(a)、図12参照)とを備える。外装缶125は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、高さ方向一方側に開口部を有する。図9に示すように、外装缶125は、底部140、一対の第1側面141、及び一対の第2側面142を有し、第2側面142は、第1側面141よりも大きくなっている。図10(a)に示すように、封口板123は外装缶125の開口部に嵌合される。封口板123と外装缶125との嵌合部を接合することで、角形の電池ケース145が構成される。なお、巻回型の二次電池110における各部材の材料としては、積層型の角形二次電池10における対応部材の材料と同一の材料を採用することができる。よって、以下の巻回型の二次電池110の説明では、各部材の材料に関し、簡単に述べるか又は説明を省略する。
【0101】
図12に示すように、巻回電極体114は、正極111と負極112とがセパレータ113を介して互いに絶縁された状態で巻回された構造を有する。巻回電極体114の最外面側はセパレータ113で被覆され、負極112は正極111よりも外周側に配置される。図11Aに示すように、正極111は、厚さが10~20μm程度のアルミニウム又はアルミニウム合金箔からなる帯状の正極芯体115の両面に正極合材スラリーを塗布し、乾燥及び圧縮した後、所定寸法に帯状に切断する。正極合材スラリーは、正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む。このとき、幅方向の一方側の端部に、長手方向に沿って両面に正極合材層111aが形成されていない正極芯体露出部115aが形成されるようにする。この正極芯体露出部115aの少なくとも一方側の表面には、例えば正極合材層111aに隣接するように、正極芯体露出部115aの長さ方向に沿って正極保護層111bが形成されることが好ましい。正極保護層111bには、絶縁性無機粒子と結着剤とが含まれる。この正極保護層111bは、正極合材層111aよりも導電性が低い。正極保護層111bを設けることにより、異物等により負極合材層112aと正極芯体115との短絡を防止できる。また、正極保護層111bに導電性無機粒子を含有させることができる。なお、正極保護層111bは、設けられなくてもよい。
【0102】
一方、図11Bに示すように、負極112は、厚さが5~15μm程度の銅又は銅合金箔からなる帯状の負極芯体116の両面に負極合材スラリーを塗布し、乾燥及び圧縮した後、所定寸法に帯状に切断する。負極合材スラリーは、負極活物質、及び結着剤等を含む。このとき、長手方向に沿って両面に負極合材層112aが形成されていない負極芯体露出部116aが形成されるようにする。なお、正極芯体露出部115aないし負極芯体露出部116aは、それぞれ正極111ないし負極112の幅方向の両側の端部に沿って形成してもよい。
【0103】
図12に示すように、正極芯体露出部115aと負極合材層112aが重ならないように、また、負極芯体露出部116aと正極合材層111aが重ならないように、正極111及び負極112を巻回電極体114の幅方向(正極111及び負極112の幅方向)にずらして配置される。そして、正極111及び負極112を、少なくとも厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定となっている接着剤が塗布されているセパレータ113を挟んで互いに絶縁した状態で巻回して巻回体を形成する。そして、形成した巻回体を、一対の熱板で挟み込んで、偏平状に成形することで、偏平状の巻回電極体114が作製される。巻回電極体114は、巻回軸が延びる方向(帯状の正極111、帯状の負極112、及び帯状のセパレータ113を矩形状に展開したときの幅方向に一致)の一方側端部に複数枚積層された正極芯体露出部115aを備え、他方側端部に複数枚積層された負極芯体露出部116aを備える。セパレータ113としては、好ましくは、ポリオレフィン製多孔質フィルムを使用できる。セパレータ113の幅は、正極合材層111a及び正極保護層111bを被覆できると共に負極合材層112aの幅よりも大きいことが好ましい。
【0104】
後で詳述するが、複数枚積層された正極芯体露出部115aは、正極集電体117(図10(a)参照)を介して正極端子118に電気的に接続され、複数枚積層された負極芯体露出部116aは、負極集電体119(図10(a)参照)を介して負極端子120に電気的に接続される。また、詳述しないが、図10(a)に示すように、正極集電体117と正極端子118との間には、電池ケース145の内部のガス圧が所定値以上となった時に作動する電流遮断機構127が設けられることが好ましい。
【0105】
図8図9及び図10(a)に示すように、正極端子118及び負極端子120の夫々は、絶縁部材121、122を介して封口板123に固定される。封口板123は、電池ケース145内のガス圧が電流遮断機構127の作動圧よりも高くなったときに開放されるガス排出弁128を有する。正極集電体117、正極端子118及び封口板123は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、負極集電体119及び負極端子120は、それぞれ銅又は銅合金で形成される。図10(c)に示すように、偏平状の巻回電極体114は、封口板123側を除く周囲に絶縁性の絶縁シート(樹脂シート)124を介在させた状態で一面が開放された外装缶125内に挿入される。
【0106】
図10(b)及び図10(c)に示すように、正極111側では、巻回されて積層された複数枚の正極芯体露出部115aは、厚み方向の中央部に収束されてさらに2分割され、正極芯体露出部115aが収束され、その間に正極用中間部材130が配置される。正極用中間部材130は樹脂材料からなり、正極用中間部材130には、導電性の正極用導電部材129が、1以上、例えば2個保持される。正極用導電部材129は、例えば円柱状のものが用いられ、積層された正極芯体露出部115aと対向する両端部にプロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0107】
負極112側でも、巻回されて積層された複数枚の負極芯体露出部116aは、厚み方向の中央側に収束されてさらに2分割され、負極芯体露出部116aが収束され、その間に負極用中間部材132が配置される。負極用中間部材132は、樹脂材料からなり、負極用中間部材132には、負極用導電部材131が、1以上、例えば2個保持される。負極用導電部材131は、例えば円柱状のものが用いられ、積層された負極芯体露出部116aと対向する両端部に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起が形成されている。
【0108】
正極用導電部材129と、その延在方向の両側に配置されている収束された正極芯体露出部115aは、接合されて電気的に接続され、収束された正極芯体露出部115aと、その電池ケース145の奥行方向外側に配置された正極集電体117も接合されて電気的に接続される。また、同様に、負極用導電部材131と、その両側に配置されて収束されている負極芯体露出部116aは接合されて電気的に接続され、収束された負極芯体露出部116aと、その電池ケース145の奥行方向外側に配置された負極集電体119も、接合されて電気的に接続される。正極集電体117の正極芯体露出部115a側とは反対側の端部は、正極端子118に電気的に接続され、負極集電体119の負極芯体露出部116a側とは反対側の端部は、負極端子120に電気的に接続される。その結果、正極芯体露出部115aが正極端子118に電気的に接続され、負極芯体露出部116aが負極端子120に電気的に接続される。
【0109】
巻回電極体114、正極及び負極用中間部材130,132、及び正極及び負極用導電部材129,131は接続され、一体構造を構成する。正極用導電部材129は、正極芯体115と同じ材料であるアルミニウム又はアルミニウム合金製のものが好ましく、負極用導電部材131は、負極芯体116と同じ材料である銅又は銅合金製のものが好ましい。正極用導電部材129及び負極用導電部材131の形状は、同じであっても異なっていてもよい。
【0110】
正極芯体露出部115aと正極集電体117の接続、及び負極芯体露出部116aと負極集電体119の接続は、抵抗溶接、レーザ溶接や超音波溶接等を用いてもよい。また、正極用中間部材130及び負極用中間部材132を用いなくてもよい。
【0111】
図8に示すように、封口板123には電解液注液孔126が設けられる。正極集電体117、負極集電体119、及び封口板123等が取り付けられた巻回電極体114を、外装缶125内に配置する。このとき、巻回電極体114を箱状ないし袋状に成形した絶縁シート124内に配置した状態で、巻回電極体114を外装缶125内に挿入することが好ましい。その後、封口板123と外装缶125との嵌合部をレーザ溶接し、その後、電解液注液孔126から非水電解液を注液する。その後、電解液注液孔126を密封することで二次電池110を作製する。電解液注液孔126の密封は、例えばブラインドリベットや溶接等で実行される。
【0112】
なお、巻回電極体114が、その巻回軸が外装缶125の底部140と平行となる向きに配置される場合について説明したが、巻回電極体が、その巻回軸が外装缶125の底部140と垂直となる向きに配置される構成でもよい。
【0113】
以上、巻回型の二次電池110の一例について例示したが、上述の巻回型の二次電池110に限らず如何なる巻回型の二次電池110においても、電解質(電解液)が中央の空洞側に浸透しにくいという課題がある。
【0114】
すなわち、図6及び図13に示すように、積層型の電極体11における積層方向(熱板でのプレス方向と一致)Aと、巻回電極体(巻回型の電極体)114における熱板でのプレス方向Bは、互いに対応する。そして、巻回電極体114を、熱プレス工程で、偏平形状にプレスして接着剤を溶融させるとき、外周側の温度よりも内周側の温度が低くなる。すなわち、積層型の電極体11の積層方向の外側が、巻回電極体114の外周側に対応し、積層型の電極体11の積層方向の内側(中央側)が、巻回電極体114の内周側(空洞側)に対応する。よって、次の構成を有する巻回電極体114を作製すれば、積層型の電極体11と同様に、それを用いた二次電池110の発電性能、耐久性、及び量産性を向上させることができる。
【0115】
詳しくは、二次電池110は、正極芯体115及び正極芯体115上に配置された正極活物質を有する帯状の正極111と、負極芯体116及び負極芯体116上に配置された負極活物質を有する帯状の負極112が、帯状のセパレータ113を介して5巻以上巻回された巻回体を備える。また、二次電池110は、上記巻回体が、セパレータ113における少なくとも厚さ方向の片側面と、少なくとも一方の電極(第1極)との間に配置される接着剤を備える。そして、最外周に位置する少なくとも一方の電極(第1極)とセパレータの接着力をA0[N/m]とし、最内周に位置する上記少なくとも一方の電極(第1極)とセパレータの接着力をA1[N/m]としたとき、A1/A0が、0.1以上0.9未満である。
【0116】
したがって、二次電池110は、発電性能、耐久性、及び量産性が良好なものになる。
【0117】
また、巻回体が、偏平形状を有し、電池110の高さ方向の巻回体の長さが10cm以上であって、電池110の横方向の巻回体の長さが9cm以上でもよい。
【0118】
巻回体における電解液の内周側への液回り性(液浸透性)は、二次電池110が大容量になればなる程、低くなる。
【0119】
本構成によれば、二次電池110が、巻回体の厚さが10cm以上であって、最外周の周辺長が9cm以上となる大容量の電池になる。しがって、本開示の技術の主要な作用効果の1つである電解液の優れた液回り性のおかげで、二次電池110の発電性能や耐久性を各段に向上させることができる。
【0120】
また、セパレータ113における厚さ方向の他方側面と、他方の電極の間に配置される第2接着剤を備え、最外周に位置する他方の電極と前記セパレータの接着力をA2[N/m]とし、最内周に位置する他方の電極とセパレータの接着力をA3[N/m]としたとき、A3/A2が、0.1以上0.9未満でもよい。
【0121】
本構成によれば、巻回体の内周側における他方の電極とセパレータ113の間の液回り性(液浸透性)も大きくすることができる。しがって、二次電池110の発電性能、耐久性、及び量産性を更に向上させることができる。
【0122】
また、セパレータ113において接着剤が配置される少なくとも一方側面が、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔質基材(例えば、ポリオレフィン基材)に含まれてもよい。
【0123】
本構成によれば、セパレータ113と少なくとも一方の電極(正極及び負極の少なくとも一方)との間に作用する接着力を大きくでき、電極に対するセパレータ113の位置ずれを大きく抑制できる。
【0124】
また、セパレータ113の厚さ方向の他方側面にも接着剤が塗布され、セパレータ113のその他方側面がイオン透過性及び絶縁性を有する多孔質基材(例えば、ポリオレフィン基材)に含まれてもよい。
【0125】
本構成によれば、セパレータ113と正極111との間に作用する接着力を大きくできると共に、セパレータ113と負極112との間に作用する接着力も大きくできる。
【0126】
また、接着剤がセパレータ113における少なくとも厚さ方向の一方側面に面積密度が略一定になるように塗布されていてもよい。そして、接着剤において接着している部分の面積密度が巻回体の層ごとに変動するようにしてもよく、より詳しくは、外周側の層よりも内周側の層の接着部分の面積密度が小さくなるように変動させてもよい。
【0127】
本構成によれば、二次電池の生産性を格段に向上させることができる。
【0128】
また、本開示の巻回電極体114を有する二次電池110を製造するときに、巻回電極体114を熱プレス工程で、接着剤の少なくとも一部を溶着させることで製造するようにしてもよい。本構成によれば、本開示の巻回電極体114を有する二次電池110を容易に作製することができる。
【符号の説明】
【0129】
10,110 二次電池
11 電極体
11A,11B 電極群
20,111 正極
115 正極芯体
30,112 負極
116 負極芯体
40,113 セパレータ
40a 基材
40b 耐熱層
50 接着剤
50a,50b 接着剤において接着している接着部分
111a 正極合材層
112a 負極合材層
114 巻回電極体。
図1
図2
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図5
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図8
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図10
図11A
図11B
図12
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